特開2020-100225(P2020-100225A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2020100225-空気入りタイヤ 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-100225(P2020-100225A)
(43)【公開日】2020年7月2日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20200605BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20200605BHJP
【FI】
   B60C11/00 D
   B60C11/00 C
   B60C9/18 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-238741(P2018-238741)
(22)【出願日】2018年12月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】乾 祐介
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA01
3D131BA05
3D131BA20
3D131BC02
3D131BC13
3D131BC15
3D131DA33
3D131EA04Y
3D131EA08U
(57)【要約】
【課題】操縦安定性が良く転がり抵抗が小さい空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部30が、タイヤ赤道位置Cを含むタイヤ幅方向中央領域のセンターゴム34と、サイドウォール20側のショルダーゴム36とを有する空気入りタイヤにおいて、センターゴム34とショルダーゴム36との境界Bがタイヤ幅方向の接地端Eよりサイドウォール20側にあり、センターゴム34の硬度がHS65以上で、ショルダーゴム36のtanδが0.25以下であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部が、タイヤ赤道位置を含むタイヤ幅方向中央領域のセンターゴムと、サイドウォール側のショルダーゴムとを有する空気入りタイヤにおいて、
前記センターゴムと前記ショルダーゴムとの境界がタイヤ幅方向の接地端よりサイドウォール側にあり、
前記センターゴムの硬度がHS65以上で、前記ショルダーゴムのtanδが0.25以下であることを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記センターゴムと前記ショルダーゴムとの前記境界が、タイヤ赤道から前記接地端までのタイヤ幅方向の距離の4〜6%、前記接地端よりサイドウォール側にある、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記センターゴムと前記ショルダーゴムとの前記境界が、前記トレッド部の下に設けられたベルトのうち最大幅のものの幅方向端部よりもタイヤ赤道側にある、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記センターゴムと前記ショルダーゴムとの前記境界が、前記トレッド部の下に設けられた全てのベルトの幅方向端部よりもタイヤ赤道側にある、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、トレッド部が、タイヤセンター側のクラウンゴムと、サイドウォール側のショルダーゴムとからなり、クラウンゴムが硬質ゴムからなりショルダーゴムが軟質ゴムからなる空気入りタイヤが提案されている。このような空気入りタイヤによれば、クラウンゴムが硬質ゴムからなるため、タイヤの旋回中のトレッド部の変形が抑えられて操縦安定性が向上するとされている。また、ショルダーゴムが軟質ゴムからなることにより、トレッド部の両端部での衝撃吸収能力が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−35229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、昨今の空気入りタイヤには低燃費性が強く求められている。空気入りタイヤを低燃費のものとするためには、転がり抵抗を小さくすることが有効である。
【0005】
そこで本発明は、操縦安定性が良く転がり抵抗が小さい空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の空気入りタイヤは、トレッド部が、タイヤ赤道位置を含むタイヤ幅方向中央領域のセンターゴムと、サイドウォール側のショルダーゴムとを有する空気入りタイヤにおいて、前記センターゴムと前記ショルダーゴムとの境界がタイヤ幅方向の接地端よりサイドウォール側にあり、前記センターゴムの硬度がHS65以上で、前記ショルダーゴムのtanδが0.25以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の空気入りタイヤでは、接地するセンターゴムの硬度がHS65以上であるため操縦安定性が良く、ショルダーゴムのtanδが0.25以下であるため転がり抵抗が小さい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の空気入りタイヤの幅方向の半断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に本実施形態の空気入りタイヤの幅方向断面構造を示す。なお図1にはタイヤ赤道位置C(タイヤ幅方向の中心位置)より右側の構造しか描かれていないが、本実施形態の空気入りタイヤはタイヤ赤道位置Cに対して左右対称の構造となっている。
【0010】
空気入りタイヤ(以下「タイヤ」)は、束ねられた鋼線にゴムが被覆されたビードコア11と、ビードコア11の外径側に設けられたゴム製のビードフィラー12とからなるビード部10を、幅方向両側に有している。カーカスプライ14が、タイヤ幅方向両側でビード部10を包むと共に、これらのビード部10間でタイヤの骨格形状を形成している。
【0011】
カーカスプライ14の外側では、タイヤ幅方向両側にゴム製のサイドウォール20が設けられている。また、サイドウォール20の内径側にはゴム製のリムプロテクター22が設けられている。一方、カーカスプライ14の内側には、ブチル層とスキージー層とからなるインナーライナー24が設けられている。ビード部10の周りでは、ビード部10を周りから包むように、リムプロテクター22の下部からインナーライナー24の下部にかけて、ゴム製のラバーチェーファー26が設けられている。
【0012】
カーカスプライ14の外径側には複数枚のベルトからなるベルト層が設けられている。ベルト層を構成するベルトは、タイヤ周方向に対して傾斜して延びる複数のスチールコードがゴムに被覆されて形成されたものである。本実施形態におけるベルト層は、幅の広い第1ベルト16と、第1ベルト16より幅の狭い第2ベルト17とからなる。ベルト層の外径側には、ベルト層よりも幅が広くベルト層全体を上から覆う補強層18が設けられている。補強層18はタイヤ周方向に延びる複数の有機繊維コードがゴムに被覆されて形成されたものである。
【0013】
補強層18の外径側にはトレッド部30が設けられている。トレッド部30はベルト層及び補強層18よりも幅が広い。また本実施形態においては、トレッド部30はサイドウォール20の上に載っている。トレッド部30の外径側には多数の溝32が形成されている。
【0014】
トレッド部30は、タイヤ赤道位置Cを含むタイヤ幅方向中央領域のセンターゴム34と、センターゴム34よりもサイドウォール20側のショルダーゴム36とを有する。センターゴム34とショルダーゴム36とは配合が異なる。センターゴム34は硬度の高いゴムである。またショルダーゴム36は損失正接tanδの低いゴムである。すなわち、トレッド部30は、幅方向中央において硬度が高く、サイドウォール20側においてtanδが低いことを特徴としている。
【0015】
センターゴム34の硬度は具体的にはHS65以上である。なおゴムの硬度は、JIS K6253−1−2012の3.2に規定されているデュロメータ硬さ(durometer hardness)であり、一般ゴム(中硬さ)用のタイプAデュロメータにより23℃の雰囲気下で測定したときの値である。また、センターゴム34の硬度の上限値は限定されないが、例えばHS75である。また、ショルダーゴム36の硬度は限定されないが、一例としてはセンターゴム34の硬度より低い。また、さらに詳細な一例としては、ショルダーゴム36の硬度は、センターゴム34の硬度より低く、かつ、サイドウォール20の硬度より高い。
【0016】
また、ショルダーゴム36のtanδは具体的には0.25以下である。なおゴムのtanδは、JIS K6394−2007に従い、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を用いて、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度23℃の条件で測定したときの値である。また、ショルダーゴム36のtanδの下限値は限定されないが、例えば0.10である。また、センターゴム34のtanδは限定されないが、一例としてはショルダーゴム36のtanδより高い。センターゴム34のtanδの具体的数値は、例えば0.26以上0.50以下である。また、サイドウォール20のtanδは、例えば0.15以上0.17以下である。
【0017】
センターゴム34とショルダーゴム36とは境界Bにおいて接している。センターゴム34とショルダーゴム36との境界Bは、接地端Eよりサイドウォール20側にある。従ってタイヤの通常の接地時にはセンターゴム34だけが路面に接地する。なお接地端Eは、タイヤが正規リムに装着され正規内圧が充填された上で、路面に接地して正規荷重が負荷されたときに接地する部分のタイヤ幅方向端部のことである。
【0018】
ここで、正規リムとは、JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「DesignRim」、又はETRTO規格における「MeasuringRim」のことである。また、正規内圧とは、JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRELOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」のことである。また正規荷重とは、JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATIONPRESSURES」の最大値、又はETRTO規格における「LOADCAPACITY」のことである。
【0019】
詳細な一例としては、センターゴム34とショルダーゴム36との境界Bは、タイヤ赤道位置Cから接地端Eまでの距離L1の4〜6%(4%及び6%を含む)の距離L2だけ、接地端Eよりサイドウォール20側にあることが好ましい。ここで、距離L1及び距離L2は、タイヤ表面に沿った距離ではなく、タイヤ幅方向(図1における水平方向)の距離である。なお図1では見やすくするために距離L2が長めに示してある。
【0020】
また、別の詳細な一例としては、センターゴム34とショルダーゴム36との境界Bは、ベルト層を構成するベルトのうち最大幅のベルト(すなわち第1ベルト16)の幅方向端部16aよりもタイヤ赤道位置C側にあることが好ましい。また、さらに好ましい形態としては、センターゴム34とショルダーゴム36との境界Bは、ベルト層を構成する全てのベルト(すなわち第1ベルト16及び第2ベルト17)の幅方向端部16a、17aよりもタイヤ赤道位置C側にある。なお、センターゴム34とショルダーゴム36との境界Bが、最大幅のベルト(すなわち第1ベルト16)の幅方向端部16aと、最小幅のベルト(すなわち第2ベルト17)の幅方向端部17aとの間にあっても良い。
【0021】
センターゴム34とショルダーゴム36との境界Bの位置は、上記のように距離L1の4〜6%の距離L2だけ接地端Eよりサイドウォール20側にあり、かつ、最大幅のベルト又は全てのベルトの幅方向端部よりもタイヤ赤道位置C側にあることが好ましい。
【0022】
以上のように、本実施形態のタイヤは、センターゴム34とショルダーゴム36との境界Bが接地端Eよりサイドウォール20側にあるため、通常の接地時にはセンターゴム34だけが路面に接地する。そして、路面に接地するセンターゴム34の硬度がHS65以上と高いため、操縦安定性が良い。また、ショルダーゴム36のtanδが0.25以下と低いため、ショルダーゴム36におけるヒステリシスロスが小さくタイヤの転がり抵抗が小さい。ここでショルダーゴム36は通常の接地時には路面に接地しないため、ショルダーゴム36のtanδが低くても操縦安定性に悪影響が出ない。以上のように本実施形態のタイヤは操縦安定性が良く転がり抵抗が小さい。
【0023】
また、センターゴム34とショルダーゴム36との境界Bが、タイヤ赤道位置Cから接地端Eまでのタイヤ幅方向の距離L1の4〜6%の距離L2だけ、接地端Eよりサイドウォール20側にあれば、コーナリング時にタイヤの接地幅が広くなったとしてもショルダーゴム36が接地しにくいため、操縦安定性に悪影響が出にくい。
【0024】
また、センターゴム34とショルダーゴム36との境界Bが、最大幅のベルトである第1ベルト16の幅方向端部16aよりもタイヤ赤道位置C側にあれば、ショルダーゴム36が十分な体積となる上、第1ベルト16の幅方向端部16aにおける発熱が抑制されて転がり抵抗が小さくなる。センターゴム34とショルダーゴム36との境界Bが、全てのベルト16、17の幅方向端部16a、17aよりもタイヤ赤道位置C側にあれば、ショルダーゴム36が十分な体積となるのはもちろんのこと、全てのベルト16、17の幅方向端部16a、17aにおける発熱が抑制されて転がり抵抗がさらに小さくなる。
【0025】
参考のために、トレッド部全体が1種類のゴムからなる場合の、ゴムの硬度を変化させたときのコーナリングパワー及び操縦安定性の変化を表1に、ゴムのtanδを変化させたときの転がり抵抗係数(RRC)の変化を表2に示す。表1において、コーナリングパワー及び操縦安定性は指数で表されており、数値が大きいほど優れていることを意味している。
【0026】
表1から、トレッドゴムの硬度がHS65以上であると、特にコーナリングパワーが大きく操縦安定性が良いことがわかる。また表2から、トレッドゴムのtanδが0.25以下であると、特に転がり抵抗係数が小さいことがわかる。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
以上の実施形態は一例であり、発明の範囲は以上の実施形態に限定されない。以上の実施形態に対し、発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。例えばタイヤの断面構造は図1の構造に限定されず、ベルトの数を変更したり、ビード周りやベルト下に新たな部材を追加したりすることができる。
【符号の説明】
【0030】
B…センターゴムとショルダーゴムとの境界、C…タイヤ赤道位置、E…接地端、10…ビード部、11…ビードコア、12…ビードフィラー、14…カーカスプライ、16…第1ベルト、16a…第1ベルトの幅方向端部、17…第2ベルト、17a…第2ベルトの幅方向端部、18…補強層、20…サイドウォール、22…リムプロテクター、24…インナーライナー、26…ラバーチェーファー、30…トレッド部、32…溝、34…センターゴム、36…ショルダーゴム
図1