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  • 特開2019099658-新規なピリジン化合物およびその応用 図000046
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-99658(P2019-99658A)
(43)【公開日】2019年6月24日
(54)【発明の名称】新規なピリジン化合物およびその応用
(51)【国際特許分類】
   C09B 57/00 20060101AFI20190603BHJP
   C09D 11/17 20140101ALI20190603BHJP
   C07D 213/74 20060101ALN20190603BHJP
   C07D 409/04 20060101ALN20190603BHJP
   C07D 405/04 20060101ALN20190603BHJP
   C07D 417/04 20060101ALN20190603BHJP
【FI】
   C09B57/00 ZCSP
   C09D11/17
   C07D213/74
   C07D409/04
   C07D405/04
   C07D417/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-230649(P2017-230649)
(22)【出願日】2017年11月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000103895
【氏名又は名称】オリヱント化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】渡部 ゆりか
【テーマコード(参考)】
4C055
4C063
4J039
【Fターム(参考)】
4C055AA01
4C055BA02
4C055BA03
4C055BA08
4C055BA16
4C055BA30
4C055BB02
4C055BB08
4C055CA02
4C055CA52
4C055CB02
4C055CB04
4C055DA01
4C055DA06
4C055DA30
4C055DB02
4C055DB10
4C055EA01
4C055FA15
4C055FA24
4C055FA31
4C055FA32
4C055FA37
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC62
4C063CC75
4C063CC92
4C063DD12
4C063EE10
4J039AD01
4J039AD07
4J039BC07
4J039BC13
4J039BC18
4J039BC50
4J039BE02
4J039BE12
4J039CA07
4J039DA05
4J039EA15
4J039EA17
4J039EA35
4J039GA26
4J039GA27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐光性が高く、鮮やかな黄色〜赤色の発色を示す新規なピリジン化合物及びその応用の提供。
【解決手段】式(1)で表される、ピリジン化合物。

[R及びRは、各々独立に、H、C1〜6のアルキル基、C1〜6のアシル基又は置換/無置換のC6〜20のアリール基;R〜Rは、各々独立に、H、C1〜8のアルキル基、C1〜6のアルコキシ基又はハロゲン原子;R〜R12は、各々独立に、H、C1〜8のアルキル基、C1〜6のアルコキシ基又はハロゲン原子;Arは置換/無置換の芳香族複素環基]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される、ピリジン化合物。
【化1】
[式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基または置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基であり、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子であり、R〜R12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子である。Arは置換または無置換の芳香族複素環基である。]
【請求項2】
前記式(1)におけるRおよびRが、炭素数1〜6のアルキル基または置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基である請求項1記載のピリジン化合物。
【請求項3】
前記式(1)におけるRおよびRが、エチル基またはp−トリル基である請求項2記載のピリジン化合物。
【請求項4】
前記式(1)におけるArがチエニル基、フリル基、チアゾリル基またはピリジニル基である請求項1記載のピリジン化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のピリジン化合物を含む着色剤。
【請求項6】
請求項5の記載の着色剤を含むインキ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペンやマーカー等の筆記具に用いられるインキ組成物に好適であり、耐光性が高く、鮮やかな黄色〜赤色の発色を示す新規なピリジン化合物およびその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
ロイコ染料は、電子受容性物質(通常は酸性物質)と反応して変色する染料であって、種々の用途に使用されている。特に、温度の変化により無色あるいは淡色から鮮やかな着色へ変化するものは、感熱記録材料への応用がなされている。
【0003】
それらの中で、ピリジン系の化合物、特にトリアリールピリジン系の化合物は、鮮やかな黄色の着色を示すロイコ染料であり注目されているが、これらのトリアリールピリジン系の化合物の多くは、耐光性が弱く、自然光もしくは室内光下で長時間暴露されると、比較的速やかに分解し、所望の性能を示さなくなることが知られている。例えば、特表2016−527345号公報(特許文献1)の[0028]段落〜[0030]段落には、いくつかのトリアリールピリジン化合物を染料として含有するインキはUV光の耐光性試験を行った結果、30分未満のUV光照射により、黄色の発色が消失したことを明記している。
【0004】
特許文献1は、そのようなトリアリールピリジン系の化合物の耐光性を改善すべく、検討されているが、現在必要とされている十分な耐光性は得られていない。
【0005】
特開2014−218053号公報(特許文献2)には、トリアリールピリジン系の化合物のロイコ染料で、耐光性や発色濃度が改善されたものが提案されている。しかしながら、特許文献2の染料は、トリアリールピリジン系の化合物であるので、基本的に耐光性が不足するもので、特許文献2では改善されたと記載しているものの更に耐光性を必要とする。また、特許文献2の化合物も発色濃度は必ずしも十分でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2016−527345号公報
【特許文献2】特開2014−218055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的としては、耐光性が高く、鮮やかな黄色〜赤色の発色を示す新規なピリジン化合物およびその応用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは前記課題を解決するために、鋭意検討した結果、本発明の新規なピリジン化合物の耐光性が高く、蛍光発色性に優れていることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明のピリジン化合物は下記式(1)、
【化1】
[式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基または置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基であり、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子であり、R〜R12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子である。Arは置換または無置換の芳香族複素環基である。]
で表されるものである。
【0010】
上記式(1)におけるRおよびRは、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基または置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基である。
【0011】
上記式(1)におけるRおよびRは、より好ましくはエチル基またはp−トリル基である。
【0012】
上記式(1)におけるArは、チエニル基、フリル基、チアゾリル基またはピリジニル基であってよい。
【0013】
本発明は、また、上記のいずれかに記載のピリジン化合物を含む着色剤を提供する。
【0014】
本発明は、更に、上記の着色剤を含むインキ組成物を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のピリジン化合物は、一般的なトリフェニルピリジン染料とは異なり、ピリジン環の4位にフェニル基ではなく、芳香族複素環基を有することで高い耐光性を発揮することができるものと考える。また、一般的なトリフェニルピリジン染料が可視光下でも、紫外光下でも黄色を示すのに対し、本発明のピリジン化合物は鮮やかな黄色〜赤色を示すため、ボールペンやマーカーなどのインキ組成物に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は実施例3〜5で得られたピリジン化合物の紫外可視分光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のピリジン化合物は、下記式(1)で表される。
【化2】
[式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基または置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基であり、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子であり、R〜R12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子である。Arは置換または無置換の芳香族複素環基である。]
【0018】
式(1)におけるRおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基または置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基を表す。RおよびRが炭素数1〜6のアルキル基である場合、溶解性が向上する。一方、RおよびRが置換または無置換のアリール基である場合、耐光性の向上およびpHの変化に伴う発色・消色に対する感度が高くなる(もしくは発色が良くなる)。そのためRおよびRは、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基または置換もしくは無置換の炭素数6〜20のフェニル基であり、より好ましくは共にエチル基またはp−トリル基である。
【0019】
式(1)のRおよびRにおける、炭素数1〜6のアルキル基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、neo−ペンチル基またはn−ヘキシル基などが挙げられる。好ましくは、RおよびRは、炭素数1〜4のアルキル基であって、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基またはt−ブチル基である。
【0020】
式(1)のRおよびRにおける、炭素数1〜6のアシル基の具体的な例としては、ホルミル基、アセチル基、n−プロピオニル基またはi−プロピオニル基などを挙げることができる。また本発明では、アミノ基に結合した2つのカルボン酸が縮環して二つのアシル基を有する環状構造を形成した、例えば具体的にはスクシンイミド基などもアシル基と定義する。
【0021】
式(1)のRおよびRにおける、置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基またはナフチル基が挙げられる。
【0022】
上記炭素数6〜20のアリール基は、置換基を有してもよく、置換基の例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基またはt−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基、F、Cl、BrまたはIなどのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、カルボン酸基または炭素数1〜3のアルコキシ基が挙げられる。上記置換基は、溶解性、発色性の観点において、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜3のアルコキシ基などが好ましい。
【0023】
上記式(1)におけるRおよびRが置換したアミノ基の具体例を以下の表に示す。ただしこれらに限定されるものではない。また以下の表内の構造式において*は結合部位を表す。
【0024】
【表1】
【0025】
式(1)におけるフェニル基の置換基であるR〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子である。具体的には、ハロゲン原子はF、Cl、BrまたはIなどであり、好ましくはClまたはBrである。炭素数1〜8のアルキル基はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基または2−エチルヘキシル基などである。炭素数1〜6のアルコキシ基はメトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基またはn−ヘキシルオキシ基などが挙げられる。R〜Rの炭素数1〜6のアルコキシ基の好ましい例として具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基またはi−プロピルオキシ基などが挙げられる。ピリジン化合物の耐光性、溶解安定性、蛍光発色性の観点からR〜Rのうち、少なくとも1つは炭素数1〜6のアルコキシ基であることが好ましい。さらにR〜Rのうち2つが炭素数1〜6のアルコキシ基であるとより好ましい。
【0026】
式(1)におけるフェニル基の置換基であるR〜R12は基本的にはR〜Rと同様であり、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子である。具体的には、ハロゲン原子はF、Cl、BrまたはIなどであり、好ましくはClまたはBrである。炭素数1〜8のアルキル基はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基または2−エチルヘキシル基などである。炭素数1〜6のアルコキシ基はメトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基またはn−ヘキシルオキシ基などが挙げられる。R〜R12の炭素数1〜6のアルコキシ基の好ましい例としては、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基またはi−プロピルオキシ基などが挙げられる。ピリジン化合物の耐光性、溶解安定性、蛍光発色性の観点からR〜R12のうち、少なくとも1つは炭素数1〜6のアルコキシ基であることが好ましい。さらにR〜R12のうち2つが炭素数1〜6のアルコキシ基であるとより好ましい。
【0027】
式(1)におけるピリジン環の2位および6位に置換するフェニル基の置換基(R〜R12)の例を以下の表に示す。化合物例は実施例中のピリジン化合物の番号とは対応していない。置換基は、表2の記載に限定されるものではない。
【0028】
【表2】
【0029】
本発明のピリジン化合物は電子受容性物質を加えることで、蛍光発色するが、その蛍光発色性はピリジン環に置換するフェニル基の置換基の置換位置により影響を受ける。本発明のピリジン化合物においてピリジン環に置換するフェニル基の置換基の置換位置は、2位および/または4位であることが好ましい。
【0030】
式(1)におけるArは、置換または無置換の芳香族複素環基を表す。芳香族複素環基は、例えば2種類以上の元素から構成される環式化合物であり、具体的にはピロリル基、ピラゾリル基、チエニル基、フリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、ピラジニル基、ピリダジニル基またはピリミジニル基などが挙げられる。本発明のピリジン化合物において、Arが含窒素芳香族複素環基であるピリジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基またはピリミジニル基である場合、耐光性が向上する。一方、Arが含酸素または含硫黄芳香族複素環基である、例えばチエニル基またはフリル基である場合、極大吸収波長が長波長化し、赤色に発色する。
【0031】
式(1)におけるArの置換基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基またはt−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基、F、Cl、BrまたはIなどのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、カルボン酸基または炭素数1〜3のアルコキシ基が挙げられる。
【0032】
本発明のピリジン化合物の製造方法
本発明のピリジン化合物の製造方法の一実施形態として説明する。本発明のピリジン化合物はJ.Am.Chem.Soc.,1952,74(1),200−202 などに記載の公知の方法で合成することができる。より詳しくはアンモニアまたはアンモニア発生剤の存在下、アセトフェノン誘導体とベンズアルデヒド誘導体を酢酸などの酸触媒下で加熱縮合し環化体を合成する環化体合成ステップと、得られた環化体をアミン化するアミン化ステップを経ることにより得ることができる。以下の反応ステップの説明において、一種のアセトフェノン誘導体を用いた合成方法を例示するが、これに限定されるわけではない。
【0033】
(環化体合成ステップ)
前記製造方法の例として、下記(2)式で表されるアセトフェノン誘導体と、
【化3】
[式(2)中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子である。]
【0034】
下記式(3)で表されるアルデヒド誘導体を、
【化4】
[式(3)中、Arは置換または無置換の芳香族複素環基であり、Xはハロゲン原子である。]
酢酸アンモニウム存在下、酢酸中で反応することにより、下記式(4)で表される環化体を合成することができる:
【0035】
【化5】
[式(4)中、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子であり、Arは置換または無置換の芳香族複素環基であり、Xはハロゲン原子である。]
【0036】
(アミン化ステップ)
得られた環化体(4)と下記式(5)で表されるアミン化合物とを、
【化6】
[式(5)中、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基または置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基である。]
有機溶媒中で触媒存在下反応させることにより、下記式(6)で表されるピリジン化合物を得ることができる。
【0037】
【化7】
[式(6)中、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基または置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基であり、R〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基またはハロゲン原子であり、Arは置換または無置換の芳香族複素環基である。]
【0038】
本発明のピリジン化合物が電子受容性物質存在下で蛍光を発色するためには、前記式(6)におけるR〜Rのうち、少なくとも1つは炭素数1〜6のアルコキシ基であることが好ましく、さらに2つが炭素数1〜6のアルコキシ基であることがより好ましい。アルコキシ基の置換位置は特に限定されないが、蛍光発色性、発色安定性の観点からオルト位および/またはパラ位に置換されていると鮮やかな蛍光を発色する。
【0039】
前記環化体合成ステップにおいて、式(2)で表されるアセトフェノン誘導体と式(3)で表されるアルデヒド誘導体の仕込み割合は、アルデヒド誘導体1molに対し、アセトフェノン誘導体は2〜5molであるのが好ましい。
【0040】
前記環化体合成ステップにおいて、酢酸アンモニウムの添加量は、アルデヒド誘導体1molに対し、5〜20倍molが好ましい。
【0041】
前記環化体合成ステップにおいて、特に限定されないが酢酸などの溶媒中で、100〜120℃で反応させることが好ましい。反応時間は反応が進行する時間であれば特に限定されないが、2〜10時間で行うことが好ましい。
【0042】
前記アミン化ステップにおける触媒としては、クロスカップリング反応に使用できる遷移金属触媒を挙げることができる。より具体的には、銅、パラジウム、ニッケル等の金属またはそれらの化合物が挙げられる。例えば、銅触媒としては、ヨウ化銅、塩化銅、酸化銅または臭化銅が例示され、銅錯体としては、チオフェン−2−カルボン酸銅(I)またはテトラキス(アセトニトリル)銅(I)ヘキサフルオロホスファートなどを例示することができる。またパラジウム触媒としては、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドまたは[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドを例示することができる。さらには酢酸パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)などの前駆体をトリフェニルホスフィン、トリ-t-ブチルホスフィンなどの配位子と系中で反応させて使用することもできる。ニッケル触媒としては、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジカルボニルまたはニッケルカルボニルなどを例示することができる。特に限定されないが、反応性の向上、収率向上の観点から酢酸パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)などの前駆体をトリフェニルホスフィンまたはトリ-t-ブチルホスフィンなどの配位子と系中で反応させて得られるパラジウム触媒が好ましい。
【0043】
前記アミン化ステップにおいて、特に限定されないが窒素気流下、トルエンなどの溶媒中で、100〜120℃で反応させることが好ましい。反応時間は反応が進行する時間であれば特に限定されないが、2〜10時間で行うことが好ましい。
【0044】
本発明におけるピリジン化合物の取り出し方法は、特に限定されない。例えば希アルカリ溶液にて中和後、水とメタノールの混合溶液に投入し、スラリー化すると、反応副生成物と分離することができるため、容易に得られた固形物をろ過等の方法で取り出すことができ、好ましい。このろ過の方法としては、特に限定されないが、例えば、ヌッチェ、加圧式ろ過器、遠心分離またはフィルタープレス等を用いることができる。更に得られたピリジン化合物をメタノールで洗浄してもよい。
【0045】
本発明のピリジン化合物は従来のトリアリールピリジン化合物と比較し、4位に芳香族複素環基を置換した構造であり、耐光性、発色性が高く、有機酸などの電子受容性物質と共存することにより蛍光発色する。そのため着色剤やボールペンやマーカーペンなどの筆記具用インキ組成物に好適に用いることができる。
【0046】
(着色剤)
本発明の着色剤は染料成分として本発明のピリジン化合物を含有する。さらに必要に応じて、公知の染料を含んでもよい。また、前記着色剤を有機溶媒からなる液媒体、水を主成分とする液媒体、水および水と親和性を有する親水性有機溶媒からなる液媒体、合成樹脂からなる樹脂媒体などの希釈媒体と混合して用いることができる。
【0047】
前記有機溶媒や水と親和性を有する親水性有機溶媒からなる液媒体としては、特に限定されないが、本発明のピリジン化合物の溶解性の高い液媒体が好ましい。本発明のピリジン化合物の溶解性の高い有機溶媒としては、メチルエチルケトンなどのケトン類が例示される。
【0048】
前記着色剤は、従来公知のトリフェニルピリジン染料を含む着色剤と同様に、染色剤、捺染剤、筆記具用インキ、インクジェット用インキ、樹脂着色剤、カラーフィルター用着色剤などに好適に利用される。
【0049】
(筆記具用インキ組成物)
本発明の筆記具用インキ組成物は、少なくとも本発明のピリジン化合物を含む着色剤と、液媒体と、この液媒体に溶解する樹脂とを含むものであり、ボールペン、マーキングペン、サインペンのような筆記具に充填されることにより好適に用いられる。着色剤の含有量は、筆記具用インキ組成物全量に対して、0.5〜35質量%であることが好ましく、2〜20質量%であることがより好ましい。含有量が0.5質量%未満であると、筆記具用インキ組成物の着色力、発色性が不十分となってしまう。一方35質量%を超えると筆跡にカスレが生じてしまう。
【0050】
この筆記具用インキ組成物を用いて、着色剤を含有する油性インキを処方することができ、このインキを充填した筆記具による筆跡は、発色性、耐光性に優れている。
【0051】
筆記具用インキ組成物に含まれる液媒体として、アルコール系溶剤、多価アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、ジエーテル系溶剤、ケトン系溶剤およびエステル系溶剤のような溶剤を挙げることができる。溶剤の含有量は、筆記具の種類や、染顔料の種類および含有量に応じて適宜設定されるが、筆記具用インキ組成物全量に対して、20〜97質量%であることが好ましく、30〜95質量%であることがより好ましい。
【0052】
アルコール系溶剤は、炭素数が2以上の脂肪族アルコールであり、具体的には、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、イソアミルアルコール、s−アミルアルコール、3−ペンタノール、t−アミルアルコール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール、ノナノール、n−デカノール、ウンデカノール、n−デカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコールまたは2−フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0053】
多価アルコール系溶剤として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコールまたはオクチレングリコールのような分子内に2個以上の炭素および2個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールまたはこれらの誘導体が挙げられる。
【0054】
グリコールエーテル系溶剤として、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルまたはテトラプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0055】
ジエーテル系溶剤として、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルまたはジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0056】
ケトン系溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノンまたはシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0057】
エステル系溶剤として、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソアミル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸プロピル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、トリメチル酢酸プロピル、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、カプロン酸プロピル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、カプリル酸トリグリセライド、クエン酸トリブチルアセテート、オキシステアリン酸オクチル、プロピレングリコールモノリシノレート、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、3−メトキシブチルアセテートまたは分子内にヒドロキシ基を有しないジエステルが挙げられる。
【0058】
筆記具用インキ組成物は、インキの定着性向上、筆跡の裏写り防止、染顔料の溶解性および分散性向上、並びに粘度調整のため樹脂を含んでいる。この樹脂は、上記の液媒体である溶剤に溶解するものである。樹脂の含有量は、粘度調整および書き味の調整の観点から、筆記具用インキ組成物全量に対して、0.5〜35質量%であることが好ましく、1.0〜20質量%であることがより好ましい。含有量が0.5質量%未満であると筆記具用インキ組成物の粘度が不足して筆跡の滲みや、ボールペンのペン先の摩耗が起きる場合がある。一方35質量%を超えると筆記具用インキ組成物に含まれるべき溶剤や染顔料の不足や、筆跡にカスレを生じ書き味に悪影響を及ぼす場合がある。
【0059】
このような樹脂として、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンのようなケトン系樹脂;ポリスチレンのようなスチレン系樹脂;ポリビニルブチラールのようなポリビニルアセタール系樹脂;ポリビニルピロリドン;ロジン変性マレイン酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂のようなマレイン酸系樹脂;ロジン変性フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂のようなフェノール系樹脂;スチレン−アクリル樹脂のようなアクリル系樹脂;ロジン系樹脂;尿素アルデヒド系樹脂;またはシクロヘキサノン系樹脂が挙げられる。なかでもポリビニルブチラール樹脂が好ましい。
【0060】
筆記具用インキ組成物は、必要に応じて電子受容性物質、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤およびpH調整剤を含んでいてもよい。
【0061】
前記電子受容性物質は添加することによりUV光を照射した際に蛍光を発色する。筆記具用インキ組成物における好適な電子受容性物質としては、特に限定されないが、一般的に有機酸や媒体中で酸性物質のような働きをする酸性物質が挙げられる。具体的には、ビスフェノールA、β−ナフトール、4−t−ブチルフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンなどのフェノール化合物や、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−t−ブチル安息香酸、サリチル酸、3−t−ブチルサリチル酸、3−(α−メチルベンジル)サリチル酸または3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸等の芳香族カルボン酸などが例示される。なお特に限定されるわけではないが、前記インキ組成物において本発明のピリジン化合物1重量部に対し、電子受容性物質は0.1〜3質量部添加することが好ましい。
【0062】
前記酸化防止剤は特には限定されないがヒンダードフェノール系酸化防止剤を例示することができる。さらに具体的には2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)または1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンが挙げられる。前記インキ組成物において本発明のピリジン化合物1重量部に対し、酸化防止剤は0.01〜2質量部添加することが好ましい。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものと解してはならない。
【0064】
(ピリジン化合物の合成)
(合成例1:環化体1の合成)
50mlの三口フラスコに5−ブロモ−2−ピリジンカルボキシアルデヒド(東京化成工業社製)1.00g(5.38mmol)と4’−メトキシアセトフェノン(東京化成工業社製)1.62g(10.8mmol)、酢酸アンモニウム7.17g(93.0mmol)酢酸6gを加え、120℃で6時間撹拌した。室温まで放冷し、60℃の熱水15mlを加え、トルエンで抽出した。トルエン相を6%水酸化ナトリウム水溶液25ml、60℃の熱水25mlで順次洗浄を行った。回収したトルエン相にエタノール10mlを加え、一晩放冷し析出物を濾取した。析出物をエタノール10mlで洗浄後、60℃で乾燥して下記式(7)で表される環化体1として白色固体0.92g(収率38.2%)を得た。
【0065】
【化8】
【0066】
得られた白色固体を元素分析装置(EA:パーキンエルマージャパン社製 2400II 全自動元素分析装置)および1H−核磁気共鳴装置(NMR:日本電子社製 JNM−AL300)、示差熱・熱重量測定(TG/DTA:SIIナノテクノロジーズ社製 TG/DTA6200)の測定を行なった。結果を以下に示す。これらの結果から、環化体1が前記化学式(7)の構造であることを確認した。
【0067】
【表3】
【0068】
融点:145.3℃
H NMR(CDCl,300MHz)δ(ppm):
3.93(6H,s)、6.55(4H,d)、7.35(1H,dd)、7.66(1H,d)、8.03(4H,d)、8.38(2H,s)、8.43(1H,d)
【0069】
(合成例2:環化体2の合成)
500mlの三口フラスコに5−ブロモ−2−ピリジンカルボキシアルデヒド(東京化成工業社製)10.0g(53.8mmol)と2’,4’−ジエトキシアセトフェノン(SIGMA−ALDRICH社製)23.9g(115mmol)、酢酸アンモニウム71.7g(930mmol)、酢酸60gを加え120℃で6時間撹拌した。室温まで放冷し、60℃の熱水150mlを加え、トルエンで抽出した。トルエン相を6%水酸化ナトリウム水溶液250ml、60℃の熱水250mlで順次洗浄を行った。回収したトルエン相にエタノール100mlを加え、一晩放冷し析出物を濾取した。析出物をエタノール100mlで洗浄後、60℃で乾燥して下記式(8)で表される環化体2として白色固体10.0g(収率32.9%)を得た。
【0070】
【化9】
【0071】
得られた白色固体を合成例1と同様にし、元素分析および1H−NMR,TG/DTAの測定を行なった。結果を以下に示す。これらの結果から、環化体2が前記化学式(8)の構造であることを確認した。
【0072】
【表4】
【0073】
融点:148.1℃
H NMR(CDCl,300MHz)δ(ppm):
1.49(12H,t)、4.09(8H,q)、6.55(2H,d)、6.61(2H,dd)、7.75(1H,d)、7.93(1H,d)、8.05(2H,d)、8.43(1H,d)、8.79(1H,d)
【0074】
(合成例3:環化体3の合成)
(1−クロロ−2,4−ジエトキシベンゼンの合成)
300mlフラスコに4−クロロレゾルシノール(東京化成工業社製)12.5g(86.5mmol)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル40gを加え、70℃まで加熱し、4−クロロレゾルシノールが完全に溶解するまで撹拌を行った。4−クロロレゾルシノールが完全に溶解したことを目視にて確認後、これにp−トルエンスルホン酸エチル45.1g(225mmol)を加え、その後20%水酸化ナトリウム水溶液48.5g(242mmol)を1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、3時間撹拌を行い、さらに80℃まで昇温し、1時間撹拌を行った。室温まで放冷し、イオン交換水100mlを加え、しばらく撹拌を行った。冷蔵庫で一晩静置し、析出物を濾取し、イオン交換水200mlで洗浄し、40℃で乾燥を行い、黄白色固体15.5g(収率89.2%)を得た。
【0075】
(1−クロロ−2,4−ジエトキシアセトフェノンの合成)
前記反応により得られた1−クロロ−2,4−ジエトキシベンゼン、15.5g(77.2mmol)を100mlのフラスコに加え、ジクロロメタン60mlを加え、完溶させた。これに硫酸マグネシウムを加え脱水した後、ろ過した。濾液を100mlのフラスコに加え、撹拌しながら塩化アルミニウム10.4g(78.0mmol)を加え、氷浴下10℃まで冷却後、塩化アセチル6.12g(78.0mmol)を30分かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後1時間半撹拌し、次いで氷水100gへ投入し、これに濃塩酸50.0gを加えた。さらにジクロロメタン100mlを追加し、分液漏斗を用いて、ジクロロメタン相を回収し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液100mlで中和後、硫酸マグネシウムで脱水し、得られたジクロロメタン相をエバポレーターにて溶媒を減圧留去し、淡黄色の固体16.5g(収率88.1%)を得た。
【0076】
(環化体3の合成)
50mlの三口フラスコに5−ブロモ−2−ピリジンカルボキシアルデヒド(東京化成工業社製)1.00g(5.38mmol)と1−クロロ−2,4−ジエトキシアセトフェノン2.62g(10.8mmol)、酢酸アンモニウム7.17g(93mmol)、酢酸6gを加え、120℃で6時間撹拌した。室温まで放冷し、60℃の熱水15mlを加え、トルエンで抽出した。トルエン相を6%水酸化ナトリウム水溶液25ml、60℃の熱水25mlで順次洗浄を行った。回収したトルエン相にエタノール10mlを加え、一晩放冷し析出物を濾取した。析出物をエタノール10mlで洗浄後、60℃で乾燥して下記式(9)で表される環化体3として淡黄色固体1.06g(収率29.7%)を得た。
【0077】
【化10】
【0078】
得られた淡黄色固体を合成例1と同様にし、元素分析および1H−NMR,TG/DTAの測定を行なった。結果を以下に示す。これらの結果から、環化体3が前記化学式(9)の構造であることを確認した。
【0079】
【表5】
【0080】
融点:166.3℃
H NMR(CDCl,300MHz)δ(ppm):
1.50(12H,t)、4.09(8H,q)、6.59(2H,s)、7.35(1H,d)、7.66(1H,d)、8.00(2H,s)、8.39(2H,s)、8.43(1H,s)
【0081】
(環化体4の合成)
200mlの三口フラスコに5−ブロモ−2−チオフェンカルボキシアルデヒド(東京化成工業社製)5.0g(26.2mmol)と2’,4’−ジエトキシアセトフェノン(SIGMA−ALDRICH社製)11.9g(57.1mmol)、酢酸アンモニウム34.9g(453mmol)、酢酸30gを加え120℃で6時間撹拌した。室温まで放冷し、60℃の熱水75mlを加え、トルエンで抽出した。トルエン相を6%水酸化ナトリウム水溶液75ml、60℃の熱水75mlで順次洗浄を行った。回収したトルエン相にエタノール50mlを加え、一晩放冷し析出物を濾取した。析出物をエタノール50mlで洗浄後、60℃で乾燥して下記式(10)で表される環化体4として淡黄色固体5.93g(収率39.8%)を得た。
【0082】
【化11】
【0083】
得られた淡黄色固体を合成例1と同様にし、元素分析および1H−NMR,TG/DTAの測定を行なった。結果を以下に示す。これらの結果から、環化体4が前記化学式(10)の構造であることを確認した。
【0084】
【表6】
【0085】
融点:142.0℃
H NMR(CDCl,300MHz)δ(ppm):
1.47(12H,t)、4.09(8H,q)、6.55(2H,d)、6.61(2H,dd)、7.08(1H,d)、7.25(1H,d)、8.01(2H,s)、8.06(2H,d)
【0086】
(環化体5の合成)
200mlの三口フラスコに5−ブロモ−2−フランカルボキシアルデヒド(東京化成工業社製)5.1g(29.1mmol)と2’,4’−ジエトキシアセトフェノン(SIGMA−ALDRICH社製)13.0g(62.4mmol)、酢酸アンモニウム38.8g(503mmol)、酢酸30gを加え120℃で6時間撹拌した。室温まで放冷し、60℃の熱水75mlを加え、トルエンで抽出した。トルエン相を6%水酸化ナトリウム水溶液75ml、60℃の熱水75mlで順次洗浄を行った。回収したトルエン相にエタノール50mlを加え、一晩放冷し析出物を濾取した。析出物をエタノール50mlで洗浄後、60℃で乾燥して下記式(11)で表される環化体5として淡黄色固体6.01g(収率37.4%)を得た。
【0087】
【化12】
【0088】
得られた淡黄色固体を合成例1と同様にし、元素分析および1H−NMR,TG/DTAの測定を行なった。結果を以下に示す。これらの結果から、環化体5が前記化学式(11)の構造であることを確認した。
【0089】
【表7】
【0090】
融点:134.0℃
H NMR(CDCl,300MHz)δ(ppm):
1.33(6H,t)、1.52(6H,t)、4.07(8H,q)、5.83(1H,d)、6.53(2H,d)、6.61(2H,dd)、6.79(1H,d)、8.01(2H,s)、8.38(2H,d)
【0091】
(環化体6の合成)
300mlの三口フラスコに2−ブロモ−5−チアゾールカルボキシアルデヒド(SIGMA−ALDRICH社製)5.63g(29.3mmol)と2’,4’−ジエトキシアセトフェノン(SIGMA−ALDRICH社製)13.0g(62.4mmol)、酢酸アンモニウム39.1g(507mmol)、酢酸30gを加え120℃で6時間撹拌した。室温まで放冷し、60℃の熱水75mlを加え、トルエンで抽出した。トルエン相を6%水酸化ナトリウム水溶液75ml、60℃の熱水75mlで順次洗浄を行った。回収したトルエン相にエタノール50mlを加え、一晩放冷し析出物を濾取した。析出物をエタノール50mlで洗浄後、60℃で乾燥して下記式(12)で表される環化体6として淡黄色固体5.37g(収率32.2%)を得た。
【0092】
【化13】
【0093】
得られた淡黄色固体を合成例1と同様にし、元素分析および1H−NMR,TG/DTAの測定を行なった。結果を以下に示す。これらの結果から、環化体5が前記化学式(12)の構造であることを確認した。
【0094】
【表8】
【0095】
融点:135.2℃
H NMR(CDCl,300MHz)δ(ppm):
1.45(12H,t)、4.09(8H,q)、6.54(2H,d)、6.60(2H,dd)、7.67(1H,s)、7.95(2H,s)、8.09(2H,d)
【0096】
(実施例1)ピリジン化合物1の合成
50mlの三口フラスコに合成例1で得られた環化体1 3.61g(8.07mmol)、ジエチルアミン(東京化成工業社製)0.59g(8.07mmol)、トルエン17ml、トリ−t−ブチルホスフィン0.19g(0.94mmol)、酢酸パラジウム(II)0.07g(0.31mmol)、ナトリウム−t−ブトキシド1.09g(11.3mmol)を秤取り、窒素を充填した。100℃に加熱し、5時間撹拌したのち、室温まで放冷した。ジクロロメタン50mlを加え、濾過した。溶媒を減圧留去し、フラスコ内の残留物にメタノール10mlを加えてスラリー化した。濾過後、メタノール20mlで洗浄した。ウェットケーキにトルエン20mlを加え、100℃に加熱して完溶させ、熱時濾過した。濾液を冷蔵庫で一晩静置し、結晶を濾取した。メタノール10mlで洗浄し、60℃で一晩乾燥し、下記式(13)で表されるピリジン化合物1である黄色固体0.68g(収率19.2%)を得た。
【0097】
【化14】
【0098】
得られた黄色固体を合成例1と同様に元素分析および1H−NMR,TG/DTAの測定を行なった。結果を以下に示す。これらの結果から、ピリジン化合物1が前記化学式(13)の構造であることを確認した。
【0099】
【表9】
【0100】
融点:148.2℃
H NMR(CDCl,300MHz)δ(ppm):
1.12(6H,t)、2.99(4H,q)、3.93(6H,s)、6.55(4H,d)、7.35(1H,d)、7.66(1H,d)、8.03(4H,d)、8.38(2H,s)、8.43(1H,d)
【0101】
(極大吸収波長の測定)
得られたピリジン化合物1の吸収スペクトルを紫外可視分光光度計Pharma Spec UV−1700(株式会社島津製作所製)により、以下の測定条件にて測定を行い、極大吸収波長λmaxを測定した。
【0102】
吸光度の測定条件としては測定対象サンプル10mgをメタノール:80%酢酸=80:20に調整した混合溶液100mlに溶解させ、さらに前記混合溶液で10倍に希釈した後、ポア径が0.5μmの耐溶剤性メンブレンフィルターで濾過してサンプル溶液とした。
【0103】
ピリジン化合物1の極大吸収波長λmaxは以下の通りであった。
λmax=402.4nm
【0104】
(耐光性試験)
得られたピリジン化合物1の耐光性試験を耐光性試験機サンテストCPS+(アトラス・エレクトリック・デバイス社製)により光照射を行い、高速液体クロマトグラフィーProminenceLC−20AT(株式会社島津製作所製)にて、光照射前後のピーク面積より算出した。
【0105】
耐光性試験の測定条件としては、測定対象サンプル10mgをメタノール:80%酢酸=80:20に調整した混合溶液100mlに溶解させ、さらに前記混合溶液で10倍に希釈した後、ポア径が0.5μmの耐溶剤性メンブレンフィルターで濾過してサンプル溶液とした。このサンプル溶液10mlを15mlのスクリュー型サンプル管に加え、キャップにより密栓し、スクリュー型サンプル管を耐光性試験機内で窓越しの光を想定した光強度(照射強度30w/m、300−400nm)にて10時間照射した。光照射前のサンプル及び光照射後のサンプルについて高速液体クロマトグラフィーにより測定し、面積値の比較より、ピリジン化合物の残存率を算出した。得られた結果を表18に示す。
【0106】
高速液体クロマトグラフィーは以下の条件で測定を行った。
カラム:化学物質評価機構製 L−COLUMNODS2(4.6×250mm、5μm)
移動相:テトラヒドロフラン(和光純薬製HPLCグレード):25mM酢酸アンモニウム水溶液(pH4)=70:30
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
測定波長:365nm
【0107】
(実施例2)ピリジン化合物2の合成
50mlの三口フラスコに合成例2で得られた環化体2 4.56g(8.09mmol)、ジエチルアミン(東京化成工業社製)0.59g(8.09mmol)、トルエン17ml、トリ−t−ブチルホスフィン0.19g(0.94mmol)、酢酸パラジウム(II)0.07g(0.31mmol)、ナトリウム−t−ブトキシド1.09g(11.3mmol)を秤取り、窒素を充填した。100℃に加熱し、5時間撹拌したのち、室温まで放冷した。ジクロロメタン50mlを加え、濾過した。溶媒を減圧留去し、フラスコ内の残留物にメタノール10mlを加えてスラリー化した。濾過後、メタノール20mlで洗浄した。ウェットケーキにトルエン20mlを加え、100℃に加熱して完溶させ、熱時濾過した。濾液を冷蔵庫で一晩静置し、結晶を濾取した。メタノール10mlで洗浄し、60℃で一晩乾燥し、下記式(14)で表されるピリジン化合物2である黄色固体0.76g(収率21.4%)を得た。
【0108】
【化15】
【0109】
得られた黄色固体を合成例1と同様に元素分析および1H−NMR,TG/DTAの測定を行なった。結果を以下に示す。これらの結果から、ピリジン化合物2が前記化学式(14)の構造であることを確認した。
【0110】
【表10】
【0111】
融点:150.9℃
H NMR(CDCl,300MHz)δ(ppm):
1.12(6H,t)、1.40(12H,t)、2.99(4H,q)、4.17(8H,q)、6.55(2H,d)、6.61(2H,dd)、7.35(1H,d)、7.66(1H,d)、8.01(2H,d)、8.38(2H,s)、8.43(1H,d)
【0112】
得られたピリジン化合物2について、実施例1と同様に極大吸収波長を測定した。
極大吸収波長λmaxは以下の通りであった。
λmax=409.7nm
【0113】
(耐光性試験)
得られたピリジン化合物2について実施例1と同様に、耐光性試験を行った。結果を表18に示す。
【0114】
(実施例3)ピリジン化合物3の合成
50mlの三口フラスコに合成例2で得られた環化体2 4.56g(8.09mmol)、p,p’−ジトリルアミン1.60g(8.11mmol)、トルエン17ml、トリ−t−ブチルホスフィン0.19g(0.94mmol)、酢酸パラジウム(II)0.07g(0.30mmol)、ナトリウム−t−ブトキシド1.09g(11.3mmol)を秤取り、窒素を充填した。100℃に加熱し、5時間撹拌したのち、室温まで放冷した。ジクロロメタン50mlを加え、濾過した。溶媒を減圧留去し、フラスコ内の残留物にメタノール10mlを加えてスラリー化した。濾過後、メタノール20mlで洗浄した。ウェットケーキにトルエン20mlを加え、100℃に加熱して完溶させ、熱時濾過した。濾液を冷蔵庫で一晩静置し、結晶を濾取した。メタノール10mlで洗浄し、60℃で一晩乾燥し、下記式(15)で表されるピリジン化合物3である黄色固体2.91g(収率52.9%)を得た。
【0115】



【化16】
【0116】
得られた黄色固体を合成例1と同様に元素分析および1H−NMR、TG/DTAの測定を行なった。結果を以下に示す。これらの結果から、ピリジン化合物3が前記化学式(15)の構造であることを確認した。
【0117】
【表11】
【0118】
融点:175.6℃
H NMR(CDCl、300MHz)δ(ppm):
1.44(12H,q)、2.34(6H,s)、4.09(8H,q)、6.55(2H,d)、6.61(2H,dd)、7.09(8H,m)、7.35(1H,d)、7.66(1H,d)、8.01(2H,d)、8.38(2H,S)、8.43(1H,d)
【0119】
得られたピリジン化合物3について、実施例1と同様に極大吸収波長を測定した。
極大吸収波長λmaxは以下の通りであった。結果を図1に示す。
λmax=410.3nm
【0120】
(耐光性試験)
得られたピリジン化合物3について実施例1と同様に、耐光性試験を行った。結果を表18に示す。
【0121】
(実施例4)ピリジン化合物4の合成
環化体2のかわりに環化体4 4.61g(8.10mmol)を用い、メタノール洗浄後の結晶の乾燥温度を30℃とした以外は実施例3と同様の操作を行い、下記式(16)で表されるピリジン化合物4である黄色固体2.71g(収率48.8%)を得た。
【0122】
【化17】
【0123】
得られた黄色固体を合成例1と同様にし、元素分析および1H−NMR、TG/DTAの測定を行なった。結果を以下に示す。これらの結果から、ピリジン化合物4が前記化学式(16)の構造であることを確認した。
【0124】
【表12】
【0125】
融点:82.5℃
H NMR(CDCl、300MHz)δ(ppm):
1.43(12H,q)、2.33(6H,s)、4.08(8H,q)、6.53(2H,d)、6.60(2H,dd)、7.10(8H,m)、7.19(1H,d)、7.27(1H,d)、7.96(2H,S)、8.03(2H,d)
【0126】
得られたピリジン化合物4について、実施例1と同様に極大吸収波長を測定した。
極大吸収波長λmaxは以下の通りであった。結果を図1に示す。
λmax=482.4nm
【0127】
(耐光性試験)
得られたピリジン化合物4について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。結果を表18に示す。
【0128】
(実施例5)ピリジン化合物5の合成
環化体2のかわりに環化体5 4.46g(8.07mmol)を用いた以外は実施例3と同様の操作を行い、下記式(17)で表されるピリジン化合物5である淡黄色固体2.89g(収率53.5%)を得た。
【0129】
【化18】
【0130】
得られた黄色固体を合成例1と同様にし、元素分析および1H−NMR、TG/DTAの測定を行なった。結果を以下に示す。これらの結果から、ピリジン化合物5が前記化学式(17)の構造であることを確認した。
【0131】
【表13】
【0132】
融点:150.5℃
H NMR(CDCl、300MHz)δ(ppm):
1.29(6H,t)、1.48(6H,t)、2.31(6H,s)、4.05(8H,q)、5.85(1H,d)、6.51(2H,d)、6.59(2H,dd)、6.81(1H,d)、7.04(8H,m)、7.99(2H,s)、8.03(2H,d)
【0133】
得られたピリジン化合物5について、実施例1と同様に極大吸収波長を測定した。
極大吸収波長λmaxは以下の通りであった。結果を図1に示す。
λmax=479.2nm
【0134】
(耐光性試験)
得られたピリジン化合物5について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。結果を表18に示す。
【0135】
(実施例6)ピリジン化合物6の合成
環化体2のかわりに環化体6 4.61g(8.11mmol)を用いた以外は実施例3と同様の操作を行い、下記式(18)で表されるピリジン化合物6である黄色固体2.55g(収率45.9%)を得た。
【0136】
【化19】
【0137】
得られた黄色固体を合成例1と同様にし、元素分析および1H−NMR、TG/DTAの測定を行なった。結果を以下に示す。これらの結果から、ピリジン化合物6が前記化学式(18)の構造であることを確認した。
【0138】
【表14】
【0139】
融点:152.4℃
H NMR(CDCl、300MHz)δ(ppm):
1.41(12H,q)、2.35(6H,s)、4.06(8H,q)、6.52(2H,d)、6.59(2H,dd)、7.24(8H,m)、7.69(1H,s)、7.89(2H,s)、8.06(2H,d)
【0140】
得られたピリジン化合物6について、実施例1と同様に極大吸収波長を測定した。極大吸収波長λmaxは以下の通りであった。
λmax=413.3nm
【0141】
(耐光性試験)
得られたピリジン化合物6について,実施例1と同様に、耐光性試験を行った。結果を表18に示す。
【0142】
(実施例7)ピリジン化合物7の合成
環化体2のかわりに環化体3 5.14g(8.14mmol)を用いた以外は実施例3と同様の操作を行い、下記式(18)で表されるピリジン化合物7である黄色固体2.49g(収率40.9%)を得た。
【0143】
【化20】
【0144】
得られた黄色固体を合成例1と同様にし、元素分析および1H−NMR、TG/DTAの測定を行なった。塩素の含有量については塩素・硫黄分析装置(三菱化学アナリテック社製、製品名TOX−2100H)にて定量を行った。結果を以下に示す。これらの結果から、ピリジン化合物7が前記化学式(19)の構造であることを確認した。
【0145】
【表15】
【0146】
融点:193.0℃
H NMR(CDCl、300MHz)δ(ppm):
1.41(12H,q)、2.35(6H,s)、4.06(8H,q)、6.52(2H,s)、7.08(8H,m)、7.35(2H,dd)、7.69(1H,d)、8.00(2H,s)、8.39(2H,s)、8.43(1H,s)
【0147】
得られたピリジン化合物7について、実施例1と同様に極大吸収波長を測定した。
極大吸収波長λmaxは以下の通りであった。
λmax=416.8nm
【0148】
(耐光性試験)
得られたピリジン化合物7について,実施例1と同様に、耐光性試験を行った。結果を表18に示す。
【0149】
(比較合成例1:比較環化体1)
100mlの三口フラスコにp−ブロモベンズアルデヒド2.00g(10.80mmol)、4’−メトキシアセトフェノン3.24g(21.6mmol)、酢酸アンモニウム14.4g(186mmol)を酢酸12gに加え、120℃で6時間撹拌した。室温まで放冷し、60℃の熱水30mlを加え、トルエンで抽出した。トルエン相を6%水酸化ナトリウム水溶液50ml、60℃の熱水50mlで順次洗浄した。回収したトルエン相にエタノール20mlを加え、一晩放冷し析出物を濾取した。析出物をエタノール20mlで洗浄後、60℃で乾燥して下記式(20)で表される比較環化体1として白色固体1.75g(収率36.4%)を得た。
【0150】
【化21】
【0151】
得られた白色固体を合成例1と同様にし、元素分析および1H−NMR、TG/DTAの測定を行なった。結果を以下に示す。これらの結果から、比較環化体1が前記化学式(20)の構造であることを確認した。
【0152】
【表16】
【0153】
融点:133.9℃
H NMR(CDCl、300MHz)δ(ppm):
3.93(6H,s)、6.55(4H,dd)、7.59(4H,q)、8.03(2H,s)、8.06(4H,d)
【0154】
(比較例1)比較ピリジン化合物1の合成
50mlの三口フラスコに比較合成例1で得られた比較環化体1 1.75g(3.92mmol)、ジフェニルアミン0.66g(3.92mmol)、トルエン10ml、トリ−t−ブチルホスフィン0.09g(0.45mmol)、酢酸パラジウム(II)0.03g(0.14mmol)、ナトリウム−t−ブトキシド0.52g(5.42mmol)を秤取り、窒素を充填した。100℃に加熱し、5時間撹拌したのち、室温まで放冷した。ジクロロメタン50mlを加え、濾過した。溶媒を減圧留去し、フラスコ内の残留物にメタノール10mlを加えてスラリー化した。濾過後、メタノール20mlで洗浄した。ウェットケーキにトルエン20mlを加え、100℃に加熱して完溶させ、熱時濾過した。濾液を冷蔵庫で一晩静置し、結晶を濾取した。メタノール10mlで洗浄し、60℃で一晩乾燥し、下記式(21)で表される比較ピリジン化合物1である黄色固体1.21g(収率57.5%)を得た。
【0155】
【化22】
【0156】
得られた黄色固体を合成例1と同様にし、元素分析および1H−NMR、TG/DTAの測定を行なった。結果を以下に示す。これらの結果から、比較ピリジン化合物1が前記化学式(21)の構造であることを確認した。
【0157】
【表17】
【0158】
融点:143.9℃
H NMR(CDCl、300MHz)δ(ppm):
3.93(6H,s)、6.55(4H,dd)、7.26(12H,m)、7.57(2H,d)、8.01(2H,s)、8.06(4H,d)
【0159】
得られた比較ピリジン化合物1について、実施例1と同様に極大吸収波長を測定した。
極大吸収波長λmaxは以下の通りであった。
λmax=420.9nm
【0160】
(耐光性試験)
得られた比較ピリジン化合物1について実施例1と同様に、耐光性試験を行った。結果を表18に示す。
【0161】
実施例1〜7で得られたピリジン化合物1〜7および比較例1で得られた比較ピリジン化合物1の耐光性試験結果を表18にまとめる。なお、表18において耐光性の評価結果はピリジン化合物の照射後の残存率が50%未満の場合は×、51〜80%の場合は△、81〜90%の場合は〇、91〜100%の場合を◎と記載した。
【0162】
【表18】
【0163】
(実施例8)
実施例1〜7のピリジン誘導体を用いて筆記具用インキ組成物1〜7を、比較例1の比較ピリジン化合物1を用いて比較筆記具用インキ組成物1を、それぞれ調製した。各インキ組成物の組成を表19に示す。表19中、組成物番号の欄以外の数字は、質量%を示す。
【0164】
【表19】
【0165】
表19におけるポリビニルブチラールBL−1は積水化学工業株式会社製のポリビニルブチラール樹脂であり、ハイラック111は日立化成工業社製シクロヘキサノン系ケトン樹脂である。また顕色剤として使用したサリチル酸及び4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホンは東京化成工業社製の試薬である。
【0166】
表19記載の筆記具用インキ組成物を、ディゾルバーによって撹拌し、分散させた後、フェルト製のペン芯を有するマーキングペン(株式会社パイロットコーポレーション製)に適量充填し、ペン芯を覆うようにキャップを嵌め、評価用マーキングペンを作製した。マーキングペンを用いて、ドライアップ性および耐光性を以下の評価し、表20に示した。表20には、各インキの色相も記載した。
【0167】
(筆記具用インキ組成物のドライアップ性評価)
作製したマーキングペンのキャップを取り、25℃湿度65%下にて1分間放置した後、PPC用紙にフリーハンドで丸を筆記した。その筆跡のカスレについて下記の四段階で評価した。
カスレが生じ難かった:○
カスレがやや生じた:△
カスレが生じ易かった:×
マーキングペンインキ配合着色剤が溶解しなかったため評価できなかった:―
【0168】
(筆記具用インキ組成物の耐光性評価)
作製したマーキングペンでPPC用紙にフリーハンドで丸を筆記した。このPPC用紙を耐光性試験機サンテストCPS+(アトラス・エレクトリック・デバイス社製)内にて窓越しの光を想定した光強度(照射強度30w/m、300−400nm)にて1時間照射した。目視により筆記の変化を評価した。
筆記された丸の変化がない:◎
筆記された丸の変化がほぼない:〇
筆記された丸の色がわずかに薄くなった:△
筆記された丸の色が薄くなったまたは部分的に消失している:▲
筆記された丸の色が変化し、丸が部分的に消失している:×
【0169】
【表20】
【0170】
表20から明らかなように、本発明を適用した筆記具用インキ組成物1〜7は、本発明の適用外の比較筆記具用インキ組成物1に比べて耐光性の点において非常に優れていることが確認された。また本発明を適用した筆記具用インキ組成物4及び5は赤色の発色、蛍光発色を示した。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明のピリジン化合物は、高い耐光性、発色性を示すため、記録材料用途に用いられる着色剤として好適に使用することができる。また本発明のピリジン化合物を用いたインキ組成物は、高い耐光性と発色性、蛍光発色性を備えるため、マーカーなどの筆記具用インキ組成物に好適に用いることができる。
図1