【解決手段】飛翔移動体であって、外殻構造と、ホイールと、推進装置と、制御ユニットとを備え、前記ホイールは、その回転軸線の方向が、前記推進装置が発生すべき推力の方向と同一となるように配置され、前記制御ユニットは、前記ホイールに角運動量を発生させた後に、前記ホイールに角運動量の発生を続けさせつつ、前記推進装置に、前記飛翔移動体の離陸及び飛翔のための推力を発生させ、前記推進装置の少なくとも一部は、前記外殻構造から突出するように配置され、前記推進装置は、前記飛翔移動体の着陸時に、前記推進装置以外の前記飛翔移動体の部分に対して折壊可能に、前記推進装置以外の前記飛翔移動体の前記部分に接続されている飛翔移動体。
前記第1の代替推進装置は、前記第1の代替推進装置による前記飛翔移動体の飛翔後の前記飛翔移動体の着陸時に、前記第1の代替推進装置以外の前記飛翔移動体の部分に対して折壊可能に、前記第1の代替推進装置以外の前記飛翔移動体の前記部分に接続されている請求項1又は2に記載の飛翔移動体。
前記外殻構造は、前記ホイールの発生する角運動量の制御によって、着陸面上において前記飛翔移動体を回転移動可能とする形状を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の飛翔移動体。
前記制御ユニットは、前記飛翔移動体の着陸時又は着陸後の所定のタイミングまで前記ホイールに角運動量の発生を続けさせ、前記飛翔移動体の着陸時又は着陸後の所定のタイミングに前記ホイールの発生する角運動量を制御することによって、前記着陸面上において前記飛翔移動体を回転移動させる請求項1〜5のいずれか1項に記載の飛翔移動体。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る飛翔移動体発射システムの全体構成図、
図2は、本発明の第1の実施形態に係る飛翔移動体の斜視図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る飛翔移動体の断面図であり、第4図は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る飛翔移動体の断面図である。
【0021】
図1に示されるように本実施形態に係る飛翔移動体発射システム1は、飛翔移動体3と発射台2を備える。
【0022】
発射台2は、発射レール21を備え、発射レール21の長手方向、すなわち発射仰角と発射方位角が調節可能に構成されている。そして、発射レール21に飛翔移動体3が摺動可能に取り付けられ、飛翔移動体3を発射させることができる。
【0023】
飛翔移動体3は、筐体31、ホイール33、カメラ34、メインエンジン35、逆噴射エンジン36、制御ユニット37、慣性計測ユニット(IMU)38を備える。
【0024】
飛翔移動体3の外殻構造である筐体31は、四角柱の四隅を面取りした八角柱の形状を有している。これによって、後述のように、ホイール33の発生する角運動量の減少によって、着陸面上において飛翔移動体3が回転移動することができる。また、筐体31は、ホイール33及び制御ユニット37を収容する。
【0025】
ホイール33は、その回転軸線に周りに回転し、角運動量を発生する。ホイール33は、筐体31の内部に配置されているが、その回転軸線の方向が、八角柱の筐体31の軸及びメインエンジン35が発生すべき推力の方向と同一となるように配置されている。これにより、飛翔移動体3の姿勢が安定し、目標到達地点への飛行安定性に優れる。ホイール33の回転軸線、八角柱の筐体31及びメインエンジン35は、ホイール33の回転軸線の方向が、八角柱の筐体31の軸及びメインエンジン35が発生すべき推力の方向と同一となるように配置されていれば、同軸に配置されていなくても良い。
【0026】
カメラ34は、筐体31の側面に設けられたカメラ用開口部31aに対応する位置に取り付けられている。
【0027】
メインエンジン35は、推進装置であるロケットエンジン(スラスタ)であり、筐体31に接続されている。メインエンジン35は、エンジン部351と取付部材353を有する。エンジン部35は、円柱の形状を有しており、ノズル351aからの噴射によってその軸方向下方に推力を発生する。推進装置は、円柱形のロケットエンジンに限定されるものではなく、適切な任意の推進装置とすることができる。
【0028】
以下、メインエンジン35と筐体31との接続構造について詳述する。メインエンジン35は、そのノズル351aとは反対側の一部が、有底円筒形状の取付部材353に接着されている。そして、取付部材353の底面に設けられたねじ穴353aと、筐体31のメインエンジン35に対向する面である底面に設けられたねじ穴31aに、ねじ357をねじ込むことによって、メインエンジン35と筐体31が接続される。
【0029】
ねじ357は、プラスチック等の折れやすい材料から形成されており、これによって、後述のように、メインエンジン35が、飛翔移動体3の着陸時に、筐体31に対して折壊可能となっている。すなわち、メインエンジン35が、飛翔移動体3の着陸時に、衝突による衝撃によって、筐体31に対して折れ曲がって分離することができるようになっている。
【0030】
図4は、メインエンジン35と筐体31との接続構造の変形例を示す図である。筐体31の底面に、調整棒50の一端が、ホイール33の回転軸線に沿って延びるように取り付けられている。そして、調整棒50の他端には、ねじ穴50aが設けられている。上述と同様のプラスチック等の折れやすい材料から形成されたねじ52が、調整棒50の他端のねじ穴50aと取付部材353のねじ穴353aにねじ込まれることによって、メインエンジン35と筐体31が接続される。このような構成により、メインエンジン35が、飛翔移動体3の着陸時に、筐体31に対して折壊可能となることに加えて、衝突位置を調整することができる。すなわち、例えば飛翔移動体3の発射仰角が小さい場合、
図3の実施形態のようにメインエンジン35が筐体31に直接接続されていると、着陸時において、メインエンジン35ではなく、筐体31が最初に着陸面100に接触してしまうが、変形例のような構成を用いることにより、メインエンジン35が着陸面100に最初に接触させることができる。
【0031】
逆噴射エンジン36は、推進装置であるメインエンジン35の推力に抗する推力を発生させる逆推進装置であるロケットエンジン(スラスタ)であり、筐体31に接続されている。逆噴射エンジン36は、円柱の形状を有しており、噴射によってその軸方向上方に推力を発生する。逆噴射エンジン36は、逆噴射エンジン36が発生すべき推力の方向が、ホイール33の回転軸線の方向と同一となるように配置されている。逆噴射エンジン36は、複数のロケットエンジンから構成されてもよく、その場合、複数のロケットエンジンが発生すべきの合成推力の方向が、ホイール33の回転軸線の方向と同一となるように配置されていればよい。ホイール33の回転軸線、八角柱の筐体31、メインエンジン35、逆噴射エンジン36は、ホイール33の回転軸線の方向が、八角柱の筐体31の軸、メインエンジン35が発生すべき推力の方向及び逆噴射エンジン36が発生すべき推力の方向と同一となるように配置されていれば、同軸に配置されていなくてもよい。逆推進装置は、円柱形のロケットエンジンに限定されるものではなく、適切な任意の逆推進装置とすることができる。
【0032】
制御ユニット37は、筐体31の内部を、筐体31の軸方向と直交する方向に仕切る電気回路基板に設けられている。制御ユニット37は、ホイール33の回転速度を制御することにより、発生する角運動量を制御する。ホイールの発生する角運動量の制御は、飛翔移動体3に複数のホイールを設けて、駆動するホイールの数を変更することによって行ってもよい。また、制御ユニット37は、メインエンジン35や逆噴射エンジン36の発生する推力を制御する。制御ユニット37は、IMU38からの3軸の角速度や加速度等の検出情報等を取得し、この情報に基づいて各種計算を行ったり、取得した情報や計算結果に基づいて、飛翔移動体3の各部の制御等を行う。
【0033】
連結部材39は、長手方向に延びる板状部材であり、筐体31の側面に取り付けられている。そして、連結部材39は、筐体31の側面の中央部に、その長手方向が、ホイール33の回転軸線の方向と同一となるように配置されている。
【0034】
連結部材39には凸状部39aが形成されている。一方、発射レール21は、その断面が、連結部材39の凸状部39aと相補的な形状の溝部21aが形成されている長尺状のレールである。連結部材39の凸状部を発射レール21の溝部21aに、両者が係合するように挿入することによって、飛翔移動体3を発射台2に設置することができ、また飛翔移動体3は、発射レール21に沿って摺動することができる。
【0035】
以上の装置構成を前提に、本発明の第1の実施形態に係る飛翔移動体及び飛翔移動体発射システムの動作原理の例を
図1〜8Bを参照して、以下に説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態に係る飛翔移動体の姿勢及び移動制御方法の例のフローチャートである。
【0036】
まず、飛翔移動体3の連結部材39を発射台2の発射レール21に、両者が係合するように挿入し、飛翔移動体3を発射台2に設置する(S1)。
【0037】
続いて、制御ユニット37が、ホイール33を駆動して回転させることによって角運動量を発生させる(S2)。
【0038】
その後、制御ユニット37は、ホイール33の回転を続けさせることによって角運動量の発生を続けさせつつ、メインエンジン35を噴射させ、メインエンジン35に飛翔移動体3の離陸及び飛翔のための推力を発生させる(S3)。飛翔移動体3は、発射レール21に沿って滑走し、離陸し、飛翔する。このとき、レールに沿って滑走して離陸するので、飛翔移動方向が、発射レール21の長手方向に一定程度制御される。本実施形態においては、更に、ホイール33の回転軸線の方向が、発射レールの長手方向とメインエンジン35が発生すべき推力の方向と同一となるように配置されており、また、飛翔移動体3の離陸の前から角運動量の発生が続いているので、メインエンジン35が発生すべき推力の方向(ホイール33の回転軸線の方向)と実際に発生する推力の方向にずれが生じても、飛翔移動体3は、姿勢が安定して、離陸し、飛翔を続けることができる。
【0039】
ここで、飛翔移動体3の飛翔中において、J
3:飛翔移動体3の機体の推進方向軸周りの慣性モーメント、J
1:飛翔移動体3の機体のJ
3軸と垂直な軸周りの慣性モーメント、J
2:飛翔移動体3の機体のJ
3・J
1軸と垂直な軸周りの慣性モーメント、J
h:ホイールの回転軸周りの慣性モーメント、ω
1:飛翔移動体3のJ
1と同一軸周りの回転角速度、ω
2:飛翔移動体3のJ
2と同一軸周りの回転角速度、ω
3:飛翔移動体3のJ
3と同一軸周りの回転角速度、ω
h:飛翔移動体3のJ
hと同一軸周りの回転角速度としたとき、
が成立する。
【0040】
所定時間が経過すると、飛翔移動体3は着陸するが、制御ユニット37は、飛翔移動体3の飛翔中から着陸時又は着陸後の所定のタイミングまでホイール33の回転を続けさせ、ホイール33に角運動量の発生を続けさせる(S4)。
【0041】
飛翔移動体3''の離陸後において、メインエンジン35の噴射の終了後、制御ユニット37は、IMUからの3軸の角速度や加速度等の検出情報や逆噴射エンジン36のデルタブイに基づいて、逆噴射エンジン36の逆噴射のタイミングを計算する(S5)。この点について、以下、詳細に説明する。
【0042】
飛翔移動体3''が振動していても、並進方向(
図8のx方向)については、メインエンジンの噴射終了後は、飛翔移動体3''は自由落下のふるまいを行う。
【0043】
上で述べたように、ホイール33の回転を続けさせることによって、飛翔移動体3''の姿勢はホイール33の回転軸線の方向のまま安定して、飛翔移動体3''は飛翔を続ける。
よって、飛翔移動体3''の飛翔中において、逆噴射エンジン36が発生すべき推力の方向は、ホイール33の回転軸線の方向と同一となるように配置されているから、ホイール33の回転軸線の方向のまま安定している。
【0044】
したがって、メインエンジンの噴射終了後に逆噴射エンジン36の噴射を行った場合は、飛翔移動体3''の並進方向の運動は、単純に自由落下運動と考えればよいから、
が成立する。ここで、g:重力加速度、t
0:現在時刻、t
l:現在時刻を基準とした飛翔移動体3''の目標到達地点に着陸する時刻、t
b:飛翔移動体3''が目標到達地点に着陸するための現在時刻を基準とした逆噴射エンジン36を噴射すべき時刻、Δx:飛翔移動体3''の現在位置から目標到達地点までのx方向の距離、Δz:飛翔移動体3''の現在位置から目標到達地点までのz方向の距離、v
x(t):飛翔移動体3''の時刻tにおけるx方向の速度、v
z(t):飛翔移動体3''の時刻tにおけるz方向の速度、v
0x:飛翔移動体3''の現在時刻t
0におけるx方向の速度、v
0z:飛翔移動体3''の現在時刻t
0におけるz方向の速度、Δv
x:逆噴射エンジン36のデルタブイのx方向の成分、Δv
z:逆噴射エンジン36のデルタブイのz方向の成分である。
【0045】
よって、Δx、Δz、v
x(t)、v
z(t)、v
0x、v
0zは、IMU38の検出情報から得られ、Δv
x、Δv
zは、例えば公称値を用いることができるので、上式を解くことにより、飛翔移動体3''が目標到達地点に着陸するための現在時刻を基準とした逆噴射すべき時刻t
bを計算することができる。そして、計算された時刻t
bに逆噴射を行えば、飛翔移動体3''は、並進方向について、目標到達地点と同じ座標の地点に着陸する。
【0046】
続いて、制御ユニット37は、時刻t
bを計算した時刻から時間t
b後に逆噴射エンジン36の噴射を行う(S6)。ここで、制御ユニット37が、時刻t
bを常時リアルタイムで計算する構成を採用すると、計算されたt
bがゼロとなった時点で逆噴射エンジン36を噴射すればよい。この場合、制御ユニット37の逆噴射エンジン36の噴射指示から実際に逆噴射エンジン36が噴射を開始するまでに遅延が発生する場合は、遅延時間をt
thとすると、t
b=t
thとなった時点で、制御ユニット37は、逆噴射エンジン36の噴射指示を出せばよい。
【0047】
上記実施形態においては、飛翔移動体3''の飛翔中において、飛翔移動体3''の姿勢は一定であると仮定したが、IMUからの検出情報等に基づく公知のカルマンフィルタを用いた姿勢予測方法等によって飛翔移動体3''の姿勢予測を行えば、より正確な逆噴射タイミングの算出を行うことができる。
【0048】
このような構成により、飛翔移動体を、その姿勢を精度よく安定させつつ、より正確に目標到達地点に着陸させることができる。
【0049】
飛翔移動体3が着陸面100に着陸すると(S7)、メインエンジン35が筐体31に対して折壊する。この点について、以下、詳細に説明する。
図7A〜
図7Cは、本実施形態に係る飛翔移動体の着陸時の様子を示す図である。上述のように、本実施形態によれば、飛翔移動体3の離陸から着陸までの姿勢を精度よく安定させることができる。したがって、飛翔移動体3は、着陸直前の様子を示す
図7Aに示される姿勢を維持しながら着陸する。そのため、飛翔移動体3の着陸時において、メインエンジン35の先端が、まず着地面に接触する(
図7B)。上述のように、メインエンジン35と筐体31は、プラスチック等の折れやすい材料から構成されているので、着地時の衝撃により、メインエンジン35は、筐体31に対して折壊する(
図7C)。このように、着陸時にメインエンジン35が筐体31に対して折壊することにより、飛翔移動体3が着陸時に受ける衝撃が吸収され、衝撃を緩和することができる。
【0050】
制御ユニット37が、飛翔移動体3の着陸時又は着陸後の所定のタイミングでホイールの回転を停止させることにより、発生する角運動量をゼロとすると、飛翔移動体3は天体の表面等の着陸面上で、ホイール33の回転軸線に対して垂直な方向に回転移動を開始する(S7)。この点について、以下、詳細に説明する。
【0051】
ホイール33は、飛翔移動体3の飛翔中及び着陸後を通じて回転し続けていたところ、それまで回転していたホイール33を停止させると、ホイール33が発生していた角運動量とは逆向きの角運動量が飛翔移動体3に発生する。この飛翔移動体3に発生した角運動量によるトルクの大きさが、重力によるトルクより大きいと、飛翔移動体3は回転移動することができる。
【0052】
図4は、飛翔移動体3の着陸後の運動を示す図である。θ:接地点Pを中心に回転した角度、L:接地点Pと飛翔移動体3の重心CGとの距離、m:飛翔移動体3の全質量、g:重力加速度、J:飛翔移動体3の主慣性モーメント、τ:ホイールにより発生するトルクとしたとき、接地点Pを支点とした回転運動の方程式は、
となる。
【0053】
また、J
h:ホイールの回転軸周りの慣性モーメント、α
h:ホイール回転角加速度とすると、
が成立する。
【0054】
したがって、筐体31の形状が、その軸の方向がホイール33の回転軸線の方向と同一である、四角柱を面取りした八角柱であるので、ホイール33を停止させたときに、飛翔移動体3を八角柱の軸周りに22、5°以上回転させるのに十分な回転角速度α
hを得ることができれば、重力に打ち勝って飛翔移動体3を回転移動させることができる。ここで、ホイールの角運動量発生・ブレーキ性能に余裕があれば、ホイール33の回転を停止させるまでホイール33の回転速度を減少させなくとも、ホイール33の回転速度を減少させることによって、飛翔移動体3を八角柱の軸周りに22.5°以上回転させるのに十分な回転角加速度α
hを得ることができれば、飛翔移動体3を回転移動させることができる。また、逆に、飛翔移動体にホイールを複数設け、そのうちの駆動していなかったホイールを駆動させる等によって、ホイールの発生する角運動量を増加させることによって、飛翔移動体3を八角柱の軸周りに22.5°以上回転させるのに十分な回転角加速度α
hを得ることができれば、飛翔移動体3を逆方向に回転移動させることができる。飛翔移動体3が一旦停止した後に、ホイールの発生する角運動量を増加させることによって、飛翔移動体3を逆方向に回転移動させてもよい。
【0055】
本実施形態によれば、飛翔移動体の着陸後に、飛翔移動体が回転移動することができるので、最小飛翔距離以下の距離の移動が可能となり、着陸点と目標到達地点にずれが生じた場合の位置修正や、着陸点の周囲で作業を行うことができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、飛翔移動体の離陸から着陸までの姿勢を精度よく安定させることができるので、着陸時の飛翔移動体の姿勢の予測が可能となる。よって、着陸時の衝撃緩和のための構成を、飛翔移動体全体でなく一部に絞って施すことが可能となる。また、これにより、飛翔移動体の軽量化を図ることができる。
【0057】
(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、メインエンジンが着陸時に折壊したが、本実施形態は、メインエンジンの折壊後に、メインエンジンに置換して代替のエンジンを配置することによって、更に飛翔移動体の飛翔を可能とするものである。
【0058】
図9A〜
図9Cは、本発明の第2の実施形態に係る飛翔移動体の断面図である。
図10A〜
図10Dは、本発明の第2の実施形態にかかる飛翔移動体の姿勢変更経過を示す図である。
図9A〜
図10Dにおいて
図2、
図3と対応する部分には同一符号を付し、第1の実施形態と同様の部分の説明は省略する。
【0059】
図9Aは、メインエンジン35が折壊する前の初期状態を示す図である。筐体31の内部には、仕切り板70が、筐体31の軸方向と直交するように設けられている。メインエンジン35は、その直径が同じで高さが小さい円柱の形状の代替エンジン41に、両者の軸が同一となるように接続されている。具体的には、メインエンジン35の、代替エンジン41近傍の側面から径方向に形成された凹部351bの代替エンジン41と対向する面から、筐体31の軸方向に形成されたねじ穴351cと、それに対応する位置に代替エンジン41に形成されたねじ穴41aをねじ359によって接続する。ねじ359は、第1の実施形態と同様にプラスチック等の折れやすい材料から形成されている。
【0060】
代替エンジン41は、その直径が同じである有底円筒形状の押し出し台61に、両者の軸が同一となるように接着されている。具体的には、後述のように代替エンジン41がメインエンジン35の折壊後にメインエンジン35に置換して配置された場合に、飛翔移動体3の着陸時に押し出し台61に対して折壊可能なように、接着されている。
【0061】
再配置装置60は、押し出し台61、ばね63、支持部65、ピンプラー67を備える。
【0062】
押し出し台61の底部の側面には、突起部61aが形成されている。また、押し出し台61の空胴部61bには、ばね63が、押し出し台61の軸方向に伸縮可能なように配置されている。すなわち、ばね63の一端が空洞部61bの底面に接し、ばね63の他端が仕切り板70に接するように配置されている。
【0063】
仕切り板70に対しては、筐体31の軸方向に延びる柱状の支持部65が、代替エンジン41と押し出し台61を取り囲むように設けられている。支持部65の側面にはラッチであるピンプラー67が設けられており、ピンプラー67のピン67aによって、押し出し台61の突起部61aが係止され、代替エンジン41とメインエンジン35がロックされている。
【0064】
筐体31の底面には、代替エンジン41の軸方向に直交する断面と略同一の形状を有する開口部31cが形成され、代替エンジン41とメインエンジン35がロックされている状態において、代替エンジン41の一部とメインエンジン35が筐体31から突出している。そして、代替エンジン41が、開口部31c内を、筐体31の軸方向に移動することができるようになっている。また、ピンプラー67のピン67aと押し出し台61の突起部61aの係止が解除され、ばね63の弾性力によって、筐体31の軸方向に外方に移動するが、ピンプラー67側の開口部31cの周辺部は、ピンプラー67のピン67aを係止する機能を有する。
【0065】
図10A〜
図10Dを参照して、筐体31の対向する側面の各々には、一対の折尺状の展開部材801が設けられ、これらが姿勢変更装置80を構成している。展開部材801の関節部には、図示しない板ばねが設けられている。
【0066】
展開部材801は、初期状態において、筐体31の対向する側面に設けられた溝部31dに折り畳まれて格納されている(
図10A)。制御ユニット37からの指令により、展開部材801が溝部31dから引き出されると、展開部材801の関節部に設けられた板ばねにより、展開部材801は伸展する(
図10B〜
図10C)。展開部材801の伸展が完了すると、
図10Dに示されるように、筐体31の軸、すなわち代替エンジン41の軸が着陸面100に対して所定の角度をなすような姿勢となる。
【0067】
ここで、筐体31の対向する側面の各々に設けられた一対の展開部材801は、伸展完了時に、筐体31の軸方向に対して対称となるように構成されており、これにより、飛翔移動体3の重心が、展開部材801の伸展前後で変化しないようにすることができる。
【0068】
以上の装置構成を前提に、本発明の第2の実施形態に係る飛翔移動体の動作を以下に説明する。
【0069】
飛翔移動体3が着陸すると、メインエンジン35が代替エンジン41に対して折壊する。
図9Bは、メインエンジン35が折壊した直後の状態を示す図である。
【0070】
その後、飛翔による移動を行いたい場合、制御ユニット37は、ピンプラー67のピン67aを引き込む。すると、ピンプラー67のピン67aと押し出し台61の突起部61aの係止が解除され、ばね63の弾性力によって、押し出し台61は、押し出し台61の突起部61aが筐体31のピンプラー67側の開口部31cの周辺部により係止されるまで、筐体31の軸方向に外方に移動する。これにより、代替エンジン41は、筐体31の外部に露出する位置に配置される。すなわち、メインエンジン35に置換して代替エンジン41が配置される。
【0071】
続いて、飛翔移動体3の姿勢を変更する。これは、第1の代替エンジン41の軸の方向が着地面100に平行なこのままの姿勢では飛翔できないので、第1の代替エンジンの軸の方向が着地面100に対して所定の角度をなすように姿勢を変更するものである。
【0072】
初期状態において、展開部材801は、筐体31の対向する側面に設けられた溝部dに折り畳まれて格納されている(
図10A)。
【0073】
制御ユニット37が、展開部材801を溝部31dから引き出すと、展開部材801の関節部に設けられた板ばねにより、展開部材801は伸展する(
図10B〜
図10C)。展開部材801の伸展が完了すると、
図10Dに示されるように、筐体31の軸、すなわち代替エンジン41の軸が着陸面100に対して所定の角度をなすような姿勢となる。
【0074】
展開部材801の伸展が完了し、飛翔移動体3の姿勢変更が完了すると、制御ユニット37は、代替エンジン41を噴射させ、飛翔移動体3が離陸する。
【0075】
その後、飛翔移動体3が着陸すると、前回の着陸時と同様に、代替エンジン41が押し出し台61に対して折壊し、飛翔移動体3への衝撃が吸収され、衝撃を緩和することができる。
【0076】
(第3の実施形態)
本実施形態は、メインエンジン35に置換して代替エンジン41を配置する再配置装置の構成が、第2の実施形態と異なる。
【0078】
再配置装置90は、第1のマウント901、第2のマウント903、回転ホルダ905、第1の接着体907、第2の接着体908、凹み部909、910、第1のモータ911、第1のシャフト913、駆動歯車915、第2のシャフト917、従動歯車919、押し出し爪921、第2のモータ923、第3のシャフト925を備える。
【0079】
図11Aは、メインエンジン35が折壊する前の状態を示す図である。筐体31の内部には、仕切り板70が、筐体31の軸方向と直交するように設けられている。メインエンジン35、第1の代替エンジン41、第2の代替エンジン43は、長さ方向の両端部が面取りされた円柱の形状を有している。そして、メインエンジン35は、その直径が同じで高さが小さい円柱の形状の代替エンジン41に、両者の軸が同一となるように接着されている。このような構成により、接着面周辺には凹み部909が形成され、着陸時に折壊しやすくなる。具体的には、飛翔移動体3の着陸時に第1の代替エンジン41に対して折壊可能なように、接着されている。
【0080】
第1の代替エンジン41、第2の代替エンジン43は、その直径が同じである円板状の第1のマウント901、第2のマウント903のそれぞれに、両者の軸が同一となるように接着されている。第1のマウント901、第2のマウント903の第1の代替エンジン41、第2の代替エンジン43に対向する側の端部は面取りされている。このような構成により、接着面周辺には凹み部910が形成され、着陸時に折壊しやすくなる。具体的には、後述のように代替エンジン41がメインエンジン35の折壊後にメインエンジン35に置換して配置された場合に、飛翔移動体3の着陸時に押し出し台61に対して折壊可能なように、接着されている。
【0081】
回転ホルダ905は、2つのホルダ部915aを備える。各ホルダ部905aは、第1の代替エンジン41と第1のマウント901からなる第1の接着体907、第2の代替エンジン43と第2のマウント903からなる第2の接着体908をそれぞれ装填可能な略円筒状の形状を有する。また、回転ホルダ905は、円筒状の軸部905cを備え、この軸部905cに、後述の第2のモータ923に取り付けられた第3のシャフト925が、挿通、固定される。2つのホルダ部905aは、軸部905cを軸として対象に配置され、軸部905cと一体化して形成されている。回転ホルダ905は、第1の代替エンジン41の軸が筐体31の軸と一致するように配置されている。また、各ホルダ部905aには、その径方向に貫通し、その長さ方向に延びるガイドスリット905cが設けられており、押し出し爪921がガイドスリット905cに沿って移動可能とされている。ここで、回転ホルダ905が備えるホルダ部905aの数は、2つに限定されるものではなく、任意の適切な数とすることができる。
【0082】
筐体31の側面には、第1のモータ911が取り付けられている。第1のモータ911には第1のシャフト913が、筐体31の軸方向と平行な方向に延びるように、その一端が仕切り板70に、その他端が筐体31の底面に取り付けられており、第1のシャフト913には駆動歯車915が取り付けられている。また、第2のシャフト917が、筐体31の軸方向と平行な方向に延びるように、その一端が仕切り板70に、その他端が筐体31の底面に設けられた位置規制部材918に取り付けられており、第2のシャフト917には、駆動歯車915と噛み合う従動歯車919が取り付けられている。第2のシャフト917には、ねじが切られており、細長い略矩形板状の押し出し爪921に設けられたねじ穴921aを介して、押し出し爪921が取り付けられている。第1のモータ911が回転すると押し出し爪921は、第2のシャフト917に沿って、且つホルダ部905aのガイドスリット905cに沿って外方に移動する。これにより、第1の接着体907が、押し出し爪921によって、外方に押し出される。
【0083】
回転ホルダ905を回転させるための第2のモータ923は、仕切り板70に取り付けられ、第2のモータ923には、筐体31の軸方向と平行な方向に延びるように、第3のシャフト925が取り付けられている。上述のように、第3のシャフトには、回転ホルダ905が取り付けられている。このような構成により、回転式拳銃の回転弾倉のように、代替のエンジンを再配置することができる。
【0084】
以上の装置構成を前提に、本発明の第3の実施形態に係る飛翔移動体の動作を以下に説明する。
【0085】
図11Aは、メインエンジン35が折壊する前の初期状態を示す図である。1回目の着陸により、メインエンジン35が第1の代替エンジン41に対して折壊すると
図11Bに示されるような状態となる。
【0086】
その後、飛翔による移動を行いたい場合、制御ユニット37は、第1のモータ911を回転させることにより、押し出し爪921を外方に移動させ、第1の代替エンジン41を筐体31の外部に露出する位置まで押し出す。これにより、メインエンジン35に置換して第1の代替エンジン41が配置される(
図11C)。
【0087】
第1の代替エンジン41の噴射による飛翔後の2回目の着陸により、メインエンジン35が第1の代替エンジン41に対して折壊すると
図11Dに示されるような状態となる。
【0088】
その後、更に飛翔による移動を行いたい場合、制御ユニット37は、第1のモータ911を逆回転させ、押し出し爪921を初期位置まで戻し(
図11E)、第2のモータ923を回転させることにより、回転ホルダ905を半回転させ、第2の代替エンジン43を第1の代替エンジンの初期位置に移動させる(
図11F)。そして、制御ユニット37は、第1のモータ911を回転させることにより、押し出し爪921を外方に移動させ、第2の代替エンジン43を筐体31の外部に露出する位置まで押し出す。これにより、第1の代替エンジン41に置換して第2の代替エンジン43が配置される(
図11F)。
【0089】
本実施形態によれば、複数の代替エンジンを、前に使用したエンジンに置換して配置可能となるので、第1及び第2の実施形態の作用効果に加えて、複数回の飛翔が可能となるという作用効果を奏する。
【0090】
上記の各実施形態において、筐体の形状は、ホイールの発生する角運動量の制御によって、着陸面上において飛翔移動体が回転移動することを可能とする形状であれば、適切な任意の形状を用いることができる。例えば、筐体の形状は、その軸がホイールの回転軸線と同一であるn角柱(nは3以上の整数)としてもよい。この場合、nの値が大きいほど、着陸面上において飛翔移動体を回転移動させるために、ホイールが発生する必要がある角運動量は小さくなるが、姿勢が安定しないために飛翔移動体を停止させるのが難しくなる。特に、nを無限大にした場合は筐体の形状は円柱となるが、筐体の表面に摩擦力を増大させる構造を付加しないと、所望の位置で停止させることが困難であり、また登坂が困難である。逆に、nの値が小さいと、着陸面上において飛翔移動体を回転移動させるために、ホイールが発生する必要がある角運動量は大きくなり、ホイールの角運動量発生・ブレーキ性能との関係で、着陸面上において飛翔移動体を回転移動させることができない場合が生じる。また、例えば、筐体の形状は、筐体が着陸面上において飛翔移動体が回転移動する際に着陸面と接する少なくとも一部がn角柱として構成されていれば、第2の実施形態のように、筐体の一部がn角柱以外の形状として構成されてもよい。
【0091】
推進装置と(第1の)代替推進装置、第1の代替推進装置と第2の代替推進装置等の推進装置と推進装置以外の飛翔移動体の部分、代替推進装置と代替推進装置以外の飛翔移動体の部分との接続構造は、上記の第2及び第3の実施形態の構造に限定されるものではなく、飛翔移動体の着陸時に、推進装置や代替推進装置以外の前記飛翔移動体の部分に対して折壊可能な任意の適切な構造とすることができる。
【0092】
以上、本発明について、例示のためにいくつかの実施形態に関して説明してきたが、本発明はこれに限定されるものでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細について、様々な変形及び修正を行うことができることは、当業者に明らかであろう。