【解決手段】フロントサイドウインドウ14は、略三角形状を有する光透過性のプラスチック樹脂板16を備えている。プラスチック樹脂板16の車室側の表面には光透過性の導電膜18が設けられている。フロントサイドウインドウ14の前方の頂点付近の接続点AおよびBのそれぞれには接続端子が接触する。接続点Aと接続点Bとの間には、導電膜18の前方の端を切り欠き、前方から後方に伸びるスリット20が設けられている。スリット20は、導電膜18の後端よりも前方において上方向および下方向のそれぞれに向けて分岐する。分岐したスリット20のうち上方向に伸びた上分岐20Uは上側の頂点付近に終端を有し、下方向に伸びた下分岐20Lは下側の頂点付近に終端を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導電膜の抵抗値に基づいて窓の破損を検出する場合、破壊に至らない程度の穴が窓に開けられた等、破損の程度が小さい場合には、その破損が検出されない場合がある。
【0006】
本発明は、自動車の窓の破損を検出する感度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光透過性の板状部材と、前記板状部材の表面に設けられた光透過性の導電膜と、前記導電膜の外周から内側に伸びて、前記導電膜が占有する領域内に終端を有するスリットと、前記導電膜に電気的に接続され、前記スリットを挟む位置に配置された2つの接続端子と、を備えることを特徴とする。
【0008】
望ましくは、前記スリットは、2つの前記接続端子の間から伸びた先で、複数本に分岐している。
【0009】
また、本発明は、光透過性の板状部材と、前記板状部材の表面に設けられた光透過性の導電膜と、前記導電膜に設けられた複数のスリットと、前記導電膜に電気的に接続された2つの接続端子と、を備え、各前記スリットは、前記導電膜の外周から内側に伸びて、前記導電膜が占有する領域内に終端を有し、前記導電膜は対向する2つの縁を有し、隣接する2つの前記スリットのうち一方が、前記導電膜における対向する2つの縁のうちの一方を切り欠き、隣接する2つの前記スリットのうち他方が、前記導電膜における対向する2つの縁のうちの他方を切り欠くことで、複数の前記スリットが前記導電膜をつづら折れ形状とし、2つの前記接続端子のうち一方が、前記つづら折れ形状の一端に接続され、2つの前記接続端子のうち他方が、前記つづら折れ形状の他端に接続されていることを特徴とする。
【0010】
望ましくは、各前記接続端子は、前記導電膜に接触する接触部材と、前記接触部材を前記導電膜に向けて押圧する押圧部材と、を備え、前記接触部材または前記押圧部材に導線が接続される。
【0011】
望ましくは、2つの前記接続端子の間の抵抗値に基づいて、前記板状部材が破損した可能性があるか否かを判定する判定部と、前記板状部材が破損した可能性があると判定された場合に警報動作を実行する警報動作部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自動車の窓の破損を検出する感度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には本発明の実施形態に係る警報装置が搭載される自動車100が示されている。自動車100の前方にはフロントウインドウ10が設けられている。また、ドアにはサイドウインドウ12が設けられ、サイドウインドウ12の前方のボデー側面にはフロントサイドウインドウ14が設けられている。本実施形態においては、フロントサイドウインドウ14に警報装置が設けられている。警報装置は、フロントサイドウインドウ14が破損した可能性があるか否かを判定し、その可能性があるときには警報動作を実行する。警報動作には、例えば、警告音を発生する動作や、フロントサイドウインドウ14が破損した可能性がある旨の情報をユーザが所有する情報処理装置に送信する動作がある。また、自動車100の窓が破損した可能性がある旨をセキュリティサービス業者に通信によって通報する動作がある。
【0015】
図2には、警報装置に用いられるフロントサイドウインドウ14が模式的に示されている。図の左方向は自動車の前方向に対応し、図の手前方向は車室に向かう方向に対応する。フロントサイドウインドウ14は、略三角形状(三角形に近似した形状)を有する透明または半透明(光透過性)のプラスチック樹脂板16を備えている。プラスチック樹脂板16の車室側の表面には、スパッタリング等の工法によって付着させた光透過性の導電膜18が設けられている。この導電膜18は、プラスチック樹脂板16の外周に沿った形状を有しており、プラスチック樹脂板16の外周よりも内側を占有している。導電膜18を形成する材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)がある。
図2では、導電膜18がハッチングによって示されているが、このハッチングは説明の便宜上のものであり、実際には導電膜18は透明または半透明である。
【0016】
フロントサイドウインドウ14の前方の頂点付近の接続点AおよびBのそれぞれには、後述の接続端子が接触する。接続点Aと接続点Bとの間には、導電膜18の前方の端を切り欠き、前方から後方に伸びるスリット20が設けられている。スリット20は、導電膜18の後端よりも前方において上方向および下方向のそれぞれに向けて分岐する。分岐したスリット20のうち上方向に伸びた上分岐20Uは上側の頂点付近が終端となり、下方向に伸びた下分岐20Lは下側の頂点付近が終端となる。
【0017】
このように、スリット20は導電膜18の外周から内側に伸びて、導電膜18が占有する領域内に終端を有する。接続端子が接触する接続点AおよびBは、スリット20が導電膜18を切り欠く位置の近傍において、スリット20を挟む位置にある。スリット20は、接続点AおよびBの間から伸びた先で複数本に分岐している。
【0018】
フロントサイドウインドウ14の3つの頂点付近には、フロントサイドウインドウ14をボデーに固定するためのボデー取り付け用座面21が設けられている。ボデー取り付け用座面21には、例えば、楔形状の突起が接着される。この突起をボデーに固定することで、フロントサイドウインドウ14のボデーへの仮止めが可能になる。
【0019】
図2には示されていないが、フロントサイドウインドウ14は導電膜18の車室側に光透過性の保護膜(ハードコート)を有する。ただし、接続点AおよびBの近傍については、接続端子を接触させるため保護膜は設けられていない。フロントサイドウインドウ14の車室側には、塗料によって装飾が施されてもよい。
【0020】
図3には、フロントサイドウインドウ14の断面が模式的に示されている。
図3の上方向は、車室に向かう方向に対応する。フロントサイドウインドウ14は、光透過性のプラスチック樹脂板16、導電膜18、保護膜22および黒枠24から構成されている。プラスチック樹脂板16、導電膜18、保護膜22および黒枠24は、この順序で自動車の外側から内側に向かって積層されている。保護膜22は、例えば、シリコン系化合物を含有するアクリル系ハードコート層である。黒枠24は、例えば、樹脂を主成分とする塗料によって形成される。
【0021】
図4は、車室側から見たフロントウインドウ10、サイドウインドウ12およびフロントサイドウインドウ14が示されている。フロントサイドウインドウ14には警報装置を接続するための2つの接続端子26Aおよび26Bが設けられている。各接続端子に接続された導線は、自動車に搭載された警報装置に接続されている。警報装置は、接続端子26Aと接続端子26Bとの間の抵抗値に基づいてフロントサイドウインドウ14が破損した可能性があるか否かを判定し、その可能性があるときは警報動作を実行する。
【0022】
図5には、
図4におけるCD線断面が模式的に示されている。フロントピラー28は、フロントピラー本体部30、フロントピラー本体部30の車両外側を覆う外板32、およびフロントピラー本体部30の車室側を覆うピラーガーニッシュ34を備えている。フロントウインドウ10は固定樹脂35によってボデーの前方に取り付けられ、フロントサイドウインドウ14は固定樹脂33によってボデーの側面に取り付けられている。
【0023】
接続端子26Aは、筐体36、導電性ゴム38、およびスプリング40を備えている。筐体36は、導電性ゴム38およびスプリング40を収容している。接触部材としての導電性ゴム38は、フロントサイドウインドウ14の導電膜18の接続点Aに接触している。押圧部材としてのスプリング40は筐体36に収容された状態で導電性ゴム38をフロントサイドウインドウ14における導電膜18に向けて押圧する。スプリング40には導線41が接続されており、導線41は筐体36からフロントピラー28の内側に引き出されている。筐体36からフロントピラー28の内部に引き出された導線41は、自動車に搭載された警報装置に接続されている。なお、導線41は、スプリング40の代わりに、導電性ゴム38に接続されていてもよい。
【0024】
ここでは、接続点Aの近傍に設けられた接続端子26Aが示されたが、接続点Bの近傍に設けられた接続端子26Bは、接続端子26Aと同様の構造を有している。各接続端子に接続された導線は、フロントピラー28の内側の他、ボデーに形成されている空洞を通って警報装置に接続されてもよい。
【0025】
図6には警報装置の構成が示されている。警報装置は、抵抗測定回路42、A/D変換部44、増幅回路46、判定回路48、および警報動作部50を備えている。これらの構成要素のうち、ディジタル信号処理を実行するものは、プログラムの実行によって各機能を実現するプロセッサで構成されてもよい。抵抗測定回路42は、接続点Aと接続点Bとの間に所定の測定電圧を印加し、接続点AおよびBに流れる電流に応じた測定信号をA/D変換部44に出力する。この測定信号は、接続点AおよびBに流れる電流そのものであってもよいし、電流の大きさに応じた値を有する信号であってもよい。本実施形態では、接続点Aと接続点Bとの間の抵抗値が小さい程、測定信号の値が大きくなるように、抵抗測定回路42が構成されている。
【0026】
A/D変換部44は、測定信号をディジタル信号に変換し、増幅回路46に出力する。増幅回路46は測定信号を増幅し、判定回路48に出力する。判定回路48は、測定信号の値が所定の閾値を超えているときには警報動作部50に出力する警報信号をローにする。一方、判定回路48は、測定信号の値が所定の閾値以下となったときには警報動作部50に出力する警報信号をハイにする。警報動作部50は、警報信号がローからハイになったときに警告音を発生する。警報動作部50は、警告音の発生に代えて、あるいは、警告音の発生と共に、フロントサイドウインドウ14が破損した可能性がある旨の情報をユーザが所有する情報処理装置に送信してもよい。情報処理装置は、例えば、インターネットや携帯電話回線等の通信網に接続されるスマートフォン、パーソナルコンピュータである。また、警報動作部50は、警告音の発生に代えて、あるいは、警告音の発生と共に、フロントサイドウインドウ14が破損した可能性がある旨をセキュリティサービス業者に通信によって通報してもよい。
【0027】
本実施形態に係るフロントサイドウインドウ14では、
図2に示されているように、導電膜18における接続点Aと接続点Bとの間にスリット20が設けられている。スリット20は、導電膜18の前方の端を切り欠き、前方から後方に伸びた後、導電膜18の後端よりも前方において上方向および下方向のそれぞれに向けて、上区間および下区間に分岐する。したがって、接続点Aと接続点Bとの間に、接続点Aの側を正極とする電圧が印加された場合、電流は次のような経路を流れる。すなわち、接続点Aから後方斜め上に伸び、上分岐20Uの上端およびその近傍から上分岐20Uの後方に回って上分岐20Uおよび下分岐20Lの後方を下向きに通り、さらに、下分岐20Lの下端およびその近傍から前方に向かって接続点Bに至る経路を流れる。
【0028】
また、接続点Aと接続点Bとの間に、接続点Bの側を正極とする電圧が印加された場合、電流は次のような経路を流れる。すなわち、接続点Bから後方に伸び、下分岐20Lの下端およびその近傍から下分岐20Lの後方に回って下分岐20Lおよび上分岐20Uの後方を上向きに通り、さらに、上分岐20Uの上端およびその近傍から前方斜め下に伸びて接続点Aに至る経路を流れる。
【0029】
したがって、スリット20が設けられていない場合に比べて電流が流れる距離が長くなると共に電流が流れる範囲が狭くなり、スリット20が設けられていない場合に比べて接続点Aと接続点Bとの間の抵抗値が大きくなる。これによって、フロントサイドウインドウ14の状態の変化に対する抵抗値の変化が大きくなり、フロントサイドウインドウ14の破損に対する測定感度が高くなる。したがって、例えば、フロントサイドウインドウ14が完全に破壊されない程度の小さい穴が開けられた場合であっても、フロントサイドウインドウ14が破損した可能性があるとの判定が警告装置によってなされる。また、フロントサイドウインドウ14が破壊に至らなくとも、フロントサイドウインドウ14に振動等の機械的ストレスが与えられた場合であっても、フロントサイドウインドウ14が破損した可能性があるとの判定が警告装置によってなされる。
【0030】
図7には、フロントサイドウインドウの変形例が示されている。このフロントサイドウインドウ52における導電膜18には、第1スリット20−1、第2スリット20−2および第3スリット20−3が設けられている。第1スリット20−1は、導電膜18の前方の端を切り欠き、前方から後方に伸びて、導電膜18の後端よりも前方に終端を有する。第2スリット20−2は、第1スリット20−1の上方に位置する。第2スリット20−2は、導電膜18の後端を切り欠き、前方斜め下に伸びて導電膜18の先端よりも後方に終端を有する。第3スリット20−3は、第1スリット20−1の下方に位置する。第3スリット20−3は、導電膜18の後端を切り欠き、前方斜め下に伸びて導電膜18の先端よりも後方に終端を有する。
【0031】
後方の上側の頂点付近にある接続点E、および後方の下側の頂点付近にある接続点Fのそれぞれには接続端子が接触する。
【0032】
このように、第1スリット20−1〜第3スリット20−3のそれぞれは、導電膜18の外周から内側に伸びて、導電膜18が占有する領域内に終端を有する。導電膜18は、対向する2つの縁として前端の縁および後端の縁を有している。隣接する2つのスリットのうち一方が、導電膜18における対向する2つの縁のうちの一方を切り欠き、隣接する2つのスリットのうち他方が、導電膜18における対向する2つの縁のうちの他方を切り欠くことで、第1スリット20−1〜第3スリット20−3が導電膜18をつづら折れ形状(ジグザグ形状)としている。そして、接続点Eがつづら折れ形状の一端に位置し、接続点Fがつづら折れ形状の他端に位置している。スリットを2つ設けた場合、あるいは4つ以上設けた場合であっても、隣接する2つのスリットに上記のような位置関係があることで、導電膜18がつづら折れ形状となる。
【0033】
接続点Eと接続点Fとの間に、接続点Eの側を正極とする電圧が印加された場合、電流は次のような経路を流れる。すなわち、接続点Eから前方斜め下に向かって第2スリット20−2の先端およびその近傍を通って第2スリット20−2の下方に回り、第2スリット20−2と第1スリット20−1の間を後方斜め上に向かい、第1スリット20−1の後端を回って第1スリット20−1の下方に回り、さらに、第1スリット20−1と第3スリット20−3の間を前方斜め下に向かって第3スリット20−3の先端およびその近傍を通って第3スリット20−3の下方に回り、第3スリット20−3の下方を後方に向かって接続点Fに至る経路を流れる。
【0034】
また、接続点Eと接続点Fとの間に、接続点Fの側を正極とする電圧が印加された場合、電流は次のような経路を流れる。すなわち、接続点Fから第3スリット20−3の下方を前方に向い、第3スリット20−3の先端およびその近傍を通って第3スリット20−3の上方に回り、第3スリット20−3と第1スリット20−1との間を後方斜め上に向かって第1スリット20−1の後端を回って第1スリット20−1の上方に回り、さらに、第1スリット20−1と第2スリット20−2の間を前方斜め下に向かって第2スリット20−2の先端およびその近傍を通って第2スリット20−2の上方に回り、第2スリット20−2の上方を後方斜め上に向かって接続点Eに至る経路を流れる。
【0035】
したがって、各スリットが設けられていない場合に比べて電流が流れる距離が長くなると共に電流が流れる範囲が狭くなり、各スリットが設けられていない場合に比べて接続点Eと接続点Fとの間の抵抗値が大きくなる。これによって、フロントサイドウインドウ52の状態の変化に対する抵抗値の変化が大きくなり、フロントサイドウインドウ52の破損に対する測定感度が高くなる。したがって、例えば、フロントサイドウインドウ52が完全に破壊されない程度の小さい穴が開けられた場合であっても、フロントサイドウインドウ52が破損したとの判定が警告装置によってなされる。また、フロントサイドウインドウ52が破壊に至らなくとも、フロントサイドウインドウ52に振動等の機械的ストレスが与えられた場合であっても、フロントサイドウインドウ52が破損した可能性があるとの判定が警告装置によってなされる。
【0036】
近年においては、フロントサイドウインドウ等の自動車の窓に小さな穴を開けることで自動車のドアロックを解除して、自動車や自動車搭載用のナビゲーションシステム等のアクセサリ機器を盗む行為が問題となっている。本実施形態に係る警告装置は、このような行為を防止する盗難警報装置として用いられてもよい。
【0037】
以下では、フロントサイドウインドウに設けられる導電膜の抵抗値について詳細に説明する。
図8に示されるような長方形の導電膜60における対向する2本の縦辺のうちの一方における接続点Gと、これら2本の縦辺のうちの他方における接続点Hとの間の抵抗値R
GH(Ω)は、次の(数1)に従って求められる。
【0039】
ただし、aは横辺の長さ(mm)であり、bは縦辺の長さ(mm)である。ρは抵抗率であり、単位は(Ω・mm)である。tは導電膜60の厚さ(mm)である。また、導電膜60における対向する2本の縦辺の抵抗値は近似的に0としている。
【0040】
さらに一般的な例として、
図9に示されるような対向する2本の縦辺56および58、これら2本の縦辺の上端同士を結ぶ曲線f(x)、ならびに、これら2本の縦辺の下端同士を結ぶ曲線g(x)で囲まれる形状を有する導電膜54についての抵抗値R
IJ(Ω)は、次の(数2)に従って求められる。抵抗値R
IJは、縦辺56における接続点Iと縦辺58における接続点Jとの間の抵抗値である。
【0042】
ただし、x軸は、接続点Iおよび接続点Jを通る軸として定義されている。x軸上の値xに対する導電膜54のy軸方向の長さ(高さ)は、f(x)−g(x)である。また、f(0)=f(c)=W、g(0)=g(c)=−Wが成立する。また、縦辺56および58の抵抗値は近似的に0としている。
【0043】
導電膜の抵抗値を求める上記の手法を拡張して、
図2に示されるフロントサイドウインドウ14における接続点Aと接続点Bとの間の抵抗値R
ABは、次のようにして近似的に求められる。すなわち、
図10に示されているように領域r11〜r13を定義し、それぞれの長手方向に積分経路S11〜S13を設定する。領域r11は、スリット20およびその上分岐20Uよりも上側の領域である。領域r13は、スリット20およびその下分岐20Lよりも下側の領域である。領域r12は、フロントサイドウインドウ14の後端において、領域r11と領域r13との間を結ぶ領域である。領域r11〜r13は、接続点Aから接続点Bに至るまでの間でU字状に配置されている。各積分経路について、積分経路に垂直な方向の幅Kの逆数を積分経路に沿って積分し、各積分経路について求められた積分値を加算合計した積分値Int1を求め、さらに、積分値Int1に抵抗率ρを乗じ、導電膜の厚さtで除すことで抵抗値R
ABが近似的に求められる。
【0044】
同様に、
図7に示されるフロントサイドウインドウ52における接続点Eと接続点Fとの間の抵抗値R
EFは、次のようにして近似的に求められる。すなわち、
図11に示されているように接続点Eから接続点Fに至るまでの間に領域r21〜r27を定義し、それぞれの長手方向に積分経路S21〜S27を設定する。領域r21〜r27は、接続点Eから接続点Fに至るまでの間でつづら折れ形状に配置されている。各積分経路について、積分経路に垂直な方向の幅Lの逆数を積分経路に沿って積分し、各積分経路について求められた積分値を加算合計した積分値Int2を求め、さらに、積分値Int2に抵抗率ρを乗じ、導電膜の厚さtで除すことで抵抗値R
EFが近似的に求められる。
【0045】
なお、
図10および
図11のいずれの場合についても、積分経路に垂直な方向の幅の平均値の逆数に、積分経路の長さを乗じた値を積分値(Int1またはInt2)の概算値として求めてもよい。ここで、積分経路に垂直な方向の幅の平均値とは、積分経路に亘っての平均値をいう。
【0046】
また、積分経路の長さが、最小値Smin以上、最大値Smax以下であると見積もられ、積分経路に垂直な方向の幅が、最小値Dmin以上、最大値Dmaxであると見積もられた場合、積分経路の両端間の抵抗値は、(ρ/t)・Smin/Dmax以上、(ρ/t)・Smax/Dmin以下であると見積もられる。
【0047】
導電膜にスリットが設けられている場合、導電膜にスリットが設けられていない場合に比べて積分経路が長くなると共に、積分経路に垂直な方向の幅が狭くなる。そのため、上記の積分値が大きくなって2つの接続点間の抵抗値が大きくなる。すなわち、フロントサイドウインドウの状態の変化に対する抵抗値の変化が大きくなり、フロントサイドウインドウの破損に対する測定感度が高くなる。
【0048】
なお、抵抗率ρを2Ω・mmとし、導電膜の厚さtを30nmとした実施例では、上記の積分値が、例えば、9以上、20以下の値となるように導電膜の形状を決定してもよい。
【0049】
上記では、自動車の窓のうちの1つであるフロントサイドウインドウに警報装置を設けた実施形態について説明した。警報装置は、フロントウインドウ、サイドウインドウ、リアウインドウ等、その他の窓に設けられてもよい。これらの窓は、板状部材としてのプラスチック樹脂板の他、ガラス等の他の材料で形成された板状部材によって構成されていてもよい。