【解決手段】以下の工程(A)〜(D)を、この順に含む、口腔用組成物を製造する方法。(A)水と有機酸又はその塩とを混合する工程、(B)β−グリチルレチン酸、プロピレングリコール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合する工程、(C)塩化セチルピリジニウムを配合する工程、(D)ヒドロキシエチルセルロースを配合する工程
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、有効成分(特にβ−グリチルレチン酸及び塩化セチルピリジニウム)を安定に含有する口腔用組成物を調製する方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
油溶性成分を溶解させるためには、通常界面活性剤を用いることができる。β−グリチルレチン酸を口腔用組成物に安定に配合するために、界面活性剤を用いることが考えられた。しかし、界面活性剤は塩化セチルピリジニウムの歯牙への吸着を抑制するため、用いるとしても出来るだけ少量とすることが好ましい。
【0007】
以上のような事情を考慮して、塩化セチルピリジニウムの歯牙への吸着抑制がそれほど強くない界面活性剤であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いることとし、口腔用組成物に若干の粘性を付与するために増粘剤としてヒドロキシエチルセルロースを配合して、口腔用組成物を調製した。より具体的には、水にクエン酸及びグリセリンを溶解させ(A)、これにβ−グリチルレチン酸、トコフェロール、プロピレングリコール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(B)並びにヒドロキシエチルセルロース(D)を配合し、最後に塩化セチルピリジニウム(C)を配合して口腔用組成物を調製した。しかし、当該口腔用組成物は、調製後白濁が生じた。
【0008】
このため、さらに検討を重ねたところ、成分の配合順序を変化させることで、調製後白濁が生じない透明な口腔用組成物を調製できることを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
以下の工程(A)〜(D):
(A)水と有機酸又はその塩とを混合する工程、
(B)β−グリチルレチン酸、プロピレングリコール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合する工程、
(C)塩化セチルピリジニウムを配合する工程、
(D)ヒドロキシエチルセルロースを配合する工程、
を、この順に含む、
口腔用組成物を製造する方法。
項2.
工程(D)のヒドロキシエチルセルロースとして、ヒドロキシエチルセルロース分散グリセリン液を用いる、
項1に記載の方法。
項3.
工程(B)が、β−グリチルレチン酸、プロピレングリコール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含む混合物を配合する工程である、
項1又は2に記載の方法。
項4.
工程(B)が、β−グリチルレチン酸、トコフェロール、プロピレングリコール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合する工程である、
項1〜3に記載の方法。
項5.
工程(B)が、β−グリチルレチン酸、トコフェロール、プロピレングリコール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含む混合物を配合する工程である、
項4に記載の方法。
項6.
以下の工程(A)〜(D):
(A)水と有機酸又はその塩とを混合する工程、
(B)β−グリチルレチン酸、プロピレングリコール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合する工程、
(C)塩化セチルピリジニウムを配合する工程、
(D)ヒドロキシエチルセルロースを配合する工程、
を含み、且つ以下の条件を満たす、口腔用組成物を製造する方法。
(条件1):工程(A)を最初に行う。
(条件2):工程(B)及び(C)は、この順に行う。
(条件3):工程(D)のヒドロキシエチルセルロースとして、ヒドロキシエチルセルロース分散グリセリン液を用いる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る方法により、有効成分(特にβ−グリチルレチン酸及び塩化セチルピリジニウム)を安定に含有(分散又は溶解)する透明な口腔用組成物を調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態について、さらに詳細に説明する。
【0012】
本発明に包含される口腔用組成物の製造方法の一実施形態は、以下の工程(A)〜(D)を、この順に含む。なお、これらの工程で用いられる成分は、全て公知の成分であり、市販品を購入して用いることもできる。
(A)水と有機酸又はその塩とを混合する工程
(B)β−グリチルレチン酸、プロピレングリコール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合する工程
(C)塩化セチルピリジニウムを配合する工程
(D)ヒドロキシエチルセルロースを配合する工程
工程(A)で用いる成分について説明する。水としては、特に制限されず、蒸留水、脱イオン水、水道水等、適宜選択して用いることができる。また、有機酸又はその塩としては、口腔用組成物に配合される公知の有機酸又はその塩を適宜選択して用いることができる。有機酸としては、例えばヒドロキシカルボン酸が挙げられ、より具体的にはクエン酸、硫酸、リンゴ酸等が好ましく例示される。有機酸の塩としては、例えばカリウム塩、ナトリウム塩等が好ましく挙げられる。特に好ましい例として、クエン酸ナトリウム及び無水クエン酸が挙げられる。有機酸又はその塩は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
水は、得られる口腔用組成物全量に対して、50〜90質量%となるように用いることが好ましく、60〜90質量%がより好ましく、70〜90質量%がさらに好ましく、80〜90質量%がよりさらに好ましい。
【0014】
また、有機酸又はその塩としては、得られる口腔用組成物全量に対して、0.01〜0.2質量%となるように用いられることが好ましく、0.02〜0.17質量%がより好ましく、0.03〜0.15質量%、0.04〜0.13質量%、又は0.05〜0.1質量%がさらに好ましい。
【0015】
また、当該口腔用組成物は、pHが5.0〜8.0程度であることが好ましく、5.5〜7.5程度であることがより好ましい。
【0016】
工程(B)で用いる成分について説明する。β−グリチルレチン酸は、例えば、甘草から得られるグリチルリチン酸を加水分解することにより得られる。プロピレングリコール及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は市販品を購入して用いることができる。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド(EO)の平均付加モル数は、好ましくは15〜100であり、より好ましくは20〜80であり、さらに好ましくは40〜60である。
【0017】
β−グリチルレチン酸は、得られる口腔用組成物全量に対して、0.01〜0.5質量%となるように用いられることが好ましく、0.02〜0.4質量%がより好ましく、0.03〜0.2質量%がさらに好ましい。また、当該範囲の上限は、0.15質量%以下、又は0.1質量%であってもよい。
【0018】
プロピレングリコールは、得られる口腔用組成物全量に対して、1〜5質量%となるように用いられることが好ましく、2〜4質量%がより好ましい。
【0019】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、得られる口腔用組成物全量に対して、0.1〜2質量%となるように用いられることが好ましく、0.2〜1.5質量%がより好ましく、0.3〜1質量%がさらに好ましく、0.3〜0.5質量%がよりさらに好ましい。
【0020】
工程(B)で配合される各成分の配合順は特に制限されず、β−グリチルレチン酸、プロピレングリコール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油をどのような順で配合してもよい。中でも、β−グリチルレチン酸、及び/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を、プロピレングリコール中に予め混合したうえで、工程(B)以前に行われる工程により得られた組成物中へ配合することが好ましい。また、下述するように、工程(A)〜(D)において、本発明の効果を損なわない範囲で、他成分をさらに配合してもよいところ、当該他成分として油溶性成分を用いる場合には、工程(B)において配合することが好ましく、特にプロピレングリコール中に予めポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とともに混合したうえで、工程(B)以前に行われる工程により得られた組成物中へ配合することが好ましい。すなわち、工程(B)は、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及び油溶性成分を含む混合液を配合することを含む工程であることが好ましい。ここでの油溶性成分としては、特に制限はされないが、β−グリチルレチン酸や、下述するトコフェロール等が好ましく例示される。
【0021】
工程(C)で用いる成分について説明する。塩化セチルピリジニウムは、得られる口腔用組成物全量に対して、0.01〜5質量%となるように用いられることが好ましく、0.02〜4質量%がより好ましく、0.03〜3質量%がさらに好ましく、0.04〜2質量%又は0.05〜1質量%がよりさらに好ましい。
【0022】
工程(D)で用いる成分について説明する。ヒドロキシエチルセルロース(HEC)は、得られる口腔用組成物全量に対して、0.05〜0.5質量%となるように用いられることが好ましく、0.1〜0.4質量%がより好ましく、0.2〜0.3質量%がさらに好ましい。
【0023】
また、ヒドロキシエチルセルロースは、工程(D)以前に行われる工程により得られた組成物中へ直接配合してもよいが、グリセリン中に分散させた分散液(すなわち、ヒドロキシエチルセルロース分散グリセリン液)の形態で用いることが好ましい。つまり、工程(D)においては、ヒドロキシエチルセルロースとして、ヒドロキシエチルセルロース分散グリセリン液を、工程(D)以前に行われる工程により得られた組成物中へ配合することが好ましい。この場合、当該ヒドロキシエチルセルロース分散グリセリン液における、ヒドロキシエチルセルロース及びグリセリンの質量比は、1:10〜150程度が好ましく、1:20〜100程度がより好ましく、1:30〜70程度がさらに好ましい。また、グリセリンは、得られる口腔用組成物全量に対して、5〜15質量%となるように用いられることが好ましく、7〜13質量%がより好ましく、8〜12質量%がさらに好ましい。
【0024】
各工程において、各成分は配合され、混合される。混合は、公知の方法により行うことができる。例えば、ミキサー(ディスパーミキサー、アンカーミキサー、ホモミキサーなど)を用いて行うことができる。
【0025】
また、工程(A)〜(D)において、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他成分を配合してもよい。
【0026】
例えば、トコフェロールを好ましく配合することができる。ビタミンEとしても知られている成分である。トコフェロールとしては、より具体的には、例えば、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、酢酸トコフェロール(例えば酢酸dl−α−トコフェロール等)、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール等が挙げられる。α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロールがより好ましく、酢酸トコフェロールがさらに好ましい。トコフェロールは、これらを1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。トコフェロールは、得られる口腔用組成物全量に対して、0.01〜0.5質量%となるように用いられることが好ましく、0.02〜0.4質量%がより好ましく、0.03〜0.3質量%がさらに好ましく、0.04〜0.2質量%がよりさらに好ましい。
【0027】
本発明に係る口腔用組成物を製造する方法(特に工程(B))において、β−グリチルレチン酸及びトコフェロールが配合される場合には、β−グリチルレチン酸及びトコフェロールの合計質量と、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の質量との比が、1:2以上であることが好ましく、1:3以上であることがより好ましい。ただ、上述のように、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油量が多すぎると塩化セチルピリジニウムの歯牙への吸着が抑制されてしまうことから、β−グリチルレチン酸及びトコフェロールの合計質量と、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の質量との比が、1:15以上であることが好ましく、1:10以上であることがより好ましく、1:8以下であることがさらに好ましく、1:6以下であることがよりさらに好ましい。例えば、β−グリチルレチン酸及びトコフェロールの合計質量と、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の質量との比が、1:2〜15、1:2〜10、1:2〜8、又は1:2〜6、あるいは1:3〜15、1:3〜10、1:3〜8、又は1:3〜6であることが好ましい。
【0028】
また、トコフェロールは油溶性成分であることから、工程(B)において配合することが好ましく、特にプロピレングリコール中に予めポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とともに混合したうえで、工程(B)以前に行われる工程により得られた組成物中へ配合することが好ましい。
【0029】
また例えば、防腐剤を好ましく配合することができる。防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステルが好ましく、より具体的にはパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソブチル等が例示される。中でもパラオキシ安息香酸メチルが好ましい。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。防腐剤(特にパラオキシ安息香酸エステル)は、得られる口腔用組成物全量に対して、0.05〜0.5質量%となるように用いられることが好ましく、0.1〜0.4質量%がより好ましく、0.2〜0.3質量%がさらに好ましい。また、特に制限はされないが、防腐剤は、油溶性成分である場合(特にパラオキシ安息香酸エステル)は、工程(B)において配合することが好ましく、特にプロピレングリコール中に予めポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とともに混合したうえで、工程(B)以前に行われる工程により得られた組成物中へ配合することが好ましい。
【0030】
このように、工程(B)は、好ましくは、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及び油溶性成分を含む混合物を配合する工程であり、当該油溶性成分には、少なくともβ−グリチルレチン酸が含まれる。さらに当該油溶性成分として、好ましくは、トコフェロール及び防腐剤(特にパラオキシ安息香酸エステル)からなる群より選択される1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
あるいはまた、本発明の効果を損なわない範囲であれば、口腔用組成物分野において用いられるその他の成分を配合することもできる。このようなその他成分を配合するタイミングは、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、例えば、水溶性成分であれば工程(A)において若しくは工程(A)の直後に配合することが好ましく、また例えば油溶性成分であれば工程(B)において若しくは工程(B)の直後に配合することが好ましい。
【0032】
このようなその他成分としては、例えば、界面活性剤、研磨剤、粘結剤、香味剤、甘味剤、湿潤剤、コンディショニング剤などが挙げられる。
【0033】
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤または両性界面活性剤を配合することができる。具体的に例示すると、アニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸石鹸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシアルキルエーテルスルホコハク酸塩、アシルアミノ酸塩、グリセリン脂肪酸エステル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、アルキルグルタミン酸塩などが挙げられる。カチオン界面活性剤としては、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩などが挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、レシチン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルベタインなどが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
研磨剤としては、研磨性シリカ、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、第3リン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、不溶性メタリン酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、ポリメタクリル酸メチル、パミス(軽石)、ベントナイト、合成樹脂などが挙げられる。これら研磨剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース塩、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウムなどのヒドロキシエチルセルロース以外のセルロース誘導体、キサンタンガムなどの微生物産生高分子、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、カラギーナン、デキストリン、寒天、ペクチン、プルラン、ジェランガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウムなどの天然高分子または天然ゴム類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ナトリウムなどの合成高分子、増粘性シリカ、ビーガムなどの無機粘結剤、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースなどのカチオン性粘結剤が挙げられる。これら粘結剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
香味剤(香料を含む)としては、メントール、カルボン、サリチル酸メチル、バニリン、ベンジルサクシネート、メチルオイゲノール、アネトール、リモネン、オシメン、n−デシルアルコール、メチルアセタート、シトロネニルアセテート、シネオール、エチルリナロール、ワニリン、タイム、ナツメグ、シンナミックアルデヒド、ベンズアルデヒド、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、ティーツリー油、タバナ油、スターアニス油、フェンネル油、珪藻油、バジル油などが挙げられる。これら香料は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
甘味剤としては、サッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビアエキス、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、ソウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、メトキシシンナミックアルデヒド、パラチノース、パラチニット、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトールなどが挙げられる。これら甘味剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
湿潤剤としては、エタノール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、ジグリセリン、ソルビット、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
コンディショニング剤としては、シリコーン誘導体、カチオン変性水溶性高分子、脂肪酸エステル、トリメチルグリシン、タンパク質加水分解物、アミノ酸およびその誘導体、尿素、リン脂質、糖脂質、セラミド類などが挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
また、そのほかの成分として、動植油脂、粉体、防腐・保存剤、色素、pH調整剤、紫外線吸収剤、動植物抽出物などが挙げられる。
【0041】
また、本発明に係る方法により製造される口腔用組成物の形態は、特に制限されないが、液体口腔用組成物であることが好ましい。また例えば、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、ジェル状歯磨、洗口剤、ジェル剤、パスタ剤、スプレー剤、ガム剤、軟ペースト剤(クリーム状製剤)、軟膏状製剤、塗布剤等の形態(剤形)として用いることもできる。このなかでも、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、ジェル状歯磨、洗口剤、パスタ剤、軟ペースト剤、軟膏状製剤、塗布剤がより好ましい。
【0042】
また、工程(D)において、ヒドロキシエチルセルロースを配合するに当たり、ヒドロキシエチルセルロース分散グリセリン液を用いる場合には、上記工程(A)〜(D)を、以下の条件を満たして含む方法によっても、有効成分(特にβ−グリチルレチン酸及び塩化セチルピリジニウム)を安定に含有する口腔用組成物を調製することができる。
(条件1):工程(A)を最初に行う。
(条件2):工程(B)及び(C)を、この順に行う。
(条件3):工程(D)のヒドロキシエチルセルロースとして、ヒドロキシエチルセルロース分散グリセリン液を用いる。
【0043】
本発明は、当該条件1〜3を満たしつつ上記工程(A)〜(D)を含む、口腔用組成物を製造する方法も好ましい実施形態として包含する。当該実施形態においては、工程(A)〜(D)は、(i):(A)→(B)→(C)→(D)の順か、又は(ii):(A)→(D)→(B)→(C)の順の、いずれかで行われる。上述した上記工程(A)〜(D)をこの順に含む実施形態において、工程(D)でヒドロキシエチルセルロース分散グリセリン液を用いる場合は、当該(i)に相当するといえる。これら(i)(ii)のいずれにおいても、各工程及びその他成分等についての上述の説明は当てはまる。
【0044】
なお、条件2における、工程(B)及び(C)をこの順に行うとは、工程(A)又は(D)は工程(B)と工程(C)との間には行われないことを意味する。なお、工程(B)及び(C)はこの順に続けて行うことが好ましい。すなわち、工程(B)と工程(C)との間には他の成分が配合される工程が存在しないことが好ましい。
【0045】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。
【実施例】
【0046】
以下、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、各例の製造方法に記載される各成分の使用量(%)は、特に断らない限り、得られる組成物全量に対する質量%を示す。
【0047】
<実施例1>
ステンレス缶に水を入れ、クエン酸ナトリウム(0.07%)と無水クエン酸(0.01%)を溶解して仕掛りAを調製した。その後、別容器で温めたプロピレングリコール(3%)にパラオキシ安息香酸メチル(0.2%)及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(0.4%)を溶解し、酢酸トコフェロール(0.05%)を溶解した香料(0.1%)と混合し、β−グリチルレチン酸(0.04%又は0.05%)を加えて仕掛りBを調製し、これを仕掛りA(ステンレス缶)に投入して混合し、溶解させた。その後、塩化セチルピリジニウム(0.05%)を前記混合液(ステンレス缶)に投入して溶解させた。最後にヒドロキシエチルセルロース(0.2%)を濃グリセリン(10%)に分散して調製した仕掛りDを、前記混合液(ステンレス缶)に投入して溶解させた。なお、用いたポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド(EO)の平均付加モル数は60であった。
【0048】
<比較例1>
ステンレス缶に水を入れ、クエン酸ナトリウム(0.07%)と無水クエン酸(0.01%)、濃グリセリン(10%)を溶解して仕掛りAを調製した。その後、別容器で温めたプロピレングリコール(3%)にパラオキシ安息香酸メチル(0.2%)及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(0.4%)を溶解し、これを酢酸トコフェロール(0.05%)を溶解させた香料と混合し、さらにβ−グリチルレチン酸(0.04%又は0.05%)を加えて仕掛りBを調製した。さらにヒドロキシエチルセルロース(0.2%)を仕掛りBに分散した後で、仕掛りA(ステンレス缶)に投入、溶解させた。最後に塩化セチルピリジニウム(0.05%)をステンレス缶に投入、溶解させた。
【0049】
実施例1のうち、β−グリチルレチン酸使用量が0.4%の場合を実施例1−1、0.5%の場合を実施例1−2と表記する。また、比較例1のうち、β−グリチルレチン酸使用量が0.4%の場合を比較例1−1、0.5%の場合を比較例1−2と表記する。
【0050】
実施例1−1及び実施例1−2の組成物は、いずれも白濁は起こらず透明であった。一方、比較例1−1及び比較例1−2の組成物は、いずれも白濁していた。(目視で確認)
当該結果から、(A)水と有機酸又はその塩とを混合する工程、(B)β−グリチルレチン酸、プロピレングリコール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合する工程、(C)塩化セチルピリジニウムを配合する工程、(D)ヒドロキシエチルセルロースを配合する工程、を、この順に行うことにより、β−グリチルレチン酸は析出することなく、安定に口腔用組成物に配合され得ることがわかった。
【0051】
<実施例2>
ステンレス缶に水を入れ、クエン酸ナトリウム(0.07%)と無水クエン酸(0.01%)を溶解して仕掛りAを調製した。その後、ヒドロキシエチルセルロース(0.2%)を濃グリセリン(10%)に分散して調製した仕掛りDを仕掛りA(ステンレス缶)に投入し、溶解させた。その後、別容器で温めたプロピレングリコール(3%)にパラオキシ安息香酸メチル(0.2%)及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(0.4%)を溶解し、これを酢酸トコフェロール(0.05%)を溶解した香料(0.1%)と混合し、さらにβ−グリチルレチン酸(0.04%又は0.05%)を加えて仕掛りBを調製した。当該仕掛りBをステンレス缶に投入し、溶解させた。最後に塩化セチルピリジニウム(0.05%)をステンレス缶に投入し、溶解させた。
【0052】
実施例2のうち、β−グリチルレチン酸使用量が0.4%の場合を実施例2−1、0.5%の場合を実施例2−2と表記する。
【0053】
実施例2−1及び実施例2−2の組成物は、いずれも白濁は起こらず透明であった。(目視で確認)
【0054】
上記結果及び当該結果から、(A)水と有機酸又はその塩とを混合する工程、(B)β−グリチルレチン酸、プロピレングリコール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合する工程、(C)塩化セチルピリジニウムを配合する工程、(D)ヒドロキシエチルセルロースを配合する工程、を含み、且つ、工程(A)を最初に行い、工程(B)及び(C)は、この順に行い、さらに工程(D)のヒドロキシエチルセルロースとして、ヒドロキシエチルセルロース分散グリセリン液を用いることで、β−グリチルレチン酸は析出することなく、安定に口腔用組成物に配合され得ることがわかった。