(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-94300(P2019-94300A)
(43)【公開日】2019年6月20日
(54)【発明の名称】点眼剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/704 20060101AFI20190530BHJP
A61K 31/4375 20060101ALI20190530BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20190530BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20190530BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20190530BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20190530BHJP
A61K 31/4402 20060101ALI20190530BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20190530BHJP
A61P 27/14 20060101ALI20190530BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20190530BHJP
【FI】
A61K31/704
A61K31/4375
A61K45/00
A61K9/08
A61K47/20
A61K31/352
A61K31/4402
A61P27/02
A61P27/14
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-225222(P2017-225222)
(22)【出願日】2017年11月22日
(71)【出願人】
【識別番号】599043770
【氏名又は名称】佐賀製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139262
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 和昭
(72)【発明者】
【氏名】宮田 悟
(72)【発明者】
【氏名】大石 彰
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076DD57A
4C076FF11
4C084AA22
4C084MA17
4C084MA58
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZB131
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086BC17
4C086CB22
4C086EA10
4C086GA13
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZB13
4C086ZC75
(57)【要約】
【課題】花粉症に付随する炎症、充血及びかゆみを抑える点眼剤組成物を提供する。
【解決手段】有効成分として、クロモグリク酸ナトリウム等の抗アレルギー剤、マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤、グリチルリチン酸二カリウム等のグリチルリチン酸塩及びベルベリン硫酸塩又は塩化ベルベリン等のベルベリンを含有し、好ましくは更にタウリンを含有することを特徴とする点眼剤組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、グリチルリチン酸塩及びベルベリンを含有することを特徴とする点眼剤組成物。
【請求項2】
抗アレルギー剤1質量/容量%、抗ヒスタミン剤0.01〜0.03質量/容量%、グリチルリチン酸塩0.1〜0.3質量/容量%及びベルベリン0.005〜0.03質量/容量%を含有することを特徴とする請求項1に記載の点眼剤組成物。
【請求項3】
更にタウリンを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の点眼剤組成物。
【請求項4】
タウリン0.005〜1質量/容量%を含有することを特徴とする請求項3に記載の点眼剤組成物。
【請求項5】
抗アレルギー剤が、クロモグリク酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の点眼剤組成物。
【請求項6】
抗ヒスタミン剤が、マレイン酸クロルフェニラミンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の点眼剤組成物。
【請求項7】
グリチルリチン酸塩が、グリチルリチン酸二カリウムであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の点眼剤組成物。
【請求項8】
ベルベリンが、ベルベリン硫酸塩又は塩化ベルベリンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の点眼剤組成物。
【請求項9】
クロモグリク酸ナトリウム1質量/容量%、マレイン酸クロルフェニラミン0.01〜0.03質量/容量%、グリチルリチン酸二カリウム0.1〜0.3質量/容量%及びベルベリン0.005〜0.03質量/容量%を含有することを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の点眼剤組成物。
【請求項10】
pHが5〜7の範囲にあることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の点眼剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点眼剤の有効成分として抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤及びベルベリンを含有し、アレルギーに起因する充血及び痒み等の諸症状の抑制に優れた点眼剤組成物及び点眼剤に関する。
【背景技術】
【0002】
薬局及び薬店で販売される医薬品(いわゆるOTC)医薬品のうち、承認基準薬と称されるものについては、「医薬品製造指針別冊 一般用医薬品製造(輸入)承認基準 2000年版(株式会社じほう)」(以下、「承認基準」と略す。)に規定された配合ルールに従って、有効成分が配合されたものである。その中で、眼科用薬の「一般点眼薬」に分類されるものについては、A欄として、エピネフリン又はその塩、塩酸エフェドリン、塩酸テトラヒドロゾリン、ナファゾリン又はその塩、塩酸フェニレフリン及びdl−塩酸メチルエフェドリンから選ばれるうちの1種以下、B欄として、メチル硫酸ネオスチグミン、C欄として、ε−アミノカプロン酸、アラントイン、ベルベリン又はその塩、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、塩化リゾチームから選ばれるうちの3種以下、D欄として、塩酸ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミンマレイン酸塩から選ばれるうちの1種以下、E欄として、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン(ビタミンB12)、レチノール類、ピリドキシン塩酸塩、パントテン酸類(パンテノールも含む)、酢酸トコフェロールから選ばれるうちの3種以下、F欄として、L−アスパラギン酸塩類、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、コンドロイチン硫酸エステルナトリウムから選ばれるうちの3種以下が、有効成分として配合できることが記載されている。
【0003】
これらの成分の配合で承認を受けた点眼剤以外に、医療用の医薬品を一般用に転用した、いわゆるスイッチOTC医薬品があり、クロモグリク酸ナトリウム、マレイン酸クロルフェニラミンを有効成分とする抗アレルギー用点眼剤が1997年に上市された(商品名:エージーアイズ)。クロモグリク酸ナトリウムとマレイン酸クロルフェニラミンインとの組み合わせで処方された点眼剤については多数の特許出願がなされている。
【0004】
具体的には、特許文献1においては、クロモグリク酸ナトリウムに抗ヒスタミン剤及び血管収縮剤を含有してアレルギー症状を早期に改善できることが開示されている。また、特許文献2には、クロモグリク酸ナトリウム及び抗ヒスタミン剤にメントールを含有し、クロモグリク酸ナトリウムによる点眼時の刺激性を緩和するとともに鎮痒効果を強化できる旨記載されている。なお、クロモグリク酸ナトリウムを主成分として含有した点眼剤は、クロモグリク酸ナトリウムを2質量/容量%含有した点眼剤が医療用に、またクロモグリク酸ナトリウム1質量/容量%、マレイン酸クロルフェニラミン0.015質量/容量%含有を含有した点眼剤が一般用に市販されているにすぎない。
【0005】
また、特許文献3には、抗アレルギー剤と抗ヒスタミン剤とを含有する点眼剤組成物が開示されており、単独含有より優れた効果を有する旨記載されている。
【0006】
近年、このスイッチOTCされたアレルギー用点眼剤に、更に上記配合ルールに収載された有効成分を追加配合して、有効性を強化した製品が上市されている。クロモグリク酸ナトリウムとマレイン酸クロルフェニラミンとの組み合わせで処方された点眼剤については、多数の特許出願がなされている。
【0007】
具体的には、特許文献4には、血管収縮剤を追加配合したもの、特許文献5には、アズレンスルホン酸を追加配合したもの、特許文献6には、プラノプロフェンを追加配合したもの、特許文献7には、コンドロイチン硫酸エステルナトリウムを追加配合したものが、それぞれ開示されている。
【0008】
しかしながら、承認基準に記載されている成分を追加成分として配合した場合、抗アレルギー効果は限定的で必ずしも十分とは言えなかった。また抗アレルギー剤を含有してなる点眼剤において、例えばクロモグリク酸ナトリウムを含有する点眼剤は、クロモグリク酸ナトリウムに由来すると考えられる点眼時の刺激感が報告されている。また、クロモグリク酸ナトリウムの抗アレルギー作用は緩慢であり、抗アレルギー作用を補充する佐薬成分として、抗炎症剤であるグリチルリチン酸ジカリウムが含有された点眼剤に関する特許出願がなされており(特許文献8)、一般用医薬品として市販されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−241278号公報
【特許文献2】国際公開第98/13040号
【特許文献3】特開平4−9339号公報
【特許文献4】特開平6−336429号公報
【特許文献5】特開2004−352667号公報
【特許文献6】特開2005−239683号公報
【特許文献7】特開2006−151828号公報
【特許文献8】特開2002−114686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のような抗アレルギー作用を有する点眼剤が知られてはいるが、従来のものはいずれも、クロモグリク酸ナトリウム、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤等の組合せであり、生薬由来成分であるベルベリンをある一定の割合で含有した点眼剤についての報告は未だなされていない。
【0011】
ましてや、クロモグリク酸ナトリウム、マレイン酸クロルフェニラミン及びグリチルリチン酸二カリウムを含んでなる3成分にベルベリンをある一定量含有した点眼剤及び更にタウリンをある一定の割合で含有した点眼剤は作られていない。また、クロモグリク酸ナトリウムとマレイン酸クロルフェニラミンを含有した点眼剤は、抗アレルギー作用が弱く、抗炎症作用がないため、花粉症等による炎症由来の目の痒み或いは目の充血を十分に抑制するとは言えない。そのため、花粉症由来の諸症状、すなわち目の炎症及び充血を効果的に抑える点眼剤の開発が強く望まれている。
【0012】
また、それらの組み合わせ、又は添加物との組み合わせによっては、沈殿の生成、成分の不安定化等の問題が生じることがある。例えば、特開2004−59479号公報では、承認基準「一般点眼薬」C項のベルベリン又はその塩、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウムを組み合わせることにより、沈殿が生じるという問題の発生が指摘されている。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、花粉症に付随する目の炎症、充血、分泌液等の抑制及びかゆみなどを抑える新規な点眼剤を提供することを目的とする。また、本発明は、製剤的に長期間保存しても沈殿等のない安定な点眼剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、抗炎症作用を有するグリチルリチン酸塩と抗アレルギー作用を有する抗アレルギー剤及び抗ヒスタミン剤の3成分を含有してなる製剤に、更にベルベリンを処方することによって、モルモットを用いた抗アレルギー作用の動物試験モデルにおけるヒスタミン誘発性の結膜充血及び結膜浮腫が抑制されること、マウスを用いたサブスタンスP誘発性の掻痒モデルにおける痒みを抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明は、有効成分として、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、グリチルリチン酸塩及びベルベリンを含有することを特徴とする点眼剤組成物を提供することにより、上記課題を解決するものである。
【0016】
本発明に係る点眼剤組成物は、抗アレルギー剤1質量/容量%、抗ヒスタミン剤0.01〜0.03質量/容量%、グリチルリチン酸塩0.1〜0.3質量/容量%及びベルベリン0.005〜0.03質量/容量%を含有するものであってもよい。
【0017】
本発明に係る点眼剤組成物は、更にタウリンを含有していてもよい。
【0018】
本発明に係る点眼剤組成物は、タウリン0.005〜1質量/容量%を含有していてもよい。
【0019】
本発明に係る点眼剤組成物において、抗アレルギー剤が、クロモグリク酸ナトリウムであってもよい。
【0020】
本発明に係る点眼剤組成物において、抗ヒスタミン剤が、マレイン酸クロルフェニラミンであってもよい。
【0021】
本発明に係る点眼剤組成物において、グリチルリチン酸塩が、グリチルリチン酸二カリウムであってもよい。
【0022】
本発明に係る点眼剤組成物において、ベルベリンが、ベルベリン硫酸塩又は塩化ベルベリンであってもよい。
【0023】
本発明に係る点眼剤組成物は、クロモグリク酸ナトリウム1質量/容量%、マレイン酸クロルフェニラミン0.01〜0.03質量/容量%、グリチルリチン酸二カリウム0.1〜0.3質量/容量%及びベルベリン0.005〜0.03質量/容量%を含有するものであってもよい。
【0024】
本発明に係る点眼剤組成物において、pHが5〜7の範囲にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明による点眼剤組成物は、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、グリチルリチン酸塩及びベルベリンを含有することを特徴とする安全性の高い点眼剤組成物であり、しかも花粉症に伴うアレルギー症状、角膜充血及び目の痒み等の症状に対して高い治療効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施例1、2、3、11に係る点眼剤組成物の、ヒスタミン誘発性の角膜炎に対する薬理効果を示すグラフである。
【
図2】実施例1、2、3、11に係る点眼剤組成物の、サブスタンスP誘発性の掻痒行動の抑制効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一実施の形態に係る点眼剤組成物(以下、「点眼剤組成物」と略称する。)は、抗アレルギー剤及び抗ヒスタミン剤に加えて、抗炎症剤であるグリチルリチン酸塩を含有しているため、花粉症に付随するアレルギー症状のみならず、その際の目の充血をも効果的に抑制することができる。点眼剤組成物は、更に、抗炎症作用及び抗菌作用を有するベルベリンを含有しているため、結膜の炎症及び菌の殺菌にも効果がある。更に、点眼剤組成物にタウリンを配合することで、目に栄養を与え、細胞の代謝を促して、炎症による細胞損傷に起因する、アレルギーの付随疾患に対しても効果的である。
【0028】
点眼剤組成物の有効成分である抗アレルギー剤としては、既に市販されているもの或いは臨床試験中のものを用いることができ、例えば、クロモグリク酸ナトリウム、アンレキサノクス、フマル酸ケトチフェン、ベミロラストカリウム、塩酸アゼラスチン、トラニラスト、イブジラスト、タザノラスト、ペミノラスト、メキタジン、テルノフェナジン、オキサトミド等の中から適宜選択して用いることができるが、特に、クロモグリク酸ナトリウムが最適である。
【0029】
また、抗ヒスタミン剤としては、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン等の中から適宜選択して用いることができるが、特にマレイン酸クロルフェニラミンが最適である。
【0030】
さらに、抗炎症作用を有するグリチルリチン酸塩は、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウムの中から適宜選択して用いることができるが、特に、生薬由来成分として一般用点眼剤として汎用されているグリチルリチン酸二カリウムが抗炎症作用並びに安全性の点から最適である。ベルベリンは、ベルベリン硫酸塩、塩化ベルベリンの中から適宜選択して用いることができる。また、タウリンを、一般用医薬品の配合ルールにしたがって、所定量配合することができる。
【0031】
点眼剤組成物の全体量を100質量/容量%に対し、有効成分として抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤及びグリチルリチン酸塩を含有することが好ましい。また、抗アレルギー剤1質量/容量%に対して、抗ヒスタミン剤0.01〜0.02質量/容量%、グリチルリチン酸塩を0.1〜0.25質量/容量%を含有し、更に、ベルベリン0.005〜0.02質量/容量%及び/又はタウリンを0.05〜0.7質量/容量%の割合で配合すると、点眼剤組成物として特に好適である。
【0032】
なお、グリチルリチン酸塩の含有量が0.1質量/容量%を下回ると、薬理効果の発現が期待されないので、薬効発現性等の観点から、グリチルリチン酸塩は、0.1質量/容量%以上含有されていることが好ましい。また、グリチルリチン酸塩の含有量が0.3質量/容量%以上になると副作用が懸念されるので慎重を期す必要があり、好ましくは0.25質量/容量%以内であることが、安全性の点からも望ましい。
【0033】
また、抗アレルギー剤としてクロモグリク酸ナトリウムを用いる場合、クロモグリク酸ナトリウム1質量/容量%に対して、マレイン酸クロルフェニラミンの含有量は、0.01〜0.03質量/容量%であることが好ましく、0.01〜0.02質量/容量%であることがより好ましい。グリチルリチン酸二カリウムの含有量は、0.1〜0.3質量/容量%であることが好ましく、0.2〜0.25質量/容量%であることがより好ましい。ベルベリンの含有量は、0.005〜0.03質量/容量%であることが好ましく、点眼後に口の中で感じされる苦みを低減するために0.01〜0.02%質量/容量%であることがより好ましい。タウリンが含有される場合、好ましい含有量は、0.05〜1質量/容量%である。点眼剤組成物のpHは、5〜7であることが好ましく、5.5〜6.5であることが好ましい。以上の組み合わせの点眼剤組成物は、長期保存しても沈殿がなく、安定な点眼剤となり得る。
【0034】
以上の成分に加えて、点眼剤に含有できる公知又は周知の賦形剤並びに有効成分を含有することができる。それらの例としては炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム等の無機塩類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース等のアルコール類、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸塩等のアミノ酸類、酢酸トコフェロール、塩酸ピリドキシン、レチノール等のビタミン類、塩酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドゾリン等の充血除去剤等の有効成分を含有することが可能である。
【0035】
また、点眼剤組成物は、上述の成分以外に、通常点眼剤に使用される任意の添加剤を含有していてもよい。それらの添加剤の例としては、l−メントール、カンフル、ボルネオール等の清涼化剤、水酸化ナトリウム、塩酸等のpH調節剤、グリセリン、プロピレングリコール等の等張化剤、ヒドロキシエチルセルロース等の粘稠剤、エタノール、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシ(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の溶解補助剤、亜硫酸水素ナトリウム、エデト酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の安定化剤、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン等の防腐剤及び滅菌水等を、通常点眼剤として使用される量で含有していてもよい。
【0036】
また、承認基準「一般点眼薬」に有効成分として記載されていないが、テルペノイド(特に、メントール類、ボルネオール類、カンフル類)は、点眼時に清涼感を与え、この使用感がユーザーに与える効果は大きいため、特に目の疲れ、かゆみを解消するための点眼液に欠かせない添加剤となっている。そのため、OTC医薬品の点眼液の殆どの製品には、添加物としてテルペノイドが配合されている。
【0037】
点眼剤組成物は、任意の製造方法を用いて製造することができる。例えば、有効成分及び添加剤成分を滅菌精製水に溶解した溶液をメンブランフィルターにて除菌ろ過し、点眼剤容器に充填することにより製造することができる。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例及び試験例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
点眼剤組成物の調製
下記の実施例1〜11の処方に従い、点眼剤組成物を調製した。なお、点眼剤組成物のpHは、実施例1、2においては6.16、実施例3においては5.7、他においては6.0であった。
【0040】
実施例1
クロモグリク酸ナトリウム 1000mg
マレイン酸クロルフェニラミン 15mg
グリチルリチン酸二カリウム 125mg
ベルベリン硫酸塩 10mg
ホウ砂 19mg
カンフル 10mg
d−ボルネオール 20mg
ホウ酸 1000mg
エデト酸ナトリウム 10mg
エタノール 0.55mL
イプシロンアミノカプロン酸 500mg
パラオキシ安息香酸メチル 16mg
パラオキシ安息香酸プロピル 8mg
滅菌精製水 適 量
全量 100mL
【0041】
実施例2
クロモグリク酸ナトリウム 1000mg
マレイン酸クロルフェニラミン 15mg
グリチルリチン酸二カリウム 125mg
ベルベリン硫酸塩 10mg
タウリン 500mg
ホウ砂 19mg
カンフル 10mg
d−ボルネオール 20mg
ホウ酸 1000mg
エデト酸ナトリウム 10mg
エタノール 0.55mL
イプシロンアミノカプロン酸 500mg
パラオキシ安息香酸メチル 16mg
パラオキシ安息香酸プロピル 8mg
滅菌精製水 適 量
全量 100mL
【0042】
実施例3
クロモグリク酸ナトリウム 1000mg
マレイン酸クロルフェニラミン 15mg
グリチルリチン酸二カリウム 125mg
ベルベリン硫酸塩 10mg
タウリン 500mg
ピリドキシン塩酸塩 50mg
ホウ砂 19mg
カンフル 10mg
d−ボルネオール 20mg
ホウ酸 1000mg
エデト酸ナトリウム 10mg
エタノール 0.55mL
イプシロンアミノカプロン酸 500mg
パラオキシ安息香酸メチル 16mg
パラオキシ安息香酸プロピル 8mg
滅菌精製水 適 量
全量 100mL
【0043】
実施例4
クロモグリク酸ナトリウム 1000mg
マレイン酸クロルフェニラミン 30mg
グリチルリチン酸二カリウム 125mg
ベルベリン硫酸塩 10mg
タウリン 300mg
ホウ砂 19mg
カンフル 10mg
d−ボルネオール 20mg
ホウ酸 1000mg
エデト酸ナトリウム 10mg
エタノール 0.55mL
イプシロンアミノカプロン酸 500mg
パラオキシ安息香酸メチル 16mg
パラオキシ安息香酸プロピル 8mg
滅菌精製水 適 量
全量 100mL
【0044】
実施例5
クロモグリク酸ナトリウム 1000mg
マレイン酸クロルフェニラミン 15mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
ベルベリン硫酸塩 20mg
タウリン 1000mg
ホウ砂 19mg
カンフル 10mg
d−ボルネオール 20mg
ホウ酸 1000mg
エデト酸ナトリウム 10mg
エタノール 0.55mL
イプシロンアミノカプロン酸 500mg
パラオキシ安息香酸メチル 16mg
パラオキシ安息香酸プロピル 8mg
滅菌精製水 適 量
全量 100mL
【0045】
実施例6
クロモグリク酸ナトリウム 1000mg
マレイン酸クロルフェニラミン 15mg
グリチルリチン酸二カリウム 125mg
ベルベリン硫酸塩 20mg
L−アスパラギン酸カリウム 1000mg
タウリン 100mg
ホウ砂 19mg
カンフル 10mg
d−ボルネオール 20mg
ホウ酸 1000mg
エデト酸ナトリウム 10mg
エタノール 0.55mL
イプシロンアミノカプロン酸 500mg
パラオキシ安息香酸メチル 16mg
パラオキシ安息香酸プロピル 8mg
滅菌精製水 適 量
全量 100mL
【0046】
実施例7
クロモグリク酸ナトリウム 1000mg
マレイン酸クロルフェニラミン 15mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
ベルベリン硫酸塩 10mg
アラントイン 100mg
タウリン 500mg
ホウ砂 19mg
メントール 10mg
カンフル 10mg
d−ボルネオール 20mg
ホウ酸 1000mg
エデト酸ナトリウム 10mg
エタノール 0.55mL
イプシロンアミノカプロン酸 500mg
パラオキシ安息香酸メチル 16mg
パラオキシ安息香酸プロピル 8mg
滅菌精製水 適 量
全量 100mL
【0047】
実施例8
クロモグリク酸ナトリウム 1000mg
マレイン酸クロルフェニラミン 15mg
グリチルリチン酸二カリウム 125mg
塩化ベルベリン 10mg
パンテノール 50mg
タウリン 100mg
ホウ砂 19mg
カンフル 10mg
d−ボルネオール 20mg
ホウ酸 1000mg
エデト酸ナトリウム 10mg
エタノール 0.55mL
イプシロンアミノカプロン酸 500mg
パラオキシ安息香酸メチル 16mg
パラオキシ安息香酸プロピル 8mg
滅菌精製水 適 量
全量 100mL
【0048】
実施例9
クロモグリク酸ナトリウム 1000mg
マレイン酸クロルフェニラミン 15mg
グリチルリチン酸二カリウム 125mg
ベルベリン硫酸塩 10mg
シアノコバラミン 10mg
タウリン 200mg
ホウ砂 19mg
カンフル 10mg
d−ボルネオール 20mg
ホウ酸 1000mg
エデト酸ナトリウム 10mg
エタノール 0.55mL
イプシロンアミノカプロン酸 500mg
パラオキシ安息香酸メチル 16mg
パラオキシ安息香酸プロピル 8mg
滅菌精製水 適 量
全量 100mL
【0049】
実施例10
クロモグリク酸ナトリウム 1000mg
マレイン酸クロルフェニラミン 15mg
グリチルリチン酸二カリウム 125mg
ベルベリン硫酸塩 15mg
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 100mg
タウリン 100mg
ホウ砂 19mg
カンフル 10mg
d−ボルネオール 20mg
ホウ酸 1000mg
エデト酸ナトリウム 10mg
エタノール 0.55mL
イプシロンアミノカプロン酸 500mg
パラオキシ安息香酸メチル 16mg
パラオキシ安息香酸プロピル 8mg
滅菌精製水 適 量
全量 100mL
【0050】
実施例11
クロモグリク酸ナトリウム 1000mg
マレイン酸クロルフェニラミン 15mg
グリチルリチン酸二カリウム 125mg
ホウ砂 19mg
カンフル 10mg
d−ボルネオール 20mg
ホウ酸 1000mg
エデト酸ナトリウム 10mg
エタノール 0.55mL
イプシロンアミノカプロン酸 500mg
パラオキシ安息香酸メチル 16mg
パラオキシ安息香酸プロピル 8mg
滅菌精製水 適 量
全量 100mL
【0051】
〔試験例1:ヒスタミン惹起によるモルモット結膜炎症状の改善効果〕
点眼剤におけるベルベリン及び/又はタウリンの含有効果を試験するため、実施例1、2、3及び11の点眼剤について薬効試験を実施した。
【0052】
(試験方法)
ヒスタミン含有生理食塩液20μLを動物に点眼することで結膜炎を惹起する。結膜炎症状をヒスタミン含有生理食塩液点眼惹起5、15、20分後に観察し、スコアをつける。各スコアは下記の基準に従う。
【0053】
(結膜炎症状の定量化のためのスコア)
0:無症状
1:軽度の充血を示すもの
2:強度の充血を示すもの
3:充血に軽度〜中等度の浮腫が加わったもの
4:著明な浮腫が生じたもの
(参考文献:「実験的アレルギー性結膜炎モデルにおける新規点眼薬SMA−AG1の有効性」、橋本 敦他著、「薬理と治療」(ライフサイエンス出版)、第27巻(1999年)、第11号、1717−1727ページ)
【0054】
試験結果を下記の表1及び
図1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
対照との比較において、実施例1〜3及び11の点眼剤組成物は、いずれもヒスタミン誘発性角膜炎に対する抑制効果を示すことが見出された。更に、実施例1〜3の点眼剤組成物は、実施例11の点眼剤に対してスコアが小さく、タウリンの併用がヒスタミン誘発角膜炎に対する抑制効果を向上させることがわかった。
【0057】
〔試験例2:サブスタンスP誘発掻痒試験〕
実施例1〜3及び11の点眼剤組成物について、サブスタンスP誘発掻痒試験を実施した。
【0058】
(試験方法)
2%のイソフルラン吸入麻酔下で背部皮膚を刈毛後、マウスの左右後肢皮下に掻痒行動測定用マグネットを埋め込む。動物を馴化した後、被験物質を投与し、投与後30分後、2%のイソフルラン吸入麻酔下で100nmol/50μLサブスタンスP含有PBS液を結膜に50μL投与し、掻痒行動を惹起する。掻痒行動は、掻痒行動システム(NS−SCT16、MicroAct for scratching Test version)を用いて左右後肢による掻痒行動を測定する。解析時間はサブスタンスP投与直後から30分間とする。
【0059】
試験結果を下記の表2及び
図2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例1〜3及び11の点眼剤組成物は、いずれもサブスタンスPに誘発される掻痒行動に対する抑制効果を示すことが見出された。更に、タウリンを含有する実施例1〜3の点眼剤は、実施例11の点眼剤に比べて掻痒行動の回数が少なく、サブスタンスP誘発掻痒に効果が高いことが示された。