(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-99487(P2019-99487A)
(43)【公開日】2019年6月24日
(54)【発明の名称】白色着色剤組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/29 20060101AFI20190603BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20190603BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20190603BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20190603BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20190603BHJP
【FI】
A61K8/29
A61K8/86
A61K8/36
A61K8/81
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-230707(P2017-230707)
(22)【出願日】2017年11月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】田尾 充
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB241
4C083AB242
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC791
4C083AC792
4C083AC841
4C083AC842
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD091
4C083AD092
4C083BB23
4C083BB25
4C083CC25
4C083DD17
4C083EE01
4C083EE03
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】浴室内等の比較的高温条件下で保管した場合であっても併用するタール色素の退色が抑制されるとともに、浴湯に投入した際の白濁性に優れた入浴剤用の白色着色剤組成物を提供する。
【解決手段】入浴剤用の白色着色剤組成物である。平均粒子径0.2〜0.7μmの酸化チタンと、酸化チタンの表面を被覆する被覆成分とを含み、被覆成分が、重量平均分子量10,000以上のポリエチレングリコール、脂肪酸石鹸、及びポリアクリル酸塩を含有する、その平均粒子径が50〜350μmの粉末又は粒状物等であり、タール色素と組み合わせて用いることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入浴剤用の白色着色剤組成物であって、
平均粒子径0.2〜0.7μmの酸化チタンと、前記酸化チタンの表面を被覆する被覆成分とを含み、
前記被覆成分が、重量平均分子量10,000以上のポリエチレングリコール、脂肪酸石鹸、及びポリアクリル酸塩を含有する白色着色剤組成物。
【請求項2】
前記ポリエチレングリコールの重量平均分子量が、12,500を超えて100,000以下である請求項1に記載の白色着色剤組成物。
【請求項3】
その平均粒子径が50〜350μmの粉末又は粒状物である請求項1又は2に記載の白色着色剤組成物。
【請求項4】
タール色素と組み合わせて用いる請求項1〜3のいずれか一項に記載の白色着色剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の白色着色剤組成物の製造方法であって、
前記酸化チタン、前記ポリエチレングリコール、前記脂肪酸石鹸、及び前記ポリアクリル酸塩を含有する含水原料を、水分を揮発させながら加熱混錬した後、冷却して固化物を得る工程と、
得られた前記固化物を粉砕する工程と、を有する白色着色剤組成物の製造方法。
【請求項6】
前記含水原料に含まれる水の量が、前記ポリエチレングリコール100質量部に対して、10〜20質量部である請求項5に記載の白色着色剤組成物の製造方法。
【請求項7】
前記ポリアクリル酸塩の水溶液を用いて前記含水原料を調製する請求項5又は6に記載の白色着色剤組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴剤に用いられる白色着色剤組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肩こり・腰痛などの諸症状の緩和、疲労回復、気分転換、癒し、リラックス、及び肌触り向上などを目的とし、温泉や鉱泉の成分を有効成分とするとともに、色素や香料などをさらに添加した入浴剤が浴湯に使用されている。このような入浴剤の一種として、温泉の濁りを再現すべく、白色の着色剤組成物を配合した入浴剤も上市されている。
【0003】
このような白色の着色剤組成物としては、例えば、無機顔料粉末である酸化チタンを、水溶性高分子であるポリエチレングリコールや、脂肪酸石鹸などの各種成分で被覆したものが知られている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2552617号公報
【特許文献2】特許第2984717号公報
【特許文献3】特開2002−53456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ポリエチレングリコールを多く用いて得た白色の着色剤組成物を青色1号や黄色4号等のタール色素と組み合わせた(併用・混合した)入浴剤を、例えば、浴室内等の比較的高温な環境下で保管すると、タール色素が顕著に退色してしまい、本来の色味が損なわれるといった問題があった。一方、脂肪酸石鹸を多く用いて得た白色の着色剤組成物をタール色素と組み合わせた入浴剤については、タール色素の退色はさほど問題にはならない。しかし、酸化チタンと加熱混錬する際に石鹸特有の滑りが発生しやすく、十分なせん断応力を付与することができない場合がある。このため、酸化チタンの分散性が不十分になりやすいといった問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、浴室内等の比較的高温条件下で保管した場合であっても併用するタール色素の退色が抑制されるとともに、浴湯に投入した際の白濁性に優れた入浴剤用の白色着色剤組成物を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記の白色着色剤組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、所定の分子量以上のポリエチレングリコール、脂肪酸石鹸、及びポリアクリル酸塩を含有する材料によって、所定粒子径の酸化チタンを水分の存在下で加熱混錬して被覆することで上記の課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示す白色着色剤組成物が提供される。
[1]入浴剤用の白色着色剤組成物であって、平均粒子径0.2〜0.7μmの酸化チタンと、前記酸化チタンの表面を被覆する被覆成分とを含み、前記被覆成分が、重量平均分子量10,000以上のポリエチレングリコール、脂肪酸石鹸、及びポリアクリル酸塩を含有する白色着色剤組成物。
[2]前記ポリエチレングリコールの重量平均分子量が、12,500を超えて100,000以下である前記[1]に記載の白色着色剤組成物。
[3]その平均粒子径が50〜350μmの粉末又は粒状物である前記[1]又は[2]に記載の白色着色剤組成物。
[4]タール色素と組み合わせて用いる前記[1]〜[3]のいずれかに記載の白色着色剤組成物。
【0009】
また、本発明によれば、以下に示す白色着色剤組成物の製造方法が提供される。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の白色着色剤組成物の製造方法であって、前記酸化チタン、前記ポリエチレングリコール、前記脂肪酸石鹸、及び前記ポリアクリル酸塩を含有する含水原料を、水分を揮発させながら加熱混錬した後、冷却して固化物を得る工程と、得られた前記固化物を粉砕する工程と、を有する白色着色剤組成物の製造方法。
[6]前記含水原料に含まれる水の量が、前記ポリエチレングリコール100質量部に対して、10〜20質量部である前記[5]に記載の白色着色剤組成物の製造方法。
[7]前記ポリアクリル酸塩の水溶液を用いて前記含水原料を調製する前記[5]又は[6]に記載の白色着色剤組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、浴室内等の比較的高温条件下で保管した場合であっても併用するタール色素の退色が抑制されるとともに、浴湯に投入した際の白濁性に優れた入浴剤用の白色着色剤組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上記の白色着色剤組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<白色着色剤組成物>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の白色着色剤組成物(以下、単に「着色剤組成物」とも記す)は入浴剤用の白色着色剤組成物であり、酸化チタンと、この酸化チタンの表面を被覆する被覆成分とを含む。
【0012】
本発明の着色剤組成物は、平均粒子径0.2〜0.7μmの酸化チタンを着色剤として含有する、粉末状や固形錠剤状の入浴剤に適用可能な白色着色剤組成物であり、例えば、その平均粒子径が50〜350μmの粉末又は粒状物である。酸化チタンの平均粒子径が0.2μm未満であると、浴湯の白濁化が不十分になる。一方、酸化チタンの平均粒子径が0.7μm超であると、浴湯中での分散安定性が不十分になる。
【0013】
酸化チタンの結晶構造は、ルチル型及びアナターゼ型のいずれであってもよい。さらに、予め表面処理を施した酸化チタンを用いることもできる。酸化チタンの表面処理とは、媒体への親和性を付与すべく、又は表面の活性サイトを被覆して耐久性を付与すべく、酸化チタンに一般的に施される処理をいう。なお、着色剤組成物中の酸化チタンの含有量は、50〜80質量%であることが好ましく、60〜70質量%であることがさらに好ましい。
【0014】
本発明の着色剤組成物は、酸化チタンの表面を被覆する被覆成分を含有する。そして、この被覆成分は、ポリエチレングリコール、脂肪酸石鹸、及びポリアクリル酸塩を含有する。
【0015】
ポリエチレングリコールは、水溶解性及び皮膚の保湿性などの特性を有する、入浴剤に一般的に配合されている水溶性高分子である。前述の通り、ポリエチレングリコールを用いた着色剤組成物とタール色素とを併用した入浴剤を浴室内で保管すると、タール色素が退色するといった問題が生ずることがあった。特に、タール色素のなかでも青色1号を用いた入浴剤については、退色が顕著であった。このようなタール色素の退色は、以下のようなメカニズムによって生ずるものと本発明者らは推測している。
【0016】
ポリエチレングリコールは、それ自身が酸化劣化することによりエーテル結合が分解され、ラジカルやアルデヒドを発生させる。また、ポリエチレングリコールの酸化劣化は温度の影響を受けやすく、高温条件下で酸化劣化しやすい。このため、温度が上昇しやすい浴室内に入浴剤を保管した場合、ポリエチレングリコールの酸化劣化が顕著に進行する。一方、タール色素の退色は、ラジカルやアルデヒドにより構造が分解されて生ずると考えられる。すなわち、ポリエチレングリコールの酸化劣化によって発生するラジカルやアルデヒドによりタール色素が分解され、タール色素が退色すると推測される。なお、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエンなどの酸化防止剤を添加して、ポリエチレングリコールの酸化劣化を抑制することも考えられる。しかし、このような酸化防止剤を添加した場合であっても、併用するタール色素の退色を抑制することは困難である。
【0017】
ポリエチレングリコールの酸化劣化の進行度は、ポリエチレングリコールの分子量が大きいほど遅くなる。詳細は明らかではないが、ポリエチレングリコールの分子鎖の末端エチレンオキサイドの内部又は近傍で過酸化反応が連続的に起こり、エーテル結合の開裂により分子鎖が徐々に短くなり、ラジカルやアルデヒドを発生させながら最終的に劣化すると考えられる。単位体積あたりの分子数は、低分子量のポリエチレングリコールの方が多い。また、低分子量のポリエチレングリコールの方が、酸素と接触する分子が多い。このため、酸化劣化によるラジカルやアルデヒドの単位時間当たりの発生量は、低分子量のポリエチレングリコールの方が多い。すなわち、分子鎖が長く、分子量の大きいポリエチレングリコールの方が、ラジカルやアルデヒドの発生量が少なくなる。
【0018】
以上のような検討結果の下、本発明者らは、分子量の比較的大きいポリエチレングリコールを用いることで、ポリエチレングリコールの単位体積あたりの酸化劣化の進行度を遅らせ、ラジカルやアルデヒドの発生を抑制して、タール色素の退色を抑制しうることを見出した。具体的には、本発明の着色剤組成物に用いるポリエチレングリコールの、ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定される重量平均分子量は10,000以上であり、好ましくは12,500を超えて100,000以下、さらに好ましくは15,000〜50,000である。重量平均分子量10,000以上のポリエチレングリコールを含有する被覆成分を用いて酸化チタンの表面を被覆することで、併用するタール色素の退色を有効に抑制することができる。なお、着色剤組成物中のポリエチレングリコールの含有量は、10〜30質量であることが好ましく、15〜25質量%であることがさらに好ましい。
【0019】
ところで、その分子構造中にエーテル結合を有する化合物は、その程度に差はあるものの、前述のようなメカニズムによりエーテル結合が開裂する。一般的な入浴剤などに用いられる、その分子構造中にエーテル結合を有する化合物としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノエステルなどのエーテル型の非イオン性界面活性剤を挙げることができる。このようなエーテル型の非イオン性界面活性剤についても酸化劣化によりラジカルやアルデヒドがある程度発生するため、併用したタール色素が退色しやすくなる場合がある。このため、本発明の着色剤組成物は、エーテル型の非イオン性界面活性剤を実質的に含有しないことが好ましい。
【0020】
酸化チタンの表面を被覆する被覆成分は、脂肪酸石鹸を含有する。脂肪酸石鹸としては、飽和脂肪酸の塩や一価の不飽和脂肪酸の塩が、酸化されにくいために好ましい。脂肪酸石鹸としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムなどを挙げることができる。これらの脂肪酸石鹸は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、着色剤組成物中の脂肪酸石鹸の含有量は、10〜30質量%であることが好ましく、15〜25質量%であることがさらに好ましい。
【0021】
被覆成分は、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸塩を含有する。ポリアクリル酸塩は、入浴剤中の無機物の分散性を向上させるとともに、浴湯の保温性向上及び増粘を目的とする成分である。すなわち、ポリアクリル酸塩を用いることで、浴湯中での酸化チタンの分散安定性を向上させることができる。なお、着色剤組成物中のポリアクリル酸塩の含有量は、1〜10質量%であることが好ましく、2〜8質量%であることがさらに好ましい。
【0022】
<白色着色剤組成物の製造方法>
次に、本発明の着色剤組成物の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」とも記す)について説明する。本発明の製造方法は、酸化チタン、ポリエチレングリコール、脂肪酸石鹸、及びポリアクリル酸塩を含有する含水原料を、水分を揮発させながら加熱混錬した後、冷却して固化物を得る工程(第1工程)と、得られた固化物を粉砕する工程(第2工程)と、を有する。
【0023】
(製造装置)
本発明の製造方法における、原料の混合、加熱混練、及び粉砕等の各工程で使用する装置(製造装置)の種類は特に制限されない。例えば、加圧可能な1つの密閉式混練機を使用して混合から加熱混練までを実施してもよいし、2種以上の装置(例えば、混合機と加熱混錬機)を使用して混合と加熱混練をそれぞれ実施してもよい。
【0024】
加圧可能な密閉式混練機としては、ワンダーニーダー、加圧式ニーダー、バンバリーミキサーなどを挙げることができる。混合機としては、装置回転式の混合機よりも撹拌翼混合式の混合機の方が、液体を含有する原材料を短時間でより均一に混合できるために好ましい。撹拌翼混合式の混合機としては、リボン型、水平スクリュー型、パドル型、タテ型リボン型、タテ型スクリュー型、遊星運動型、高速運動型の混合機などを挙げることができる。
【0025】
加熱混練機としては、揮発(蒸発)する水分を系外に除去可能な機構を有するものであれば、どのような加熱混練機でも使用することができる。なかでも、2本又は3本ロールなどの開放ロール型混練機や、脱気可能な単軸又は2軸以上の押出機などが、生産性の面から好ましい。冷却した固化物の粉砕に用いる粉砕機としては、固化物を平均粒子径50〜350μmの粉末又は粒状物、好ましくは平均粒子径100〜200μmの粉末又は粒状物に粉砕可能なものであればよい。具体的には、ピンミル、ハンマーミルと呼ばれる高速回転式や、ジェットミルと呼ばれる気流式粉砕機などを使用することができる。
【0026】
(第1工程)
第1工程では、まず、酸化チタン、ポリエチレングリコール、脂肪酸石鹸、及びポリアクリル酸塩を含有する含水原料を用意する。含水原料は、上記の原材料を常法にしたがって混合することで調製することができる。具体的には、ヘンシェルミキサーやスーパーミキサーなどの高速運動型の混合機に上記の材料及び水を投入し、混合すればよい。混合機の撹拌翼の形状、混合機の容量に対する原材料の投入割合、撹拌翼の回転数、混合時間などに特に制限はない。但し、せん断発熱を抑える等の観点から、混合機の槽壁内部に水等の冷媒を循環させることが可能な混合機を使用することが好ましい。
【0027】
含水原料に含まれる水の量については、ポリエチレングリコール100質量部に対して、10〜20質量部とすることが好ましく、12〜18質量部とすることがさらに好ましい。水を用いることで、加熱時に発生する水蒸気でポリエチレングリコールや脂肪酸石鹸を軟化させることが可能となり、酸化チタンを容易に被覆することができる。なお、水の量が多すぎると、ポリエチレングリコールが水に溶解してしまい、混合物を粉末状に保つことが困難になることがある。一方、水の量が少なすぎると、酸化チタンの表面を均一に被覆することがやや困難になることがある。
【0028】
使用する原材料のうち、ポリアクリル酸塩については、30〜70質量%の水溶液、より好ましくは40〜60質量%の水溶液を予め調製して用いるとよい。すなわち、ポリアクリル酸塩の水溶液を用いて含水原料を調製することが好ましい。ポリアクリル酸塩を予め水に溶解させて得た水溶液を用いることで、原材料をより均一に混合することができる。
【0029】
次に、調製した含水原料を、水分を揮発させながら加熱混錬する。加熱時に発生する水蒸気がポリエチレングリコールや脂肪酸石鹸を軟化させることが可能となり、酸化チタン表面をより容易かつ十分に被覆することができる。加熱混練時の最高加熱温度は、70〜150℃とすることが好ましく、100〜120℃とすることがさらに好ましい。最高加熱温度が低すぎると水分が揮発(蒸発)しにくく、粉砕後にダマなどが発生しやすくなることがある。一方、最高加熱温度が高すぎるとポリエチレングリコールが熱分解されやすくなり、得られる着色剤組成物の物性に影響が及ぶ可能性がある。加熱混錬後に室温程度にまで冷却すれば、固化物を得ることができる。
【0030】
(第2工程)
第2工程では、上記の第1工程で得た固化物を、例えば、平均粒子径50〜350μmの粉末又は粒状物、好ましくは平均粒子径80〜300μmの粉末又は粒状物となるように粉砕する。これにより、目的とする本発明の着色剤組成物を得ることができる。上記範囲の平均粒子径よりも小さく粉砕すると、製造時に飛散しやすくなる等、取り扱いにくくなる傾向にある。一方、上記範囲の平均粒子径よりも大きく粉砕すると、浴湯に投入した際に拡散しにくくなることがあり、所望とする白濁度とすることが困難になる傾向にある。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0032】
<着色剤組成物の製造>
(実施例1)
平均粒子径0.25μmのルチル型酸化チタン60部、重量平均分子量20,000のポリエチレングリコールA19部、脂肪酸石鹸A(オレイン酸ナトリウム)18部、脂肪酸石鹸B(ミリスチン酸ナトリウム)1部、及び40%ポリアクリル酸ナトリウム水溶液5部(ポリアクリル酸ナトリウム2部)を混合して含水原料を得た。混練時の最高到達温度が100〜110℃になるように設定した3本ロール混練機を使用して含水原料を加熱混練した後、室温まで冷却して固化物を得た。得られた固化物を粉砕し、平均粒子径230μmの着色剤組成物を得た。
【0033】
(実施例2)
平均粒子径0.25μmのルチル型酸化チタン70部、ポリエチレングリコールA14部、脂肪酸石鹸A13部、脂肪酸石鹸B1部、及び40%ポリアクリル酸ナトリウム水溶液5部(ポリアクリル酸ナトリウム2部)を混合して含水原料を得た。以後、得られた含水原料を用いたこと以外は前述の実施例1と同様にして、平均粒子径300μmの着色剤組成物を得た。
【0034】
(比較例1)
平均粒子径0.25μmのルチル型酸化チタン70部、重量平均分子量9,000のポリエチレングリコールB18部、脂肪酸石鹸A5部、及びポリオキシエチレンモノステアレート7部を混合して混合物を得た。以後、含水原料に代えて得られた混合物を用いたこと以外は前述の実施例1と同様にして、平均粒子径が100μmの着色剤組成物を得た。
【0035】
(比較例2)
平均粒子径0.25μmのルチル型酸化チタン70部、ポリエチレングリコールB18部、脂肪酸石鹸A5部、ポリオキシエチレンモノステアレート7部、及び酸化防止剤(ブチルヒドロキシトルエン)1部を混合して混合物を得た。以後、含水原料に代えて得られた混合物を用いたこと以外は前述の実施例1と同様にして、平均粒子径が220μmの着色剤組成物を得た。
【0036】
(比較例3)
平均粒子径0.25μmのルチル型酸化チタン60部、脂肪酸石鹸A18部、脂肪酸石鹸B2部、ポリオキシエチレンモノステアレート18部、40%ポリアクリル酸ナトリウム水溶液5部(ポリアクリル酸ナトリウム2部)を混合して含水原料を得た。以後、得られた含水原料を用いたこと以外は前述の実施例1と同様にして、平均粒子径240μmの着色剤組成物を得た。
【0037】
実施例1、2、比較例1〜3で製造した着色剤組成物の成分(配合組成)を表1に示す。
【0038】
【0039】
<評価>
(着色剤組成物の平均粒子径)
レーザー回折式粒度分布測定装置(商品名「マスターサイザー2000」、マルバーン社製)を使用し、着色剤組成物の平均粒子径(メディアン径)を乾式で測定した。結果を表2に示す。
【0040】
(浴湯の白濁度)
着色剤組成物を、酸化チタンの質量分が10.5ppmとなるように常温のイオン交換水に添加して混合し、試料を得た。分光光度計(商品名「U3310」、日立ハイテクサイエンス社製)を使用して得られた試料の550nmの光の透過率(%)を測定した。結果を表2に示す。なお、透過率が62.0〜69.0%であれば、良好な白濁度であると評価することができる。
【0041】
(タール色素の退色)
着色剤組成物100部と、青色1号タール色素0.2部とを混合してタール色素含有着色剤組成物を調製した。調製したタール色素含有着色剤組成物を容器に投入して密閉し、50℃で15日間保管した。保管前後のタール色素含有着色剤組成物を、酸化チタンの質量分が3.5%となるように常温のイオン交換水にそれぞれ添加して混合し、保管前試料及び保管後試料を得た。分光光度計(商品名「U3310」、日立ハイテクサイエンス社製)を使用して、L
*a
*b
*表色系における保管前試料及び保管後試料の色差(ΔE)を測定した。結果を表2に示す。なお、ΔEが3.0以下であれば、タール色素の退色抑制効果があると評価することができる。
【0042】
【0043】
(その他のタール色素の退色)
実施例1及び比較例1で製造した着色剤組成物について、青色1号タール色素以外のタール色素(黄色202号(1)、黄色4号、赤色102号、赤色106号)を使用し、上記の「タール色素の退色」と同様の手順でL
*a
*b
*表色系における保管前試料及び保管後試料の色差(ΔE)を測定した。その結果、実施例1で製造した着色剤組成物を用いた場合には、比較例1で製造した着色剤組成物を用いた場合に比べて、いずれのタール色素の退色も有効に抑制されたことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の白色着色剤組成物は、タール色素と組み合わせて用いる入浴剤用の着色剤組成物として有用である。