特開2019-99342(P2019-99342A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-99342(P2019-99342A)
(43)【公開日】2019年6月24日
(54)【発明の名称】ワーク搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/80 20060101AFI20190603BHJP
【FI】
   B65G47/80 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-233414(P2017-233414)
(22)【出願日】2017年12月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000120249
【氏名又は名称】臼井国際産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】志村 文彦
【テーマコード(参考)】
3F072
【Fターム(参考)】
3F072AA17
3F072GD09
3F072GE05
3F072GG13
3F072HA10
3F072JA05
3F072KB03
3F072KB12
3F072KB19
3F072KB20
(57)【要約】
【課題】バッチ生産になってしまうような工程間に介在させることにより、不必要な在庫を持たない一個流し生産を可能にさせる、ワーク搬送装置を提供する。
【解決手段】ワーク受け2を縦軸Xの回りに等角度間隔をあけて複数備え、複数の該ワーク受け2をワーク受入位置P1とワーク取出位置P2とを含む循環経路Sに沿って前記縦軸Xを中心として循環移送可能な遊転式搬送部材3と、前記ワーク受入位置P1のワーク受け2に支持されるワークWの自重によって前記遊転式搬送部材3に回転力を生じさせる傾斜部4と、ワークWを支持した状態のワーク受け2が前記ワーク取出位置P2に到達したときに前記遊転式搬送部材3を停止させるストッパ12と、を備え、該ストッパ12によって前記遊転式搬送部材3が停止したときに前記ワーク受入位置P1にワーク受け2が位置するように構成される。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上昇位置へと戻るように常時付勢されるとともにワークの自重で下降するワーク受けを縦軸の回りに等角度間隔をあけて複数本備え、複数の該ワーク受けをワーク受入位置とワーク取出位置とを含む循環経路に沿って前記縦軸を中心として循環移送可能な遊転式搬送部材と、前記ワーク受入位置のワーク受けに支持されるワークの自重によって前記遊転式搬送部材に回転力を生じさせる傾斜部と、ワークを支持した状態のワーク受けが前記ワーク取出位置に到達したときに前記遊転式搬送部材を停止させるストッパであって、前記ワーク取出位置にあるワーク受けからワークを取り出すことによって解除されるストッパと、を備え、該ストッパによって前記遊転式搬送部材が停止したときに前記ワーク受入位置にワーク受けが位置するように構成されることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項2】
前記各ワーク受けに対応させて遊転ローラを配設し、該各遊転ローラが前記傾斜部上を転動することで前記遊転式搬送部材に回転力が付与されることを特徴とする請求項1に記載のワーク搬送装置。
【請求項3】
前記傾斜部が、前記ワーク受入位置に対応する位置から前記ワーク取出位置に対応する位置まで、前記縦軸を中心とする円弧に沿って延在することを特徴とする請求項1又は2に記載のワーク搬送装置。
【請求項4】
前記傾斜部が、前記ワーク受入位置に対応する位置から、少なくとも前記遊転式搬送部材の回転方向の一つ前方となるワーク受けに対応する位置まで、前記縦軸を中心とする円弧に沿って延在することを特徴とする請求項1又は2に記載のワーク搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク搬送装置に関し、特に、バッチ生産になってしまうような工程間に介在させることにより、不必要な在庫を持たない一個流し生産を可能にさせるサポート装置として用いるのに好適な、ワーク搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、一個流し生産は、加工待ち時間やセットアップなどの滞留時間を最小にできる点で、バッチ生産に対し優位性を有する。しかし、製造品目によっては、どうしてもバッチ生産にならざるを得ず、不要な在庫を持つことが避けられない場合もある。
【0003】
例えば、自動車部品の一例としてのファンクラッチの製造工程は、ワークとしてのファンクラッチケースに対してベアリングを結合させるために次の工程を含む。まず、オーブンにファンクラッチケースを入れてこれを加熱する(加熱工程)。加熱を行うことにより、ファンクラッチケースにおけるベアリング圧入穴の径が大きくなり、ベアリングの圧入性が良くなる。次いで、加熱されたファンクラッチケースにベアリングを圧入する(圧入工程)。圧入が終了したらファンクラッチケースの冷却を行い(冷却工程)、ファンクラッチケースがある程度冷えた後にシーミング(固定)加工を行う(シーミング工程)。これにより、ファンクラッチケースに対してベアリングが完全に固定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、前記加熱工程から前記圧入工程まではワークの一個流しが可能であったが、前記冷却工程にはある程度の滞留時間が必要なため、全体的にはどうしてもバッチ生産にならざるを得なかった。このため、不要な在庫を持つ結果となり、生産効率が悪いという問題があった。
また、冷却のためにはワークを滞留させるスペースが必要であるが、このスペースを節約するためにワーク同士を積み重ねて置いておくと、ワーク同士の接触によりワークにキズが付く等の問題もあった。
【0005】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたもので、バッチ生産になってしまうような工程間に介在させることにより、不必要な在庫を持たない一個流し生産を可能にさせる、ワーク搬送装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、上昇位置へと戻るように常時付勢されるとともにワークの自重で下降するワーク受けを縦軸の回りに等角度間隔をあけて複数本備え、複数の該ワーク受けをワーク受入位置とワーク取出位置とを含む循環経路に沿って前記縦軸を中心として循環移送可能な遊転式搬送部材と、前記ワーク受入位置のワーク受けに支持されるワークの自重によって前記遊転式搬送部材に回転力を生じさせる傾斜部と、ワークを支持した状態のワーク受けが前記ワーク取出位置に到達したときに前記遊転式搬送部材を停止させるストッパであって、前記ワーク取出位置にあるワーク受けからワークを取り出すことによって解除されるストッパと、を備え、該ストッパによって前記遊転式搬送部材が停止したときに前記ワーク受入位置にワーク受けが位置するように構成されることを特徴とするワーク搬送装置である。
本発明の第2の発明は、第1の発明の各ワーク受けに対応させて遊転ローラを配設し、該各遊転ローラが前記傾斜部上を転動することで前記遊転式搬送部材に回転力が付与されることを特徴とするワーク搬送装置である。
本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明の傾斜部が、前記ワーク受入位置に対応する位置から前記ワーク取出位置に対応する位置まで、前記縦軸を中心とする円弧に沿って延在することを特徴とするワーク搬送装置である。
本発明の第4の発明は、第1又は第2の発明の傾斜部が、前記ワーク受入位置に対応する位置から、少なくとも前記遊転式搬送部材の回転方向の一つ前方となるワーク受けに対応する位置まで、前記縦軸を中心とする円弧に沿って延在することを特徴とするワーク搬送装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の第1の本発明によれば、全てのワーク受けにワークが支持されるまでは、ワーク受入位置にあるワーク受けにワークを支持させると、ワークの自重と傾斜部との相互作用によって遊転式搬送部材が縦軸を中心として自転する。そこで、ワーク受入位置においてワーク受けに次々とワークを支持させることで、ワーク受けの数だけ遊転式搬送部材上にワークを滞留させることができる。
最先にワークを支持させたワーク受けがワーク取出位置に到達すると、ストッパの作用で遊転式搬送部材が停止される。このとき、ワーク受入位置にはワーク受けが位置している。ワーク受入位置にあるワーク受けにワークを支持させても、ストッパが効いているので遊転式搬送部材は不動である。ここで、ワーク受入位置にあるワーク受けにワークを支持させたままの状態で、ワーク取出位置にあるワーク受けからワークを取り出す。これによりストッパが解除されるので、遊転式搬送装置が自転する。この自転は、次のワーク受けがワーク取出位置に到達したところで停止する。前記自転によって、ワーク取出位置にあったワーク受けがワーク受入位置へと移動する。
以後、ワーク受入位置にあるワーク受けへのワークの支持と、ワーク取出位置にあるワーク受けからのワークの取り出しとを交互に繰り返すことにより、ワークをワーク受入位置からワーク取出位置へと間歇的且つ連続的に搬送することができる。
本発明によれば、遊転式搬送部材上にワークが滞留するが、該ワークは先に支持されたものから順次取り出されるので、ワークの連続的な一個流しが可能となる。また、遊転式搬送部材上に滞留するワークに対してその滞留時間を利用して何等かの処理を施すことが可能である。
さらに、本発明によれば、ワークの自重で遊転式搬送部材に回転力が付与されるので、電動モータやシリンダ等の駆動源を用いる必要がない。このため、ワーク搬送装置の構造をシンプルにすることができ、コストも低減できる。
さらにまた、本発明によれば、縦軸を中心として遊転式搬送部材が回転するので、ワークの滞留スペースが少なくて済む。
【0008】
本発明の第2の本発明によれば、各遊転ローラが傾斜部上を転動することで遊転式搬送部材に回転力が付与されるので、回転力の発生及び伝達効率が良い。
また、本発明の第3及び第4の本発明によれば、最後の1個のワークがワーク取出位置に到達するまで、遊転式搬送部材の間歇的な自転が続く。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の一形態に係るワーク搬送装置を含む製造工程の一例の説明図である。
図2】本発明の実施の一形態に係るワーク搬送装置の全体斜視図である。
図3図2のワーク搬送装置における回転テーブルとアームとワーク受けと固定テーブルとの関係を示す側面図であり、(a)はワーク受けにワークが載置されていない状態、(b)はワーク受けにワークが載置された状態を示している。
図4図2のワーク搬送装置における傾斜部と固定テーブルと遊転ローラとの関係を示す側面図である。
図5】ワーク取出位置からワーク受入位置へとワーク受けが移動する際の遊転ローラの移動の軌跡を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態では、図1に示すように、背景技術の項で述べた自動車部品の一例としてのファンクラッチの製造工程の一部をなすように配置したワーク搬送装置1を例に挙げて説明する。但し、本発明のワーク搬送装置の利用方法が本実施の形態のものに限定されないことは勿論である。
【0011】
図1に示すように、ファンクラッチの製造工程は、オーブンにファンクラッチケースを入れてこれを加熱する加熱工程Aと、加熱されたファンクラッチケースにベアリングを圧入する圧入工程Bと、圧入が終了したファンクラッチケースを冷却する冷却工程Cと、冷却工程後のシーミング(固定)工程Dと、を含む。本実施の形態のワーク搬送装置1は、冷却工程Cを担うように、圧入工程Bとシーミング工程Dとの間に配置される。そして、ワーク搬送装置1は、圧入工程Bを終えたワークWを冷却に必要な時間だけ滞留させつつも、不必要な在庫を持たないワークWの一個流しが実現できるように製造工程をサポートする。
【0012】
図2に示すように、本実施の形態のワーク搬送装置1は、複数のワーク受け2、2、2・・・をワーク受入位置P1とワーク取出位置P2とを含む循環経路Sに沿って縦軸Xを中心として循環移送可能な遊転式搬送部材3と、前記ワーク受入位置P1のワーク受け2に支持されるワークWの自重によって前記遊転式搬送部材3に回転力を生じさせる傾斜部4と、ワークWを支持した状態のワーク受け2が前記ワーク取出位置P2に到達したときに前記遊転式搬送部材3を停止させるストッパ12と、を備える。
遊転式搬送部材3は、脚部5aによって水平に支持される固定テーブル5上に設けられている。この固定テーブル5の中央に、水平回転可能な回転テーブル6が配設される。この回転テーブル6は、固定テーブル5よりも小さく、且つ、固定テーブル5よりも高い位置にあり、回転テーブル6の中央の縦軸Xを中心として自由に水平回転できる。
回転テーブル6には、ワーク受け2の数に対応する複数本のアーム7が、相互間に等角度間隔をあけて放射状に配設される。アーム7の本数は、図示例では、ワーク受け2の数に対応して6本とされているが、これより多くても少なくてもよい。図3に示すように、各アーム7の基部7aは、水平な枢支軸8によって回転テーブル6に連結される。これにより、各アーム7は、枢支軸8を中心として上下に揺動可能である。
【0013】
図2及び図3に示すように、各アーム7の先端部7bには、ワーク受け2が固定される。各ワーク受け2は、固定テーブル5の外方へと突出して位置する。各ワーク受け2の上に、ワークWとしてのベアリング圧入済みファンクラッチケースを安定的に載置することができる。ワーク受け2の具体的態様は、図示例の載置式のものには限定されず、フック状であってワークWを掛止する方式等、ワークWの具体的形態に応じた適宜の態様とすることができる。
各アーム7には、ワーク受け2に対応させて、ワーク受け2とアーム7の基部7aとの間に、遊転ローラ9が配設される。各遊転ローラ9は、各アーム7を中心として自由に回転できる。各遊転ローラ9は、前記傾斜部4上を転がり落ちるとともに、回転テーブル6の回転に伴って固定テーブル5上を転動する。
【0014】
各アーム7は、各ワーク受け2が上昇位置へと戻るように、付勢部材の一例としての引張コイルばね10で常時付勢される。各ワーク受け2の上昇位置は、一例として図3(a)に示すように、ワークWの受け入れに適するようにワーク受け2が略水平となる高さ位置である。回転テーブル6上にアーム7の本数と同数のばね受け支柱11が立設され、各ばね受け支柱11の上端部と各アーム7との間に各引張コイルばね10が架設される。各アーム7と回転テーブル6との間に図示しない適宜の規制部材を設けることにより、各ワーク受け2を上昇位置に保持させることができる。
【0015】
図3(b)に示すように、各ワーク受け2の上にワークWが載置されることにより、ワークWの自重で引張コイルばね10が伸びて、各ワーク受け2が下降する。各ワーク受け2は、各遊転ローラ9が固定テーブル5に当接することで下降を停止する。各ワーク受け2からワークWを取り出すと、ワークWの自重を失うことで引張コイルばね10の付勢力が勝り、各ワーク受け2が図3(a)の上昇位置に戻される。
【0016】
図2に示すように、前記固定テーブル5上には、前記傾斜部4が配設される。この傾斜部4は、ワーク受入位置P1のワーク受け2に支持されるワークWの自重によって遊転式搬送部材3に回転力を生じさせるものである。
図2の例では、ワーク受け2の循環経路S上において、ワーク受け2の符号P1で示す位置がワーク受入位置とされ、このワーク受入位置P1よりも遊転式搬送部材3の回転方向(図2の時計回り方向)の一つ後方となるワーク受け2の位置が、ワーク取出位置P2とされている。ワークWは、ワーク受入位置P1において作業者M(図1参照)の手でワーク受け2に載置され、遊転式搬送部材3の回転によって固定テーブル5の回りを一周回った後に、ワーク取出位置P2において作業者Mの手でワーク受け2から取り出される。
【0017】
図2及び図4に示すように、傾斜部4は、遊転式搬送部材3の回転方向の前方へ向かう滑らかな下り勾配となっており、上から見ると、遊転式搬送部材3の回転の中心となる縦軸Xを中心として円弧状に延びている。図4に示すように、傾斜部4の上端部4aは、ワーク受入位置P1に位置するワーク受け2に対応する遊転ローラ9の真下位置よりも遊転式搬送部材3の回転方向の後方にある。また、傾斜部4の下端部4bは、固定テーブル5の上面に滑らかに連続している。
ワーク受入位置P1にあるワーク受け2にワークWを載置すると、ワークWの自重でワーク受け2が上昇位置から下降し、アーム7に支持されている遊転ローラ9が傾斜部4に当接する(図5の遊転ローラ9d参照)。そして、図4に示すように、ワークWの自重で遊転ローラ9が傾斜部4上を転がり落ち、これに伴って、アーム7を介して回転テーブル6に回転力が付与される。遊転ローラ9が傾斜部4上を転動することで遊転式搬送部材3に回転力が生ずるので、回転力の発生及び伝達効率が良い。
【0018】
また、図2に示すように、固定テーブル5上には、前記ストッパ12が配設される。このストッパ12は、ワークWを支持した状態のワーク受け2がワーク取出位置P2に到達したときに遊転式搬送部材3の回転を停止させる。また、ストッパ12は、ワーク取出位置P2にあるワーク受け2からワークWを取り出したときに、引張コイルばね10の付勢力でアーム7が上昇することによって解除される。
具体的には、図2及び図5に示すように、固定テーブル5上であってワーク取出位置P2に対応する位置に、遊転ローラ9に当接して該遊転ローラ9の転動通過を阻止するストッパ12を設ける。ワークWを支持した状態のワーク受け2がワーク取出位置P2に到達すると、そのワーク受け2に対応する遊転ローラ9がストッパ12に当接し(図5の遊転ローラ9a参照)、遊転式搬送部材3の回転が停止される。そして、ワーク取出位置P2のワーク受け2からワークWが取り出されると、引張コイルばね10の付勢力でアーム7が上方へと揺動し、遊転ローラ9がストッパ12に非当接の位置まで上昇する(図5の遊転ローラ9b参照)。これによりストッパ12が解除され、遊転式搬送部材3の回転が可能となる。
なお、ストッパ12は、遊転ローラ9に当接するものには限定されず、アーム7やワーク受け2等、ワーク取出位置P2にあるワーク受け2からワークWを取り出したときに、引張コイルばね10の付勢力で上昇する部分に当接するように配設されていればよい。
【0019】
図2に示すように、冷却風の供給部13を、ワーク受け2の循環経路S上におけるワーク受け2の一時停止位置に向けて設けておくと、ワーク搬送中にワークWの冷却が促進されて好適である。図2には、図示簡略化のため、冷却風の供給部13を一個だけ図示してあるが、ワーク受入位置P1とワーク取出位置P2とを除くワーク受け2の一時停止位置のすべてに向けて冷却風の供給部13を設けておくのが望ましい。
【0020】
前記のように構成されるワーク搬送装置1の動作は、次の通りである。
図1を参照して、ワーク受け2に全くワークが載っていない状態において、作業者は、ワークW(ベアリング圧入が完了したファンクラッチケース)をワーク受入位置P1のワーク受け2に載せる。すると、ワークWの自重でアーム2が下降し、図4に示すように、遊転ローラ9が傾斜部4上を転がり落ちる。これにより、遊転式搬送部材3に回転力が生じ、遊転式搬送部材3が縦軸Xを中心として図2の時計回り方向へと自転する。
作業者Mは、全てのワーク受け2にワークWが支持されるまで、ワーク受入位置P1のワーク受け2に、ベアリング圧入が終わったワークWを順次支持させる。傾斜部4を転がり落ちた遊転ローラ9は、遊転式搬送部材3の自転によって、固定テーブル5上を転動する。このように、ワーク受入位置P1においてワーク受け2に次々とワークWを支持させることで、ワーク受け2の数だけ遊転式搬送部材3上にワークWを滞留させることができる。
図2に示すように、最先にワークWを支持させたワーク受け2がワーク取出位置P2に到達すると、対応する遊転ローラ9がストッパ12に当接(図5の遊転ローラ9a参照)して遊転式搬送部材3が停止される。ストッパ12が効いている間は、ワーク受入位置P1にあるワーク受け2にワークWが載置されても、遊転式搬送部材3は不動である。
【0021】
ここで、作業者Mは、ワーク受入位置P1にあるワーク受け2にワークWを支持させたままの状態で、ワーク取出位置P2にあるワーク受け2からワークWを取り出す。このとき、ワークWの自重を失ったアーム7が引張コイルばね10の付勢力によって上昇するので、対応する遊転ローラ9もストッパ12に非当接の高さまで上昇(図5の遊転ローラ9b参照)し、ストッパ12が解除される。その結果、ワーク受入位置P1にあるワーク受け2上のワークWの自重によって、対応する遊転ローラ9が傾斜部4上を転がり落ちる。これにより、遊転式搬送装置3が縦軸Xを中心として自転する。この自転は、次のワーク受け2がワーク取出位置P2に到達したところで停止する。前記自転によって、ワーク取出位置P2にあったワーク受け2がワーク受入位置P1へと移動し、対応する遊転ローラ9がワーク受け2のワーク受入位置P1に対応する位置まで移動する(図5の遊転ローラ9c参照)。
作業者Mは、図1に示すように、ワーク取出位置P2のワーク受け2から取り出したワークWに対してシーミング処理を施し、処理済み品を次工程へと供給する。
【0022】
続いて作業者Mは、次のファンクラッチケースへのベアリングの圧入作業を行い、この作業を終えたワークWを、ワーク受入位置P1に待機しているワーク受け2上に載置する。これにより、ワークWの自重でワーク受け2が下降し、対応する遊転ローラ9が傾斜部4に当接するまで下降する(図5の遊転ローラ9d参照)。このとき、一つ手前のワーク受け2に対応する遊転ローラ9がワーク取出位置P2でストッパ12に当接しているので、遊転式搬送部材3の回転は阻止されており、ワーク受入位置P1のワーク受け2に対応する遊転ローラ9は傾斜部4上で停止したままとなる。
次に、作業者Mは、ワーク取出位置P2で待機しているワーク受け2からワークWを取り出す。これにより、ストッパ12が解除されるので、ワーク受入位置1のワーク受け2に対応する遊転ローラ9が傾斜部4上を転がり落ち(図5の遊転ローラ9e参照)、遊転式搬送部材3が自転する。この自転は、次のワーク受け2がワーク取出位置P2に到達したところで停止する。
作業者Mは、ワーク取出位置P2のワーク受け2から取り出したワークWに対してシーミング処理を施し、処理済み品を次工程へと供給する。
以後、作業者Mは、ファンクラッチケースへのベアリングの圧入→このワークWをワーク受入位置P1にあるワーク受け2へ載置→ワーク取出位置P2にあるワーク受け2からのワークWの取り出し→取り出したワークWのシーミング処理→ファンクラッチケースへのベアリングの圧入・・・の順で作業を繰り返すことにより、ワークWをワーク受入位置P1からワーク取出位置P2へと間歇的且つ連続的に搬送することができる。そして、ワーク受け2に載置されたワークWは、ワーク受入位置P1からワーク取出位置P2まで途中で一時停止を繰り返しながら移動する間に、冷却風の供給部13から供給される冷却風によって効率的に冷却される。
【0023】
前記ワーク搬送装置1によれば、遊転式搬送部材3上にワークWが滞留するが、該ワークWは先に載置されたものから順次取り出されるので、ワークWの連続的な一個流しが可能となる。また、遊転式搬送部材3上に滞留するワークWに対して、その滞留時間を利用して冷却処理を施すことが可能である。ワークの滞留時間は、ワーク受け2の数を増やすことでより長くすることができる。
さらに、前記ワーク搬送装置1によれば、ワークWの自重で遊転式搬送部材3に回転力が付与されるので、電動モータやシリンダ等の駆動源を用いる必要がない。このため、ワーク搬送装置1の構造をシンプルにすることができ、コストも低減できる。
さらにまた、縦軸Xを中心として遊転式搬送部材3が回転するので、ワークWの滞留スペースが少なくて済む。
なお、本実施の形態では、ワーク搬送装置1をワークWの冷却工程で使用しているが、このワーク搬送装置1は、ワークWに塗布した接着剤の乾燥工程等、ワークWを一個流ししながらワークWに対して一定の時間何等かの処理を施したい場合に広く利用することができる。
【0024】
また、他の実施の形態として、前記傾斜部4を、ワーク受入位置P1に対応する位置からワーク取出位置P2に対応する位置まで、前記縦軸Xを中心とする円弧に沿って延在させることもできる。このようにすれば、ワーク取出位置P2のワーク受け2からワークWを取り出し続けることで、ワーク受入位置P1のワーク受け2に最後に載置したワークWがワーク取出位置P2に到達するまで、遊転式搬送部材3の間歇的な自転が続くことになる。
【符号の説明】
【0025】
1 ワーク搬送装置
2 ワーク受け
3 遊転式搬送部材
4 傾斜部
4a 上端部
4b 下端部
5 固定テーブル
5a 脚部
6 回転テーブル
7 アーム
7a アームの基部
7b アームの先端部
8 枢支軸
9 遊転ローラ
10 引張コイルばね(付勢部材)
11 ばね受け支柱
12 ストッパ
13 冷却風の供給部
P1 ワーク受入位置
P2 ワーク取出位置
M 作業者
W ワーク
X 縦軸(遊転式搬送部材の回転の中心)
図1
図2
図3
図4
図5