【解決手段】下記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位および下記式(c)で表される化合物から導かれる構成単位を含む共重合体と、溶媒とを含む滑油性表面処理組成物であって、共重合体中、式(a)で表される化合物から導かれる構成単位の質量aの、式(a)で表される化合物から導かれる構成単位および式(c)で表される化合物から導かれる構成単位の合計質量a+cに対する質量百分率が33質量%以上である滑油性表面処理組成物、その滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を表面の少なくとも一部に有する部材ならびにその部材が用いられた設備。
下記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位および下記式(c)で表される化合物から導かれる構成単位を含む共重合体と、溶媒とを含む滑油性表面処理組成物であって、前記共重合体中、前記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位の質量aの、前記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位および前記式(c)で表される化合物から導かれる構成単位の合計質量a+cに対する質量百分率が33質量%以上である滑油性表面処理組成物。
CH2=CRa1−COO−Rf1 (a)
CH2=CRc1−Q1−Y (c)
式(a)中、
Ra1:水素原子またはメチル基、
Rf1:主鎖の炭素数が2〜3であり、末端基がCF3であるポリフルオロアルキル基。
式(c)中、
Rc1:水素原子またはメチル基、
Q1:単結合または2価の連結基、
Y:数平均分子量(Mn)が1000から30000のオルガノポリシロキサン基。
前記共重合体中、前記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位、前記式(b)で表される化合物から導かれる構成単位および前記式(c)で表される化合物から導かれる構成単位の合計質量が、前記共重合体の全質量の40質量%以上である、請求項3に記載の滑油性表面処理組成物。
前記共重合体中、前記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位および前記式(b)で表される化合物から導かれる構成単位の合計質量が、前記共重合体の全質量の50質量%以上である、請求項3または4に記載の滑油性表面処理組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において、「表面処理組成物」を「表面処理剤」と称する場合がある。
【0016】
また、本発明において、式(x)で表される化合物を「化合物(x)」という場合がある。例えば、化合物(a)、化合物(b)および化合物(a1)は、それぞれ、式(a)で表される化合物、式(b)で表される化合物および式(a1)で表される化合物を意味する。
【0017】
また、本発明において、式(x)で表される化合物から導かれる構成単位を構成単位(x)という場合がある。例えば、構成単位(a)、構成単位(b)および構成単位(a1)は、それぞれ、式(a)で表される化合物から導かれる構成単位、式(b)で表される化合物から導かれる構成単位、および式(a1)で表される化合物から導かれる構成単位を意味する。
【0018】
さらに、本発明において、「〜」を用いて表される範囲はその両端を含む範囲を意味する。例えば、「A、B、C、D、E、F、G、H」というアルファベット順に並べられた文字列に対して「B〜F」は「B」から「F」までの文字、すなわち、「B、C、D、E、F」を表す。
【0019】
また、本発明において、「アレーン」は単環式または多環式の芳香族炭化水素を意味し、「アリール基」はアレーンから1個の環炭素原子の1個の水素原子を除去することにより生成される1価基を意味し、「アリーレン基」はアレーンから2個の環炭素原子のそれぞれ1個の水素原子を除去することにより生成される2価基を意味する。
【0020】
また、本発明において、「ヘテロアレーン」は、アレーンに含まれるメチン(−CH=)および/またはビニレン(−CH=CH−)を1個以上、それぞれ2価または3価のヘテロ原子に置き換えることによって形式的に誘導され、芳香族系としての連続したπ電子系の性質と、ヒュッケル則に対応した面外π電子数が保たれているヘテロ環式化合物をいい、「ヘテロアリール基」は、ヘテロアレーンの任意の1個の環原子から1個の水素原子を除去することにより生成される1価基をいい、「ヘテロアリーレン」は、ヘテロアレーンの任意の2個の環原子からそれぞれ1個の水素原子を除去することにより生成される2価基をいう。
【0021】
また、本発明において、「2価脂環基」は、飽和もしくは不飽和の脂環式化合物から2個の環炭素原子のそれぞれ1個の水素原子を除去することにより生成される2価の基をいう。
【0022】
また、本発明において、「アルキレン基」は「アルカンジイル基」を意味し、「アルケニレン基」は「アルケンジイル基」を意味し、「アルキニレン基」は「アルキンジイル基」を意味する。さらに、特に明示しない限り、アルキレン基、アルケニレン基およびアルキニレン基は、それぞれ、分岐または非分岐のいずれであってもよい。
【0023】
また、本発明において、「(メタ)アクリル基」は「アクリル基」および「メタクリル基」を意味し、「(メタ)アクリロイル基」は「アクリロイル基」および「メタクリロイル基」を意味し、「(メタ)アクリロイルオキシ基」は「アクリロイルオキシ基」および「(メタ)アクリロイルオキシ基」を意味する。
【0024】
〔−CO−〕
また、本発明において、下記化学式で表される2価の基(カルボニル基)を「−CO−」と表記することがある。ただし、下記化学式中「
*」および「
*」は他の原子または原子団との結合点を表す。
【化1】
【0025】
〔−SO
2−〕
また、本発明において、下記化学式で表される2価の基(スルホニル基)を「−SO
2−」と表記することがある。ただし、下記化学式中「
*」および「
*」は他の原子または原子団との結合点を表す。
【化2】
【0026】
〔−N(R)−〕
また、本発明において、下記化学式で表される2価の基(イミノ基)を「−N(R)−」と表記することがある。ただし、下記化学式中「
*」および「
*」は他の原子または原子団との結合点を表し、「R」は水素原子または1価の基を表す。
【化3】
【0027】
〔−COO−,−OCO−〕
また、本発明において、下記化学式で表される2価の基(カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基)を、それぞれ、「−COO−」、「−OCO−」と表記することがある。ただし、下記化学式中「
*」および「
*」は他の原子または原子団との結合点を表す。
【化4】
【0028】
〔−COS−,−SCO−〕
また、本発明において、下記化学式で表される2価の基を、それぞれ、「−COS−」、「−SCO−」と表記することがある。ただし、下記化学式中「
*」および「
*」は他の原子または原子団との結合点を表す。
【化5】
【0029】
〔−PO(OR)−,−P(=O)(OR)−〕
また、本発明において、下記化学式で表される2価の基を「−PO(OR)−」または「−P(=O)(OR)−」と表記することがある。ただし、下記化学式中「
*」および「
*」は他の原子または原子団との結合点を表し、「R」は1価の基を表す。
【化6】
【0030】
[滑油性表面処理組成物]
本発明の滑油性表面処理組成物は、構成単位(a)および構成単位(c)を含む共重合体と、溶媒とを含む。
【0031】
本発明の滑油性表面処理組成物は、簡便な処理で表面に優れた滑油性を付与することができる。
【0032】
〈滑落性・滑油性・滑水性〉
本発明において、滑落性とは、一定以上の傾斜を持った斜面に10μLの液滴を載せた時、液滴の両端が一定の間隔を保持したまま流れることを滑落性があると定義している。液滴の両端の間隔が広がり続けながら流れ落ちる(雨すじ状に流れ落ちる)ことは、滑落には該当しない。液滴が水であれば滑水性、液滴が油であれば滑油性と定義する。
滑油性は、転落角が30度未満であることが好ましく、転落角が20度未満であると滑油性が良好と判断し、転落角が10度未満であると極めて良好であると判断する。
【0033】
《転落角の測定方法》
ガラス板を室温の表面処理組成物に1分間浸漬し、取り出した後、120℃で5分間乾燥させて、表面処理被膜付きガラス板を準備する。
この表面処理被膜付きガラス板に市販のサラダ油(食用なたね油,日清オイリオ社製)10μLを着的させ、自動接触角計OCA−20[データフィジックス社製]を用いて転落角を測定する。転落角を測定する際の転落角の移動速度は約1.6度/秒とし、液滴が移動を始めた際の角度を転落角(度)とする。
【0034】
〈共重合体〉
上記共重合体は、構成単位(a)および構成単位(c)を含み、さらに、構成単位(b)、構成単位(d)、構成単位(e)および構成単位(f)からなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0035】
《構成単位(a)および構成単位(c)》
構成単位(a)および構成単位(c)について説明する。
【0036】
・構成単位(a)
上記共重合体に含まれる構成単位(a)は、下記式(a)で表される化合物〔化合物(a)〕から導かれる構成単位である。
CH
2=CR
a1−COO−Rf
1 (a)
式(a)中、
R
a1:水素原子またはメチル基であり、
Rf
1:主鎖の炭素数が2〜3であり、末端基がCF
3であるポリフルオロアルキル基である。
【0037】
上記共重合体において、上記構成単位(a)は1種類の化合物(a)から導かれる構成単位であってもよいし、2種類以上の化合物(a)から導かれる構成単位であってもよい。
【0038】
・R
a1
上記式(a)において、上記R
a1は水素原子またはメチル基であれば特に限定されないが、好ましくはメチル基である。上記R
a1がメチル基であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性がより良好なものとなる。
【0039】
・Rf
1
上記式(a)において、上記Rf
1は、主鎖の炭素数が2〜3であり、かつ、末端基がCF
3であるポリフルオロアルキル基であれば特に限定されない。
【0040】
・主鎖の炭素数
上記Rf
1において、「主鎖の炭素数」および「主鎖炭素数」は、いずれも、Rf
1中の炭素原子のうちRf
1以外の原子団と結合する炭素原子を末端とする、Rf
1中の最長の炭素原子鎖の炭素原子数を意味する。
【0041】
・ポリフルオロアルキル基
また、上記Rf
1において、「末端基がCF
3であるポリフルオロアルキル基」は、アルキル基の水素原子のうち3個以上がフッ素原子に置換され、かつ、当該アルキル基の末端のメチル基(−CH
3)の少なくとも1つがトリフルオロアルキル基(−CF
3)に置換された部分フルオロ置換またはパーフルオロ置換アルキル基を意味する。ここで、上記アルキル基は分岐または非分岐のアルキル基であり、当該アルキル基の末端のメチル基は、主鎖の末端のメチル基であってもよいし、側鎖(主鎖の炭素原子に結合する主鎖以外の炭素鎖をいう。)の末端のメチル基であってもよい。
【0042】
・Rf
1(非分岐)
上記Rf
1のうち非分岐状のものとしては、1,1,1−トリフルオロエタン−2−イル基(主鎖炭素数:2)、1,1,1−トリフルオロプロパン−3−イル基(主鎖炭素数:3)およびこれらの基の1つ以上の水素原子にフッ素原子が置換した基が挙げられる。
【0043】
・Rf
1(分岐)
また、上記Rf
1のうち分岐状のものとしては、1−トリフルオロメチルエタン−1−イル基(主鎖炭素数:2)、1,1−ジメチル−2,2,2−トリフルオロエタン−1−イル基(主鎖炭素数:2)、2−トリフルオロメチルプロパン−1−イル基(主鎖炭素数:3)、1−トリフルオロメチルプロパン−1−イル基(主鎖炭素数:3)、1−メチル−3,3,3−トリフルオロプロパン−1−イル基(主鎖炭素数:3)、2,2−ジメチル−3,3,3−トリフルオロプロパン−1−イル基(主鎖炭素数:3)、1,1−ジメチル−3,3,3−トリフルオロプロパン−1−イル基(主鎖炭素数:3)、1−メチル−1−トリフルオロメチルプロパン−1−イル基(主鎖炭素数:3)およびこれらの基の1つ以上の水素原子にフッ素原子が置換した基が挙げられる。
【0044】
・化合物(a)の具体例
上記化合物(a)の具体例を以下の表に示すが、化合物(a)はこれらに限定されるものではない。
【0046】
・化合物(a1)
上記化合物(a)は、好ましくは下記式(a1)で表される化合物〔化合物(a1)〕である。
CH
2=CR
a1−COO−CH
2−CF
3 (a1)
式(a1)中、
R
a1:水素原子またはメチル基である。
【0047】
・構成単位(c)
上記共重合体に含まれる構成単位(c)は、下記式(c)で表される化合物〔化合物(c)〕から導かれる構成単位である。
CH
2=CR
c1−Q
1−Y (c)
式(c)中、
R
c1:水素原子またはメチル基であり、
Q
1:単結合または2価の連結基であり、
Y:数平均分子量(Mn)が1000〜3000のオルガノポリシロキサン基である。
【0048】
上記共重合体において、上記構成単位(c)は1種類の化合物(c)から導かれる構成単位であってもよいし、2種類以上の化合物(c)から導かれる構成単位であってもよい。
【0049】
・R
c1
上記式(c)において、上記R
c1は水素原子またはメチル基であれば特に限定されないが、好ましくはメチル基である。上記R
c1がメチル基であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性がより良好なものとなる。
【0050】
・Q
1
上記式(c)において、上記Q
1は単結合または2価の連結基であれば特に限定されない。
上記2価の連結基としては、炭素数が1〜10のアルキレン基、炭素数が2〜10のアルケニレン基、炭素数が1〜10のオキシアルキレン基、6員のアリーレン基、4〜6員環の2価脂環基、5または6員のヘテロアリーレン基、−X
1−、−X
1−X
2−、−Z
1−X
1−、−X
1−Z
1−X
2−、−Z
1−X
1−X
2−、−Z
1−X
1−Z
2−X
2−、およびこれらのうち2つ以上を組み合わせてなる2価の基が挙げられる。ここで、複数の環基を組み合わせてなる2価基においては、2つの単環が縮合していてもよい。
【0051】
上記−X
1−、−X
1−X
2−、−Z
1−X
1−、−X
1−Z
1−X
2−、−Z
1−X
1−X
2−および−Z
1−X
1−Z
2−X
2−において、
X
1およびX
2:それぞれ独立に、炭素数が1〜10のアルキレン基、炭素数が1〜10のオキシアルキレン基、6員のアリーレン基、4〜6員の2価脂環基、5または6員のヘテロアリーレン基、および6員のアリーレン基、ならびに4〜6員の2価脂環基および5もしくは6員のヘテロアリーレン基のうち2つ以上組み合わせてなる、2つ以上の単環が縮合していてもよい2価基からなる群から選択される2価の基を表し、
Z
1およびZ
2:それぞれ独立に、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−N(R
1)−、−SO
2−、−PO(OR
1)−、−N(R
1)−COO−、−COO−N(R
1)−、−N(R
1)−CO−、−CO−N(R
1)−、−N(R
1)−SO
2−、−SO
2−N(R
1)−、−N(R
1)−PO(OR
2)−、および−PO(OR
2)−N(R
1)−からなる群から選択される2価の基を表し、上記式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。
【0052】
上記Q
1は、好ましくは、単結合、炭素数1〜6のアルキレン基、−COO−、−N(R
1)−、−SO
2−、またはこれらを組合せて得られる2価の連結基であり、より好ましくは−Z
1−X
1−である。ここで、R
1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、Z
1は−COO−を表し、X
1は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。
【0053】
・Q
1の置換基
上記2価の連結基は、置換基を有していてもよい。
上記置換基しては、例えば、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)およびヨウ素原子(I)等のハロゲン原子;ヒドロキシ基;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基およびオクチルオキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;メチルチオ基およびエチルチオ基等のアルキルチオ基;アセチル基、プロピオニル基およびベンゾイル基等のアシル基;メタンスルホニル基およびベンゼンスルホニル基等のスルホニル基;アセトキシ基およびベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;メタンスルホニルオキシ基およびトルエンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基;ジエチルホスホニル基等のホスホニル基;アセチルアミノ基およびベンゾイルアミノ基等のアミド基;N,N−ジメチルカルバモイル基およびN−フェニルカルバモイル基等のカルバモイル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基およびブチル基等のアルキル基;フェニル基およびトリル基等のアリール基;ピリジル基、イミダゾリル基およびフラニル基等の複素環基;ビニル基および1−プロペニル基等のアルケニル基;メトキシアセチルオキシ基等のアルコキシアシルオキシ基;メトキシカルボニル基およびエトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ならびに、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、メタクリロイル基、シリル基および桂皮酸残基等の重合性基などが挙げられる。
【0054】
・Y
上記式(c)において、Yは数平均分子量(Mn)が1000〜30000のオルガノポリシロキサン基であれば特に限定されない。
上記オルガノポリシロキサン基としては、−(SiO)x−で表される繰り返し単位のケイ素原子に、水素原子、アルキル基またはフェニル基等が置換した基が挙げられるが、特に好ましくは、−(Si(CH
3)
2O)−で表されるポリジメチルシロキサン基である。
また、上記オルガノポリシロキサン基の末端は、好ましくは重合性基ではなく、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基またはポリエーテル基であり、さらに好ましくはアルキル基である。ここで、上記したアルキル基、アルコキシ基およびポリエーテル基は、置換基を有していてもよい。
【0055】
・数平均分子量の測定方法
本発明において、オルガノポリシロキサン基の数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて測定することができる。
具体的なGPC測定条件の例としては、次のものが挙げられる。
(1)重合体の濃度が約1%になるように、アサヒクリンAK−225(旭硝子社製)を用いて希釈し、測定サンプルとする。
(2)昭和電工株式会社製のShodex GPC−104を用いて、以下の測定条件で測定する。
(GPC測定条件)
分離カラム: GPC LF−604×2(充填剤:スチレンジビニルベンゼン共重合体,昭和電工社製)
デフォルトカラム:KF600RH×2(充填剤:なし,昭和電工株式会社製)
クリーンリキッド: アサヒクリンAK−225(旭硝子社製)
流速: 0.2ml/min
標準物質:ポリメチルメタクリレート
【0056】
・化合物(c1)
上記化合物(c)は、好ましくは下記式(c1)で表される化合物〔化合物(c1)〕である。
CH
2=CR
c1−COO−(CH
2)
n−(Si(CH
3)
2O)
m−Si(CH
3)
2−R
c2 (c1)
式(c1)中、
R
c1:水素原子またはメチル基であり、
n:1〜6の整数であり、
m:10〜800の整数であり、
R
c2:置換基を有していてもよいアルキル基であり、
“−(Si(CH
3)
2O)
m−Si(CH
3)
2−R
c2”で表されるポリジメチルシロキサン基の数平均分子量(Mn)は1000〜30000である。
【0057】
・R
c1
上記式(c1)において、上記R
c1は水素原子またはメチル基であれば特に限定されないが、好ましくはメチル基である。
【0058】
・m
上記mは10〜800の整数であれば特に限定されないが、“−(Si(CH
3)
2O)
m−Si(CH
3)
2−R
c2”で表されるポリジメチルシロキサン基の数平均分子量が、好ましくは5000〜15000となるものであり、より好ましくは10000〜15000となるものである。
【0059】
・n
上記nは1〜6の整数であれば特に限定されないが、好ましくは2〜4である。
【0060】
・R
c2
上記R
c2は置換基を有していてもよいアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基の水素原子に置換基が置換していてもよいアルキル基であり、より好ましくは非置換の炭素数1〜5のアルキル基である。
【0061】
上記置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシ基;シアノ基;メトキシ基およびエトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;メチルチオ基およびエチルチオ基等のアルキルチオ基;アセチル基およびベンゾイル基等のアシル基;カルボキシ基;メタンスルホニル基およびベンゼンスルホニル基等のスルホニル基;アセトキシ基およびベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;メタンスルホニルオキシ基およびトルエンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基;ジエチルホスホニル基等のホスホニル基;アミノ基;アミド基;メチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基等のアルキル基;フェニル基およびトリル基等のアリール基;ピリジル基、イミダゾリル基およびフラニル基等の複素環基;ならびに、メトキシアセチルオキシ基等のアルコキシアシルオキシ基などが挙げられる。ただし、上記置換基は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基およびイソシアネート基等の重合性官能基は含まない。
【0062】
・構成単位(c)の含有量
上記共重合体中の上記構成単位(c)の合計質量eの、上記共重合体の全質量w
COPOLYMERに対する質量百分率〔P
c/w≡(c/w
COPOLYMER)×100 質量%〕は、特に限定されないが、好ましくは5〜40質量%であり、より好ましくは10〜20質量%である。
上記P
c/wがこの範囲内であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑落性がより良好なものとなる。
【0063】
・構成単位(a)+構成単位(c)の含有量
上記共重合体中の上記構成単位(a)および上記構成単位(c)の合計質量a+cの、上記共重合体の全質量w
COPOLYMERに対する質量百分率〔P
(a+c)/w≡{(a+c)/w
COPOLYMER}×100 質量%〕は、特に限定されないが、好ましくは40質量%以上(100質量%以下)であり、より好ましくは60質量%以上(100質量%以下)である。
上記P
(a+c)/wがこの範囲内であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性がより良好なものとなる。
【0064】
・a/(a+c)
上記構成単位(a)の合計質量aの、上記共重合体中の上記構成単位(a)および上記構成単位(c)の合計質量a+cに対する質量百分率〔P
a/(a+c)≡{a/(a+c)}×100 質量%〕は、33質量%以上(100質量%未満)であれば特に限定されないが、好ましくは40質量%以上(100質量%未満)であり、より好ましくは40〜90質量%であり、さらに好ましくは55〜85質量%である。
上記P
a/(a+c)がこの範囲内であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性がより優れたものとなる。
【0065】
なお、本発明において、上記共重合体における各構成単位の質量比率〔特定の構成単位の合計質量の、共重合体中の他の構成単位の合計質量に対する質量百分率〕は、重合に使用した原料がすべて構成単位を構成するとみなした値である。したがって、例えば、構成単位(a)の質量比率は、共重合体中の構成単位(a)の合計質量の、他の構成単位の合計質量に対する質量百分率は、実質的に、重合に使用した化合物(a)の合計質量の、他の重合原料化合物の合計質量に対する質量百分率として求められる。上記共重合体における他の構成単位の質量比率も同様に求められる。
【0066】
《構成単位(b)》
上記共重合体は、下記式(b)で表される化合物〔化合物(b)〕から導かれる構成単位〔構成単位(b)〕を含んでもよい。
CH
2=C(CH
3)−COO−CH
2CH
2(CF
2)
6F (b)
【0067】
・a/(a+b)
上記共重合体が上記構成単位(b)を含む場合、上記構成単位(a)の合計質量aの、上記共重合体中の上記構成単位(a)および上記構成単位(b)の合計質量a+bに対する質量百分率〔P
a/(a+b)≡{a/(a+b)}×100 質量%〕は、特に限定されないが、好ましくは25質量%以上(100質量%未満)であり、より好ましくは30質量%以上(100質量%未満)であり、さらに好ましくは35〜95質量%であり、いっそう好ましくは40〜90質量%である。
上記共重合体が上記構成単位(a)および上記構成単位(c)に加えて上記構成単位(b)を含む場合、上記P
a/(a+b)がこの範囲内であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性がより良好なものとなる。
【0068】
上記P
a/(a+b)≧25質量%である場合、上記構成単位(a)の合計質量aの、上記共重合体中の上記構成単位(a)および上記構成単位(c)の合計質量a+cに対する質量百分率〔P
a/(a+c)≡{a/(a+c)}×100 質量%〕は、好ましくは40質量%以上(100質量%未満)であり、より好ましくは50〜90質量%であり、さらに好ましくは55〜85質量%である。P
a/(a+b)≧25質量%かつP
a/(a+c)がこの範囲内であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性能がより優れたものとなる。
【0069】
・構成単位(a)+構成単位(b)+構成単位(c)
上記共重合体が上記構成単位(b)を含む場合、上記共重合体中の上記構成単位(a)、上記構成単位(b)および上記構成単位(c)の合計質量a+b+cの、上記共重合体の全質量w
COPOLYMERに対する質量百分率〔P
(a+b+c)/w≡{(a+b+c)/w
COPOLYMER}×100 質量%〕は、特に限定されないが、好ましくは40質量%以上(100質量%以下)であり、より好ましくは50質量%以上(100質量%以下)であり、さらに好ましくは60質量%以上(100質量%以下)であり、いっそう好ましくは70質量%以上(100質量%以下)であり、よりいっそう好ましくは95質量%以上(100質量%以下)である。
上記共重合体が上記構成単位(b)を含む場合、上記P
(a+b+c)/wがこの範囲内であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性がより良好なものとなる。
【0070】
上記P
(a+b+c)/w≧40質量%である場合、上記構成単位(a)の合計質量aの、上記共重合体中の上記構成単位(a)および上記構成単位(c)の合計質量a+cに対する質量百分率〔P
a/(a+c)≡{a/(a+c)}×100 質量%〕は、好ましくは40質量%以上(100質量%未満)であり、より好ましくは50〜90質量%であり、さらに好ましくは55〜85質量%である。P
(a+b+c)/w≧40質量%かつP
a/(a+c)がこの範囲内であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性能がより優れたものとなる。
【0071】
・構成単位(a)+構成単位(b)
上記共重合体が上記構成単位(b)を含む場合、上記共重合体中の上記構成単位(a)および上記構成単位(b)の合計質量a+bの、上記共重合体の全質量w
COPOLYMERに対する質量百分率〔P
(a+b)/w≡{(a+b)/w
COPOLYMER}×100 質量%〕は、特に限定されないが、好ましくは50質量%以上(100質量%以下)であり、より好ましくは50〜95質量%であり、さらに好ましくは80〜90質量%である。
【0072】
上記P
(a+b)/w≧50質量%である場合、上記構成単位(a)の合計質量aの、上記共重合体中の上記構成単位(a)および上記構成単位(c)の合計質量a+cに対する質量百分率〔P
a/(a+c)≡{a/(a+c)}×100 質量%〕は、好ましくは40質量%以上(100質量%未満)であり、より好ましくは50〜90質量%であり、さらに好ましくは55〜85質量%である。P
(a+b)/w≧50質量%かつP
a/(a+c)がこの範囲内であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性能がより優れたものとなる。
【0073】
《構成単位(d)》
上記共重合体は、下記式(d)で表される化合物〔化合物(d)〕から導かれる構成単位〔構成単位(d)〕を含んでもよい。
(CH
2=CR
d1−COO−)
nQ
2 (d)
式(d)中、
R
d1:水素原子またはメチル基であり、
n:2以上の整数であり、
Q
2:n価の連結基である。
【0074】
上記共重合体において、上記構成単位(d)は1種類の化合物(d)から導かれる構成単位であってもよいし、2種類以上の化合物(d)から導かれる構成単位であってもよい。
【0075】
・R
d1
上記式(d)において、上記R
d1は水素原子またはメチル基であれば特に限定されないが、好ましくはメチル基である。上記R
d1がメチル基であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性がより良好である。
【0076】
・Q
2
上記Q
2はn価の連結基(ただし、nは2以上の整数)であれば特に限定されないが、重合反応の制御の観点から、特に好ましくは2価の連結基である。
【0077】
上記Q
2が2価の連結基である場合、当該2価の連結基としては、例えば、上記Q
1と同様のものが挙げられる。
【0078】
・化合物(d)の具体例
上記化合物(d)の具体例を以下の表に示すが、化合物(d)はこれらに限定されるものではない。
【0080】
表2中の記号は以下の意味である。
i,j,k:相互に独立して、1〜20の整数を表す。
o,p,q:相互に独立して、0〜3の整数を表す。
r,s:rは2または3であり、sは0または1である。ただし、r+s=3である。
R
d1:水素原子またはメチル基である。同一分子内に複数のR
d1があるときは、それぞれのR
d1はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基である。
R
d2:水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、−CH
2OHおよび−CH
2−OCO−CR
d4=CH
2からなる群から選択されるいずれか1つである。ここで、R
d4は水素原子またはメチル基である。
R
d3:下記式(1)〜(3)で示される2価の基から選択されるいずれか1つである。ただし、式中、「*」は窒素原子との結合点を示す。
【化7】
Ak
1:炭素数1〜20の分岐または非分岐のアルキレン基である。
【0081】
・化合物(d1)
上記化合物(d)は、好ましくは下記式(d1)で表される化合物〔化合物(d1)〕である。
CH
2=CR
d1−COO−(C
2H
4O)
n−CO−CR
d1=CH
2 (d1)
式(d1)中、
R
d1:水素原子またはメチル基であり、
n:2〜20の整数である。
【0082】
上記nは好ましくは1〜4であり、より好ましくは1である。
【0083】
・構成単位(d)の含有量
上記共重合体が上記構成単位(d)を含む場合、構成単位(d)の質量dの、共重合体の全質量w
COPOLYMERに対する質量百分率〔P
d/w≡(d/w
COPOLYMER)×100 質量%〕は、特に限定されないが、好ましくは(0質量%超)10質量%以下であり、より好ましくは(0質量%超)5質量%以下である。
上記共重合体が上記構成単位(d)を含む場合、上記P
d/wがこの範囲内であると、本発明の滑油性表面処理組成物の耐久性がより良好なものとなる。
【0084】
《構成単位(e)》
上記共重合体は、下記式(e)で表される化合物〔化合物(e)〕から導かれる構成単位〔構成単位(e)〕を含んでもよい。
CH
2=CR
e1−Q
3−W (e)
式(e)中、
R
e1:水素原子またはメチル基であり、
Q
3:単結合または2価の連結基であり、
W:ヒドロキシ基、カルボキシ基またはC1〜C3アルコキシシリル基である。
【0085】
上記共重合体において、上記構成単位(e)は1種類の化合物(e)から導かれる構成単位であってもよいし、2種類以上の化合物(e)から導かれる構成単位であってもよい。
【0086】
・R
e1
上記式(e)において、上記R
e1は水素原子またはメチル基であれば特に限定されないが、好ましくはメチル基である。
【0087】
・Q
3
上記式(e)において、上記Q
3は単結合または2価の連結基であれば特に限定されない。
上記2価の連結基としては、例えば、上記Q
1と同様のものが挙げられる。
【0088】
上記Q
3は、好ましくは、単結合、炭素数1〜6のアルキレン基、−COO−、−N(R
1)−、−SO
2−、またはこれらを組合せて得られる2価の連結基であり、より好ましくは−Z
1−X
1−である。ここで、R
1は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、Z
1は−COO−を表し、X
1は炭素数1〜6のアルキレン基を表す。
【0089】
・W
上記式(e)において、Wはヒドロキシ基(−OH)、カルボキシ基(−COOH)またはC1〜C3アルコキシシリル基であれば特に限定されないが、好ましくはカルボキシ基または“−Si(OAk
3)
3”で表されるC1〜C3アルコキシシリル基(式中Ak
3は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)である。ここで、カルボキシ基は塩の形になっていてもよい。
上記Wがカルボキシ基またはC1〜C3アルコキシシリル基(−Si(OAk
3)
3;式中Ak
3は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)であると、本発明の滑油性表面処理組成物の密着性がより優れたものとなる。
【0090】
・化合物(e1)
上記式(e)中のWがC1〜C3アルコキシシリル基である場合、上記化合物(e)は、好ましくは下記式(e1)で表される化合物〔化合物(e1)〕である。
CH
2=CR
e1−COO−Q
31−Si(OAk
31)
3 (e1)
式(e1)中、
R
e1:水素原子またはメチル基であり、
Q
31:置換または非置換のアルキレン基であり、
Ak
31:炭素数1〜3のアルキル基である。
【0091】
・化合物(e1)の具体例
上記化合物(e1)の具体例を以下の表に示すが、化合物(e1)はこれらに限定されるものではない。
【0093】
・化合物(e2)
上記式(e)中のWがヒドロキシ基(−OH)である場合、上記化合物(e)は、好ましくは下記式(e2)で表される化合物〔化合物(e2)〕である。
CH
2=CR
e1−COO−Q
32−OH (e2)
式(e2)中、
R
e1:水素原子またはメチル基であり、
Q
32:−X
31−または−X
32−X
31−である。
ここで、上記Q
22において、X
31はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数が1〜10のアルキレン基、フェニレン基またはシクロヘキシレン基を表し、X
32は−(C
2H
4O)
p−または−(C
3H
6O)
q−を表し、pおよびqはそれぞれ独立に1〜30の整数である。
【0094】
・化合物(e2)の具体例
上記化合物(e2)の具体例を以下の表に示すが、化合物(e2)はこれらに限定されるものではない。
【表5】
【0095】
表4中、nは、1〜10の整数である。
【0096】
・化合物(e3)
上記式(e)中のWがカルボキシ基(−COOH)である場合、上記化合物(e)は、好ましくは下記式(e3)で表される化合物〔化合物(e3)〕である。
CH
2=CR
e1−Q
33−COOH (e3)
式(e3)中、
R
e1:水素原子またはメチル基であり、
Q
33:単結合、炭素数が1〜10のアルキレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基、−(C
2H
4O)
r−、−(C
3H
6O)
s−、−Z
31−X
33−、または−Z
32−X
34−Z
33−X
35−である。
ここで、上記Q
33において、rおよびsはそれぞれ独立に1〜30の整数であり、Z
31は−COO−を表し、X
33は炭素数が1〜10のアルキレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基、−(C
2H
4O)
t−または−(C
3H
6O)
u−を表し、tおよびuはそれぞれ独立に1〜30の整数であり、Z
32は−COO−を表し、X
34は−(C
2H
4O)
v−または−(C
3H
6O)
W−を表し、vおよびwはそれぞれ独立に1〜30の整数であり、Z
33は−CO−を表し、X
35は炭素数が1〜10のアルキレン基、フェニレン基またはシクロヘキシレン基を表す。
【0097】
・化合物(e3)の具体例
上記化合物(e3)の具体例を以下の表に示すが、化合物(e3)はこれらに限定されるものではない。
【表6】
【0098】
表5中、mおよびnは、それぞれ独立に、1〜10の整数である。
【0099】
・構成単位(e)の含有量
上記共重合体が上記構成単位(e)を含む場合、上記共重合体中の上記構成単位(e)の合計質量eの、上記共重合体の全質量w
COPOLYMERに対する質量百分率〔P
e/w≡(e/w
COPOLYMER)×100 質量%〕は、特に限定されないが、好ましくは(0質量%超)10質量%以下であり、より好ましくは(0質量%超)5質量%以下である。
上記共重合体が上記構成単位(e)を含む場合、上記P
e/wがこの範囲内であると、本発明の滑油性表面処理組成物の密着性がより良好なものとなる。
【0100】
《構成単位(f)》
上記共重合体は、上記化合物(a)〜上記化合物(e)と共重合し得る、上記化合物(a)〜上記化合物(e)以外の化合物〔化合物(f)〕から導かれる構成単位〔構成単位(f)〕を含んでもよい。
【0101】
上記共重合体において、上記構成単位(f)は1種類の化合物(f)から導かれる構成単位であってもよいし、2種類以上の化合物(f)から導かれる構成単位であってもよい。
【0102】
・化合物(f1)
上記化合物(f)の例として、下記式(f1)で表されるスチレン系化合物〔化合物(f1)〕を挙げることができる。
【0104】
上記式(f1)中、
R
3:−H、−CH
3、−Cl、−CHO、−CH
2Cl、−CH
2NH
2、−CH
2N(CH
3)
2、−CH
2N
+(CH
3)
3Cl
−、−CH
2N
+H
3Cl
−、−CH
2CN、−CH
2COOH、−CH
2N(CH
2COOH)
2、−CH
2SH、−CH
2SO
3NaまたはCH
2OCOCH
3である。
【0105】
・化合物(f2)
上記化合物(f)の別の例として、下記式(f2)で表される、上記化合物(a)、上記化合物(b)、上記化合物(c)、上記化合物(d)および上記化合物(e)以外のアクリル系化合物〔化合物(f2)〕を挙げることができる。
CH
2=CR
f−CO−Q
4−R
4 (f2)
式(f2)中、
R
f:水素原子、ハロゲン原子またはメチル基であり、
Q
4:−O−または−NH−であり、
R
4:水素原子または1価の有機基である。
ただし、上記式(f2)で表される化合物のうち、上記化合物(a)、上記化合物(b)、上記化合物(c)、上記化合物(d)および上記化合物(e)のいずれかに該当するものを除く。
【0106】
・化合物(f21)
上記R
fが水素原子またはメチル基であり、かつ、上記Q
4が−O−である場合、化合物(f2)は、好ましくは下記式(f21)で表される(メタ)アクリレート化合物〔化合物(f21)〕である。
CH
2=CR
f1−COO−R
41 (f21)
式(f21)中、
R
f1:−Hまたは−CH
3であり、
R
41:−C
iH
2i+1、−CH
2CH
2N(CH
3)
2、−CH
2−C(CH
3)
2−O−CO−Ph、−CH
2−Ph、−CH
2CH
2−O−Ph、−CH
2−N
+(CH
3)
3Cl
−、−(CH
2CH
2O)
j−CH
3、−(CH
2CH
2O)
k−H、−CH
2CH
2−NCO、または下記式(1)〜(4)のいずれかで表される1価の有機基である。ここで、iは1〜20の整数であり、jは2〜20の整数であり、kは1〜20の整数であり、−C
iH
2i+1は炭素数iの分岐または非分岐のアルキル基を表し、−Phはフェニル基を表す。
【化8】
上記式(1)〜式(4)中、「*」は上記式f(21)中の「−COO−」の酸素原子との結合点を示す。
【0107】
上記R
41は、好ましくはメチル基である。
【0108】
・化合物(f22)
上記R
fが水素原子またはメチル基であり、かつ、上記Q
4が−NH−である場合、化合物(f2)は、好ましくは下記式(f22)で表される(メタ)アクリルアミド化合物〔化合物(f22)〕である。
CH
2=CR
f2−CONH−R
42 (f22)
式(f22)中、
R
f2:−Hまたは−CH
3であり、
R
42:−Hまたは−C
hH
2h+1である。ここで、hは1〜20の整数である。
【0109】
・化合物(f3)
上記化合物(f)のさらに別の例として、下記式(f3)で表される、上記化合物(a)、上記化合物(b)、上記化合物(c)、上記化合物(d)、上記化合物(e)、上記化合物(f1)および上記化合物(f2)以外のビニル系化合物〔化合物(f3)〕を挙げることができる。
CH
2=CH−R
5 (f3)
式(f3)中、
R
5:水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアシルオキシ基である。
【0110】
上記R
5は、好ましくは塩素原子またはシアノ基である。
【0111】
上記化合物(f3)は、上記R
5が塩素原子であるとき、塩化ビニルを表し、上記R
5がシアノ基であるとき、アクリロニトリルを表す。
【0112】
・構成単位(f)の含有量
上記共重合体が上記構成単位(f)を含む場合、構成単位(f)の質量fの、共重合体の全質量w
COPOLYMERに対する質量百分率〔P
f/w≡(f/w
COPOLYMER)×100 質量%〕は、特に限定されないが、好ましくは(0質量%超)40質量%であり、より好ましくは(0質量%超)20質量%である。
【0113】
《パーフルオロアルキル基の炭素数》
米国環境保護庁(USEPA)が2003年3月に公開した、野生動物や人の血液を含め、種々の環境から検出されるパーフロオロオクタン酸(PFOA)の安全性に関する予備リスク調査報告書では、PFOAの発生の恐れのあるパーフルオロアルキル基の炭素数が8であるものについて、生体および環境への影響が指摘され、2006年1月には、PFOAとその類縁物質、およびこれらの前駆体物質の環境中への排出削減と製品中の含有量削減計画への参加をフッ素樹脂メーカー等に提唱して以来、化合物中に含有されるパーフルオロアルキル基の炭素数は6以下の短いものが望まれている。
【0114】
したがって、生体および環境への影響を配慮し、本発明の滑油性表面処理組成物に含まれる上記共重合体は、炭素数が8以上の直鎖状のパーフルオロアルキル基を含まないことが望ましく、パーフルオロアルキル基を含むときは、炭素数が6以下のものを使用すべきである。
【0115】
《共重合体の分子量》
上記共重合体の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量(Mw)で、好ましくは1×10
3〜1×10
7であり、より好ましくは1×10
4〜1×10
6である。
上記共重合体の重量平均分子量がこの範囲であると、上記共重合体の溶媒への溶解性が良好であるとともに、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性能を十分に発揮することができる。
【0116】
《共重合体の重合形態》
上記共重合体は、構成単位(a)および構成単位(c)を必須の構成単位として含み、さらに、任意に含みうる構成単位として、構成単位(b)、構成単位(d)、構成単位(e)および構成単位(f)からなる群から選択される1種類以上の構成単位を含んでもよい。
上記共重合体の重合形態は、特に限定されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体およびこれらのうち2種類以上を組み合わせたものであってよいが、好ましくはランダム共重合体である。
【0117】
《共重合体の製造方法》
上記共重合体の製造方法は、特に限定されず、各種の公知の方法を採用し得る。例えば、各化合物中の不飽和基に基づく付加重合により製造することができる。重合に際しては、公知の不飽和化合物の付加重合条件を適宜に採択して行うことができる。例えば、重合開始剤として、有機過酸化物、アゾ化合物または過硫酸塩等の通常用いられる重合開始剤を利用することができる。また、共重合体の分子量を調整するために、重合反応時に分子量調整剤を利用することもできる。
【0118】
《共重合体の濃度》
本発明の滑油性表面処理組成物中の上記共重合体の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
本発明の滑油性表面処理組成物中の上記共重合体の濃度がこの範囲内であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性能がより優れたものとなる。
本発明の滑油性表面処理組成物中の上記共重合体の濃度は終濃度であればよく、例えば本発明の滑油性表面処理組成物を重合組成物として直接調製する場合には、重合直後の重合組成物の重合体濃度(固形分濃度)が20質量%を超えていてもなんら差し支えない。高濃度の重合組成物は、最終的に上記範囲内の濃度となるように適宜に希釈することができる。
【0119】
〈溶媒〉
本発明の滑油性表面処理組成物に含まれる溶媒は、上記共重合体を溶解し、または分散することができるものであれば特に限定されない。
このような溶媒として、各種有機溶媒、水またはこれらの混合媒体などが挙げられる。
例えば、上記溶媒として、アルコール以外の極性溶媒やフッ素系溶媒を用いることができる。
【0120】
上記アルコール以外の極性溶媒としては、ケトン系(アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル系(酢酸エチルなど)、エーテル系(テトラヒドロフランなど)が挙げられる。また、上記フッ素系溶媒としては、ハイドロフルオロカーボン(HFC)またはハイドロフルオロエーテル(HFE)が挙げられる。本発明の滑油性表面処理組成物に用いる溶媒としては、特にフッ素系溶媒が好ましい。
【0121】
・溶媒の具体例
本発明の滑油性表面処理組成物の溶媒として使用することができるフッ素系溶媒の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0122】
m−キシレンヘキサフルオリド(以下「m−XHF」と表記する場合がある。)
p−キシレンヘキサフルオリド(以下「p−XHF」と表記する場合がある。)
CF
3CH
2CF
2CH
3
CF
3CH
2CF
2H
C
6F
13OCH
3
C
6F
13OC
2H
5
C
3F
7OCH
3
C
3F
7OC
2H
5
C
6F
13H
C
6F
13CH
2CH
3
CF
2HCF
2CH
2OCF
2CF
2H
CF
3CFHCFHCF
2CH
3
CF
3(OCF
2CF
2)
n(OCF
2)
mOCF
2H
C
8F
17OCH
3
C
7F
15OCH
3
C
4F
9OCH
3
C
4F
9OC
2H
5
C
4F
9CH
2CH
3
CF
3CH
2OCF
2CF
2CF
2H
(上記例示中、m、nは各々1〜20の整数を表す。)
【0123】
・引火性/引火点
安全性の観点から、本発明の重合体は、引火性のない溶媒に溶解させて、滑油性表面処理剤として、引火性を有さないことが好ましい。
本発明において、「引火性」とは、以下の手順で引火点測定を実施し引火点を持つことと定義する。各引火点測定方法はJIS−K−2265に定められている方法に従うものとする。
【0124】
・引火点の測定手順
(a)タグ密閉法による引火点測定の実施。
(b)(a)において、引火点が80℃以下の温度で引火点が測定できない場合にあっては、クリーブランド開放法による引火点測定の実施。
【0125】
〈含んでもよいその他の成分〉
本発明の滑油性表面処理組成物は、本発明の目的を損なわず、その組成物としての安定性、滑油性能および外観等に悪影響を与えない限り、上記共重合体および上記溶媒以外の成分を含んでもよい。
【0126】
このような上記共重合体および上記溶媒以外の成分としては、例えば、被膜表面の腐食を防止するためのpH調整剤、防錆剤、組成物を希釈して使用する場合に液中の重合体の濃度管理をするための、または未処理部品との区別をするための染料、染料の安定剤、難燃剤、消泡剤および帯電防止剤等が挙げられる。
【0127】
〈滑油性表面処理組成物の製造方法〉
本発明の滑油性表面処理組成物は、被膜成分として上記共重合体を含み、当該共重合体を溶媒中に含む液状形態である。
本発明の滑油性表面処理組成物の製造方法は、特に限定されない。
本発明の滑油性表面処理組成物の製造方法の一態様として、例えば、上記共重合体を後述する溶媒に溶解させることによる製造方法が挙げられる。
また、本発明の滑油性表面処理組成物の製造方法の別の一態様として、例えば、化合物(a)および化合物(c)を溶媒に添加し、この溶媒を重合媒体とする溶液重合によって上記共重合体を合成して当該共重合体を含む溶液または分散液を製造し、これを本発明の滑油性表面処理組成物とする製造方法が挙げられる。また、例えば、乳化重合によって上記共重合体を合成して上記共重合体を含む溶液または分散液を製造し、これを本発明の滑油性表面処理組成物とする製造方法も挙げられる。こうして得られた共重合体を分離し、他の溶媒に溶解させてもよい。また、重合原料の化合物が、ガス状である場合には、圧力容器を用いて、加圧下に連続供給してもよい。
【0128】
[滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材]
本発明の滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材は、本発明の表面処理組成物を部材の表面に塗布し、乾燥させて溶媒を除去し、当該部材の表面に上記共重合体の被膜を形成して製造されるものである。このようにして製造された本発明の滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材は、その表面に優れた滑油性能が付与される。
【0129】
被処理部材の材質は特に限定されることはなく、石材、木材、ガラス、プラスチック、金属、セラミック等をなどが挙げられる。プラスチック部材においては、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリアセタール、ナイロン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。金属部材では、一般鋼板(SPCC, SS400など)、ステンレス合金(SUS304, SUS316L)、銅板、 アルミニウム、チタンなどが挙げられる。被膜の密着性などの観点から、金属材質である事がより好ましい。
【0130】
本発明の滑油性表面処理組成物を塗布する際には、任意の濃度に希釈して用いることができる。
【0131】
また、本発明の滑油性表面処理組成物を塗布する方法は、特に限定されず、一般的な塗布方法を用いることができる。このような塗布方法としては、例えば、浸漬塗布、スプレー塗布およびローラー等による塗布等の方法が挙げられる。
【0132】
本発明の表面処理組成物を部材の表面に塗布した後、乾燥させて溶媒を除去するには、溶媒の沸点以上の温度で乾燥を行うことが好ましい。
乾燥温度は特に限定されないが、被処理部材の材質などにより加熱乾燥が困難な場合には、加熱を回避して乾燥することができる。なお、熱処理の条件は、塗布する滑油性表面処理組成物の組成や、塗布面積等に応じて適宜選択すればよい。
【0133】
[滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材が用いられた設備]
本発明の滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材が用いられた設備として、例えば、本発明の滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材を用いた、レンジフード等の調理機器、切削加工機等の工作機械、下水処理設備、空調設備、および、各種の運送・移動用機器などが挙げられる。
【実施例】
【0134】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断わりのない限り、以下の実施例の記載において単に「%」で表示されるものは「質量%」を表すものとする。
【0135】
[表面処理組成物の調製]
〈(共)重合体の合成〉
《合成原料》
実施例および比較例の(共)重合体を合成するために使用した化合物を表6に示す。これらの化合物は、いずれも、市場から試薬として入手することができる化合物または既知の合成方法によって容易に合成できる化合物である。
【0136】
《合成方法》
(共)重合体の構成単位の組成割合(重合組成)が表7〜表10に示す割合となる仕込比(質量部)で原料化合物を密閉容器に仕込み、70℃で18時間以上反応を行い、実施例および比較例で使用する(共)重合体を合成した。(共)重合体を合成する際の化合物濃度は20質量%とし、開始剤濃度は0.2質量%とした。
なお、合成した(共)重合体は、実施例1〜25および比較例1〜9に対応し、それぞれ、共重合体1〜25および比較(共)重合体1〜9と称する場合がある。
【0137】
〈滑油性表面処理組成物および比較表面処理組成物の調製〉
合成した(共)重合体の有効成分濃度が5質量%、アサヒクリンAE−3000(AGC旭硝子社製)が15質量%、およびm−キシレンヘキサフルオリド(以下「m−XHF」と表記する。)が80質量%となるように混合し、実施例で使用する滑油性表面処理組成物および比較例で使用する比較表面処理組成物を調製した。
なお、調製した滑油性表面処理組成物および比較表面処理組成物は、実施例1〜25および比較例1〜9に対応し、それぞれ、滑油性表面処理組成物1〜25および比較表面処理組成物1〜9と称する場合がある。
【0138】
【表7】
【0139】
表6中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ、化合物(a)、化合物(b)、化合物(c)、化合物(d)、化合物(e)および化合物(f)を表し、同様に、a.1、b.1およびc.1等は、化合物(a.1)、化合物(b.1)および化合物(c.1)等を表す。以下の表7〜表10においても同様である。
【0140】
また、表6中、化合物(c.1)について、mは10〜800の整数であり、R
c2は水素原子またはメチル基を表し、ポリジメチルシロキサン基「−(Si(CH
3)
2O)
m−Si(CH
3)
2−R
c2」の数平均分子量(Mn)は約12000であり、化合物(f.9)いついて、nは1〜20の整数であり、nの平均値は4.5である。
【0141】
[表面処理組成物の性能評価]
〈概要〉
調製した表面処理組成物の性能を、水、n−ヘキサデカン(HD)またはサラダ油(食用なたね油,日清オイリオ社製)に対する接触角と、サラダ油(食用なたね油,日清オイリオ社製)に対する転落角とを測定し、評価した。水に対する接触角が大きいほど撥水性能が高く、HDまたはサラダ油に対する接触角が大きいほど撥油性能が高い。また、サラダ油の転落角が小さいほど滑油性能が高い。
【0142】
〈接触角および転落角の測定方法〉
《皮膜付ガラス板の作製》
実施例および比較例のそれぞれについて、調製した表面処理組成物にガラス板を浸漬し、1分後に取り出し、120℃で5分間乾燥して、滑油性表面処理組成物または比較表面処理組成物の被膜を有するガラス板(被膜付ガラス板)を作製した。
【0143】
《水またはHDに対する接触角の測定》
作製した被膜付ガラス板のそれぞれについて、表面に水10μLを着滴させ、自動接触角計OCA−20(データフィジックス社製)を用いて接触角を測定した。
同様にして、HDに対する接触角も測定した。
【0144】
《サラダ油に対する接触角およびサラダ油の転落角の測定》
作製した被膜付ガラス板のそれぞれについて、表面に市販のサラダ油(食用なたね油,日清オイリオ社製)10μLを着滴させ、自動接触角計OCA−20(データフィジックス社製)を用いて接触角[度]を測定した。
次いで、接触角を測定した後の被膜付ガラス板について、自動接触角計OCA−20(データフィジックス社製)を用いて転落角[度]を測定した。転落角を測定する際の転落角の移動速度は約1.6度/秒とした。液滴が移動を始めた際の角度を、転落角[度]とした。
【0145】
〈接触角および転落角の測定結果〉
滑油性表面処理組成物1〜25を使用した実施例1〜25および比較表面処理組成物1〜9を使用した比較例1〜9の接触角および転落角の測定結果を表7〜表10の「接触角[度]」の欄および「転落角[度]」の欄に示す。
【0146】
なお、表7〜表10において、「100×a/(a+c)」は、(共)重合体中の構成単位(a)の合計質量の、構成単位(a)および構成単位(c)の合計質量に対する質量百分率[質量%]を表し、「100×a/(a+b)」は、(共)重合体中の構成単位(a)の合計質量の、構成単位(a)および構成単位(b)の合計質量に対する質量百分率[質量%]を表し、「100×(a+b)/total」は、構成単位(a)および構成単位(b)の合計質量の、(共)重合体の全質量に対する質量百分率[質量%]を表し、「100×(a+b+c)/total」は、構成単位(a)、構成単位(b)および構成単位(c)の合計質量の、(共)重合体の全質量に対する質量百分率[質量%]を表す。
【0147】
【表8】
【0148】
【表9】
【0149】
【表10】
【0150】
【表11】
【0151】
表7および表8のサラダ油の転落角について、「ND
1」は、滑落せずに、液滴が筋状に流れて、ガラス板の上に液滴が残ってしまったこと、または滑落途中で液滴がちぎれて、ガラス板の上に液滴が残ったことを意味し、「ND
2」は、傾斜角を90度まで変化させても液滴が移動せず、転落角が測定できなかったことを意味し、「ND
3」は、被膜を形成せずオイル状であったことを意味する。
【0152】
以下の説明では、滑油性能を次のとおり評価した。
(1)サラダ油の転落角が15度以下・・・優れた滑油性能
(2)サラダ油の転落角が13度以下・・・より優れた滑油性能
(3)サラダ油の転落角が11度以下・・・さらに優れた滑油性能
(4)サラダ油の転落角が9度以下・・・いっそう優れた滑油性能
【0153】
共重合体中の構成単位(a)の合計質量の、構成単位(a)および構成単位(c)の合計質量に対する質量百分率[質量%]が33質量%以上である実施例1〜25は、サラダ油の転落角が15度以下(5度〜15度)であり、優れた滑油性能を示した。
【0154】
また、共重合体中の構成単位(a)の合計質量の、構成単位(a)および構成単位(c)の合計質量に対する質量百分率[質量%]が40質量%以上である実施例1〜24は、サラダ油の転落角が13度以下(5度〜12度)であり、より優れた滑油性能を示した。
【0155】
また、共重合体中の構成単位(a)の合計質量の、構成単位(a)および構成単位(c)の合計質量に対する質量百分率[質量%]が40〜90質量%の範囲内である実施例2〜24は、サラダ油の転落角が11度以下(5度〜11度)であり、さらに優れた滑油性能を示した。
【0156】
また、共重合体中の構成単位(a)の合計質量の、構成単位(a)および構成単位(c)の合計質量に対する質量百分率[質量%]が55〜85質量%の範囲内である実施例3〜11および13〜22は、サラダ油の転落角が9度以下(5度〜8度)であり、いっそう優れた滑油性能を示した。
【0157】
共重合体が構成単位(a)および構成単位(c)に加えて構成単位(b)を含み、共重合体中の構成単位(a)の合計質量の、構成単位(a)および構成単位(b)の合計質量に対する質量百分率[質量%]が25質量%以上である実施例9〜25は、サラダ油の転落角が15度以下(5度〜15度)であり、優れた滑油性能を示した。
【0158】
また、共重合体が構成単位(a)および構成単位(c)に加えて構成単位(b)を含み、共重合体中の構成単位(a)の合計質量の、構成単位(a)および構成単位(b)の合計質量に対する質量百分率[質量%]が25質量%以上であり、かつ、共重合体中の構成単位(a)の合計質量の、構成単位(a)および構成単位(c)の合計質量に対する質量百分率[質量%]が40質量%以上である実施例9〜24は、サラダ油の転落角が11度以下(5度〜11度)であり、さらに優れた滑油性能を示した。
【0159】
また、共重合体が構成単位(a)および構成単位(c)に加えて構成単位(b)を含み、共重合体中の構成単位(a)の合計質量の、構成単位(a)および構成単位(b)の合計質量に対する質量百分率[質量%]が25質量%以上であり、かつ、共重合体中の構成単位(a)の合計質量の、構成単位(a)および構成単位(c)の合計質量に対する質量百分率[質量%]が55〜85質量%の範囲内である実施例9〜11および13〜22は、サラダ油の転落角が9度以下(5度〜8度)であり、いっそう優れた滑油性能を示した。
【0160】
共重合体が構成単位(a)および構成単位(c)に加えて構成単位(b)を含み、構成単位(a)、構成単位(b)および構成単位(c)の合計質量の、共重合体の全質量に対する質量百分率[質量%]が40質量%以上である実施例9〜25は、サラダ油の転落角が15度以下(5度〜15度)であり、優れた滑油性能を示した。
【0161】
また、共重合体が構成単位(a)および構成単位(c)に加えて構成単位(b)を含み、構成単位(a)、構成単位(b)および構成単位(c)の合計質量の、共重合体の全質量に対する質量百分率[質量%]が40質量%以上であり、かつ、共重合体中の構成単位(a)の合計質量の、構成単位(a)および構成単位(c)の合計質量に対する質量百分率[質量%]が40質量%以上である実施例9〜24は、サラダ油の転落角が11度以下(5度〜11度)であり、さらに優れた滑油性能を示した。
【0162】
また、共重合体が構成単位(a)および構成単位(c)に加えて構成単位(b)を含み、構成単位(a)、構成単位(b)および構成単位(c)の合計質量の、共重合体の全質量に対する質量百分率[質量%]が40質量%以上であり、かつ、共重合体中の構成単位(a)の合計質量の、構成単位(a)および構成単位(c)の合計質量に対する質量百分率[質量%]が55〜85質量%の範囲内である実施例9〜11および13〜22は、サラダ油の転落角が9度以下(5度〜8度)であり、いっそう優れた滑油性能を示した。
【0163】
共重合体が構成単位(a)および構成単位(c)に加えて構成単位(b)を含み、構成単位(a)および構成単位(b)の合計質量の、共重合体の全質量に対する質量百分率[質量%]が50質量%以上である実施例9〜22は、サラダ油の転落角が11度以下(5度〜11度)であり、より優れた滑油性能を示した。
【0164】
また、共重合体が構成単位(a)および構成単位(c)に加えて構成単位(b)を含み、構成単位(a)および構成単位(b)の合計質量の、共重合体の全質量に対する質量百分率[質量%]が50質量%以上であり、かつ、共重合体中の構成単位(a)の合計質量の、構成単位(a)および構成単位(c)の合計質量に対する質量百分率[質量%]が55〜85質量%の範囲内である実施例9〜11および13〜22は、サラダ油の転落角が9度以下(5度〜8度)であり、いっそう優れた滑油性能を示した。
【0165】
水、HDまたはサラダ油に対する接触角が大きいほどサラダ油の転落角が小さくなるとは限らず、接触角と転落角との間に相関関係は認められなかった。
【0166】
従来、撥油性と滑油性は分けることなく考えられており、防汚性能の向上として撥油性能の高い表面処理が求められていた。しかしながら、本発明により、撥油性と滑油性との相関はなく、接触角が高いからと言って、滑油性を有するわけではなかった。本発明では特定の含フッ素重合体使用することで、高い滑油性能を有する表面処理剤が得られることを見出した。