【解決手段】複数連結される鉄道車両10の連結部に備えられる衝撃吸収機構200を有する鉄道車両端台枠の端梁構造において、衝撃吸収機構200は、鉄道車両10の台枠100端部に備えられる、第1端梁部材140と第2端梁部材150と衝撃吸収梁160よりなり、第1端梁部材140は、鉄道車両10の一端に備えられ、第2端梁部材150は、鉄道車両10の他端に備えられ、その前面がお互いに対向する位置に配設され、第2端梁部材150には、鉄道車両10の進行方向に縁設される衝撃吸収梁160の一端が挿入され、固定される凹部151が設けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示される様なエネルギー吸収部材やアンチクライマは、車両同士の連結部に用いる場合、効率的に機能しない虞がある。これは、エネルギー吸収部材やアンチクライマなどが車体の端梁部に溶接又はボルト締結によって取り付けられており、衝突時にはその衝撃によって前後車両のアンチクライマ同士が上下方向にズレを生じる場合があるためである。車両連結部におけるズレの発生は、車両同士が衝突する際に上下方向への拘束が無いためであると出願人は考えており、予定通りにエネルギー吸収部材が潰れず潰れ残りが発生したり、予期せぬ潰れ方をしたりする事で、確実なエネルギーの吸収が行われない事がある。
【0006】
特許文献1に示される様なエネルギー吸収部材の先端にアンチクライマを設けた構造は、衝突時に前後車両のアンチクライマ同士が当接した後に発生する上下方向のズレを抑制する効果が期待できる一方、衝突前に前後車両に生じる上下方向のズレを抑制する効果はない。車両連結部で衝突が起こる際には、前方車両は既に線路上の障害物もしくはさらに前方の車両により車体が急減速し前のめりに傾いているため、前方車両と後方車両の連結部では車端部に上下方向の大きなズレが生じると出願人は考えている。
【0007】
前後両方の車両の車端部が特許文献1に示される様なエネルギー吸収部材を持つ構造の場合、前後車両のエネルギー吸収部材と上下方向の中心とに大きくズレを生じると、それぞれのエネルギー吸収部材が車体取り付け部から折れてしまうなどの予期せぬ潰れ方をする虞がある。また、長手方向に塑性変形することによりエネルギーを吸収するエネルギー吸収部材は一般的に、潰れる前の全長をエネルギー吸収のためのストロークとして使い切ることが難しく、潰れ残りが生じる。そのため、車体妻と同一面にエネルギー吸収部材を取り付けた場合、潰れ残りの部分やアンチクライマが前後車両間に挟まるため、車両妻間距離を衝撃吸収の有効ストロークとして使いきれないという問題も考えられる。
【0008】
特許文献1に示されるような構造では、車端部を車体中央部から独立させ、車体中央部への取付け枠の下部にエネルギー吸収部材を、取付け枠の上部に妻を含む車端部の車体構造を設けることより、エネルギー吸収部材を妻面よりも車体中央寄りに取り付けているため、エネルギー吸収材の潰れ残りの部分を妻面と取付け枠の間に収めることができる。しかし、特許文献1に示されるような構造では、車端部と車両中央部の取付け部が二重構造となるため重量が大きくなる虞があり、車端部構造が独立しているため車両連結部においては車端部の客室、特に床面の構成などにも課題がある。
【0009】
そこで、本発明はこの様な課題を解決する為に、衝撃吸収部材を確実に機能させる事ができる鉄道車両端台枠の端梁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による鉄道車両端台枠の端梁構造は、以下のような特徴を有する。
【0011】
(1)複数連結される鉄道車両の連結部に備えられる衝撃吸収機構を有する鉄道車両端台枠の端梁構造において、前記衝撃吸収機構は、前記鉄道車両の台枠端部に備えられる、第1端梁と第2端梁と衝撃吸収部材よりなり、前記第1端梁は、前記鉄道車両の一端に備えられ、前記第2端梁は、前記鉄道車両の他端に備えられ、その前面がお互いに対向する位置に配設され、前記第2端梁には、前記鉄道車両の進行方向に縁設される前記衝撃吸収部材の一端が挿入され、固定される凹部が設けられること、を特徴とする。
【0012】
(2)(1)に記載の鉄道車両端台枠の端梁構造において、前記衝撃吸収機構が作動した場合には、前記第1端梁と前記衝撃吸収部材が当接した後、前記凹部に前記衝撃吸収部材が潰れて収められること、が好ましい。
【0013】
上記(1)または(2)に記載の態様によって、車両妻間距離を衝撃吸収部材の有効ストロークとして使い切ることが可能となる。これは、衝撃吸収部材の一端を第2端梁の凹部に挿入して備えていることにより、車両の衝突によって車両妻間距離が縮まった際に、衝撃吸収部材がそれに応じて潰され、凹部の中に収められることで、車両の妻構体の端面より、潰れた衝撃吸収部材が飛び出していない状態になる。例えば、車両の妻構体の端面に衝撃吸収部材が取り付けられていたら、潰れきった状態の衝撃吸収部材が妻構体の端面から飛び出した形で存在することになるため、車両妻間距離が有効に使えない懸念があるが、凹部を設けたことで、車両妻間距離を有効に使えることになる。また、凹部にガイドされて衝撃吸収部材が予定通りに潰れることが期待できる。その結果、衝撃吸収部材が衝突時に生じるエネルギーを予定通り吸収する事が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本発明の第1の実施形態について、図面を用いて説明を行う。
図1に、第1実施形態の、鉄道車両10の側面図を示す。鉄道車両10は、2両以上の編成であり、便宜的に、
図1に示す一方を前方車両10Aと、他方を後方車両10Bと呼び分けることとする。前方車両10Aと後方車両10Bの間には接続部分があり、衝撃吸収機構200が備えられる。なお、
図1では連結部分に関しては説明の都合上割愛している。鉄道車両10は、屋根構体11と、側構体12、妻構体13、床板14及び台枠100よりなり、台枠100は床板と骨部材から構成されている。台枠100に関しても、便宜上、前方車両10A側を台枠100Aとし、後方車両10B側を台枠100Bとする。
【0016】
前方車両10Aに備えられた台枠100Aには、第1端梁部材140が備えられている。後方車両10Bに備えられた台枠100Bには、第2端梁部材150、衝撃吸収梁160と、ズレ止メ板170とが備えられている。そして、前方車両10Aと後方車両10Bとが連結された際には、第1端梁部材140の正面と、ズレ止メ板170とは、対向するように配置され、衝撃吸収機構200として機能する。第1実施形態の鉄道車両10の各連結部分には、同様に衝撃吸収機構200が備えられている。
【0017】
図2に、前方車両10Aの下面後方からの斜視図を示す。
図3に、前方車両10Aの下面前方からの斜視図を示す。
図4に、第1端梁部材140の断面図を示す。
図4は
図2に示すAA断面に相当する。第1端梁部材140は、妻構体13Aの下部、台枠100Aの下面に取り付けられ、
図4に示すように、中空の第1角材140aと第2角材140bを重ねるようにして構成されている。第1角材140a及び第2角材140bは、アルミニウム合金製の押出加工によって形成される同じ断面形状の中空材で、その表面には複数の突起が設けられており、この突起は床板14に対して平行に配置され、ズレ止メ面141を形成している。ズレ止メ面141の突起は、
図4に示すようにその先端と根元の車両長手方向中心が妻構体13Aの外面である妻面13Aaと同一平面上にある。つまり、突起の先端は妻面13Aaより突出し、根元は妻面13Aaより前方車両10A側に控えた位置に来るように設計されている。
【0018】
第1端梁部材140の背面には、第1中梁110A及び第2中梁120Aが設けられ、第1中梁110Aの端面と第2中梁120Aのリブ121Aの端面は第1端梁部材140の背面に当接している。第1中梁110Aの間には、図示しない連結器などが配置されるため、第1中梁110Aは端部で前方車両10Aの外側に広がるような形状となっている。なお、連結器に関しては説明を割愛する。第1端梁部材140は、この図示しない連結器を挟んで両側に対称になるような形で配置される。
【0019】
図5に、後方車両10Bの下面前方からの斜視図を示す。
図6に、後方車両10Bの下面後方からの斜視図を示す。
図7に、第2端梁部材150の断面図を示す。
図7は
図5に示すBB断面に相当する。第2端梁部材150は、妻構体13Bの下部、後方車両10Bの台枠100Bの下面に取り付けられ、
図7に示すように凹部151が設けられている。第2端梁部材150もアルミニウム合金の押出材を用いる事が好ましい。この凹部151の底面には、衝撃吸収梁160の一端が当接する様に配置されている。
【0020】
衝撃吸収梁160は角鋼管を用いるのが好ましく、角鋼管の長手方向が鉄道車両10の進行方向と一致するように形成されている。凹部151の深さに対して衝撃吸収梁160の飛び出し量は概ね2倍程度に設計されている。つまり、衝撃吸収梁160の長さは、凹部151の深さの3倍程度となっている。また、第2端梁部材150の面位置は、
図1に示すように妻構体13Bの外面である妻面13Bb及び台枠100Bの端面よりも控えた位置に配置されており、
図8に拡大して示すように妻面13Bbと第2端梁部材150の端面の距離L4はズレ止メ板170の厚さL3と等しい。
【0021】
衝撃吸収梁160は、4本の梁材160aが束ねて形成され、衝撃吸収梁160の一端には底板160cが溶接される。ただし、梁材160aの底板160c側には衝突時に底板160c側から座屈圧潰を開始させる目的で設けられた切リ欠キ160dがある。この衝撃吸収梁160の他端にはズレ止メ板170が溶接して設けられている。ズレ止メ板170は、複数の突起のある板材であり、突起は床板14に対して平行に複数配置されている。後方車両10Bの台枠100Bにも、
図6に示すように第1中梁110Bと第2中梁120Bが備えられている。
【0022】
第1中梁110Bの端面と第2中梁120Bのリブ121Bの端面は第2端梁部材150の背面と当接する様に設けられている。なお、
図7では上下の梁材160aの長さが違う様に見えるが、これは梁材160aに設けられた切リ欠キ160dの影響によるものであり、梁材160aの全長は全て等しく同じ構造である。後述する
図8に、その切リ欠キ160dの様子が示されている。この梁材160aの切リ欠キ160dは、角鋼管の4面のうち一組の向かい合う面に設けられており、切リ欠キ160dが設けられている面が90度ずらされて束ねられている。なお、切リ欠キ160dの形状は半円形状とされているが、あくまで一例に過ぎず、この形状に限定されるものではない。
【0023】
図8に、衝撃吸収機構200に関する拡大図を示す。衝撃吸収機構200は、前方車両10Aと後方車両10Bの下部に取り付けられた一対の機構よりなり、前方車両10Aには、第1端梁部材140が備えられ、後方車両10Bには衝撃吸収梁160が挿入された第2端梁部材150が備えられる。この結果、ズレ止メ板170は、第1端梁部材140のズレ止メ面141と対向するように配置されることになる。鉄道車両10が運行される際には、
図8に示すように鉄道車両10の妻間距離Lに対して、ズレ止メ板170とズレ止メ面141は距離L1だけ離間した状態となっている。
【0024】
第1実施形態の鉄道車両端台枠の端梁構造は上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0025】
まず、第1実施形態の鉄道車両端台枠の端梁構造を採用することで、衝撃吸収部材に相当する衝撃吸収梁160を確実に機能させることが可能となる。これは、複数連結される鉄道車両10の連結部に備えられる衝撃吸収機構200を有する鉄道車両端台枠の端梁構造において、衝撃吸収機構200は、鉄道車両10の台枠100端部に備えられる、第1端梁部材140と第2端梁部材150と衝撃吸収梁160よりなり、第1端梁部材140は、鉄道車両10の一端に備えられ、第2端梁部材150は、鉄道車両10の他端に備えられ、その前面がお互いに対向する位置に配設され、第2端梁部材150には、鉄道車両10の進行方向に縁設される衝撃吸収梁160の一端が挿入され、固定される凹部151が設けられること、を特徴とするからである。
【0026】
図9に、鉄道車両10の衝突時の様子を側面図に示す。鉄道車両10が衝突したときには、前方車両10Aの第1橋梁部材40と後方車両10Bの台枠100Bの距離L2が0になるまで接近することができる。この際に、衝撃吸収梁160は潰れて第2端梁部材150の内部に設けられた凹部151の内部に収まるような形となり、ズレ止メ板170の表面が妻構体13Bの表面辺りまで後退する。このように第2端梁部材150に凹部151が設けられ内部に潰れた衝撃吸収梁160が収められる形となる事で、衝撃吸収梁160は台枠距離L2より距離L1を差し引いた距離だけ潰れて仕事をすることが可能となる。
【0027】
これがもし、第2端梁部材150に凹部151を設けていない構成である場合、衝撃吸収梁160が完全に潰れたとしても、潰れた後の衝撃吸収梁160の長さの分だけ前方車両10Aと後方車両10Bとの間の距離が残り、台枠距離L2の全てを衝撃吸収のための有効ストロークとして利用できない。その為に第2端梁部材150には凹部151が設けられており、これが潰れた衝撃吸収梁160を収納できるような大きさに設定されている。こうすることで、有効に距離L2を利用でき、衝突時に生じるエネルギーの吸収を効率的に行う事ができるようになる。この時、妻構体13Bの妻面13Bbと第2端梁部材150の間に収納することができ、ズレ止メ板170が前方車両10Aと後方車両10Bに挟まることが無い。
【0028】
また、衝撃吸収梁160の先端にズレ止メ板170が設けられ、第1端梁部材140が有するズレ止メ面141が設けられており、ズレ止メ板170にもズレ止メ面141にもそれぞれ突起が設けられていることにより、かみ合った段階でズレを抑制する効果が期待できる。また、衝撃吸収梁160に角鋼管を用いることで、必要な衝撃吸収性能を確保できる。また、ズレ止メ面141の突起の先端と根元の車両長手方向中心が、妻面13Aaおよび台枠100Aと同一平面上にある事により、前方車両10Aと後方車両10Bが上下方向にずれて、ズレ止メ板170の一部が台枠100Aと当接するような場合にも衝撃吸収梁160を期待通りに潰すことができる。
【0029】
もし、ズレ止メ面141の突起の根元と妻面13Aaが同一平面上にある場合、前方車両10Aと後方車両10Bが上下にずれてかつズレ止メ板170とズレ止メ面141の突起の先端同士が当接する状態では、ズレ止メ板170の先端と台枠100Aの間に隙間ができ、逆にズレ止メ板170の突起の先端と妻面13Aaが同一平面上にある場合、前方車両10Aと後方車両10Bが上下にずれてかつズレ止メ板170とズレ止メ面141の突起の先端と根元が当接する状態では、ズレ止メ板170の先端が台枠100Aに食い込む形になるため、どちらの場合もズレ止メ板170が大きく変形し、衝撃吸収梁160が期待通りに潰れない虞がある。
【0030】
さらに、衝撃吸収梁160が底板160c側、すなわち凹部151に挿入されている側から座屈圧潰を開始するように梁材160aに切リ欠キ160dが設けられている事により、衝撃吸収梁160の潰れた部分が凹部151にはまり込み、衝撃吸収梁160の上下方向の変位を拘束するため、衝撃吸収梁160が座屈圧潰しながら上下に折れ曲がってしまうことを防止できる。
【0031】
衝撃吸収梁160は角鋼管である梁材160aを束ねて形成されており、衝突時には梁材160aの各面板が、切リ欠キ160dがある底板160c側から座屈することにより座屈圧潰する。切リ欠キ160dがある側から開始した座屈圧潰が梁材160aの全長に達すると圧潰荷重が急激に増大し、その時の圧潰距離が衝撃吸収構造としての有効ストロークとなる。圧潰荷重が増大する時点での衝撃吸収梁160の長さは、圧潰前の長さの1/3程度である。第1実施形態では、圧潰前の衝撃吸収梁160の長さが凹部151の深さの3倍程度であるため、妻間距離Lが0になった時点で衝撃吸収梁160の全長が座屈圧潰し凹部151にちょうど収まる。これにより衝撃吸収梁160の長さに無駄がないため、重量や強度の面で最適な設計となっている。
【0032】
次に、本発明の第2の実施形態について説明を行う。第2実施形態は第1実施形態の構成とほぼ同じであるが、衝撃吸収機構の配置などの構成が異なる。その点について説明を行う。
【0033】
図10に、第2実施形態の、鉄道車両10の側面図を示す。鉄道車両は、2両以上の編成であり、便宜的に、
図10に示す一方を前方車両10Aと、他方を後方車両10Bと呼び分けることとする。前方車両10Aと後方車両10Bとの間には接続部分があり、衝撃吸収機構300が備えられる。台枠205は、便宜上、前方車両10A側を台枠205Aとし、後方車両10B側を台枠205Bとする。
【0034】
前方車両10Aに備えられた台枠205Aの一部として第1端梁部材240が備えられている。また、後方車両10Bに備えられた台枠205Bの一部として第2端梁部材250が備えられている。そして、前方車両10Aと後方車両10Bとが連結された際には、第2端梁部材250の正面と、ズレ止メ板270とは対向するように配置され、衝撃吸収機構300として機能する。第2実施形態の鉄道車両10の各連結部分には、同様に衝撃吸収機構300が備えられている。
【0035】
図11に、前方車両10Aの下面後方からの斜視図を示す。
図12に、前方車両10Aの下面前方からの斜視図を示す。
図13に、第1端梁部材240の断面図を示す。
図13は
図11に示すCC断面に相当する。第1端梁部材240は、妻構体13Aの下部、台枠205Aの側面に取り付けられ、第1端梁部材240もアルミニウム合金の押出材を用いる事が好ましい。
図13に示すように、第1端梁部材240には、2箇所に設けられた凹部241とその凹部241に備えられた衝撃吸収梁260を有する。衝撃吸収梁260は、4本の梁材260aが束ねられて形成され、衝撃吸収梁260の一端には底板260cが溶接される。
【0036】
ただし、梁材260aの底板260c側には衝突時に底板260c側から座屈圧潰を開始させるため切リ欠キ260dが設けられている。この衝撃吸収梁260の他端にはズレ止メ板270が溶接して設けられている。ズレ止メ板270は、複数の突起のある板材であり、突起は床板14に対して平行に複数配置されている。第1端梁部材240の背面には、第1中梁210A及び第2中梁220Aが設けられ、第1中梁210Aの端面と第2中梁220Aの端面は第1端梁部材240の背面に当接するよう設けられている。
【0037】
ズレ止メ板270の第1端梁部材240側端部及び第1端梁部材240のズレ止メ板270側端部は、
図13に示すように面取りがなされている。また、
図17に示すように、凹部241の高さL7は、ズレ止メ板270の高さL8よりも大きくされている。なお、
図13では上下の梁材260aの長さが違うように見える。これは
図17に示す梁材260aの切リ欠キ260dのある部分を切った断面を示しているためであり、梁材260aの全長はすべて等しく、構造も同じである。なお、梁材260aの切リ欠キ260dは角鋼管の4面のうち、一組の向かい合う面に設けられており、切リ欠キ260dが設けられている面が90度ずらされて束ねられている。なお、切リ欠キ260dの形状は半円形状とされているが、あくまで一例に過ぎず、この形状に限定されるものではない。
【0038】
衝撃吸収梁260は角形鋼管を用いるのが好ましく、鋼管の長手方向が鉄道車両の進行方向と一致するように形成されている。凹部241の深さに対して衝撃吸収梁260の飛び出し量は概ね同程度に設計されている。つまり衝撃吸収梁260の長さは、凹部241の深さの2倍程度となっている。
【0039】
図14に、後方車両10Bの下面前方からの斜視図を示す。
図15に、後方車両10Bの下面後方からの斜視図を示す。
図16に、第2端梁部材250の断面図を示す。
図16は
図15に示すDD断面に相当する。第2端梁部材250は、妻構体13Bの下部、後方車両10Bの台枠205Bの端部に取り付けられ、
図16に示すように、中空の第1角材250aと第2角材250bを重ねるようにして構成されている。第1角材250a及び第2角材250bは、アルミニウム合金製の押出加工によって形成される同じ断面形状の中空部材で、その表面には複数の突起が設けられており、この突起は床板14の上面に対して平行に配置され、ズレ止メ面251を形成している。
【0040】
第2端梁部材250の背面には、第1中梁210B及び第2中梁220Bが設けられ、第1中梁210Bの端面と第2中梁220Bの端面は第2端梁部材250の背面に当接するよう設けられている。ズレ止メ面251の突起は、その先端と根元の車両長手方向中心が、妻面13Bbと同一平面上にある。第2端梁部材250の下面には衝撃吸収梁受け280が、第2端梁部材250の上面には妻補強290が設けられており、衝撃吸収梁受け280の端部は、妻面13Bbと同一平面上にある。
【0041】
図17に、衝撃吸収機構300に関する拡大図を示す。衝撃吸収機構300は、前方車両10Aと後方車両10Bの下部に取り付けられた一対の機構よりなり、前方車両10Aには、衝撃吸収梁260が挿入された第1端梁部材240が備えられ、後方車両10Bには第2端梁部材250が備えられる。なお、第1実施形態とは衝撃吸収梁260の設けられる位置が異なり、前方車両10A側に用いられているが、鉄道車両10は一般的に進行方向を切り替えることが可能であるため、前方車両10Aと後方車両10Bのどちらに衝撃吸収梁が設けられていても本質的には同等とみなすことができる。
【0042】
この結果、ズレ止メ板270は、第2端梁部材250のズレ止メ面251と対向するように配置されることになる。鉄道車両10が運行される際には、
図17に示すように鉄道車両10の妻間距離Lに対して、ズレ止メ板270とズレ止メ面251は距離L5だけ離間した状態となっている。
【0043】
第2実施形態の鉄道車両端台枠の端梁構造は上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0044】
まず、第2実施形態の鉄道車両端台枠の端梁構造を採用することで、第1実施形態と同様に、衝撃吸収部材に相当する衝撃吸収梁260を確実に機能させることが可能となる。これは、複数連結される鉄道車両10の連結部に備えられる衝撃吸収機構300を有する鉄道車両端台枠の端梁構造において、衝撃吸収機構300は、鉄道車両10の台枠205の端部に備えられる、第1端梁部材240と第2端梁部材250と衝撃吸収梁260よりなり、第1端梁部材240は、鉄道車両10の一端に備えられ、第2端梁部材250は、鉄道車両10の他端に備えられ、その前面がお互いに対向する位置に配設され、第1端梁部材240には、鉄道車両10の進行方向に縁設される衝撃吸収梁260の一端が挿入され、固定される凹部241が設けられること、を特徴とするからである。
【0045】
図18に、鉄道車両10の衝突時の様子を側面図に示す。鉄道車両10が衝突したときには、前方車両10Aの第1端梁部材240と後方車両10Bの第2端梁部材250の距離L6が0になる。この際に、衝撃吸収梁260は潰れて第1端梁部材240の内部に設けられた凹部241の内部に収まるような形となり、ズレ止メ板270の表面が妻構体13Aの表面辺りまで後退する。このように第1端梁部材240に凹部241が設けられ内部に潰れた衝撃吸収梁260が収められる形となる事で、衝撃吸収梁260は台枠距離L6より距離L5を差し引いた距離だけ潰れて仕事をすることが可能となる。
【0046】
この時、凹部241の高さL7がズレ止メ板270の高さL8より大きいため、衝撃吸収梁260だけでなくズレ止メ板270も凹部241に収納することができる。仮に衝撃吸収梁260が座屈圧潰中に上下に変形してズレ止メ板270の上下いずれかの端部が第1端梁部材240の端部に当接した場合でも、ズレ止メ板270および第1端梁部材240の端部は面取りがなされているため、ズレ止メ板270は面取り面にガイドされて凹部241に収納される。
【0047】
ここで第1実施形態と異なる点は、第1実施形態の第2端梁部材150に設けられた凹部151同士の左右方向の距離に対して、第2実施形態の第1端梁部材240に設けられた凹部241同士の左右方向の距離が長く設定されている点である。つまり、鉄道車両10のより外側で衝撃吸収を行う構成となっている。このために衝撃吸収梁260を配置する位置を、第1実施形態のように衝撃吸収機構200の位置を下げ、前方車両10Aと後方車両10Bの連結部分にある貫通路などを避ける必要が無いため、第2実施形態では衝撃吸収機構300を台枠205と同じ高さに形成することができ、構造の単純化や軽量化が可能となる。
【0048】
一方で、鉄道車両10がカーブを曲がる際には前方車両10Aと後方車両10Bの右側又は左側端部が近接する為に、第1実施形態の衝撃吸収梁160に比べ第2実施形態の衝撃吸収梁260の長さには制約が出やすい。第1実施形態と第2実施形態はそれぞれそうした特性を見極めた上での採用が望ましい。また、第2端梁部材250の下面に衝撃吸収梁受け280が、第2端梁部材250の上面に妻補強290が設けられている事により、前方車両10Aと後方車両10Bが上下方向にずれた際にもズレ止メ板270を受け止め、衝撃吸収梁260を期待通りに潰すことができる。
【0049】
以上、本発明に係る鉄道車両端台枠の端梁構造を説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、第1実施形態の衝撃吸収機構200と第2実施形態の衝撃吸収機構300を併用することを妨げない。また、第1実施形態及び第2実施形態において、素材について言及している部分があるが、他の素材を用いた部品を用いる事を妨げない。また、第1実施形態および第2実施形態では、衝撃吸収梁160と第2端梁部材150、衝撃吸収梁260と第1端梁部材240の素材が鋼とアルミニウム合金で異なるため、衝撃吸収梁160、260の車体への取付け方法はボルトなどの機械締結となるが、同種素材で構成し溶接取付けとすることを妨げない。衝撃吸収梁160,260事態の素材及び構造についても、角鋼管を束ねたものに限定しない。
【0050】
第1実施形態の構造と第2実施形態の構造を組み合わせて用いることも可能であり、たとえば、第1実施形態において第1端梁部材140の下面に衝撃吸収梁受けを設けたり、第1端梁部材140の上の台枠100Aに補強を取り付けたりすることを排除しない。