【実施例1】
【0014】
実施例1に係る部材接続装置につき、
図1から
図10を参照して説明する。
【0015】
図1の符号1は、本発明の適用された部材接続装置である。部材接続装置1は、コンクリート製部材30,30’同士が対向する接続面30a,30a’とそれぞれ交差する側面30b,30b’の端部側に、これら側面30b,30b’に対して略直角に埋設してそれぞれ取り付けられる孔形成部材2,2’(
図1参照)と、後述する各孔形成部材2の開口部2a(
図2参照)にそれぞれ挿嵌される挿嵌部材3,3’と、挿嵌部材3,3’にそれぞれ係止される係止部4a,4bを有する接続板4と、を備えて構成されている。
【0016】
図1に示されるように、接続板4は略方形状に形成され、一方の係止部4aは孔により構成され、他方の係止部4bは下方に開口する切欠きにより構成されている。また、接続板4の上端部には、手前側に突出する折曲片18が形成されており、この折曲片18により接続板4の強度が高められている。
【0017】
図2(a)及び(b)に示されるように、孔形成部材2は、長手方向に貫通する略筒状の金属製の筒部材により構成され、金属製の筒部材における長手方向一方端に開口部2aを有し、長手方向他方端側はプレスにて潰されて平板部2fが形成されている。平板部2fにおいては、金属製の筒部材における端縁の内周面2bが全周に亘り略接合されて閉鎖されている。また、金属製の筒部材における長手方向一方端には、可撓性を備える合成樹脂製の抜け止め片5が装着されている。
【0018】
図3(a)に示されるように、抜け止め片5は、開口部2aを端面2cから外周面2dに亘り覆う断面視略L字形状となっており、端面2c側の自由端部は開口部2aの内周面2eよりも内径方向に向かって延びる環状片6を形成している。
【0019】
また、
図3(b)に示されるように、長手方向における一方側である開口部2a側の内周形状は、円杆状の挿嵌部材3の外周形状に沿う形状となっており(以下、この部分を円状部7という。)、長手方向他方端側は、
図3(c)に示されるように、前述したようにプレスにて潰されているため、内部空間が変形されている(以下、この部分を変形部8という。)。
【0020】
図4に示されるように、挿嵌部材3は、ボルト状をなしており、雄ねじが形成された胴部9とボルト頭10とにより構成されている。胴部9は、ボルト頭10側の第1胴部11と先端側の第2胴部12とを備え、第1胴部11の外径は第2胴部12の外径に比べて太径に形成されている。
【0021】
また、第1胴部11の外径は、孔形成部材2の環状片6の内径よりも太径となっており、第2胴部12の外径は、孔形成部材2の環状片6の内径よりも小径となっている。そのため、孔形成部材2に挿嵌部材3を挿入すると、第2胴部12は環状片6の内側を通って、孔形成部材2内にスムーズに挿入されるが、第1胴部11は環状片6に当接して挿入し難くなっており、
図5に示されるように、後述する本固定を行う前の段階では、第1胴部11の一部が突出状態で仮固定される。これによれば、挿嵌部材3を孔形成部材2に対して軸合わせすることができ、続く挿入作業を容易に行うことができる。
【0022】
続いて、部材接続装置1を用いて隣接するコンクリート製部材30,30’同士を接続する態様について
図6から
図10を用いて説明する。
【0023】
孔形成部材2は、コンクリート製部材30の製造段階において、硬化前のコンクリートミルク内の所定位置に予め配置され、開口部2a及び抜け止め片5が外部に露出した状態で埋設される(
図6参照)。このとき、孔形成部材2は、金属製の筒部材の長手方向他方端の平板部2fにおいて内周面2bが全周に亘り互いに略接合されて構成されているため、硬化前のコンクリートミルクの孔形成部材2の内部への侵入を阻止することができる。
【0024】
また、孔形成部材2は、
図6に示されるように、平板部2fがコンクリート製部材30の対向面30aと略平行となるようにコンクリート製部材30内に埋設される。これによれば、後述するコンクリート製部材30とコンクリート製部材30’とを近接せしめる近接作業において、孔形成部材2に作用する力を平板部2fの面で受けることができ、孔形成部材2を補助的に抜け止めさせることができる。
【0025】
続いて、ここでは図示しないが、形成されたコンクリート製部材30をクレーン等で吊り上げ、接続すべき設置箇所まで移送し、既に設置してあるコンクリート製部材30’の接続面30a’に対して、吊り上げたコンクリート製部材30の接続面30aを対向させた状態で仮置きする。
【0026】
次いで、挿嵌部材3を各孔形成部材2に挿入する。
図1に示されるように、接続板4の一方の係止部4aは孔により構成されているため、予め係止部4aを孔形成部材2に合わせた状態とし、係止部4aを介して挿嵌部材3を孔形成部材2に挿入し、接続板4を一方のコンクリート製部材30側の孔形成部材2に軸支させた状態とする。
【0027】
また、
図7に示されるように、第1胴部11の外径は孔形成部材2の円状部7の内径と略同径に形成されている。また、第2胴部12は、第1胴部11との境界である基端部から先端側に向かって先細り状に形成されており、第2胴部12の一部が変形部8の一部と当接する外径寸法となっている。
【0028】
また、第1胴部11の長手方向における寸法は、抜け止め片5に一方面が当接した接続板4の他方面に挿嵌部材3のボルト頭10が当接した状態まで挿嵌部材3が孔形成部材2に挿入された状態で、円状部7内に第1胴部11が収まる寸法となっている。一方、第2胴部12の長手方向における寸法は、同様に抜け止め片5に一方面が当接した接続板4の他方面に挿嵌部材3のボルト頭10が当接した状態まで挿嵌部材3が孔形成部材2に挿入された状態で、第2胴部12の一部が変形部8の一部と当接する寸法となっている。
【0029】
挿嵌部材3は、まず孔形成部材2に対して第1胴部11の一部が突出した仮固定の状態とし、次いでボルト頭10をハンマー等で叩く若しくはスパナにて回転させる等の外力により挿入を進める(本固定)。この外力により挿嵌部材3の第1胴部11の複数のネジ山が環状片6を超え、第1胴部11が孔形成部材2の円状部7に離脱不能に挿嵌される(
図8参照)。
【0030】
尚、本固定では、
図8に示されるように、抜け止め片5に一方面が当接した接続板4の他方面とボルト頭10との間に、後述する接続治具13(
図9参照)の厚みを残した状態まで挿嵌部材3を孔形成部材2に挿入した状態とし、このとき、第2胴部12は変形部8に当接していない状態となっている。
【0031】
コンクリート製部材30とコンクリート製部材30’との接続作業では、
図1に示されるように、まず一方のコンクリート製部材30側の挿嵌部材3に軸支させた接続板4の係止部4b側の端部における下面4cを、他方のコンクリート製部材30’側の挿嵌部材3’に支持させる(仮架設状態)。
【0032】
続いて、接続治具13(
図9参照)を用いて挿嵌部材3と挿嵌部材3’とを介してコンクリート製部材30とコンクリート製部材30’とを近接せしめる近接作業を行う。
【0033】
ここで、接続治具13の構成につき説明する。
図9に示されるように、接続治具13は治具本体14と、作動板15と、操作棒16とを有して構成されている。治具本体14は略長方形状をなし、その長手方向の一端側には、一方のコンクリート製部材30側の挿嵌部材3に係止される凹溝状の係止部14aが形成され、他端側には作動板15の一端を回動可能に軸支する軸支部14bが形成されている。
【0034】
作動板15は図示するように、長方形状をなし、操作棒16と固着されている。また、長手方向一端側は治具本体14の他端と回転可能に軸支され、他端側には長手方向他端側に開放し、他方のコンクリート製部材30’側の挿嵌部材3’に係合する掛合凹部17が形成されている。
【0035】
近接作業の説明に戻る。まず、
図9に示すように、治具本体14の係止部14aに一方のコンクリート製部材30側の挿嵌部材3を係止させる。次いで作動板15の掛合凹部17に他方のコンクリート製部材30’側の挿嵌部材3’を係合させる。そして、この状態で操作棒16を下方に回転させる(
図9では図に向かって時計回りに回転させる)。
【0036】
これにより、作動板15は掛合凹部17と挿嵌部材3’との掛合部を回転軸として回転し、その結果、治具本体14は他方のコンクリート製部材30’側の挿嵌部材3’方向に引っ張られ、挿嵌部材3と挿嵌部材3’とが近接せしめられる。
【0037】
そして、挿嵌部材3と挿嵌部材3’との距離が接続板4の係止部4aと係止部4bとの距離と一致するまで挿嵌部材3と挿嵌部材3’とが近接せしめられると、一方のコンクリート製部材30側の挿嵌部材3を回転軸として、接続板4が自重により下方に回転し、
図10に示されるように、係止部4bが他方のコンクリート製部材30’側の挿嵌部材3’に係合される。その結果コンクリート製部材30,30’が接続される。尚、折曲片18をハンマー等で叩くことで、係止部4bをコンクリート製部材30’側の挿嵌部材3’に増し固定することもできる。
【0038】
尚、隣接するコンクリート製部材30,30’の接続面30a,30a’の間には弾性を有するパッキング材19が介在されており、コンクリート製部材30,30’の接続の際、パッキング材19が挟圧されてより密着性の高い接続が得られることになる。
【0039】
接続板4によりコンクリート製部材30,30’を完全に繋いだ後、接続治具13を外して近接作業は終了する。
【0040】
最後に、ボルト頭10をハンマー等で叩く若しくはスパナにて回転させる等の外力により、抜け止め片5に一方面が当接した接続板4の他方面とボルト頭10とが当接するまで挿嵌部材3の孔形成部材2への挿入を進める増し固定作業を行う。これにより、第2胴部12が変形部8に一部圧接された状態となり、孔形成部材2と挿嵌部材3との固定強度を高めることができる。
【実施例2】
【0041】
次に、実施例2に係る部材接続装置につき、
図11と
図12とを参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0042】
図11(a)に示されるように、孔形成部材20の平板部20fには、スリット21が形成されている。スリット21は、プレス加工にて切断されて形成されており、
図11(b)に示されるように、自然状態では、スリット21を構成し対向する切断面20a,20a同士が当接し、孔形成部材20の平板部20f側が略密閉された状態となっている。
【0043】
また、ここでは詳述しないが、本実施例において挿嵌部材3は、前述した増し固定作業時には、挿嵌部材3の第2胴部12の先端部が変形部8(
図7参照)に圧接された状態となり、平板部20fを構成する内周面2b,2b同士が離間するように平板部20fが拡開されるような孔形成部材20との寸法関係となっている。そのため、
図12に示されるように、平板部20fの拡開に伴い、スリット21を構成し対向する切断面20a,20a同士が離間するようにスリット21もまた拡開される。
【0044】
これによれば、平板部20fを構成する部位が埋設されたコンクリート製部材30の内部に食付き、孔形成部材20のコンクリート製部材30に対する抜け止め効果を向上させることができる。尚、コンクリートミルクの侵入を確実に防止するために、スリット21に代えて、表裏に貫通しない溝状の切込とし、挿嵌部材3の挿入に伴い切込を切っ掛けにして平板部20fが拡開される構成としてもよい。
【0045】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0046】
例えば、孔形成部材2の開口部2aの反対側の端部は、コンクリートミルクが侵入しないように略密閉された状態とできれば、正円形状でなければ平板状に限らず、例えば略三角形や略星型等であってもよい。
【0047】
また、挿嵌部材3は、略円筒形状の金属製の筒部材から構成されるものに限らず、例えば略矩形状の筒部材から構成されていてもよく、この場合、孔形成部材2の開口部2a側における内周形状は挿嵌部材3の外周形状に対応した形状とすることで、上述した効果を同様に奏することができる。
【0048】
また、挿嵌部材3と孔形成部材2とが離脱不能に挿嵌される構成であれば、挿嵌部材3の胴部には雄ねじが形成されていなくてもよい。
【0049】
また、挿嵌部材3の胴部は、ボルト頭10側の外径と先端側の外径とが同径であってもよい。この場合、仮固定時における挿入効率は下がるものの、増し固定時における挿嵌部材3の先端部と変形部8との圧接時の応力が増大する。
【0050】
また、前記実施例において挿嵌部材3の第2胴部12は、第1胴部11との境界である基端部から先端側に向かって先細り状に形成される構成で説明したが、これに限らず、第1胴部11の外径よりも小径の一定の外径寸法で構成されていてもよい。
【0051】
また、前記実施例において挿嵌部材3の第2胴部12の外径は、孔形成部材2の環状片6の内径よりも小径となっている構成で説明したが、これに限らず、孔形成部材2の環状片6の内径を第2胴部12の少なくとも一部の外径をよりも小径とすることで、第1胴部11が環状片6に挿入される前の状態において、挿嵌部材3を孔形成部材2に対して軸合わせされた状態に仮保持させることができる。