【課題】鉄道車両の台枠下部オオイ体に形成する走行風取り込み口のコンパクト化を図りつつ、床下に備えた電力変換装置の放熱部の冷却性能をより均一に向上できる鉄道車両用冷却構造を提供する。
【解決手段】台枠下部オオイ体1を有する鉄道車両2の床下に電力変換装置3を備え、床下側方へ向けて突設された電力変換装置の放熱部4を台枠下部オオイ体に形成した走行風取り込み口5から車両進行方向に対して後内方へ傾斜させた傾斜導風ガイド6を介して導入した走行風によって冷却する鉄道車両用冷却構造10である。走行風取り込み口は、台枠部材21の床面211に略平行に近接する上底部51と路面7に略平行に近接する下底部52とを有する側面視で略台形状に形成され、上底部の前端部から後端部までの長さが下底部の前端部から後端部までの長さより長く、上底部の前端部が下底部の前端部より車両進行方向の前方に位置するように形成されている。
台枠下部オオイ体を有する鉄道車両の床下に電力変換装置を備え、床下側方へ向けて突設された前記電力変換装置の放熱部を前記台枠下部オオイ体に形成した走行風取り込み口から車両進行方向に対して後内方へ傾斜させた傾斜導風ガイドを介して導入した走行風によって冷却する鉄道車両用冷却構造であって、
前記走行風取り込み口は、台枠部材の床面に略平行に近接する上底部と路面に略平行に近接する下底部とを有する側面視で略台形状に形成され、前記上底部の前端部から後端部までの長さが前記下底部の前端部から後端部までの長さより長く、前記上底部の前端部が前記下底部の前端部より車両進行方向の前方に位置するように形成されていることを特徴とする鉄道車両用冷却構造。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両の床下に装着された電力変換装置は、鉄道架線から供給される電力を半導体素子のスイッチング作用により直流から交流へ変換して車両駆動用モータを駆動・制御している。その電力変換装置の正常な作動を担保するため、運転中における半導体素子からの発熱を効率的に放熱させる鉄道車両用冷却構造が検討されている。
【0003】
上記鉄道車両用冷却構造としては、
図17に示すように、車体110の床下に設置した箱体101内に収納された電力変換装置の半導体素子102を受熱部103に取り付けて熱を受熱部103で収集し、収集した熱を循環させるヒートパイプ104と放熱フィン105からなり床下の側方(枕木方向の外側)へ向けて突設された放熱部107から、床下側方を流れる走行風を利用して大気中に放散する冷却構造100が知られている(特許文献1を参照)。放熱部107は、孔明け保護カバー106によって保護されている。この鉄道車両用冷却構造100では、鉄道車両が走行するときに、床下の走行風を有効に利用して放熱部107の冷却効率を高めることができた。しかし、鉄道車両の外観意匠性等を考慮して、車体の床下側面を覆う台枠下部オオイ体を有する鉄道車両においては、走行風の流れが台枠下部オオイ体に規制されて、放熱部の冷却効率を高めることができないという問題があった。
【0004】
そのため、例えば、
図18、
図19に示すように、電力変換装置の放熱部(放熱フィン)201を角形(長方形)の台枠下部オオイ体(機器間カウルカバー)202の内側にレール方向で隣接して2つ配置し、台枠下部オオイ体202の各辺に対して略平行となる側面視で長方形の走行風取り込み口203を設け、当該走行風取り込み口203からレール方向に対して後内方に傾斜させた傾斜導風ガイド(ガイド)204を形成して、放熱部201に走行風205を取り込むことが可能となる鉄道車両用冷却構造200が開示されている(特許文献2を参照)。
【0005】
ところが、
図19において、傾斜導風ガイド204のレール方向に対する傾斜角度α1が急であれば、走行風205の流れが曲がり切れず剥離して、走行風205の取り込み量が減少して放熱部201の冷却性能の低下を招くおそれがあった。一般に、剥離限界角度は7°と言われている。そこで、
図20に示すように、側面視で長方形の走行風取り込み口301の内側にレール方向に対して傾斜させた傾斜導風ガイド(導風ガイド)302は、走行風303の流入先端部における傾斜角度α2を、剥離限界角度としての7°以下とし、その後、中間地点でさらに7°以下の傾斜角度α3で傾斜させて形成し、放熱部304により多くの走行風303を導入する鉄道車両用冷却構造300が開示されている(特許文献3を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、
図21に示すように、走行する鉄道車両における床下側方の走行風は、路面に近づくにつれて流速が急速に遅くなる傾向があるので、
図19、
図20に示すように、側面視で長方形状の走行風取り込み口203、301では、取り込み口下部からの風量が不足し、走行風による放熱部201、304の冷却性能を高めることが困難であった。また、走行風取り込み口203、301の上部と下部とで走行風205、303の流速が異なり、放熱部201、304の上部と下部とで冷却性能の不均一が生じやすいという問題があった。
【0008】
また、
図18に示すように、放熱部201を台枠下部オオイ体202の内側にレール方向で隣接して2つ(複数)配置すると、後方の放熱部201を冷却する走行風205は、前方の放熱部201を通過する際、温度が上昇し、流速が低下するので、前方の放熱部201と後方の放熱部201とで冷却性能の不均一が生じやすいという問題があった。
【0009】
また、
図20に示すように、走行風303の流入先端部におけるレール方向に対する傾斜角度α2を、剥離限界角度としての7°以下とし、その後、中間地点でさらに7°以下の傾斜角度α3で傾斜させて、傾斜導風ガイド302のレール方向に対する傾斜角度を段階的に増加させた場合には、走行風取り込み口301が前後方向(レール方向)で長くなり過ぎるので、鉄道車両の外観意匠性向上のためには好ましくなかった。
【0010】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、鉄道車両の台枠下部オオイ体に形成する走行風取り込み口のコンパクト化を図りつつ、床下に備えた電力変換装置の放熱部の冷却性能をより均一に向上できる鉄道車両用冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両用冷却構造は、以下の構成を備えている。
(1)台枠下部オオイ体を有する鉄道車両の床下に電力変換装置を備え、床下の側方へ向けて突設された前記電力変換装置の放熱部を前記台枠下部オオイ体に形成した走行風取り込み口から車両進行方向に対して後内方へ傾斜させた傾斜導風ガイドを介して導入した走行風によって冷却する鉄道車両用冷却構造であって、
前記走行風取り込み口は、台枠部材の床面に略平行に近接する上底部と路面に略平行に近接する下底部とを有する側面視で略台形状に形成され、前記上底部の前端部から後端部までの長さが前記下底部の前端部から後端部までの長さより長く、前記上底部の前端部が前記下底部の前端部より車両進行方向の前方に位置するように形成することを特徴とする。
【0012】
本発明においては、走行風取り込み口は、台枠部材の床面に略平行に近接する上底部と路面に略平行に近接する下底部とを有する略台形状に形成され、上底部の前端部から後端部までの長さが下底部の前端部から後端部までの長さより長く、上底部の前端部が下底部の前端部より車両進行方向の前方に位置するように形成するので、台枠部材の床面に近く流速の速い走行風を、路面に近く流速の遅い走行風より先行して走行風取り込み口から傾斜導風ガイド内へ大量に取り込むことができる。そのため、走行風取り込み口のコンパクト化を図りつつ、傾斜導風ガイド内へ取り込む走行風の絶対量を増加させることができ、床下に備えた電力変換装置の放熱部の冷却性能を向上させることができる。
【0013】
また、走行風取り込み口は、台枠部材の床面に略平行に近接する上底部と路面に略平行に近接する下底部とを有する略台形状に形成され、上底部の前端部から後端部までの長さが下底部の前端部から後端部までの長さより長く、上底部の前端部が下底部の前端部より車両進行方向の前方に位置するので、先行して傾斜導風ガイド内へ取り込まれた流速の速い床面側の走行風が、流速の遅い路面側の走行風を吸引することができ、路面側の走行風をより多く傾斜導風ガイド内へ取り込むことができる。その結果、放熱部の上部と下部とを流れる走行風の均一化を図ることができ、放熱部をより均一に冷却させることができる。
【0014】
よって、本発明によれば、鉄道車両の台枠下部オオイ体に形成する走行風取り込み口のコンパクト化を図りつつ、床下に備えた電力変換装置の放熱部の冷却性能をより均一に向上できる鉄道車両用冷却構造を提供することができる。
【0015】
(2)(1)に記載された鉄道車両用冷却構造において、
前記放熱部は、前記電力変換装置のレール方向における前端部と後端部とに分離して配置され、前方の放熱部と後方の放熱部との間に所定の離間空間が形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、放熱部は、電力変換装置のレール方向における前端部と後端部とに分離して配置され、前方の放熱部と後方の放熱部との間に所定の離間空間が形成されているので、走行風の当たる放熱部における前面の面積を倍増させることによって、放熱部の冷却性能をより一層向上させることができる。なお、後方の放熱部を冷却する走行風は、前方の放熱部を通過する際、一旦温度が上昇し流速が低下する場合があるが、前方の放熱部と後方の放熱部との間に所定の離間空間が形成されているので、後方の放熱部に到達するまでに周囲の走行風と混流されることによって、再度温度が低下し流速が上昇する。そのため、前方の放熱部の冷却性能と後方の放熱部の冷却性能とを略同レベルに向上させることができ、放熱部全体の冷却性能をより一層均一に向上できる。
【0017】
(3)(2)に記載された鉄道車両用冷却構造において、
前記前方の放熱部と前記後方の放熱部との間には、前記後方の放熱部に対して走行風を取り込む前記走行風取り込み口と前記傾斜導風ガイドとが前記台枠下部オオイ体に形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、前方の放熱部と後方の放熱部との間には、後方の放熱部に対して走行風を取り込む走行風取り込み口と傾斜導風ガイドとが台枠下部オオイ体に形成されているので、前方の放熱部と後方の放熱部とを、台枠下部オオイ体に形成された各走行風取り込み口から各傾斜導風ガイドを介して導入したそれぞれの走行風によって別々に冷却することができる。そのため、前方の放熱部と後方の放熱部とを、より同一の条件で冷却することができ、放熱部全体の冷却性能をより一層均一に確保できる。
【0019】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された鉄道車両用冷却構造において、
前記台枠下部オオイ体は、上端部において前記鉄道車両の側梁部材とヒンジを介して上下方向へ回動自在に連結され、下端部において前記電力変換装置の下端から側方へ向けて延設された支持部材と係合部材を介して着脱可能に係合されていること、
前記傾斜導風ガイドを構成する傾斜板と下板とを接続するコーナー部には、前記台枠下部オオイ体を上下方向へ回動させるときに前記支持部材の被係合部と干渉するのを回避する面取り部が形成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、台枠下部オオイ体は、上端部において鉄道車両の側梁部材とヒンジを介して上下方向へ回動自在に連結され、下端部において電力変換装置の下端から側方へ向けて延設された支持部材と係合部材を介して着脱可能に係合され、傾斜導風ガイドを構成する傾斜板と下板とを接続するコーナー部には、台枠下部オオイ体を上下方向へ回動させるときに支持部材の被係合部と干渉するのを回避する面取り部が形成されているので、傾斜導風ガイドの後端開口部における開口面積をより大きく形成して、走行風を放熱部により多く送り込むことができる。そのため、放熱部の冷却性能をより一層向上させることができる。
【0021】
また、台枠下部オオイ体は、上端部において鉄道車両の側梁部材とヒンジを介して上下方向へ回動自在に連結され、下端部において電力変換装置の下端から側方へ向けて延設された支持部材と係合部材を介して着脱可能に係合されているので、後端開口部における開口面積を大きくすることによって傾斜導風ガイドの重量が増加した台枠下部オオイ体を、側梁部材から取り外すことなく上下方向へ簡単に回動させることができる。そのため、床下に装着された電力変換装置その他の機器に対して、容易に点検・保守等を行うことができる。
【0022】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された鉄道車両用冷却構造において、
前記傾斜導風ガイドは、略台形状をなす前記走行風取り込み口の前脚部から車両進行方向に対して後内方へ傾斜して延設された傾斜板と、前記走行風取り込み口の後脚部から後内方へ前記傾斜板と略平行に延設された外傾斜板とを備えた導風筒状ガイドを有することを特徴とする。
【0023】
本発明においては、傾斜導風ガイドは、略台形状をなす走行風取り込み口の前脚部から車両進行方向に対して後内方へ傾斜して延設された傾斜板と、走行風取り込み口の後脚部から後内方へ傾斜板と略平行に延設された外傾斜板とを備えた導風筒状ガイドを有するので、走行風取り込み口を通過する走行風が導風筒状ガイドで収束して層流化しやすく、その流速を高めることができる。そのため、放熱部に対して、より流速を高めた走行風を供給することができる。その結果、走行風を放熱部により多く送り込むことによって、放熱部の冷却性能をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、鉄道車両の台枠下部オオイ体に形成する走行風取り込み口のコンパクト化を図りつつ、床下に備えた電力変換装置の放熱部の冷却性能をより均一に向上できる鉄道車両用冷却構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態に係る鉄道車両用冷却構造(第1実施例〜第4実施例)について、図面を参照しながら詳細に説明する。具体的には、本実施形態に係る鉄道車両用冷却構造(第1実施例)の構成を説明した上で、本実施例に対する走行風の測定結果を従来例と比較して説明する。次に、本実施形態に係る鉄道車両用冷却構造(第2実施例)の構成と、本実施形態に係る鉄道車両用冷却構造(第3実施例)の構成とを、第1実施例との相違点を中心に説明する。また、本実施形態に係る鉄道車両用冷却構造(第4実施例)の構成を、第2実施例との相違点を中心に説明する。
【0027】
<鉄道車両用冷却構造(第1実施例)の構成>
まず、本実施形態に係る鉄道車両用冷却構造(第1実施例)の構成について、
図1〜
図5を用いて説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る鉄道車両用冷却構造(第1実施例)の側面図を示す。
図2に、
図1に示すA−A横断面図を示す。
図3に、
図1に示すB−B縦断面図を示す。
図4に、
図1に示すC−C縦断面図を示す。
図5に、
図1に示す走行風取り込み口と傾斜導風ガイドの詳細斜視図を示す。
【0028】
図1〜
図5に示すように、第1実施例の鉄道車両用冷却構造10は、台枠下部オオイ体1を有する鉄道車両2の床下に電力変換装置3を備え、床下の側方(枕木方向の外側)へ向けて突設された電力変換装置3の放熱部4を、台枠下部オオイ体1に形成した走行風取り込み口5から車両進行方向に対して後内方へ傾斜させた傾斜導風ガイド6を介して導入した走行風SHによって、冷却する鉄道車両用冷却構造である。
【0029】
なお、本鉄道車両用冷却構造10は、車両進行方向を前後切り替えた場合にも成立するように、台枠下部オオイ体1には、それぞれ走行風取り込み口5及び当該走行風取り込み口5から車両進行方向に対して後内方へ傾斜させた傾斜導風ガイド6を、放熱部4の前後中心線CLに対して対称となるように、放熱部4の前方と後方に備えている。放熱部4の後方に位置する走行風取り込み口5及び傾斜導風ガイド6は、走行風排出口及び傾斜排風ガイドの役割を果たす。また、本鉄道車両用冷却構造10は、レール方向と平行な車両中心に対して、左右対称に形成されている。
【0030】
ここで、台枠下部オオイ体1は、レール方向で複数個に分割されて、側面視で略長方形状に形成されている。また、台枠下部オオイ体1は、それぞれ上端部11において鉄道車両2の側梁部材22とヒンジ23を介して上下方向へ回動自在に連結され、下端部12において電力変換装置3の下端から側方へ向けて延設された支持部材33と係合部材(例えば、ラッチ)13を介して着脱可能に係合されている。また、電力変換装置3は、台枠部材21の床下面212に吊り金具32を介して固定されている。また、放熱部4は、電力変換装置3の半導体素子を受熱部に取り付けて熱を受熱部で収集し、収集した熱を循環させるヒートパイプと放熱フィンからなり、多角形状の孔明き保護カバーによって保護されている。
【0031】
また、走行風取り込み口5は、台枠部材21の床面211に略平行に近接する上底部51と路面7に略平行に近接する下底部52とを有する側面視で略直角台形状に形成されている。また、上底部51の前端部aから後端部bまでの長さL1が、下底部52の前端部dから後端部cまでの長さL2より長く形成されている。また、上底部51の前端部aが、下底部52の前端部dより車両進行方向の前方に位置するように形成されている。
【0032】
そして、走行風取り込み口5における上底部51の前端部aと下底部52の前端部dとを結ぶ前脚部53は、上方から下方に向けて斜め後方へ傾斜するように形成されている。前脚部53の垂直方向に対する傾斜角βは、30°±10°程度が好ましい。一方、走行風取り込み口5における上底部51の後端部bと下底部52の後端部cとを結ぶ後脚部54は、上方から下方に向けて略垂直状に形成されている。
【0033】
走行風取り込み口5が上記形状に形成されているので、床面211に近く流速の速い走行風SH(SH1)を、路面7に近く流速の遅い走行風SH(SH2)より先行して走行風取り込み口5から傾斜導風ガイド6内へ大量に取り込むことができる。その結果、走行風取り込み口5のコンパクト化を図りつつ、傾斜導風ガイド6内へ取り込む走行風SHの絶対量を増加させることができ、床下に備えた電力変換装置3の放熱部4の冷却性能を向上させることができる。また、先行して傾斜導風ガイド6内へ取り込まれた流速の速い床面側の走行風SH1が、流速の遅い路面側の走行風SH2を吸引することによって、路面側の走行風SH2をより多く傾斜導風ガイド6内へ取り込むことができ、放熱部4をより均一に冷却させることができる。
【0034】
また、傾斜導風ガイド6は、走行風取り込み口5の前脚部53から車両進行方向に対して後内方へ傾斜して延設された傾斜板61と、走行風取り込み口5の上底部51から三角形状に内方へ延設され傾斜板61の上端と接続された上板62と、走行風取り込み口5の下底部52から三角形状に内方へ延設され傾斜板61の下端と接続された下板63とを備え、縦断面で略コ字状断面に形成されている。傾斜導風ガイド6の後端開口部64は、放熱部4の前面41に対向するように形成されている。傾斜導風ガイド6の後端開口部64と放熱部4の前面41との間には、上下方向に貫通する所定の隙間Sが設けられている。この隙間Sは、傾斜導風ガイド6の後端開口部64から流れ出る走行風SHが、周辺の走行風を吸引して、放熱部4により多くの走行風を供給する機能を有している。
【0035】
なお、車両最大速度が120km/h程度の一般車両では、特に山間部等での低速走行(例えば、30〜40km/h)における冷却性能を高める必要があり、また、かかる低速走行では、走行風取り込み口5での走行風SHの剥離現象が生じにくいことを考慮すると、傾斜板61の車両進行方向に対する傾斜角度θ1は、20〜30°程度が好ましい。
【0036】
次に、
図6を用いて、本鉄道車両用冷却構造(第1実施例)の車両速度と車速‐風速比との関係を、従来例との比較において説明する。
図6に、本発明の実施形態に係る鉄道車両用冷却構造(第1実施例)の車両速度と車速‐風速比との関係を従来例と比較したグラフを示す。ここでは、比較する従来例として、台枠下部オオイ無し(従来例1)と、横スリットを並列状に設けたルーバ付きオオイ(従来例2)と、スリットの無い通常オオイ(従来例3)とを、第1実施例と同一の鉄道車両に取り付けて実験した。また、車両速度Pは、47km/hと77km/hの2種類とし、各車両速度において、放熱部4の前面41で吸気の風速を計測し、放熱部4の後面42で排気の風速を計測した。車速‐風速比は、風速を車両速度で除した値の百分率(%)である。基準値は、電力変換装置に必要な冷却性能を担保し得る車速‐風速比として、経験則上で求めた値である。
【0037】
図6に示すように、ルーバ付きオオイ(従来例2)とスリットの無い通常オオイ(従来例3)の場合には、車両速度が47km/hと77km/hの両方において、車速‐風速比Qが、吸気側と排気側とで基準値を大幅に下まわっていた。これに対して、本実施例1では、車両速度が47km/hと77km/hの両方において、車速‐風速比Qが、排気側で基準値を僅かに下まわったものの、放熱部4の冷却性能に大きく影響する吸気側では、車速‐風速比Qが、基準値を大きく上まわり、台枠下部オオイ無し(従来例1)の排気側と同程度であり、同台枠下部オオイ無し(従来例1)の吸気側の走行風を70〜80%程度取り込むことがわかった。したがって、本実施例1の鉄道車両用冷却構造10によれば、台枠下部オオイ体を有する鉄道車両において、その外観意匠性を担保するため、台枠下部オオイ体に形成する走行風取り込み口のコンパクト化を図りつつ、床下に備えた電力変換装置に必要な冷却性能を確保できるといえる。
【0038】
<鉄道車両用冷却構造(第2実施例)の構成>
次に、本実施形態に係る鉄道車両用冷却構造(第2実施例)の構成について、
図7〜
図10を用いて説明する。
図7に、本発明の実施形態に係る鉄道車両用冷却構造(第2実施例)の側面図を示す。
図8に、
図7に示すD−D横断面図を示す。
図9に、
図7に示すE矢視図を示す。
図10に、
図7に示す走行風取り込み口と傾斜導風ガイドの詳細斜視図を示す。なお、第2実施例の構成において、前述した第1実施例との相違点を中心に説明し、共通の構成については、同一の符号を付して、その説明を原則として割愛する。
【0039】
図7〜
図10に示すように、第2実施例の鉄道車両用冷却構造10Bは、台枠下部オオイ体1Bを有する鉄道車両2の床下に電力変換装置3を備え、床下側方に向けて突設された電力変換装置3の放熱部4Bを、台枠下部オオイ体1Bに形成した走行風取り込み口5Bから車両進行方向に対して後内方へ傾斜させた傾斜導風ガイド6Bを介して導入した走行風SHによって、冷却する鉄道車両用冷却構造である。ここで、台枠下部オオイ体1B(1aB、1bB、1cB)は、レール方向で複数個に分割されて、それぞれ側面視で略長方形状に形成されている。この点は、第1実施例と共通する。
【0040】
しかし、以下に説明する放熱部4Bと、台枠下部オオイ体1Bに形成した走行風取り込み口5Bの形状と、傾斜導風ガイド6Bの形状とが、第1実施例と相違する。すなわち、第2実施例の放熱部4Bは、電力変換装置3のレール方向における前端部31と後端部34とに分離して配置され、前方の放熱部4aB(4B)と後方の放熱部4bB(4B)との間に所定の離間空間Rが形成されている。また、前方の放熱部4aB及び後方の放熱部4bBは、それぞれ同一の大きさで形成されているので、傾斜導風ガイド6Bを介して導入した走行風SHが当たる前面41Bの面積が2倍に増えて、冷却性能の向上に寄与している。
【0041】
また、前方の放熱部4aBと後方の放熱部4bBとの間には、後方の放熱部4bBに対して走行風SHを取り込む走行風取り込み口5Bと傾斜導風ガイド6Bとが、中間に位置する台枠下部オオイ体1bBに形成されている。そのため、前方の放熱部4aBと後方の放熱部4bBとを、台枠下部オオイ体1Bに形成された各走行風取り込み口5Bから各傾斜導風ガイド6Bを介して導入したそれぞれの走行風SHによって別々に冷却することができる。その結果、前方の放熱部4aBと後方の放熱部4bBとを、より同一の条件で冷却することができ、放熱部4B全体の冷却性能をより一層均一に向上できる。
【0042】
また、走行風取り込み口5Bは、台枠部材21の床面211に略平行に近接する上底部51Bと路面7に略平行に近接する下底部52Bとを有する側面視で略直角台形状に形成されている。また、上底部51Bの前端部aから後端部bまでの長さL3が、下底部52の前端部dから後端部cまでの長さL4より長く形成されている。また、上底部51の前端部aが、下底部52の前端部dより車両進行方向の前方に位置するように形成されている。
【0043】
そして、走行風取り込み口5Bにおける上底部51Bの前端部aと下底部52Bの前端部dとを結ぶ前脚部53B(53aB、53bB)は、上方から下方に向けて斜め後方へ傾斜するように形成されている。前脚部53B(53aB、53bB)は、上方から下方への途中位置eで屈曲(又は湾曲)し、斜め後方への傾斜が途中位置eで増大するように多段階で屈曲(又は湾曲)するように形成されている。例えば、上方の前脚部53aBの垂直方向に対する傾斜角β1は、30°±10°程度が好ましく、下方の前脚部53bBの垂直方向に対する傾斜角β2は、60°±10°程度が好ましい。一方、走行風取り込み口5Bにおける上底部51Bの後端部bと下底部52Bの後端部cとを結ぶ後脚部54Bは、上方から下方に向けて垂直状に形成されている。なお、前脚部53Bは、2段階で屈曲(又は湾曲)するように形成されているが、2以上の多段階で屈曲(又は湾曲)するように形成されてもよい。
【0044】
また、走行風取り込み口5Bが上記形状に形成されているので、台枠部材21の床面211に近く流速の速い走行風SH(SH1、SH2)を、路面7に近く流速の遅い走行風SH(SH3、SH4)より先行して走行風取り込み口5Bから傾斜導風ガイド6B内へ大量に取り込むことができる。その結果、走行風取り込み口5Bのコンパクト化を図りつつ、傾斜導風ガイド6B内へ取り込む走行風SHの絶対量を増加させることができ、床下に備えた電力変換装置3の放熱部4Bの冷却性能をさらに向上させることができる。
【0045】
また、前脚部53B(53aB、53bB)は、上方から下方への途中位置eで屈曲(又は湾曲)し、斜め後方への傾斜が増大するように形成されているので、上方の前脚部53aBから傾斜導風ガイド6B内へ取り込まれた流速の速い床面側の走行風SH1(SH11、SH12)の流線と、下方の前脚部53bBから遅れて傾斜導風ガイド6B内へ取り込まれた流速の遅い路面側の走行風SH2(SH21、SH22)の流線とが、互いに近接しやすくなる。走行風SH1、SH2の流線が互いに近接することによって、流速の速い面側の走行風SH1が、流速の遅い路面側の走行風SH2をより一層吸引しやすくなる。その結果、吸引されて流速が上昇した路面側の走行風SH2が、傾斜導風ガイド6B内へより多く取り込まれ、放熱部4Bを上下方向でより均一に冷却させることができる。
【0046】
また、傾斜導風ガイド6Bは、走行風取り込み口5Bの上方の前脚部53aBから車両進行方向に対して後内方へ傾斜して延設された傾斜板61Bと、走行風取り込み口5Bの上底部51Bから三角形状に内方へ延設され傾斜板61Bの上端と接続された上板62Bと、走行風取り込み口5Bの下底部52Bから三角形状に内方へ延設された下板63Bと、傾斜板61Bと下板63Bとを接続するコーナー部に形成され台枠下部オオイ体1Bを上下方向へ回動させるときに支持部材33の被係合部331と干渉するのを回避する面取り部65Bとを備え、縦断面で略コ字状断面に形成されている。面取り部65Bは、下方の前脚部53bBから車両進行方向に対して後内方へ傾斜して延設されている。傾斜板61Bの車両進行方向に対する傾斜角度θ2は、20〜30°程度が好ましい。
【0047】
また、傾斜導風ガイド6Bが上記断面形状を有することによって、放熱部4Bに対して走行風SHを供給する傾斜導風ガイド6Bの後端開口部64Bにおける開口面積をより大きく形成できる。また、走行風SHが当たる放熱部4Bの前面41Bの面積をより大きく形成できる。その結果、走行風SHを放熱部4Bにより多く送り込むことによって、放熱部4Bの冷却性能をより一層向上させることができる。
【0048】
また、傾斜導風ガイド6Bの後端開口部64Bは、放熱部4Bの前面41Bに対向するように形成されている。傾斜導風ガイド6Bの後端開口部64Bと放熱部4Bの前面41Bとの間には、上下方向に貫通する所定の隙間Sが設けられている。この隙間Sは、傾斜導風ガイド6Bの後端開口部64Bから流れ出る走行風SHが、周辺の走行風を吸引して、放熱部4Bにより多くの走行風SHを供給する機能を有している。
【0049】
なお、本鉄道車両用冷却構造10Bは、車両進行方向を前後切り替えた場合にも成立するように、台枠下部オオイ体1Bには、それぞれ走行風取り込み口5B及び当該走行風取り込み口5Bから車両進行方向に対して後内方に傾斜させた傾斜導風ガイド6Bを、放熱部4Bの前後中心線CL2に対して対称となるように、放熱部4B(4aB、4bB)の前方と後方に備えている。放熱部4Bの後方に位置する走行風取り込み口5B及び傾斜導風ガイド6Bは、走行風排出口及び傾斜排風ガイドの役割を果たす。また、本鉄道車両用冷却構造10Bは、レール方向と平行な車両中心に対して、左右対称に形成されている。
【0050】
<鉄道車両用冷却構造(第3実施例)の構成>
次に、本実施形態に係る鉄道車両用冷却構造(第3実施例)の構成について、
図11、
図12を用いて説明する。
図11に、本発明の実施形態に係る鉄道車両用冷却構造(第3実施例)の側面図を示す。
図12に、
図11に示すF−F横断面図を示す。なお、第3実施例の構成において、前述した第1実施例及び第2実施例との相違点を中心に説明し、共通の構成については、同一の符号を付して、その説明を基本的に割愛する。
【0051】
図11、
図12に示すように、第3実施例の鉄道車両用冷却構造10Cは、台枠下部オオイ体1B、1Cを有する鉄道車両2の床下に電力変換装置3を備え、床下側方に向けて突設された電力変換装置3の放熱部4Bを、台枠下部オオイ体1Bに形成した走行風取り込み口5Bから車両進行方向に対して後内方へ傾斜させた傾斜導風ガイド6Bを介して導入した走行風SHによって、冷却する鉄道車両用冷却構造である。ここで、台枠下部オオイ体1B(1aB、1cB)、1Cは、レール方向で複数個に分割されて、それぞれ側面視で略長方形状に形成されている。この点は、第1実施例と共通する。また、台枠下部オオイ体1Bに形成した走行風取り込み口5Bの形状と、傾斜導風ガイド6Bの形状は、第2実施例と共通する。また、放熱部4Bは、電力変換装置3のレール方向における前端部31と後端部34とに分離して配置され、前方の放熱部4aB(4B)と後方の放熱部4bB(4B)との間に所定の離間空間Rが形成されていることは、第2実施例と共通する。
【0052】
しかし、第3実施例では、前方の放熱部4aBと後方の放熱部4bBとの間に、後方の放熱部4bBに対して新たな走行風SHを取り込む走行風取り込み口5Bと傾斜導風ガイド6Bとが、台枠下部オオイ体1Cに形成されていない。この点が、第2実施例と相違する。そのため、台枠下部オオイ体1B、1Cを有する鉄道車両2において、走行風取り込み口5Bと傾斜導風ガイド6Bとを最小限に減らすことができる。したがって、鉄道車両2の台枠下部オオイ体1Bに形成する走行風取り込み口5Bを数量や頻度の上でコンパクト化を図りつつ、その外観意匠性を向上させることができる。
【0053】
また、第3実施例では、第2実施例のように、前方の放熱部4aBと後方の放熱部4bBとを、台枠下部オオイ体1Bに形成された各走行風取り込み口5Bから各傾斜導風ガイド6Bを介して導入したそれぞれの走行風SHによって別々に冷却することはできないが、放熱部4Bは、電力変換装置3のレール方向における前端部31と後端部34とに分離して配置され、前方の放熱部4aBと後方の放熱部4bBとの間に所定の離間空間Rが形成されているので、走行風SHの当たる放熱部4Bにおける前面41Bの面積を倍増させることによって、放熱部4B全体の冷却性能を向上させることができる。
【0054】
また、後方の放熱部4bBを冷却する走行風SHは、前方の放熱部4aBを通過する際、一旦温度が上昇し流速が低下する場合があるが、前方の放熱部4aBと後方の放熱部4bBとの間に所定の離間空間Rが形成されているので、後方の放熱部4bBに到達するまでに周囲の走行風と混流されることによって、再度温度が低下し流速が上昇する。そのため、前方の放熱部4aBの冷却性能と後方の放熱部4bBの冷却性能とを略同レベルに向上させることができ、放熱部4B全体の冷却性能を一定程度均一化して向上させることができる。
【0055】
<鉄道車両用冷却構造(第4実施例)の構成>
次に、本実施形態に係る鉄道車両用冷却構造(第4実施例)の構成について、
図13〜
図16を用いて説明する。
図13に、本発明の実施形態に係る鉄道車両用冷却構造(第4実施例)の側面図を示す。
図14に、
図13に示すG−G横断面図を示す。
図15に、
図13に示すH矢視図を示す。
図16に、
図13に示す走行風取り込み口と傾斜導風ガイドの詳細斜視図を示す。なお、第4実施例の構成において、前述した第2実施例との相違点を中心に説明し、共通の構成については、同一の符号を付して、その説明を原則として割愛する。
【0056】
図13〜
図16に示すように、第4実施例の鉄道車両用冷却構造10Dは、台枠下部オオイ体1Dを有する鉄道車両2の床下に電力変換装置3を備え、床下の側方に向けて突設された電力変換装置3の放熱部4Bを、台枠下部オオイ体1Dに形成した走行風取り込み口5Dから車両進行方向に対して後内方へ傾斜させた傾斜導風ガイド6Dを介して導入した走行風SHによって、冷却する鉄道車両用冷却構造である。ここで、台枠下部オオイ体1Dは、レール方向で複数個に分割されて、それぞれ側面視で略長方形状に形成されている。この点は、第2実施例と共通する。
【0057】
しかし、以下に説明する台枠下部オオイ体1Dに形成した走行風取り込み口5Dの形状と、傾斜導風ガイド6Dの形状とが、第2実施例と相違する。すなわち、第4実施例の走行風取り込み口5Dは、台枠部材21の床面211に略平行に近接する上底部51Dと路面7に略平行に近接する下底部52Dとを有する側面視で略台形状に形成されている。また、上底部51Dの前端部aから後端部bまでの長さL5が、下底部52Dの前端部dから後端部cまでの長さL6より長く形成されている。また、上底部51Dの前端部aが、下底部52Dの前端部dより車両進行方向の前方に位置するように形成されている。
【0058】
そして、走行風取り込み口5Dにおける上底部51Dの前端部aと下底部52Dの前端部dとを結ぶ前脚部53D(53aD、53bD)は、上方から下方に向けて斜め後方へ傾斜するように形成されている。前脚部53D(53aD、53bD)は、上方から下方への途中位置eで屈曲(又は湾曲)し、斜め後方への傾斜が途中位置eで増大するように多段階で屈曲(又は湾曲)するように形成されている。例えば、上方の前脚部53aDの垂直方向に対する傾斜角β3は、30°±10°程度が好ましく、下方の前脚部53bDの垂直方向に対する傾斜角β4は、70°±10°程度が好ましい。また、走行風取り込み口5Dにおける上底部51Dの後端部bと下底部52Dの後端部cとを結ぶ後脚部54Dは、上方から下方に向けて後方へ傾斜するように形成されている。後脚部54Dの垂直方向に対する傾斜角β5は、30°±10°程度が好ましい。なお、前脚部53Dは、2段階で屈曲(又は湾曲)するように形成されているが、2以上の多段階で屈曲(又は湾曲)するように形成されてもよい。また、後脚部54Dは、上方から下方に向けて垂直状に形成されてもよい。
【0059】
また、傾斜導風ガイド6Dは、走行風取り込み口5Dの上方の前脚部53aDから車両進行方向に対して後内方へ傾斜して延設された傾斜板61Dと、走行風取り込み口5Dの上底部51Dから三角形状に内方へ延設され傾斜板61Dの上端と接続された上板62Dと、走行風取り込み口5Dの下方の前脚部53bDから三角形状に後下方へ傾斜して延設され傾斜板61の下端と接続された下板66Dと、走行風取り込み口5Dの後脚部54Dから後内方へ傾斜板61Dと略平行に延設された外傾斜板67とを備えている。傾斜板61Dと上板62Dと下板66Dと外傾斜板67とが、矩形筒断面形状をなす導風筒状ガイド6TDを形成している。傾斜板61Dの車両進行方向に対する傾斜角度θ3は、15〜25°程度が好ましい。
【0060】
また、傾斜導風ガイド6Dは、略台形状からなる走行風取り込み口5Dの前脚部53aD(53D)から車両進行方向に対して後内方へ傾斜して延設された傾斜板61Dと、走行風取り込み口5Dの後脚部54Dから後内方へ傾斜板61Dと略平行に延設された外傾斜板67とを備えた導風筒状ガイド6TDを有するので、走行風取り込み口5Dを通過する走行風SHが導風筒状ガイド6TDで収束して層流化しやすく、その流速を高めることができる。そのため、放熱部4Bに対して、より流速を高めた走行風SHを供給することができる。その結果、走行風SHを放熱部4Bにより多く送り込むことによって、放熱部4Bの冷却性能をより一層向上させることができる。
【0061】
また、傾斜導風ガイド6Dの後端開口部64Dは、放熱部4Bの前面41Bに対向するように形成されている。傾斜導風ガイド6Dの後端開口部64Dと放熱部4Bとの間には、外傾斜板67の後端部から後側方に向けて傾斜して延設された後傾斜板69が設けられている。この後傾斜板69は、導風筒状ガイド6TDから流れ出る走行風SHが、乱流を形成させずに、周辺の走行風を吸引して、放熱部4Bにより多くの走行風SHを供給する機能を有している。
【0062】
また、矩形筒断面形状をなす導風筒状ガイド6TD内には、傾斜板61Dと外傾斜板67とを垂直状に連結する整流板68が複数個設けられている。この整流板68は、上下方向で偏平状に形成され、導風筒状ガイド6TD内を流れる走行風SHの向きを一定方向へ整える整流機能を果たすとともに、台枠下部オオイ体1Dの内部が見えにくくする遮蔽機能も有する。
【0063】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両用冷却構造10、10B、10C、10Dによれば、走行風取り込み口5、5Bは、台枠部材21の床面211に略平行に近接する上底部51、51Bと路面7に略平行に近接する下底部52、52Bとを有する略台形状に形成され、上底部51、51Bの前端部aから後端部bまでの長さL1、L3が下底部52、52Bの前端部dから後端部cまでの長さL2、L4より長く、上底部51、51Bの前端部aが下底部52、52Bの前端部dより車両進行方向の前方に位置するように形成されているので、台枠部材21の床面211に近く流速の速い走行風SHを、路面7に近く流速の遅い走行風SHより先行して走行風取り込み口5、5Bから傾斜導風ガイド6、6B内へ大量に取り込むことができる。そのため、走行風取り込み口5、5Bのコンパクト化を図りつつ、傾斜導風ガイド6、6B内へ取り込む走行風SHの絶対量を増加させることができ、床下に備えた電力変換装置3の放熱部4、4Bの冷却性能を向上させることができる。
【0064】
また、走行風取り込み口5、5Bは、台枠部材21の床面211に略平行に近接する上底部51、51Bと路面7に略平行に近接する下底部52、52Bとを有する略直角台形状に形成され、上底部51、51Bの前端部aから後端部bまでの長さL1、L3が下底部52、52Bの前端部dから後端部cまでの長さL2、L4より長く、上底部51、51Bの前端部aが下底部52、52Bの前端部dより車両進行方向の前方に位置するように形成されているので、先行して傾斜導風ガイド6、6B内へ取り込まれた流速の速い床面側の走行風SHが、流速の遅い路面側の走行風SHを吸引することができ、路面側の走行風SHをより多く傾斜導風ガイド6、6B内へ取り込むことができる。その結果、放熱部4、4Bの上部と下部とを流れる走行風の均一化を図ることができ、放熱部4、4Bをより均一に冷却させることができる。
【0065】
よって、本実施形態によれば、鉄道車両2の台枠下部オオイ体1、1Bに形成する走行風取り込み口5、5Bのコンパクト化を図りつつ、床下に備えた電力変換装置3の放熱部4、4Bの冷却性能をより均一に向上できる鉄道車両用冷却構造10、10B、10C、10Dを提供することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、放熱部4Bは、電力変換装置3のレール方向における前端部31と後端部34とに分離して配置され、前方の放熱部4aB(4B)と後方の放熱部4bB(4B)との間に所定の離間空間Rが形成されているので、走行風SHの当たる放熱部4Bにおける前面41Bの面積を倍増させることによって、放熱部4Bの冷却性能をより一層向上させることができる。なお、後方の放熱部4bBを冷却する走行風SHは、前方の放熱部4aBを通過する際、一旦温度が上昇し流速が低下する場合があるが、前方の放熱部4aBと後方の放熱部4bBとの間に所定の離間空間Rが形成されているので、後方の放熱部4bBに到達するまでに周囲の走行風と混流されることによって、再度温度が低下し流速が上昇する。そのため、前方の放熱部4aBの冷却性能と後方の放熱部4bBの冷却性能とを略同レベルに向上させることができ、放熱部4B全体の冷却性能をより一層均一に向上できる。
【0067】
また、本実施形態によれば、前方の放熱部4aBと後方の放熱部4bBとの間には、後方の放熱部4bBに対して走行風SHを取り込む走行風取り込み口5Bと傾斜導風ガイド6Bとが台枠下部オオイ体1bB(1B)に形成されているので、前方の放熱部4aBと後方の放熱部4bBとを、台枠下部オオイ体1Bに形成された各走行風取り込み口5Bから各傾斜導風ガイド6Bを介して導入したそれぞれの走行風SHによって別々に冷却することができる。そのため、前方の放熱部4aBと後方の放熱部4bBとを、より同一の条件で冷却することができ、放熱部4B全体の冷却性能をより一層均一に向上できる。
【0068】
また、本実施形態によれば、台枠下部オオイ体1Bは、上端部11Bにおいて鉄道車両2の側梁部材22とヒンジ23を介して上下方向へ回動自在に連結され、下端部12Bにおいて電力変換装置3の下端から側方へ向けて延設された支持部材33と係合部材13Bを介して着脱可能に係合され、傾斜導風ガイド6Bを構成する傾斜板61Bと下板63Bとを接続するコーナー部には、台枠下部オオイ体1Bを上下方向へ回動させるときに支持部材33の被係合部331と干渉するのを回避する面取り部65Bが形成されているので、傾斜導風ガイド6Bの後端開口部64Bにおける開口面積をより大きく形成して、走行風SHを放熱部4Bにより多く送り込むことができる。そのため、放熱部4Bの冷却性能をより一層向上させることができる。
【0069】
また、台枠下部オオイ体1Bは、上端部11Bにおいて鉄道車両2の側梁部材22とヒンジ23を介して上下方向へ回動自在に連結され、下端部12Bにおいて電力変換装置3の下端から側方へ延設された支持部材33と係合部材13Bを介して着脱可能に係合されているので、後端開口部64Bにおける開口面積を大きくすることによって傾斜導風ガイド6Bの重量が増加した台枠下部オオイ体1Bを、側梁部材22から取り外すことなく上下方向へ簡単に回動させることができる。そのため、床下に装着された電力変換装置3その他の機器に対して、容易に点検・保守等を行うことができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、傾斜導風ガイド6Dは、略台形状をなす走行風取り込み口5Dの前脚部53Dから車両進行方向に対して後内方へ傾斜して延設された傾斜板61Dと、走行風取り込み口5Dの後脚部54Dから後内方へ傾斜板61Dと略平行に延設された外傾斜板67と、を備えた導風筒状ガイド6TDを有するので、走行風取り込み口5Dを通過する走行風SHが導風筒状ガイド6TDで収束して層流化しやすく、その流速を高めることができる。そのため、放熱部4Bに対して、より流速を高めた走行風SHを供給することができる。その結果、走行風SHを放熱部4Bにより多く送り込むことによって、放熱部4Bの冷却性能をより一層向上させることができる。
【0071】
<変形例>
以上、本実施形態の鉄道車両用冷却構造10、10B、10C、10Dを詳細に説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本実施形態の第1実施例では、走行風取り込み口5の前脚部53を直線状に形成し、また、第2実施例、第3実施例、及び第4実施例では、走行風取り込み口5Bの前脚部53Bを多段階に屈曲(又は湾曲)するように形成した。しかし、これらに限定される必要はなく、例えば、走行風取り込み口5の前脚部53を円弧状とし、円弧に接する接線と垂直線に対する傾斜角が下方へ行くにしたがって徐々に増加するように形成してもよい。