【解決手段】被洗浄物が収容される洗浄槽3と、長手方向に間隔をあけて複数の噴射口12が形成された洗浄ノズル4とを備える。洗浄槽3内に設けられる棚2aまたはその棚に載せられるバスケット27には、被洗浄物の格納部が仕切られて複数設けられる。棚2aまたはバスケット27の下部に、洗浄ノズル4が設けられる。洗浄ノズル4は、噴射口12から液体を噴射しつつ回転可能とされ、洗浄ノズル4の噴射口12は、上方の被洗浄物の格納部と向かい合って形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多数の容器状の被洗浄物(たとえば哺乳瓶)を一度に洗浄しようとする場合、単なる籠状の汎用ラックに任意に入れただけでは、次のような不都合がある。すなわち、被洗浄物の開口部(たとえば瓶の口部)を下方へ向けた状態で入れても、洗浄時の噴流により被洗浄物が倒れて、内部の洗浄ができないおそれがある。また、被洗浄物が倒れなくても、洗浄ノズル(ノズルアーム)の噴射口との位置関係により、すべての被洗浄物の内部を確実に洗浄できないおそれがある。具体的には、洗浄ノズルには、一定間隔で噴射口が形成されているので、その噴射口と対応した位置に被洗浄物の開口部が配置されていないと、被洗浄物内へ洗浄水が入らず洗浄できない。そのため、従来、容器状の被洗浄物を洗浄する場合、前述したジェットラックのように、噴射ノズル(噴射パイプ)を備えたラックを用いることになる。
【0006】
ところが、この場合も、次のような不都合がある。すなわち、ジェットラック内における噴射ノズルの設置数(ひいては被洗浄物のセット数)に限界がある。噴射ノズルへの通水管を設置できるスペースが限られる上、噴射ノズルの設置本数を増やすと、その分、噴射水の水圧ひいては洗浄効果が下がるので、噴射ノズルの設置数を増やせない。
【0007】
また、ラックごとの洗浄ノズル(ノズルアーム)に加えて、ジェットラック内の噴射ノズルからも水が噴射されるので、その分、水圧が分散され洗浄性能が落ちる。
【0008】
さらに、噴射ノズル(噴射パイプ)に被洗浄物を逆さにかぶせただけでは、洗浄時の噴流により被洗浄物が揺動し、隣接する被洗浄物と接触し、接触音や破損を生じるおそれがある。また、被洗浄物内の底面が噴射ノズル(洗浄パイプ)の上面に当接する場合には、噴射水がうまく当たらず、洗浄できないおそれもある。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、簡易な構成で、複数の被洗浄物を、容易かつ確実に洗浄できる洗浄器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被洗浄物が収容される洗浄槽と、長手方向に間隔をあけて複数の噴射口が形成された洗浄ノズルとを備え、前記洗浄槽内に設けられる棚またはその棚に載せられるバスケットには、被洗浄物の格納部が仕切られて複数設けられ、前記棚またはバスケットの下部に、前記洗浄ノズルが設けられ、この洗浄ノズルは、前記噴射口から液体を噴射しつつ回転可能とされ、前記洗浄ノズルの噴射口は、上方の前記格納部と向かい合って形成されていることを特徴とする洗浄器である。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、棚またはバスケット内を仕切ることで、被洗浄物の格納部が複数、効率よく設けられる。各格納部には被洗浄物が配置されるが、格納部ごとに噴射ノズル(被洗浄物を逆さにセットするためのパイプ)を設ける必要がないので、簡易な構成であると共に、洗浄時の液圧を低下させるおそれもない。また、棚またはバスケットの下部において、洗浄ノズルは、噴射口から液体を噴射しつつ回転するが、噴射口の形成位置を調整しておくことで、洗浄ノズルの回転に伴い、各格納部に液体を噴射することができる。これにより、各格納部の被洗浄物を容易に確実に洗浄することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記バスケット内の前記各格納部は、容器状の被洗浄物が口部を下方へ向けた状態で保持可能とされ、前記洗浄ノズルの噴射口は、前記格納部に保持される前記被洗浄物の口部に向けて液体を噴射する位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の洗浄器である。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、バスケット内の各格納部には、容器状の被洗浄物が口部を下方へ向けた状態で保持される。そして、洗浄ノズルの噴射口は、格納部に保持される被洗浄物の口部に向けて液体を噴射する位置に形成されているので、被洗浄物の内部に液体を噴射させて、被洗浄物の洗浄を確実に図ることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記バスケットは、上方へ開口した略矩形状とされ、その内部が格子状に仕切られて前記格納部を構成し、平面視において前記洗浄ノズルの回転領域と所定以上重なることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の洗浄器である。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、バスケットは格子状に仕切られて格納部が構成され、平面視において洗浄ノズルの回転領域と所定以上重なるので、各格納部の被洗浄物の洗浄を確実に図ることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記洗浄ノズルの回転軸上に、前記洗浄槽内に複数並べられた前記バスケットの中央部が位置することを特徴とする請求項3に記載の洗浄器である。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、複数のバスケットを用いることで、被洗浄物の出し入れを容易に行うことができる。そして、複数のバスケットを用いる場合でも、各バスケットに収容された被洗浄物の洗浄を確実に図ることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記バスケットが上下に複数段設けられ、各段のバスケットの下部に、前記洗浄ノズルが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗浄器である。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、上下複数段にバスケットを設けることで、より多くの被洗浄物の洗浄を図ることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、前記洗浄ノズルは、長手方向中央部を中心に回転する過程で前記噴射口として、下記(a)〜(e)の内、少なくとも三つ以上の要件を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の洗浄器である。
(a)前記洗浄ノズルの回転軸を取り囲む四つの第一格納部に対向する位置に第一噴射口が形成されている。
(b)前記四つの第一格納部を取り囲む前後左右の各二つずつの第二格納部に対向する位置に第二噴射口が形成されている。
(c)二つ並んだ前記第二格納部の並び方向両端部に配置される第三格納部に対向する位置に第三噴射口が形成されている。
(d)二つ並んだ前記第二格納部の並び方向とは直交方向外側に隣接して配置される第四格納部に対向する位置に第四噴射口が形成されている。
(e)二つ並んだ前記第四格納部の並び方向両端部に配置される第五格納部に対向する位置に第五噴射口が形成されている。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、洗浄ノズルへの噴射口の形成位置を規則的に設定することができる。
【0022】
さらに、請求項7に記載の発明は、被洗浄物は、前記洗浄槽に洗浄ラックを介して出し入れされ、前記洗浄槽内に上下複数段に設けられる前記洗浄ノズルの内、最上段および/または最下段の各洗浄ノズル以外の洗浄ノズルは、前記洗浄ラックに設けられており、前記洗浄槽内に前記洗浄ラックを収容した状態で、ポンプからの液体を前記洗浄ラックの洗浄ノズルへ供給可能に、前記洗浄ラックと前記ポンプとが着脱可能に接続されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の洗浄器である。
【0023】
請求項7に記載の発明によれば、洗浄ラックを介して、洗浄槽に対し被洗浄物を容易に出し入れすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の洗浄器によれば、簡易な構成で、複数の被洗浄物を、容易かつ確実に洗浄することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
まずは、洗浄器1の全体構成と運転方法について説明し、その後、この洗浄器1に用いられる洗浄ラック2について説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施例の洗浄器1を示す概略図であり、一部を断面にして示している。以下では、説明の便宜上、
図1における左右方向を洗浄器1の左右方向とし、
図1における上下方向を洗浄器1の上下方向とし、
図1における紙面と直交方向を洗浄器1の前後方向(手前側が前方)として説明する。
【0028】
本実施例の洗浄器1は、被洗浄物B(
図2〜
図5)の洗浄空間を形成する洗浄槽3と、被洗浄物Bが載置されて洗浄槽3に出し入れされる洗浄ラック2と、洗浄槽3内において被洗浄物Bへ液体を噴射する洗浄ノズル4と、洗浄槽3の下部に連接された液貯留部5と、液貯留部5への給水手段6と、液貯留部5からの排水手段7と、液貯留部5への薬液供給手段8と、液貯留部5の液体を洗浄ノズル4へ供給する循環手段9と、液貯留部5の液体を加熱する加熱手段10と、これら各手段6〜10を制御する制御手段(図示省略)とを備える。
【0029】
被洗浄物Bは、特に問わないが、好適には、外部への開口部(口部)を有する中空容器である。具体的には、被洗浄物Bは、たとえば哺乳瓶の本体(ガラス製またはプラスチック製の容器)とされる(
図2〜
図5)。本実施例の洗浄器1では、複数ないし多数の被洗浄物Bを同時に洗浄可能であるが、それら被洗浄物Bは、典型的には同一の形状および大きさとされる。
【0030】
洗浄槽3は、本実施例では略矩形の中空ボックス状である。洗浄槽3は、ドア(図示省略)により開閉可能とされる。ドアを開けることで、洗浄槽3に対し洗浄ラック2(言い換えれば被洗浄物B)を出し入れすることができる。ドアは、洗浄槽3の正面に設けられるが、洗浄槽3の正面および背面の双方に設けられてもよい。
【0031】
洗浄ラック2は、詳細は後述するが、被洗浄物Bが載置されて、洗浄槽3に出し入れされる。
図1において、二点鎖線で囲んだ箇所が洗浄ラック2であり、洗浄ラック2の洗浄ノズル4のみを示している。
図1において、上下両端部に設けられる洗浄ノズル4は、洗浄槽3自体に設けられ、それ以外の洗浄ノズル4は、洗浄ラック2に設けられている。
【0032】
洗浄ノズル4は、洗浄槽3内の被洗浄物Bへ液体を噴射する。洗浄槽3内には、洗浄ラック2が収容された状態で、洗浄ノズル4が上下複数段に配置される。その際、洗浄槽3の前後方向中央部の一側部に、上下複数段にアーム状の支持部材11の基端部が保持され、各支持部材11は、洗浄槽3の一側部から左右方向中央部へ向けて延出する。そして、その延出先端部に、洗浄ノズル4の長手方向中央部が縦軸まわりに回転可能に保持される。
【0033】
洗浄ノズル4は、長手方向に間隔をあけて複数の噴射口12(
図2,
図5)が形成されている。支持部材11内を介して洗浄ノズル4内に液体が供給されると、その液体は洗浄ノズル4の噴射口12から噴射される。図示しないが、少なくとも一つの噴射口12は、上下方向以外に(つまり真上および真下以外に)液体を噴出するよう形成される。これにより、その噴射口12からの噴流により、洗浄ノズル4を水平方向に回転させることができる。なお、洗浄槽3内の上端部に設けられる洗浄ノズル4は、下方へのみ液体を噴射し、それ以外の洗浄ノズル4は、本実施例では基本的には(つまり洗浄ノズル4を回転させるための噴射口12を除き)上方へのみ液体を噴射する。
【0034】
洗浄槽3の下部には、液貯留部5が連接される。具体的には、洗浄槽3の底面には、下方へ凹んで液貯留部5が形成されている。逆にいえば、液貯留部5は、洗浄槽3の底面に、上方へ開口して設けられている。なお、洗浄槽3の底面は、液貯留部5の開口縁に近づくについて下方へ傾斜して形成されるのが好ましい。
【0035】
給水手段6は、給水路13を介して、液貯留部5に水を供給する。給水路13には、給水弁14が設けられている。給水弁14を開けることで、液貯留部5に給水することができる。なお、給水手段6は、複数種の水(たとえば水道水、温水、膜濾過水など)から選択された水を供給可能に構成されてもよい。
【0036】
排水手段7は、液貯留部5から排水路15を介して水を排出する。排水路15には、排水弁16が設けられている。排水弁16を開けることで、洗浄槽3や液貯留部5から排水することができる。
【0037】
薬液供給手段8は、薬液タンク17から給液路18を介して、液貯留部5に薬液を供給する。給液路18には、薬液ポンプ19が設けられている。薬液ポンプ19を作動させることで、設定量の薬液を液貯留部5に供給することができる。なお、薬液供給手段8は、複数種の薬液(たとえばアルカリ性洗剤、酵素配合洗剤、潤滑防錆剤、乾燥促進剤など)から選択された薬液を供給可能に構成されてもよい。
【0038】
循環手段9は、液貯留部5の液体を洗浄ノズル4へ循環供給する。具体的には、循環手段9は、循環配管20と循環ポンプ21とを備える。循環配管20は、液貯留部5から各洗浄ノズル4の支持部材11への配管であり、その途中に循環ポンプ21が設けられている。循環配管20の内、循環ポンプ21の出口側には、逆止弁22が設けられている。循環ポンプ21を作動させると、液貯留部5の液体を、循環配管20および支持部材11を介して洗浄ノズル4へ供給して噴射し、洗浄槽3下部の液貯留部5へ戻すことができる。
【0039】
加熱手段10は、本実施例では、液貯留部5に設けられたヒータ23から構成される。ヒータ23は、図示例では電気ヒータであるが、場合により蒸気ヒータであってもよい。
【0040】
液貯留部5には、液位検出器24が設けられる。液位検出器24は、その構成を特に問わないが、たとえば、液貯留部5の底部に設置した圧力センサから構成される。この場合、液貯留部5や洗浄槽3内の液位に応じて、水圧が変わることを利用して液位を把握する。
【0041】
液貯留部5には、温度センサ25が設けられる。温度センサ25の検出温度に基づきヒータ23を制御することで、液貯留部5の貯留液の温度を調整することができる。
【0042】
その他、洗浄器1には、所望により、超音波振動子26が設けられる。図示例では、洗浄槽3下部の左右の傾斜面に、それぞれ超音波振動子26が設けられている。超音波振動子26は、超音波発振器に接続されて、発振を制御される。被洗浄物Bを浸漬した状態で超音波振動子26を作動させることで、被洗浄物Bを超音波洗浄することができる。
【0043】
制御手段は、前記各手段6〜10の他、液位検出器24および温度センサ25などに接続された制御器(図示省略)である。具体的には、給水弁14、排水弁16、薬液ポンプ19、循環ポンプ21、ヒータ23、超音波発振器(26)、液位検出器24および温度センサ25などは、制御器に接続されている。そして、制御器は、所定の手順(プログラム)に従い、洗浄槽3内の被洗浄物Bの洗浄を図る。この際、少なくとも、次に述べるシャワー洗浄動作を実行可能とされる。
【0044】
シャワー洗浄動作では、液貯留部5内に液体を貯留し、その液体を循環手段9により洗浄ノズル4へ循環供給して、洗浄ノズル4から被洗浄物Bに噴射する。具体的には、まず、液位検出器24が設定水位を検出するまで、給水手段6により液貯留部5に給水する。のちに循環ポンプ21を作動させると水位は下がるので、初期給水時の設定水位は、液貯留部5よりも上方にあってもよい。
【0045】
液貯留部5への給水後、必要に応じて、薬液供給手段8により液貯留部5に所望の薬液を投入する。薬液供給手段8による薬液は、給水手段6による給水に対し、設定濃度になるように設定量だけ投入される。さらに、同じく必要に応じて、加熱手段10により、液貯留部5内の貯留水を設定温度まで加熱する。薬液の投入や貯留水の加熱は、循環手段9の作動前に限らず、循環手段9の作動中に行ってもよい。
【0046】
いずれにしても、液貯留部5に所望量の液体を貯留した状態で、循環ポンプ21を作動させて、貯留液を循環配管20および支持部材11を介して洗浄ノズル4へ供給して噴射し、洗浄ノズル4を回転させながら被洗浄物Bを洗浄する。そして、各洗浄ノズル4から噴射された液体は、洗浄槽3下部の液貯留部5へ戻される。所定の終了条件(たとえば設定時間の経過)を満たすと、循環ポンプ21を停止して、液貯留部5内の液体を排水手段7により排出する。
【0047】
典型的には、このようなシャワー洗浄動作を繰り返して、被洗浄物Bを洗浄および濯ぎする。たとえば、薬液を投入しない常温水による予備洗浄、所望により洗剤を投入した温水による本洗浄(典型的には複数回)、所望により濯ぎ剤を投入した温水による濯ぎ洗浄(典型的には複数回)などが順次になされる。
【0048】
つぎに、本実施例の洗浄ラック2について、具体的に説明する。
図2および
図3は、本実施例の洗浄ラック2の使用状態を示す概略図であり、
図2は正面視の縦断面図、
図3は側面視の縦断面図であり、
図3では一部を切り欠いて示している。また、
図4は、本実施例の洗浄ラック2に載せられるバスケット27および仕切材28などを示す概略斜視図である。
【0049】
前述したとおり、洗浄槽3には、洗浄ラック2を介して被洗浄物Bが出し入れされる。この際、被洗浄物Bは、バスケット27に入れられて洗浄ラック2の棚2aに載せられ、洗浄ラック2ごと洗浄槽3に出し入れされる。
【0050】
洗浄ラック2は、左右に略矩形状の枠体29を備え、この枠体29間を架け渡すように、上下複数段に棚2aを備える。具体的には、左右の枠体29は、
図3に示すように、水平に配置される上片29aと、この上片29aの前後両端部から下方へ延出する前後片29b,29bと、この前後片29b,29bの下端部同士を接続する下片29cとにより、全体として略矩形状に形成される。そして、左右の枠体29は、
図2に示すように、上片29a同士が適宜の上材30で接続される一方、下片29c同士も適宜の下材31で接続される。これにより、洗浄ラック2は、全体として、略直方体状に構成される。左右の枠体29の下片29cには、長手方向に間隔をあけて複数の車輪(図示省略)が設けられており、この車輪を洗浄槽3内の底部(またはそれに設けられたレール)に走行させることで、洗浄槽3に対する洗浄ラック2の出し入れを容易に行うことができる。
【0051】
洗浄ラック2には、上下複数段(図示例では上下二段)に棚2aが設けられる。具体的には、左右の枠体29を架け渡すように、各棚2aが水平に保持されている。各棚2aは、棒材が格子状に組み立てられて構成されるが、場合により、パンチングメタルなどにより構成されてもよい。
【0052】
各棚2aの下部には、洗浄ノズル4が回転自在に設けられる。具体的には、洗浄ラック2の前後方向中央部の一側部には、
図2に示すように、上下方向へ沿って配水部材32が設けられており、この配水部材32に支持部材11を介して洗浄ノズル4が設けられる。
図2では、右側の枠体29に、上下方向へ沿って配水部材32が固定されており、その配水部材32の上下複数箇所(各棚2aよりも所定寸法下方)に、支持部材11が固定されている。各支持部材11は、一端部が配水部材32に固定され、他端部が洗浄ラック2の左右方向中央部にまで延出する。そして、その延出先端部に、洗浄ノズル4の長手方向中央部が回転自在に保持される。
【0053】
ところで、洗浄槽3内に洗浄ラック2を収容した状態で、循環ポンプ21からの液体を洗浄ラック2の洗浄ノズル4へ供給可能に、洗浄ラック2とポンプ21とが着脱可能に接続される。具体的には、洗浄槽3内の所定位置まで洗浄ラック2を格納すると、洗浄ラック2の配水部材32に形成された給水口に、循環ポンプ21からの循環配管20が接続される。そのため、循環ポンプ21を作動させると、液貯留部5からの液体が、循環配管20から配水部材32および支持部材11を介して、洗浄ノズル4へ供給される。
【0054】
洗浄ラック2の棚2aには、バスケット27を介して被洗浄物Bが載せられる。本実施例では、
図2に示されるように、上下の各棚2aには、それぞれ正面から見て左右に、二つのバスケット27が並んで載置される。各バスケット27は、同一の構成(同一の形状および大きさ)とされる。洗浄ラック2およびバスケット27を平面視で見た場合、各バスケット27の大きさは、洗浄ラック2の棚2aを左右二等分した大きさと略対応している。そのため、洗浄ラック2の棚2aに二つのバスケット27を並んで載置することができる。その際、二つのバスケット27を隣接して配置(側端辺を接するように配置)することで、それらバスケット27は、全体として、略矩形状に配置されると共に、洗浄ラック2の棚2aの中央部に配置される。つまり、複数のバスケット27を載せた洗浄ラック2を洗浄槽1内に収容した状態で、平面視で見た場合、洗浄ノズル4の回転軸上に、洗浄槽1内に複数並べられたバスケット27の中央部が位置することになる。
【0055】
図4に示されるように、バスケット27は、上方へ開口した略矩形の箱状とされる。バスケット27の前後左右の側面および底面は、網材または多孔板から形成される。図示例では、バスケット27は、線材で構成した枠材に金網が張られているが、パンチングメタルにより構成されてもよい。あるいは、線材を格子状に組み合わせて構成されてもよい。いずれの場合も、バスケット27には、たとえば前後側面の上部に、取手27aを設けておくのが好ましい。
【0056】
バスケット27は、内部が格子状に仕切られて、被洗浄物Bの格納部が複数設けられる(
図5における符号a〜g)。図示例では、仕切材28をバスケット27内に入れることで、バスケット27内は格子状に仕切られる。仕切材28は、板面を前後へ向けて配置される複数の横板28aと、板面を左右へ向けて配置される複数の縦板28bとが、互いに直交した状態で、好適には合成樹脂により一体形成されて構成される。複数の横板28aは、一定間隔で平行に配置され、これら横板28aと直交するように、複数の縦板28bが、一定間隔で平行に配置される。なお、
図4において、最前部および/または最後部の横板28aは、その設置を省略してもよい。また、同図において、各横板28aの左端部同士を接続するように、仕切材28の左端部に沿って縦板28bを追加してもよいし、各横板28aの右端部同士を接続するように、仕切材28の右端部に沿って縦板28bを追加してもよい。なお、仕切材28(横板28a,縦板28b)には、板面に適宜の開口を形成しておいてもよい。
【0057】
バスケット27内に仕切材28を入れることで、図示例では、バスケット27内には、前後に8個、左右に4個の合計32個の区画に仕切られることになる。但し、後述するように、洗浄ノズル4の噴射口12(12a〜12g)との位置関係により、その内の一部のみ(具体的には26個)が、被洗浄物Bの格納部a〜gとして機能する。
【0058】
バスケット27が載せられた洗浄ラック2の平面視において、バスケット27は、洗浄ノズル4の回転領域と所定以上重なる。そして、同じく平面視において、仕切材28により仕切られた区画の内、洗浄ノズル4の回転領域と所定以上(たとえば30%以上または40%以上、好ましくは50%以上)重なる区画が、格納部a〜gとされるのがよい。格納部a〜gとして利用されない区画は、適宜の手段により、被洗浄物Bの収容が不能に構成されるか、使用不能な目印を付けておくのがよい。
【0059】
仕切材28の高さは、図示例ではバスケット27内の高さと対応している。つまり、バスケット27内に仕切材28を入れた状態では、バスケット27の上縁と仕切材28の上縁とが対応した高さに配置される。但し、場合により、仕切材28の上縁は、バスケット27の上縁よりも上方に配置されてもよいし、あるいは逆に、バスケット27の上縁よりも下方に配置されてもよい。
【0060】
各格納部a〜gには、被洗浄物Bとして、開口部を有する中空容器(図示例では哺乳瓶)が収容される。この際、容器状の被洗浄物Bは、口部を下方へ向けた状態で、バスケット27内の各格納部a〜gへ収容される。バスケット27内の各格納部a〜gの大きさは、被洗浄物Bに合わせて、被洗浄物Bが倒れない大きさで、好ましくは、口部が各格納部a〜gの中央部に配置された状態で位置決めできる大きさとされる。
【0061】
図5は、洗浄ラック2の洗浄ノズル4の各噴射口12(12a〜12g)の回転範囲を示す概略平面図であり、洗浄ラック2の棚2aに二つのバスケット27を並んで収容した状態を二点鎖線で示している。
【0062】
洗浄ノズル4は、前述したように、噴射口12から上方へ液体を噴射しつつ回転可能とされるが、各格納部a〜gを通過する位置に噴射口12が形成されている。逆にいえば、バスケット27内を仕切ることで形成された区画の内、洗浄ノズル4から上方へ噴射された液体が当たる領域が、被洗浄物Bの格納部a〜gとして利用される。特に、被洗浄物Bが、口部を下方へ向けた中空容器である場合には、洗浄ラック2の洗浄ノズル4には、各格納部a〜gに保持された被洗浄物Bの口部を通過する位置に、噴射口12が形成される。
【0063】
図5において、洗浄ノズル4は、長手方向中央部を中心に回転する過程で、噴射口12として、下記(a)〜(g)の内、いずれか一以上の要件を備える。特に、複数の要件(たとえば(a)〜(c)など)を備えるのが好ましく、より多くの要件を備えるほど好ましく、全ての要件を備えるのが最も好ましい。なお、以下では、
図5の左右二つのバスケット27を区別することなく(言い換えればあたかも
図5で示される二つのバスケット27,27の全体を一つのバスケット27であると仮定して)説明するが、後述するように、
図5の状態をいくつのバスケット27で達成するかは適宜に変更可能である。
【0064】
(a)洗浄ノズル4の回転軸を取り囲む四つの第一格納部aに対向する位置に、第一噴射口12aが形成されている。
(b)四つの第一格納部aを取り囲む前後左右の各二つずつの第二格納部bに対向する位置に、第二噴射口12bが形成されている。
(c)二つ並んだ第二格納部bの並び方向両端部に配置される第三格納部cに対向する位置に、第三噴射口12cが形成されている。
(d)二つ並んだ第二格納部bの並び方向とは直交方向外側に隣接して配置される第四格納部dに対向する位置に、第四噴射口12dが形成されている。
(e)二つ並んだ第四格納部dの並び方向両端部に配置される第五格納部eに対向する位置に、第五噴射口12eが形成されている。
(f)二つ並んだ第四格納部dの並び方向とは直交方向外側に隣接して配置される第六格納部fと、二つ並んだ第四格納部dの並び方向両端部に第五格納部eを挟んで配置される第六格納部fとに対向する位置に、第六噴射口12fが形成されている。
(g)二つ並んだ第六格納部fの並び方向両端部に配置される第七格納部gに対向する位置に、第七噴射口12gが形成されている。
【0065】
バスケット内を仕切ることで形成された区画の内、上記(a)〜(g)で述べた箇所が、被洗浄物Bの格納部a〜gとして実際に利用可能とされる。そのため、
図5の前後左右の四隅で、各三箇所の区画は使用されず、それ以外の区画が格納部a〜gとして利用されることになる。これにより、
図5から明らかなとおり、格納部a〜gは、洗浄ノズル4の回転面と略対応して配置されることになる。
【0066】
なお、洗浄槽3やバスケット27の大きさなどに応じて、上記(a)〜(g)に述べたすべての格納部a〜g(さらには噴射口12a〜12g)を設ける必要はない。逆に、バスケット27を大きくする場合には、上記(a)〜(g)に加えて、同様の規則に従って(言い換えれば洗浄ノズル4の回転面と重なる領域に)、追加の格納部(さらには噴射口12)を設けてもよい。
【0067】
本実施例の洗浄器1によれば、バスケット27に被洗浄物Bを収容し、そのバスケット27を洗浄ラック2に載せて、洗浄槽3に対し容易に出し入れすることができる。また、バスケット27内を板状の仕切材28で仕切ることで、被洗浄物Bの格納部a〜gが多数、効率よく設けられる。各格納部a〜gには被洗浄物Bが配置されるが、格納部a〜gごとに従来技術のような噴射ノズル(被洗浄物Bを逆さにセットするための縦パイプ)を設ける必要がないので、簡易な構成であると共に、洗浄時の液圧を低下させるおそれもない。また、バスケット27が載せられた棚2aの下部において、洗浄ノズル4は、噴射口12から上方へ液体を噴射しつつ回転するが、噴射口12の形成位置を調整しておくことで、洗浄ノズル4の回転に伴い、各格納部a〜gに液体を噴射することができる。その際、洗浄ノズル4には、各格納部a〜gに保持された被洗浄物Bの口部を通過する位置に噴射口12が形成されているので、被洗浄物Bの内部に液体を噴射させて、被洗浄物Bの洗浄を確実に図ることができる。これにより、各格納部a〜gの被洗浄物Bを容易に確実に洗浄することができる。
【0068】
本発明の洗浄器1は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、(i)被洗浄物Bが収容される洗浄槽3と、長手方向に間隔をあけて複数の噴射口12が形成された洗浄ノズル4とを備え、(ii)洗浄槽3内に設けられる棚2aまたはその棚2aに載せられるバスケット27には、被洗浄物Bの格納部a〜gが仕切られて複数設けられ、(iii)棚2aまたはバスケット27の下部に、洗浄ノズル4が設けられ、(iv)この洗浄ノズル4は、噴射口12から液体を噴射しつつ回転可能とされ、洗浄ノズル4の噴射口12は、上方の格納部a〜gと向かい合って形成されているのであれば、その他の構成は、適宜に変更可能である。
【0069】
たとえば、前記実施例では、洗浄槽3に洗浄ラック2を出し入れ可能とし、その洗浄ラック2の棚2aに載せるバスケット27内を仕切ることで被洗浄物Bの格納部a〜gを設けたが、バスケット27を用いずに、洗浄ラック2の棚2a自体を仕切って、棚2aに被洗浄物Bの格納部a〜gを設けてもよい。また、洗浄槽3に洗浄ラック2を出し入れするのではなく、洗浄槽3内に棚2aを設け(いわば洗浄槽3内に洗浄ラック2を固定した状態に設け)、その棚2aまたはそれに載せられるバスケット27を仕切ることで、被洗浄物Bの格納部a〜gを設けてもよい。
【0070】
いずれにしても、棚2aまたはバスケット27の下部に、洗浄ノズル4を設け、その洗浄ノズル4は、噴射口12から上方へ液体を噴射しつつ回転可能とされ、各格納部a〜gを通過する位置に、噴射口12が形成される。被洗浄物Bが一部を開口させた中空容器である場合、その開口部を下方へ向けた状態で、棚2aまたはバスケット27の各格納部a〜gに保持される。そして、バスケット27の下部の洗浄ノズル4には、各格納部a〜gに保持された被洗浄物Bの口部を通過する位置に、噴射口12が形成される。
【0071】
また、格納部a〜gの大きさは、前記実施例の構成に限らず、被洗浄物Bに合わせて適宜に変更可能である。しかも、大きさの異なる被洗浄物Bの洗浄にも対応可能に、大きさの異なる格納部a〜gを設けてもよい。
【0072】
また、前記実施例では、板状の仕切材28を用いて格納部a〜gを構成したが、棚2aまたはバスケット27に格納部a〜gを設ける方法(仕切方法)は、適宜に変更可能である。
【0073】
また、前記実施例では、洗浄ラック2には、上下二段の棚2aを備えたが、段数は一段のみでもよいし、三段以上でもよい。
【0074】
また、前記実施例では、
図1において、上下複数段に設けられる洗浄ノズル4の内、上下両端部の洗浄ノズル4は洗浄槽3自体に設けたが、場合により、洗浄ラック2に設けてもよい。その上、
図1における下端部の洗浄ノズル4は、場合により、設置を省略可能である。
【0075】
また、前記実施例では、洗浄ノズル4には、長手方向中央部を境に、
図5において左右対称に噴射口12を設けたが、長手方向中央部を境に、左半分または右半分のみに噴射口12を設けてもよい。あるいは、
図5において、第一噴射口12a、第三噴射口12cおよび第五噴射口12eは左側に設ける一方、第二噴射口12b、第四噴射口12dおよび第六噴射口12fは右側に設けるなど、各噴射口12を分散させて設けてもよい。
【0076】
また、前記実施例では、洗浄ラック2の洗浄ノズル4は、回転力を付与するための噴射口12を除き真上へ液体を噴射させたが、場合により斜め上方へ液体を噴射させてもよい。たとえば、洗浄ノズル4には、長手方向と直交する短手方向の側面に、上向きの傾斜面(短手方向外側へ行くに従って下方へ傾斜する傾斜面)を形成しておき、この傾斜面に噴射口12を形成してもよい。その際、洗浄ノズル4の長手方向中央部を境に、洗浄ノズル4の長手方向一方(
図1の左半分)には、短手方向一側面に噴射口12が形成される一方、洗浄ノズル4の長手方向他方(
図1の右半分)には、短手方向他側面に噴射口12が形成されるのがよい。
【0077】
また、前記実施例では、洗浄ラック2の洗浄ノズル4は、基本的には上方へのみ液体を噴射させたが、場合により、下方へも液体を噴射させてもよい。すなわち、洗浄ノズル4の上面(または短手方向の側面に形成した下向きの傾斜面)に、下方への噴射口12を形成してもよい。
【0078】
また、前記実施例では、洗浄ラック2の各棚2aには、左右にバスケット27を設けたが、バスケット27の数は適宜に変更可能である。すなわち、洗浄ラック2の棚2a(言い換えれば
図5の各格納部a〜g)をいくつのバスケット27で仕切るかは適宜に変更可能である。たとえば、左右に三つ以上に仕切ってもよいし、前後左右で四つに仕切ってもよい。あるいは、各棚2aに合わせた大きさのバスケット27を用いることで、各棚に一つのバスケット27を配置するようにしてもよい。あるいは、バスケット27を用いずに、棚2a自体に格納部a〜gを設けてもよいことは前述したとおりである。
【0079】
さらに、前記実施例において、洗浄後の被洗浄物Bを乾燥可能に、送風機をさらに備えてもよい。この場合、洗浄後の濡れた被洗浄物Bは、洗浄槽3へ供給される温風により乾燥を図られる。洗浄ノズル4の噴射口12からも温風を吐出させれば、被洗浄物Bの内部の乾燥も容易に図ることができる。