Leu−Arg−Alaからなるトリペプチドを含む、血小板凝集抑制、歯周病又は歯肉炎の改善熱産生の改善、育毛、男性機能不全予防又は治療、頻尿の改善、しわ又はたるみの改善、肌の調子を整える、肌保水、くすみ改善、健康的な肌色維持、爪の血色を整える、視力維持、又は腸内環境の改善のための、組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について、さらに詳細に説明する。
【0011】
本発明に包含される組成物は、Leu−Arg−Alaからなるトリペプチド(本明細書において「LRAペプチド」と記載する場合がある)を含む。なお、当該組成物を、「本発明の組成物」と記載する場合がある。
【0012】
LRAペプチドの製造方法は特に制限されず、例えば、公知のペプチド合成法を用いて化学合成により調製することができる。ペプチド合成法としては、例えば、アジド法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、DDC法、活性エステル法、カルボイミダゾール法、酸化還元法などのペプチド合成法を挙げることができる。これらのペプチド合成法は、固相合成法又は液相合成法のいずれによっても行うことができる。
【0013】
上記したペプチド合成法では、アミノ基、カルボキシ基、及び/又は側鎖官能基(例えば、アルギニン(Arg)のグアニジノ基など)を保護基により保護しておくことが好ましい。保護基としては、特に限定されず公知の保護基を用いることができ、例えば、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、tert−ブトキシカルボニル基(Boc)、フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc)、ベンジル基(Bz)、p−トルエンスルホニル基(p−Ts)などが挙げられる。
【0014】
また、上記したペプチド合成法によりLRAペプチドを合成した後、必要に応じて、公知の方法により精製したものをLRAペプチドとして用いることができる。
【0015】
LRAペプチドは、NOS(特にeNOS)でのNO産生を亢進させる。このため、本発明の組成物は、血管におけるNO産生に基づく効果を得るために有用である。このような効果としては、NOの公知の効果及び公知の効果から容易に想到される効果が挙げられる。例えば、本発明の組成物は、血圧降下効果、血管弛緩効果及び特に当該効果に基づく血管弾力性の向上又は維持効果、あるいは血小板凝集抑制効果及び特に当該効果に基づく抗動脈硬化効果、を得るために好ましく用いることができる。血管弾力性向上又は維持により、特に血管のしなやかさが向上又は維持され、血管の抗老化にもつながる。また、その他にも、例えば次に記載する効果を得るために好ましく用いることができる。歯周病又は歯肉炎の改善(健全な歯肉の維持、丈夫で健康的な歯肉の維持、など)、熱産生の改善(熱産生を亢進させることで(特に肥満ぎみな方の)体重・ウエスト・周囲径を減らす、など)、育毛(育毛を促進する、毛髪の成長を助ける、脱毛の進行を予防、抜け毛又は薄毛を防ぐなど)、男性機能不全予防又は治療(男性機能を健全に保つなど)、頻尿の改善(排尿の回数を整える、夜水分を取ると心配というヒト用など)、しわ又はたるみの改善、肌の調子を整える((特に末梢での血流を改善することで)、肌保水(乾燥を緩和する、など)、(特に血行を改善することによる)くすみの改善、健康的な肌色維持など)爪の血色を整える(健康的な爪の維持に役立つなど)網膜の維持(健全な視力の維持など)、腸内環境の改善(腸内細菌層を改善する、腸内環境を整えることで(特に肥満ぎみなヒトの)体重・ウエスト・周囲径を減らす、など)。
【0016】
本発明の組成物を用いる対象としては、例えば、ヒト、及びペット又は家畜などの非ヒト哺乳動物が挙げられ、特にヒトが好ましい。ヒトの場合、特に制限はされないが、例えば中年、初老又は老人程度の年齢のヒトが好ましく、より具体的には例えば30〜70歳、又は40〜60歳程度を挙げることができる。
【0017】
本発明の組成物の摂取量、摂取間隔などは特に限定的ではなく、適宜設定することができる。例えば、摂取量は、摂取対象の年齢、性別、体重、対象の健康状態、その他の条件(例えば種)に応じて適宜設定することができる。また、例えば、投与間隔については、1日1回又は複数回(好ましくは2〜3回)としてもよいし、数日〜数週間に1回又は複数回としてもよい。
【0018】
特に摂取対象がヒトである場合、LRAペプチド投与量は、例えば、成人一日あたり、10〜300μg程度が好ましく、15〜200μg程度がより好ましく、20〜100μg程度がさらに好ましく、30〜80μg程度がよりさらに好ましく、35〜70μg程度がなお好ましく、40〜60μg程度が特に好ましい。
【0019】
また、投与期間は、特に制限はされないが、3〜12週間又はそれ以上(3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12週間又はこれら以上)であることが好ましく、9〜12週又はそれ以上であることがより好ましい。
【0020】
投与対象が非ヒト哺乳動物の場合の投与形態、剤型、投与量、投与間隔などは、ヒトを投与対象とする場合を参考として適宜設定することができる。
【0021】
また、本発明の組成物の投与形態は本発明の効果が得られる限り特に制限されないが、経口組成物、又は経血管(経静脈又は経動脈)組成物が好ましく、経口組成物がより好ましい。
【0022】
本発明の組成物は、医薬組成物又は食品組成物などとして好ましく用いることができる。
【0023】
なお、本明細書において、食品組成物は、食品組成物のみならず、食塩代替物や甘味料、飲料等への添加物などの食品添加用組成物、業務用や家庭用の食材プレミックス品などの食品用材料組成物など、広く飲食品として摂取される組成物を包含する。
【0024】
本発明の組成物を医薬組成物として用いる場合、本発明の組成物は、LRAペプチドに加え、必要に応じて他の成分を含むことができる。当該他の成分としては特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、薬学的に許容される基剤、担体、及び/又は添加剤(例えば、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等)等が挙げられる。当該他の成分の配合量は目的に応じて適宜設定することができる。
【0025】
本発明の組成物を医薬組成物として用いる場合、その投与形態は特に限定的ではなく、例えば、経口投与、静脈内注射などが挙げられる。中でも、経口投与が好ましい。
【0026】
本発明の組成物を医薬組成物として用いる場合、その剤型は特に限定的ではなく、例えば、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、溶解錠などの錠剤;トローチ剤;散剤;懸濁剤;乳剤;エリキシル剤;リモナーデ剤;シロップ剤;ローション剤;顆粒剤;硬カプセル剤や軟カプセル剤などのカプセル剤;クリーム剤;軟膏剤;坐剤;パップ剤、テープ剤、マイクロニードル、イオントフォレシスやエレクトロポレーションなどの経皮/粘膜投与剤;エアゾール剤等が挙げられる。これらの形態は、LRAペプチドと、必要に応じて上記した他の成分とを組み合わせて常法により調製することができる。
【0027】
本発明の組成物を医薬組成物や医薬部外品として用いる場合、当該医薬組成物におけるLRAペプチドの配合量は、LRAペプチドの有する前記効果が発揮される量であれば特に限定的ではなく、適宜設定することができる。
【0028】
また、本発明の組成物を医薬組成物として用いる場合、投与量、投与間隔などは特に限定的ではなく、適宜設定することができる。例えば、投与量は、投与対象の年齢、性別、体重、対象の健康状態、その他の条件に応じて適宜設定することができる。また、例えば、投与間隔については、1日1回又は複数回(好ましくは2〜3回)としてもよいし、数日〜数週間に1回又は複数回としてもよい。また、投与対象は例えばヒト、及びペット又は家畜などの非ヒト哺乳動物が挙げられ、特にヒトが好ましい。
【0029】
特に投与対象がヒトである場合、LRAペプチド投与量は、例えば、成人一日あたり、10〜300μg程度が好ましく、15〜200μg程度がより好ましく、20〜100μg程度がさらに好ましく、30〜80μg程度がよりさらに好ましく、35〜70μg程度がなお好ましく、40〜60μg程度が特に好ましい。
【0030】
また、投与期間は、特に制限はされないが、3〜12週間又はそれ以上(3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12週間又はこれら以上)であることが好ましく、9〜12週又はそれ以上であることがより好ましい。
【0031】
投与対象が非ヒト哺乳動物の場合の投与形態、剤型、投与量、投与間隔などは、ヒトを投与対象とする場合を参考として適宜設定することができる。
【0032】
本発明の組成物を食品組成物として用いる場合、本発明の組成物は、LRAペプチドに加え、必要に応じて他の成分を含むことができる。当該他の成分としては特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、食品衛生学上許容される基剤、担体、添加剤や、その他食品として利用され得る成分・材料等が例示できる。
【0033】
本発明の組成物を食品組成物として用いる場合、その摂取形態は経口摂取である。この場合、本発明の組成物の形態は特に制限されず、一般食品や保健機能食品、特別用途食品に使用することができる。例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、病者用食品、嚥下困難者用食品、健康補助食品、栄養補助食品、病院食、介護食、加工食品、飲料、などが挙げられる。これらは常法により調製することができる。また、食品組成物の剤形形態としては、例えば、ハードカプセル、ソフトカプセル、サプリメント、チュアブル錠、飲料、粉末飲料、顆粒、フィルムなどの形態のほか、飲食品として使用する場合、例えば、茶系飲料、スポーツ飲料、美容飲料、果汁飲料、炭酸飲料、アルコール飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、水や湯、炭酸水等で希釈する濃縮タイプの飲料等の飲料、水や湯等に溶解または懸濁させて飲用する粉末や顆粒、タブレット等の乾燥固形物、タブレット菓子、ゼリー類、スナック類、焼き菓子、揚げ菓子、ケーキ類、チョコレート、ガム、飴、グミなどの菓子類、スープ類、めん類、米飯類、シリアル等などの食品形態にすることもできる。このうち通常の生活においては、サプリメントタイプ、チュアブル錠、ワンショットドリンクタイプなどの形態が好ましく、運動効果を高める目的で摂取する場合には、スポーツ飲料などの飲料の形態も好ましい。特に、保健機能食品、健康補助食品や栄養補助食品などとする場合には、継続的に摂取し易くするようにするため、例えば、顆粒、カプセル、タブレットや錠剤(チュアブル剤等を含む)、飲料(飲料パウダー、ドリンク剤等)、ゼリー剤などの形態とすることが好ましい。
【0034】
また、本発明の組成物を食品添加用組成物や食品用材料組成物として用いる場合には、その形態としては特に制限されず、例えば、液状、粉末状、フレーク状、顆粒状、ペースト状のものが挙げられる。より具体的には、調味料(甘味料、食塩代替組成物、醤油、酢、味噌、ソース、ケチャップ、ドレッシング、スパイス、ハーブ等、フレーク(ふりかけ、炊飯添加剤など)、焼き肉のたれ、ルーペースト(カレールーペースト等)、食材プレミックス品等が挙げられる。
【0035】
本発明の組成物を食品組成物として用いる場合、当該食品組成物におけるLRAペプチドの配合量は、LRAペプチドの有する前記効果が発揮される量であれば特に限定的ではなく、適宜設定することができる。
【0036】
また、本発明の組成物を食品組成物として用いる場合、摂取量、摂取間隔などは特に限定的ではなく、適宜設定することができる。例えば、摂取量は、摂取対象の年齢、性別、体重、対象の健康状態、その他の条件に応じて適宜設定することができる。例えば、摂取間隔については、上記した量を摂取する場合、1日1回又は複数回(好ましくは2〜3回)としてもよいし、数日〜数週間に1回又は複数回としてもよい。また、摂取対象はヒト、及びペット又は家畜などの非ヒト哺乳動物であってもよい。
【0037】
特に投与対象がヒトである場合、LRAペプチド摂取量は、例えば、成人一日あたり、10〜300μg程度が好ましく、15〜200μg程度がより好ましく、20〜100μg程度がさらに好ましく、30〜80μg程度がよりさらに好ましく、35〜70μg程度がなお好ましく、40〜60μg程度が特に好ましい。
【0038】
また、摂取期間は、特に制限はされないが、3〜12週間又はそれ以上(3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12週間又はこれら以上)であることが好ましく、9〜12週又はそれ以上であることがより好ましい。
【0039】
摂取対象となるヒトは、上記の通り例えば中年、初老又は老人程度の年齢のヒトが好ましく、より具体的には例えば30〜70歳、又は40〜60歳程度を挙げることができる。特に、年齢に伴う血管
摂取対象が非ヒト哺乳動物の場合の形態、摂取量、摂取間隔などは、ヒトが摂取対象である場合を参考として適宜設定することができる。
【0040】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。
【実施例】
【0041】
以下、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
参考例1:血圧降下作用の検討
実験動物として、雄性の高血圧自然発症ラット (SHR/Izm、12週齢;清水実験材料社)を用いた。飼料は固形SP飼料(船橋農場)、飲用水は水道水を使用し、試験中も含め自由摂食・自由飲水とした。ラットは、3週間(13〜15週齢)血圧測定への馴化期間を設けた後、本試験に使用した。なお、ラットは、LRAペプチド投与群及び対照群の2群に群分けした(各群:N=5)。また、LRAペプチドは、株式会社ペプチド研究所がBoc法により合成したものを用いた。納品されたLRAペプチドは、RP−HPLC、質量分析及びアミノ酸分析により、Leu−Arg−Alaからなるトリペプチドであることが確認されたものであった
上記製造例2で合成したLRAペプチドを生理食塩水に溶解させて、0.25mg/mlペプチド溶液を調製した。LRAペプチド投与群には、当該ペプチド溶液を0.25mg/kgとなるように、1ml容シリンジ及びテフロン(登録商標)製胃ゾンデを用いて胃内に強制経口投与し、対照群には、生理食塩水をサンプル投与群と同様にして強制経口投与した。投与前、並びに投与後2時間後及び4時間後の収縮期血圧をTail−cuff法で測定した。なお、血圧の測定には、室町機械株式会社製の血圧測定器(MK−2000ST)を用いた。なお、投与後2時間後及び4時間後の収縮期血圧が投与前の収縮期血圧に比べてどの程度低下したかを指標とした。結果を
図1に示す。
【0042】
LRAペプチド投与群は対照群に比べて投与後2時間後及び4時間後の収縮期血圧が有意に低下したことが分かった。当該結果から、LRAペプチドは優れた血圧降下作用を有することが分かった。
【0043】
参考例2:血圧降下作用への一酸化窒素の影響の検討
LRAペプチドが奏する血圧降下効果が、一酸化窒素(NO)を介して得られているものかを調べるため、一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害剤であるL−NAMEを投与した場合にも血圧降下効果が得られるのかを検討した。なお、同人堂社から購入したL−NAME塩酸塩を検討に用いた。
【0044】
【化1】
【0045】
また、上記と同様に調達した雄性の高血圧自然発症ラット (SHR/Izm、18〜26週齢;清水実験材料社)を検討に用いた。LRAペプチドは、RS synthesis社に合成依頼して調製した。
【0046】
なお、LRAペプチド及びL−NAME塩酸塩は、それぞれ生理食塩水に溶解させ、溶液として用いた。LRAペプチド溶液の濃度は10μM、L−NAME溶液の濃度は100μMとした。
【0047】
各ラットの収縮期血圧を測定した直後にLRAペプチド溶液をゾンデを用いて経口投与し、さらにL−NAME溶液を腹腔内投与した。さらに、当該投与2及び4時間後に収縮期血圧を測定した。血圧測定には、室町機械株式会社製の血圧測定器(MK−2000ST)を用い、Tail−cuff法で測定した。一回の測定につき、6回収縮期血圧を測定し、その平均値を採用した。
【0048】
以下に、ラットの群分けについて示す。
【0049】
【表1】
【0050】
収縮期血圧測定結果を
図2に示す。
図2では、縦軸は各群での、投与4時間後の収縮期血圧の変化量(投与0時間と比較)を示している。各群とも平均値±SE(標準誤差)で示している。*はP<0.05を示す。
【0051】
1mg/kgのLRAペプチドを投与したラット(群2)では、コントロール(群1)に対して有意な血圧降下が確認できた。一方、LRAペプチドに加えL−NAMEも投与されたラット(群3)では、有意な血圧降下は確認できず、このことからLRAの血圧降下作用がL−NAMEにより阻害されたことがわかった。なお、L−NAMEのみ投与したラット(群4)では有意な血圧降下は確認されなかった。
【0052】
LRAペプチドの血圧降下作用は、NOSの阻害剤であるL−NAMEによって完全に阻害された(
図2)ことから、当該血圧降下作用は、主にNOSでのNO産出を亢進することにより発揮されていると考えられた。
【0053】
実施例1:LRAペプチドによる血管機能改善効果の検討
上記結果から、LRAペプチドは、経口摂取により、NO産出を亢進すると考えられ、このためNO産出による血圧降下作用以外の効果も発揮する可能性が考えられた。例えば、NOは血管機能の改善(特に血管弾力性の向上又は維持)のために有用であることが知られている。そこで、LRAペプチドを摂取することにより、当該効果が得られるかを検討した。具体的には、LRAペプチドにより血管弛緩効果が得られるかどうかを検討した。なお、NOにより血管が弛緩することで、血圧降下効果のみならず、
【0054】
高血圧自然発症ラット (SHR/Izm、15〜34週齢;清水実験材料社)を検討に用いた。LRAペプチドは、RS synthesis社に合成依頼して調製した。LRAペプチド及びL−NAME塩酸塩は、それぞれ生理食塩水に溶解させ、溶液として用いた。LRAペプチド溶液の濃度は10μM、L−NAME溶液の濃度は100μMとした。
【0055】
前記ラットの腸間膜動脈を摘出し、螺旋状に切開して標本を作成した。Krebs−Henseleit栄養液{(120 mM NaCl, 4.7 mM KCl, 1.2 mM MgSO
4, 1.2 mM KH
2PO
4, 2.5 mM CaCl
2, 25 mM NaHCO
3, 10 mM Glucose)、37℃、5 % CO
2、95 % O
2混合ガス飽和}を満たしたマグヌス管中に当該標本を懸垂し、その張力 (緊張)変化を歪みトランスデューサー (三栄)を介してポリグラフ上に記録した 。なお、本検討では、腸間膜動脈標本をあらかじめフェニレフリン (血管収縮剤)で収縮させ、その後LRAペプチド、あるいはLRAペプチド及びL−NAMEを添加して、添加後の反応を観察した。その後、パパベリン(平滑筋弛緩剤)を添加して、腸間膜動脈標本を完全に弛緩させた。
【0056】
当該検討の実験器具の概要を
図3に示す。また、当該検討において得られたポリグラフの概要を
図4に示す。
図4のポリグラフの縦軸(収縮度合い)において、A(フェニレフリン添加時)からC(完全に弛緩した状態)を差し引いた値で、B(LRAペプチド添加時、又はLRAペプチド及びL−NAME添加時)からC(完全に弛緩した状態)を差し引いた値を割って算出される値(%)を弛緩率とした。すなわち、次のようにして弛緩率を求めた。
【0057】
弛緩率(%)=(A−B)/(A−C)×100
【0058】
LRAペプチドを添加した場合と、LRAペプチド及びL−NAMEを添加した場合との、弛緩率を、
図5に示す。*はP<0.05を示す。当該結果から、LRAペプチドは血管を弛緩させる作用を有すること、及び当該血管弛緩作用はNOS阻害剤であるL−NAMEにより阻害されること、が確認できた。このことから、LRAペプチドはNOSを亢進させ、NO産生を増大させることで血管弛緩作用を奏することが分かった。
【0059】
従って、LRAペプチドは、NOSを亢進させ、NO産生を増大させるために有用であり、また、NOは特に血管機能の改善(特に血管弾力性の向上又は維持)に大きく寄与していることが知られていることから、LRAペプチドは血管機能の改善(特に血管弾力性の向上又は維持)のために有用であることがわかった。さらには、LRAペプチドがNO産生を増大させることが確認されたことから、NOにより奏されることが知られている各効果、あるいは当該公知効果から容易に想到される効果を得るために、LRAペプチドを好ましく用いることができることもわかった。