【課題】キャップシェルの内面に、酸素吸収機能を有する一次成形体とこれを覆うように設けられている二次成形体とが設けられている容器蓋において、二次成形体の厚みムラや成形不良を回避する。
【解決手段】容器口部内面に密着するインナーリング9が設けられている頂板部5及びスカート部7を有するプラスチック製キャップシェル1と、頂板部内面のインナーリングにより囲まれた部分にインシェルモールドにより成形されたインシェルモールド成形体3とを備えた容器蓋において、インシェルモールド成形体は、頂板部内面上でのインシェルモールドにより形成された酸素吸収機能を有する一次成形体3aと、一次成形体上でのインシェルモールドにより一次成形体を覆うように且つ周縁部で頂板部内面に溶着固定されている二次成形体3bとからなり、一次成形体の二次成形体側の面には、複数のリブXが形成されていることを特徴とする。
容器口部の内面に密着するインナーリングが内面に設けられている頂板部及びスカート部を有するプラスチック製キャップシェルと、該頂板部内面のインナーリングにより囲まれた部分にインシェルモールドにより成形されたインシェルモールド成形体とを備えた容器蓋において、
前記インシェルモールド成形体は、前記頂板部の内面上でのインシェルモールドにより形成された酸素吸収機能を有する一次成形体と、該一次成形体上でのインシェルモールドにより該一次成形体を覆うように且つ周縁部で前記頂板部内面に溶着固定されている二次成形体とからなり、
前記一次成形体の二次成形体側の面には、少なくとも1つ以上の凹部又は凸部が形成されていることを特徴とする容器蓋。
前記二次成形体の前記周縁部には、外方に張り出したフランジ部が形成されており、該フランジ部において、該二次成形体は、前記頂板部内面に溶着固定されている請求項1〜3の何れかに記載の容器蓋。
前記一次成形体は、水素発生剤を含み、容器内の内容物に含まれる水分と反応して水素を発生し、この水素が酸素と反応して水が生成されることで酸素を捕捉することにより酸素吸収性を示す請求項1〜4の何れかに記載の容器蓋。
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器口部に装着されるプラスチック製キャップシェルと、該キャップシェル内でのインシェルモールドにより形成されたインシェルモールド成形体とを備えた容器蓋に関するものであり、より詳細には、インシェルモールド成形体が、酸素吸収機能を有する一次成形体と、該一次成形体上でのインシェルモールドにより成形された二次成形体とからなっている容器蓋に関する。
【0002】
従来、プラスチック製キャップは、さらなる付加価値が追及されており、例えば容器内容液の劣化防止を目的としたバリア性の向上のような機能性を要求される場合が多い。特にプラスチック製キャップは、金属製キャップと比較すると酸素吸収性が低く、このため、酸素吸収性を高めることが古くからの課題である。即ち、プラスチックボトルのような容器では、容器壁を多層構造とし、エチレンビニルアルコール等のガスバリア性の樹脂層や、被酸化性の材料が分散された酸素吸収層などを設けることによって、酸素吸収性を大きく向上させることができるのであるが、キャップの場合には、キャップ本来の開栓性や密封性を損なうことなく成形することが難しく、このような多層構造を採用することは現実的ではないため、未だ、酸素吸収性が向上したキャップは実用化されていないのが実情である。
【0003】
また、内容液充填後の容器内部のヘッドスペース中の酸素を除去するため、キャップ内面に酸素吸収剤配合樹脂の成形体を設けた種々の容器蓋も提案されている。このような容器蓋においては、キャップシェル内面側にインシェルモールドで設けられたライナー材に酸素吸収剤を配合するのが一般的である(例えば特許文献1)。
【0004】
一方、最近では、従来の方式とは全く異なる手段で酸素吸収性を向上させた容器蓋(クロージャ)が提案されている(例えば特許文献2参照)。
即ち、この容器蓋は、プラスチック製のキャップシェルの内部に設けられるライナーの内部に水素化金属などの水素発生剤を分散させたものであり、容器内の内容物に含まれる水分との接触により水素を発生させ、この水素が容器内の酸素と反応して水に転換させることにより容器内の酸素を低減するというものである。
【0005】
しかしながら、かかる容器蓋は、キャップシェルの内面に上記ライナーを密着して設けるためにインシェルモールドにより成形することが必要であると同時に、水素発生剤を含んでいるため、容器内の内容物に含まれる水分が直接上記ライナーに接触されてしまうと水素発生剤が直ちに消費されてしまい、酸素吸収性を示さなくなってしまう。特に水分の多い水溶液などを内容物とする場合には、この問題は顕著である。従って、かかるライナーは、ライナーへの水分供給をコントロールするためのカバー成形体が必要となる。
【0006】
しかるに、上記のカバー成形体は、隙間なくライナーを完全に覆うことが必要であるため、前記ライナー上でのインシェルモールドによりキャップシェル内に設けなければならない。嵌め込み等の機械的手段では、どうしても微小ではあるが隙間が形成されてしまい、この隙間から水素が漏洩してしまったり或いは内容液が侵入してしまうからである。このようにインシェルモールドによりカバー成形体を形成する場合、キャップシェルの内面に予め設けられた水素発生剤含有のインシェルモールド成形体(一次成形体)上に、カバー成形体用の樹脂溶融物を落下させ、この樹脂溶融物を成形用のパンチにより押圧して賦形し、次いで冷却することによりカバー成形体(二次成形体)を形成することとなる。
このように2段のインシェルモールドによりインシェルモールド成形体(機能性の一次成形体及びこれを覆う二次成形体)を成形する場合、例えば、落下した二次成形体の樹脂溶融物が中心からずれた状態で賦形されてしまうと、2段目のインシェルモールドにより成形されるカバー成形体(二次成形体)の厚みにムラが生じたり、二次成形体が一次成形体を完全に覆うように成形されないなどの成形不良を生じ易いという問題があった。
【0007】
また、上記のような問題は、酸素吸収剤を用いて形成されたインシェルモールド成形体を用いて酸素吸収性を持たせようとする場合においても存在する課題である。例えば、容器内容液との直接接触を避けたい仕様においては、優れた成形や接着性を有するカバー成形体(二次成形体)が必要となる場合がある。この場合には、やはり2段でインシェルモールド成形が行われる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の容器蓋の一例を示す
図1及び
図2を参照して、この容器蓋は、プラスチック製のキャップシェル1と、キャップシェル1の内部にインシェルモールドにより成形されたインシェルモールド成形体3とからなっている。
【0016】
キャップシェル1は、頂板部5と、頂板部5の周縁から降下しているスカート7とを有している。
【0017】
上記の頂板部5の内面には、インナーリング9が形成されており、インナーリング9よりも外側には、背の低いアウターリング11が形成され、さらにインナーリング9とアウターリング11との間には、偏平状の環状小突起13が設けられている。
【0018】
即ち、この容器蓋が容器口部に巻き締められると、インナーリング9とスカート7との間の空間に容器口部(図示せず)が侵入し、インナーリング9の外面が容器口部の上端部内面に密着することにより、シール性が確保されるようになっている。このため、インナーリング9は、外方側に膨らんだ形態を有している。
また、アウターリング11は、若干、内方側に傾斜しており、インナーリング9とスカート7との間に侵入した容器口部の上端部側面に密着するように形成されており、これにより、容器口部をがたつきなく、しっかりと保持し、同時にインナーリング9によるシールを補強する。
【0019】
一方、スカート7の内面には、容器口部の外面に螺子係合する螺条15が設けられており、さらに、スカート7の下端には、タンパーエビデンドバンド(TEバンド)17が破断可能なブリッジ19を介して連結されている。
このTEバンド17は、いたずら防止及び内容物の品質保証のために設けられるものであり、その内面には、内方かつ上方に延びている複数のフラップ片20が設けられている。
【0020】
即ち、螺条15を利用しての螺子係合により、容器口部がインナーリング9とスカート7及びアウターリング11との間に侵入し、これによってキャップシェル1は容器口部に固定されるが、このような閉栓状態において、TEバンド17のフラップ片20は、容器口部の外面に形成されている顎部の下側に位置している。このため、キャップシェル1を開栓方向に旋回して容器口部から取り除くとき、スカート7は、容器口部の外面に沿って上昇していくが、TEバンド17は、フラップ片20が顎部に当接するため、その上昇が阻止される。従って、TEバンド17とスカート7とを連結しているブリッジ19が破断し、この結果、TEバンド17が容器側に残った状態でキャップシェル1が容器口部から取り除かれることとなる。
このようにして、一般の消費者は、TEバンド17がキャップシェル1から分離している状態を見て、このキャップシェル1は容器口部から取り除かれたことがあるという開封履歴を認識することができ、いたずら等の不正使用を防止することができる。また、TEバンド17がキャップシェル1に連結されている場合には、このキャップシェル1は容器口部から取り外されたことがないものであることを認識でき、内容物の品質を保証することができるわけである。
【0021】
本発明において、上述したキャップシェル1は、ポリエチレンやポリプロピレンに代表されるオレフィン系樹脂を用いての射出成形や圧縮成形により成形される。
このようなオレフィン系樹脂としては、特に制限されるものではないが、特にキャップに要求される強度や耐衝撃性などの特性の点で、高密度ポリエチレンが好適に使用される。この高密度ポリエチレンは、密度が0.942g/cm
3以上と高く、分枝をほとんど持たず、結晶性の高いポリエチレンであり、機械的強度に優れているため、螺条15のように強度が要求される部分を有するキャップシェル1の成形には極めて適しており、特にアセプ殺菌充填用途のキャップとして使用されている。
また、このような高密度ポリエチレンとしては、射出成形や圧縮成形によりキャップシェル1を成形することから、所謂射出グレードのものにおいては、例えばMFR(190℃)が2.5〜12.0g/10minのものが好適に使用され、所謂圧縮グレードのものにおいては、例えばMFR(190℃)が0.8〜8.0g/10minのものが好適に使用される。
【0022】
また、本発明の容器蓋において、キャップシェル1の内部に形成されているインシェルモールド成形体3は、
図1に示されているように、頂板部5の内面のインナーリング9で囲まれた部分に形成されている。
【0023】
かかるインシェルモールド成形体3は、酸素吸収機能を有する一次成形体3aと、この一次成形体3aを覆っている二次成形体3bとからなっている。
即ち、一次成形体3aは、一段目のインシェルモールドにより成形され、これが酸素吸収機能を有しているため、容器内容物の酸化劣化を有効に防止することができる。一方、二次成形体3bは、二段目のインシェルモールドにより形成され、この二次成形体3bにより、一次成形体3aに容器内容物が直接接触することが防止される。かかるインシェルモールド成形体3は、インナーリング9よりも内側の部分でのインシェルモールド成形により成形されるため、キャップ本来の開栓性、密封性に悪影響を与えるものではない。
【0024】
このようなインシェルモールド成形体3は、2段のインシェルモールドにより成形される。
【0025】
ところで、2段のインシェルモールド成形により上記のような一次成形体3aと二次成形体3bを成形する工程を、
図3により概説する。尚、
図3では、インシェルモールド成形体3は、便宜上、先行技術文献のような平板円盤形状で示されている。
先ず、一次成形体3aを形成する樹脂もしくは樹脂組成物の溶融物A(例えば250℃程度)を、押出機等から頂板部5の内面のインナーリング9で囲まれた領域(特に中央部)に落下させる(
図3(a)参照)。
次いで、成形用パンチ21aを備えた一次成形用治具21をキャップシェル1内に配置する(
図3(b)参照)。
この状態で、成形用パンチ21aを降下させ、上記の溶融物Aを押し広げて規定形状に賦形し、冷却する(
図3(c)参照)。これにより、頂板部5の内面に密着した一次成形体3aが成形される。
【0026】
上記のようにして一次成形体3aが形成された後は、この一次成形体3a上の中心部に、二次成形体3bを形成する樹脂もしくは樹脂組成物の溶融物B(例えば250℃程度)を、同様に押出機等から落下させる(
図3(d)参照)。
次いで、成形用パンチ23aを備えた二次成形用治具23をキャップシェル1内に配置する(
図3(e)参照)。
この状態で、成形用パンチ23aを降下させ、上記の溶融物Bを押し広げて規定形状に賦形し、冷却する(
図3(f)参照)。このようにして溶融物Bを賦形することにより、一次成形体3aを覆うようにして頂板部5の内面に密着する二次成形体3bが成形され、二層構造のインシェルモールド成形体3が得られる。
【0027】
ところで、上記のような2段のインシェルモールド成形により先行技術文献のような平板円盤形状でインシェルモールド成形体3を成形する場合、一次成形体3aの表面がフラットであるため、二次成形体3bの厚みムラが生じたり、或いは二次成形体3bが一次成形体3aを完全に覆うことが出来ない、といった成形不良が生じ易いという問題がある。即ち、
図3(d)〜
図3(f)から理解されるように、厚みムラや成形不良を生じることなく、二次成形体3bを成形する場合には、一次成形体3a上に落下された溶融物Bが、成形用パンチ23aが降下してくるまで落下位置(一次成形体3a上の中心部)に留まっていることが必要である。溶融物Bが中心位置から移動し或いは流動して一次成形体3a上に偏在してしまうと、成形用パンチ23aが降下して溶融物Bを押し広げたとき、二次成形体3bの厚みムラが生じたり、或いは二次成形体3bが偏った状態で形成されてしまい、一次成形体3aを完全に覆うことができなくなったり、さらには、一次成形体3aの周縁部において、二次成形体3bと頂板部5の内面との間の密着面積が不十分となり、二次成形体3aの剥がれの接着不良などを生じ易くなってしまう。
【0028】
しかるに、本発明の容器蓋においては、上記のような二次成形体3bの成形不良、接着不良が有効に防止されている。
【0029】
図1と共に、本発明の容器蓋を製造する際の2段目のインシェルモールド成形工程での一次成形体3aの形態及び二次成形体3bが形成されているインシェルモールド成形体3の側面を拡大して示す
図4(
図3の(d)〜
図3の(f)の工程に相当)、並びに一次成形体3aの二次成形体3b側の面を示す
図5を参照して理解されるように、本発明の容器蓋の一次成形体3aの二次成形体3b側の面には、線状に延びている凸部であるリブXが複数形成されている(
図4(a)参照)。
このようなリブXは、特に
図2及び
図5から理解されるように、外周縁から中心Oに向かって延びており、それぞれ弧状平面を有しており、全体として一定の間隔で放射状(扇状)に配列されており、リブXとリブXとの間は溝状の隙間が形成されることとなり、中心部分には、円形状の平面部31が形成されている。
即ち、一次成形体3aの表面に、このようなリブXが複数形成されていると、
図4(a)に示されているように、2段目のインシェルモールドのために平面部31に落下された溶融物Bは、複数のリブXが障壁となり、周縁部に移動したり或いは流れたりする不都合が有効に防止され、平面部31内に安定に保持され、リブX間に隙間があるため、成形用パンチ23aによる押圧によって溶融物Bをムラなく押し広げることができ、この結果、2段目のインシェルモールドを有効に行うことができ、成形不良を有効に防止し且つ厚みムラのない二次成形体3bを成形することが可能となる。
【0030】
このような一次成形体3aに形成される放射状に延びているリブXの大きさや数は、隣り合うリブXの間隔dが適度な範囲となり、その間を溶融物Bがすり抜けず且つ溶融物Bが全体としてムラなく押し広げられるように、通常、中心Oを基準とする間隔dで0.3〜1.0mm程度に設定される。また、リブXの高さhは、溶融物Bの流動障壁となるように、0.3mm以上とするのがよい。
さらに、中央の円形状平面部31の径Dは、キャップシェル1の大きさ(成形する二次成形体3bの大きさ)によっても異なるが、この部分に落下された溶融物Bが、落下位置に安定に止まるように、溶融物Bの幅よりも大きい径であることが好適であり、通常、5〜8mm程度の範囲に設定される。
また、本発明においては、
図5のとおり、18個のリブXが設けられているが、上記のリブXの本数が多い程、一次成形体3aの表面積が大きくなり、その酸素吸収能を高めることができる。
【0031】
本発明において、上記のように一次成形体3aの平面部31上に落下された溶融物Bを押し広げて成形される二次成形体3bは、上記のリブX間に溶融物Bが侵入し、一次成形体3aの全表面を完全に被覆するように形成されるが、
図5に示されているように、複数のリブXの形成により生じている円形状の平面部31に対応して、二次成形体3bの表面の中心部分には凹部Yが形成されていることが好ましく、これにより、一次成形体3aをほぼ均一な厚みで被覆することができ、一次成形体3aの酸素吸収性を全体に渡って均等に発揮させることができる。この場合、この二次成形体3aの凹部Y或いは凹部Yの周縁部での厚みtは、0.3〜0.5mmの範囲にあることが好適である。
【0032】
さらに、上記のようにして形成される二次成形体3bの周縁部には、外方に突出したフランジ33が形成されていることが好適である。このようなフランジ33の形成により、二次成形体3bと頂板部5の内面との密着面積を増大させ、二次成形体3bを強固に頂板部5の内面に溶着固定することができる。
また、より強固に二次成形体3bを頂板部5の内面に融着固定するためには、フランジ33の厚みTは、例えば0.5〜1.0mm程度の厚みとすることが好ましい。これにより、フランジ33が捲れて頂板部5から剥がれるなどの不都合をより確実に防止することができ、一次成形体3aを容器内空間と確実に吸収することができ、例えば、溶着面からの容器内水分の侵入等を有効に防止することができる。
【0033】
上述したインシェルモールド成形体3において、一次成形体3aの二次成形体3b側の面に形成されるリブXの形態は、前述した
図1,2及び4に示されている形態に限定されるものではなく、種々の形態を採り得る。
例えば、リブXの間の面を中側から外周縁側に向かって低くなる傾斜面とすることもできる。この場合、リブXの高さhは、外周縁側が最も高く、中心側が最も低くなる。
【0034】
また、前述した例では、複数のリブXが放射状に配列されているが、リブXをリング状(同心円状)の形態とすることもできる。
例えば、
図6及び
図7の例では、リング状のリブX1が設けられているが、この態様では、中心部の円柱状のリブX2が設けられており、この円柱状のリブX2を取り囲むように、リング状のリブX1が配置されている。この場合には、円柱状のリブX2の上面に溶融物Bが滴下されてインシェルモールド成形が行われることとなる。この場合においても、リング状リブX1により溶融物Bの周方向への広がりが抑制される。
さらに、
図6から理解されるように、この態様においても、リブX1とリブX2とにより形成される凹凸に対応して二次成形体3bの表面に凹凸を形成し、その厚みtを均一にすることが好ましい。
【0035】
図8及び
図9に示されている例では、
図6,7と同様リング状のリブX1が、中心Oに対して同心円状に配置されている。この例では、2つのリング状リブX1が設けられている。この場合において、最も中心側に位置する最小径のリブX1の内側に、円形状の平面部31が形成されることとなる。また、
図8から理解されるように、複数のリブX1により形成される凹凸に対応して二次成形体3bの表面に凹凸を形成し、その厚みtを均一にすることが好ましい。
【0036】
上記のようにリング状のリブX1を設ける場合には、平面部31に滴下された溶融物Bがリング状のリブX1によって取り囲まれた状態となるため、リブX1の数を少なくして、パンチ23aが降下するまでの間、溶融物Bの周方向への移動や拡がりを確実に防止できるという利点がある。
【0037】
上述したリング状のリブX1の大きさや数、高、並びに円柱状リブX2の大きさや高さは、溶融物Bの周方向への拡がりが効果的に防止できるように、一次成形体3aの大きさに応じて、適宜の範囲に設定される。
【0038】
また、図示されていないが、複数の放射状リブXを配列すると同時に、これと交差するように、リング状のリブX1を同心円状に配列することもできる。
【0039】
さらに、図示されていないが、複数のリブXを直行交差するように格子状に配列することも可能である。また、複数の格子状のリブXを配列すると同時に、これと交差するように、リング状のリブXを同心円状に配列することもできる。
【0040】
複数の放射状のリブX或いはリング状のリブX1によって囲まれている中央部の円形平面部31を凹面とすることもできる。このような平面部31を凹面とすることにより、2段目のインシェルモールドに際して、溶融物Bの押し広げをより効果的に行うことができる。
上記と同様に、複数のリブXによって囲まれている中央部の円形平面部31を凹面とすることもできる。
【0041】
さらにまた、図示されていないが、複数本のリブXを同心円状に配置する代わりに、1本のリブXを螺旋状(渦巻き状)に配置することも可能であり、線状の凸部であるリブXを、線状の凹部に置き換えることも可能である。リブXの代わりに線状の凹部が設けられている場合は、前述した一次成形体3aの二次成形体3b側の面の凹凸を反転した形態となる。
【0042】
<一次成形体3a>
上述した本発明の容器蓋が有するインシェルモールド成形体3において、一次成形体3aは、先にも述べたように、酸素吸収性を発揮するものである。
【0043】
酸素を遮断するための手段としては、エチレンビニルアルコール共重合体などの酸素バリア性樹脂を用い、物理的に酸素の透過を遮断するパッシブバリアタイプと呼ばれる手段が知られているが、本発明で使用する一次成形体3aは、化学反応を利用して酸素を吸収することにより酸素を遮断するアクティブバリアタイプと呼ばれるものである。
【0044】
アクティブバリアタイプの一次成形体3aには、水素発生型と酸素吸収型とがある。
【0045】
水素発生型の一次成形体3aは、水素発生剤が機能材として樹脂中に分散されているものであり、水素発生剤が容器内の内容物に含まれる水分と反応して水素を発生し、この水素が酸素と反応して水を生成することにより、酸素が捕捉され、この結果、酸素吸収性が発揮されるものである。
【0046】
このような水素発生型の一次成形体3aは、前述した特許文献2等により公知である。
水素発生剤としては、水と反応して水素発生する金属または金属水素化物、例えば、Na,Li,K、Ca,Mg,Mg,Zn,Al等の金属、及びこれら金属の水素化物が代表的である。また、これら以外にも、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化カルシウム、テトラメチルジシロキサン、トリメチルスズ水素化物、オルガノハイドロジェンポリシロキサンなどを挙げることができ、内容物の種類に応じて適宜のものを選択して使用すればよい。
また、上記の水素発生剤が分散されるマトリックスとなる樹脂としては、水分透過性を有する樹脂、例えば、低、中、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体(SEBS)、ポリアミド、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリレート共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体などを例示することができる。特に、キャップシェル1の頂板部5の内面或いは二次成形体3bとの密着性、或いはインシェルモールド成形性の観点からオレフィン系樹脂、特にMFRが1〜10g/10min程度のポリエチレンが好ましく、インシェルモールド成形性を考慮すると、LLDPEが最も好適に使用される。
【0047】
もうひとつのアクティブバリアタイプの一次成形体3aは、一般の容器壁にも採用されているものであり、酸素吸収剤を含む酸素吸収性樹脂組成物から形成される。
酸素吸収性樹脂組成物に使用される酸素吸収剤は、特開2002−240813号等に記載されているように、酸化性重合体及び遷移金属系触媒がベース樹脂に分散されているものであり、遷移金属系触媒の作用により酸化性重合体が酸素による酸化を受け、これにより、酸素を吸収して酸素の透過を遮断する。このような酸化性重合体及び遷移金属系触媒は、上記の特開2002−240813号等に詳細に説明されているので、その詳細は省略するが、酸化性重合体の代表的な例は、第3級炭素原子を有するオレフィン系樹脂(例えばポリプロピレンやポリブテン−1等、或いはこれらの共重合体)、熱可塑性ポリエステル若しくは脂肪族ポリアミド;キシリレン基含有ポリアミド樹脂;エチレン系不飽和基含有重合体(例えばブタジエン等のポリエンから誘導される重合体);などである。また、遷移金属系触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル等の遷移金属の無機塩、有機酸塩或いは錯塩が代表的である。
上記のような酸素吸収剤は、キャップシェル1を形成するプラスチックとの密着性を確保するために、通常、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂からなるベース樹脂中に分散される。また、酸素吸収剤の消耗を抑制し、長期にわたって酸素吸収性を発現させるために、後述するガスバリア性樹脂をベース樹脂として使用したり、或いはキャップシェル1や二次成形体3bとの密着性を高めるために、無水マレイン酸で変性された酸変性オレフィン系樹脂とオレフィン系樹脂とのブレンド物に酸素吸収剤を配合して一次成形体3aを成形することもできる。このような酸素吸収剤を含む酸素吸収性樹脂組成物を容器蓋の内面に適用することも、前述した特許文献1等により公知である。
【0048】
また、上記のような酸素吸収剤の消耗を抑制するために使用されるガスバリア性樹脂としては、エチレンビニルアルコール共重合体(エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物)及び芳香族ポリアミドが代表的であり、特にエチレンビニルアルコール共重合体が好適である。
【0049】
上述した一次成形体3aの何れのタイプのものも、頂板部5内でのインシェルモールドにより、二次成形体3b側の面にリブXが形成されている形態を有している。
【0050】
<二次成形体3b>
上述した一次成形体3aを覆うように設けられる二次成形体3bは、一次成形体3aと容器内容物との接触を防止するために使用されるものであり、また、そのタイプによっては、酸素吸収性をコントロールし或いは容器内容物との接触等による酸素吸収性の低下を回避するために使用される。
例えば、前述した水素発生剤を含む一次成形体3aは、水素発生剤と容器内容物の接触を防止する必要がある。即ち、水素発生剤と容器内容物とが直接接触すると、容器内容物に含まれる水分と水素発生剤とが直ちに反応してしまい、水素発生剤の機能が直ちに失われてしまうからである。また、安全性、衛生性などの観点からも容器内容物との直接接触を防止することが望まれることもある。これは、酸素吸収剤を含む一次成形体3aについても同様である。
【0051】
このように、一次成形体3aとの直接の接触を防止し、酸素吸収性を持続して発揮させるために、二次成形体3bが設けられる。
従って、この二次成形体3bは、インシェルモールドにより成形されると同時に、一次成形体3aを完全に覆い、頂板部5の内面に融着固定されることが必要である。
【0052】
このような機能を有する二次成形体3bは、キャップシェル1の材質に応じて接着性の高い樹脂を選定する必要があり、例えば高密度ポリエチレン製のキャップシェル1の場合には、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)により形成されていることが望ましい。このLLDPEは、エチレンに少量のα−オレフィン(一般に炭素数が4以上)が共重合されたものであり、長鎖分子がほとんどなく、線形性が非常に高く、ポリマー鎖の絡みがほんどないという性質を有する。このようなLLDPEを用いて二次成形体3bを使用することにより、一次成形体3a上でのインシェルモールドにより、一次成形体3aを完全に被覆し且つ周縁部において、高密度ポリエチレン製のキャップシェル1(頂板部5の内面)に強固に融着固定することができる。分子の線形性が高いため、高密度ポリエチレンの分子鎖と絡み易く、これにより、頂板部5の内面にしっかりと融着固定される。また、結晶性が高いため、適度な水分遮断性を示す。
例えば、通常の低密度ポリエチレンは、分子鎖に枝が多く、結晶性が非常に低い。このため、インシェルモールドによる成形を行った場合、成形性が低いばかりか、非晶部が多く、水分を透過し易い。このため、一次成形体3bが水分発生剤を含むものであるとき、この一次成形体3aへの水分供給量をコントロールするという目的には不適であり、さらに、ポリオレフィン製、特に高密度ポリエチレン製のキャップシェル1との融着固定も不満足なものとなり易い。
しかるに、上記のようなLLDPEを用いた場合には、適度な水分透過性を示すため、水素発生が損なわれない程度に水分の透過を抑制し、水素発生剤の急激な消耗を抑制することができる。
尚、上記のようなLLDPEは、共重合するα−オレフィンの種類、共重合量、分子量等の調整により得られるが、通常、市販されているLLDPEの中から、これらの物性を有するLLDPEを選択して使用すればよい。例えば、このようなLLDPEは、日本ポリエチレン社により、UF240の商品名で市販されている。
【0053】
また、本発明において、上述したLLDPEは、熱可塑性エラストマーと混合して使用することが望ましい。即ち、熱可塑性エラストマーとの混合により、溶融物Bは、より低温で適度な流動性を有するものとなり、この結果、一次成形体3aや頂板部5の内面に密着し易いものとなり、さらには引張破壊呼び歪も高いものとなり、頂板部5との密着性をより向上させることができる。
このような熱可塑性エラストマーとしては、エチレンプロピレン共重合体ゴム(EPR)やエチレンブチレン共重合体ゴム(EBR)に代表されるエチレン系エラストマーを挙げることができる。
【0054】
また、上述した熱可塑性エラストマーは、例えば、形成される二次成形体3b中に30質量%以下、特に15〜30質量%の量でブレンドされていることが好適である。
【0055】
上述した構造を有する本発明の容器蓋においては、酸素吸収機能を有する一次成形体3aの二次成形体3b側の表面にリブXが形成されているため、一次成形体3a上でのインナーモールド成形により、成形不良を生じることなく且つ厚みムラの無い二次成形体3bを形成することができ、かかる二次成形体3bにより、一次成形体3aと容器内容物或いは容器内雰囲気との直接の接触を確実に防止することができ、さらに、一次成形体3bが有する酸素吸収能を長期にわたって安定に発揮することができる。