【解決手段】ダブルスキン構造の床板1が枕梁2を介して台車3と連結され、枕梁の近傍に側引き戸用開口部41を備えた鉄道車両20において、側引き戸42を開閉させる空気式戸閉機械43が側引き戸用開口部の上方に設置され、空気式戸閉機械に圧縮空気を供給する配管5は、床下に設置された空気タンク51から側引き戸用開口部の近傍で側構体下部44に設置する切替バルブ52を経由して空気式戸閉機械に接続する。配管には、床板の上板11と下板12との隙間14に挿通可能な略S字状配管53を備え、当該略S字状配管の上端接続部531を上板から上方へ突出させて切替バルブからの配管54と接続し、略S字状配管の下端接続部532を枕梁から離間した位置で下板から下方へ突出させて空気タンクからの配管55と接続した。
ダブルスキン構造の床板が枕梁を介して台車と連結され、前記枕梁の近傍には、側構体に形成した側引き戸用開口部を備えた鉄道車両において、側引き戸を開閉させる空気式戸閉機械が前記側引き戸用開口部の上方に設置され、前記空気式戸閉機械に圧縮空気を供給する配管が、床下に設置された空気タンクから前記側引き戸用開口部の近傍で側構体下部に設置する切替バルブを経由して前記空気式戸閉機械に接続するように形成された鉄道車両の側引き戸用配管構造であって、
前記配管には、前記床板の上板と下板との隙間に挿通可能な略S字状配管を備え、当該略S字状配管の上端接続部を前記上板に形成した第1通孔から上方へ突出させ、前記略S字状配管の下端接続部を前記下板に前記枕梁から離間した位置で前記第1通孔より大きく形成した第2通孔から下方へ突出させ、前記上端接続部を前記切替バルブからの配管と接続し、前記下端接続部を前記空気タンクからの配管と接続したことを特徴とする鉄道車両の側引き戸用配管構造。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、鉄道車両の側引き戸(ドア部)構造が開示されている。すなわち、
図6に示すように、鉄道車両100には、側構体101に側引き戸用開口部102が形成され、側引き戸103、104は、側引き戸に連結されている空気式戸閉機械105に圧縮空気を送ることによって、開閉される構造が採用されている。空気式戸閉機械105は、側構体101の側引き戸用開口部102の上方に設置され、側引き戸103、104に連結された空気式戸閉機械105のロッド105aが水平(レール方向)に伸縮するように構成されている。
【0003】
また、一般に、空気式戸閉機械105に送る圧縮空気は、床下に設置された空気タンク(図示しない)から配管によって供給され、空気式戸閉機械105に供給された圧縮空気により側引き戸103、104の閉状態又は開状態が保持される構造となっている。空気タンクから空気式戸閉機械105まで接続する配管には、引き戸用開口部102の近傍で側構体下部に設置された切替バルブ(図示しない)が接続されている。非常時等において、切替バルブを操作して、空気式戸閉機械105内の圧縮空気が外部へ排出されると、側引き戸103、104の閉状態又は開状態は保持されず、手動で開閉できるようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記鉄道車両の側引き戸構造には、以下の問題があった。すなわち、近年、ダブルスキン構造の床板を備えた車両では、強度部材としての枕梁を介して台車に接続される台枠構造が採用されている(例えば、特開2017−105239号公報の
図2参照)。また、枕梁を備えた車両では、車体の側引き戸用開口部の近傍に枕梁が配置されることが多かった。したがって、床下の空気タンクから空気式戸閉機械まで接続する配管は、枕梁を迂回して配設しなければならなかった。
【0006】
ところが、非常時等において操作する切替バルブは、床下からの圧縮空気を閉め切り、排気するため、側引き戸用開口部の近傍で側構体下部に設置しておく必要があった。そのため、床下の空気タンクから空気式戸閉機械まで接続する配管は、側引き戸用開口部の近傍で側構体下部に設置する切替バルブを経由した上で、枕梁を迂回して配設しなければならず、その配管距離が長くなって、配管の施工に伴う作業工数が増大するという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、簡単な取付けで、枕梁を迂回せずに配管の施工ができ、その配管距離を短縮できる鉄道車両の側引き戸用配管構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両の側引き戸用配管構造は、以下の構成を備えている。
(1)ダブルスキン構造の床板が枕梁を介して台車と連結され、前記枕梁の近傍には、側構体に形成した側引き戸用開口部を備えた鉄道車両において、側引き戸を開閉させる空気式戸閉機械が前記側引き戸用開口部の上方に設置され、前記空気式戸閉機械に圧縮空気を供給する配管が、床下に設置された空気タンクから前記側引き戸用開口部の近傍で側構体下部に設置する切替バルブを経由して前記空気式戸閉機械に接続するように形成された鉄道車両の側引き戸用配管構造であって、
前記配管には、前記床板の上板と下板との隙間に挿通可能な略S字状配管を備え、当該略S字状配管の上端接続部を前記上板に形成した第1通孔から上方へ突出させ、前記略S字状配管の下端接続部を前記下板に前記枕梁から離間した位置で前記第1通孔より大きく形成した第2通孔から下方へ突出させ、前記上端接続部を前記切替バルブからの配管と接続し、前記下端接続部を前記空気タンクからの配管と接続したことを特徴とする。
【0009】
本発明においては、空気式戸閉機械に圧縮空気を供給する配管には、床板の上板と下板との隙間に挿通可能な略S字状配管を備え、当該略S字状配管の上端接続部を上板に形成した第1通孔から上方へ突出させ、略S字状配管の下端接続部を下板に枕梁から離間した位置で第1通孔より大きく形成した第2通孔から下方へ突出させ、上端接続部を切替バルブからの配管と接続し、下端接続部を空気タンクからの配管と接続したので、第2通孔から床板の上板と下板との隙間に挿通した略S字状配管を介して、枕梁を迂回することなく、切替バルブと空気タンクとを接続することができ、その配管距離を短縮することができる。
【0010】
また、床板の上板と下板との隙間に略S字状配管を挿入して、略S字状配管の上端接続部を床板の上板に形成した第1通孔から上方へ突出させ、略S字状配管の下端接続部を床板の下板に枕梁から離間した位置で第1通孔より大きく形成した第2通孔から下方へ突出させた後に、上端接続部を切替バルブからの配管と接続し、下端接続部を空気タンクからの配管と接続するので、略S字状配管の取付け及び接続も簡単にできる。
【0011】
よって、本発明によれば、簡単な取付けで、枕梁を迂回せずに配管の施工ができ、その配管距離を短縮できる鉄道車両の側引き戸用配管構造を提供することができる。
【0012】
(2)(1)に記載された鉄道車両の側引き戸用配管構造において、
前記第2通孔は、前記上板と前記下板とを連結する内リブ同士の隙間に沿って形成された長孔であることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、第2通孔は、上板と下板とを連結する内リブ同士の隙間に沿って形成された長孔であるので、略S字状配管を長孔に形成された第2通孔から床板の内部リブに沿わせて簡単に挿入でき、配管の取付作業の簡素化を図ることができる。
【0014】
(3)(1)又は(2)に記載された鉄道車両の側引き戸用配管構造において、
前記下板には、前記下端接続部を下方へ突出させる第3通孔を有し前記第2通孔を閉塞可能な塞ぎ板が装着されていることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、床板の下板には、略S字状配管の下端接続部を下方へ突出させる第3通孔を有し第2通孔を閉塞可能な塞ぎ板が装着されているので、床板の下板と略S字状配管とのシール性を塞ぎ板を介して簡単に確保させることができる。
【0016】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された鉄道車両の側引き戸用配管構造において、
前記略S字状配管は、車両長手方向に伸長された本体配管部と、前記本体配管部の一端から上方へ屈曲された前記上端接続部と、前記本体配管部の他端から下方へ屈曲された前記下端接続部とを備えて形成され、前記下端接続部への屈曲部を前記上端接続部への屈曲部より上下方向で低い位置に配置したことを特徴とする。
【0017】
本発明においては、略S字状配管は、車両長手方向に伸長された本体配管部と、本体配管部の一端から上方へ屈曲された上端接続部と、本体配管部の他端から下方へ屈曲された下端接続部とを備えて形成され、下端接続部への屈曲部を上端接続部への屈曲部より上下方向で低い位置に配置したので、ダブルスキン構造の上板と下板との隙間の上下寸法が本体配管部に対する上端接続部の上下寸法より小さく、略S字状配管の全長寸法が相当程度長い場合であっても、略S字状配管を上板と下板との隙間に挿入することができる。
【0018】
すなわち、本体配管部から下端接続部への屈曲部を上端接続部への屈曲部より上下方向で低い位置に配置したので、上端接続部を上下方向に傾斜させた状態で、本体配管部の両屈曲部が上板及び下板と干渉しなくなり、上端接続部を上板と下板との隙間に沿って第1通孔まで移動させて、挿通させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡単な取付けで、枕梁を迂回せずに配管の施工ができ、その配管距離を短縮できる鉄道車両の側引き戸用配管構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態に係る鉄道車両の側引き戸用配管構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。具体的には、本実施形態に係る鉄道車両の側引き戸用配管構造において、第1実施例の構成を詳細に説明した上で、その取付け手順を簡単に説明する。次に、第2実施例の構成について、主に第1実施例との相違点を中心に説明する。
【0022】
<第1実施例の構成>
まず、本実施形態に係る鉄道車両の側引き戸用配管構造において、第1実施例の構成について、
図1〜
図3を用いて説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る鉄道車両の側引き戸用配管構造を表す側断面図を示す。
図2に、
図1に示す側引き戸用配管のA矢視図を示す。
図3に、
図1に示すB部詳細断面図を示す。
【0023】
図1〜
図3に示すように、第1実施例に係る鉄道車両の側引き戸用配管構造10は、ダブルスキン構造の床板1が枕梁2を介して台車3と連結され、枕梁2の近傍には、側構体4に形成した側引き戸用開口部41を備えた鉄道車両20において、側引き戸42を開閉させる空気式戸閉機械(例えば、エアシリンダ)43が側引き戸用開口部41の上方に設置され、空気式戸閉機械43に圧縮空気を供給する配管5が、床下に設置された空気タンク51から側引き戸用開口部41の近傍で側構体下部44に設置する切替バルブ52を経由して空気式戸閉機械43に接続するように形成された鉄道車両の側引き戸用配管構造である。
【0024】
また、床板1のダブルスキン構造は、上板11と下板12とが内部リブ13で連結された構造である。内部リブ13は、車両幅方向へ一列に並ぶ略トラス状断面に形成され、内部リブ13間の隙間14は、車両長手方向に沿って形成されている。また、枕梁2は、その上面21が床板1の下板12と接続され、その車両幅方向両端23が床板1の車両幅方向両端に形成された側梁15と連結されている。枕梁2はダブルスキン構造に形成され、その下面22には、車両幅方向の中央部に台車3の中心軸31が連結され、車両幅方向の両端部に空気バネ(図示しない)が連結されている。
【0025】
また、側構体4には、側引き戸用開口部41と側窓45とが左右対称位置にそれぞれ設けられている。また、側構体4には、側引き戸用開口部41を開閉する側引き戸42が車両長手方向に進退可能に装着されている。側引き戸42は、側構体4における側引き戸用開口部41の上方に設置された空気式戸閉機械43のロッド431を伸長したとき、側構体4の格納室46に収納され、空気式戸閉機械43のロッド431を短縮したとき、側引き戸用開口部41を閉塞する。
【0026】
また、空気式戸閉機械43のロッド431を伸長又は短縮させる圧縮空気は、床下に設置された空気タンク51から供給される。空気タンク51から供給される圧縮空気は、空気式戸閉機械43に付設された電磁弁432によってシリンダ室側とロッド室側とに切り替えられて空気式戸閉機械43に供給され、空気式戸閉機械43に供給された圧縮空気により側引き戸42の閉状態又は開状態が保持される構造となっている。
【0027】
また、圧縮空気を空気式戸閉機械43に供給する配管5には、床板1の上板11と下板12との隙間14に挿通可能な略S字状配管53を備えている。略S字状配管53は、車両長手方向に伸長された本体配管部533と、本体配管部533の一端から上方へ屈曲された上端接続部531と、本体配管部533の他端から下方へ屈曲された下端接続部532とを備えている。上端接続部531及び下端接続部532の先端には、接続用ネジ部が形成されている。
【0028】
また、配管5は、略S字状配管53の上端接続部531を上板11に形成した第1通孔111から上方へ突出させ、略S字状配管53の下端接続部532を下板12に枕梁2から離間した位置で第1通孔111より大きく形成した第2通孔121から下方へ突出させ、上端接続部531を切替バルブ52からの配管54と接続し、下端接続部を空気タンク51からの配管55と接続した構造となっている。
【0029】
また、空気式戸閉機械43の電磁弁432から切替バルブ52までの配管56は、側構体4の上端部に沿って略水平に配設された後、ロッド431の後退端を迂回してから側引き戸用開口部41に沿って下方へ配設され切替バルブ52まで配設されている。切替バルブ52には、手動の操作ハンドル521を備え、操作ハンドル521を回動すると、空気タンク51からの圧縮空気の供給を遮断し、空気式戸閉機械43に供給された圧縮空気を排出口から排出することができる。
【0030】
ここで、第1実施例における略S字状配管53では、本体配管部533は、上端接続部531への屈曲部533aから中間部533bまで略水平に形成され、中間部533bから下端接続部532への屈曲部533cまで下方へ僅かに傾斜して形成されている。本体配管部533は、上記のように中間部533bで上下方向に『への字状』に折り曲げた構造である。この『への字状』構造を採ることによって、床板1の上板11と下板12との隙間14の上下寸法t1が本体配管部533に対する上端接続部531の上下寸法t2より小さく、略S字状配管53の全長寸法t3が相当程度長い場合であっても、略S字状配管53を上板11と下板12との隙間14に挿入することができる。
【0031】
すなわち、略S字状配管53の全長寸法t3が相当程度長い場合には、上端接続部531を上下方向に傾斜させて上板11と下板12との隙間14に挿入しようとしても、本体配管部533の両屈曲部533a、533cが上板11と下板12とに干渉し、挿入できない。しかし、第1実施例では、本体配管部533を中間部533bで上下方向に『への字状』に折り曲げた構造を採ることによって、下端接続部532への屈曲部533cを上端接続部531への屈曲部533aより上下方向で低い位置に配置させることができる。そのため、上端接続部531を上下方向に傾斜させた状態で、本体配管部533の両屈曲部533a、533cが上板11及び下板12と干渉しなくなり、上端接続部531を上板11と下板12との隙間14に沿って第1通孔111まで移動させて、挿通させることができる。略S字状配管53の全長寸法t3が相当程度長い場合とは、t3≧t1/√(1−(t1/t2)
2)の関係を有する場合が該当する。
【0032】
また、第2通孔121は、床板1の上板11と下板12とを連結する内部リブ13同士の隙間14に沿って形成された長孔である。第2通孔121の長孔における車両長手方向の寸法t4は、略S字状配管53の全長寸法t3と同程度である。また、第2通孔121の長孔の平面形状は、特に限定しないが、例えば、略S字状配管53を挿通し得る長円形又は長方形が好ましい。
【0033】
また、床板1の下板12には、略S字状配管53の下端接続部532を下方へ突出させる第3通孔161を有し第2通孔121を閉塞可能な塞ぎ板16が装着されている。塞ぎ板16は、下板12の第2通孔121の周囲に形成された鍔付きフランジ部122に締結されている。上端接続部531と第1通孔111との隙間及び下端接続部532と第3通孔161との隙間は、それぞれシール部材で封止されている。
【0034】
<第1実施例の取付け手順>
次に、第1実施例の取付け手順を、
図4を用いて説明する。
図4に、
図1に示す鉄道車両の側引き戸用配管構造の取付け手順を説明する説明用断面図を示す。
図4(A)に、略S字状配管を下板の第2通孔から挿入したときの状態図を示し、
図4(B)に、略S字状配管の上端接続部を上板の第1通孔から突出させ、略S字状配管の下端接続部を下板の第2通孔から突出させたときの状態図を示し、
図4(C)に、略S字状配管の上端接続部を切替バルブからの配管と接続し、略S字状配管の下端接続部を塞ぎ板の第3通孔から突出させて空気タンクからの配管と接続するとともに、塞ぎ板を下板の鍔付きフランジ部に固定したときの状態図を示す。
【0035】
まず、
図4(A)に示すように、略S字状配管53の本体配管部533の両屈曲部が上板11と下板12とに干渉しないように、上端接続部531を上下方向に傾斜させて、長孔に形成された第2通孔121から略S字状配管53を上板11と下板12との隙間14に挿入する。具体的には、前述したように、第2通孔121の長孔における車両長手方向の寸法は、略S字状配管53の全長寸法と同程度であるので(
図3を参照)、略S字状配管53を略水平に保持して第2通孔121を通過させて、上端接続部531を上板11に当接させた後、下端接続部532を更に上昇させて、本体配管部533の中間部533bを上板11に近接させることによって、上端接続部531を上下方向に傾斜させて、略S字状配管53を上板11と下板12との隙間14に挿入する。
【0036】
次に、
図4(B)に示すように、上端接続部531を上下方向に傾斜させた状態で、本体配管部533の両屈曲部533a、533cを上板11と下板12とに滑らせながら、上端接続部531を上板11と下板12との隙間14に沿って第1通孔111まで移動させて、上端接続部531を第1通孔111に挿通させ、上板11から上方へ突出させる。このとき、下端接続部532は、第2通孔に挿通され、下板12から下方へ突出させた状態である。
【0037】
次に、
図4(C)に示すように、上板11から上方へ突出させた上端接続部531と切替バルブからの配管54とを接続ソケット541を用いて接続する。また、下板12から下方へ突出させた下端接続部532を塞ぎ板16に形成した第3通孔161に挿通し、下端接続部532と空気タンクからの配管55とを接続ソケット551を用いて接続する。また、塞ぎ板16は、下板12に形成された鍔付きフランジ部122に締結する。また、上端接続部531と第1通孔111との隙間及び下端接続部532と第3通孔161との隙間には、それぞれシール部材112、162を塗布して封止する。なお、塞ぎ板16と鍔付きフランジ部122との間には、シール部材を挿入して、シール性を確保する。
【0038】
<第2実施例の構成>
次に、本実施形態に係る第2実施例の構成について、
図5を用いて説明する。
図5に、
図1に示す側引き戸用配管構造の第2実施例を表す側断面図を示す。ここでは、主に第1実施例との相違点を中心に説明し、第1実施例と共通の構成には共通の符号を付して、その説明は原則として割愛する。
【0039】
図5に示すように、第2実施例に係る鉄道車両の側引き戸用配管構造10Bは、ダブルスキン構造の床板1が枕梁2を介して台車と連結され、枕梁2の近傍には、側構体4に形成した側引き戸用開口部41を備えた鉄道車両20Bにおいて、側引き戸を開閉させる空気式戸閉機械が側引き戸用開口部41の上方に設置され、空気式戸閉機械に圧縮空気を供給する配管5Bが、床下に設置された空気タンクから側引き戸用開口部41の近傍で側構体下部44に設置する切替バルブ52を経由して空気式戸閉機械に接続するように形成された鉄道車両の側引き戸用配管構造である。
【0040】
また、圧縮空気を空気式戸閉機械に供給する配管5Bには、床板1の上板11と下板12との隙間14に挿通可能な略S字状配管53Bを備えている。略S字状配管53Bは、車両長手方向に伸長された本体配管部533Bと、本体配管部533Bの一端から上方へ屈曲された上端接続部531と、本体配管部533Bの他端から下方へ屈曲された下端接続部532Bとを備えている。
【0041】
ここで、第2実施例における略S字状配管53Bでは、本体配管部533Bは、上端接続部531への屈曲部533Baから下端接続部532Bへの屈曲部533Bcまで略水平に直線状に形成されていて、第1実施例のように中間部で上下方向に『への字状』に折り曲げた構造ではない。第2実施例では、ダブルスキン構造の上板11と下板12との隙間14の上下寸法t1が本体配管部533Bに対する上端接続部531の上下寸法t2より小さいことは、第1実施例と同様であるが、略S字状配管53Bの全長寸法t3が第1実施例より短く、上端接続部531を上下方向に傾斜させて上板11と下板12との隙間14に挿入するとき、本体配管部533Bの両屈曲部533Ba、533Bcが上板11と下板12とに干渉しないので、略S字状配管53Bを上板11と下板12との隙間14に挿入することができる。
【0042】
なお、ダブルスキン構造の下板12には、略S字状配管53Bの下端接続部532Bを下方へ突出させる第3通孔161を有し第2通孔121を閉塞可能な塞ぎ板16が装着されている。
【0043】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両20、20Bの側引き戸用配管構造10、10Bによれば、空気式戸閉機械43に圧縮空気を供給する配管5、5Bには、床板1の上板11と下板12との隙間に挿通可能な略S字状配管53、53Bを備え、当該略S字状配管53、53Bの上端接続部531を上板11に形成した第1通孔111から上方へ突出させ、略S字状配管53、53Bの下端接続部532、532Bを下板12に枕梁2から離間した位置で第1通孔111より大きく形成した第2通孔121から下方へ突出させ、上端接続部531を切替バルブ52からの配管54と接続し、下端接続部532、532Bを空気タンク51からの配管55と接続したので、第2通孔121から床板1の上板11と下板12との隙間14に挿通した略S字状配管53、53Bを介して、枕梁2を迂回することなく、切替バルブ52と空気タンク51とを接続することができ、その配管距離を短縮することができる。
【0044】
また、床板1の上板11と下板12との隙間14に略S字状配管53、53Bを挿入して、略S字状配管53、53Bの上端接続部531を上板11に形成した第1通孔111から上方へ突出させ、略S字状配管53、53Bの下端接続部532、532Bを下板12に枕梁2から離間した位置で第1通孔111より大きく形成した第2通孔121から下方へ突出させた後に、上端接続部531を切替バルブ52からの配管54と接続し、下端接続部532、532Bを空気タンク51からの配管55と接続するので、略S字状配管53、53Bの取付け及び接続も簡単にできる。
【0045】
よって、本実施形態によれば、簡単な取付けで、枕梁2を迂回せずに配管5、5Bの施工ができ、その配管距離を短縮できる鉄道車両20、20Bの側引き戸用配管構造10、10Bを提供することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、第2通孔121は、床板1の上板11と下板12とを連結する内部リブ13同士の隙間14に沿って形成された長孔であるので、略S字状配管53、53Bを長孔に形成された第2通孔121から内部リブ13に沿わせて簡単に挿入でき、配管5,5Bの取付作業の簡素化を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、下板12には、略S字状配管53、53Bの下端接続部532、532Bを下方へ突出させる第3通孔161を有し第2通孔121を閉塞可能な塞ぎ板16が装着されているので、下板12と略S字状配管53、53Bとのシール性を塞ぎ板16を介して簡単に確保させることができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、略S字状配管53は、車両長手方向に伸長された本体配管部533と、本体配管部533の一端から上方へ屈曲された上端接続部531と、本体配管部533の他端から下方へ屈曲された下端接続部532とを備えて形成され、下端接続部532への屈曲部533cを上端接続部531への屈曲部533aより上下方向で低い位置に配置したので、床板1の上板11と下板12との隙間14の上下寸法t1が本体配管部533に対する上端接続部531の上下寸法t2より小さく、略S字状配管53の全長寸法t3が相当程度長い場合(t3≧t1/√(1−(t1/t2)
2)の関係を有する場合)であっても、略S字状配管53を上板11と下板12との隙間14に挿入することができる。
【0049】
すなわち、本体配管部533から下端接続部532への屈曲部533cを上端接続部531への屈曲部533aより上下方向で低い位置に配置したので、上端接続部531を上下方向に傾斜させた状態で、本体配管部533の両屈曲部533a、533cが上板11及び下板12と干渉しなくなり、上端接続部531を上板11と下板12との隙間14に沿って第1通孔111まで移動させて、挿通させることができる。
【0050】
<変形例>
以上、本実施形態の鉄道車両20、20Bの側引き戸用配管構造10、10Bを詳細に説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本実施形態の鉄道車両20、20Bの側引き戸用配管構造10、10Bは、下板12には、略S字状配管53、53Bの下端接続部532、532Bを下方へ突出させる第3通孔161を有し第2通孔121を閉塞可能な塞ぎ板16が装着されている。しかし、第2通孔121を閉塞する手段として、上記塞ぎ板16に限定される必要はなく、例えば、ゴムプラグを介して下端接続部532、532Bと第2通孔121との隙間を閉塞させる構造でもよい。
【0051】
また、本実施形態の第1実施例では、本体配管部533を中間部533bで上下方向に『への字状』に折り曲げた構造を採ることによって、下端接続部532への屈曲部533cを上端接続部531への屈曲部533aより上下方向で低い位置に配置したが、必ずしもこれに限定されず、例えば、本体配管部533を上下方向へ直線的に傾斜させて、下端接続部532への屈曲部533cを上端接続部531への屈曲部533aより上下方向で低い位置に配置してもよい。