【実施例】
【0032】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例における部および%は、特記しない限り重量基準である。
【0033】
本実施例においては、ギヌラについて、(1)免疫誘導反応の検討、(2)自然免疫反応及び獲得免疫反応の検討、(3)がん細胞への細胞障害活性の検討を行った。
(1) 免疫誘導反応の検討
(検体の調製)
免疫誘導反応の検討に用いるギヌラの葉の検体としては下記の4種類を調製した。
【0034】
検体A.採取されたギヌラ(Gynura procumbens)の葉を20〜30℃、相対湿度10%以下の条件にて低温除湿乾燥させた。低温除湿乾燥後のギヌラの葉を20〜30℃にて粉砕し、超純水に加えて検体を得た。
【0035】
検体B.採取されたギヌラ(Gynura procumbens)の葉を室温(25℃程度)で低速ジューサーにかけ、得られた液体および繊維質の両方を用いて、検体とした。
【0036】
検体C.採取されたギヌラ(Gynura procumbens)の葉を室温(25℃程度)で低速ジューサーにかけ、得られた液体および繊維質のうち、液体のみを用いて、検体とした。
検体D.検体Bを凍結し、その後解凍し、検体とした。
また、ビワの葉、クマ笹の葉、明日葉の葉、ドクダミの葉については、葉のまま検体として用いた。
【0037】
(免疫誘導反応の検討)
検体A〜D、ビワの葉、クマ笹の葉、明日葉の葉及びドクダミの葉の検体をそれぞれ1/10000に希釈し、マウス脾臓細胞に添加し、その際のサイトカイン−mRNA量の変動を定量PCR法により検討した。
【0038】
より具体的には、6種のサイトカイン−mRNAの変動を(i)免疫誘導反応剤なし、(ii)免疫誘導反応剤としてコンカナバリンA(ConA)2μg/mL、(iii)リポポリサッカライド(LPS)1μg/mL用いた場合について、検討を行った。また、これらの(i)〜(iii)を、上記検体を加えずに行った場合(以下、「薬物刺激のみ」という。)についても検討を行った。
【0039】
また、サイトカインとしては、IL1a,IFN,TNF,IL4,IL12,IL2の6種類について検討を行った。結果を
図1〜3に示す。なお、細胞内に定常的に発現しているmRNA(GAPDH)を基準にその相対的発現量との差をDelta Ct値(PCRサイクル数の差)として示した。結果を
図1〜3に示す。
【0040】
図1〜3より、IL1a,IFN,IL4における上昇度合いから、ギヌラの葉の検体(検体A〜D)においては、低温除湿乾燥後に粉砕を行う検体Aが免疫反応を引き起こす有効成分を効率よく抽出できる、または保持することができるものであると考えられる。また、IL1a,IFN,IL4における上昇度合いから、クマ笹の葉及びドクダミの葉の検体については、その作用が強いことが示唆された。
【0041】
(2) 自然免疫反応及び獲得免疫反応の検討
(検体の調製)
自然免疫反応及び獲得免疫反応の検討に用いるギヌラの葉の検体は、上記免疫誘導反応の検討に用いる検体Aを用いた(以下、この項においては、「ギヌラの葉の検体」という)。
【0042】
また、ドクダミの葉、オリーブの葉についても検体として用いた。また、フコイダンについても、ギヌラの葉の検体の濃度と同等の濃度となるように検体を調製した。
【0043】
(自然免疫反応の検討)
マウスからマクロファージを単離し、各検体をそれぞれ1/100、1/1000、1/10000および1/100000に希釈し添加した後、一定量の蛍光ビーズを添加し8時間培養した。そして、培養したマクロファージを蛍光顕微鏡で観察し、取り込まれた蛍光ビーズ量を蛍光量として数値化した。
【0044】
検体としては、ギヌラの葉、ドクダミの葉、オリーブの葉およびフコイダンの検体、さらに前記4種の混合検体を用いた。また、これらの検体を用いないControlについても検討を行った。
【0045】
また、数値化としては、蛍光顕微鏡を用いて蛍光ビーズの取り込みの状態を示す画像を取得し、画像中、一定の蛍光輝度以上の総面積に基づいて数値化処理を行った。結果を
図4に示す。
図4においては、各検体について添加量(希釈倍率)ごとに数値化した取り込み蛍光量をヒストグラムにて示した。
【0046】
(獲得免疫反応の検討)
マウス脾臓リンパ球(CD4+T細胞)を単離し、各検体をそれぞれ1/100、1/1000および1/10000に希釈し添加した後、1週間培養した。T細胞がIFN−γを産生するようになるとTh1細胞に、T細胞がIL−4を産生するようになるとTh2細胞に分化したことがそれぞれ示される。
【0047】
従って、培養後、IFN−γを産生するリンパ球をTh1、IL−4を産生するリンパ球をTh2とし、それぞれの存在を、蛍光標識抗体を用いて測定した。測定結果から各検体について、希釈倍率毎にTh1/Th2の比率を求めた。結果を
図5に示す。なお、
図5の混合検体の希釈倍率10000倍のデータについては、Th1/Th2が94.5であったが、
図5の見易さの観点から表示を省略した。
【0048】
図4および
図5からギヌラの葉の検体は、自然免疫反応よりも獲得免疫反応に強く働きかけることが明らかになった。このことから、キラーT細胞、ナチュラルキラー細胞等を活性化している、または腫瘍細胞への殺細胞効果などが認められれば、抗腫瘍効果が認められると考えられる。
【0049】
(3) がん細胞への細胞障害活性の検討
(検体の調製)
がん細胞への細胞障害活性の検討に用いるギヌラの葉の検体は、上記免疫誘導反応の検討における検体Aを用いた。(以下、この項においては、「ギヌラの葉の検体」という)
【0050】
また、ドクダミの葉、オリーブの葉についても検体として用いた。また、フコイダンについても、ギヌラの葉の検体の濃度と同等の濃度となるように検体を調製した。
【0051】
(がん細胞に対する直接的殺細胞効果の検討)
がん細胞を培養し、直接それぞれの検体を添加した際の細胞を死滅させる殺細胞効果を検討した。がん細胞としては3種類について検討を行い、固形がん、血液系がん、表皮がんの代表的なマウスがん細胞株を用いた(CT−26;大腸がん、EL−4;リンパ腫、B16 mel;メラノーマ)。なお、検体としては、ギヌラの葉、ドクダミの葉、オリーブの葉およびフコイダンの検体、さらに前記4種の混合検体を用いた。結果を
図6に示す。
【0052】
各検体ともEL−4、B16 melに対しては効果を示さなかったが、CT−26に対して若干の効果が認められた。特にオリーブの葉およびドクダミの葉の検体においてその効果は強かった。
【0053】
(キラー細胞、ナチュラルキラー細胞の活性化を介するがん細胞障害活性の検討)
マウス脾臓から単離したリンパ球に各種検体を添加し、1週間培養した。その後、別途培養した3種のがん細胞をそれぞれ培養したリンパ球と併せて培養を継続した。ここで、キラー活性が誘導されると、リンパ球はがん細胞を障害する。このことを測定するために、細胞障害活性測定キット(Takara製 LDH Cytoxicity Detection Kit)を用いて測定した。
【0054】
なお、検体としては、ギヌラの葉、ドクダミの葉、オリーブの葉およびフコイダンの検体、さらに前記4種の混合検体を用いた。また、検体として、Controlについても用いた。がん細胞としては、CT−26、EL−4およびB16 melを用いた。
【0055】
また、リンパ球としては、3種がん細胞に適応する種と不適応な種からそれぞれ単離した。適応リンパ球によってがん細胞が障害され、かつ不適応リンパ球ではがん細胞が障害されないことが、がん特異的キラー活性の誘導と考えることができる。結果をControlに対する割合として
図7に示す。
【0056】
図7に示すように適応リンパ球におけるキラー活性が認められ、不適応リンパ球におけるキラー活性が認められないものとは、ギヌラの葉、ドクダミの葉およびオリーブの葉(実)の検体であり、その作用は共通してCT−26に対して強く、また、B16 melではギヌラの葉の検体にのみ効果が認められた。また、全体的に作用が最も強かったのは、ギヌラの葉の検体であった。
なお、4種の混合検体では、フコイダンが他検体の効果を阻害するような結果となった。