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特開2019-94485光硬化性樹脂組成物、及び画像表示装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-94485(P2019-94485A)
(43)【公開日】2019年6月20日
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物、及び画像表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20190530BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20190530BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20190530BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20190530BHJP
【FI】
   C08F2/50
   C08F2/44 B
   G09F9/00 313
   G09F9/00 342
   G02B5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-214511(P2018-214511)
(22)【出願日】2018年11月15日
(31)【優先権主張番号】特願2017-225706(P2017-225706)
(32)【優先日】2017年11月24日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(72)【発明者】
【氏名】中村 司
(72)【発明者】
【氏名】原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】君島 久士
【テーマコード(参考)】
2H148
4J011
5G435
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA13
2H148CA19
2H148CA27
4J011PA43
4J011PA90
4J011PB23
4J011PB24
4J011PC02
4J011QA08
4J011QA37
4J011QA39
4J011QA45
4J011QA48
4J011QB04
4J011QB24
4J011RA08
4J011SA14
4J011SA16
4J011SA20
4J011SA84
4J011WA01
4J011WA10
5G435AA17
5G435BB05
5G435BB12
5G435HH05
5G435HH18
5G435HH20
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】本硬化後に良好な接着性が得られる光硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】硬化樹脂層3を介して画像表示部材2と前面板4とが接合された画像表示装置1を製造するために用いられる、硬化樹脂層3用の光硬化性樹脂組成物であって、光ラジカル反応性成分と、光重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含有し、光重合開始剤は、波長365nmの光に対するモル吸光係数が1.2×10ml/(g・cm)以上である光重合開始剤であり、紫外線吸収剤は、波長365nm以上の光を吸収する紫外線吸収剤である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化樹脂層を介して画像表示部材と前面板とが接合された画像表示装置を製造するために用いられる、上記硬化樹脂層用の光硬化性樹脂組成物であって、
光ラジカル反応性成分と、
光重合開始剤と、
紫外線吸収剤とを含有し、
上記光重合開始剤は、波長365nmの光に対するモル吸光係数が1.2×10ml/(g・cm)以上である光重合開始剤であり、
上記紫外線吸収剤は、波長365nm以上の光を吸収する紫外線吸収剤である、光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
硬化樹脂層を介して画像表示部材と前面板とが接合された画像表示装置を製造するために用いられる、上記硬化樹脂層用の光硬化性樹脂組成物であって、
光ラジカル反応性成分と、
光重合開始剤と、
紫外線吸収剤とを含有し、
上記光重合開始剤は、波長350〜400nmの範囲に光の吸収ピークを有する光重合開始剤であり、
上記紫外線吸収剤は、波長340〜400nmの範囲に光の吸収ピークを有する紫外線吸収剤である、光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
上記光重合開始剤と上記紫外線吸収剤との質量比(光重合開始剤/紫外線吸収剤)が0.5〜2.0である、請求項1又は2記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
上記光重合開始剤は、アシルフォスフィン系の光重合開始剤を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
上記紫外線吸収剤の含有量が0.5質量%以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
可塑剤をさらに含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
硬化樹脂層を介して画像表示部材と前面板とが接合された画像表示装置の製造方法であって、
上記画像表示部材又は上記前面板の表面に、光ラジカル硬化性成分と、光重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含有する光硬化性樹脂組成物からなる硬化性樹脂層を形成する工程と、
上記硬化性樹脂層に光を照射して仮硬化層を形成する工程と、
上記仮硬化層を介して、上記画像表示部材と上記前面板とを貼り合わせる工程と、
上記仮硬化層に対して、上記前面板を介して光照射し、上記硬化樹脂層を形成する工程とを有し、
上記光重合開始剤は、波長365nmの光に対するモル吸光係数が1.2×10ml/(g・cm)以上である光重合開始剤であり、
上記紫外線吸収剤は、波長365nm以上の光を吸収する紫外線吸収剤である、画像表示装置の製造方法。
【請求項8】
硬化樹脂層を介して画像表示部材と前面板とが接合された画像表示装置の製造方法であって、
上記画像表示部材又は上記前面板の表面に、光ラジカル硬化性成分と、光重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含有する光硬化性樹脂組成物からなる硬化性樹脂層を形成する工程と、
上記硬化性樹脂層に光を照射して仮硬化層を形成する工程と、
上記仮硬化層を介して、上記画像表示部材と上記前面板とを貼り合わせる工程と、
上記仮硬化層に対して、上記前面板を介して光照射し、上記硬化樹脂層を形成する工程とを有し、
上記光重合開始剤は、波長350〜400nmの範囲に光の吸収ピークを有する光重合開始剤であり、
上記紫外線吸収剤は、波長340〜400nmの範囲に光の吸収ピークを有する紫外線吸収剤である、画像表示装置の製造方法。
【請求項9】
上記仮硬化層は、上記光重合開始剤の残存率が40%以上である、請求項7又は8記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項10】
上記前面板は、波長365nmの光透過率が0%であり、波長405nmの光透過率が80%以上である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、光硬化性樹脂組成物、及び画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の情報端末に用いられている液晶表示パネル等の画像表示装置は、まず、液晶表示パネルや有機ELパネル等の画像表示部材と前面板との間に、光硬化性樹脂組成物を配して、硬化性樹脂層を形成する。その後、硬化性樹脂層に光を照射して硬化させて硬化樹脂層とする。このように、画像表示装置は、画像表示部材と前面板とを接着・積層することにより製造されている。
【0003】
画像表示装置の製造方法として、例えば、前面板及び画像表示部材の少なくとも一方に塗布された光硬化性樹脂組成物に光を照射して仮硬化層を形成する工程と、仮硬化層を介して前面板と画像表示部材とを貼合わせる工程と、貼合わせ後に、仮硬化層に光を照射して本硬化させる工程とを含む方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−30274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者らが検討したところ、前面板として、例えば長波(例えば波長320〜400nm)の紫外線のみを透過する部材を使用すると、従来の光硬化性樹脂組成物では、十分な密着性を得ることが困難であることが分かった。
【0006】
具体的に、前面板として、長波の紫外線のみを透過する部材の使用を検討すると、仮硬化層の本硬化時には、長波の紫外線で開裂する光重合開始剤が仮硬化層中に残存する必要がある。しかし、長波の紫外線で開裂する光重合開始剤は、開裂が非常に速く、光硬化性樹脂組成物の仮硬化後には残存し難い。
【0007】
本技術は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、本硬化後に良好な接着性が得られる光硬化性樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件発明者らは、長波の紫外線で開裂する光重合開始剤と、長波の紫外線を吸収する紫外線吸収剤とを含有する光硬化性樹脂組成物を用いることにより、仮硬化層の本硬化時に、長波の紫外線で開裂する光重合開始剤を仮硬化層中に残存させることができ、これにより、本硬化後に良好な接着性を得ることができることを見出した。
【0009】
本技術は、硬化樹脂層を介して画像表示部材と前面板とが接合された画像表示装置を製造するために用いられる、上記硬化樹脂層用の光硬化性樹脂組成物であって、光ラジカル反応性成分と、光重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含有し、上記光重合開始剤は、波長365nmの光に対するモル吸光係数が1.2×10ml/(g・cm)以上である光重合開始剤であり、上記紫外線吸収剤は、波長365nm以上の光を吸収する紫外線吸収剤である。
【0010】
本技術は、硬化樹脂層を介して画像表示部材と前面板とが接合された画像表示装置を製造するために用いられる、上記硬化樹脂層用の光硬化性樹脂組成物であって、光ラジカル反応性成分と、光重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含有し、上記光重合開始剤は、波長350〜400nmの範囲に光の吸収ピークを有する光重合開始剤であり、上記紫外線吸収剤は、波長340〜400nmの範囲に光の吸収ピークを有する紫外線吸収剤である。
【0011】
本技術は、硬化樹脂層を介して画像表示部材と前面板とが接合された画像表示装置の製造方法であって、上記画像表示部材又は上記前面板の表面に、光ラジカル硬化性成分と、光重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含有する光硬化性樹脂組成物からなる硬化性樹脂層を形成する工程と、上記硬化性樹脂層に光を照射して仮硬化層を形成する工程と、上記仮硬化層を介して、上記画像表示部材と上記前面板とを貼り合わせる工程と、上記仮硬化層に対して、上記前面板を介して光照射し、上記硬化樹脂層を形成する工程とを有し、上記光重合開始剤は、波長365nmの光に対するモル吸光係数が1.2×10ml/(g・cm)以上である光重合開始剤であり、上記光硬化性樹脂組成物中の紫外線吸収剤は、波長365nm以上の光を吸収する紫外線吸収剤である。
【0012】
本技術は、硬化樹脂層を介して画像表示部材と前面板とが接合された画像表示装置の製造方法であって、上記画像表示部材又は上記前面板の表面に、光ラジカル硬化性成分と、光重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含有する光硬化性樹脂組成物からなる硬化性樹脂層を形成する工程と、上記硬化性樹脂層に光を照射して仮硬化層を形成する工程と、上記仮硬化層を介して、上記画像表示部材と上記前面板とを貼り合わせる工程と、上記仮硬化層に対して、上記前面板を介して光照射し、上記硬化樹脂層を形成する工程とを有し、上記光重合開始剤は、波長350〜400nmの範囲に光の吸収ピークを有する光重合開始剤であり、上記紫外線吸収剤は、波長340〜400nmの範囲に光の吸収ピークを有する紫外線吸収剤である。
【発明の効果】
【0013】
本技術によれば、本硬化後に良好な接着性が得られる光硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、画像表示装置の一例を示す断面図である。
図2図2は、画像表示装置の製造方法の工程(A)の一例を示す断面図である。
図3図3は、画像表示装置の製造方法の工程(B)の一例を示す断面図である。
図4図4は、画像表示装置の製造方法の工程(B)の一例を示す断面図である。
図5図5は、画像表示装置の製造方法の工程(C)の一例を示す断面図である。
図6図6は、画像表示装置の製造方法の工程(D)の一例を示す断面図である。
図7図7は、評価用の積層体の作製において、ガラス板上のスペーサの開口部に光硬化性樹脂組成物を滴下する方法を説明するための斜視図である。
図8図8は、評価用の積層体の作製において、スキージーを用いて、硬化性樹脂層の厚さを調整する方法を説明するための斜視図である。
図9図9は、評価用の積層体の作製において、硬化性樹脂層を仮硬化する方法を説明するための斜視図である。
図10図10(A)は、評価用の積層体の作製において硬化性樹脂層を本硬化する方法を説明するための斜視図であり、図10(B)は、積層体の接着強度試験を説明するための断面図であり、図10(C)は、積層体の接着強度試験を説明するための平面図である。
図11図11は、評価用の積層体に用いたポリカーボネート板の波長300〜500nmの光に対する透過率を示すグラフである。
図12図12は、硬化樹脂層の光透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<光硬化性樹脂組成物>
本実施の形態に係る光硬化性樹脂組成物は、硬化樹脂層を介して画像表示部材と前面板とが接合された画像表示装置を製造するために用いられる、硬化樹脂用の組成物である。光硬化性樹脂組成物は、光ラジカル反応性成分と、光重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含有する。光重合開始剤は、波長365nmの光に対するモル吸光係数が1.2×10ml/(g・cm)以上である光重合開始剤(以下、「長波の紫外線で開裂する光重合開始剤」という)を含有する。紫外線吸収剤は、波長365nm以上の光を吸収する紫外線吸収剤(以下、「長波の紫外線を吸収する紫外線吸収剤)という)を含有する。また、本実施の形態に係る光硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤として波長350〜400nmの範囲に光の吸収ピークを有する光重合開始剤を含有し、紫外線吸収剤として波長340〜400nmの範囲に光の吸収ピークを有する紫外線吸収剤を含有する。
【0016】
ここで、光重合開始剤のモル吸光係数ε(ml/(g・cm))とは、メタノール又はアセトニトリルに溶解させ、紫外可視分光光度計を用いて吸収スペクトルを測定し、得られた吸収スペクトルにおける吸光度を用いて算出した値をいう。
【0017】
[光ラジカル反応性成分]
光ラジカル反応性成分は、例えば、光ラジカル重合性ポリ(メタ)アクリレートと光ラジカル重合性(メタ)アクリレートモノマーとを含む。
【0018】
[光ラジカル重合性ポリ(メタ)アクリレート]
光ラジカル重合性ポリ(メタ)アクリレートは、イソプレン、ウレタン、イソブテン、ブタジエン等を骨格に有する(メタ)アクリレートを用いることができる。なお、本明細書中、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートの両方を包含する。
【0019】
例えば、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレートは、オリゴマー(ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー)が好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば(メタ)アクリル基を1〜4個有することが好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル基を2〜3個有するものである。ウレタン結合を有する(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、紫光(登録商標)UV−2000B、UV−2750B、UV−3000B、UV−3200B、UV−3210EA、UV−3300B、UV−3310B、UV−3500BA、UV−3520EA、UV−3700B、UV−6640B(以上、日本合成化学工業社製)、アートレジンUN−6200、UN−6202、UN−6300、UN−6301、UN−7600、UN−7700(以上、根上工業社製)等が挙げられる。
【0020】
また、ポリイソブチレンの市販品としては、BASF社製のOppanol B10SFN、Oppanol B11SFN、Oppanol B12SFN、Oppanol B13SFN、OppanolB14SFN等が挙げられる。
【0021】
光ラジカル重合性ポリ(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、特に限定されず、例えば2000〜80000である。
【0022】
光硬化性樹脂組成物中、光ラジカル重合性ポリ(メタ)アクリレートの含有量は、5〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。光ラジカル重合性ポリ(メタ)アクリレートは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上の光ラジカル重合性ポリ(メタ)アクリレートを併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0023】
[光ラジカル重合性(メタ)アクリレートモノマー]
光ラジカル重合性(メタ)アクリレートモノマーは、例えば、画像表示装置の製造工程において、光硬化性樹脂組成物に十分な反応性及び塗布性等を付与するための反応性希釈剤として用いられる。光ラジカル重合性(メタ)アクリレートモノマーは、特に限定されないが、他の成分との相溶性の観点から、環状構造を有する(メタ)アクリレートモノマーや、炭素数5〜20のアルキル(メタ)アクリレートモノマーを用いることが好ましい。
【0024】
環状構造を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、モルホリン環、フラン環、ジオキソラン環等のヘテロ環を有するアクリル系モノマー、脂環式炭化水素基を有するアクリル系モノマーを用いることができる。環状構造は、飽和であっても不飽和であってもよい。環状構造は、置換基を有していてもよい。具体例としては、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、炭素数5〜20のアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
光硬化性樹脂組成物中、光ラジカル重合性(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、10〜80質量%とすることができ、20〜50質量%とすることもできる。光ラジカル重合性(メタ)アクリレートモノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上のモノマーを併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0026】
[光重合開始剤]
本実施の形態で用いる光重合開始剤は、長波の紫外線で開裂するものであり、例えば波長365nm以上の光照射によって活性化され、上述した光ラジカル反応性成分を硬化させ得る成分である。また、光重合開始剤は、波長350〜400nmの範囲に光の吸収ピークを有する。
【0027】
このような長波の紫外線で開裂する光重合開始剤としては、例えば、アシルフォスフィン系の光重合開始剤が好ましく、具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル-ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0028】
光硬化性樹脂組成物中、光重合開始剤の含有量は、上述した光ラジカル反応性成分の合計100質量部に対し、0.1〜5質量部が好ましく、0.2〜3質量部がより好ましい。このような範囲にすることにより、光照射時に硬化不足となるのをより効果的に防ぐとともに、開裂によるアウトガスの増加をより効果的に防ぐことができる。また、光硬化性樹脂組成物中、光重合開始剤の含有量は、例えば0.5〜5質量%とすることが好ましい。光重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の光重合開始剤を併用する場合、その合計量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0029】
[紫外線吸収剤]
本実施の形態に係る光硬化性樹脂組成物は、波長365nm以上の光(長波の紫外線)を吸収する紫外線吸収剤を含有し、特に、波長365nmの光の透過率が5%以下である紫外線吸収剤を含有することが好ましい。また、紫外線吸収剤は、波長340〜400nmの範囲に光の吸収ピークを有する。このような長波の紫外線を吸収する紫外線吸収剤を用いることにより、後述する画像表示装置の製造方法において、前面板として、長波の紫外線のみを透過する部材を使用した場合に、仮硬化層の本硬化時に、長波の紫外線で開裂する光重合開始剤を仮硬化層中に残存させることができ、本硬化後に良好な接着性が得られる。
【0030】
長波の紫外線を吸収する紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤が好ましく、下記一般式で表される紫外線吸収剤がより好ましい。
【0031】
【化1】
(式中、Rは置換基を表し、Rは、水素原子又は置換基を表す。)
【0032】
は、アルキル基又はフェニル基であることが好ましい。アルキル基は、炭素数1〜6の直鎖状のアルキル基、又は炭素数3〜6の分岐状のアルキル基が好ましい。Rが置換基を表す場合、アルキル基であることが好ましい。アルキル基は、炭素数1〜6の直鎖状のアルキル基、又は炭素数3〜6の分岐状のアルキル基が好ましく、フェニル基で置換された炭素数3〜6の分岐状のアルキル基がより好ましい。
【0033】
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤の好ましい具体例としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(TINUVIN 900、BASF社製)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(TINUVIN 928、BASF社製)、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(TINUVIN PS、BASF社製)等が挙げられる。
【0034】
光硬化性樹脂組成物中、紫外線吸収剤の含有量は、0.5質量%以上であることが好ましい。紫外線吸収剤の含有量を0.5質量%以上とすることにより、仮硬化層の本硬化時に、長波の紫外線で開裂する光重合開始剤を仮硬化層中により確実に残存させることができ、本硬化後に良好な接着性が得られる。また、紫外線吸収剤の含有量の上限は、特に限定されないが、10質量%以下とすることが好ましい。これにより、光硬化性樹脂組成物の仮硬化時に、光重合開始剤の開裂を妨げることを抑制し、より効果的に硬化不足となるのを抑制できる。紫外線吸収剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上の紫外線吸収剤を併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0035】
また、光硬化性樹脂組成物中、長波の紫外線で開裂する光重合開始剤と、長波の紫外線を吸収する紫外線吸収剤との質量比(光重合開始剤/紫外線吸収剤)は、0.5〜2.0であることが好ましい。このような質量比とすることにより、光硬化性樹脂組成物の仮硬化時に効果不足となるのを効果的に防ぐとともに、仮硬化層の本硬化時に良好な接着性が得られる。
【0036】
光硬化性樹脂組成物は、上述した本技術の効果を損なわない範囲で、上述した成分以外の他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0037】
[可塑剤]
可塑剤は、例えば光照射によりそれ自身が光硬化をせず、光硬化後の硬化樹脂層に柔軟性を与えるものである。可塑剤としては、例えば、重量平均分子量が2000以上でありエチレングリコール及びプロピレングリコールに由来する可塑剤や、重量平均分子量が2000以上でありプロピレングリコールのみに由来する可塑剤(ポリプロピレングリコールからなる可塑剤)を用いることができる。
【0038】
可塑剤は、例えば、下記一般式で表される化合物を含有することが好ましい。
H-(-OC2H4-)n-(-OC3H6)m-OH
式中、mは25〜138の整数であり、35〜100が好ましく、40〜80がより好ましく、50〜55がさらに好ましい。nは8〜50の整数であり、10〜30が好ましく、15〜20がより好ましい。
【0039】
上記一般式で表される可塑剤の重量平均分子量は、例えば3000以上であってもよく、3500以上であってもよく、4000以上であってもよい。また、上記一般式で表される可塑剤の重量平均分子量の上限値は特に限定されず、例えば、10000以下とすることができ、8000以下であってもよく、6000以下であってもよい。上記一般式で表される可塑剤の市販品としては、例えば、旭硝子社製のEXCENOL 510(Mw=4000)を用いることができる。
【0040】
また、可塑剤としては、上述したもの以外に、固体の粘着付与剤や、液状オイル成分を用いることもできる。固体の粘着付与剤としては、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂等のテルペン系樹脂、天然ロジン、重合ロジン、ロジンエステル、水素添加ロジン等のロジン樹脂、テルペン系水素添加樹脂が挙げられる。また、上述のアクリル系モノマーを予め低分子ポリマー化した非反応性のオリゴマーも使用することができ、具体的には、ブチルアクリレートと2−ヘキシルアクリレートおよびアクリル酸の共重合体や、シクロヘキシルアクリレートとメタクリル酸の共重合体等が挙げられる。液状オイル成分としては、ポリブタジエン系オイル、ポリイソプレン系オイル等が挙げられる。
【0041】
光硬化性樹脂組成物が可塑剤を含有する場合、光硬化性樹脂組成物中の可塑剤の含有量の合計は、40〜85質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましい。可塑剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の可塑剤を併用する場合、その合計量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0042】
[酸化防止剤]
酸化防止剤は、例えば光硬化性樹脂組成物の変色防止の目的で用いられる。酸化防止剤は、特に限定されず、公知の酸化防止剤を用いることができる。例えば、ヒンダードフェノール構造を有する化合物、ヒンダードアミン構造を有する化合物、チオエーテル構造を有する化合物等が挙げられる。
【0043】
酸化防止剤の一例であるヒンダードフェノール構造を有する化合物の市販品としては、
「IRGANOX1010」、「IRGANOX1035」、「IRGANOX1076」、「IRGANOX1098」、「IRGANOX1135」、「IRGANOX1330」、「IRGANOX1726」、「IRGANOX1425WL」、「IRGANOX1520L」、「IRGANOX245」、「IRGANOX259」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX565」、「IRGAMOD295」(以上、BASF社製)等が挙げられる。
【0044】
光硬化性樹脂組成物が酸化防止剤を含有する場合、光硬化性樹脂組成物中の酸化防止剤の含有量の合計は、0.1〜10質量%とすることができ、0.5〜3質量%とすることもできる。酸化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上の酸化防止剤を併用する場合、その合計量が上記含有量の範囲を満たすことが好ましい。
【0045】
本実施の形態に係る光硬化性樹脂組成物は、上述のように、長波の紫外線で開裂する光重合開始剤と、長波の紫外線を吸収する紫外線吸収剤とを含有する光硬化性樹脂組成物であって、厚さ150μmの硬化物(硬化樹脂層)の波長365nmにおける光透過率が5%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましい。このような物性を満たすことにより、仮硬化層の本硬化時に、長波の紫外線で開裂する光重合開始剤を仮硬化層中により確実に残存させることができ、本硬化後に良好な接着性が得られる。また、本実施の形態に係る光硬化性樹脂組成物は、厚さ150μmの硬化物(硬化樹脂層)の波長405nmにおける光透過率が15%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。また、本実施の形態に係る光硬化性樹脂組成物は、厚さ150μmの硬化物(硬化樹脂層)の波長550nmにおける光透過率が90%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。ここで、光透過率は、紫外可視分光光度計(装置名:UV−2450、島津製作所社製)を用いて25℃で測定した値をいう。
【0046】
光硬化性樹脂組成物は、常温で液状であることが好ましい。例えば、光硬化性樹脂組成物は、B型粘度計で測定した25℃における粘度が0.01〜100Pa・sを示すことが好ましい。
【0047】
光硬化性樹脂組成物は、上述した各成分を、公知の混合手法に従って均一に混合することにより調製することができる。
【0048】
<画像表示装置>
本実施の形態に係る画像表示装置1は、例えば図1に示すように、画像表示部材2と、硬化樹脂層3と、前面板4とをこの順に備える。
【0049】
画像表示部材2は、例えば、画像表示セルの視認側表面に偏光板が形成された画像表示パネルである。画像表示セルとしては、例えば液晶セルや有機ELセルが挙げられる。液晶セルとしては、例えば反射型液晶セル、透過型液晶セル等が挙げられる。画像表示部材2は、例えば液晶表示パネル、有機EL表示パネル、タッチパネル等である。ここで、タッチパネルとは、液晶表示パネルのような表示素子とタッチパッドのような位置入力装置を組み合わせた画像表示・入力パネルを意味する。
【0050】
前面板4は、画像表示部材2に形成された画像が視認可能となるような光透過性を有するものであればよく、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等の板状材料やシート状材料が挙げられる。これらの材料には、片面又は両面にハードコート処理、反射防止処理などが施されていてもよい。前面板4の厚さや弾性率などの物性は、使用目的に応じて適宜決定することができる。また、前面板4は、上記のような比較的構成の簡単な部材だけでなく、タッチパネルモジュールのような各種シート又はフィルム材が積層されたものも含まれる。
【0051】
上述のように、前面板として、長波の紫外線(例えば、波長380nm以上の光)のみを透過する部材を使用すると、仮硬化層の本硬化時には、長波の紫外線で開裂する光重合開始剤が仮硬化層中に残存する必要がある。しかし、長波の紫外線で開裂する光重合開始剤は、開裂が非常に速く、光硬化性樹脂組成物の仮硬化後には残存し難く、本硬化後に良好な接着性を得るのが難しい。そこで、本技術では、上述のように、長波の紫外線で開裂する光重合開始剤と、長波の紫外線を吸収する紫外線吸収剤とを含有する光硬化性樹脂組成物を用いることにより、仮硬化層の本硬化時に、長波の紫外線で開裂する光重合開始剤を仮硬化層中に残存させることができ、本硬化後に良好な接着性を得ることができる。
【0052】
前面板4の周縁部には、画像のコントラスト向上のために遮光層5が設けられていてもよい。遮光層5は、例えば、黒色等に着色された塗料をスクリーン印刷法などで塗布し、乾燥・硬化させて形成することができる。遮光層5の厚さは、通常5〜100μmである。
【0053】
硬化樹脂層3は、上述した光硬化性樹脂組成物の硬化物であり、例えば、大気中で光照射により光硬化性樹脂組成物を光ラジカル重合させて得られた硬化物全体の平均的な反応率(硬化率)が90%以上(好ましくは97%以上)となるように硬化させたものをいう。
【0054】
ここで、反応率とは、光照射前の硬化性樹脂層中の(メタ)アクリロイル基の存在量に対する光照射後の(メタ)アクリロイル基の存在量の割合(消費量割合)と定義される数値であり、この数値が大きい程、硬化が進行していることを示す。具体的には、反応率は、光照射前の硬化性樹脂層のFT−IR測定チャートにおけるベースラインからの1640〜1620cm−1の吸収ピーク高さ(X)と、光照射後の硬化性樹脂層(硬化樹脂層3)のFT−IR測定チャートにおけるベースラインからの1640〜1620cm−1の吸収ピーク高さ(Y)とを、下記式に代入することにより算出することができる。
反応率(%)=[(X−Y)/X]×100
【0055】
硬化樹脂層3は、可視光領域の透過率が90%以上であることが好ましい。このような範囲を満たすことにより、画像表示部材2に形成された画像の視認性をより良好にすることができる。硬化樹脂層3の屈折率は、画像表示部材2や前面板4の屈折率とほぼ同等であることが好ましい。硬化樹脂層3の屈折率は、例えば1.45以上1.55以下であることが好ましい。これにより、画像表示部材2からの映像光の輝度やコントラストを高め、視認性を向上させることができる。硬化樹脂層3の厚さは、例えば25〜200μm程度とすることができる。
【0056】
<画像表示装置の製造方法>
本形態に係る画像表示装置の製造方法は、前面板の表面に、上述した光硬化性樹脂組成物からなる硬化性樹脂層を形成する工程(A)と、硬化性樹脂層に光を照射して仮硬化層を形成する工程(B)と、仮硬化層を介して画像表示部材と前面板とを貼り合わせる工程(C)と、仮硬化層に対して前面板を介して光照射し、硬化樹脂層を形成する工程(D)とを有する。
【0057】
[工程(A)]
工程(A)では、例えば図2に示すように、画像表示部材2の表面に、光硬化性樹脂組成物6を塗布し、硬化性樹脂層7を形成する。具体的には、画像表示部材2の表面全面に、光硬化性樹脂組成物6を平坦になるように塗布することが好ましい。硬化性樹脂層7の厚さは、例えば、25〜350μmとすることができる。光硬化性樹脂組成物6の塗布は、必要な厚さが得られるように行えばよく、1回で行ってもよいし、複数回で行ってもよい。
【0058】
[工程(B)]
工程(B)では、図3に示すように、工程(A1)で形成された硬化性樹脂層7に光(例えば紫外線)を照射して、図4に示すように仮硬化層8を形成する。硬化性樹脂層7の仮硬化を行うのは、光硬化性樹脂組成物を液状から著しく流動しない状態にし、天地逆転させても流れ落ちないようにして取り扱い性を向上させるためである。
【0059】
硬化性樹脂層7の仮硬化は、仮硬化層8の反応率が、10〜99%となるように行うことが好ましく、40〜95%となるように行ってもよい。光照射の条件は、仮硬化層8の反応率が、例えば10〜99%となるように硬化させることができる限り、特に制限されない。例えば、紫外線照射装置(UV−LED)を用いて、発光波長が365±5nmである紫外線を、照度100〜300mW/cm、積算光量500〜1500mJ/cmの条件で照射することが好ましい。得られた仮硬化層8中の光重合開始剤の残存率(%)は、40%以上であることが好ましく、44%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましい。仮硬化層8中の光重合開始剤の残存率(%)の測定方法は、後述の実施例における測定方法と同様である。
【0060】
[工程(C)]
[工程(C)では、図5に示すように、仮硬化層8の表面に画像表示部材2を配置し、画像表示部材2と前面板4を仮硬化層8を介して貼合せる。貼合せは、例えば、公知の圧着装置を用いて、10〜80℃で加圧することにより行うことができる。
【0061】
[工程(D)]
工程(D)では、図6に示すように、前面板4を介して、仮硬化層8に対し光(例えば紫外線)を照射して本硬化させる。これにより、硬化樹脂層6を介して画像表示部材2と前面板4とが積層した画像表示装置1(図1参照)が得られる。
【0062】
仮硬化層8の本硬化は、硬化樹脂層6の反応率が90%以上となるように行うことが好ましく、95%以上となるように行うことがより好ましい。本硬化の条件は、硬化樹脂層6の反応率が90%以上となるように硬化させることができる限り、特に制限されない。例えば、紫外線照射装置(メタルハライドランプ)を用いて、積算光量1000〜6000mJ/cmの条件で行うことが好ましい。
【0063】
以上のように、本実施の形態に係る画像表示装置の製造方法では、長波の紫外線で開裂する光重合開始剤と、長波の紫外線を吸収する紫外線吸収剤とを含有する光硬化性樹脂組成物6を用いることにより、仮硬化層8の本硬化時に、長波の紫外線で開裂する光重合開始剤を仮硬化層8中に残存させることができ、本硬化後に良好な接着性を得ることができる。また、長波の紫外線で開裂する光重合開始剤と、長波の紫外線を吸収する紫外線吸収剤とを含有する光硬化性樹脂組成物6を用いることにより、仮硬化後の貼合せの際のプロセスマージンを向上させることができる。
【0064】
なお、上述した画像表示装置の製造方法では、工程(A)において、画像表示部材2の表面に光硬化性樹脂組成物6を塗布する例を説明したが、前面板4の遮光層5が形成された側の表面に光硬化性樹脂組成物6を塗布してもよい。
【0065】
また、上述した画像表示装置の製造方法では、遮光層5を有する前面板4を用いた場合について説明したが、この例に限定されるものではない。例えば、遮光層5を有しない前面板を用いて画像表示装置を作製してもよい。
【0066】
また、他の画像表示装置の製造方法として、いわゆるダムフィルプロセスを採用してもよい。ダムフィルプロセスは、例えば、ダム材を用いて画像表示部材の表面にフィル材の塗布領域を形成し、この塗布領域にフィル材を塗布して画像表示部材と光透過性部材とをフィル材を介して貼合せ、フィル材に光を照射して硬化樹脂層を形成する方法である。
【実施例】
【0067】
以下、本技術の実施例について説明する。なお、本技術は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
<光ラジカル反応性成分>
UV−3700B:紫外線硬化型ウレタンアクリレート、日本合成化学社製
Oppanol B12SFN:ポリイソブチレン、BASF社製
MEDOL−10:単官能モノマー((2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート)、大阪有機化学工業社製
IBXA:イソボルニルアクリレート、大阪有機化学工業社製
LA:ラウリルアクリレート、大阪有機化学工業社製
<可塑剤>
EXCENOL 510:ポリエーテルポリオール(Mw:4000)、旭硝子社製
<光重合開始剤>
IRGACURE 184:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、BASF社製、吸収ピーク:240nm付近、波長365nmの光に対するモル吸光係数:8.864×10ml/(g・cm)(MeOH使用)
IRGACURE TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイル-ジフェニル−フォスフィンオキサイド、BASF社製、吸収ピーク:380nm付近、波長365nmの光に対するモル吸光係数:4.720×10ml/(g・cm)(MeOH使用)、波長405nmの光に対するモル吸光係数:1.650×10ml/(g・cm)(MeOH使用)
IRGACURE 819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、BASF社製、吸収ピーク:370nm付近、波長365nmの光に対するモル吸光係数:2.309×10ml/(g・cm)(MeOH使用)、波長405nmの光に対するモル吸光係数:8.990×10ml/(g・cm)(MeOH使用)
<酸化防止剤>
IRGANOX 1135:3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチル、BASF社製
<紫外線吸収剤>
TINUVIN 928:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、BASF社製、吸収ピーク:349nm付近(トルエン中、1cmセルを使用)
TINUVIN PS:2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、BASF社製、吸収ピーク:342nm付近(トルエン中、1cmセルを使用)
【0069】
<光硬化性樹脂組成物の調製>
<実施例1>
紫外線硬化型ウレタンアクリレート(UV−3700B)20質量部、単官能モノマー(MEDOL−10)30質量部、光重合開始剤(IRGACURE TPO)1質量部、酸化防止剤(IRGANOX 1135)1質量部、可塑剤(EXCENOL 510)50質量部、紫外線吸収剤(TINUVIN 928)1質量部からなる光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0070】
<比較例1>
紫外線吸収剤(TINUVIN 928)を配合しないこと以外は、実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0071】
<実施例2>
紫外線吸収剤(TINUVIN 928)の量を0.5質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0072】
<比較例2>
紫外線吸収剤(TINUVIN 928)の量を0.4質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0073】
<比較例3>
紫外線吸収剤(TINUVIN 928)の量を0.3質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0074】
<比較例4>
紫外線吸収剤(TINUVIN 928)の量を0.2質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0075】
<比較例5>
紫外線吸収剤(TINUVIN 928)の量を0.1質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0076】
<実施例3>
光重合開始剤(IRGACURE TPO)の量を0.5質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0077】
<実施例4>
光重合開始剤(IRGACURE TPO)の量を5質量部に変更し、紫外線吸収剤(TINUVIN 928)の量を3質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0078】
<実施例5>
紫外線吸収剤として、10質量部のTINUVIN PSを用いたこと以外は、実施例4と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0079】
<実施例6>
光重合開始剤(IRGACURE TPO)を、等量のIRGACURE 819に変更したこと以外は、実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0080】
<実施例7>
光重合開始剤(IRGACURE 819)の量を0.5質量部に変更したこと以外は、実施例6と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0081】
<実施例8>
紫外線吸収剤(TINUVIN 928)を、等量のTINUVIN PSに変更したこと以外は、実施例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0082】
<実施例9>
紫外線吸収剤(TINUVIN 928)の量を0.5質量部に変更したこと以外は、実施例8と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0083】
<比較例6>
光重合開始剤(IRGACURE TPO)を等量のIRGACURE 184に変更したこと以外は、比較例1と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0084】
<実施例10>
Oppanol B12SFNを30質量部、IBXAを40質量部、LAを30質量部、光重合開始剤(IRGACURE TPO)1質量部、紫外線吸収剤(TINUVIN 928)1質量部からなる光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0085】
[評価用の積層体の作製]
図7に示すように、厚さ1mmのガラス板9上に、直径6mmの開口部を有する厚さ150μmのスペーサ10を配置した。スペーサの開口部を覆うように光硬化性樹脂組成物6を滴下した。
【0086】
図8に示すように、スキージー11を用いて、スペーサ10上の光硬化性樹脂組成物6を除去し、硬化性樹脂層7の厚さが150μmとなるように調整した。その後、スペーサ10をガラス板9から除去した。
【0087】
図9に示すように、硬化性樹脂層7に対して、下記表1に示す紫外線照射装置12(UV−LED、型式:H−4MLH200−V1、HOYA社製)を用いて、積算光量が1000mJ/cmとなるように、200mW/cm強度の紫外線(発光波長:365±5nm)を5秒間照射することにより、仮硬化層8を形成した。各実施例及び比較例で得られた仮硬化層8の反応率は、表2に示すように、それぞれ40〜99%の範囲であった。
【0088】
【表1】
【0089】
図10(A)に示すように、ポリカーボネート板13(厚さ2.0mm)の表面に、仮硬化層8付のガラス板9を、仮硬化層8を介して貼り合わせ、仮硬化層8を介してガラス板9とポリカーボネート板13とが接合された積層体を得た。得られた積層体の仮硬化層8に対し、ポリカーボネート板13を介して、紫外線照射装置14(メタルハライドランプ)を用いて、積算光量が5000mJ/cmとなるように紫外線を照射し、仮硬化層8を完全に硬化(本硬化)させた。これにより、直径6mm、厚さ150μmの硬化樹脂層3を介してポリカーボネート13板とガラス板9とが接合された、評価用の積層体が得られた。
【0090】
[仮硬化後の開始剤残存率]
仮硬化層8中の光重合開始剤の残存率(%)の測定方法は、以下の方法で測定した。上述した評価用の積層体の作製において、仮硬化前の光硬化性樹脂組成物6と、仮硬化層8とを同じ量はかりとり、それぞれを室温下にて所定の溶媒に一定時間接触させてそれぞれの内部に含まれる光重合開始剤を抽出して、得られた抽出液を、超高速液体クロマトグラフ(島津製作所社製、製品名:Nexera X2)にかけて光重合開始剤由来のピークの高さをそれぞれ測定し、光硬化性樹脂組成物6から抽出された光重合開始剤由来のピークの高さ(H1)と、仮硬化層8から抽出された光重合開始剤由来のピーク高さ(H2)との比(H2/H1)を算出して、比(H2/H1)×100の計算式より光重合開始剤の残存率(%)を計算した。実用上、光重合開始剤の残存率は、40%以上であることが望ましい。結果を表2に示す。
【0091】
[仮硬化後の貼り合せ性]
上述した評価用の積層体の作製において、仮硬化層8を形成した後の貼合せの際のプロセスマージンについて評価した。具体的には、仮硬化層8を形成した後、ポリカーボネート板13の表面に、仮硬化層8付きのガラス板9を貼り合わせるまでの時間を数秒に設定し、仮硬化層8に気泡が発生しなかった場合をOKと評価し、仮硬化層8に気泡が発生した場合をNGと評価した。結果を表2に示す。
【0092】
[本硬化後の接着強度]
図10(B)、(C)に示すように、上述した評価用の積層体の作製で得られた評価用の積層体について、積層体の下側に位置するガラス板9を固定し、治具15を用いて上側に位置するポリカーボネート板13を垂直方向に5mm/分の速度でリフトアップし、以下の基準で接着状態を評価した。接着強度の測定には、島津製作所製、AGS−Xを用いた。接着強度(N/cm)は、ガラス板9とポリカーボネート板13とが分離するまでに要した応力を25℃で測定し、その応力を硬化樹脂層3の単位面積で除することにより算出した。実用上、接着強度は、10N/cm以上であることが望ましい。結果を表2に示す。
【0093】
[光透過率]
上述した評価用の積層体の作製において、波長365nm、405nm、550nmの光に対する、硬化樹脂層3の透過率(25℃)を紫外可視分光光度計(装置名:UV−2450、島津製作所社製)で測定した。結果を表2に示す。実用上、365nmの光に対する硬化樹脂層3の透過率は、5%以下であることが望ましい。なお、図11は、評価用の積層体に用いたポリカーボネート板13の波長300〜500nmの光に対する透過率を示すグラフである。この結果から、ポリカーボネート板13は、長波の紫外線(波長380nm以上の光)のみを透過することが分かる。
【0094】
図12は、紫外線吸収剤を含有する光硬化性樹脂組成物からなる硬化樹脂層の光透過率を25℃で測定したグラフである。具体的に、図12(A)〜(D)は、実施例1、2、8、9の光硬化性樹脂組成物を用いて作製した、評価用の積層体における硬化樹脂層についての結果である。
【0095】
【表2】
【0096】
実施例のように、光ラジカル反応性成分と、長波の紫外線で開裂する光重合開始剤と、長波の紫外線を吸収する紫外線吸収剤とを含有する光硬化性樹脂より、本硬化後に良好な接着性が得られることが分かった。また、仮硬化後の貼合せの際のプロセスマージンが広いことが分かった。
【0097】
比較例1〜5のように、長波の紫外線を吸収する紫外線吸収剤の含有量が少なすぎる、または、長波の紫外線を吸収する紫外線吸収剤を含有しないと、仮硬化層中における光重合開始剤の残存率が低くなってしまい、本硬化後に良好な密着性を得ることができないことが分かった。また、比較例1では、貼合せの際のプロセスマージンが狭いことが分かった。
【0098】
比較例6のように、短波の紫外線で開裂する光重合開始剤のみを含有する場合、仮硬化後の光重合開始剤の残存率は良好であるものの、本硬化後に良好な密着性を得ることができないことが分かった。これは、仮硬化層中に長波の紫外線で開裂する光重合開始剤が含まれていないため、ポリカーボネート板を介して仮硬化層に紫外線を照射しても、仮硬化層を架橋させることができなかったためと考えられる。
【符号の説明】
【0099】
1 画像表示装置、2 画像表示部材、3 硬化樹脂層、4 前面板、5 遮光層、6 光硬化性樹脂組成物、7 硬化性樹脂層、8 仮硬化層、9 ガラス板、10 スペーサ、11 スキージー、12 紫外線照射装置、13 ポリカーボネート板、14 紫外線照射装置、15 冶具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12