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特開2019-99255小動物用フード缶製造方法及び小動物用フード缶
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-99255(P2019-99255A)
(43)【公開日】2019年6月24日
(54)【発明の名称】小動物用フード缶製造方法及び小動物用フード缶
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/14 20060101AFI20190603BHJP
   B32B 38/18 20060101ALI20190603BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20190603BHJP
【FI】
   B65D25/14 A
   B32B38/18 B
   B32B15/08 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-234795(P2017-234795)
(22)【出願日】2017年12月7日
(71)【出願人】
【識別番号】391041316
【氏名又は名称】日東産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】板谷 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 伸雄
【テーマコード(参考)】
3E062
4F100
【Fターム(参考)】
3E062AA04
3E062AB07
3E062AC09
3E062JA01
3E062JB11
3E062JC09
4F100AB03A
4F100AB21A
4F100AK03C
4F100AK52D
4F100AL01D
4F100BA05
4F100EC012
4F100GB16
4F100JL12B
4F100JL14D
(57)【要約】
【課題】小動物用フードへの食付きに悪影響を与えない小動物用フード缶を、迅速かつ容易(安価)に製造可能な小動物用フード缶製造方法を提供する。
【解決手段】円筒状の胴体部材と底部材と蓋部材の3ピースにて小動物用フード缶を製造する小動物用フード缶製造方法であって、変性ポリオレフィンの熱融着層11と、ポリオレフィン系樹脂の基材層と、オレフィン・シリコーン共重合体の離型層13と、を順次有する内面用フィルム6の熱融着層11を、ロール状態から引出されたブリキ板10の一面10aに重ね合わせて、一対の加圧熱ローラ9,9にて挟圧しつつ加熱してラミネートブリキ板5を作製し、そのラミネートブリキ板5を離型層13が内周面となるように円筒状にして胴体部材を作製する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴体部材(1)と底部材(2)と蓋部材(3)の3ピースにて小動物用フード缶を製造する小動物用フード缶製造方法であって、
変性ポリオレフィンの熱融着層(11)と、ポリオレフィン系樹脂の基材層(12)と、オレフィン・シリコーン共重合体の離型層(13)と、を順次有する内面用フィルム(6)の上記熱融着層(11)を、ロール状態から引出されたブリキ板(10)の一面(10a)に重ね合わせて、一対の加圧熱ローラ(9)(9)にて挟圧しつつ加熱してラミネートブリキ板(5)を作製し、該ラミネートブリキ板(5)を上記離型層(13)が内周面となるように円筒状にして上記胴体部材(1)を作製することを特徴とする小動物用フード缶製造方法。
【請求項2】
円筒状の胴体部材(1)と底部材(2)と蓋部材(3)の3ピースにて小動物用フード缶を製造する小動物用フード缶製造方法であって、
変性ポリオレフィンの熱融着用フィルム(7)を、ロール状態から引出されたブリキ板(10)の一面(10a)に重ね合わせて、さらに、ポリオレフィン系樹脂の基材層(12)と、オレフィン・シリコーン共重合体の離型層(13)とを、有する離型用フィルム(8)の上記基材層(12)を、上記熱融着用フィルム(7)に重ね合わせて、一対の加圧熱ローラ(9)(9)にて挟圧しつつ加熱してラミネートブリキ板(5)を作製し、該ラミネートブリキ板(5)を上記離型層(13)が内周面となるように円筒状にして上記胴体部材(1)を作製することを特徴とする小動物用フード缶製造方法。
【請求項3】
円筒状の胴体部材(1)と底部材(2)と蓋部材(3)の3ピースにて構成される小動物用フード缶であって、
上記胴体部材(1)は、缶内面側(Ka)から、オレフィン・シリコーン共重合体の離型層(13)と、ポリオレフィン系樹脂の基材層(12)と、変性ポリオレフィンの熱融着層(11)と、ブリキ板(10)とを、順次、有することを特徴とする小動物用フード缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小動物用フード缶製造方法及び小動物用フード缶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絞り加工して成形した有底円筒状の缶胴部材と、缶蓋部材との、2ピースで構成した缶体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような2ピースで構成される缶体を、犬や猫等の小動物用フード缶として使用する場合は、開封してひっくり返した際に牛肉や魚肉等の粘着性フードが給餌皿等に落ちやすい性質(ミートリリース性)が求められるため、離型用溶剤や防錆剤を塗布した溶剤塗布鋼板、又は、ワックス剤を塗布したポリエステル系樹脂の離型用内面フィルムを金属板に接着したフィルムラミネート鋼板、を用いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−304973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶剤塗布鋼板は、金属板に塗布した防錆剤や離型用溶剤の臭いが、フィルムラミネート鋼板では、金属板と内面フィルムの間に形成された接着剤層の臭いや、内面フィルムに塗布したワックス剤の臭いが、小動物用フードにうつるため、犬や猫といった嗅覚の優れている小動物にとって非常に不快であり、小動物用フードへの食付きに悪影響を及ぼす(食付きが悪くなる)といった問題があった。
また、溶剤塗布鋼板は、金属板に防錆剤や離型用溶剤を塗布する工程、フィルムラミネート鋼板は、離型用内面フィルムにワックス剤を塗布する工程や、内面フィルムと金属板の間に接着剤を塗布する工程、が必要で、非常に手間がかかる(製造コストがかかる)といった問題があった。
また、フィルムラミネート鋼板は、内面フィルムが接着剤にて接着しやすいように、ティンフリースチール(TFS)を用いていたが、入手が困難である(入手ルートが限定され、高価で納期がかかる)といった問題があった。
さらに、2ピースで構成される小動物用フード缶は、有底筒状の缶胴部材を絞り加工する際に、離型用溶剤や離型用内面フィルムのミートリリース性が損なわれないように注意を払う必要があり、製造が困難であった。また、絞り加工の悪影響を受けないように、離型用溶剤を厚く塗布する必要、又は、離型用内面フィルムを厚く成形しておく必要があり、製造コストの負担になっていた。
【0005】
そこで、本発明は、小動物用フードへの食付きに悪影響を与えない小動物用フード缶を、迅速かつ容易(安価)に製造可能な小動物用フード缶製造方法の提供を目的とする。
また、迅速かつ容易(安価)に製造でき、小動物用フードへの食付きに悪影響を与えない小動物用フード缶の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の小動物用フード缶製造方法は、円筒状の胴体部材と底部材と蓋部材の3ピースにて小動物用フード缶を製造する小動物用フード缶製造方法であって、変性ポリオレフィンの熱融着層と、ポリオレフィン系樹脂の基材層と、オレフィン・シリコーン共重合体の離型層と、を順次有する内面用フィルムの上記熱融着層を、ロール状態から引出されたブリキ板の一面に重ね合わせて、一対の加圧熱ローラにて挟圧しつつ加熱してラミネートブリキ板を作製し、該ラミネートブリキ板を上記離型層が内周面となるように円筒状にして上記胴体部材を作製する方法である。
【0007】
また、円筒状の胴体部材と底部材と蓋部材の3ピースにて小動物用フード缶を製造する小動物用フード缶製造方法であって、変性ポリオレフィンの熱融着用フィルムを、ロール状態から引出されたブリキ板の一面に重ね合わせて、さらに、ポリオレフィン系樹脂の基材層と、オレフィン・シリコーン共重合体の離型層とを、有する離型用フィルムの上記基材層を、上記熱融着用フィルムに重ね合わせて、一対の加圧熱ローラにて挟圧しつつ加熱してラミネートブリキ板を作製し、該ラミネートブリキ板を上記離型層が内周面となるように円筒状にして上記胴体部材を作製する方法である。
【0008】
また、本発明の小動物用フード缶は、円筒状の胴体部材と底部材と蓋部材の3ピースにて構成される小動物用フード缶であって、上記胴体部材は、缶内面側から、オレフィン・シリコーン共重合体の離型層と、ポリオレフィン系樹脂の基材層と、変性ポリオレフィンの熱融着層と、ブリキ板とを、順次、有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の小動物用フード缶は、工程が少なく、大幅なコストダウンが可能になる。接着剤やワックス剤、防錆剤や離型用溶剤、ラッカー等の溶剤の臭いや成分が小動物用フードにうつらない小動物用フード缶を製造できる。つまり、安全で、ダイオキシンフリー等の環境面やBPAフリー等の健康面に優れているフィルムラミネート缶を、迅速かつ容易(安価)に製造できる。ミートリリース性や低臭性に優れた小動物フード缶を製造できる。大量生産及び多品種少量生産の何れにも迅速かつ容易にできる。
また、本発明の小動物用フード缶は、溶剤の臭いや成分が小動物用フードにうつるのを防止できる。安全性や環境性、健康性を向上できる。また、ミートリリース性や低臭性に優れる。大量生産や多品種少量生産の何れであっても容易かつ迅速に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の小動物用フード缶の実施の一形態を示す断面正面図である。
図2】要部拡大断面図である。
図3】本発明の小動物用フード缶製造方法の実施形態を示す斜視図である。
図4】要部拡大断面図である。
図5】本発明の小動物用フード缶製造方法の他の実施形態を示す斜視図である。
図6】要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
本発明に係る小動物用フード缶製造方法は、図1に示すように、円筒状の胴体部材1と、円形状の底部材2と、円形状の蓋部材3と、の3ピースにて小動物用フード缶を製造する方法である。
【0012】
先ず、円筒状の胴体部材1を製造する工程について説明する。
図3及び図4に示すように、鋼板にすずをめっきしたブリキ板10を予め製作してロール状としている。また、変性ポリオレフィンの熱融着層11と、ポリオレフィン系樹脂の基材層12と、オレフィン・シリコーン共重合体の離型層13と、を順次有する内面用フィルム6を予め製作して、ロール状としている。
【0013】
そして、ロール状のブリキ板10を帯状に引き出すと共に、ロール状の内面用フィルム6を帯状に引き出す。
引出されたブリキ板10の一面10aに、引き出された内面用フィルム6の熱融着層11を、対面状に配設して重ね合わせる。
【0014】
ブリキ板10と内面用フィルム6とを重ね合わせた状態で、一対の加圧熱ローラ9,9にて挟圧しつつ加熱して、熱融着(熱融着層11)によってブリキ板10と内面用フィルム6とが一体となった帯状の(フィルム)ラミネートブリキ板5を製作する。
【0015】
一対の加圧熱ローラ9,9は、両者とも加熱されているのが望ましく、160度以上180度以下に外周面を加熱している。
また、ブリキ板10は、加圧熱ローラ9,9に挟圧されるよりも前に、予め、予熱ヒータ等の予熱付与手段によって予熱している。
【0016】
その後、図示省略するが、帯状のラミネートブリキ板5を、複数枚の小板片とし、小板片のラミネートブリキ板5を、離型層13が内周面となるように、円筒状に曲げ加工して継ぎ合わせ部を固着して、円筒状の胴体部材1を作製する。
【0017】
作製した胴体部材1は、図2に示すように、缶内面側Kaから、順次、オレフィン・シリコーン共重合体の離型層13と、ポリオレフィン系樹脂の基材層12と、変性ポリオレフィンの熱融着層11と、鋼板(地鉄)にすず(錫)をめっきしたブリキ板10と、を有している。
【0018】
また、底部材2と蓋部材3を夫々、作製する。
底部材2及び蓋部材3は、アルミニウム製の金属板を、プレス機等によって円形状に成形して、作製する。
【0019】
そして、胴体部材1に、底部材2を巻締め等によって固着して有底筒状部材を形成し、その有底筒状部材に、小動物用フードを充填した後に、蓋部材3を巻締め等によって固着して密封缶状態とする。
【0020】
ここで、図4に示すように、内面用フィルム6は、熱融着層11を形成するための変性ポリオレフィンと、基材層12を形成するためのオレフィン系樹脂と、離型層13を形成するためのオレフィン・シリコーン共重合体と、を多層共押出装置に供給して、押出し成形した3層押出しフィルムである。
【0021】
フィルム状態での熱融着層11の厚さは、5μm以上100μm以下が好ましく、基材層12よりも薄く形成している。下限値未満であるとブリキ板10との接着性が低下する虞れがあり、上限値を超えると、過剰で品質であり、無駄が生じる。
【0022】
フィルム状態での基材層12の厚さは、10μm以上300μm以下に設定するのが好ましい。下限値未満であると、強度やコシが弱くなり過ぎて、ラミネートブリキ板製作工程での取扱いが困難になる。上限値を超えると、過剰品質となって無駄が生じる。
【0023】
フィルム状態での離型層13の厚さは3μm以上50μm以下に設定するのが好ましい。下限値未満であると十分なミートリリース性(離型性や摺動性、撥油性や撥水性)が得られない虞れがある。上限値を超えると、小動物用フード缶は使い捨てのため、過剰品質となって、無駄が生じる(製造コストが高くなる)。
【0024】
次に、本発明の小動物用フード缶製造方法の他の実施形態について説明する。
図5及び図6に示すように、鋼板にすずをめっきしたブリキ板10を予め製作して、ロール状としている。変性ポリオレフィンの熱融着用フィルム7を予め製作してロール状としている。また、オレフィン系樹脂の基材層12と、オレフィン・シリコーン共重合体の離型層13とを、有する離型用フィルム8を、予め製作して、ロール状としている。
【0025】
熱融着用フィルム7は、変性ポリオレフィンをフィルム状に形成したものであれば良く、例えば、オレフィン系ホットメルト樹脂フィルムであって、より具体的には、倉敷紡績社製クランベター(登録商標)である。
【0026】
熱融着用フィルム7の厚さは、10μm以上100μm以下に設定するのが望ましい。10μm未満であると、フィルムの製造が困難になると共に、ラミネートブリキ板製作工程での取り扱い(ロールからの引出しや重ね合わせ等)が困難になる。また、100μmを超えると、厚すぎで無駄が生じる(フィルム製造コストが高くなる)。
【0027】
離型用フィルム8は、基材層12を形成するためのポリオレフィン系樹脂と、離型層13を形成するためのオレフィン・シリコーン共重合体と、を共押出装置に供給して、押出し成形した2層押出しフィルムである。
【0028】
離型用フィルム8は、基材層12の厚さを、10μm以上300μm以下に設定するのが好ましい。下限値未満であると、フィルムのコシや強度が弱くなり過ぎて、ラミネートブリキ板製作工程での取り扱いが困難になる。上限値を超えると、過剰品質となって無駄が生じる(製造コストが高くなる)。
【0029】
離型用フィルム8は、離型層13の厚さを、3μm以上50μm以下に設定するのが好ましい。下限値未満であると十分な離型性や摺動性が得られない虞れがある。上限値を超えると、小動物用フード缶は使い捨てのため、過剰品質となって、無駄が生じる(製造コストが高くなる)。
【0030】
そして、ロール状の離型用フィルム8と、ロール状の熱融着用フィルム7と、ロール状のブリキ板10とを、夫々、帯状に引き出す。
引出されたブリキ板10の一面10aに、熱融着用フィルム7の一面7aを、対面状に配設して重ね合わせて、さらに、熱融着用フィルム7の他面7bに、離型用フィルム8の基材層12を、対面状に配設して重ね合わせる。言い換えると、離型用フィルム8とブリキ板10の間に熱融着用フィルム7を介在させる。
【0031】
そして、ブリキ板10と、熱融着用フィルム7と、離型用フィルム8とが、順次、重ね合わさった(積層した)状態で、一対の加圧熱ローラ9,9にて挟圧しつつ加熱して、熱融着(熱融着用フィルム7)によってブリキ板10と熱融着用フィルム7と離型用フィルム8とが一体となった帯状の(フィルム)ラミネートブリキ板5を製作する。
【0032】
その後、図示省略するが、帯状のラミネートブリキ板5を、複数枚の小板片とし、小板片のラミネートブリキ板5を、離型層13が内周面となるように、円筒状に曲げ加工して継ぎ合わせ部を固着して、円筒状の胴体部材1を作製する。作製した胴体部材1は、図2に示すように、缶内面側Kaから、順次、オレフィン・シリコーン共重合体の離型層13と、ポリオレフィン系樹脂の基材層12と、変性ポリオレフィンの(熱融着用シート7から成る)熱融着層11と、鋼板(地鉄)にすず(錫)をめっきしたブリキ板10と、を有している。
他の工程や手順(方法)は上述した実施形態と同様である。
【0033】
次に、本発明の小動物用フード缶は、上述の小動物用フード缶製造方法にて製作されたものであって、図1に示すように、ラミネートブリキ板5製の胴体部材1と、アルミニウム製の底部材2と、アルミニウム製の蓋部材3と、を備えている。
図2に示すように、胴体部材1は、周壁部において、缶内面側Kaから、順次、オレフィン・シリコーン共重合体の離型層13と、ポリオレフォン系樹脂の基材層12と、変性ポリオレフィンの熱融着層11と、鋼板(地鉄)にすず(錫)をめっきしたブリキ板10と、を有している。
【0034】
そして、図示省略するが、缶内部に、牛肉や鶏肉、魚肉等の粘着性フードが収容される。開封してひっくり返した際に、粘着性フードが給餌皿等へ落ちやすい性質(ミートリリース性)を向上させるための離型層13が、缶内表面(缶内周面)に、配設されている。
【0035】
離型層13のオレフィン・シリコーン共重合体は、シリル化ポリオレフィンとも呼ばれ、シリコーン系表面改質剤(シリコーン表面改質ポリオレフィン)であり、より具体的には、三井化学社製イクスフォーラ(登録商標)である。
【0036】
オレフィン・シリコーン共重合体の離型層13は、長期間の保管でも、十分なミートリリース性が得られる(優れた摺動性や離型性や撥油性や撥水性が長期間にわたって継続する)。また、防汚性に優れ、小動物用フードを取り出した後の洗浄も容易である。また、ポリオレフィン系樹脂との相溶性も良い。そして、ポリプロピレン(ホモPP)と比べて、ミートリリース性が優れている(摺動性及び離型性が良い)。
【0037】
また、基材層12用のオレフィン系樹脂と、離型層13用のオレフィン・シリコーン共重合体との、重量を合わせて100%とした場合に、オレフィン・シリコーン共重合体を1%以上30%以下とするのが望ましい。
1%未満であると、粘着性の高い小動物用フードに対して、十分なミートリリース性(離型性や摺動性等)が得られない虞れがある。30%を超えると、過剰品質で製造コストの負担となる。より好ましくは、10%を超え30%以下とする。10%を超えると、シリコーンコートしたポリエチレンテレフタレート(PET)よりも優れた離型性を得ることができる。
【0038】
ポリオレフィン系樹脂の基材層12は、ポリプロピレン(ホモPP)やポリエチレン(PE)である。ポリエチレンテレフタレート(PET)に比べ、耐溶剤性や耐薬品性に優れるため、酸性やアルカリ性まで様々な小動物用フードに対応できる。また、入手が容易である(安価である)。
【0039】
また、変性ポリオレフィン(熱融着層11や熱融着用フィルム7)は、官能基をポリオレフィンに導入して接着性を付与した変性ポリプロピレン・変性ポリエチレン等であって、例えば、酸変性ポリオレフィン(酸変性ポリプロピレン)や、不飽和ジカルボン酸変性ポリオレフィン(マレイン酸変性ポリオレフィンや無水マレイン酸変性ポリプロピレン)、イミン変性ポリオレフィン等である。より具体的には、三井化学社製アドマー(登録商標)である。
【0040】
変性ポリオレフィンは、ブリキ板10のすずめっき層(面)に対して、優れた(強力な)接着性を発揮して、一体化可能である。つまり、ティンフリースチール(TFS)に比べて入手が容易で安価なブリキ板10を用いて、熱融着による(フィルム用接着剤が不要な)フィルムラミネート缶を作製できる。また、熱融着による接着不良等がほとんど発生せず、歩留まりが良く、生産効率が高くて、大量生産に好適である。
【0041】
また、熱融着層11や熱融着用フィルム7は、融点が65度以上100度以下の低融点のものが好ましい。低融点であるため、加圧熱ローラ9,9による熱融着が可能となる。つまり、加熱温度が低く、また、加圧時間を短くでき、連続的に(送りローラにて搬送走行させつつ)ラミネートブリキ板5を作製できる。熱プレスにて高温で数分間、加圧する場合に比べて、作業効率及びエネルギー効率が優れる(省エネルギー化に貢献できる)。
【0042】
また、胴体部材1は曲げ加工によって成形するため(2ピース製缶用の有底筒状缶胴部材のような絞り加工でないため)、離型層13が損傷するような虞れがなく、内面用フィルム6や離型用フィルム8の薄肉化(薄膜化)を実現でき、製造コストを軽減できる。
【0043】
なお、本発明は、設計変更可能であって、底部材2や蓋部材3の材質は自由である。蓋部材3は図示省略するがプルタブ式開封構造を備えたものが好ましい。図示省略するが、胴体部材1は、缶外面側に印刷層を有するものであっても良い(ブリキ板10の他面に印刷用フィルムを接着するも良い)。また、ラミネートブリキ板5を円筒状に成形して継ぎ合わせ部を固着する際に、溶接に限らず、接着剤を用いるも良い。継ぎ合わせ部は缶外面側であり、継ぎ合わせ用接着剤は、(従来のフィルム用接着剤を内周面全体に塗布する場合に比べて、)極少量であるため、小動物フードの食付きへの悪影響は無い。
【0044】
以上のように、本発明の小動物用フード缶製造方法は、円筒状の胴体部材1と底部材2と蓋部材3の3ピースにて小動物用フード缶を製造する小動物用フード缶製造方法であって、変性ポリオレフィンの熱融着層11と、ポリオレフィン系樹脂の基材層12と、オレフィン・シリコーン共重合体の離型層13と、を順次有する内面用フィルム6の上記熱融着層11を、ロール状態から引出されたブリキ板10の一面10aに重ね合わせて、一対の加圧熱ローラ9,9にて挟圧しつつ加熱してラミネートブリキ板5を作製し、該ラミネートブリキ板5を上記離型層13が内周面となるように円筒状にして上記胴体部材1を作製するので、溶剤塗布工程や接着剤塗布工程を削減できて、大幅なコストダウンが可能になる。溶剤等(接着剤やワックス剤、防錆剤や離型用溶剤、ラッカー等)の臭いや成分が小動物用フードにうつらない小動物用フード缶を製造できる。また、防錆剤や離型用溶剤の混入の虞れの無い安全な小動物用フード缶を得ることができる。環境面や健康面に優れている(防錆剤や離型用溶剤が不要な)フィルムラミネート缶を、迅速かつ容易(安価)に製造できる。ミートリリース性(離型性、摺動性、撥水性、撥油性)や低臭性に優れた小動物フード缶を製造できる。入手が容易なブリキ板10で、フィルムラミネートの胴体部材1を作製でき、大量生産及び少量多品種生産の何れにも迅速かつ容易に対応できる。また、製造工程において離型層13が損傷する虞れが無く、容易に製造でき、品質も安定する。
【0045】
また、円筒状の胴体部材1と底部材2と蓋部材3の3ピースにて小動物用フード缶を製造する小動物用フード缶製造方法であって、変性ポリオレフィンの熱融着用フィルム7を、ロール状態から引出されたブリキ板10の一面10aに重ね合わせて、さらに、ポリオレフィン系樹脂の基材層12と、オレフィン・シリコーン共重合体の離型層13とを、有する離型用フィルム8の上記基材層12を、上記熱融着用フィルム7に重ね合わせて、一対の加圧熱ローラ9,9にて挟圧しつつ加熱してラミネートブリキ板5を作製し、該ラミネートブリキ板5を上記離型層13が内周面となるように円筒状にして上記胴体部材1を作製するので、溶剤塗布工程や接着剤塗布工程を削減できて、大幅なコストダウンが可能になる。溶剤等の臭いや成分が小動物用フードにうつらない小動物用フード缶を製造できる。また、安全な小動物用フード缶を得ることができる。環境面や健康面に優れているフィルムラミネート缶を、迅速かつ容易(安価)に製造できる。ミートリリース性や、低臭性に優れた小動物フード缶を製造できる。入手が容易なブリキ板10で、フィルムラミネートの胴体部材1を作製でき、大量生産及び少量多品種生産の何れにも迅速かつ容易に対応できる。また、製造工程において離型層13が損傷する虞れが無く、容易に製造でき、品質も安定する。
【0046】
また、本発明の小動物用フード缶は、円筒状の胴体部材1と底部材2と蓋部材3の3ピースにて構成される小動物用フード缶であって、上記胴体部材1は、缶内面側Kaから、オレフィン・シリコーン共重合体の離型層13と、ポリオレフィン系樹脂の基材層12と、変性ポリオレフィンの熱融着層11と、ブリキ板10とを、順次、有するので、缶内面側Kaに接着剤やワックス剤、防錆剤や離型用溶剤、ラッカー等の溶剤が無く、その臭いや成分が小動物用フードにうつるのを防止できる。溶剤の混入の虞れが無く、安全性を向上できる。つまり、ミートリリース性や低臭性に優れると共に、環境面や健康面においても優れる。胴体部材1が主としてブリキ板10であり、入手が容易で、大量生産及び少量多品種生産の何れにも迅速かつ容易に対応できる。また、離型層13を損傷させずに製造でき、品質が安定する。
【符号の説明】
【0047】
1 胴体部材
2 底部材
3 蓋部材
5 ラミネートブリキ板
6 内面用フィルム
7 熱融着用フィルム
8 離型用フィルム
9 加圧熱ローラ
10 ブリキ板
10a 一面
11 熱融着層
12 基材層
13 離型層
Ka 缶内面側
図1
図2
図3
図4
図5
図6