【解決手段】以下の工程(A)〜(D)を、この順に含む、口腔用組成物を製造する方法。(A)水と有機酸又はその塩とを混合する工程、(B)β−グリチルレチン酸、プロピレングリコール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合する工程、(C)塩化セチルピリジニウムを配合する工程、(D)ヒドロキシエチルセルロースを配合する工程、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油をX質量%とし、β−グリチルレチン酸及びトコフェロールをY質量%として、式(1)を満たす、液体口腔用組成物。Y/X−0.543X+0.495(但し、0.1≦X、0<Y)(1)好ましくはY/X<0.543X+0.47(1)好ましくは、0.05≦Y≦0.1で、0.25≦X≦0.45である液体口腔用組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、β−グリチルレチン酸及びトコフェロールを溶解して長期安定に含み、塩化セチルピリジニウムの吸着抑制も起こり難い、液体口腔用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
油溶性成分を溶解させるためには、通常界面活性剤を用いることができる。β−グリチルレチン酸及びトコフェロールを口腔用組成物に安定に配合するために、界面活性剤を用いることが考えられた。しかし、界面活性剤は塩化セチルピリジニウムの歯牙への吸着を抑制するため、用いるとしても出来るだけ少量とすることが好ましい。
【0008】
以上のような事情を考慮して、塩化セチルピリジニウムの歯牙への吸着抑制がそれほど強くない界面活性剤であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いることとし、口腔用組成物に若干の粘性を付与するために増粘剤としてヒドロキシエチルセルロースを配合して、口腔用組成物を調製した。より具体的には、水にクエン酸及びグリセリンを溶解させ(A)、これにβ−グリチルレチン酸、トコフェロール、プロピレングリコール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(B)並びにヒドロキシエチルセルロース(D)を配合し、最後に塩化セチルピリジニウム(C)を配合して液体口腔用組成物を調製した。しかし、当該口腔用組成物は、調製後析出が生じた。
【0009】
このため、さらに検討を重ねたところ、成分の配合順序を変化させることで、調製後析出が生じない、液体口腔用組成物を調製できることを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
(i)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及び
(ii)β−グリチルレチン酸及びトコフェロール、
並びに、水、塩化セチルピリジニウム、ヒドロキシエチルセルロース、及びプロピレングリコールを含み、
(i)成分及び(ii)成分の含有量を、X質量%及びY質量%としたとき、次式(1):
Y/X<−0.543X+0.495 (但し、0.1≦X、0<Y) [式(1)]
を満たす、
(ii)成分が溶解した液体口腔用組成物。
項2.
式(1)が、
Y/X<−0.543X+0.47 (但し、0.1≦X、0<Y)
である、項1に記載の液体口腔用組成物。
項3.
式(1)におけるXの範囲が、
0.25≦X≦0.45
である、項1又は2に記載の液体口腔用組成物。
項4.
式(1)におけるYの範囲が、
0.05≦Y≦0.1
である、項1〜3のいずれかに記載の液体口腔用組成物。
項5.
水を50〜90質量%含有する、項1〜4のいずれかに記載の液体口腔用組成物。
項6.
(ii)成分が溶解した液体口腔用組成物が、(ii)成分が析出していない液体口腔用組成物である、項1〜5のいずれかに記載の液体口腔用組成物。
項7.
項1〜6のいずれかに記載の液体口腔用組成物を製造する方法であって、
以下の工程(B)〜(D):
(B)β−グリチルレチン酸、トコフェロール、プロピレングリコール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を水に配合する工程、
(C)塩化セチルピリジニウムを配合する工程、
(D)ヒドロキシエチルセルロースを配合する工程、
を、この順に含む、方法。
項8.
(A)水と有機酸又はその塩とを混合する工程を、工程(B)の前に含む、項7に記載の方法。
項9.
工程(D)のヒドロキシエチルセルロースとして、ヒドロキシエチルセルロース分散グリセリン液を用いる、
項7又は8に記載の方法。
項10.
工程(B)が、β−グリチルレチン酸、トコフェロール、プロピレングリコール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含む混合物を配合する工程である、
項7〜9のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、β−グリチルレチン酸及びトコフェロールを溶解して長期安定に含む液体口腔用組成物を調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各実施形態について、さらに詳細に説明する。
【0014】
本発明に包含される口腔用組成物(以下「本発明の口腔用組成物」とよぶ)は、(i)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及び(ii)β−グリチルレチン酸及びトコフェロールを含み、さらに、水、塩化セチルピリジニウム、ヒドロキシエチルセルロース、及びプロピレングリコールを含み、(i)成分及び(ii)成分の含有量を、X質量%及びY質量%としたとき、次式(1):
Y/X<−0.543X+0.495 (但し、0.1≦X、0<Y) [式(1)]
を満たす、(ii)成分が溶解した液体口腔用組成物である。なお、本明細書において、質量%はw/w%を示す。
【0015】
式(1)は、好ましくは、例えば
Y/X<−0.543X+0.49 (但し、0.1≦X、0<Y)、
Y/X<−0.543X+0.48 (但し、0.1≦X、0<Y)、
Y/X<−0.543X+0.47 (但し、0.1≦X、0<Y)、
Y/X<−0.543X+0.46 (但し、0.1≦X、0<Y)、
Y/X<−0.543X+0.45 (但し、0.1≦X、0<Y)、又は
Y/X<−0.543X+0.445 (但し、0.1≦X、0<Y)であってもよい。
【0016】
また、式(1)におけるXの範囲は、0.1≦Xであるが、下限は好ましくは例えば0.15以上、0.2以上、0.25以上、又は0.3以上であり、また、上限は好ましくは例えば0.8以下、0.75以下、0.7以下、0.65以下、0.6以下、0.55以下、0.5以下、0.45以下、又は0.4以下である。これらの下限値及び上限値を任意に組み合わせてXの範囲を決定してもよい。制限はされないが、例えば0.15≦X≦0.8、0.2≦X≦0.6、0.25≦X≦0.45、又は0.3≦X≦0.4等が例示される。
【0017】
また、式(1)におけるYの範囲は、0<Yであるが、下限は好ましくは例えば0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、又は0.06以上であり、また上限は好ましくは例えば0.12以下、0.11以下、0.1以下、又は0.09以下である。これらの下限値及び上限値を任意に組み合わせてYの範囲を決定してもよい。制限はされないが、例えば0.02≦Y≦0.12、0.03≦Y≦0.11、0.05≦Y≦0.1、又は0.06≦Y≦0.09等が例示される。
【0018】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、制限はされないが、エチレンオキサイド(EO)の平均付加モル数が、15〜100のものが好ましく、20〜80のものがより好ましく、40〜60のものがさらに好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、口腔用組成物に、0.1〜2質量%含有されることが好ましく、0.2〜1.5質量%がより好ましく、0.3〜1質量%がさらに好ましく、0.3〜0.5質量%がよりさらに好ましい。
【0019】
β−グリチルレチン酸は、口腔用組成物に、0.01〜0.5質量%含有されることが好ましく、0.02〜0.4質量%がより好ましく、0.03〜0.2質量%がさらに好ましい。また、当該範囲の上限は、0.15質量%以下、又は0.1質量%であってもよい。
【0020】
トコフェロールはビタミンEとしても知られている成分である。トコフェロールとしては、より具体的には、例えば、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、酢酸トコフェロール(例えば酢酸dl−α−トコフェロール等)、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール等が挙げられる。α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロールがより好ましく、酢酸トコフェロールがさらに好ましい。トコフェロールは、これらを1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。トコフェロールは、口腔用組成物に、0.01〜0.5質量%含有されることが好ましく、0.02〜0.4質量%がより好ましく、0.03〜0.3質量%がさらに好ましく、0.04〜0.2質量%がよりさらに好ましい。
【0021】
但し、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、β−グリチルレチン酸、及びトコフェロールの含有量は、式(1)を満たすことが前提である。
【0022】
水は、特に制限されず、蒸留水、脱イオン水、水道水等、適宜選択して用いることができる。水は、口腔用組成物に、50〜90質量%含有されることが好ましく、60〜90質量%がより好ましく、70〜90質量%がさらに好ましく、80〜90質量%がよりさらに好ましい。
【0023】
塩化セチルピリジニウムは、口腔用組成物に、0.01〜5質量%含有されることが好ましく、0.02〜4質量%がより好ましく、0.03〜3質量%がさらに好ましく、0.04〜2質量%又は0.05〜1質量%がよりさらに好ましい。
【0024】
ヒドロキシエチルセルロース(HEC)は、口腔用組成物に、0.05〜0.5質量%含有されることが好ましく、0.1〜0.4質量%がより好ましく、0.2〜0.3質量%がさらに好ましい。
【0025】
プロピレングリコールは、口腔用組成物に、1〜5質量%含有されることが好ましく、2〜4質量%がより好ましい。
【0026】
また、口腔用組成物は、これら以外にも、本発明の効果を損なわない範囲において、他成分を含んでもよい。
【0027】
例えば、有機酸又はその塩を好ましく含むことができる。有機酸又はその塩としては、口腔用組成物に配合される公知の有機酸又はその塩を適宜選択して用いることができる。有機酸としては、例えばヒドロキシカルボン酸が挙げられ、より具体的にはクエン酸、硫酸、リンゴ酸等が好ましく例示される。有機酸の塩としては、例えばカリウム塩、ナトリウム塩等が好ましく挙げられる。特に好ましい例として、クエン酸ナトリウム及び無水クエン酸が挙げられる。有機酸又はその塩は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。有機酸又はその塩としては、口腔用組成物に、0.01〜0.2質量%含有されることが好ましく、0.02〜0.17質量%がより好ましく、0.03〜0.15質量%、0.04〜0.13質量%、又は0.05〜0.1質量%がさらに好ましい。
【0028】
また、当該口腔用組成物は、pHが5.0〜8.0程度であることが好ましく、5.5〜7.5程度であることがより好ましい。
【0029】
また例えば、防腐剤を好ましく配合することができる。防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステルが好ましく、より具体的にはパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソブチル等が例示される。中でもパラオキシ安息香酸メチルが好ましい。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。防腐剤(特にパラオキシ安息香酸エステル)は、口腔用組成物全量に、0.05〜0.5質量%含有されることが好ましく、0.1〜0.4質量%がより好ましく、0.2〜0.3質量%がさらに好ましい。
【0030】
また例えば、他成分として用い得る成分として、例えば、界面活性剤、研磨剤、粘結剤、香味剤、甘味剤、湿潤剤、コンディショニング剤などが挙げられる。
【0031】
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤または両性界面活性剤を配合することができる。具体的に例示すると、アニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸石鹸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシアルキルエーテルスルホコハク酸塩、アシルアミノ酸塩、グリセリン脂肪酸エステル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、アルキルグルタミン酸塩などが挙げられる。カチオン界面活性剤としては、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩などが挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、レシチン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルベタインなどが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
研磨剤としては、研磨性シリカ、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、第3リン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、不溶性メタリン酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、ポリメタクリル酸メチル、パミス(軽石)、ベントナイト、合成樹脂などが挙げられる。これら研磨剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース塩、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウムなどのヒドロキシエチルセルロース以外のセルロース誘導体、キサンタンガムなどの微生物産生高分子、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、カラギーナン、デキストリン、寒天、ペクチン、プルラン、ジェランガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウムなどの天然高分子または天然ゴム類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ナトリウムなどの合成高分子、増粘性シリカ、ビーガムなどの無機粘結剤、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースなどのカチオン性粘結剤が挙げられる。これら粘結剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
香味剤(香料を含む)としては、メントール、カルボン、サリチル酸メチル、バニリン、ベンジルサクシネート、メチルオイゲノール、アネトール、リモネン、オシメン、n−デシルアルコール、メチルアセタート、シトロネニルアセテート、シネオール、エチルリナロール、ワニリン、タイム、ナツメグ、シンナミックアルデヒド、ベンズアルデヒド、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、ティーツリー油、タバナ油、スターアニス油、フェンネル油、珪藻油、バジル油などが挙げられる。これら香料は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
甘味剤としては、サッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビアエキス、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、ソウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、メトキシシンナミックアルデヒド、パラチノース、パラチニット、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトールなどが挙げられる。これら甘味剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
湿潤剤としては、エタノール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、ジグリセリン、ソルビット、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
コンディショニング剤としては、シリコーン誘導体、カチオン変性水溶性高分子、脂肪酸エステル、トリメチルグリシン、タンパク質加水分解物、アミノ酸およびその誘導体、尿素、リン脂質、糖脂質、セラミド類などが挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
また、そのほかの成分として、動植油脂、粉体、防腐・保存剤、色素、pH調整剤、紫外線吸収剤、動植物抽出物などが挙げられる。
【0039】
また、本発明の口腔用組成物の形態は、液体であれば特に制限されない。例えば、液体歯磨、液状歯磨、洗口剤、スプレー剤、塗布剤等の形態(剤形)として用いることができる。このなかでも、液体歯磨、液状歯磨、洗口剤、塗布剤がより好ましい。
【0040】
本発明の口腔用組成物は、β−グリチルレチン酸及びトコフェロールを溶解して長期安定に含むことができる。例えば、少なくとも、1週間室温(25℃)で静置した場合であっても、析出は起こらない。
【0041】
上述したように、本発明の口腔用組成物を製造するにあたっては、各成分を配合する順序も重要である。当該順序が適切でなければ、析出が起こり、長期安定な組成物は得られない。
【0042】
本発明の口腔用組成物を製造するには、例えば、以下の工程(B)〜(D)を、この順に含む製造方法を用いることができる。
(B)β−グリチルレチン酸、トコフェロール、プロピレングリコール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を水に配合する工程
(C)塩化セチルピリジニウムを配合する工程
(D)ヒドロキシエチルセルロースを配合する工程
なお、水溶性成分(特に有機酸又はその塩)をさらに含有する口腔用組成物を調製する場合には、(B)工程の前に、(A)水と水溶性成分(例えば有機酸又はその塩)とを混合する工程、を含んでもよい。
【0043】
工程(B)で配合される各成分の配合順は特に制限されず、β−グリチルレチン酸、トコフェロール、プロピレングリコール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油をどのような順で配合してもよい。中でも、β−グリチルレチン酸、トコフェロール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を、プロピレングリコール中に予め混合したうえで、工程(B)以前に行われる工程により得られた組成物中へ配合することが好ましい。また、工程(A)〜(D)において、本発明の効果を損なわない範囲で、他成分をさらに配合してもよいところ、当該他成分として油溶性成分を用いる場合には、工程(B)において配合することが好ましく、特にプロピレングリコール中に予めポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とともに油溶性成分を混合したうえで、水あるいは工程(B)以前に行われる工程により得られた組成物中へ配合することが好ましい。すなわち、工程(B)は、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及び油溶性成分を含む混合液を配合する工程であって、β−グリチルレチン酸及びトコフェロールは好ましい油溶性成分であるということもできる。
【0044】
また、ヒドロキシエチルセルロースは、工程(D)以前に行われる工程により得られた組成物中へ直接配合してもよいが、グリセリン中に分散させた分散液(すなわち、ヒドロキシエチルセルロース分散グリセリン液)の形態で用いることが好ましい。つまり、工程(D)においては、ヒドロキシエチルセルロースとして、ヒドロキシエチルセルロース分散グリセリン液を、工程(D)以前に行われる工程により得られた組成物中へ配合することが好ましい。この場合、当該ヒドロキシエチルセルロース分散グリセリン液における、ヒドロキシエチルセルロース及びグリセリンの質量比は、1:10〜150程度が好ましく、1:20〜100程度がより好ましく、1:30〜70程度がさらに好ましい。また、ここで用いるグリセリン量としては、口腔用組成物に、5〜15質量%含有されるよう用いることが好ましく、7〜13質量%がより好ましく、8〜12質量%がさらに好ましい。
【0045】
各工程において、各成分は配合され、混合される。混合は、公知の方法により行うことができる。例えば、ミキサー(ディスパーミキサー、アンカーミキサー、ホモミキサーなど)を用いて行うことができる。
【0046】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。
【実施例】
【0047】
以下、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、各例の液体口腔用組成物の製造方法に記載される各成分の使用量(%)は、特に断らない限り、得られる組成物全量に対する質量%を示す。
【0048】
<実施例1>
ステンレス缶に水を入れ、クエン酸ナトリウム(0.07%)と無水クエン酸(0.01%)を溶解して仕掛りAを調製した。その後、別容器で温めたプロピレングリコール(3%)にパラオキシ安息香酸メチル(0.2%)及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(0.4%)を溶解し、酢酸トコフェロール(0.05%)を溶解した香料(0.1%)と混合し、β−グリチルレチン酸(0.04%又は0.05%)を加えて仕掛りBを調製し、これを仕掛りA(ステンレス缶)に投入して混合し、溶解させた。その後、塩化セチルピリジニウム(0.05%)を前記混合液(ステンレス缶)に投入して溶解させた。最後にヒドロキシエチルセルロース(0.2%)を濃グリセリン(10%)に分散して調製した仕掛りDを、前記混合液(ステンレス缶)に投入して溶解させた。なお、用いたポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド(EO)の平均付加モル数は60であった。
【0049】
<比較例1>
ステンレス缶に水を入れ、クエン酸ナトリウム(0.07%)と無水クエン酸(0.01%)、濃グリセリン(10%)を溶解して仕掛りAを調製した。その後、別容器で温めたプロピレングリコール(3%)にパラオキシ安息香酸メチル(0.2%)及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(0.4%)を溶解し、これを酢酸トコフェロール(0.05%)を溶解させた香料と混合し、さらにβ−グリチルレチン酸(0.04%又は0.05%)を加えて仕掛りBを調製した。さらにヒドロキシエチルセルロース(0.2%)を仕掛りBに分散した後で、仕掛りA(ステンレス缶)に投入、溶解させた。最後に塩化セチルピリジニウム(0.05%)をステンレス缶に投入、溶解させた。
【0050】
実施例1のうち、β−グリチルレチン酸使用量が0.4%の場合を実施例1−1、0.5%の場合を実施例1−2と表記する。また、比較例1のうち、β−グリチルレチン酸使用量が0.4%の場合を比較例1−1、0.5%の場合を比較例1−2と表記する。
【0051】
実施例1−1及び実施例1−2の液体組成物は、いずれも析出は起こらず透明であった。一方、比較例1−1及び比較例1−2の液体組成物は、いずれも析出していた。(目視で確認)
【0052】
当該結果から、(B)β−グリチルレチン酸、トコフェロール、プロピレングリコール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合する工程、(C)塩化セチルピリジニウムを配合する工程、(D)ヒドロキシエチルセルロースを配合する工程、を、この順に行うことにより、β−グリチルレチン酸は析出することなく、安定に液体組成物に配合され得ることがわかった。また、工程(B)の前に(A)水と有機酸又はその塩とを混合する工程を含めてもよいことも確認できた。
【0053】
さらに、β−グリチルレチン酸、酢酸トコフェロール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の配合量を変更した以外は、上記実施例1と同様にして液体口腔用組成物を調製した。なお、変更分は水の量を調整することで得られる口腔用組成物の量は同じにした。用いたβ−グリチルレチン酸、酢酸トコフェロール、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の量を表1に示す。また、得られた液体口腔用組成物を1週間25℃で静置した後に目視観察し、析出がなく透明であれば「○」、析出がないが、若干白みを帯びていれば「△」、析出が生じていれば「×」、と評価した。当該評価も表1に示す。△の評価をつけた組成物は、析出はしないが、若干白みを帯びているため、それ以上β−グリチルレチン酸及び酢酸トコフェロールの配合量を増やすことは困難と考えられた。なお、製造評価していないものは「−」で示す。また、以下の表では、β−グリチルレチン酸はβGR、酢酸トコフェロールはVEA、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油はHCOと、それぞれ表記する。
【0054】
【表1】
【0055】
油溶性成分であるβ−グリチルレチン酸及び酢酸トコフェロールの配合量が多いほど析出し易く、界面活性剤であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の配合量が多いほど油溶性成分を溶解させ析出し難くなることから、上記表1の結果から製造評価していない液体口腔用組成物(「−」)の評価を予測した。予測評価結果を()に入れて表2に示す。また、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の各配合量において、△の評価を得たもののうち、最もβ−グリチルレチン酸及び酢酸トコフェロールの配合量が多いものについて、黒塗り三角「▲」で示す。
【0056】
【表2】
【0057】
さらに、表2おいて「▲」の評価を得た組成物について、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の配合量をX質量%、β−グリチルレチン酸及びトコフェロール合計配合量をY質量%、とし、横軸にXをプロットし、縦軸にY/Xをプロットしたグラフを作成した。当該グラフを
図1に示す。
【0058】
Y/X=−0.5429X+0.4952で示される直線上に4点がほぼプロットされた(R
2=0.957)。このことから、当該直線より下側の領域を満たすよう各成分が配合された液体口腔用組成物であれば、析出が起こらず長期安定であることが分かった。
【0059】
以上のことから、上述した特定の製造方法で製造し、且つ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の配合量をX質量%、β−グリチルレチン酸及びトコフェロール合計配合量をY質量%、としたとき、Y/X<−0.543X+0.495を満たす液体口腔用組成物であれば、析出が起こらず長期安定であると考えられた。