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特開2019-96891金属ハロゲン化物ペロブスカイト及び不動態化剤を含む光起電力デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-96891(P2019-96891A)
(43)【公開日】2019年6月20日
(54)【発明の名称】金属ハロゲン化物ペロブスカイト及び不動態化剤を含む光起電力デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/44 20060101AFI20190530BHJP
   H01G 9/20 20060101ALI20190530BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20190530BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20190530BHJP
【FI】
   H01L31/04 112Z
   H01G9/20 113A
   H01L29/28 250H
   H01L29/28 100A
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】64
(21)【出願番号】特願2019-9006(P2019-9006)
(22)【出願日】2019年1月23日
(62)【分割の表示】特願2016-539967(P2016-539967)の分割
【原出願日】2014年12月17日
(31)【優先権主張番号】1322310.2
(32)【優先日】2013年12月17日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1413855.6
(32)【優先日】2014年8月5日
(33)【優先権主張国】GB
(71)【出願人】
【識別番号】507226592
【氏名又は名称】オックスフォード ユニヴァーシティ イノヴェーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100180862
【弁理士】
【氏名又は名称】花井 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】スナイス,ヘンリー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】アバテ,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ノエル,ナキタ ケー
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA11
5F151CB13
5F151CB24
5F151FA02
5F151FA06
5F151GA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】不動態化金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む光起電及び光電子デバイスを提供する。
【解決手段】(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト及び(b)有機化合物である不動態化剤を含み、ここで、不動態化剤の分子が、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している光起電力デバイスであり、その製造方法は、有機化合物であるとともに金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合するのに適当である不動態化剤で金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト、及び
(b)有機化合物である不動態化剤
を含み、不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している半導体。
【請求項2】
不動態化剤の分子と金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンとの間の化学結合が、ハロゲン結合、カルコゲン-金属結合、窒素-金属結合、及びリン-金属結合から選択される、請求項1に記載の半導体。
【請求項3】
不動態化剤の分子が結合している金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のカチオン又はアニオンが、配位不飽和である、請求項1又は2に記載の半導体。
【請求項4】
不動態化剤の分子が結合している金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンの少なくとも一部が、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面にある、請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体。
【請求項5】
不動態化剤の分子が、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面上に自己集合層を形成する、請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体。
【請求項6】
不動態化剤の分子が結合している金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンの少なくとも一部が、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの結晶構造のバルク中の欠陥部位にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体。
【請求項7】
不動態化剤の分子が、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの結晶構造のバルク中の配位不飽和なカチオン又は配位不飽和なアニオンに結合しており、場合により、不動態化剤の分子が結合している金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンの少なくとも一部が、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの結晶構造のバルク中の粒界にある、請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体。
【請求項8】
不動態化剤が、
(a)ハロゲン結合ドナー化合物、及び
(b)少なくとも1個のチオール基又はスルフィド基を含む有機化合物
(c)N及びPから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む有機化合物
から選択される化合物である、請求項1から7のいずれか一項に記載の半導体。
【請求項9】
不動態化剤が、式X-EWGのハロゲン結合ドナー化合物であり、式中、
Xは、I、Br、Cl及びFから選択されるハロゲンであり、
EWGは、電子求引基である、
請求項8に記載の半導体。
【請求項10】
不動態化剤がヨードペンタフルオロベンゼンである、請求項8又は9に記載の半導体。
【請求項11】
不動態化剤がチオフェン、3-ヘキシルチオフェン又はテトラヒドロチオフェンである、請求項8に記載の半導体。
【請求項12】
不動態化剤がハロゲン結合ドナー化合物であり、ハロゲン結合ドナー化合物の分子が、ハロゲン結合することによって、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のハロゲン化物アニオンに結合しており、
不動態化剤が、少なくとも1個のチオール基又はスルフィド基を含む有機化合物であり、有機化合物の分子が、硫黄-金属結合によって金属ハロゲン化物ペロブスカイト中の金属カチオンに結合している、請求項1から11のいずれか一項に記載の半導体。
【請求項13】
不動態化剤が、置換又は非置換アミン、置換又は非置換イミン、置換又は非置換ピリジン、置換又は非置換ピロリジン、置換又は非置換ピロール、及び置換又は非置換ホスフィンから選択される有機化合物である、請求項8に記載の半導体。
【請求項14】
不動態化剤が、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、2H-ピロール、2-ピロリン、3-ピロリン、ピロール及びピリジンから選択される化合物であり、好ましくは不動態化剤がピリジンである、請求項13に記載の半導体。
【請求項15】
さらなる有機化合物であるさらなる不動態化剤
をさらに含み、
ここで、さらなる不動態化剤の分子が、金属ハロゲン化物ペロブスカイト内の粒界に配置され、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合していない、
請求項1から14のいずれか一項に記載の半導体。
【請求項16】
さらなる不動態化剤が非極性有機分子を含み、好ましくはさらなる不動態化剤が多環式芳香族炭化水素を含み、より好ましくはさらなる不動態化剤が、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン及びフルオランテンのいずれかを含む、請求項15に記載の半導体。
【請求項17】
(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト、及び
(b)有機化合物である不動態化剤
を含み、不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト内の粒界に配置されており、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合していない半導体。
【請求項18】
不動態化剤が非極性有機分子を含み、好ましくは不動態化剤が多環式芳香族炭化水素を含み、より好ましくは不動態化剤が、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン及びフルオランテンのいずれかを含む、請求項17に記載の半導体。
【請求項19】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトが、式(I):
[A][B][X]3 (I)
のペロブスカイトであり、
式中、
[A]は、少なくとも1つの有機カチオンであり、
[B]は、少なくとも1つの金属カチオンであり、ここで[B]は、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+の少なくとも1つを含み、
[X]は、少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである、
請求項1から18のいずれか一項に記載の半導体。
【請求項20】
結晶性ドメインを含む連続的な層を含み、場合により、結晶性ドメインが100nm〜1000nmのドメインサイズを有する、請求項1から19のいずれか一項に記載の半導体。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載の半導体を含む、半導体デバイス。
【請求項22】
光電子デバイスである、請求項21に記載の半導体デバイス。
【請求項23】
光電子デバイスが発光デバイスである、請求項22に記載の半導体デバイス。
【請求項24】
(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト、及び
(b)有機化合物である不動態化剤
を含み、不動態化剤の分子が、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している半導体を製造するための方法であって、
金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合するのに適当な有機化合物である不動態化剤で金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することを含む方法。
【請求項25】
(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト、及び
(b)有機化合物である不動態化剤
を含み、不動態化剤の分子が、金属ハロゲン化物ペロブスカイト内の粒界に配置されており、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合していない半導体を製造するための方法であって、
金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合していない有機化合物である不動態化剤で、金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することを含む方法。
【請求項26】
不動態化剤で金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することが、
不動態化剤を含む少なくとも1種の組成物を金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面上に配置すること、又は
金属ハロゲン化物ペロブスカイト固体の形成前に、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの溶液に不動態化剤を添加することを含む、請求項24又は25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ハロゲン化物ペロブスカイト及び有機不動態化剤を含むデバイスに関する。特に、本発明は、不動態化金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む光起電力及び光電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
日光を直接的に電気に変換できる光起電力(PV)セルは、最終的に、地球規模のエネルギー需要に対する解決法であり得る。1954年に最初の結晶性シリコン(c-Si)PVデバイスが実証されたときには、予測された製造コストにより、この技術は大規模発電に実用的でないものとされた。その後、より低いコストの光起電力技術を実現するために、新たな材料及び製作手順を開発することに対してますます努力が向けられてきている。特に、有機金属-ハロゲン化物ペロブスカイト系の太陽電池の近年の出現で、最も高い効率で日光を電気に変換できる最も低いコストの技術の1つを生み出す見込みがある。
【0003】
ペロブスカイトにおいて、並びに大部分のイオン結晶に関して、結晶表面でのイオン配位数は常にバルク材料よりも低い。それにつづく非化学量論材料は、曝露される表面のミラー指数に依存して、局所的に過剰の正イオン又は負イオンを含む。こうした極性表面は不安定であることが知られており、それらの明らかな自然発生は、空気中の水分からの酸素及び水素を含めた外来原子の吸着と関連しており、この吸着で、局所的過剰な電荷のバランスを保つことによって結晶表面を不動態化することができる。CH3NH3PbX3(式中Xは、1つ以上のハロゲン化物アニオンである)などのペロブスカイトの結晶の特別な場合には、結晶表面での配位不飽和(under-coordinated)な金属カチオンが空気中で不安定であり、空気からの酸素及び水に曝露されると鉛酸化物種及び鉛水酸化物種を形成し得る。同様に、結晶表面での配位不飽和な有機カチオンは、水素架橋を介して水分子と結合することがあり、これが結晶表面の水和を引き起こす。逆に、結晶性物質中のハロゲン化物アニオンは、空気曝露に相対的に安定であると報告されている(Abate、A.ら、Journal of Fluorine Chemistry 130、1171〜1177 (2009))。そのため、デバイスが空気中で加工される場合、より少ない「遊離」金属カチオン及び有機カチオンを見出すことが予想される一方で、過剰な配位不飽和なハロゲン化物アニオンが結晶表面に存在する可能性がある。
【0004】
US 7,491,642において、有機不動態化層がシリコンについて検討されている。そこに記載されている方法は、シリコン表面と有機不動態化剤との化学反応を実施することで、共有結合性(例えば、Si-C)結合によって表面に直接結合している不動態化基を生成することを含む。
【0005】
別の例として、金属カルコゲン化物ナノ粒子の成長を制御し、それらが選択溶媒中でよく分散するのを確実にするための手段として、配位性リガンドが用いられる(Ip A.ら、Hybrid passivated colloidal quantum dot solids、Nature Nanotechnology、577、7、(2012))。合成中、これらのリガンドは、典型的に、長いアルカン鎖酸末端分子になる。これらのリガンドは、ナノ結晶を溶液加工に有利な高可溶性にする。しかしながら、リガンドは長い隔離鎖を含有するので、薄膜に加工されるときにナノ結晶間の直接接触を妨げる傾向がある。これは、堆積されたナノ結晶膜としての固体を異なる両端二配位性短鎖リガンドの溶液中で濯ぐリガンド交換を実施することによって克服される。質量作用を介して、優勢なリガンド交換が発生し、長鎖リガンドが、より小さい両端二配位性リガンドによって置き換えられる。短鎖両端二配位性リガンドは、ナノ結晶間のより近い近接を可能にし、その上、2つの異なるナノ結晶を結合することができ、同時に該ナノ結晶を「架橋し」、該膜を不溶性にする。金属カルコゲン化物ナノ結晶と対照的に、本明細書に記載されている金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、典型的に、ナノ粒子の集合物としてよりむしろ連続的な層として直接製作され、しばしば、ドメインサイズが典型的に膜厚よりもずっと大きいおよそ数百ナノメートルからマイクロメーターの大きな結晶性ドメインを含む。それゆえに、金属カルコゲン化物ナノ結晶に必要とされるようにリガンドを用いることでペロブスカイト結晶間の相互接続を改善する必要がない。
【0006】
c-Si及び他の薄膜半導体との比較において、金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料における欠陥部位並びに配位不飽和なカチオン及びアニオンは、これまで、デバイス性能に有害と考えられていなかった。しかしながら、本発明者らは、予想外にも、ペロブスカイト材料における欠陥部位及び表面状態の排除又は不動態化がデバイス効率の改善を可能にすることを見出した。したがって、本発明の目的は、不動態化金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含むデバイスを提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US 7,491,642
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Abate、A.ら、Journal of Fluorine Chemistry 130、1171〜1177 (2009)
【非特許文献2】Ip A.ら、Hybrid passivated colloidal quantum dot solids、Nature Nanotechnology、577、7、(2012)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ペロブスカイト/正孔-輸送体ヘテロ接合での電荷捕獲(trapping)により、ペロブスカイトデバイスにおける動作環境下で、著しい再結合損失が発生することを見出した。ペロブスカイトにおける配位不飽和なカチオン及びアニオンが少なくとも部分的に原因となっていることが特定された。これを考慮して、本発明者らは、ペロブスカイト表面の不動態化を含めて、ペロブスカイトを不動態化するための超分子戦略を確立した。不動態化剤の範囲が検討された。不動態化剤は、ペロブスカイトの中及び/又は表面でアニオン又はカチオンと(超分子的に)化学的に結合することができる有機化合物である。不動態化ペロブスカイト膜を生成するためにペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合する有機不動態化剤を用いることによって、ペロブスカイト光起電力デバイスのために16%超の出力変換効率(PCE)が達成され、該技術のためのステップ改善を表した。有機不動態化剤、例えば、少なくとも1個のチオール基又はスルフィド基を含むハロゲン結合ドナー化合物及び有機化合物は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトのための特に有効な不動態化剤であることが示された。少なくとも1個のN原子を含む有機不動態化剤も、金属ハロゲン化物ペロブスカイトのための有効な不動態化剤であることが見出された。
【0010】
特に、本発明者らは、ABX3ペロブスカイト結晶におけるAカチオンよりも大きく、その上大きすぎて3Dペロブスカイト構造内に収まらないカチオンを含む有機化合物である不動態化剤を使用することによって、これらのカチオンが不純物として有効に挙動し、ペロブスカイトの表面及び粒界に排出され得ることを認識した。その結果として、低い濃度の大きなカチオンを用いる不純物ドーピングを用いることによって、粒界欠陥及び表面欠陥の両方を不動態化することが可能であることが見出された。有機不動態化剤はAカチオンを有効に置き換え、クーロン相互作用を介してペロブスカイト中の他のイオンと相互作用する。例えば、金属ハロゲン化物ペロブスカイトがメチルアンモニウム(MA)カチオンを含む場合、これは、ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル-エチルアミン又はホスフィンのいずれかを含む有機化合物である不動態化剤を使用して達成することができる。
【0011】
加えて、本発明者らは、カチオンを疎水性部分とともに含む有機化合物である不動態化剤を使用することによって、これらの不動態化剤が、ペロブスカイト結晶を「カプセル化する」ように作用するとともに水分進入を阻害することができることを認識した。これは、前駆体溶液内にカプセル化不動態化剤を導入して達成することができる。例として、これは、アルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルアンモニウムヨージドなどの有機化合物である不動態化剤を使用して達成され得る。代替として、ペロブスカイトは、完全な結晶化の後で水分安定性を増強する不動態化剤で処理することができる。例として、ペロブスカイト膜のこの後処理は、オクチルアンモニウム又はオクチルアンモニウムヨージドなどの有機化合物である不動態化剤の溶液中の浸漬によって実行することができる。
【0012】
さらに、本発明者らは、欠陥の一部がペロブスカイトの表面に存在する一方で、ペロブスカイトの結晶構造のバルク中にも欠陥部位があることを認識した。ペロブスカイトの結晶構造のバルク中のこれらの欠陥部位も、欠陥部位でアニオン又はカチオンと化学的に結合する有機化合物である不動態化剤を使用して不動態化することができる。しかしながら、本発明者らは、ペロブスカイト内の粒界によって形成される平面欠陥で、ペロブスカイト材料内でさらなる欠陥部位を誘発し得る隣接する粒子中のイオン間に強いクーロン相互作用があることも認識した。そのため、本発明者らは、ペロブスカイトの結晶構造のバルク中の粒界欠陥部位を不動態化するためのさらなる戦略を確立した。
【0013】
このさらなる戦略において、不動態化剤は、金属ハロゲン化物ペロブスカイト内の粒界に配置されるとともに金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合しない有機化合物である。好ましくは、こうした有機不動態化剤は、多環式芳香族炭化水素などの非極性有機分子を含む。特に、本発明者らは、有機分子がペロブスカイトに特異的に化学的に結合しない金属ハロゲン化物ペロブスカイト固体の形成前に金属ハロゲン化物ペロブスカイトの溶液に非極性有機分子を添加することによって、増強されたフォトルミネセンスが達成され得ることを見出した。有機分子は結晶化中にペロブスカイト結晶粒から排出され、粒界で蓄積すると仮定される。次いで、粒界内/粒界での有機分子は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの隣接する粒子中のアニオンとカチオンとの間のクーロン相互作用を遮断/阻害するように作用し、それによって欠陥密度を低減する。
【0014】
本明細書に記載されている通りの不動態化剤で不動態化されると、環境条件に対するペロブスカイト膜の安定性は驚くべきことに大いに増強される。例えば、一部のペロブスカイト(例えばCH3NH3SnI3など)の膜は、空気中の湿度、及び酸素に極めて感受性であり、急速に劣化して、環境条件への曝露の数秒以内に無色に変わる。しかしながら、本発明者らは、それらが、本明細書に記載されている通りの分子不動態化に続く環境条件において数時間、数日間、及び数週間さえも安定することができることを見出した。したがって、非常に不安定であると以前に知られていたCH3NH3SnI3などのペロブスカイトは、ここで、長期にわたり安定化することができ、デバイスにおけるそれらの使用を可能にする。
【0015】
本発明者らは、不動態化剤、例えばハロゲン結合ドナー(例えばヨードペンタフルオロベンゼン)及び硫黄原子を含む有機分子(例えばチオフェン)を超分子集合体中に用いることによる、金属ハロゲン化物ペロブスカイトデバイスのための不動態化方法を導入した。窒素原子を含む不動態化剤(例えばピリジン)は、超分子集合体中の不動態化剤として使用することもできる。処理された太陽電池のPCEは、いくつかの百分率点の増加(例えば、13%から16%超)を示すことができ、増強の原因となる機序が解明された。処理を用いないと、配位不飽和なハロゲン化物アニオン及び欠陥部位は正孔-トラップとして作用し、ペロブスカイト/正孔輸送体ヘテロ接合での及びペロブスカイト内での電荷の著しい蓄積に至る。これは、より速い再結合に至り、正孔輸送体及びペロブスカイト膜内に不利な電荷密度プロファイルをもたらす可能性があり、これは、作業環境下での速い及び効果的な電荷抽出を阻害するはずである。該不動態化剤は、配位不飽和なハロゲン化物イオン及び欠陥部位からの静電気帯電に結合及びそれを遮蔽することができて、該課題を解決する。現在の技術を発展させることを超えて、この作業は、ペロブスカイト結晶の化学的処理が太陽電池における動作の増強に至り得ることを実証している。任意の配位不飽和なカチオン(Aイオン、Bイオン及びXイオン)及び欠陥部位を、大気酸素及び水に頼ることなく緩和することによって、性能及び再現性の両方におけるさらなる改善が予想される。加えて、該不動態化剤は、スズ及びゲルマニウム系のペロブスカイトなど、空気中で典型的に不安定であるペロブスカイトを安定化及び保護することができる。
【0016】
したがって、本発明者らは、有機不動態化剤で不動態化されたペロブスカイトを含む効果的なデバイスを開発した。第1の態様によると、本発明は、
(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト、及び
(b)有機化合物である不動態化剤
を含む半導体であって、不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している半導体を含むデバイスを提供する。該デバイスは、光電子デバイス、例えば光起電力デバイスであってよい。
【0017】
本発明は、一般に、結晶性イオン性固体にも適用することができる。したがって、本発明は、
(a)結晶性イオン性固体、及び
(b)有機化合物である不動態化剤、
含む半導体であって、不動態化剤の分子が結晶性イオン性固体中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している半導体を含むデバイスも提供する。該デバイスは、光電子デバイス、例えば光起電力デバイスであってよい。
【0018】
本発明は、
(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト、及び
(b)
(i)ハロゲン結合ドナー化合物、又は
(ii)少なくとも1個のチオール基若しくはスルフィド基を含む有機化合物
である不動態化剤
を含む半導体を含むデバイスも提供する。該デバイスは、光電子デバイス、例えば光起電力デバイスであってよい。
【0019】
本発明は、
(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト、及び
(b)有機化合物である不動態化剤
含む半導体であって、不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している半導体を含むデバイスを製造するための方法も提供し、
ここで、該方法は、有機化合物であるとともに金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合するのに適当である不動態化剤で金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することを含む。
【0020】
本発明は、
(a)結晶性イオン性固体、及び
(b)有機化合物である不動態化剤
を含む半導体であって、不動態化剤の分子が結晶性イオン性固体中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している半導体を含むデバイスを製造するための方法も提供し、
ここで、該方法は、有機化合物であるとともに結晶性イオン性固体中のアニオン又はカチオンに化学的に結合するのに適当である不動態化剤で結晶性イオン性固体を処理することを含む。
【0021】
製造されるデバイスは、光電子デバイス、例えば光起電力デバイスであってよい。
【0022】
本発明は、本発明によるデバイスを製造するための方法によって得られるデバイスも提供する。該デバイスは、光電子デバイス、例えば光起電力デバイスであってよい。
【0023】
加えて、第2の態様によると、本発明は、
(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト、及び
(b)有機化合物である不動態化剤
含む半導体であって、不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト内の粒界に配置されているとともに金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合されていない半導体を含むデバイスを提供する。該デバイスは、光電子デバイス、例えば光起電力デバイスであってよい。
【0024】
そのため、本発明は、
(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト、及び
(b)非極性有機分子を含む有機化合物である不動態化剤
を含む半導体を含むデバイスも提供する。該デバイスは、光電子デバイス、例えば光起電力デバイスであってよい。
【0025】
本発明は、
(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト、及び
(b)有機化合物である不動態化剤
含む半導体であって、不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト内の粒界に配置されているとともに金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合されていない半導体を含むデバイスを製造するための方法も提供し、
ここで、該方法は、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合しない有機化合物である不動態化剤で金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することを含む。
【0026】
製造されるデバイスは、光電子デバイス、例えば光起電力デバイスであってよい。
【0027】
本発明は、本発明によるデバイスを製造するための方法によって得られるデバイスも提供する。該デバイスは、光電子デバイス、例えば光起電力デバイスであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】(a)完全MSSC(メソ超構造化太陽電池)の断面走査電子顕微鏡法;(b)ガラス基板上のCH3NH3PbI3-xClx膜及びそれの結晶単位格子の粉末X線回折パターン(h 0 0、h = 1〜4)及び結晶構造(Pb、小さい球体;X、大きな球体、CH3NH3+は示されていない);(c)ヨードペンタフルオロベンゼン(IPFB、ハロゲン結合ドナー)と一般的ハロゲンアニオン(X- = I-、Br-、Cl-、ハロゲン結合アクセプター)との間の、sp3混成価電子を用いるハロゲン結合相互作用の模式図;(d)結晶表面上のIPFB集合体に関する提案されたシナリオ;(e)〜(f)純粋な液体として及び結晶表面上に吸着されたIPFBに関する固体状態13C及び19F NMRスペクトル;挿入図1(e)120ppmでズームインを示す図である。
図2】(a)正孔輸送体としてスピロ-OMeTADを使用する、IPFB処理の有無による、最も良いペロブスカイトMSSCのJV曲線及び性能パラメータ(表挿入);100mWcm-2の等価太陽放射照度のAM1.5模擬日光下で、活性部域を定義するためのシャドウマスキングを使用してデバイスを測定した;(b)同時に調製される20個を超えるデバイスに関する出力変換効率(PCE)の分布;この実験を4回反復した;(c)IPFBが存在する、Al2O3ナノ粒子の足場上で成長させたCH3NH3PbX3結晶の例示;(d)IPFB処理の有無による(スピロ-OMeTADの存在なし)、ペロブスカイト膜の光吸収を示す図である。
図3】(a)IPFB処理の有無による、Al2O3ナノ粒子の足場で成長させるとともに(図2cに記載されている通り)スピロ-OMeTADでコーティングされたペロブスカイトの1100nmでの超高速過渡吸収スペクトル及び動態;500nmで励起(14μJ/cm2);(b)スピロ-OMeTADの有無による、試料からの放射をプローブする時間分解フォトルミネセンスクエンチング、510nmで励起;(c)IPFB処理(円)及び未処理(四角)の試料に関するナノ秒過渡吸収動態;500nmで励起(100μJ/cm2)、640nmでのプローブを示す図である。連続線は二重指数関数型フィッティングを表し、より短い寿命(τ1)が報告されている。
図4】8つの別々のデバイスから抽出された通りの、IPFB処理及び未処理のペロブスカイト増感太陽電池(PSSC)に関する光電流及び光電圧減衰測定:(a)TiO2における伝導バンド端(Vcbe-VF)に関する電子疑フェルミレベルの相対位置に対する再結合寿命(τrec);(b)ペロブスカイト表面上の配位不飽和なハロゲン化物(X-)とスピロ-OMeTADに注入された正孔との間の静電気的相互作用の例示;(c)短絡光電流(Jsc)に対する短絡での電荷密度(ρsc);(d)ペロブスカイト表面上のIPFBのハロゲン結合錯体化を介するハロゲン化物の静電遮蔽の例示を示す図である。
図5】Sn系のペロブスカイトCH3NH3SnI3を使用して製作されフッ素ドープ酸化スズ(FTO)コーティングガラス上にコーティングされ、ペロブスカイトコーティングより前にTiO2の緻密層及びメソポーラス層の両方でコーティングされた膜の写真を示す図である。ここで我々は、IPFBを使用して不動態化された膜は正孔輸送体でコーティングされた後で安定なままであるが、IPFBを用いない膜は24時間の期間後に有意な程度の劣化を受けていることがわかる。Sn含有量(百分率によって表示されている)を増加させるとともに、膜劣化度は、より重度である。IPFB不動態化は膜を安定させ、劣化プロセスを遅くする。(膜はスピロ-OMeTADでコーティングされている。)
図6】表面処理を用いない対照デバイスと比較した場合の、3つの異なる表面処理について得られた、吸収体としてCH3NH3PbI3-xClxを用いるMSSCに関する性能の広がりを示す図である。全てのデバイスは、N2充填グローブボックス内で、検討された各可変物:ヨードペンタフルオロベンゼン(IPFB)、テトラヒドロチオフェン(THTh)、チオフェン(Th)及び対照デバイスについて16個の個々のデバイスの試料サイズを用いて完全に加工した。我々は、ここで、不動態化デバイスについて、対照と比較した場合にデバイスパラメータにおける改善があることがわかる。
図7】検討された表面処理のための最良のデバイス:ヨードペンタフルオロベンゼン(IPFB)、テトラヒドロチオフェン(THTh)、チオフェン(Th)、及び表面処理を用いない対照デバイスのJ-V特性;並びに全てのデバイスパラメータの最大値を示す表を示す図である。
図8】様々な不動態化処理を用いる有機鉛混合ハロゲン化物ペロブスカイトCH3NH3PbI3-xClx、の時間分解フォトルミネセンスを示すグラフである。
図9】様々な不動態化処理を用いる有機鉛混合ハロゲン化物ペロブスカイトCH3NH3PbI3-xClxの定常状態フォトルミネセンスを示すグラフである。
図10】周囲屋内条件に(事務所の机上に)3週間貯蔵された後の、チオフェンで不動態化されたメチルアンモニウムトリヨードスタネート(CH3NH3SnI3)の膜の吸光度を示すグラフである。
図11】メソポーラス誘電性足場の厚さを変動させる、IPFB処理の有無により調製されたデバイスに関するデバイス性能変動を示す図である。
図12】異なるヨード-ペルフルオロカーボンで調製されたデバイスのデバイス性能変動を示す図である。
図13】IPFB処理の有無による、1.5μmの厚層のメソポーラスTiO2を含むペロブスカイト増感太陽電池(PSSC)のデバイス性能パラメータを示す図である。
図14】IPFB処理の有無により調製された、染料増感太陽電池(DSSC)に関する光電圧及び光電流減衰測定を示す図である。
図15】不動態化及び非不動態化ペロブスカイト膜の定常状態フォトルミネセンス(PL)及びフォトルミネセンス量子効率(PLQE)を示す図である。
図16】不動態化及び非不動態化ペロブスカイト膜の時間分解PLを示す図である。
図17】電流-電圧曲線におけるヒステリシスを呈するピリジン不動態化デバイスの電流-電圧特徴を示す図である。
図18】模擬全日光下での不動態化及び非不動態化太陽電池のバッチの性能パラメータを示す図である。
図19】増感及び対照デバイスに関するデバイス結果及び安定化最大出力を示す図である。
図20】無溶媒、チオフェン及びピリジン不動態化CH3NH3PbI3-xClx膜のフォトルミネセンス特性:(a)507-nmのパルス化励起(200kHz、30nJ/cm2/パルス)に続いて、非不動態化膜と比較した場合の、チオフェン及びピリジン不動態化ペロブスカイト膜の時間分解フォトルミネセンス(PL減衰はピーク発光波長(780nm)で獲得された);並びに(b)532CWのレーザー励起強度の関数としての、非不動態化膜並びにチオフェン及びピリジンで処理された膜のフォトルミネセンス量子効率(PLQE)を示す図である。
図21】そのままの膜及びチオフェン又はピリジン不動態化膜のフォトルミネセンス特性を示す図である。引用された光励起密度に対応するパルスフルエンスの範囲で507-nmのパルス(200kHz)励起を用いる、対照、チオフェン及びピリジン試料の時間分解PL測定。実線は、引用されたトラップ密度NTの抽出を可能にするモデルを使用するデータへのフィットである。
図22】オクチルアミン(OA)ドープCH3NH3PbI3ペロブスカイト膜のフォトルミネセンス特性:(a)OAドープペロブスカイト膜の標準化定常状態フォトルミネセンス;(b)OAドープペロブスカイト膜の標準化定常状態フォトルミネセンスを示す図である。
図23】オクチル-アンモニウムヨージド(OAI)ドープCH3NH3PbI3ペロブスカイト膜のフォトルミネセンス特性を示す図である。膜の実際の組成がおよそ[(0.95MA)(0.05OA)PbI3]である、5mol%のOAIドープMAPbI3ペロブスカイト膜の時間分解PL減衰。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義
「ペロブスカイト」という用語は、本明細書で使用される場合、CaTiO3の構造に関連した三次元結晶構造を有する材料又はCaTiO3の構造に関連した構造を有する材料層を含む材料を指す。CaTiO3の構造は式ABX3によって表すことができ、式中A及びBは異なるサイズのカチオンであり、Xはアニオンである。単位格子において、Aカチオンは(0,0,0)であり、Bカチオは(1/2、1/2、1/2)であり、Xアニオンは(1/2、1/2、0)である。Aカチオンは通常Bカチオンよりも大きい。当業者は、A、B及びXを変動させる場合、異なるイオンサイズが、CaTiO3によって採用される構造からより低い対称性歪み構造にペロブスカイト材料の構造を歪ませる原因となり得ることを理解されよう。材料がCaTiO3の構造に関連した構造を有する層を含むならば、対称性も、より低い。ペロブスカイト材料の層を含む材料はよく知られている。例えば、K2NiF4型構造を採用する材料の構造は、ペロブスカイト材料の層を含む。当業者は、ペロブスカイト材料が、[A]が少なくとも1つのカチオンであり、[B]が少なくとも1つのカチオンであり、[X]が少なくとも1つのアニオンである式[A][B][X]3によって表すことができることを理解されよう。ペロブスカイトが1つを超えるAカチオンを含む場合、異なるAカチオンは、規則化又は不規則化されたやり方でA部位上に分布され得る。ペロブスカイトが1つを超えるBカチオンを含む場合、異なるBカチオンは、規則化又は不規則化されたやり方でB部位上に分布され得る。ペロブスカイトが1つを超えるXアニオンを含む場合、異なるXアニオンは、規則化又は不規則化されたやり方でX部位上に分布され得る。1つを超えるAカチオン、1つを超えるBカチオン又は1つを超えるXカチオンを含むペロブスカイトの対称性は、CaTiO3の対称性よりも低い。
【0030】
「金属ハロゲン化物ペロブスカイト」という用語は、本明細書で使用される場合、式が少なくとも1つの金属カチオン及び少なくとも1つのハロゲン化物アニオンを含有するペロブスカイトを指す。「有機金属ハロゲン化物ペロブスカイト」という用語は、本明細書で使用される場合、その式が少なくとも1つの有機カチオンを含有する金属ハロゲン化物ペロブスカイトを指す。
【0031】
「結晶性イオン性固体」という用語は、本明細書で使用される場合、アニオン及びカチオンを含む結晶構造を含む固体、例えば金属ハロゲン化物ペロブスカイト及び有機金属ハロゲン化物ペロブスカイトを指す。アニオン又はカチオンは、任意のアニオン又はカチオンであってよい。当業者が理解する通り、結晶構造は、ある程度の共有結合を有することができるが、しかしながら、「結晶性イオン性固体」という用語は、また、ある程度の共有結合を有する結晶性化合物を包含する。したがって、二酸化チタン及びヨウ化銅(I)などの化合物は、「結晶性イオン性固体」という用語内に入る。
【0032】
「化学結合」という用語は、本明細書で使用される場合、2個の原子間又はイオン間(原子-原子、原子-イオン及びイオン-イオン相互作用を含める)の誘引相互作用を指す。これは、特定の軌道相互作用であり得る。「化学結合」には超分子化学結合が含まれる。「超分子化学結合」という用語は、本明細書で使用される場合、化学結合における1個の原子又はイオンが1個の分子中にあるとともに他の原子又はイオンが別の分子中若しくは結晶構造中にある又は単離された原子又はイオンである化学結合を意味する。超分子結合は典型的に非共有結合である。
【0033】
「化学的に結合している」という用語は、本明細書で使用される場合、化学結合が間にある分子、原子又はイオンから選択される2つの種を指し、超分子化学結合によって結合している分子、原子又はイオンから選択される2つの種への言及が含まれる。
【0034】
「ハロゲン結合」という用語は、本明細書で使用される場合、ハロゲン原子とルイス塩基との間に形成される非共有結合性超分子化学結合を指す。ハロゲン結合において、ハロゲン原子は、求核性ルイス塩基と相互作用する求電子性種として作用する。有機分子中のハロゲン原子は、分子中の他の部分の電子求引効果により、又は誘起双極子の形成により、電子欠損性であり得る。アニオンなどのルイス塩基(ハロゲン化物アニオン、特にヨウ化物を含める)は、この特定の超分子相互作用を介してハロゲン化有機化合物と強く相互作用することができる。この相互作用は、求電子試薬としてハロゲン原子に関与する任意の超分子非共有結合を定義する。報告されている最も強いハロゲン結合ドナーの1つは、ヨードペンタフルオロベンゼンである(IPFB、図1c)。この化合物において、高電気陰性フッ素原子は芳香族環から電子密度を誘発的に引き出し、これは順じて、芳香族環に結合しているヨウ素から電子密度を引き出して、このハロゲン上に部分正電荷を残す。さらに、IPFBにおけるヨウ素上の電荷密度は、異方的に分布され、正静電位が、C-I結合軸の延長上の炭素の反対側に局在化される。この電気陽性領域は、任意の電子豊富部位(例えばルイス塩基)と誘引的に相互作用することができ、他のハロゲンアニオン(X-、ルイス塩基、図1c)との相互作用が殊に強い。ヨウ素上のこの陽性領域は負静電位のベルトによって囲まれているので、-C-I…X-の同軸配列からの任意のシフト(図1cを参照されたい)は静電反発をもたらす。したがって、角度-C-I…X-は常に180°に近いが、I…X-距離は特定の結晶性構造に依存する。
【0035】
「ハロゲン結合ドナー化合物」という用語は、本明細書で使用される場合、ルイス塩基と相互作用することでハロゲン結合を形成する求電子性ハロゲン原子を含む化合物を指す。
【0036】
「カルコゲン」という用語は、本明細書で使用される場合、元素周期表の第16族から選択される元素を指す。したがって、カルコゲンには、O、S、Se及びTeが含まれる。時折、カルコゲンにはOが含まれるとは受け止められない。したがって、カルコゲンにはS、Se及びTeが含まれると理解され得る。
【0037】
「カルコゲン-金属結合」という用語は、本明細書で使用される場合、カルコゲン原子又はアニオンと金属原子又はカチオンとの間に形成される化学結合を指す。これには、酸素原子と金属カチオン若しくは原子との間又は硫黄原子と金属カチオン若しくは原子との間の化学結合が含まれる。カルコゲン-金属結合は、しばしば、金属原子又はカチオンがルイス酸として作用し、カルコゲン原子又はアニオンがルイス塩基として作用する供与共有結合である。硫黄は強い硫黄-金属結合を形成することができる。
【0038】
「配位不飽和な」という用語は、本明細書で使用される場合、配位が結晶の残り(又はバルク)における同じ型の他のイオンより低い結晶構造におけるアニオン又はカチオンを指す。例えば、結晶のバルクにおけるカチオンが6つの最近接のアニオンによって配位されているならば、5つ以下の最近接のアニオンによって配位されている同じ結晶構造におけるカチオンは、したがって、配位不飽和である。配位不飽和なイオンは、表面にイオンを配位させるための表面を超えて存在する結晶のさらなる単位格子がないことにより、結晶の表面に発生し得るか、又は配位不飽和なイオンは、結晶のバルクにおいて、結晶欠陥(即ち欠陥部位)、例えば空孔(即ち、特に1対のイオンが存在しない場合の、時々ショットキー欠陥として知られているイオンの非存在)がある部位に発生することがあり、したがって、空孔に隣接するイオンは、1つの最近接の対イオンを欠如する。
【0039】
「欠陥部位」という用語は、本明細書で使用される場合、局所的結晶構造がバルク材料の結晶構造に対応しない結晶格子における欠陥を指す。欠陥部位には、点欠陥、線欠陥及び平面欠陥が含まれる。点欠陥としては、空孔欠陥(イオンの非存在)、格子間欠陥(追加イオンの格子間含有)、フレンケル欠陥(格子間欠陥及び空孔欠陥からなる、近接に位置する1対の欠陥)及び不純物イオンの存在が挙げられる。平面欠陥としては、粒界及び積層欠陥が挙げられる。
【0040】
「粒界」という用語は、本明細書で使用される場合、結晶性固体内の異なる結晶配向の領域(即ち、結晶粒)を分離させる平面欠陥を指す。そのため粒界は、結晶性物質における2つの隣接する粒子間又は結晶子間の界面である。粒界欠陥は、材料の電気伝導率及び熱伝導率を減少することがあり、その上、腐食の開始には好ましい部位である。
【0041】
「有機化合物」という用語は、当技術分野におけるそれの通常の意味を取る。典型的に、有機化合物は炭素原子を含む。当業者がそれを理解する通り、有機化合物は、別の炭素原子に、又は水素原子に、又はハロゲン原子に、又はカルコゲン原子(例えば、酸素原子、硫黄原子、セレン原子又はテルル原子)に共有結合している炭素原子を含むことができる。したがって、「有機化合物」という用語には、テトラヨードメタン及びヨードペンタフルオロベンゼンなどの過ハロゲン化有機化合物などの化合物、並びにシュウ酸、尿素及びチオ尿素などの化合物が含まれる。当業者は、「有機化合物」という用語には典型的に、例えば炭化物など、優勢にイオン性である化合物が含まれないことを理解されよう。
【0042】
「チオール基」という用語は、本明細書で使用される場合、-SH基を指す。「スルフィド基」という用語は、本明細書で使用される場合、-S-基、即ち、2個の他の基に結合している硫黄原子を指し、ここで典型的に、硫黄原子は2個の炭素原子に結合している。
【0043】
「電子求引基」という用語は、本明細書で使用される場合、電子を、それが付着されている部分から引き出す基を指す。電子求引基は、しばしば、ハロゲン原子、カルボニル基及びニトロ基などの電気陰性基を含有する。
【0044】
「アルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、直鎖状又は分岐鎖の飽和炭化水素基を指す。アルキル基は、C1〜18アルキル基、C1〜14アルキル基、C1〜10アルキル基、C1〜6アルキル基又はC1〜4アルキル基であってよい。C1〜10アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル又はデシルである。C1〜6アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルである。C1〜4アルキル基の例は、メチル、エチル、i-プロピル、n-プロピル、t-ブチル、s-ブチル又はn-ブチルである。「アルキル」という用語が本明細書のどこかで炭素の数を特定する接頭辞なしに使用されるならば、それは1個から6個の炭素を有する(そしてこれは、本明細書において言及される任意の他の有機基にも当てはまる)。
【0045】
「シクロアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、飽和また部分的不飽和の環式炭化水素基を指す。シクロアルキル基は、C3〜10シクロアルキル基、C3〜8シクロアルキル基又はC3〜6シクロアルキル基であってよい。C3〜8シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサ-1,3-ジエニル、シクロヘプチル及びシクロオクチルが挙げられる。C3〜6シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0046】
「アルケニル」という用語は、本明細書で使用される場合、1個以上の二重結合を含む直鎖状又は分岐鎖の炭化水素基を指す。アルケニル基は、C2〜18アルケニル基、C2〜14アルケニル基、C2〜10アルケニル基、C2〜6アルケニル基又はC2〜4アルケニル基であってよい。C2〜10アルケニル基の例は、エテニル(ビニル)、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル又はデセニルである。C2〜6アルケニル基の例は、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル又はヘキセニルである。C2〜4アルケニル基の例は、エテニル、i-プロペニル、n-プロペニル、s-ブテニル又はn-ブテニルである。アルケニル基は典型的に1個又は2個の二重結合を含む。
【0047】
「アルキニル」という用語は、本明細書で使用される場合、1個以上の三重結合を含む直鎖状又は分岐鎖の炭化水素基を指す。アルキニル基は、C2〜18アルキニル基、C2〜14アルキニル基、C2〜10アルキニル基、C2〜6アルキニル基又はC2〜4アルキニル基であってよい。C2〜10アルキニル基の例は、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル又はデシニルである。C1〜6アルキニル基の例は、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル又はヘキシニルである。アルキニル基は典型的に1個又は2個の三重結合を含む。
【0048】
「アリール」という用語は、本明細書で使用される場合、環部分に6個から14個の炭素原子、典型的には6個から10個の炭素原子を含有する単環式、二環式又は多環式の芳香族環を指す。例としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基及びインダニル基が挙げられる。「アリール基」という用語には、本明細書で使用される場合、ヘテロアリール基が含まれる。「ヘテロアリール」という用語は、本明細書で使用される場合、1個以上のヘテロ原子を含めて、環部分に6個から10個の原子を典型的に含有する単環式又は二環式のヘテロ芳香族環を指す。ヘテロアリール基は、一般に、O、S、N、P、Se及びSiから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する5員又は6員の環である。それは、例えば、1個、2個又は3個のヘテロ原子を含有する。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、フラニル、チエニル、ピラゾリジニル、ピロリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、キノリル及びイソキノリルが挙げられる。
【0049】
「アルキレン」、「シクロアルキレン」、「アルケニレン」、「アルキニレン」及び「アリーレン」という用語は、本明細書で使用される場合、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアリール基からそれぞれ水素原子を除去することによって得られる二価の基を指す。アルキレン基は、C1〜18アルキレン基、C1〜14アルキレン基、C1〜10アルキレン基、C1〜6アルキレン基又はC1〜4アルキレン基であってよい。C1〜6アルキレン基の例は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン及びヘキシレンである。シクロアルキレン基は、C3〜10シクロアルキレン基、C3〜8シクロアルキレン基又はC3〜6シクロアルキレン基であってよい。C3〜6シクロアルキレン基の例としては、シクロペンチレン及びシクロヘキシレンが挙げられる。アルケニレン基は、C2〜18アルケニレン基、C2〜14アルケニレン基、C2〜10アルケニレン基、C2〜6アルケニレン基又はC2〜4アルケニレン基であってよい。C2〜4アルケニレン基の例としては、エテニレン(ビニレン)、プロペニレン及びブテニレンが挙げられる。アルキニレン基は、C2〜18アルキニレン基、C2〜14アルキニレン基、C2〜10アルキニレン基、C2〜6アルキニレン基又はC2〜4アルキニレン基であってよい。C2〜4アルキニレン基の例としては、エチニレン及びプロピニレンが挙げられる。アリーレン基の例としては、フェニレン及びチオフェンから誘導されるジラジカルが挙げられる。アルキレン、シクロアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、及びアリーレンに関して、これらの基は、他の基に、該基上の任意の2つの位置で結合されていてよい。したがって、プロピレンとしては、-CH2CH2CH2-及び-CH2CH(CH3)-が挙げられ、フェニレンとしては、オルト-、メタ-及びパラ-フェニレンが挙げられる。
【0050】
「置換されている」という用語は、置換されている有機基の文脈において本明細書で使用される場合、C1〜10アルキル、アリール(本明細書において定義されている通り)、シアノ、アミノ、ニトロ、C1〜10アルキルアミノ、ジ(C1-10)アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アリール(C1-10)アルキルアミノ、アミド、アシルアミド、ヒドロキシ、オキソ、ハロ、カルボキシ、エステル、アシル、アシルオキシ、C1〜10アルコキシ、アリールオキシ、ハロ(C1-10)アルキル、スルホン酸、チオール、C1〜10アルキルチオ、アリールチオ、スルホニル、リン酸、リン酸エステル、ホスホン酸及びホスホン酸エステルから選択される1個以上の置換基を持つ有機基を指す。置換アルキル基の例としては、ハロアルキル基、ペルハロアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルコキシアルキル基及びアルカリール基が挙げられる。基が置換されている場合、それは1個、2個又は3個の置換基を持つ。例えば、置換されている基は、1個又は2個の置換基を有することができる。
【0051】
「ペルハロアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、全て又はほぼ全てのH原子がハロゲン原子で置き換えられているアルキル基を指す。典型的に、5個のうち3個の水素原子がハロゲン原子で置き換えられている。したがって、ペルハロアルキル基としては、例えば、-(CF2)3F、-(CCl2)2(CF2)2H、及び-(CHCl)(CF2)Hが挙げられる。
【0052】
「オリゴマー」という用語は、本明細書で使用される場合、少数の反復単位(即ち、少数のモノマー)を含む分子を指す。典型的に、オリゴマーは、2個から9個のモノマー又は3個から6個のモノマーを含む。
【0053】
「バンドギャップ」という用語は、本明細書で使用される場合、材料における原子価バンドの上部と伝導バンドの底部との間のエネルギー差異を指す。当業者は、過度の実験を要することなく材料のバンドギャップを容易に測定することができる。
【0054】
「層」という用語は、本明細書で使用される場合、形態が実質的に層状である(例えば、2つの垂直方向に実質的に延長するが、第3の垂直方向におけるそれの延長が制限される)任意の構造を指す。層は、層の範囲にわたって変動する厚さを有し得る。典型的に、層は、およそ一定の厚さを有する。層の「厚さ」は、本明細書で使用される場合、層の平均厚さを指す。層の厚さは、例えば、膜の横断面の電子顕微鏡法などの顕微鏡法を使用することによって、又は例えば触針形状測定器を使用する表面形状測定によって、簡便に測定することができる。
【0055】
「多孔質」という用語は、本明細書で使用される場合、中に細孔が配列されている材料を指す。したがって、例えば、多孔質材料において、細孔は、材料がない足場内の体積である。材料における細孔としては、「閉鎖」細孔並びに開放細孔が挙げられ得る。閉鎖細孔は、非接続空洞、即ち、材料内で単離されているとともに任意の他の細孔に接続されておらず、そのため材料が曝露される流体によってアクセスされ得ない細孔である、材料中の細孔である。他方で、「開放細孔」は、こうした流体によってアクセス可能である。開放及び閉鎖の多孔性の概念は、J. Rouquerolら、「Recommendations for the Characterization of Porous Solids」、Pure & Appl. Chem.、66巻、8号、1739〜1758ページ、1994において詳細に考察されている。そのため、開放多孔性は、流体流が有効に行われる多孔質材料の合計体積の画分を指す。そのため、それは閉鎖細孔を除く。「開放多孔性」という用語は、「接続多孔性」及び「有効多孔性」という用語と相互交換可能であり、当技術分野において、共通して、単純に「多孔性」に縮められる。そのため「開放多孔性がない」という用語は、本明細書で使用される場合、有効多孔性がない材料を指す。「非多孔質」という用語は、本明細書で使用される場合、任意の多孔性がない、即ち、開放多孔性がない及びその上閉鎖多孔性がない材料を指す。
【0056】
「半導体」という用語は、本明細書で使用される場合、導体及び誘電体の電気伝導率間の大きさが中間の電気伝導率を有する材料を指す。半導体は、n型半導体、p型半導体又は真性半導体であってよい。
【0057】
「n型領域」という用語は、本明細書で使用される場合、1種以上の電子輸送(即ち、n型)材料の領域を指す。同様に、「n型層」という用語は、電子輸送(即ち、n型)材料の層を指す。電子輸送(即ちn型)材料は、単一の電子輸送化合物若しくは元素材料、又は2種以上の電子輸送化合物若しくは元素材料の混合物であってよい。電子輸送化合物又は元素材料は非ドープであるか、又は1種以上のドーパント元素でドープすることができる。
【0058】
「p型領域」という用語は、本明細書で使用される場合、1つ以上の正孔輸送(即ち、p型)材料の領域を指す。同様に、「p型層」という用語は、正孔輸送(即ち、p型)材料の層を指す。正孔輸送(即ち、p型)材料は、単一の正孔輸送化合物若しくは元素材料、又は2種以上の正孔輸送化合物若しくは元素材料の混合物であってよい。正孔輸送化合物又は元素材料は非ドープであるか、又は1種以上のドーパント元素でドープすることができる。
【0059】
「処理すること」という用語は、本明細書で使用される場合、1つの化合物が別の化合物と反応又は相互作用するようにされる任意のプロセスを指す。他方の化合物を処理する一方の化合物は、それ自体化合物として添加することができるか、又は一部のプロセスによってそれ自体化合物に変換する前駆体として添加することができる。
【0060】
「上に配置する」という用語は、本明細書で使用される場合、1つの構成成分を利用可能にすること又は別の構成成分の上に置くことを指す。第1の構成成分は、利用可能にする若しくは第2の構成成分上に直接置くことができるか、又は第1の構成成分と第2の構成成分との間に介在する第3の構成成分があってよい。例えば、第1の層が第2の層上に配置されるならば、これとしては、第1の層と第2の層との間に介在する第3の層がある場合が挙げられる。しかしながら、典型的に、「上に配置する」は、1つの構成成分を別の構成成分上に直接置くことを指す。
【0061】
「電極材料」という用語は、本明細書で使用される場合、電極における使用に適当な任意の材料を指す。電極材料は高い電気伝導率を有する。
【0062】
デバイス
第1の態様において、本発明は、
(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト、及び
(b)有機化合物である不動態化剤、
含む半導体であって、不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している半導体を含むデバイスを提供する。金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、有機金属ハロゲン化物ペロブスカイトであってよい。
【0063】
通常、本発明の第1の実施形態のデバイス及び方法における半導体は、(a)前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトを(b)不動態化剤に加えて含み、本発明は、一般に、それらの用語で後述される。しかしながら、上に記述されている通り、本発明は、金属ハロゲン化物ペロブスカイト半導体だけでなく、金属ハロゲン化物ペロブスカイト以外の結晶性イオン性固体半導体、例えば金属酸化物半導体などを含めて、一般に、結晶性イオン性固体半導体にも適用可能である。金属酸化物半導体は、それ自体よく知られており、チタニアは、こうした金属酸化物半導体の1つの例である。したがって、当業者が理解する通り、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの点から後述されている本発明の実施形態のいずれも、任意のイオン結晶性固体、例えば金属酸化物、例えばチタニアなどを使用して実施することもできる。通常、結晶性イオン性固体は、例えば、本明細書においてさらに記載又は定義されている金属ハロゲン化物ペロブスカイトのいずれかであってよい金属ハロゲン化物ペロブスカイトである。しかしながら、代替として、結晶性イオン性固体は、異なる結晶性イオン性固体、例えば金属酸化物を含むことができる。しばしば用いられる1種の金属酸化物は、二酸化チタンである。
【0064】
したがって、別の態様において、本発明の第1の態様は、(a)結晶性イオン性固体及び(b)有機化合物である不動態化剤を含む半導体であって、不動態化剤の分子が結晶性イオン性固体中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している半導体を含むデバイスを提供する。
【0065】
デバイスが結晶性イオン性固体を含む場合、結晶性イオン性固体は、本明細書のどこかで定義されている任意のイオン性固体を含むことができる。例えば、結晶性イオン性固体は、本明細書に記載されている通りの無機n型材料又は無機p型材料、特に結晶性の無機n型材料を含むことができる。したがって、結晶性イオン性固体は、金属酸化物を含むことができる。デバイスは、(a)金属酸化物及び(b)有機化合物である不動態化剤を含む半導体であって、不動態化剤の分子が金属酸化物中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している半導体を含むことができる。金属酸化物は、しばしば、チタン、スズ、亜鉛、ニオブ、タンタル、タングステン、インジウム、ガリウム、ネオジム、パラジウム若しくはカドミウムの酸化物、又は前記金属の2種以上の混合物の酸化物である。例えば、イオン性固体は、TiO2、SnO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、WO3、W2O5、In2O3、Ga2O3、Nd2O3、PbO及びCdOから選択される金属酸化物であってよい。特に、金属酸化物はTiO2であってよい。結晶性イオン性固体は、本明細書に記載されているもののいずれかなどの無機p型材料を含むことができる。結晶性イオン性固体は、半導性金属ハロゲン化物、又は銅を含む半導性化合物を含むことができる。例えば、結晶性イオン性固体は、CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO又はCISを含むことができる。
【0066】
第1の態様において、不動態化剤は有機化合物である。不動態化剤は、2000gmol-1以下又は1000gmol-1以下の分子量を有する有機化合物であってよい。不動態化剤は、1個以上のヘテロ原子を含む有機化合物であってよい。不動態化剤は、典型的に、1個から10個のヘテロ原子を含む又は1個から6個のヘテロ原子を含む有機化合物である。ヘテロ原子は、通常、周期表のp-ブロック(Cを除く)から選択される。例えば、1個以上のヘテロ原子は、独立して、N、P、As、O、S、Se、Te、F、Cl、Br及びIから選択することができる。通常、1個以上のヘテロ原子は、各々独立して、N、P、O、S、Se、Te、F、Cl、Br及びIから選択される。典型的に、1個以上の又は1個から6個のヘテロ原子は、N、O、S、Se、Te、F、Cl、Br及びI、例えばO、S、F、Cl、Br及びI、又はN、S、F、Cl、Br及びIから各々独立して選択されるヘテロ原子であってよい。不動態化剤は、典型的に、O、S、F、Cl、Br及びIから選択される1個以上の原子を含む有機化合物である。不動態化剤は、S、F、Cl、Br及びIから選択される1個以上の原子を含む有機化合物であってよい。有機化合物は、ヘテロ原子の1つ以上の異なる型を含むことができる。
【0067】
第1の態様において、不動態化剤は、N、P、S、F、Cl、Br及びIから選択される1個以上の原子を含む有機化合物であってよい。不動態化剤は、N、P及びSから選択される1個以上の原子を含む有機化合物であってよい。一実施形態において、不動態化剤は、N及びPから選択される1個以上の原子を含む有機化合物である。
【0068】
第1の態様において、不動態化剤の分子の少なくとも一部は、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している。典型的に、不動態化剤の分子は、超分子化学結合によって金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している。不動態化剤の分子の全て又は基本的に全ては、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに結合することができる。不動態化剤の分子の50%以上又は70%以上は、典型的に、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに結合している。例えば、不動態化剤の分子の90%以上は、典型的に、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに結合している。不動態化剤の分子は、しばしば、不動態化剤の分子中のヘテロ原子を介して金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに結合している。「結合している(bonded)」という言葉は、「結合されている(bound)」と相互交換可能に使用することができる。
【0069】
化学結合は典型的に超分子化学結合である。したがって、半導体は、(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト及び(b)有機化合物である不動態化剤を含むことができ、ここで、不動態化剤の分子は、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに超分子的に化学的に結合している。
【0070】
不動態化剤の分子と金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンとの間の化学結合は、通常、ハロゲン結合及びカルコゲン-金属結合から選択される。カルコゲン-金属結合は、酸素-金属結合、硫黄-金属結合、又はセレン-金属結合から選択することができる。典型的に、カルコゲン-金属結合は硫黄-金属結合である。カルコゲン-金属結合は供与共有結合であり得る。
【0071】
不動態化剤の分子と金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンとの間の化学結合は、代替として、窒素-金属結合及びリン-金属結合から選択することができる。窒素-金属結合において、不動態化剤中の窒素原子は、孤立電子対を介して金属イオン又は原子に配位することができる。窒素-金属結合は供与共有結合であってよい。リン-金属結合において、不動態化剤中のリン原子は、孤立電子対を介して金属イオン又は原子に配位することができる。リン-金属結合は供与共有結合であってよい。窒素-金属結合及びリン金属結合の両方が典型的に超分子結合である。
【0072】
不動態化剤の分子が結合している金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のカチオン又はアニオンは、典型的に配位不飽和である。配位不飽和なアニオン及びカチオンは、ペロブスカイトの曝露表面に位置されていてよいか、又は欠陥部位若しくはその近くのペロブスカイトのバルクにあってよい。配位不飽和なアニオン又はカチオンは、1つ、2つ、3つ又は4つの最近接の対イオンの非存在により、配位不飽和とすることができる。
【0073】
不動態化剤の分子が結合している金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンの少なくとも一部は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面に、又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトの結晶構造のバルク中の欠陥部位にあってよい。しばしば、不動態化剤の分子が結合している金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンは、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面に、及び金属ハロゲン化物ペロブスカイトのバルク中の粒界にあってよい。
【0074】
第2の態様において、本発明は、
(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト、及び
(b)有機化合物である不動態化剤、
を含む半導体であって、不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト内の粒界に配置されているとともに金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合されていない半導体を含むデバイスを提供する。金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、有機金属ハロゲン化物ペロブスカイトであってよい。該デバイスは、光電子デバイス、例えば光起電力デバイスであってよい。
【0075】
そのため、本発明の第2の態様は、(a)結晶性イオン性固体及び(b)有機化合物である不動態化剤を含む半導体であって、不動態化剤の分子が結晶性イオン性固体内の粒界に配置されているとともに結晶性イオン性固体中のアニオン又はカチオンに化学的に結合されていない半導体を含むデバイスも提供する。
【0076】
第2の態様において、不動態化剤は、非極性有機分子を含む有機化合物であってよい。不動態化剤は、多環式芳香族炭化水素分子を含む有機化合物であってよい。
【0077】
不動態化剤及び不動態化
上に記載されている通り、第1の態様において、有機化合物である不動態化剤は、典型的に、1個以上のヘテロ原子を含む有機化合物である。不動態化剤は、孤立電子対を有するヘテロ原子を含む有機化合物であってよい。孤立電子対は、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のイオンと相互作用することで、化学結合、例えば配位結合などの超分子結合を形成することができる。
【0078】
典型的に、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの式は、化合物A又は化合物のカチオンAH+を含有し、不動態化剤は化合物Aでない。したがって、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの式に特定のアルキルアンモニウムイオンが含まれるならば、第1の態様の不動態化剤は、対応するアルキルアミンでない。
【0079】
第1の態様において、不動態化剤は、(a)ハロゲン結合ドナー化合物及び(b)孤立電子対を有する少なくとも1個のヘテロ原子を含む有機化合物から選択される化合物であってよい。孤立電子対を有する少なくとも1個のヘテロ原子を含む有機化合物は、N、P、As、O、S、Se及びTeから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む有機化合物から選択することができる。孤立電子対を有する少なくとも1個のヘテロ原子を含む有機化合物は、典型的に、N、P、O、S及びSeから選択される又はN、O及びSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む有機化合物から選択される。不動態化剤は、(a)ハロゲン結合ドナー化合物及び(b)N、P、As、O、S、Se及びTeから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む有機化合物から選択される化合物であってよい。不動態化剤は、(a)ハロゲン結合ドナー化合物、及び(b)N、P、O、S及びSe、又はN、O及びSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む有機化合物から選択される化合物であってよい。
【0080】
少なくとも1つのNを含む化合物の例としては、アミン、イミン、ニトリル、ヒドラジン、ピリジン、2H-ピロール、ピロール、2-ピロリン、3-ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、2-イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、2-ピラゾリン、及び他の窒素含有ヘテロ環から選択される基を含む化合物が挙げられる。例えば、少なくとも1つのNを含む化合物は、アミン、イミン、ニトリル、ヒドラジン、ピリジン及びピロリジンから選択される基を含む化合物であってよい。したがって、不動態化剤は、置換若しくは非置換アミン、置換若しくは非置換イミン、置換若しくは非置換ピリジン又は置換若しくは非置換ピロリジンであってよい。
【0081】
本発明の第1の態様によるデバイスにおいて、不動態化剤は、(a)ハロゲン結合ドナー化合物及び(b)少なくとも1個のチオール基又はスルフィド基を含む有機化合物から選択される化合物であってよい。不動態化剤は、N及びPから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む有機化合物であってよい。
【0082】
第1の態様の不動態化剤は、ハロゲン結合ドナー化合物であってよい。不動態化剤は、少なくとも1個のチオール基又はスルフィド基を含む有機化合物であってよい。デバイスは、さらなる不動態化剤を含むことができる。したがって、デバイスは、第2の不動態化剤をさらに含むことができる。例えば、デバイスは、ハロゲン結合ドナー化合物である第1の不動態化剤及び少なくとも1個のチオール基又はスルフィド基を含む有機化合物である第2の不動態化剤を含むことができる。
【0083】
第1の態様の不動態化剤は、式X-EWGのハロゲン結合ドナー化合物であってよく、式中、Xは、I、Br、Cl及びFから選択されるハロゲンであり、EWGは、電子求引基である。EWGは、Xから電子を誘引的に又は共役的に引き出す任意の基であってよい。EWGは、炭素の電気陰性度よりも大きい電気陰性度を有する1個以上の原子を含む有機基であってよい。EWGは、2.6以上のポーリング電気陰性度を有する1個以上の、2個以上の、3個以上の又は3個から6個の原子を含むことができる。EWGは、2.9以上のポーリング電気陰性度を有する1個以上の、2個以上の、3個以上の又は3個から6個の原子を含むことができる。2.6以上又は2.9以上のポーリング電気陰性度を有する原子は、10個以下又は6個以下の結合によってXから分離することができる。ポーリング電気陰性度値の表は、当業者に利用可能である。ポーリング電気陰性度値としては、Fには2.98、Oには3.44、Clには3.16、Nには3.04、及びBrには2.96が挙げられる。EWGは、F、Cl、Br、I、O及びSから選択される2個以上の、3個以上の、4個以上の又は5個以上の原子を含む有機基であってよい。EWGはペルハロ-C1〜12-アルキル基であってよい。例えば、EWGは、トリフルオルメチル、ペンタフルオロエチル又はヘプタフルオロプロピル、ペルフルオロブチル、ペルフルオロペンチル、ペルフルオロヘキシル、ペルフルオロヘプチル、ペルフルオロオクチル、ペルフルオロノニル又はペルフルオロデシルなど、ペルフルオロ-C1〜12-アルキル基であってよい。
【0084】
Xは、I、Br、Cl及びFから、I、Br及びClから、又はI及びBrから選択することができる。例えば、XはIであってよい。
【0085】
第1の態様の不動態化剤は、しばしば、式X-EWGのハロゲン結合ドナー化合物であり、式中、
Xは、I、Br、Cl及びFから選択されるハロゲンであり、
EWGは、-(CY2)nY、-(CY2)nR、-(CR2)nY、-(CR2)nR、
-(CY2)nCR3、-(CR2)nCY3、-(CY2)n(CR2)mY、-(CR2)n(CY2)mY、-(CY2)n(CR2)mR、
-(CR2)n(CY2)mR、-(CY2)n(CR2)mCY3、-(CR2)n(CY2)mCR3、-(CRaYb)nY、-(CRaYb)nR、
-C6Y5、-(C6R)Y4、-(C6R2)Y3、-(C6R3)Y2、-(C6R4)Y、-CY=CYR、-CY=CR2、-CR=CYR、
-C≡CY、-C≡CR、-COR、-COCYR2及び-COCY2Rから選択される基であり、ここで、
各Yは同じ又は異なっており、I、Br、Cl及びFから選択されるハロゲンであり、
各Rは同じ又は異なっており、H、ヒドロキシ、ニトリル、ニトロ、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基であり、
nは、1から18の整数であり、
mは、1から18の整数であり、
各aは同じ又は異なっており、0、1又は2であり、
各bは同じ又は異なっており、0、1又は2であり、
各CRaYb基におけるa及びbの和は、2である。
【0086】
したがって、-(CRaYb)nY基及び-(CRaYb)nR基としては、任意の数のハロゲン原子で置換されている任意の直鎖アルキル基が挙げられる。例えば、-(CRaYb)nYとしては、-(CClH)(CH2)2(CFI)Br及び-(CHF)3CF3が挙げられる。
【0087】
しばしば、nは1から6の整数であり、mは1から6の整数である。EWGは、-(CY2)nY、-(CY2)nR、-(CR2)nY、-(CR2)nR、-(CY2)nCR3、-(CR2)nCY3、-(CY2)n(CR2)mY、-(CR2)n(CY2)mY、-(CY2)n(CR2)mR、-(CR2)n(CY2)mR、-(CY2)n(CR2)mCY3、-(CR2)n(CY2)mCR3、-(CRaYb)nY、-(CRaYb)nR、-C6Y5、-(C6R)Y4、-(C6R2)Y3、-(C6R3)Y2、-(C6R4)Y、-CY=CYR、-CY=CR2、-CR=CYR、-C≡CY、-C≡CR、-COR、-COCYR2及び-COCY2Rから選択される基であってよく、ここで、各Yは同じ又は異なっており、I、Br、Cl及びFから選択されるハロゲンであり、各Rは同じ又は異なっており、H、ヒドロキシ、ニトリル、ニトロ、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基であり、nは1から6の整数であり、mは1から6の整数であり、各aは同じ又は異なっており、0、1又は2であり、各bは同じ又は異なっており、0、1又は2であり、各CRaYb基におけるa及びbの和は2である。しばしば、Rは非置換である。各Rは同じ又は異なっており、通常、H、ヒドロキシ、ニトリル、ニトロ、非置換C1〜10-アルキル、非置換C3〜10-シクロアルキル、非置換C2〜10-アルケニル、非置換C2〜10-アルキニル、及び非置換アリールから選択される基である。
【0088】
第1の態様の不動態化剤は、式X-EWGのハロゲン結合ドナー化合物であってよく、式中、Xは、I、Br、Cl及びFから選択されるハロゲンであり、EWGは、-CY3、-(CY2)2Y、-(CY2)3Y、-CY2R、-(CY2)2R、-(CY2)3R、-CR2Y、-C6Y5、-(C6R)Y4、-(C6R2)Y3、-(C6R3)Y2、-(C6R4)Y、-CY=CYR、-CY=CR2、-C≡CY、-COR、-COCYR2及び-COCY2Rから選択される基であり、ここで、各Yは同じ又は異なっており、I、Br、Cl及びFから選択されるハロゲンであり、各Rは同じ又は異なっており、H、ヒドロキシ、ニトリル、ニトロ、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基である。
【0089】
EWGは、-CY3、-(CY2)2Y、-(CY2)3Y、-(CY2)2R、-(CY2)3R、-C6Y5、-(C6R)Y4、-(C6R2)Y3、-COR、-COCYR2及び-COCY2Rから選択される基であってよい。Xは、I、Br及びClから選択することができる。Yは、I、Br、Cl及びFから、Br、Cl及びFから、又はCl及びFからから選択することができる。例えば、YはFであってよい。Xは、I及びBrから選択することができ、Yは、Cl及びFから選択することができる。
【0090】
第1の態様の不動態化剤は、しばしば、X(CY2)mCY3及び
【化1】
から選択されるハロゲン結合ドナー化合物であり、式中、Xは、I、Br、Cl及びFから選択されるハロゲンであり、各Yは同じ又は異なっており、I、Br、Cl及びFから選択されるハロゲンであり、mは0又は1から11の整数であり、nは1から5の整数である。
【0091】
第1の態様の不動態化剤は、I(CY2)mCY3及び
【化2】
から選択されるハロゲン結合ドナー化合物であってよく、式中、各Yは同じ又は異なっており、I、Br、Cl及びFから選択されるハロゲンであり、mは0又は1から11の整数であり、nは1から5の整数である。
【0092】
第1の態様の不動態化剤は、I(CF2)mCF3及び
【化3】
から選択されるハロゲン結合ドナー化合物であってよく、式中、mは0又は1から11の整数であり、nは1から5の整数である。
【0093】
しばしば、mは0から8である。典型的に、nは2から5である。典型的に、Xは、I又はBrから選択され、Yは、Br、Cl及びFから選択することができる。
【0094】
第1の態様の不動態化剤は、例えば、ヨードペンタフルオロベンゼン、ヨードテトラフルオロベンゼン、ヨードクロロテトラフルオロベンゼン、ヨードジクロロトリフルオロベンゼン、ヨードクロロトリフルオロベンゼン、ヨードトリフルオロベンゼン、ヨードジクロロジフルオロベンゼン及びヨードジフルオロベンゼンから選択することができる。
【0095】
第1の態様の不動態化剤は、ヨードペンタフルオロベンゼン及びペルフルオロ-C1〜12アルキルヨウ素から選択することができる。しばしば、不動態化剤は、ヨードペンタフルオロベンゼン、ペルフルオロ-n-ブチルヨウ素、ペルフルオロ-n-ヘキシルヨウ素及びペルフルオロ-n-デシルヨウ素から選択される。ヨードペンタフルオロベンゼンは、式IC6F5を有する。
【0096】
第1の態様の不動態化剤は、ペロブスカイト中の金属イオンとともにカルコゲン-金属結合を形成するのに適当である有機分子であってよい。したがって、不動態化剤は、カルコゲン原子を含む有機分子であり得る。不動態化剤は、1個以上の、例えば2個以上のカルコゲン原子を含む化合物であり得る。例えば、不動態化剤は、ヒドロキシ基を含む有機化合物、エーテル基を含む化合物、有機硫黄化合物、有機セレン化合物、又は有機テルル化合物であってよい。したがって、不動態化剤は、有機硫黄化合物又は有機セレン化合物であり得る。しばしば、不動態化剤は有機硫黄化合物である。
【0097】
有機硫黄化合物の例としては、チオエーテル(スルフィド)、チオエステル、チオアセタール、チオール、ジスルフィド、スルホン、チオスルフィネート、チオケトン及びチオアルデヒドから選択される1つ以上の基を含む化合物が挙げられる。有機硫黄化合物の例としては、チオフェン基、ジヒドロチオフェン基、テトラヒドロチオフェン基又はテトラチアフルバレン基を含む化合物が挙げられる。有機セレン及び有機硫黄の化合物としては、有機硫黄化合物中の1個以上の硫黄原子をセレン又はテルルとそれぞれ置き換えることによって誘導されるものが挙げられる。
【0098】
第1の態様の不動態化剤は、少なくとも1個のチオール基又はスルフィド基を含む有機化合物であってよい。不動態化剤は、1個のチオール基又はスルフィド基を含む有機化合物であり得る。不動態化剤は、2個以上のチオール基又はスルフィド基を含む有機化合物であり得る。不動態化剤は、少なくとも1個のチオール基又はスルフィド基を含むオリゴマー又はポリマーであり得る。不動態化剤がオリゴマー又はポリマーであるならば、オリゴマー又はポリマーは、チオフェン環を含むモノマーを含むことができる。不動態化剤がオリゴマーであるならば、2個から9個の反復単位、2個から8個の反復単位、又は3個から6個の反復単位を有することができる。反復単位は、チオフェン又はテトラヒドロチオフェンを含むことができる。不動態化剤は、セキシチオフェンから選択することができる。不動態化剤がポリマーであるならば、それは10個以上の反復単位を有する。しかしながら、しばしば、不動態化剤はポリマーでない。したがって、一実施形態において、有機化合物である不動態化剤は、ポリマーでない。ポリマーは、典型的に、高分子量を有する。したがって、有機化合物である不動態化剤は、2000gmol-1以下又は1000gmol-1以下の分子量を有する有機化合物であり得る。一部の場合において、不動態化剤は、反復単位を含まないモノマー有機化合物であり得る。
【0099】
第1の態様の不動態化剤は、(i)R1SH、R1SR1、HSR2SH、R1SR2SR1、R1SR2SH、
【化4】
[式中、各R1は同じ又は異なっており、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基であり、R2は、非置換又は置換C1〜18-アルキレン、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキレン、非置換又は置換C2〜18-アルケニレン、非置換又は置換C2〜18-アルキニレン、及び非置換又は置換アリーレンから選択される基であり、各R3は同じ又は異なっており、H、ヒドロキシ、ニトリル、ニトロ、ハロ、チオール、アミノ、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基である]並びに(ii)少なくとも1個のチオール基又はスルフィド基を含むオリゴマーから選択される、少なくとも1個のチオール基又はスルフィド基を含む有機化合物であってよい。
【0100】
各R1は同じ又は異なっており、非置換又は置換C1〜6-アルキル、非置換又は置換C3〜6-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜6-アルケニル、非置換又は置換C2〜6-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基であり得る。R1は非置換であり得る。R2は、非置換又は置換C1〜6-アルキレン、非置換又は置換C3〜6-シクロアルキレン、非置換又は置換C2〜6-アルケニレン、非置換又は置換C2〜6-アルキニレン、及び非置換又は置換アリーレンから選択される基であり得る。R2は非置換であり得る。各R3は同じ又は異なっており、H、ヒドロキシ、ニトリル、ニトロ、ハロ、アミノ、チオール、非置換又は置換C1〜6-アルキル、非置換又は置換C3〜6-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜6-アルケニル、非置換又は置換C2〜6-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基であり得る。R3は非置換であり得る。R3の1つ、2つ又は3つはHであり得る。
【0101】
第1の態様の不動態化剤は、
【化5】
から選択される少なくとも1個のチオール基又はスルフィド基を含む有機化合物であってよく、式中、各R3は同じ又は異なっており、H、ヒドロキシ、ニトリル、ニトロ、ハロ、チオール、アミノ、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基であり、各Rは同じ又は異なっており、H、ヒドロキシ、ニトリル、ニトロ、ハロ、チオール、アミノ、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基である。
【0102】
第1の態様の不動態化剤は、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール及びペンタンチオールなどのチオールであり得る。不動態化剤は、エタンジチオール、プロパンジチオール及びブタンジチオールなどのジチオールであり得る。しばしば、不動態化剤は、硫黄原子を含むヘテロアリール基を含む化合物である。不動態化剤は、チオフェン基、ジチオフェン基又はチアゾール基を含むことができる。
【0103】
第1の態様の不動態化剤は、1個、2個、3個又は4個の非置換又は置換C1〜6-アルキル基で置換されているチオフェン又はテトラヒドロチオフェンから選択することができる。不動態化剤は、チオフェン、テトラヒドロチオフェン及び3-C1〜6-アルキルチオフェンから選択することができる。不動態化剤は、チオフェン、3-ヘキシルチオフェン又はテトラヒドロチオフェンであり得る。不動態化剤は、しばしば、チオフェン又はテトラヒドロチオフェンである。
【0104】
第1の態様の不動態化剤の分子は、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン及びカチオンとともに超分子化学結合を形成する。これらの超分子結合の形成(例えば、ハロゲン結合及びカルコゲン-金属結合)は、不動態化剤の分子を秩序化する。不動態化剤の分子は、定常層(regular layer)中に秩序化することができる。
【0105】
第1の態様の不動態化剤の分子は、しばしば、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面上に自己集合層を形成する。不動態化剤の分子は、ペロブスカイトの表面上に単層を形成することができる。不動態化剤の分子は、自己集合単層を形成することができる。不動態化剤の分子は、10%から100%、50%から100%、又は80%から100%の範囲を有するペロブスカイトの表面上に単層を形成することができる。範囲は、標準的技術、例えば二重偏光干渉法によって測定することができる。
【0106】
第1の態様の不動態化剤の分子は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの結晶構造のバルク中の配位不飽和カチオン又は配位不飽和アニオンに結合することができる。「欠陥部位」の定義において上記で考察されている通り、いくつかの型の欠陥は、ペロブスカイトのバルク中の配位不飽和なアニオン及びカチオンを残すことがある。これらの内部の欠陥部位は、デバイス効率を低減することもある。不動態化剤の分子は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの結晶構造のバルクに入るほど十分小さくてよい。例えば、不動態化剤の分子は、1nm以下の最大外幅を有することができる。第1の態様の不動態化剤の分子は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの結晶構造のバルク中の粒界でカチオン又はアニオンに結合することもできる。第1の態様の不動態化剤は、しばしば、ハロゲン結合ドナー化合物であり、ハロゲン結合ドナー化合物の分子は、ハロゲン結合することによって金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のハロゲン化物アニオンに結合することができる。第1の態様の不動態化剤は、しばしば、少なくとも1個のチオール基又はスルフィド基を含む有機化合物であり、有機化合物の分子は、硫黄-金属結合によって金属ハロゲン化物ペロブスカイト中の金属カチオンに結合することができる。
【0107】
第1の態様の不動態化剤は、N及びPから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む有機化合物であり得る。不動態化剤は、例えば、置換又は非置換アミン、置換又は非置換イミン、置換又は非置換ピリジン、置換又は非置換ピロリジン、置換又は非置換ピロール、及び置換又は非置換ホスフィンから選択される有機化合物であり得る。
【0108】
置換又は非置換アミンは、典型的に、置換若しくは非置換第1級アミン、置換若しくは非置換第2級アミン、又は置換若しくは非置換第3級アミンである。
【0109】
置換又は非置換第1級アミンは、置換又は非置換第1級アルキルアミン又は置換又は非置換第1級アリールアミンであってよい。そのため、不動態化剤は、式RNH2の化合物であってよく、式中Rは、置換又は非置換C1〜18アルキル及び置換又は非置換アリールから選択される基である。例えば、不動態化用化合物は、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、tert-ブチルアミン又はアニリンであってよい。Rは、例えば、置換又は非置換C2〜18アルキル、及び置換又は非置換アリールから選択することができる。そのため、不動態化用化合物は、エチルアミン、プロピルアミン、tert-ブチルアミン又はアニリンであり得る。
【0110】
置換又は非置換第2級アミンは、置換若しくは非置換第2級アルキルアミン(ジアルキルアミン)、置換若しくは非置換第2級アリールアミン(ジアリールアミン)、又は置換若しくは非置換第2級アルキルアリールアミンであってよい。そのため、不動態化剤は、式R2NHの化合物であってよく、式中各Rは、置換若しくは非置換C1〜18アルキル、又は置換若しくは非置換アリールから独立して選択される基であり、場合により、2つのR基は一緒に結合されて環を形成する。例えば、不動態化剤は、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ピロリジン、ピペリジン又はジフェニルアミンであり得る。したがって、置換及び非置換第2級アミンには、置換又は非置換ピロリジン、置換又は非置換ピペリジン、及び置換又は非置換モルホリンなどの環状アミンが挙げられる。
【0111】
置換又は非置換第3級アミンは、置換若しくは非置換第3級アルキルアミン(トリアルキルアミン)、置換若しくは非置換第3級アリールアミン(トリアリールアミン)又は置換若しくは非置換第3級アルキルアリールアミン(ジアルキルアリールアミン、又はアルキルジアリールアミン)であってよい。そのため、不動態化剤は、式R3Nの化合物であってよく、式中各Rは、置換若しくは非置換C1〜18アルキル、又は置換若しくは非置換アリールから独立して選択される基であり、場合により、2つのR基は一緒に結合されて環を形成する。例えば、不動態化剤は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、N-メチルピロリジン又はキヌクリジンであり得る。
【0112】
したがって、第1の態様の不動態化剤は、式
【化6】
の有機化合物であってよく、
式中、
R4、R5及びR6は、各々独立して、H、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基であり、全てのR4、R5及びR6がHであるとは限らず、場合により、R4、R5及びR6の2つ以上は、一緒に結合されて環を形成し、
各R7は、独立して、H、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基であり、場合により、2つ以上のR7基は、一緒に結合されて環を形成し、
R8は、H、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニルから選択される基であり、
R9、R10及びR11は、各々独立して、H、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基であり、場合により、R9、R10及びR11の2つ以上は、一緒に結合されて環を形成し、
実線と一緒の点線は、単結合又は二重結合を表し得る。
【0113】
典型的に、R4、R5及びR6は、各々独立して、H、非置換又は置換C1〜6-アルキル、非置換又は置換C3〜6-シクロアルキル、及び非置換又は置換アリールから選択される基であり、全てのR4、R5及びR6がHであるとは限らず、場合により、R4、R5及びR6の2つ以上は、一緒に結合されて環を形成する。
【0114】
典型的に、各R7は、独立して、H及び非置換又は置換C1〜6-アルキルから選択される基であり、場合により、2つ以上のR7基は、一緒に結合されて環を形成する。
【0115】
典型的に、R8は、H及び非置換又は置換C1〜6-アルキルから選択される基である。
【0116】
典型的に、R9、R10及びR11は、各々独立して、H及び非置換又は置換C1〜6-アルキルから選択される基であり、場合により、R9、R10及びR11の2つ以上は、一緒に結合されて環を形成する。
【0117】
好ましくは、R4、R5及びR6は、各々独立して、H及び非置換又は置換C1〜3-アルキルから選択される基であり、全てのR4、R5及びR6がHであるとは限らず、場合により、R4、R5及びR6の2つ以上は、一緒に結合されて環を形成する。しばしば、R4、R5及びR6の少なくとも1つはHである。
【0118】
好ましくは、各R7は、独立して、H及び非置換又は置換C1〜3-アルキルから選択される基であり、場合により、2つ以上のR7基は、一緒に結合されて環を形成する。
【0119】
好ましくは、R8は、H及び非置換又は置換C1〜3-アルキルから選択される基である。R8は、しばしばHである。
【0120】
好ましくは、R9、R10及びR11は、各々独立して、H及び非置換又は置換C1〜3-アルキルから選択される基であり、場合により、R9、R10及びR11の2つ以上は、一緒に結合されて環を形成する。
【0121】
より好ましくは、R4、R5及びR6は、各々独立して、H及び非置換のメチル又はエチルから選択される基であり、全てのR4、R5及びR6がHであるとは限らず、場合により、R9、R10及びR11の2つ以上は、一緒に結合されて環を形成する。しばしば、R4、R5及びR6の少なくとも1つはHである。
【0122】
より好ましくは、各R7は、独立して、H及び非置換のメチル又はエチルから選択される基であり、場合により、R9、R10及びR11の2つ以上は、一緒に結合されて環を形成する。
【0123】
より好ましくは、R8は、H及び非置換又は置換のメチル又はエチルから選択される基である。
【0124】
より好ましくは、R9及びR10は、各々独立して、H及び非置換のメチル又はエチルから選択される基であり、場合により、R9及びR10の2つ以上は、一緒に結合されて環を形成し、R11は、H又は非置換メチルである。
【0125】
例えば、第1の態様の不動態化剤は、しばしば、式
【化7】
の化合物であり、
式中、R9及びR10は、各々独立して、H及び置換又は非置換のメチル又はエチルから選択される基であり、場合により、R9及びR10の2つ以上は、一緒に結合されて環を形成する。例えば、R9及びR10は、各々独立して、H及び非置換のメチル又はエチルから選択される基であり得る。典型的に、R9及びR10は、各々独立して、H及び非置換メチルから選択される基である。しばしば、各R10はHである。
【0126】
一実施形態において、不動態化用化合物は、1個以上の窒素原子を含むヘテロ環式又はヘテロアリール化合物である。1個以上のN原子を含むヘテロ環式化合物の例としては、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、モルホリン、チオモルホリン、2H-ピロール、2-ピロリン、3-ピロリン、2-イミダゾリン、イミダゾリジン、2-ピラゾリン、ピラゾリジン、3H-インドール、インドリン及びキヌクリジンが挙げられる。1個以上のN原子を含むヘテロアリール化合物の例としては、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5-トリアジン、インドール、イソインドール、ベンズイミダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、アクリジン及びフェナジンが挙げられる。これらのうちで、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、2H-ピロール、2-ピロリン、3-ピロリン、ピロール及びピリジンが好ましい。
【0127】
不動態化剤が1個以上のN原子を含むヘテロ環式又はヘテロアリール化合物であるならば、それは置換又は非置換であってよい。例えば、それは、1つ以上の置換又は非置換C1〜6アルキル基で置換されていてよい。しばしば、ヘテロ環式又はヘテロアリール不動態化剤は、多くとも2個の非置換C1〜3アルキル基で置換されている。
【0128】
置換又は非置換イミンは、式R2C=NRの化合物であってよく、式中、各Rは、独立して、H及び置換若しくは非置換C1〜18アルキル(例えばC1〜6アルキル)又は置換若しくは非置換アリールから選択され、場合により、2つのR基は、一緒に結合されて環を形成する。
【0129】
しばしば、第1の態様の不動態化剤は、置換又は非置換ピリジンである。したがって、不動態化剤は、ピリジン、2-メチルピリンジン、3-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、2,5-ジメチルピリジン、2-エチルピリンジン、3-エチルピリジン、2,6-ジエチルピリジン、2,5-ジエチルピリジン、キノリン及びアクリジンから選択することができる。
【0130】
置換又は非置換ピロリジンとしては、式
【化8】
の化合物が挙げられ、
式中、各R7は、独立して、H及び非置換又は置換C1〜6-アルキルから選択される基であり、場合により、2つ以上のR7基は、一緒に結合されて環を形成し、R8は、H及び非置換又は置換C1〜6-アルキルから選択される基である。
【0131】
好ましくは、各R7は、独立して、H及び非置換又は置換C1〜3-アルキルから選択される基であり、場合により、2つ以上のR7基は、一緒に結合されて環を形成し、R8は、H及び非置換又は置換C1〜3-アルキルから選択される基である。R8は、しばしばHである。
【0132】
置換又は非置換ピロールとしては、式
【化9】
の化合物が挙げられ、
式中、各R7は、独立して、H及び非置換又は置換C1〜6-アルキルから選択される基であり、場合により、2つ以上のR7基は、一緒に結合されて環を形成し、R8は、H及び非置換又は置換C1〜6-アルキルから選択される基である。
【0133】
好ましくは、各R7は、独立して、H及び非置換又は置換C1〜3-アルキルから選択される基であり、場合により、2つ以上のR7基は、一緒に結合されて環を形成し、R8は、H及び非置換又は置換C1〜3-アルキルから選択される基である。R8は、しばしばHである。
【0134】
第1の態様の不動態化剤は、1個以上のP原子を含む有機化合物であってよい。したがって、不動態化用化合物は、置換又は非置換ホスフィンであり得る。置換又は非置換ホスフィンの例としては、式PR3の化合物が挙げられ、式中、各Rは、独立して、H、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基であり、全てのR基がHであるとは限らず、場合により、R基の2つ以上は、一緒に結合されて環を形成する。典型的に、各Rは、独立して、非置換又は置換C1〜6-アルキル、非置換又は置換C3〜6-シクロアルキル、及び非置換又は置換アリールから選択される基であり、場合により、R基の2つ以上は、一緒に結合されて環を形成する。したがって、不動態化剤は、トリアリールホスフィン、ジアリールアルキルホスフィン、アリールジアルキルホスフィン又はトリアルキルホスフィンであり得る。好ましくは、各Rは、独立して、非置換C1〜6-アルキル、及び非置換又は置換アリールから選択される基である。例えば、不動態化剤は、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン又はトリシクロヘキシルホスフィンであり得る。
【0135】
好ましくは、第1の態様の不動態化剤は、置換及び非置換ピリジン、置換及び非置換ピロール、置換及び非置換第1級アミン、置換及び非置換第2級アミン、置換及び非置換第3級アミン、並びに置換及び非置換ホスフィンから選択される、1個以上のP又はN原子を含む有機化合物である。
【0136】
より好ましくは、第1の態様の不動態化剤は、置換及び非置換ピリジンである、1個以上のP又はN原子を含む有機化合物である。
【0137】
最も好ましくは、第1の態様の不動態化剤は、ピリジン(即ち、非置換ピリジンC5H5N)である。
【0138】
一部の例において、第1の態様の不動態化用化合物は、4-アルキルピリジンでなく、ここでアルキルは、4以上の炭素原子を含むアルキル基である。例えば、不動態化用化合物は、しばしば、4-tert-ブチルピリジンでない。不動態化剤における嵩高い基の存在は、立体の効果を導入することがある。
【0139】
上に記載されている通り、第2の態様において、有機化合物である不動態化剤は、典型的に、非極性有機分子を含む有機化合物である。不動態化剤の分子は、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合しないが、粒界に/粒界内に配置され、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの隣接する結晶粒中のアニオンとカチオンとの間の相互作用を遮断するように作用する。不動態化剤は、多環式芳香族炭化水素などの非極性有機化合物であってよい。例として、不動態化剤は、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン及びフルオランテンのいずれかを含むことができる。
【0140】
金属ハロゲン化物ペロブスカイト
上に記述されている通り、本発明の第1及び第2の態様において、デバイスは、(a)結晶性イオン性固体及び(b)有機化合物である不動態化剤を含む半導体を含むことができる。デバイスは、例えば、(a)結晶性イオン性固体及び(b)有機化合物である不動態化剤を含む半導体であって、不動態化剤の分子が結晶性のイオン性化合物中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している半導体を含むことができる。半導体が結晶性イオン性固体を含む場合、結晶性イオン性固体は、典型的に、TiO2、SnO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、WO3、W2O5、In2O3、Ga2O3、Nd2O3、PbO及びCdOから選択される金属酸化物を含む。特に、金属酸化物はTiO2であり得る。結晶性イオン性固体は、半導性金属ハロゲン化物、又は銅を含む半導性化合物を含むことができる。例えば、結晶性イオン性固体は、CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO又はCISを含むことができる。しかしながら、通常、イオン性化合物は、後述されている通りの金属ハロゲン化物ペロブスカイトである。
【0141】
したがって、本発明のデバイスにおけるペロブスカイトは、金属ハロゲン化物ペロブスカイトである。金属ハロゲン化物ペロブスカイトの式は、少なくとも1種の金属及び少なくとも1種のハロゲン化物を含む。ペロブスカイトは、第1のカチオン、第2のカチオン及び少なくとも1つのハロゲン化物アニオンを含み、ここで、第1及び第2のカチオンの少なくとも1つは、金属カチオンを含む。ペロブスカイトは、さらなるカチオン及びアニオンを含有することができる。ペロブスカイトは、層状ペロブスカイトであってよい。
【0142】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、WO 2013/171517、WO 2013/171518及びWO 2013/171520に記載されており、これらの全内容を参照により本明細書に組み込む。WO 2013/171517、WO 2013/171518及びWO 2013/171520のいずれかに記載されている金属ハロゲン化物ペロブスカイトのいずれかが、本発明において使用することができる。
【0143】
第1のカチオンは任意のカチオンであってよいが、しばしば、金属カチオン又は有機カチオンである。第1のカチオンが金属カチオンであるならば、それは一価又は二価の金属カチオンであってよい。第1のカチオンは、Li+、Na+、K+、Rb+及びCs+から選択することができる。第1のカチオンは、典型的に、有機カチオンである。第1のカチオンが有機カチオンであるならば、それは、下に記載されている任意の有機カチオンであってよい。
【0144】
第2のカチオンは、典型的に金属カチオンである。第2のカチオンは、任意の金属カチオンであってよい。第2のカチオンは、二価の金属カチオンであってよい。第2のカチオンは、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Sn2+、Yb2+及びEu2+から選択される二価の金属カチオンであり得る。
【0145】
通常、少なくとも1つのハロゲン化物アニオンは、フッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物から選択され、例えば塩化物、臭化物及びヨウ化物である。
【0146】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、有機金属ハロゲン化物ペロブスカイトであってよい。したがって、金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、典型的に、式(I):
[A][B][X]3 (I)
のペロブスカイトであり、
式中、
[A]は、少なくとも1つの有機カチオンであり、
[B]は、少なくとも1つの金属カチオンであり、ここで[B]は、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Sn2+、Yb2+及びEu2+の少なくとも1つを含み、
[X]は、少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである。
【0147】
したがって、ペロブスカイトは、典型的に、有機カチオン、金属カチオン及び少なくともハロゲン化物アニオンを含む。金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、[A]が少なくとも1つの有機カチオンであり、[B]が、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Sn2+、Yb2+及びEu2+から選択される少なくとも1つの金属カチオンであり、[X]が少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである、式[A][B][X]3のペロブスカイトであり得る。
【0148】
[B]は、しばしば、Sn2+、Pb2+、Cu2+、Ge2+及びNi2+の少なくとも1つを含む。金属カチオンは、Sn2+、Pb2+、Cu2+、Ge2+及びNi2+から選択することができる。金属カチオンは、Sn2+及びPb2+から選択することができる。
【0149】
有機カチオンは、任意の有機カチオン、即ち、少なくとも1個の炭素原子及び場合により少なくとも1個の水素原子を含むカチオンであってよい。有機カチオンは、しばしば、式(R5R6R7R8N)+を有し、式中、R5は、H、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基であり、R6は、H、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基であり、R7は、H、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基であり、R8は、H、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基である。
【0150】
有機カチオンは、式(R5R6R7R8N)+を有することができ、式中、R5は、H、非置換C1〜18-アルキル、及び非置換アリールから選択される基であり、R6は、H、非置換C1〜18-アルキル、及び非置換アリールから選択される基であり、R7は、H、非置換C1〜18-アルキル、及び非置換アリールから選択される基であり、R8は、H、非置換C1〜18-アルキル、及び非置換アリールから選択される基である。
【0151】
例えば、有機カチオンは、式(R9NH3)+を有することができ、式中、R9は水素、又は非置換若しくは置換C1〜18-アルキルである。例えば、R9はメチル又はエチルであり得る。典型的に、R9はメチルである。
【0152】
有機カチオンは、式(R5R6N=CH-NR7R8)+を有することができ、式中、R5は、H、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基であり、R6は、H、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基であり、R7は、H、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基であり、R8は、H、非置換又は置換C1〜18-アルキル、非置換又は置換C3〜10-シクロアルキル、非置換又は置換C2〜18-アルケニル、非置換又は置換C2〜18-アルキニル、及び非置換又は置換アリールから選択される基である。
【0153】
有機カチオンは、式(R5R6N=CH-NR7R8)+を有することができ、式中、R5は、H、非置換C1〜18-アルキル、及び非置換アリールから選択される基であり、R6は、H、非置換C1〜18-アルキル、及び非置換アリールから選択される基であり、R7は、H、非置換C1〜18-アルキル、及び非置換アリールから選択される基であり、R8は、H、非置換C1〜18-アルキル、及び非置換アリールから選択される基である。
【0154】
典型的に、カチオン(R5R6N=CH-NR7R8)+におけるR5は、水素、メチル又はエチルであり、R6は水素、メチル又はエチルであり、R7は水素、メチル又はエチルであり、R8は水素、メチル又はエチルである。例えばR5は、水素又はメチルであってよく、R6は水素又はメチルであってよく、R7は水素又はメチルであってよく、R8は水素又はメチルであってよい。有機カチオンは、例えば、式(H2N=CH-NH2)+を有することができる。
【0155】
ペロブスカイトは、混合ハロゲン化物ペロブスカイトであってよく、ここで、少なくとも1つのハロゲン化物アニオンは、2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンであってよい。それらは、2つ若しくは3つのハロゲン化物アニオン、又はより典型的には2つの異なるハロゲン化物アニオンであってよい。通常、ハロゲン化物アニオンは、フッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物から選択され、例えば塩化物、臭化物及びヨウ化物である。
【0156】
式(I)のペロブスカイトは、1つ、2つ、3つ又は4つの異なる金属カチオン、典型的には1つ又は2つの異なる金属カチオンを含むことができる。その上、式(I)のペロブスカイトは、例えば、1つ、2つ、3つ又は4つの異なる有機カチオン、典型的には1つ又は2つの異なる有機カチオンを含むことができる。同様に、式(I)のペロブスカイトは、1つ、2つ、3つ又は4つの異なるアニオン、典型的には2つ又は3つの異なるアニオンを含むことができる。
【0157】
式(I)のペロブスカイト化合物における有機及び金属カチオンは、上記でさらに定義されている通りであり得る。したがって、有機カチオンは、上記で定義されている通りの、式(R5R6R7R8N)+のカチオン、式(R9NH3)+のカチオン、及び式(R5R6N=CH-NR7R8)+のカチオンから選択することができる。金属カチオンは、二価の金属カチオンから選択することができる。例えば、金属カチオンは、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択することができる。金属カチオンは、Sn2+、Pb2+、Cu2+、Ge2+及びNi2+から選択することができる。金属カチオンは、Sn2+又はPb2+であり得る。
【0158】
一実施形態において、ペロブスカイトは、式(IA):
AB[X]3 (IA)
のペロブスカイト化合物であり、
式中、Aは有機カチオンであり、Bは金属カチオンであり、[X]は2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンである。好ましくは、[X]は2つ又は3つの異なるハロゲン化物アニオンである。より好ましくは、[X]は2つの異なるハロゲン化物アニオンである。有機カチオン及び金属カチオンは、上記で定義されている通りであり得る。
【0159】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、式(II):
ABX3-xX'x (II)
のペロブスカイト化合物であり、
式中、Aは有機カチオンであり、Bは金属カチオンであり、Xは第1のハロゲン化物アニオンであり、X'は、第1のハロゲン化物アニオンと異なる第2のハロゲン化物アニオンであり、xは0から3である。通常、xは0.05から0.95である。例えば、xは0.5から2.5、又は0.75から2.25であり得る。典型的に、xは1から2である。
【0160】
再び、式(II)において、有機及び金属カチオンは、上記でさらに定義されている通りであり得る。したがって、有機カチオンは、上記で定義されている通りの、式(R5R6R7R8N)+のカチオン、式(R9NH3)+のカチオン、及び式(R5R6N=CH-NR7R8)+のカチオンから選択することができる。金属カチオンは、二価の金属カチオンから選択することができる。例えば、金属カチオンは、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択することができる。金属カチオンは、Sn2+、Pb2+、Cu2+、Ge2+及びNi2+から選択することができる。金属カチオンはSn2+又はPb2+であり得る。
【0161】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbCl3、CH3NH3PbF3、CH3NH3PbBrxI3-x、CH3NH3PbBrxCl3-x、CH3NH3PbIxBr3-x、CH3NH3PbIxCl3-x、CH3NH3PbClxBr3-x、CH3NH3PbI3-xClx、CH3NH3SnI3、CH3NH3SnBr3、CH3NH3SnCl3、CH3NH3SnF3、CH3NH3SnBrI2、CH3NH3SnBrxI3-x、CH3NH3SnBrxCl3-x、CH3NH3SnF3-xBrx、CH3NH3SnIxBr3-x、CH3NH3SnIxCl3-x、CH3NH3SnF3-xIx、CH3NH3SnClxBr3-x、CH3NH3SnI3-xClx及びCH3NH3SnF3-xClxから選択されるペロブスカイト化合物であってよく、ここでxは、0から3である。xは0.05から2.96であり得る。例えば、xは0.1から2.9、又は0.5から2.5であり得る。一部の場合において、xは0.75から2.25、又は1から2であり得る。
【0162】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbCl3、CH3NH3PbF3、CH3NH3PbBrI2、CH3NH3PbBrCl2、CH3NH3PbIBr2、CH3NH3PbICl2、CH3NH3PbClBr2、CH3NH3PbI2Cl、CH3NH3SnI3、CH3NH3SnBr3、CH3NH3SnCl3、CH3NH3SnF3、CH3NH3SnBrI2、CH3NH3SnBrCl2、CH3NH3SnF2Br、CH3NH3SnIBr2、CH3NH3SnICl2、CH3NH3SnF2I、CH3NH3SnClBr2、CH3NH3SnI2Cl及びCH3NH3SnF2Clから選択されるペロブスカイト化合物であってよい。
【0163】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、CH3NH3PbBrxI3-x、CH3NH3PbBrxCl3-x、CH3NH3PbIxBr3-x、CH3NH3PbIxCl3-x、CH3NH3PbClxBr3-x、CH3NH3PbI3-xClx、CH3NH3SnBrxI3-x、CH3NH3SnBrxCl3-x、CH3NH3SnF3-xBrx、CH3NH3SnIxBr3-x、CH3NH3SnIxCl3-x、CH3NH3SnF3-xIx、CH3NH3SnClxBr3-x、CH3NH3SnI3-xClx及びCH3NH3SnF3-xClxから選択されるペロブスカイト化合物であってよく、ここで、xは0.05から2.95である。例えば、xは0.5から2.5、0.75から2.25、又は1から2であり得る。
【0164】
ペロブスカイトは、CH3NH3PbBrI2、CH3NH3PbBrCl2、CH3NH3PbIBr2、CH3NH3PbICl2、CH3NH3PbClBr2、CH3NH3PbI2Cl、CH3NH3SnBrI2、CH3NH3SnBrCl2、CH3NH3SnF2Br、CH3NH3SnIBr2、CH3NH3SnICl2、CH3NH3SnF2I、CH3NH3SnClBr2、CH3NH3SnI2Cl及びCH3NH3SnF2Clから選択することができる。
【0165】
ペロブスカイトは、CH3NH3PbBrI2、CH3NH3PbBrCl2、CH3NH3PbIBr2、CH3NH3PbICl2、CH3NH3PbClBr2、CH3NH3PbI2Cl、CH3NH3SnF2Br、CH3NH3SnICl2、CH3NH3SnF2I、CH3NH3SnI2Cl及びCH3NH3SnF2Clから選択することができる。
【0166】
ペロブスカイトは、CH3NH3PbBrI2、CH3NH3PbBrCl2、CH3NH3PbIBr2、CH3NH3PbICl2、CH3NH3PbClBr2、CH3NH3PbI2Cl、CH3NH3SnF2Br、CH3NH3SnF2I及びCH3NH3SnF2Clから選択することができる。
【0167】
ペロブスカイトは、CH3NH3PbBrI2、CH3NH3PbBrCl2、CH3NH3PbIBr2、CH3NH3PbICl2、CH3NH3SnF2Br、及びCH3NH3SnF2Iから選択することができる。ペロブスカイトはCH3NH3PbCl2Iであり得る。
【0168】
上に記述されている通り、本明細書に記載されている通りの不動態化は、一部の有機金属ペロブスカイトを安定化するために使用することができる。したがって、金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、金属カチオンがGe2+又はCu+2である本明細書に記載されている通りの任意の金属ハロゲン化物ペロブスカイトであってよい。例えば、金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbCl3、CH3NH3PbF3、CH3NH3PbBrxI3-x、CH3NH3PbBrxCl3-x、CH3NH3PbIxBr3-x、CH3NH3PbIxCl3-x、CH3NH3PbClxBr3-x、CH3NH3PbI3-xClx、CH3NH3SnI3、CH3NH3SnBr3、CH3NH3SnCl3、CH3NH3SnF3、CH3NH3SnBrI2、CH3NH3SnBrxI3-x、CH3NH3SnBrxCl3-x、CH3NH3SnF3-xBrx、CH3NH3SnIxBr3-x、CH3NH3SnIxCl3-x、CH3NH3SnF3-xIx、CH3NH3SnClxBr3-x、CH3NH3SnI3-xClx及びCH3NH3SnF3-x、ClxCH3NH3CuI3、CH3NH3CuBr3、CH3NH3CuCl3、CH3NH3CuF3、CH3NH3CuBrI2、CH3NH3CuBrxI3-x、CH3NH3CuBrxCl3-x、CH3NH3CuF3-xBrx、CH3NH3CuIxBr3-x、CH3NH3CuIxCl3-x、CH3NH3CuF3-xIx、CH3NH3CuClxBr3-x、CH3NH3CuI3-xClx及びCH3NH3CuF3-xClx、ClxCH3NH3GeI3、CH3NH3GeBr3、CH3NH3GeCl3、CH3NH3GeF3、CH3NH3GeBrI2、CH3NH3GeBrxI3-x、CH3NH3GeBrxCl3-x、CH3NH3GeF3-xBrx、CH3NH3GeIxBr3-x、CH3NH3GeIxCl3-x、CH3NH3GeF3-xIx、CH3NH3GeClxBr3-x、CH3NH3GeI3-xClx及びCH3NH3GeF3-xClxから選択することができ、ここで、xは0から3である。xは0.05から2.96であり得る。例えば、xは0.1から2.9、又は0.5から2.5であり得る。一部の場合において、xは0.75から2.25、又は1から2であり得る。
【0169】
本発明のデバイスにおいて用いられるペロブスカイトは、例えばブレンド中に、混合ハロゲン化物ペロブスカイト及び単一ハロゲン化物ペロブスカイトを含むことができ、ここで、前記単一ハロゲン化物ペロブスカイトは、第1のカチオン、第2のカチオン及びハロゲン化物アニオンを含み、ここで、第1及び第2のカチオンは、上記に定義されている通りである。例えば、光電子デバイスは、CH3NH3PbICl2及びCH3NH3PbI3;CH3NH3PbICl2及びCH3NH3PbBr3;CH3NH3PbBrCl2及びCH3NH3PbI3;又はCH3NH3PbBrCl2及びCH3NH3PbBr3を含むことができる。
【0170】
代替として、本発明のデバイスにおいて用いられる半導体は、1つ超の金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含むことができ、ここで、各ペロブスカイトは、混合ハロゲン化物ペロブスカイトであり、混合ハロゲン化物ペロブスカイトは、本明細書において定義されている通りである。例えば、半導体は、2つ又は3つの前記ペロブスカイトを含むことができる。半導体は、例えば、2つのペロブスカイトを含むことができ、ここで両方のペロブスカイトは、混合アニオンペロブスカイトである。例えば、光電子デバイスは、CH3NH3PbICl2及びCH3NH3PbIBr2;CH3NH3PbICl2及びCH3NH3PbBrI2;CH3NH3PbBrCl2及びCH3NH3PbIBr2;又はCH3NH3PbBrCl2及びCH3NH3PbIBr2を含むことができる。
【0171】
[B]が、Pb2+である単一の金属カチオンである場合、前記2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンの1つは、ヨウ化物又はフッ化物であってよく、[B]が、Sn2+である単一の金属カチオンである場合、前記2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンの1つは、フッ化物であってよい。前記2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンの1つは、ヨウ化物又はフッ化物であり得る。前記2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンの1つは、ヨウ化物であり得、前記2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンの別のものは、フッ化物又は塩化物であり得る。前記2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンの1つは、フッ化物であり得る。前記2つ以上の異なるアニオンの1つは、フッ化物であり得、前記2つ以上の異なるアニオンの別のものは、塩化物、臭化物又はヨウ化物であり得る。前記2つ以上の異なるアニオンの1つは、ヨウ化物であり得、前記2つ以上の異なるアニオンの別のものは、フッ化物又は塩化物であり得る。[X]は、2つの異なるハロゲン化物アニオンX及びX'であり得る。前記二価の金属カチオンはSn2+であり得る。前記二価の金属カチオンはPb2+であり得る。
【0172】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、ドープすることができる。例えば、金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、不純物原子の導入によってドープすることができる。例えば、金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、ペロブスカイトにおける他の金属からの異なる電荷の金属不純物でドープすることができる。したがって、ペロブスカイトは、IV、III又はIの酸化状態を有する金属、例えばビスマス(III)、アンチモン(III)、スズ(IV)又はタリウム(I)から選択される金属ドーパントをさらに含むことがある。
【0173】
本発明のデバイスにおいて用いられる金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、好ましくは、入射光による電子の励起を可能にするのに充分狭いバンドギャップを有する。デバイスが光起電力デバイスの場合に殊に、3.0eV以下のバンドギャップが特に好ましく、なぜならば、こうしたバンドギャップは、日光がそれを横切って電子を励起させるのに十分低いからである。
【0174】
したがって、本発明のデバイスにおいて用いられる金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、典型的に、3.0eV以下のバンドギャップを有する。一部の実施形態において、ペロブスカイトのバンドギャップは、2.8eV以下、例えば2.5eV以下である。バンドギャップは、例えば2.3eV以下、又は例えば2.0eV以下であり得る。
【0175】
通常、バンドギャップは少なくとも0.5eVである。したがって、ペロブスカイトのバンドギャップは、0.5eVから2.8eVである。一部の実施形態において、それは0.5eVから2.5eV、又は例えば0.5eVから2.3eVである。ペロブスカイトのバンドギャップは、例えば0.5eVから2.0eVである。他の態様において、ペロブスカイトのバンドギャップは、1.0eVから3.0eV、又は例えば1.0eVから2.8eVであり得る。一部の実施形態において、それは1.0eVから2.5eV、又は例えば1.0eVから2.3eVである。金属ペロブスカイトのバンドギャップは、例えば1.0eVから2.0eVであり得る。
【0176】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、3.0eV以下のバンドギャップを有し得る。金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、2.0eV以下のバンドギャップを有する。
【0177】
デバイス
本発明は、(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト、及び(b)(i)ハロゲン結合ドナー化合物又は(ii)少なくとも1個のチオール基若しくはスルフィド基を含む有機化合物である不動態化剤を含む半導体を含むデバイスも提供する。
【0178】
このデバイスは、上記のどこかでさらに定義されている通りであってよい。不動態化剤は、上記で定義されている通りであってよく、及び/又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、上記で定義されている通りであってよい。
【0179】
不動態化ペロブスカイトの層
本発明による多くのデバイスにおいて、不動態化ペロブスカイトは、層の形態である。したがって、一実施形態において、デバイスは、前記半導体の層を含む。デバイスは、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの層を含むことができる。半導体の層は、不動態化剤及び金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む。
【0180】
第1の態様によると、デバイスは、(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイトの層及び(b)有機化合物である不動態化剤を含み、ここで、不動態化剤の分子は、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している。不動態化剤の分子は、典型的に、上に記載されている通り、超分子化学結合によって混合ハロゲン化物中のアニオン又はカチオンに結合している。
【0181】
第2の態様によると、デバイスは、(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイトの層及び(b)有機化合物である不動態化剤を含み、ここで、不動態化剤の分子は、金属ハロゲン化物ペロブスカイト内の粒界に配置され、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合されていない。不動態化剤の分子は、粒界で、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの隣接する粒子中のアニオンとカチオンとの間の相互作用を遮断する。
【0182】
デバイスは、開放多孔性がない半導体の層を含むことができる。半導体の層は、開放多孔性がない金属ハロゲン化物ペロブスカイトの層を含むことができる。代替として、半導体の層は多孔質であってよいか、又は半導体の層は多孔質足場上に堆積することができる。半導体の非多孔質層は、デバイス、例えばn又はp型領域におけるペロブスカイトと任意の他の材料との間に平面ヘテロ接合を必要とするデバイスにおいて使用することができる。半導体の多孔質層、又は多孔質足場上に堆積された半導体の層は、大きな表面積又はバルクヘテロ接合を必要とするデバイス、例えばペロブスカイト増感デバイスにおいて使用することができる(WO 2013/171518及びWO 2013/171520に記載されているものなど)。
【0183】
半導体の層に開放多孔性がないならば、それは、足場材料及び金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む第1の層上に配置されている半導体の層である「キャッピング層」であり得る。この場合において、キャッピング層は、足場材料によって浸透されず、なぜならば、キャッピング層及びキャッピング層内のペロブスカイト半導体は開放多孔性がないからである。第1の層における金属ペロブスカイトは、他方では(これは一般に、キャッピング層におけるペロブスカイト化合物と同じペロブスカイト化合物である)、典型的に、足場材料の細孔中に配置され、そのため、足場材料によって「浸透される」と言うことができる。
【0184】
本明細書において言及される足場材料は、誘電性足場材料又はn型足場材料であってよい。誘電性足場材料は、3.6eV以上又は4eV以上のバンドギャップを有する材料を含むことができる。誘電性足場材料は、誘電性酸化物から選択することができる。誘電性足場は、アルミナ及びシリカから選択することができ、例えばアルミナ(Al2O3)であり得る。n型足場は、本明細書に記載されている任意のn型材料から選択することができ、例えばチタニア(TiO2)であり得る。
【0185】
本発明の光電子デバイスの一部の実施形態において、開放多孔性がない半導体の層は、非多孔質である。
【0186】
一般に、開放多孔性がない半導体の層は、ペロブスカイト及び不動態化剤から本質的になり得る。ペロブスカイトは結晶性化合物である。したがって、開放多孔性がない半導体の層は、不動態化剤と一緒にペロブスカイトの結晶子/粒子から本質的になり得る。開放多孔性がない半導体の層は、開放多孔性がない金属ハロゲン化物ペロブスカイトの層及び不動態化剤からなり得る。したがって、開放多孔性がない半導体の層は、ペロブスカイトの結晶子及び不動態化剤からなり得る。
【0187】
本発明のデバイスは、薄膜デバイスであってよい。
【0188】
通常、金属ハロゲン化物ペロブスカイト又は半導体の層の厚さは、10nmから100μmである。半導体の層の厚さは、10nmから10μmであり得る。好ましくは、半導体の層の厚さは、50nmから1000nm、例えば100nmから2000nm、100nmから1000nm、又は100nmから700nmである。半導体の層の厚さは、しばしば、100nm超である。該厚さは、例えば、100nmから100μm、又は例えば100nmから700nmであり得る。これらの厚さは、デバイスが、開放多孔性がない半導体の層を含む場合の半導体の層に当てはまり得る。例えば、デバイスは、開放多孔性がないとともに50nmから1000nm、又は100nm以上の厚さを有する、半導体の層を含むことができる。
【0189】
デバイス構造
本発明によるデバイスは、
(a)少なくとも1つのn型層を含むn型領域、
(b)、n型領域とp型領域との間に配置される少なくとも1つのp型層を含むp型領域、
(c)半導体の層
を含むことができる。
【0190】
デバイスは、(a)少なくとも1つのn型層を含むn型領域、(b)n型領域及びp型領域との間に配置される少なくとも1つのp型層を含むp型領域、(c)金属ハロゲン化物ペロブスカイト及び不動態化剤を含む半導体の層を含むことができ、ここで、半導体の層は、上記のどこかに定義されている通りの金属ハロゲン化物ペロブスカイトの層を含む。金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、上記のどこかの通りに定義することができる。不動態化剤は、上記のどこかに定義されている通りであってよい。
【0191】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む光電子デバイスは、WO 2013/171517、WO 2013/171518及びWO 2013/171520に記載されており、これらの内容を参照によりそれらの全体で本明細書に組み込む。本発明によるデバイスは、WO 2013/171517、WO 2013/171518及びWO 2013/171520のいずれかに記載されている通りの構造を有することができる。
【0192】
半導体の層は、開放多孔性がない金属ハロゲン化物ペロブスカイトの層を含むことができる。半導体の層は開放多孔性がなくてよい。この場合において、そのため、半導体の層は、n型領域におけるn型材料(複数可)又はそのいずれかによって浸透されず、同様に、それは、p型領域におけるp型材料(複数可)又はそのいずれかによって浸透されない。むしろ、開放多孔性がない半導体の層は、典型的に、n型又はp型領域と平面ヘテロ接合を形成するか、又は一部の場合において、それは、n型領域及びp型領域の両方と平面ヘテロ接合を形成する。半導体の層が、n型領域及び/又はp型領域と平面ヘテロ接合を形成する場合、不動態化剤は、ヘテロ接合で存在することができる。不動態化剤がペロブスカイトの表面上に単層を形成すると、この単層はヘテロ接合に沿って横たわり得る。加えて、半導体の層が、n型領域及び/又はp型領域と平面ヘテロ接合を形成する場合、不動態化剤は、ペロブスカイト内の粒界に存在し得る。
【0193】
金属ハロゲン化物ペロブスカイト及び不動態化剤を含む半導体の層は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの多孔質層を含むことができる。したがって、半導体の層は多孔質であり得る。金属ハロゲン化物ペロブスカイト及び不動態化剤を含む半導体の層は、多孔質足場上に配置される金属ハロゲン化物ペロブスカイトの層を含むことができる。
【0194】
デバイスにおけるn型領域は、1つ以上のn型層を含むことができる。しばしば、n型領域は、n型層、即ち、単一のn型層である。n型層は、電子輸送(即ち、n型)材料の層である。n型材料は、単一のn型化合物若しくは元素材料又は2種以上のn型化合物若しくは元素材料の混合物であってよく、これは、非ドープ又は1つ以上のドーパント元素でドープされていてよい。デバイスにおいて用いられるn型層は、無機又は有機n型材料を含むことができる。
【0195】
適当な無機n型材料は、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、ペロブスカイト、非晶質Si、n型IV族半導体、n型III-V族半導体、n型II-VI族半導体、n型I-VII族半導体、n型IV-VI族半導体、n型V-VI族半導体、及びn型II-V族半導体から選択することができ、これらのいずれもがドープ又は非ドープであってよい。より典型的に、n型材料は、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、及び金属テルル化物から選択される。n型層は、チタン、スズ、亜鉛、ニオブ、タンタル、タングステン、インジウム、ガリウム、ネオジム、パラジウム若しくはカドミウムの酸化物、又は前記金属の2種以上の混合物の酸化物から選択される無機材料を含むことができる。例えば、n型層は、TiO2、SnO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、WO3、W2O5、In2O3、Ga2O3、Nd2O3、PbO又はCdOを含むことができる。用いることができる他の適当なn型材料としては、カドミウム、スズ、銅又は亜鉛の硫化物が、前記金属の2つ以上の混合物の硫化物を含めて挙げられる。例えば、硫化物はFeS2、CdS、ZnS又はCu2ZnSnS4であり得る。n型層は、例えば、カドミウム、亜鉛、インジウム若しくはガリウムのセレン化物、又は前記金属の2つ以上の混合物のセレン化物;或いはカドミウム、亜鉛、カドミウム若しくはスズのテルル化物、又は前記金属の2つ以上の混合物のテルル化物を含むことができる。例えば、セレン化物はCu(In,Ga)Se2であり得る。典型的に、テルル化物は、カドミウム、亜鉛、カドミウム又はスズのテルル化物である。例えば、テルル化物はCdTeであり得る。n型層は、例えば、チタン、スズ、亜鉛、ニオブ、タンタル、タングステン、インジウム、ガリウム、ネオジム、パラジウム、カドミウムの酸化物、又は前記金属の2つ以上の混合物の酸化物;カドミウム、スズ、銅、亜鉛の硫化物、又は前記金属の2つ以上の混合物の硫化物;カドミウム、亜鉛、インジウム、ガリウムのセレン化物、又は前記金属の2つ以上の混合物のセレン化物;或いはカドミウム、亜鉛、カドミウム若しくはスズのテルル化物、又は前記金属の2つ以上の混合物のテルル化物から選択される無機材料を含むことができる。適当なn型材料であってよい他の半導体の例としては、例えばそれらがn-ドープされているならば、IV族化合物半導体;非晶質Si; III-V族半導体(例えば、ガリウムヒ素); II-VI族半導体(例えば、セレン化カドミウム); I-VII族半導体(例えば、塩化第一銅); IV-VI族半導体(例えば、セレン化鉛); V-VI族半導体(例えば、テルル化ビスマス)、及びII-V族半導体(例えば、ヒ化カドミウム)が挙げられる。典型的に、n型層はTiO2を含む。n型層が無機材料、例えばTiO2又は上記に列挙されている他の材料のいずれかである場合、それは、前記無機材料の緻密層であってよい。好ましくは、n型層はTiO2の緻密層である。
【0196】
デバイスにおけるp型領域は、1つ以上のp型層を含むことができる。しばしば、p型領域はp型層、即ち、単一のp型層である。p型層は正孔輸送(即ち、p型)材料の層である。p型材料は、非ドープ又は1つ以上のドーパント元素でドープされていてよい、単一のp型化合物若しくは元素材料又は2種以上のp型化合物又は元素材料の混合物であってよい。p型層は、無機又は有機p型材料を含むことができる。適当なp型材料は、ポリマー又は分子正孔輸送体から選択することができる。
【0197】
用いられるp型層は、例えば、スピロ-OMeTAD(2,2',7,7'-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)9,9'-スピロビフルオレン))、P3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))、PCPDTBT(ポリ[2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4,7-ジイル[4,4-ビス(2-エチルヘキシル)-4H-シクロペンタ[2,1-b:3,4-b']ジチオフェン-2,6-ジイル]])、又はPVK(ポリ(N-ビニルカルバゾール))を含むことができる。通常、p型材料は、スピロ-OMeTAD、P3HT、PCPDTBT及びPVKから選択される。好ましくは、p型層はスピロ-OMeTADを含む。適当なp型材料としては、分子正孔輸送体、ポリマー正孔輸送体及びコポリマー正孔輸送体も挙げられる。p型材料は、例えば、以下の部分:チオフェニル、フェネレニル、ジチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ジケトピロロピロリル、エトキシジチオフェニル、アミノ、トリフェニルアミノ、カルボゾリル、エチレンジオキシチオフェニル、ジオキシチオフェニル、又はフルオレニルの1つ以上を含む分子正孔輸送材料、ポリマー又はコポリマーであってよい。適当なp型材料としては、m-MTDATA(4,4',4"-トリス(メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、MeOTPD(N,N,N',N'-テトラキス(4-メトキシフェニル)-ベンジジン)、BP2T(5,5'-ジ(ビフェニル-4-イル)-2,2'-ビチオフェン)、ジ-NPB(N,N'-ジ-[(1-ナフチル)-N,N'-ジフェニル]-1,1'-ビフェニル)-4,4'-ジアミン)、α-NPB(N,N'-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ジフェニル-ベンジジン)、TNATA(4,4',4"-トリス-(N-(ナフチレン-2-イル)-N-フェニルアミン)トリフェニルアミン)、BPAPF(9,9-ビス[4-(N,N-ビス-ビフェニル-4-イル-アミノ)フェニル]-9H-フルオレン)、スピロ-NPB(N2,N7-ジ-1-ナフタレニル-N2,N7-ジフェニル-9,9'-スピロビ[9H-フルオレン]-2,7-ジアミン)、4P-TPD(4,4'-ビス-(N,N-ジフェニルアミノ)-テトラフェニル)、PEDOT:PSS及びスピロ-OMeTADも挙げられる。p型層は、イオン性塩又は塩基でドープすることができる。p型層は、例えば、HMI-TFSI(1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)及びLi-TFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)から選択されるイオン性塩で、又はtBP(tert-ブチルピリジン)である塩基でドープすることができる。追加として又は代替として、p型層は、正孔密度を増加させるためにドープすることができる。p型層は、例えば、正孔-密度を増加させるためにNOBF4(ニトロソニウムテトラフルオロボレート)でドープすることができる。p型層は、無機正孔輸送体を含むことができる。例えば、p型層は、ニッケル、バナジウム、銅又はモリブデンの酸化物;CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO又はCIS;ペロブスカイト;非晶質Si;p型IV族半導体、p型III-V族半導体、p型II-VI族半導体、p型I-VII族半導体、p型IV-VI族半導体、p型V-VI族半導体、及びp型II-V族半導体を含む無機正孔輸送体を含むことができ、これらの無機材料はドープ又は非ドープであってよい。p型層は、前記無機正孔輸送体の緻密層であり得る。p型層は、例えば、ニッケル、バナジウム、銅又はモリブデンの酸化物; CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO又はCIS;非晶質Si; p型IV族半導体、p型III-V族半導体、p型II-VI族半導体、p型I-VII族半導体、p型IV-VI族半導体、p型V-VI族半導体、及びp型II-V族半導体を含む無機正孔輸送体を含むことができ、これらの無機材料はドープ又は非ドープであってよい。p型層は、例えば、CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO及びCISから選択される無機正孔輸送体を含むことができる。p型層は、前記無機正孔輸送体の緻密層であり得る。
【0198】
典型的に、p型層はポリマー又は分子正孔輸送体を含み、n型層は無機n型材料を含む。p型ポリマー又は分子正孔輸送体は、任意の適当なポリマー又は分子正孔輸送体、例えば上記に列挙されているもののいずれかであってよい。同様に、無機n型材料は、任意の適当なn型無機物、例えば上記に列挙されているもののいずれかであってよい。一実施形態において、例えば、p型層はスピロ-OMeTADを含み、n型層はTiO2を含む。典型的に、その実施形態において、TiO2を含むn型層は、TiO2の緻密層である。
【0199】
デバイスの型
本発明のデバイスは、金属ハロゲン化物ペロブスカイト、及び有機化合物である不動態化剤を含む任意のデバイスであってよい。例えば、デバイスは、光電子デバイス、例えば光起電力デバイス;トランジスタ;又はダイオードであり得る。
【0200】
一般に、本発明のデバイスは、半導体デバイス又は半導性デバイスである。「半導体デバイス」及び「半導性デバイス」という用語は、本明細書で使用される場合、相互交換可能であり、デバイス、半導体を含む機能性構成成分を指す。
【0201】
本発明のデバイスは、例えば、光電子デバイスであってよい。光電子デバイスは、光起電力デバイス;フォトレジスタ;光感受性検出器;固体状態三極管;電池電極;発光デバイス;発光ダイオード;トランジスタ;太陽電池;レーザー;又はダイオード注入レーザーから選択することができる。典型的に、光電子デバイスは光起電力デバイスである。
【0202】
本発明のデバイスが光起電力デバイスである場合、光起電力デバイスは、フォトダイオード、太陽電池、フォトディテクタ、及びフォトセンサから選択することができる。光起電力デバイスは典型的に太陽電池である。デバイスが光起電力デバイスである場合、光起電力デバイスは、上に記載されている構造を有し、即ち、それは、(a)少なくとも1つのn型層を含むn型領域、(b)少なくとも1つのp型層を含み、n型領域とp型領域との間に配置されているp型領域、(c)金属ハロゲン化物ペロブスカイト及び不動態化剤を含む半導体の層を含むことができる。本発明による光起電力デバイスにおいて、本明細書に記載されている通りの半導体は、典型的に、主光吸収半導体である。
【0203】
光電子デバイスは、代替として、光起電力デバイス以外の光電子デバイスであってよい。光電子デバイスは、例えば、発光デバイス、発光ダイオード、レーザー及びトランジスタから選択することができる。光電子デバイスは、発光デバイス、発光ダイオード、光ポンピングされたレーザー、電気注入レーザー及びトランジスタから選択することができる。
【0204】
一実施形態において、デバイスは発光デバイスである。それは、例えば、発光ダイオード又は電荷注入レーザーダイオードであり得る。
【0205】
別の実施形態において、デバイスはトランジスタである。
【0206】
しかしながら、通常、デバイスは光起電力デバイスである。
【0207】
デバイスを製造するための方法
第1の態様によると、本発明は、
(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト、及び
(b)有機化合物である不動態化剤、
を含む半導体であって、不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している半導体を含むデバイスを製造するための方法を提供し、
ここで、該方法は、有機化合物であるとともに金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合するのに適当である不動態化剤で金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することを含む。
【0208】
第2の態様によると、本発明は、
(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト、及び
(b)有機化合物である不動態化剤
を含む半導体であって、不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト内の粒界に配置され、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合されていない半導体を含むデバイスを製造するための方法を提供し、
ここで、該方法は、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合しない有機化合物である不動態化剤で金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することを含む。本発明によるデバイスについて上に記述されている通り、本発明は典型的に金属ハロゲン化物ペロブスカイトに適用される一方で、当業者は、一般に結晶性イオン性固体、例えば金属ハロゲン化物及び金属酸化物に適用することができることを理解されよう。
【0209】
したがって、第1の態様によると、本発明は、
(a)結晶性イオン性固体、及び
(b)有機化合物である不動態化剤
を含む半導体であって、不動態化剤の分子が結晶性イオン性固体中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している半導体を含むデバイスを製造するための方法も提供し、
ここで、該方法は、有機化合物であるとともに結晶性イオン性固体中のアニオン又はカチオンに化学的に結合するのに適当である不動態化剤で結晶性イオン性固体を処理することを含む。
【0210】
同様に、第2の態様によると、本発明は、
(a)結晶性イオン性固体、及び
(b)有機化合物である不動態化剤
を含む半導体であって、不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト内の粒界に配置されるとともに結晶性イオン性固体中のアニオン又はカチオンに化学的に結合されていない半導体を含むデバイスを製造するための方法も提供し、
ここで、該方法は、結晶性イオン性固体中のアニオン又はカチオンに化学的に結合しない有機化合物である不動態化剤で結晶性イオン性固体を処理することを含む。
【0211】
結晶性イオン性固体は、本発明によるデバイスについて本明細書のどこかで定義されている通りであってよい。
【0212】
本発明の第1の態様又は本発明の第2の態様のいずれかによるデバイスを製造するための方法において、構成成分のいずれもが、上記のどこかに記載されている通りであってよい。不動態化剤は、上記のどこかで定義されている通りであってよく、及び/又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、上記のどこかで定義されている通りであってよく、及び/又はデバイスは、上記のどこかで定義されている通りであってよい。例えば、金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、式[A][B][X]3のペロブスカイトであってよく、式中、[A]は少なくとも1つの有機カチオン、例えば(CH3NH3)+であり、[B]は少なくとも1つの金属カチオンであり、ここで[B]は、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Sn2+、Yb2+及びEu2+、好ましくはSn2+、Pb2+、Cu2+、Ge2+及びNi2+の少なくとも1つを含み、[X]は少なくとも1つのハロゲン化物アニオンである。その上、例えば、有機化合物である不動態化剤は、(a)ハロゲン結合ドナー化合物、例えばIPFB、及び(b)少なくとも1個のチオール基又はスルフィド基を含む有機化合物、例えばチオフェン又はテトラヒドロチオフェンから選択することができる。不動態化剤は、超分子化学結合、例えばハロゲン結合又は金属-カルコゲン結合、例えば金属-硫黄結合によって化学的に結合することができる。半導体は、上記のどこかで記載されている通りの層であってよい。
【0213】
第1の態様において、不動態化剤は、典型的に、超分子化学結合、例えばハロゲン結合又は金属-カルコゲン結合によって金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合にするのに適当である有機化合物である。有機化合物は、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合するのに適当であるが、該化合物にとってそうするのがエネルギー的に好ましい場合である。当業者は、有機化合物が、金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合するのに適当であるかどうかを簡便に判定することができる。例えば、分子がペロブスカイト表面に吸着するかどうかは、観察することができる。有機化合物の構造は、ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンとの超分子化学結合などの化学結合を形成するためのそれの適合性も示す。例えば、ハロゲン結合を形成するため、該化合物は、分極性又は分極化ハロゲン原子を含有することができる。例えば、金属-カルコゲン結合を形成するため、該化合物は、利用可能な(即ち、非立体障害化)カルコゲン原子、例えばスルフィド基を含有することができる。不動態化剤は、上記のどこかに記載されている通りであってよい。
【0214】
例えば、第1の態様の不動態化剤は、超分子化学結合、例えば窒素-金属結合又はリン-金属結合によって金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合するのに適当であり得る。1個以上のN又はP原子を含む有機化合物である不動態化剤は、上に記載されており、例えばピリジンである。
【0215】
本発明の第1の態様又は本発明の第2の態様のいずれかによるデバイスを製造するための方法において、金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、任意の適当な方法によって不動態化剤で処理することができる。例えば、不動態化剤は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面上に配置することができるか、又は金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、不動態化剤を含む蒸気若しくは組成物に曝露することができる。例えば、不動態化剤を含む組成物は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面上にスピンコーティングすることができる。不動態化剤で金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することは、不動態化剤を金属ハロゲン化物ペロブスカイトに含浸させることを含むことができる。例えば、金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、不動態化剤又は不動態化剤を含む溶液中に金属ハロゲン化物ペロブスカイトを浸漬することによって、不動態化剤を含浸させることができる。金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、不動態化剤を含む組成物中に浸漬することができる。
【0216】
時々、熱い試料を不動態化剤で処理することが好ましいことがある。例えば、金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、それが不動態化剤で処理される前に50℃から100℃の温度で加熱することができる。
【0217】
不動態化剤で金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することは、典型的に、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面上に不動態化剤を配置することを含む。不動態化剤で金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することは、不動態化剤を含む少なくとも1種の組成物を金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面上に配置することを含むことができる。この文脈において、「配置すること」には、例えば組成物中に金属ハロゲン化物ペロブスカイトを沈めることによって、ペロブスカイトの表面が、配置される材料と接触する任意の方法が含まれる。しばしば、不動態化剤は、周囲温度で(例えば、25℃)液体である。不動態化剤を含む組成物は、一部の実施形態において、不動態化剤だけからなる又はそれから本質的になることができ、例えば、それは95wt%超の不動態化剤を含むことができる。不動態化剤を含む組成物は、1種以上の溶媒、及び不動態化剤を含むことができる。溶媒は、有機溶媒、例えば炭化水素溶媒などの非極性溶媒、例えばペンタン、シクロヘキサン又はベンゼンから選択することができる。
【0218】
不動態化剤で金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することは、金属ハロゲン化物ペロブスカイト固体の形成の前に、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの溶液に不動態化剤を添加することを含むこともできる。
【0219】
第1の態様において、不動態化剤は、ハロゲン-結合ドナー化合物であり得る。不動態化剤がハロゲン-結合ドナー化合物であるならば、金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することは、不動態化剤又は不動態化剤を含む組成物中に金属ハロゲン化物ペロブスカイトを浸漬することを含むことができる。金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、ハロゲン結合ドナー化合物の溶液中に、1分間から30分間、又は1分間から10分間浸漬することができる。不動態化剤を含む組成物の濃度は、0.05Mから2.0Mであってよい。
【0220】
第1の態様の不動態化剤は、少なくとも1個のチオール基又はスルフィド基を含む有機化合物であり得る。不動態化剤が少なくとも1個のチオール基又はスルフィド基を含む有機化合物である場合、金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、しばしば、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面上に不動態化剤をスピンコーティングすることによって処理される。スピンコーティングは、1000rpmから3000rpmで実施することができる。
【0221】
第1の態様の不動態化剤は、N及びPから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む有機化合物であり得る。不動態化剤が、1個以上のN又はP原子を含む有機化合物であるならば、金属ハロゲン化物ペロブスカイトはしばしば、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの表面上に不動態化剤又は不動態化剤及び溶媒を含む組成物をスピンコーティングすることによって処理される。好ましくは、1個以上のN又はP原子を含む有機化合物である不動態化剤で金属ハロゲン化物ペロブスカイトを処理することは、不動態化剤及び溶媒を含む組成物(例えば溶液)をスピンコーティングすることを含み、ここで、不動態化剤の量は組成物の5vol%から50vol%である。溶媒及び不動態化剤を含む組成物は、好ましくは、不動態化剤10vol%から20vol%を含む。溶媒は任意の適当な溶媒であってよく、典型的に、有機溶媒、例えばクロロベンゼン、トルエン又はイソプロパノールである。
【0222】
金属ハロゲン化物は処理されると、それは乾燥することができる。例えば、処理された金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、加熱することによって、過剰の不動態化剤を放置蒸発させることによって、又は窒素流下で乾燥させることによって乾燥させることができる。不動態化剤がハロゲン結合ドナー化合物であるならば、処理された金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、窒素の流れの下で乾燥させることができる。
【0223】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、空気中にて、又は不活性雰囲気、例えば窒素中にて不動態化剤で処理することができる。
【0224】
デバイスを製造するための方法は、典型的に、(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む層が上に配置された基板を提供すること、及び(b)金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む層を不動態化剤で処理することを含む。金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む層は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの層であってよい。
【0225】
金属ハロゲン化物を含む層が上に配置された基板は、基板を提供すること、及びその上にペロブスカイトの層を配置することによって調製することができる。金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む層は、溶液堆積又は蒸着によって生成することができる。蒸着によって金属ハロゲン化物ペロブスカイトの層を生成することは、典型的に、(i)前記金属ハロゲン化物ペロブスカイト又は前記ペロブスカイトを生成するための1種以上の反応物を含む蒸気に基板を曝露すること、及び(ii)基板上への蒸気の堆積を可能にすることで、そこの上に前記ペロブスカイトの固体層を生成することを含む。蒸気中のペロブスカイトは、本発明のデバイスについて上記で考察されている金属ハロゲン化物ペロブスカイトのいずれかであってよく、典型的に、上記で定義されている通りの式(I)のペロブスカイトである。金属ハロゲン化物ペロブスカイトを生成するための1種以上の反応物が使用されるならば、1種以上の反応物は、(a)(i)金属カチオン及び(ii)第1のハロゲン化物アニオンを含む第1の化合物を、(b)(i)有機カチオン及び(ii)第2のハロゲン化物アニオンを含む第2の化合物とともに含むことができる。第1及び第2のハロゲン化物アニオンは、異なるハロゲン化物アニオンであってよい。例えば、第1の化合物は、ジハロゲン化鉛などの金属ハロゲン化物であってよく、第2の化合物は、有機カチオンのハロゲン化物、例えばハロゲン化メチルアンモニウムであってよい。例えば、堆積される金属ハロゲン化物ペロブスカイトがCH3NH3PbI2Clである場合、1種以上の反応物は、典型的に、(a)PbI2及び(b)CH3NH3Clを含む。
【0226】
蒸着プロセスは、一般に、前記ペロブスカイトを蒸発させること又は前記ペロブスカイトを生成するための前記1種以上の反応物を蒸発させることによって、最初に蒸気を生成することをさらに含む。このステップにおいて、ペロブスカイト又はペロブスカイトを生成するための1種以上の反応物は、典型的に、引き続いて排気される蒸発チャンバーに移される。ペロブスカイト又はペロブスカイトを生成するための1種以上の反応物は、典型的に、次いで加熱される。次いで、結果として得られる蒸気は、第1の領域に曝露及びそれによって堆積されることで、その上に前記ペロブスカイトの固体層を生成する。反応物が使用されるならば、これらは、その場で一緒に反応することで、第1の領域上にペロブスカイトを生成する。典型的に、蒸着は、ペロブスカイトの固体層が、所望の厚さ、例えば10nmから100μm、又はより典型的には10nmから10μmの厚さを有するまで、継続させておく。好ましくは、蒸着は、ペロブスカイトの固体層が、50nmから1000nm、例えば100nmから700nm、又は本発明のデバイスについて上記で定義されている厚さのいずれか、例えば100nm以上の厚さを有するまで、継続させておく。
【0227】
蒸着によって金属ハロゲン化物ペロブスカイトの層を配置するステップは、通常、(iii)こうして生成されたペロブスカイトの固体層を加熱することをさらに含む。ペロブスカイトの固体層を加熱するステップは、通常、不活性雰囲気中でペロブスカイトの固体層を加熱することを含む。典型的に、ペロブスカイトの固体層が加熱される温度は150℃を超えない。したがって、ペロブスカイトの固体層は、30℃から150℃の温度で加熱することができ、好ましくは、40℃から110℃の温度で加熱される。ペロブスカイトの固体層は、それが所望の半導体特性を有するまで、前記温度で加熱することができる。通常、ペロブスカイトの固体層は、少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1時間の間加熱される。
【0228】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトの層は、溶液堆積によって配置することができる。例えば、金属ハロゲン化物の層は、(i)溶媒中に溶解させた前記金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む前駆体溶液を基板上に配置すること、及び(ii)溶媒を除去して、ペロブスカイトの固体層を第1の領域上に生成することを含む方法によって基板上に配置することができる。通常、(i)前駆体溶液を基板上に配置するステップ及び(ii)溶媒を除去するステップは、前駆体溶液又は溶液を基板上にスピンコーティング又はスロットダイコーティングすることで、ペロブスカイトの基板層上に生成することを含む。典型的に、前記コーティングは、不活性雰囲気中、例えば窒素下で実施される。スピンコーティングは、しばしば、1000rpmから2000rpmの速度で実施される。スピンコーティングは、例えば、30秒間から2分間実施することができる。前駆体溶液は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの溶液を含むことができるか、又はそれは、蒸着方法について上に記載されている通りの第1及び第2の化合物の溶液を含むことができる。
【0229】
金属ハロゲン化物を含む層が上に配置された基板は、いくつかの他の層を含むことができる。例えば、金属ハロゲン化物を含む層が上に配置された基板は、基板材料の層、電極材料の層、n型層、p型層及び足場材料の層から選択される1つ以上の層を含むことができる。基板材料は、ガラス、金属又はプラスチック、例えばポリエチレンを含むことができる。電極材料は、任意の適当な導電性材料、例えば金属又は透明導電酸化物であってよい。したがって、電極材料の層は、金属、例えば、金、銀、銅若しくはアルミニウム、又は透明導電酸化物、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)若しくはフッ素ドープ酸化スズ(FTO)を含むことができる。
【0230】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトの層が上に配置された基板は、第1の電極材料、及びn型領域、p型領域又は固有領域から選択される少なくとも1つの第1の領域を含むことができる。しばしば、基板は、第1の電極材料及びn型領域を含む。基板は、透明導電酸化物、例えばFTO又はITOである第1の電極材料を含むことができる。基板は、上記のどこかで定義されている通りのn型層を含むn型領域を含むことができる。例えば、基板は、透明導電酸化物の層及びn型層、例えばチタニアを含むことができる。基板は、TiO2の緻密層を含むことができる。
【0231】
基板が第1の電極材料の層を含むならば、第1の電極材料の層は、100nmから200nmの厚さを有することができる。基板がn型層を含むならば、n型層は50nmから500nmの厚さを有することができる。
【0232】
しばしば、基板は、足場材料の多孔質層を含むことができる。足場材料は、本明細書のどこかに記載されている通りであってよい。ペロブスカイトの層が上に配置された基板は、足場材料の多孔質層を含むことができ、ここで、足場材料の多孔質層は、n型半導体又は誘電性材料を含む。足場材料は、誘電性材料又はn型材料であってよい。例えば、足場材料は、アルミナ(Al2O3)又はチタニア(TiO2)から選択することができる。足場材料の多孔質層は、5nmから500nm、又は100nmから300nmの厚さを有することができる。
【0233】
デバイスを製造するための方法は、代替として、(a)溶媒中に溶解させた前記金属ハロゲン化物ペロブスカイト及び不動態化剤を含む前駆体溶液を、基板上に配置すること、並びに(ii)溶媒を除去して、不動態化金属ハロゲン化物ペロブスカイトの固体層を生成することを含むことができる。この代替方法は、本明細書のどこかに記載されている通りであってよい。
【0234】
しばしば、金属ハロゲン化物ペロブスカイトが不動態化剤で処理された後、デバイスを製造するための方法は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む層上に、(c)n型領域、p型領域若しくは固有領域から選択される少なくとも1つの第2の領域及び/又は(d)第2の電極材料の層を配置することをさらに含む。デバイスを製造するための方法は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む層上に、(c)n型領域、p型領域又は固有領域から選択される少なくとも1つの第2の領域及び(d)第2の電極材料の層を配置することをさらに含むことができる。
【0235】
n型領域、p型領域又は固有領域から選択される第2の領域を、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの層上に配置するステップ(c)は、任意の適当な方法によって実施することができる。しばしば、第2の領域は、n型領域又はp型領域から選択される。第1の領域がn型領域を含むならば、第2の領域は典型的にp型領域である。n型領域は、上記のどこかに定義されている通りのn型層を含むことができる。p型領域は、上記のどこかに定義されている通りのp型層を含むことができる。固有領域は、任意の固有半導体、例えば結晶性シリコンを含むことができる。
【0236】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトの層上へのp型領域又はn型領域の配置は、層に含まれている化合物又はその前駆体をスピンコーティング又はスロットダイコーティングすることによって又はスプレー熱分解によって、層を堆積することを含むことができる。例えば、チタニアの緻密層は、エタノールなどの適当な溶媒中の(軽度に)酸性なチタン-イソプロポキシドゾルをスピンコーティングすることによって生成することができる。こうしたゾルは、チタンイソプロポキシド及び無水エタノールを無水エタノール中のHClの溶液と混合することによって調製することができる。スピンコーティングした後、層は、典型的に、150℃を超えない温度で乾燥させる。場合により、緻密層は、引き続いて、500℃に30分間ホットプレート上にて空気中で加熱した。代替として、こうした緻密層は、スプレー熱分解堆積によって生成することができる。これは、典型的に、通常200℃から300℃の温度、しばしば約250℃の温度での、チタンジイソプロポキシドビス(アセチルアセトネート)を含む溶液の堆積を含む。通常、該溶液は、チタンジイソプロポキシドビス(アセチルアセトネート)及びエタノールを、典型的に1:5から1:20の比、より典型的には約1:10の比で含む。こうした方法は、本発明のデバイスにおけるn型及びp型層を生成するために、他のp型又はn型材料に適用することができる。
【0237】
有機の分子又はポリマーp型層の堆積は、適当な溶媒中の材料の溶液を、不動態化金属ハロゲン化物ペロブスカイトの層上にスピンコーティングすることによって達成することができる。p型正孔輸送体、例えばスピロ-OMeTADは、典型的に、クロロベンゼン中に溶解させる。通常、クロロベンゼン中のスピロ-OMeTADの濃度は、150mg/mlから225mg/mlであり、より通常には、濃度は約180mg/mlである。添加剤が、正孔輸送体又は電子輸送体材料に添加され得る。添加剤は、例えば、tBP、Li-TFSi、又はイオン性液体であってよい。
【0238】
通常、第2の電極材料は、高仕事関数金属、例えば金、銀、ニッケル、パラジウム又は白金、及び典型的には銀を含む。通常、第2の電極の厚さは、50nmから250nm、より通常には100nmから200nmである。例えば、第2の電極の厚さは150nmであり得る。第2の電極は、典型的に、蒸着によって第2の領域上に配置される。しばしば、第2の電極を生成するステップは、正孔輸送材料を含む膜を熱蒸発器に置くことを含む。通常、第2の電極を生成するステップは、シャドウマスクを介する高真空下での第2の電極の堆積を含む。典型的に、真空は約10-6mBarである。第2の電極は、例えば、100nmから200nmの厚さの電極であってよい。典型的に、第2の電極は、150nmの厚さの電極である。
【0239】
金属ハロゲン化物ペロブスカイトを含む層は、ステップ(b)に記載されている処理によって不動態化されているので、ステップ(c)及び(d)は、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの不動態化表面上で実施することができる。そのため、金属ハロゲン化物ペロブスカイトの層及び第2の領域及び/又は第2の電極材料の層の間に、介在層、例えば不動態化剤の単層があってよい。
【0240】
例えば、ステップ(c)は、2,2',7,7'-テトラキス-(N,N-ジ-pメトキシフェニルアミン)9,9'-スピロビフルオレン(スピロ-OMeTAD)及び有機溶媒、例えばクロロベンゼンを含む溶液をスピンコーティングすることを含むことができる。溶液の濃度は50mMから200mMであってよい。溶液は、tert-ブチルピリジン(tBP) (場合により、70molからM90mol%の濃度で)及びリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-TFSI)、場合により約30mol%のLi-TFSIをさらに含むことができる。
【0241】
追加として又は代替として、ステップ(c)は、例えば、デバイス上にシャドウマスクを介して銀電極を蒸発させることを含むことができる。銀電極は、100nmから100nmの厚さを有することができる。
【0242】
デバイスは、光電子デバイス、例えば光起電力デバイスであってよい。したがって、デバイスは、フォトダイオード、太陽電池、フォトディテクタ及びフォトセンサから選択することができる。
【0243】
本発明によるデバイスを製造するための方法は、以下のステップ:
I. 第1の電極材料の第1の層、場合により、半透明なフッ素ドープ酸化スズ(FTO)の層を含む基板を提供すること、
II. 第1の電極材料の層上にn型材料の層、例えばTiO2の緻密層を堆積すること、
III. 第1の電極材料の層及び/又は第2の電極材料の層を含む基板を、場合により200℃から600℃で、場合により30分間から60分間加熱すること、
IV. イソプロパノールであってよい溶媒中の誘電性材料のナノ粒子のコロイド状分散液をスピンコーティングすることによって、メソポーラス誘電性材料、例えばAl2O3の層を堆積すること、
V. 溶媒、例えばジメチルホルムアミド中に場合により3:1モル比で、10wt%から50wt%の第1の反応物、例えばメチルアンモニウムヨージド、及び第2の反応物、例えば塩化鉛(II)を典型的に含む金属ハロゲン化物ペロブスカイト前駆体をスピンコーティングすること、
VI. ステップVより前に、60℃から80℃にペロブスカイト前駆体及び基板を予備加熱すること、
VII. 80℃から120℃で30分間から60分間、ペロブスカイトの堆積層をアニーリングすること、
VIII. 場合により、熱い(例えば、80℃から120℃)試料を不動態化剤で処理すること、及び場合により、その後窒素流下で乾燥させること、
IX. 正孔輸送材料、例えばスピロ-OMeTADの層をスピンコーティングすること、並びに
X. デバイス上にシャドウマスクを介して、第2の電極材料、例えば銀の層を蒸発させること
の1つ以上を含むことができる。
【0244】
本発明は、本発明によるデバイスを製造するための方法によって得られるデバイスも提供する。
【0245】
不動態化金属ハロゲン化物ペロブスカイト半導体
本発明は、(a)金属ハロゲン化物ペロブスカイト及び(b)有機化合物である不動態化剤を含む半導体であって、不動態化剤の分子が金属ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合している半導体も提供する。
【0246】
本発明による不動態化金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、デバイス、又は本発明によるデバイスを製造するための方法について上記のどこかに記載されている通りであってよい。例えば、不動態化剤は、超分子結合、例えばハロゲン結合又はカルコゲン-金属結合によって、混合ハロゲン化物ペロブスカイト中のアニオン又はカチオンに化学的に結合することができる。不動態化剤は、(a)ハロゲン結合ドナー化合物及び(b)少なくとも1個のチオール基又はスルフィド基を含む有機化合物から選択することができる。不動態化剤は、少なくとも1個のN又はP原子を含む有機化合物、例えば本明細書に記載されているもの、例えばピリジンであってよい。
【実施例】
【0247】
[実施例1]
IPFBの吸着及び相互作用の性質
吸着されたIPBF(ヨードペンタフルオロベンゼン)の存在及びCH3NH3PbX3結晶表面(X=ハロゲン化物)との相互作用の性質を実証するため、固体状態13C及び19F核磁気共鳴(NMR)測定を実施した。図1eは、室温で液体である純粋なIPFBについての、及びペロブスカイト表面上に吸着されたIPFBについての、13C NMRの化学シフトを示す。範囲135〜150ppmにおけるフッ素結合炭素(C2〜6)について有意なシフトは見出されなかったが、ヨウ素を有する炭素(C1)のシグナルは、低磁場に2ppmシフトした。したがって、13C NMRは、図1dに例示されている通り、IPFBが、CH3NH3PbX3結晶表面に結合するハロゲンを介して吸着されている強い証拠を示す。
【0248】
図1fは、13C NMRよりも詳述な情報の抽出を可能にする、同じ試料で収集された19F NMRを示す。処理されたペロブスカイト膜で記録された19F IPBFシグナルは、2つの構成成分(挿入図1f)、液体IPBFと同じ周波数で1つの小さい構成成分、及び高磁場に約0.5ppmずっと激しくシフトした1つから構成されている。これは、IPFB分子が結晶表面上に吸着されているとともに非吸着過剰の大部分が除去されているという結論を支持している。
【0249】
[実施例2]
IPFBを用いるメソ超構造化太陽電池(MSSC)における不動態化手順
パターン化された半透明なフッ素ドープ酸化スズ(FTO)上で、デバイスを調製した。70nmの厚いTiO2の緻密層を、無水エタノールで1:10の体積比に希釈されたチタンジイソプロポキシドビス(アセチルアセトネート)の前駆体溶液から275℃でスプレー熱分解を介して堆積した。基板を500℃で45分間焼結し、室温に放置冷却した。次いで、試料を15mMの水性TiCl4浴中に70℃で1時間の間沈め、続いて、脱イオン水で濯ぎ、500℃で45分間再焼結した。メソポーラスAl2O3の次の層を、イソプロパノールで1:2の体積比に希釈されたイソプロパノール(Sigma-Aldrich)中のAl2O3ナノ粒子のコロイド状分散液を、2000rpm (勾配: 2000rpm/s)で60秒間スピンコーティングすること、続いて、150℃で30分間乾燥させることによって堆積した。ペロブスカイト前駆体(ジメチルホルムアミド中、3:1モル比でメチルアンモニウムヨージド(CH3NH3I)及び塩化鉛(II) (PbCl2)を40wt%)を、2500rpm (勾配: 2500rpm/s)で60秒間スピンコーティングした。手順は「熱基板スピンコーティング」を利用した、即ち、ペロブスカイト前駆体及び試料を70℃に予備加熱する。基板をスピンコーターに迅速に移し、前駆体溶液をその後直ちに堆積し、スピンコーティングを開始した。この手順は、一貫して、ペロブスカイトのより厚いキャッピング層及びより高い短絡電流を生じさせた。
【0250】
100℃で45分間の後続のアニーリング後に、ペロブスカイトが形成した。次いで、熱い試料を直接、ヨードペンタフルオロベンゼン(IPFB、Chemical Abstractサービス番号 827-15-6)溶液中に数分間浸漬し、その後、窒素流下で乾燥させた。引き続いて、添加された80mol%のtert-ブチルピリジン(tBP)及び30mol%のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-TFSI)とともに、クロロベンゼンの中80mMの2,2',7,7'-テトラキス-(N,N-ジ-pメトキシフェニルアミン)9,9'-スピロビフルオレン(スピロ-OMeTAD)をスピンコーティング(2000rpmで、勾配: 60秒間2000rpm/s)することによって、正孔輸送材料を堆積した。最終的に、150nm厚の銀電極を、デバイス上にシャドウマスクを介して蒸発させた。
【0251】
[実施例3]
IPFBを用いるMSSCの性能及び光学的性質
IPFB処理の有無での最良のペロブスカイトMSSC (上に記載されている方法によって生成された)のJV特性を図2aに示す。IPFB処理で、短絡電流密度(Jsc)並びに開回路電圧(Voc)は同様のままであるが、曲線因子(FF)は劇的に改善されている。図2bにおける表挿入は、全体的なPCE (出力変換効率)が13%から16%超に増加することを示しており、段階的な改善を表す。図2bにおいて、同時に調製された一連のデバイスに関するPCE統計分布が示されており、これは傾向の改善を確証している。
【0252】
図2aにおいて、対照デバイスは、0.9Vに近いJV曲線の軽度の屈曲を呈しており、これは相対的に不十分な曲線因子の原因となる。同様な形状のJV曲線は、有機及び無機の太陽電池の両方に関するいくつかの研究において以前に報告されており、それは一般に、「S形状」JV曲線(Kumar、A.ら、Journal of Applied Physics 105 (2009); Wagenpfahl、A.ら、Physical Review B 82、115306 (2010))と称されている。S形状の発端は、デバイスの任意の界面で発生し得る電荷抽出のためのエネルギー障壁に帰する。しばしば、p型構成成分と電極との間の界面が原因となることが見出された。今までのところ、n型構成成分とp型構成成分との間の界面に焦点を当てた研究はほとんどない。無機構成成分が、本明細書において使用されているペロブスカイトなどのイオン結晶であるならば、自然の双極子が正孔輸送体とペロブスカイトとの間の有機-無機界面で発生し得る。実際に、結晶表面での配位不飽和なハロゲン化物の存在は、局所的過剰の負の静電気帯電を起こし、これが、スピロ-OMeTADに注入された正孔をトラップして界面双極子を発生させ得る。IPFB処理は、結晶表面に曝露されたハロゲン化物の静電気帯電を有効に遮蔽し、双極子形成を防止することができる。S形状は時々不明瞭であるが、IPFB不動態化処理を用いるデバイスは、体系的に、曲線因子の改善を呈する。
【0253】
IPFB吸着が、図2cに表されている通り、ペロブスカイト材料それ自体の光学的性質を変化させたかどうかも検討した。図2dにおいて、500nmから2500nmの間の光吸収スペクトルが示されており、これは、IPFBの有無による差異が実質的にないことを呈している。サブバンドギャップ吸収(800nmよりも長い波長で)は有意であり、光散乱による単純なものでない。
【0254】
[実施例4]
IPFB不動態化MSSCの光ダイナミクス
光誘起種の展開をより良く理解するため、及びペロブスカイト/正孔輸送体界面で発生する電荷移動及び再結合のダイナミクスを解明するために、フェムト-マイクロ秒時間ウィンドウにおける過渡吸収(TA)測定を、IPFB処理の有無による完全ペロブスカイトMSSC上で実施した。図3aは、850〜1150nmのスペクトル領域をカバーする近赤外におけるTAフェムト秒スペクトルを示している。IPFB処理を用いない対照試料は、200fsで平坦な負のバンド(光誘起吸収、PA)を示し、これは、サブピコ秒時間スケール上で幅広い正のバンドの形成(光ブリーチング、PB)によって迅速に追い越される。無溶媒ペロブスカイト膜(正孔-輸送体なし)上のこの幅広いPBバンドは、準定常状態光誘起吸収においても観察された。これはフォトルミネセンスとは異なり、無溶媒ペロブスカイト膜においても存在するので、それは、中間ギャップ状態への吸収のブリーチング、即ち中間ギャップ状態における電荷捕獲に帰属され得る。IPFB処理を用いると、過渡吸収展開はかなり異なる。200fsでPAはまだ観察されるが、しかしながら、それは、我々がピコ秒時間スケール上でPBを観察することができる前に、異なるPAバンドに展開する。この新たなPAは、1psトレースで明らかに顕著であり、近赤外においてさらに伸長し、スピロ-OMeTAD上での正電荷の吸収と同時である。PAバンドは、また、IPFBを用いずに観察された幅広いPBバンドの形成と競合し、これは、ピコ秒時間スケール上でのみPAを圧倒している。これは、表面処理により、光励起で、サブピコ秒時間スケール上の中間ギャップ状態の占有率に関して支配するスピロ-OMeTADへの正孔移動プロセスが生じることを示している。これは、正孔移動がIPFBを用いるとより効果的であるとは必ずしも暗示していないが、それは、IPFB処理を用いると中間ギャップ状態の、より少ない又はより緩徐な充填があることを意味している。
【0255】
ペロブスカイトからスピロ-OMeTADへの正孔移動の兆候をプローブするため、過渡フォトルミネセンスクエンチング実験を実施した。図3bにおいて、スピロ-OMeTADは、IPFB処理を用いると、部分的にであるが同様のより速い速度でペロブスカイトのフォトルミネセンスをクエンチすることが示されている。全ての吸収特色を解きほぐすことは困難であるが、しかしながら、上記の結果は、ペロブスカイト膜がIPFBで処理される場合の、中間ギャップ状態の、占有されたより小さい及びより緩徐な集積、並びにスピロ-OMeTADへのより速い正孔移動と一致する。
【0256】
ペロブスカイト/正孔輸送体界面での電荷再結合ダイナミクスをプローブするため、ナノ-ミリ秒時間スケールにおける酸化されたスピロ-OMeTAD種についてのTAシグナルの減衰を測定した。図3cにおいて、IPFB不動態化の有無による試料から640nmでプローブされたTASダイナミクスが示されている。未処理試料において、正孔は、およそ300nsの初期の時定数で再結合する。対照的に、IPFB処理試料は、およそ900nsの初期時定数で、ずっと長い減衰を示す。したがって、正孔寿命は3倍超長く、正孔再結合が、IPFBの存在で有意に抑制されていることを示している。
【0257】
[実施例5]
ペロブスカイト/正孔輸送体界面調査
異なるデバイス作業環境下のペロブスカイト/正孔輸送体界面で何が起こるかを十分に理解するために、小さい摂動光電流及び光電圧減衰測定を使用した。MSSCデバイスにおける電荷輸送に関する寿命は、器具の機器分解能に近いので、ペロブスカイト増感太陽電池(PSSC) (MSSCに見出される薄い(300nm)Al2O3を、厚い(1.5μm)メソポーラスTiO2と置き換える)を構築した。Al2O3をTiO2と置き換えたことを除いた実施例2の方法によって、デバイスを構築した。次いで、ペロブスカイトがメソポーラスTiO2上に堆積される。PSSCの配置において、電荷輸送は適度にすることができ、相対的に低いコーティング密度のペロブスカイトで厚いメソポーラスTiO2膜を作製することによって電子輸送が独占的にTiO2を介するようにする。IPFB処理を用いる太陽電池性能において同様の増強が観察された。作業デバイスにおけるペロブスカイト/正孔輸送体界面での電荷再結合の相対変化は、TiO2 (Vcbe-VF)における伝導バンド端に関する電子疑フェルミレベルの相対位置に対して再結合寿命(τrec)をプロットすることによって観察することができる。図4aは、IPFB処理が、ペロブスカイト/正孔輸送体界面での再結合速度定数(1/τrec)を3倍低減することを示しており、図3dにおいて表されているTA結果と一致する。
【0258】
再結合の阻害は、IPFB処理を用いて観察された曲線因子の改善を説明することができるが、S-形状JV曲線の発生は明らかにしていない。図4bに例示されている通り、結晶表面での配位不飽和なハロゲン化物(X-)は、スピロ-OMeTAD上で正孔のためのトラップ部位として作用することができる。これが真実であれば、正孔は、それらが配位不飽和なハロゲン化物の全てを遮蔽するまで、このヘテロ接合に蓄積するはずである。そのため、対照デバイス中の正電荷の追加の集積が見えると予想される。この蓄積電荷の相対濃度は、同じJscでの短絡状態(ρsc)下で抽出された総電荷を比較することにより直接概算することができる。
【0259】
図4cは、任意の所与Jscに関して、IPFB処理を用いないデバイス内の電荷のずっと大きいバックグラウンド密度があることを示している。これは、図4dに例示されている通り、配位不飽和なハロゲン化物を有効に不動態化するとともにヘテロ接合での蓄積電荷の密度を低減するIPFBと一致する。驚くべきことに、対照デバイスにおける追加のバックグラウンド電荷密度は、IPFB処理デバイスにおける総電荷密度よりも有意に大きい。S-形状JV曲線がペロブスカイト/正孔輸送体ヘテロ接合でのスピロ-OMeTADにおける正孔蓄積から生じ、これはヘテロ接合から離れるよりもむしろそれに向かってスピロ-OMeTAD内の正孔ドリフトを引き起こす局所電場をもたらすと提案される。この電場の効果は、短絡状態において無視でき得るが、それは、外部バイアス適応下で有意になる。
【0260】
[実施例6]
IPFBを用いるスズハロゲン化物ペロブスカイトの不動態化
変動する量のスズハロゲン化物ペロブスカイトCH3NH3SnI3を含有するペロブスカイトの層を、ガラス上の窒素充填グローブボックス内で、ガラス基板、FTO層、緻密TiO2層及びメソポーラスTiO2層を含む基板上に堆積し、次いで、上に記載されている通りのIPFBで処理した。次いで、スピロ-OMeTADの層をIPFB不動態化スズペロブスカイトの上でスピンコーティングした。図5において見ることができる通り、IPFBで不動態化された層は25時間後に劣化しなかったが、実質的劣化が非不動態化CH3NH3SnI3膜において見ることができる。典型的な有機鉛混合ハロゲン化物ペロブスカイトのために、前駆体材料、CH3NH3I及びPbCl2が、DMF中に3:1モル比にて40wt%の濃度で溶解されている。同じことが混合金属(スズドープ)ペロブスカイトのために行われており、ここで、金属ハロゲン化物の総質量は同じままであるが、ハロゲン化鉛の画分がスズハロゲン化物によって置き換えられている。例えば、25%のSnドープ溶液のため、ペロブスカイト溶液に添加された金属ハロゲン化物の総質量の25%は、Snハロゲン化物から構成される。100%メチルアンモニウムトリヨードスタネートを、混合ハロゲン化物鉛ペロブスカイトと同じやり方で製作した。これらのSn系のペロブスカイトは、SnCl2、SnF2、SnBr2を使用することによる混合ハロゲン化物ペロブスカイトであってもよい。
【0261】
[実施例7]
チオフェンを用いたMSSCにおける不動態化手順
FTOコーティングガラスシート(15Ωcm-1のPilkington)を亜鉛粉末及びHCl(2M)でエッチングすることで、必要とされる電極パターンを得た。次いで、シートを石鹸(水中2%のHellmanex)、脱イオン水、アセトン及びエタノールで洗浄し、酸素プラズマ下で10分間処理することで、任意の残留有機残渣を除去した。引き続いて、エタノール中のチタンイソプロポキシドの溶液を基板上にスピンコーティングすることによって、TiO2の緻密層を堆積した。次いで、基板を500℃に45分間焼結した。次いで、2:1(IPA:Al2O3)で希釈された酸化アルミニウム(Al2O3)分散液を、基板上にスピンコーティングし、引き続いて、1時間乾燥させた。次いで、混合ハロゲン化物ペロブスカイト(CH3NH3PbI3-xClx)の40wt%溶液を、グローブボックス内でAl2O3上にスピンコーティングし、基板を周囲温度で30分間放置乾燥させ、次いで、100℃で90分間アニールした。
【0262】
ペロブスカイトのアニーリング後、不動態化層(チオフェン)を熱い基板上にスピンコーティングした。正孔輸送材料(HTM)、2,2',7,7'-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)9,9'-スピロビフルオレン(スピロ-OMeTAD)をクロロベンゼン中に13vol%で溶解させ、次いで、それを完全に溶解させるまで100℃に加熱した。完全な溶解後、4-tert-ブチルピリジン(tBP)を、1:26μLmg-1のtBP:スピロ-OMeTADの体積対質量比で添加した。リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド塩(Li-TFSI)をアセトニトリル中に170mgmL-1で予備溶解させ、正孔輸送体溶液に、1:12μL mg-1のLi-TFSI溶液:スピロ-OMeTADで添加した。HTMを次いで基板上に1000rpmで45秒間スピンコーティングした。膜を次いで熱蒸発器に置き、そこに、シャドウマスクを介して高真空下で(10-6mbar)、200nmの厚い銀電極を堆積した。0.0635cm2のアパーチャを有する金属光学マスクによって、デバイスの活性部域を定義した。
【0263】
[実施例8]
デバイス特性
上に記載されている方法によって生成された、テトラヒドロチオフェン及びチオフェンで不動態化されたMSSCのデバイス特性を測定した。特性は図6及び7に示されており、そこで、それらはIPFB不動態化デバイス及び非不動態化対照デバイスのデバイス特性と比較もされている。図6は、いかなる表面処理をも用いない対照デバイスと比較した場合の、3つの異なる表面処理について得られた性能の広がりを示している。全てのデバイスを、グローブボックス内で、及び検討された各可変物:ヨードペンタフルオロベンゼン(IPFB)、テトラヒドロチオフェン(THTh)、チオフェン(Th)についての16個の個々のデバイス及び対照デバイスの試料サイズを用いて、完全に加工した。我々は、ここで、不動態化デバイスには、対照と比較した場合にデバイスパラメータに改善があることがわかる。図7は、検討された表面処理:ヨードペンタフルオロベンゼン(IPFB)、テトラヒドロチオフェン(THTh)、チオフェン(Th)についての最良性能のデバイス、及び表面処理を用いない対照デバイスのJ-V特性;並びに全てのデバイスパラメータの最大値を示す表を示している。
【0264】
[実施例9]
様々な表面処理を用いる混合ハロゲン化物Pbペロブスカイト(CH3NH3PbI3-xClx)の時間分解フォトルミネセンス
窒素充填グローブボックス内でペロブスカイト前駆体の膜をスライドガラス上にスピンコーティングすることによって、分光法試料を調製した。スピンコーティングプロトコールは、DMF中のCH3NH3I:PbCl2の3:1モル比の40wt%溶液を使用する。スライドを窒素充填グローブボックス内に1時間の間放置乾燥し、この後、それらを90℃に120分間加熱した。加熱した後、液体チオフェン又はIPFB(表面処理)を基板に分注し、スピンコーティングし、その後、トルエン系の溶液から、分注及びスピンコーティングされたポリメチルメタクリレート(PMMA)の約100nm層を用いるコーティングを続けた。全ての加工を窒素充填グローブボックス内で行った。結果は図8に示されており、これは、IPFBが膜のPL(フォトルミネセンス)寿命に小さい効果を有する一方で、チオフェンを用いる寿命には増加があることを示している。チオフェン及びIPFBの組合せを膜上にスピンコーティングした場合(チオフェン、続いてIPFB)、膜のPL寿命はかなり増加し、表面処理後の非放射減衰速度(又はチャネル)における低減を実証した。このデータは、これらの組合せ材料が材料における配位不飽和な結合を不動態化することを暗示すると解釈される。そのためデータは、配位不飽和イオンが非放射電子及び正孔再結合部位を創出する原因となることを暗示している。
【0265】
[実施例10]
様々な表面処理を用いる混合ハロゲン化物ペロブスカイト(CH3NH3PbI3-xClx)の定常状態フォトルミネセンス
図9は、ガラス基板上にコーティングされたCH3NH3PbI3-xClxの膜の定常状態フォトルミネセンス(PL)を示している(図8における測定のために使用されているのと同じ試料)。時間分解PLにおいて見られる通り、IPFB処理は、材料のPLに対して効果をほとんど有さない。しかしながら、チオフェン処理を用いるとフォトルミネセンスの増加が見られ、チオフェン及びIPFBの組合せ(combo)を使用することによるさらなる増加が見られ、これらの2つの処理が材料におけるトラップ準位を不動態化するように作用するというさらなる証拠が見られる。
【0266】
[実施例11]
メチルアンモニウムスズ三ヨウ化物の不動態化及び安定化
チオフェンの不動態化層を、メチルアンモニウムスズ三ヨウ化物(不活性雰囲気下で形成されたCH3NH3SnI3)の厚層上にスピンコーティングした。次いで、試料を空気中に周囲の屋内条件で3週間放置した。この3週経た試料の吸収スペクトルは、図10に示されている。CH3NH3SnI3が過去において悪名高くも不安定だと考えられていたが、図10は、チオフェンで不動態化された試料の吸光度は、3週間安定なままであったことを実証している。
【0267】
[実施例12]
IPFB処理の有無によるデバイス性能
実施例2に記載されている方法によって、異なるメソポーラスAl2O3厚さ(100nm、400nm、600nm及び1500nm)を用いて、デバイスを調製した。IPFB処理の有無により、全てのデバイスを同時に調製した。次いで、デバイス性能特性を測定し、電流-電圧特性から抽出されたデバイスパラメータのボックスチャートが図11に示されている(そこで各点は単一のデバイスを表す)。IPFB処理は、未処理デバイスと比較した場合に出力変換効率及び曲線因子の実質的な改善をもたらす。
【0268】
[実施例13]
異なるヨードペルフルオロカーボンを使用する処理を用いるデバイス性能
IPFBに加えて異なるヨードペルフルオロカーボンを使用したことを除いた実施例2の方法によって、MSSCを構築した。使用された異なるヨードペルフルオロカーボンは、ヨードペンタフルオロベンゼン(IPFB)、ペルフルオロ-n-ブチルヨージド(PFBI)、ペルフルオロ-n-ヘキシルヨージド(PFHI)及びペルフルオロデシル-n-ヨージド(PFDI)であった。図12は、デバイスの電流-電圧特性から抽出されたデバイスパラメータのボックスチャートを示している。
【0269】
[実施例14]
IPFB処理の有無による、1.5μmの厚いメソポーラスTiO2を有するペロブスカイト増感太陽電池(PSSC)についてのデバイス性能パラメータ。
1.5μmの厚いメソポーラスTiO2を有するPSSCを、IPFB処理の有無により、実施例5の方法によって調製した。デバイス性能特性を次いで測定し、電流-電圧特性から抽出されたデバイスパラメータのボックスチャートが図13に示されている(そこで、各点は単一デバイスを表す)。全てのデバイスは、方法に記載されている通り、IPFB処理の有無により同時に調製した。
【0270】
[実施例15]
IPFBの有無によるDSSCについての光電圧及び光電流減衰測定
IPFB処理の有無により、実施例5の方法(ここで、ペロブスカイトを染料D102で置き換えた)によって調製されたメソポーラスTiO2層上に有機染料を配置することによって、染料増感太陽電池(DSSC)を調製した。有機染料(D102)を用いて調製されたデバイスについての光電圧-電流減衰測定を、4つの別々のデバイスから抽出した。結果は、図14に示されている: a)短絡光電流(Jsc)に対する短絡での電荷密度(ρsc); b)開回路電圧(Voc)に対する開回路での電荷密度(ρoc); C)開回路(ρoc)での電荷密度に対する開回路状態での再結合寿命(τrec); d)短絡での電荷密度(ρsc)に対する短絡状態での輸送寿命(τtrans)。
【0271】
[実施例16]
ピリジン不動態化膜についてのフォトルミネセンスデータ
スライドガラス上にペロブスカイトの膜をスピンコーティングすることによって、分光法試料を調製した。スピンコーティングプロトコールは、DMF中のCH3NH3I:PbCl2の3:1モル比の40wt%溶液を使用する。スライドを1時間の間放置乾燥させ、この後、それらを90℃に120分間加熱した。加熱した後、表面処理物(クロロベンゼン中に10vol%から20vol%に希釈されたピリジン又はtert-ブチルピリジン(tBP))を基板上にスピンコーティングし、その後、PMMAの100nm層(ポリメチルメタクリレートの1%溶液を使用した)を続けた。全ての加工を不活性雰囲気中で行った。不動態化及び非不動態化(対照)膜の定常状態フォトルミネセンス(PL)及びフォトルミネセンス量子効率(PLQE)が図15に示されている。不動態化及び非不動態化(対照)膜の時間分解PLが図16に示されている。これらの結果は、tBPはペロブスカイトのPLをクエンチするが、ピリジンを用いると寿命の増加があることを示している。ピリジンの使用で、膜のPL寿命は、最大マイクロ秒を超えるまでかなり増加し、チオフェンのように、ピリジンが材料における配位不飽和な結合を不動態化することを示唆した。定常状態PL及びPLQEにおける増加も、この仮説を確証している。
【0272】
[実施例17]
チオフェン又はピリジンを用いる平面ヘテロ接合太陽電池の製作
FTOコーティングガラスシート(15Ωcm-1のPilkington)を亜鉛粉末及びHCl(3M)でエッチングすることで、必要とされる電極パターンを得た。次いで、シートを石鹸(水中2%のHellmanex)、脱イオン水、アセトン及びメタノールで洗浄し、酸素プラズマ下で10分間最終処理することで、有機残渣の最終痕跡量を除去した。次いで、TiO2の100nmの厚い緻密層を、無水エタノール中に希釈されたチタンイソプロポキシドを使用してガラス上に堆積し、45分間500℃で焼結した。次いで、40wt%のペロブスカイト前駆体溶液(DMF中CH3NH3I:PbCl2の3:1モル比)を、不活性雰囲気下で直接基板上にスピンコーティングした。次いで、基板をN2下で30分間放置乾燥した後、ホットプレート上に90℃で置き、そこで、それを180分間アニールした。アニーリングした後、基板を室温に冷却させておき、チオフェン又はピリジン(クロロベンゼン中、各々20vol%)の層をペロブスカイト層の上にスピンコーティングし、その後、上記の通り(実施例7) HTM材料を続けた。次いで、150nmの厚い銀電極を、シャドウマスクを介して堆積した。
【0273】
ヒステリシスを用いて、デバイスの電流-電圧特性を測定した。ピリジンで不動態化されたデバイスについての結果が、図17に示されている(FBは順方向バイアスであり、SCは短絡である)。FBで電流-電圧走査を開始し、SCに向かって走査する場合、電流-電圧曲線の形状は、SCからFBへ走査するものと異なる。この差異は、電流-電圧曲線におけるヒステリシスと名付けられている。ヒステリシスは、太陽電池の望ましくない特性であり、ヒステリシスを最小化又は低減するための太陽電池材料における改善が非常に望ましい。図17におけるデバイスは、単一の溶液堆積ペロブスカイト太陽電池にとって非常に高い効率を表す16.5%のPCEを有する最優秀のピリジン不動態化平面-ヘテロ接合デバイスである。模擬全日光下での不動態化及び非不動態化太陽電池のバッチの性能特性が図18に示されている。これは、不動態化デバイスが一貫して、あらゆるパラメータにおいて非不動態化デバイスより性能がすぐれていることを実証している。とりわけ、不動態化デバイスは、一貫して、未処理デバイスにおいて観察されるよりも高い電流及び電圧を有する。図18におけるデバイス統計は、明らかに、表面不動態化剤としてピリジン及びチオフェンを利用することが、デバイスの再現性を劇的に改善して、標準偏差を著しく低減することを示している。チオフェン及びピリジン処理デバイスの両方の平均性能は、一貫して、未処理対照デバイスより性能がすぐれている。処理デバイスのうち、ピリジン不動態化デバイスは、一貫して、チオフェンで処理されたものよりもいっそう高い光電流及び曲線因子を達成する。
【0274】
図19は、デバイス結果及び安定化最大出力を示している。図19(a)は、チオフェン及びピリジン不動態化デバイスと比較した場合の、対照デバイスの電流-電圧特性を示している。ピリジン不動態化デバイスが対照及びチオフェン不動態化デバイスの両方より性能がすぐれていることを見ることができる(性能パラメータは、下記の表1に要約されている)。図19(b、c、d)は、不動態化及び対照デバイスの安定化最大出力アウトプットを示している。不動態化デバイスが対照デバイスよりもずっと高い効率及び電流で安定化して、FB-SC走査の効率をほぼ達成することを見ることができる。
【0275】
【表1】
【0276】
表1-100mWcm-2等価放射照度のAM1.5疑似日光下で測定された最も良い対照及び不動態化デバイスのFB-SC走査から抽出された性能パラメータ。安定化効率値及び安定化電流密度値と併せた、各可変物の最優秀デバイスについてのデバイス性能パラメータ。
【0277】
平面ヘテロ接合太陽電池上での表面処理を利用して、チオフェン不動態化で13.1%から15.3%まで、及びピリジン不動態化で16.5%までの最大出力変換効率の増加が観察された。これらの結果は、我々が、単一ステップ溶液堆積方法を使用して製作された平面ヘテロ接合ペロブスカイト太陽電池について達成した最も高い効率を表している。
【0278】
結論として、配位結合を介する表面不動態化の制御された方法が実証され、これは、ペロブスカイト結晶における配位不飽和な金属イオンによって引き起こされると仮定される、電子トラップ部位の密度を低減する効果を有すると思われる。チオフェン及びピリジン不動態化を使用することによって、大気不動態化のランダムな再現不能性質とは対照的に、欠陥状態の量的及び系統的減少が得られる。この型の電気不動態化についての機序が提案され、ペロブスカイト膜における非放射再結合の速度における減少が示された。その際、平面ヘテロ接合太陽電池の効率が、それぞれチオフェン及びピリジン処理を使用して、13%から15.3%及び16.5%に増加され、これらの太陽電池について高い安定化出力アウトプットをいっそう有意に達成した。太陽電池における使用を超えて、この不動態化技法は、レーザー及びLEDなど多くの他のペロブスカイト系の光電子工学用途に有用であると判明する可能性がある。
【0279】
太陽電池特性付け
100mW/cm2の放射照度で模擬AM1.5日光を与えるように較正されたクラスAAB ABET太陽シミュレーターを使用して、太陽電池性能を測定した。NREL較正KG5濾過シリコン基準電池を使用して、放射照度を較正した。ソースメーター(Keithley 2400、USA)を使用して、電流-電圧曲線を記録した。デバイスの活性部域を定義するために使用される、この場合においては0.0625cm2である金属アパーチャで、全ての太陽電池にマスクした。試験する前に、デシケーター内に暗所で12時間の間、全てのデバイスを貯蔵した。
【0280】
[実施例18]
ピリジン及びチオフェン不動態化膜のフォトルミネセンス特性
光電子工学特性に対するチオフェン及びピリジンの影響を、より詳細に研究するため、チオフェン又はピリジンで処理及び未処理のペロブスカイト膜のフォトルミネセンスを検討した。
【0281】
スライドガラス上にペロブスカイトの膜をスピンコーティングすることによって、分光法試料を調製した。スピンコーティングプロトコールは、DMF中のCH3NH3I:PbCl2の3:1モル比の40wt%溶液を使用する。スライドを1時間の間放置乾燥し、この後、それらを90℃に120分間加熱した。加熱した後、表面処理物(クロロベンゼン中20vol%に希釈されたピリジン又はチオフェン)を基板上にスピンコーティングし、その後、PMMAの100nm層(ポリメチルメタクリレートの1%溶液を使用する)を続けた。全ての加工を不活性雰囲気中で行った。
【0282】
図20(b)は、励起出力とともに増加するフォトルミネセンス量子効率(PLQE)を示している。フルエンスに伴うPLQE上昇は、トラップ準位の充填に帰しており、ここで、PLQEは、非放射ショックレーリードホール再結合の原因となるトラップ準位が優勢に充填される場合にだけピーク値に達する。表面がピリジンで処理された場合に300nsから1800nsまでの、及びチオフェンで処理された場合に2200nsまでの、ペロブスカイト膜のPL寿命(図20(a))における桁違いの増加も観察された。所与の励起出力について、対照に関する不動態化膜についてのPLQE増加が見られる。PLQE増加及びPL寿命は両方とも、材料内の非放射再結合の速度における全体的低減を示し、非放射再結合への経路の一部、即ち、トラップ媒介再結合が実質的に低減されたという証拠である。ピリジンで処理されたペロブスカイト試料についてのPLQEも、チオフェンで処理された試料よりも低励起密度で有意に高い。励起出力に伴うPLQEにおけるこの上昇がトラップの充填に帰するのであれば、これは、ピリジン及びチオフェンの両方がペロブスカイト材料の表面上でトラップ準位を不動態化するように作用するが、ピリジンの方が有効であると思われ、すっと低い励起出力でPLQEにおける「プラトー」に達するという事実を示している。これについての理由に関する1つの仮説は、ピリジンがチオフェンよりも強くペロブスカイト表面に結合することができ、したがって、より首尾よく非放射再結合度を低減するということである。
【0283】
NTサブギャップトラップ準位の存在下で、光励起種(自由電荷及び励起子)及びこれらの材料における後続のフォトルミネセンス動力学の展開を記載するモデルが提案される。光励起下で、nTトラップは電子が充填され、これは、電荷的中性を確実にするための、原子価バンドにおけるnT光ドープ正孔の集団をもたらす。非トラップ電子(及びそれらの正孔対)は、該種間に確立された熱平衡及び該種間の急速な交替を有する、自由電荷として又は結合励起子(50meVの結合エネルギー)として存在することができる。未処理及び処理試料の両方についての強度依存性PL減衰が図21に示されている。低いフルエンス、例えば、約1015cm-3の初期光励起密度で、再結合は、優勢な数の光ドープ正孔と少数の光励起電子との間の近接単分子再結合によって支配される。高いフルエンス(1017cm-3)で、トラップは優勢に充填され、光励起電子及び光ドープ正孔の数は匹敵し、減衰がもう一度単分子になるのに十分低い密度に達するまで(より長い時間で)二分子減衰に至る。
【0284】
結果は、モデルと全体的にフィットされたので、任意の時点での光生成正孔の合計数nhは、nh =ne + nTとなり、ここで、neは自由電子の数である。次いで、光生成キャリアの合計濃度は、N = ne + nxと定義することができ、ここで、nxは励起子の濃度である。これは、しかしながら、トラップ電子及び対応する正孔を除く。鍵になる想定は、トラップ電子は比較的長い寿命であるということである。トラップ濃度がPL減衰測定で一定であり、減衰中、励起子及び自由電荷が熱平衡であると我々が想定するならば、モデルが実験データにフィットされることで、トラップ密度NTを決定することができる。フィットすることから、未処理膜のトラップ密度は、3.5×1016cm-3であるとに決定される。しかしながら、チオフェン不動態化膜について、このトラップ密度は3倍減少されて、1.0×1016cm-3のトラップ密度を生じ、一方でピリジン不動態化膜について、抽出トラップ密度は1桁分減少され、0.2×1016cm-3のトラップ密度をもたらす。それゆえに、これは、有機-無機のハロゲン化鉛ペロブスカイトにおける電子トラップ部位を有効に不動態化するチオフェン及びピリジン処理の両方と一致する。
【0285】
[実施例19]
変動するアルキル鎖長の不動態化剤を用いるハロゲン化鉛ペロブスカイトの不動態化
より長いPL寿命(およそ1000ns)並びに増大した内在的な疎水特性を有するCH3NH3PbX3ペロブスカイト膜の製作を検討した。これは、新たな一連の電子特性及び結晶特性を導入する手段としてアルキル鎖長における変動を研究することを伴う。これに関して、CH3NH3PbX3 (ここで、X = I、Br又はCl)ペロブスカイトのメチル基を長いアルキル鎖長(例えば、オクチル-アミン基)で置換することは、ペロブスカイトの結晶子サイズの低減を誘発し得るが、過剰なこうした長鎖が結晶格子に導入される場合、それは、3Dペロブスカイトを2Dペロブスカイト構造に完全に変形し、材料の構造特性及び電子特性における完全な変化に至ることがある。
【0286】
この研究は、CH3NH3PbX3ペロブスカイトにおけるオクチルアミン基での特定量のメチルアミン置換が、定常状態PLピーク位置をより短い波長に向けてシフトし、一方では、過剰な付加が、PLを発光帯域の赤色から緑色に向かう領域に有意に押すことができ、3Dから2Dへのペロブスカイトの変形を示すことを実証する。この研究は、非常に少量のオクチルアミンの添加がPL減衰時間の驚くべき減速をもたらすことも実証する。さらに、CH3NH3PbX3ペロブスカイトへのオクチルアミンの導入は、それを実際により疎水性にし、次いで、こうした水分耐性は、ペロブスカイト系のデバイスの長期屋外安定性に直接影響を及ぼす。
【0287】
アルキル-アンモニウム-ハロゲン化物の合成
メチル-アンモニウムヨージドを合成するため、無水エタノール中33wt%のメチルアミン24mlを、C2H5OH 100ml中のヨウ化水素酸(H2O中57%) 10mlと反応させた。反応を環境条件下で30〜60分間激しく撹拌しながら実施した。次いで、反応混合物を回転蒸発器に60℃でかけることで溶媒を除去し、白色/黄色がかった色のメチル-アンモニウム-ヨージド粉末の析出に至った。次いで、結果として得られた生成物をジメチルエーテルで洗浄することで、未反応の反応物を除去した。次いで、CH3NH3I (MAI)粉末のさらなる精製のために、C2H5OH中又はC2H5OH/CH3OCH3混合物中のいずれかで、再結晶化を実施した。次いで、結果として得られた再結晶化MAIを、それが乾燥するまで真空炉下にて60℃で乾燥させた。それの吸湿性の性質により、精製MAIを乾燥状態で貯蔵した。
【0288】
同様の手順を適応させることで、オクチル-アンモニウム-ヨージド(OAI)、オクチル-アンモニウムブロミド(OABr)及びオクチル-アンモニウム-クロリド(OACl)を合成した。適切なアルキルアミン(例えば、オクチル-アミン)を使用することによって、アルキル鎖の鎖長を変動した。異なるハロゲン供給源(例えば、HBr及びHClなど)を使用することによって、ハロゲン化物イオンを変動した。手順の残りは、メチル-アンモニウム-ヨージド合成のための使用されたものと同じであった。
【0289】
ペロブスカイト前駆体溶液
ペロブスカイトは、2種の化合物、即ちアルキル-アンモニウムハロゲン化物及びハロゲン化鉛を反応させることによって、以下
CH3NH3X + PbX2-> CH3NH3PbX3
の一般の反応によって合成することができる。
【0290】
PB (CH3COO)2、PB (NO3)2などのPb2+を提供することができる他の鉛供給源も使用することができる。
【0291】
この実施例において、金属ハロゲン化物塩に対して3モル過剰の有機ハロゲン化物塩を使用して合成されたペロブスカイトを使用し、結果として得られた反応は、
3CH3NH3X + PbX2-> CH3NH3PbX3 + 副生物
に従った。
【0292】
ペロブスカイト膜製作
前駆体溶液を基板上にスピンコーティングし、およそ100℃でおよそ45分間熱アニールした。前駆体溶液の濃度及びアニーリングプロトコールは、要件の通りに操作することができる。例えば、副生物を追い出すために金属ハロゲン化物塩に対して3モル過剰の有機ハロゲン化物塩を使用する場合、アニーリング時間における小さい増加が必要とされる。
【0293】
オクチルアミンドープ(OA)ペロブスカイト膜
この実施例において、0μl、5μl、10μl、20μl及び70μlのオクチルアミン(OA)を、それぞれ1000μl、995μl、990μl、980μl及び930μlのCH3NH3PbI3前駆体溶液中に添加した。CH3NH3PbI3ペロブスカイト膜をスライドガラス上に製作し、次いで、100℃で45分間アニールした。次いで、水分から保護するため、測定を行いながらPMMA溶液(トルエン中10mg/ml)をスピンコーティングした。
【0294】
図22(a)は、これらのOAドープペロブスカイト膜についての定常状態PL減衰を示している。増加するOAドープ濃度とともに、PLピーク位置におけるより低い波長(青色シフト)に向かう漸進的シフトを見ることができる。しかしながら、過剰の添加(例えば、70ul/1mlのペロブスカイト前駆体)は、完全に異なる相の形成に至り、優勢なピークが620nmで出現する。約620nmでの追加のピークは、2Dペロブスカイト相の形成と一致している。
【0295】
次いで、図22(b)は、これらのOAドープペロブスカイトについての時間分解PL減衰を示している。小さい濃度のOAが前駆体中に添加される場合(即ち、5μl)、PL寿命は増加する(非ドープペロブスカイト膜と比較した場合)。OAのさらなる添加は、PL寿命における徹底的低減に至り、これは、2Dペロブスカイトの形態における二次相の出現に起因し得る。
【0296】
オクチル-アンモニウムヨージドドープ(OAI)ペロブスカイト膜
この実施例において、以下
3(0.95 mol%CH3NH3X + 0.05 mol%C8H17NH3X) + PbX2 ->
(0.95CH3NH3)(0.09 C8H17NH3)PbX3+ 副生物
の反応によって、上記で考察されている通り、予備合成されたOAIを使用することによって、前駆体溶液を調製した。
【0297】
前駆体溶液をガラス基板上にスピンコーティングし、100℃で45分間アニールした。
【0298】
図23は、OAIドープペロブスカイト膜上の時間分解PL減衰測定を示している。メチル基に対するより長いアルキル鎖の制御置換は、図22(b)に表されている、非ドープ膜と比較した場合にちょうど100nsから900nsにわたってPL寿命を劇的に改善する。
【0299】
混合鎖長ペロブスカイト膜製作
ペロブスカイト前駆体溶液をドープすることによって、我々は、より長いアルキル鎖アミンが、ペロブスカイト膜のバルク内の表面及び粒界に排出されると予想する。しかしながら、これは結晶の全体にわたって、より長いアルキル基を導入することもあり、これは一部の望ましくない電子特性を誘発することがある。
【0300】
ペロブスカイト膜の外周からメチル基を選択的に置換するために、ペロブスカイト薄膜は、上に記載されている標準的なペロブスカイト前駆体溶液を使用して調製することができ、結果として得られた膜は、イソプロピルアルコール(IPA)中のOAI(オクチルアンモニウムヨージド)の0.1M溶液に浸漬される。次いで、浸漬時間及びOAI濃度は、メチル基置換の所望量に依存して変動することができる。
【0301】
この方法を使用して、ペロブスカイトの外表面からのメチル基が置換され、ペロブスカイトバルクにおいて無視できる構造変化があるはずであると予想され得る。この方法において、高疎水性ペロブスカイトが製作される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【外国語明細書】
2019096891000001.pdf