特開2020-100306(P2020-100306A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2020100306-空気入りタイヤ 図000003
  • 特開2020100306-空気入りタイヤ 図000004
  • 特開2020100306-空気入りタイヤ 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-100306(P2020-100306A)
(43)【公開日】2020年7月2日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/02 20060101AFI20200605BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20200605BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20200605BHJP
【FI】
   B60C9/02 B
   B60C9/08 K
   B60C5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-240185(P2018-240185)
(22)【出願日】2018年12月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】三宅 正也
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA02
3D131BA07
3D131BC02
3D131BC05
3D131BC13
3D131BC22
3D131CB06
3D131DA09
3D131DA16
3D131DA24
(57)【要約】
【課題】剛性と耐カット性を確保しつつ、軽量化とそれによる転がり抵抗低減を図る。
【解決手段】空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、一対のビードコア5と、第1プライ11と、一対のプライ片13を有する不連続な第2プライ12とを備える。第1プライ11は、トレッド部2に位置する中央部11aと、中央部11aの両端からそれぞれ延びる一対のサイド部11bと、一対のサイド部11bから延びて一対のビードコア5にそれぞれ巻き上げられた一対の巻上部11cとを有する。第2プライ12の一対のプライ片13はそれぞれ、内端部13aから延びるサイド部13cと、サイド部13cと連続して一対のビードコア5のうちのいずれかに巻き上げられた巻上部13dとを有する。第1プライ11のモジュラスは、一対のプライ片13のモジュラスよりも低い。第1プライ11の破断強度は、一対のプライ片13の破断強度よりも低い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部と、
前記トレッド部の両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイドウォール部と、
前記一対のサイドウォール部の前記タイヤ径方向内側の端部にそれぞれ配置された一対のビードコアと、
前記トレッド部の前記タイヤ径方向内側に位置する中央部と、前記中央部の両端から前記タイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイド部と、前記一対のサイド部から延びて前記一対のビードコアにそれぞれ巻き上げられた一対の巻上部とを有する第1プライと、
前記第1プライに対してタイヤ径方向外側に配置され、前記トレッド部に位置する内端部を有し、前記内端部から前記タイヤ径方向内側に延びるサイド部と、このサイド部と連続して設けられ、前記一対のビードコアのうちのいずれかに巻き上げられた巻上部とをそれぞれ有する一対のプライ片を備える、不連続な第2プライと
を備え、
前記第1プライのモジュラスは、前記第2プライの前記一対のプライ片のモジュラスよりも低い、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記一対のプライ片のうちの一方と他方のモジュラスは同じである、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記一対のプライ片のうちの一方と他方のモジュラスは異なる、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
トレッド部と、
前記トレッド部の両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイドウォール部と、
前記一対のサイドウォール部の前記タイヤ径方向内側の端部にそれぞれ配置された一対のビードコアと、
前記トレッド部の前記タイヤ径方向内側に位置する中央部と、前記中央部の両端から前記タイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイド部と、前記一対のサイド部から延びて前記一対のビードコアにそれぞれ巻き上げられた一対の巻上部とを有する第1プライと、
前記第1プライに対してタイヤ径方向外側に配置され、前記トレッド部に位置する内端部を有し、前記内端部から前記タイヤ径方向内側に延びるサイド部と、前記サイド部と連続して設けられ、前記一対のビードコアのうちのいずれかに巻き上げられた巻上部とをそれぞれ有する一対のプライ片を備える、不連続な第2プライと
を備え、
前記第1プライの破断強度は、前記第2プライの前記一対のプライ片の破断強度よりも低い、空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記一対のプライ片のうちの一方と他方の破断強度は同じである、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記一対のプライ片のうちの一方と他方の破断強度は異なる、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記第1プライと、前記第2プライの前記一対のプライ片とは、コード材質、コード径、エンド数、ゴム硬さ、及びゴム厚みのうちの少なくとも1つが異なる、請求項1から6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記トレッド部において前記第1プライの前記中央部のタイヤ径方向外側に配置されたベルト層をさらに備え、
前記プライ片の前記内端部は、前記ベルト層と前記第1プライの前記中央部との間に配置されている、請求項1から7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された空気入りタイヤのカーカスプライは、一対のビード部間で連続する第1プライと、この第1プライのタイヤ径方向外側に配置された不連続な第2プライとを備える。第2プライは、トレッド部から一対のビード部のいずれかにそれぞれ延びる一対のプライ片を備える。トレッド部の中央には、2枚のプライ片がいずれも存在しない領域、つまり中抜き部が設けられている。第2プライの中抜き部は、基本的に相反する2種類の性能の両立を意図している。一方の種類の性能は、剛性(操縦安定性向上に寄与する)と耐カット性であり、他方の種類の性能は、軽量化とそれによる転がり抵抗低減である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−109517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された構造には、剛性と耐カット性を確保しつつ、軽量化とそれによる転がり抵抗低減を図る上で、さらなる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、中抜き部を有するカーカスプライを備える空気入りタイヤにおいて、剛性と耐カット性を確保しつつ、軽量化とそれによる転がり抵抗低減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、トレッド部と、前記トレッド部の両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイドウォール部と、前記一対のサイドウォール部の前記タイヤ径方向内側の端部にそれぞれ配置された一対のビードコアと、前記トレッド部の前記タイヤ径方向内側に位置する中央部と、前記中央部の両端から前記タイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイド部と、前記一対のサイド部から延びて前記一対のビードコアにそれぞれ巻き上げられた一対の巻上部とを有する第1プライと、前記第1プライに対してタイヤ径方向外側に配置され、前記トレッド部に位置する内端部を有し、前記内端部から前記タイヤ径方向内側に延びるサイド部と、このサイド部と連続して設けられ、前記一対のビードコアのうちのいずれかに巻き上げられた巻上部とをそれぞれ有する一対のプライ片を備える、不連続な第2プライとを備え、前記第1プライのモジュラスは、前記第2プライの前記一対のプライ片のモジュラスよりも低い、空気入りタイヤを提供する。第2態様は、モジュラスの代わりに、前記第1プライの破断強度が、前記第2プライの前記一対のプライ片の破断強度よりも低い、空気入りタイヤを提供する。
【0007】
第2プライは一対のプライ片を備え、不連続である。つまり、一対のプライ片の内端部の間には、プライが存在しない中抜き部がある。かかる中抜き部のある第2プライを採用したことにより、第2プライが1枚の連続のプライである場合と比較して、軽量化を図ることができる。
【0008】
カーカスプライにおいては、一般に、モジュラス(一定のひずみを与えたときに生じる応力)及び破断強度(破断が生じる引張荷重)が低い程重量は軽く、モジュラス及び破断強度が高い程重量が重い傾向がある。第2プライは中抜き部を有するのに対して、第1プライはトレッド部に中央部を有する。第1プライの中央部は、第1プライのサイド部や第2プライを構成するプライ片と比較すると、剛性向上と耐カット性向上の寄与度は低い。かかる中央部を有する第1プライを第2プライのプライ片と比較して低モジュラス又は低破断強度とし、相対的に軽量とすることで、剛性と耐カット性を損なうことなく、軽量化を図ることができる。
【0009】
サイドウォール部の全域において、2層のプライ、つまり第1プライのサイド部とプライ片(第2プライ)のサイド部とが配置されている。また、サイドウォール部のビードコア側の領域では、さらに2層のプライ、つまり第1プライの巻上部とプライ片(第2プライ)の巻上部とが配置されている。このようにサイドウォール部において、プライが2層又は4層設けられていることにより、必要な耐カット性が確保される。また、プライが2層又は4層設けられていることで、サイドウォール部における必要な剛性が確保される。
【0010】
以上のように、本発明によれば、剛性とそれによる操縦安定性と耐カット性とを確保しつつ、軽量化とそれによる転がり抵抗低減を図ることがきる。
【0011】
前記一対のプライ片のうちの一方と他方のモジュラス又は破断強度は同じである。この態様によれば、車両(ホイール)に装着する際の方向が指定されないため、空気入りタイヤの機能性及びデザイン性を向上できる。
【0012】
前記一対のプライ片のうちの一方と他方のモジュラス又は破断強度は異なる。一般に、車両のアウトサイドに配置されたサイドウォール部は、インサイドのサイドウォール部よりも外傷が生じ易く、その剛性は操縦安定性に影響する傾向がある。よって、この態様の場合、一対のプライ片のうち、モジュラス又は破断強度が高い方をアウトサイド用とし、低い方をインサイド用とすることが好ましい。このようにすれば、一対のサイドウォール部のうち、外傷が生じ易く、操縦安定性に影響を及ぼすアウトサイドの耐カット性及び剛性を確保しつつ、さらなる軽量化とそれによる転がり抵抗低減を図ることがきる。
【0013】
モジュラス又は破断強度を異ならせるために、前記第1プライと、前記第2プライの前記一対のプライ片とは、コード材質、コード径、エンド数、ゴム硬さ、及びゴム厚みのうちの少なくとも1つが異なってもよい。
【0014】
前記トレッド部において前記第1プライの前記中央部のタイヤ径方向外側に配置されたベルト層をさらに備え、前記プライ片の前記内端部は、前記ベルト層と前記第1プライの前記中央部との間に配置されている。この態様によれば、プライ片の内端部がベルト層によって強固に保持されるので、第2プライの剛性をより確実に確保できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、中抜き部を有するカーカスプライを備える空気入りタイヤにおいて、剛性と耐カット性を確保しつつ、軽量化とそれよる転がり抵抗低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの子午線断面図。
図2】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部及びその周辺の子午線断面図。
図3図1の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1から図3は、本発明の実施形態に係るゴム製の空気入りタイヤ(以下、「タイヤ」と呼ぶ)1を示す。
【0019】
図1及び図2に示すように、タイヤ1は、トレッド部2、一対のサイドウォール部3、及びリング状の一対のビード部4を備える。
【0020】
トレッド部2はタイヤ幅方向(図1において符号TWで示す。)に延びている。トレッド部2の表面、つまり踏面には溝2aが設けられている。
【0021】
一対のサイドウォール部3は、トレッド部2の両端からタイヤ径方向(図1において符号TRで示す。)の内側にそれぞれ延びている。
【0022】
一対のビード部4は、一対のサイドウォール部3のタイヤ径方向内側の端部にそれぞれ配置されている。個々のビード部4は、ビードコア5とビードフィラー6を備える。ビードコア5は、リング状に束ねられた多数の鋼線を備える。ビードフィラー6は、リング状で、トレッド部2及びサイドウォール部3を構成するゴムよりも硬質のゴムからなる。ビードフィラー6は、ビードコア5のタイヤ径方向外側に隣接して配置された基端6aと、基端6aとは反対側の先端6bとを備え、基端6aから先端6bに向かってタイヤ径方向外側へテーパ状に延びている。個々のビード部4は、ビードコア5とビードフィラー6とを包むように設けられたストリップゴム7を備える。
【0023】
タイヤ1は、ビード部4間にトロイダル状に掛け渡されたカーカス10を備える。本実施形態のカーカス10は、第1カーカスプライ(以下、「第1プライ」と呼び)11と、第2カーカスプライ(以下、「第2プライ」と呼ぶ)12とを備える。第2プライ12は中抜き部13bを有するプライであるが、第1プライ11は中抜き部を有しない通常のプライである。両者のプライ11,12については後に詳述する。カーカス10の内側、つまりタイヤ1の最内周面には、インナーライナ8が設けられている。
【0024】
図2及び図3を参照すると、トレッド部2、より具体的にはカーカス10とトレッド部2との間に、無端状のベルト層20が設けられている。本実施形態では、ベルト層20は、2枚のベルト21,22を備える。ベルト21は、カーカス10のタイヤ径方向外側に隣接して配置され、ベルト22は、ベルト21のタイヤ径方向外側に隣接して配置されている。また、本実施形態では、下層のベルト21のタイヤ幅方向の寸法は、上層のベルト22のタイヤ幅方向の寸法よりも大きく、ベルト21の端部21aは、ベルト22の端部22aよりもタイヤ幅方向外側に位置している。最も幅広のベルト21の端部21aよりもタイヤ幅方向内側が、トレッド部2である。ベルト21,22は、スチール製又は有機繊維製のベルトコードをゴム被覆して形成されている。ベルト層20は、1枚のベルトで構成されていてもよいし、3枚以上のベルトを備えてもよい。
【0025】
ベルト層20のタイヤ径方向外側に隣接して、無端状のキャップ層30が設けられている。本実施形態のキャップ層30は、ベルト21,22の両方の端部21a,22aのいずれかをそれぞれ直接的に覆う幅狭の一対のエッジプライ31を備える。また、本実施形態のキャップ層30は、エッジプライ31のタイヤ径方向外側に隣接して配置され、端部21a,22aを含むベルト21,22全体を1枚で覆う幅広のキャッププライ32を備える。キャップ層30は、1枚又は3枚以上のプライを備えてもよい。また、キャップ層30をなくしてもよい。
【0026】
ベルト層20のタイヤ幅方向外側の両端の部分とカーカス層10との間には、ゴム製で無端状の一対のパッド40がそれぞれ配置されている。パッド40の断面形状は偏平な三角形状である。ベルト21,22の端部21a,22a、エッジプライ31のタイヤ幅方向外側の端部31a、及びキャッププライ32の端部32aのタイヤ幅方向の位置は、パッド40のタイヤ幅方向の外側の端部40aと内側の端部40bとの間の領域、つまりパッド40が存在する領域に設定されている。パッド40をなくしてもよい。
【0027】
以下、カーカス10を構成する第1プライ11及び第2プライ12について説明する。
【0028】
前述のように、第1プライ11は単一のプライであるが、第2プライ12は中抜き部13bを有する不連続なプライであり、一対のプライ片13から構成されている。第1プライ11と第2プライ12のプライ片13とはいずれも、間隔をあけて並設した複数本のコードをゴムで被覆した帯状のシートである。
【0029】
第1プライ11は、中央部11a、一対のサイド部11b、及び一対の巻上部11cを備える。中央部11aは、トレッド部2のタイヤ径方向内側に配置されている。一対のサイド部11bはそれぞれ、中央部11aのタイヤ幅方向の両端からタイヤ径方向内側に延びるように、サイドウォール部3に配置されている。一対の巻上部11cはそれぞれ、一対のサイド部11bのタイヤ径方向内側の端部に連続している。個々の巻上部11cは、一対のビードコア5のうちのいずれかに対して、タイヤ幅方向の内側から外側に巻き上げられ、サイドウォール部3で終端している。
【0030】
第2プライ12は、第1プライ11に対してタイヤ径方向外側に隣接して配置されており、一対のプライ片13により構成された不連続なプライである。プライ片13は、ベルト層20と第1プライ11の中央部11aとの間に配置された内端部13aを有する。内端部13aとベルト層20との間にはパッド40が介在している。プライ片13の内端部13aのタイヤ幅方向の位置は、トレッド部2におけるタイヤ幅方向外側の領域に、より具体的にはベルト層20を構成するベルト21,22の端部21a,22aのいずれよりもタイヤ幅方向内側の領域に設定されている。トレッド部2におけるタイヤ幅方向中央の領域、より具体的には一対のプライ片13の内端部13a間の領域に、中抜き部13bが設けられている。この中抜き部13bでは、第2プライ12は存在せず、第1プライ11の中央部11aのみが存在する。
【0031】
プライ片13は、内端部13aからタイヤ径方向内側に延びるサイド部13cと、サイド部13cと連続して設けられた巻上部13dとを備える。サイド部13cは、第1プライ11のサイド部11bのタイヤ幅方向外側に重ねて配置されている。巻上部13dは、ビードコア5aに対してタイヤ幅方向の内側から外側に巻き上げられ、サイドウォール部3で終端している。巻上部13dは、第1プライ11の巻上部11cのタイヤ幅方向内側に重ねて配置され、ビードフィラー6のタイヤ径方向外側においてサイド部13cのタイヤ径方向外側に重ねて配置されている。
【0032】
本実施形態では、第1プライ11の材質と第2プライ12の一対のプライ片13の材質とは異なっている。具体的には、第1プライ11と第2プライ12のプライ片13とは、モジュラス(一定のひずみを与えたときに生じる応力)が異なっており、第1プライ11のモジュラスは、第2プライ12のプライ片13のモジュラスよりも低い。また、第1プライ11と第2プライ12のプライ片13とは、破断強度(破断が生じる引張荷重)が異なっており、第1プライ11の破断強度は、第2プライ12のプライ片13の破断強度よりも低い。一対のプライ片13のうちの一方と他方のモジュラス及び破断強度は同じである。
【0033】
コード材質、コード径、エンド数、ゴム硬さ、及びゴム厚みのうちの少なくとも1つを異ならせることで、第1プライ11のモジュラスを第2プライ12のプライ片13のモジュラスよりも低く設定し、あるいは第1プライ11の破断強度を第2プライ12のプライ片13の破断強度よりも低く設定できる。
【0034】
コード径、エンド数、ゴム硬さ、及びゴム厚みについては、一般に、以下の傾向がある。まず、コード径が太い程、モジュラスと破断強度が高くなる。また、エンド数が多い程、モジュラスと破断強度が高くなる。さらに、ゴム硬さが高い程、モジュラスと破断強度が高くなる。さらにまた、ゴム厚みが厚い程、モジュラスと破断強度が高くなる。
【0035】
コード材質については、金属(スチール)、アラミド、レーヨン、ポリエステル、及びナイロンの順でモジュラスが高い。このモジュラスの高低順に基づいて、第1プライ11がプライ片13よりも低モジュラスになるように、使用するコードが設定される。具体的には、第1プライ11には、金属製コードは用いられず、アラミド製、レーヨン製、ポリエステル製、及びナイロン製のうちのいずれかのコードが用いられる。プライ片13には、ナイロン製コードは用いられず、金属製、アラミド製、レーヨン製、及びポリエステル製のうち、第1プライ11よりも高モジュラスのコードが用いられる。
【0036】
また、コード材質については、金属(スチール)、アラミド、ナイロン、ポリエステル、及びレーヨンの順で破断強度が高い。この破断強度の高低順に基づいて、第1プライ11がプライ片13よりも低破断強度になるように、使用するコードが設定される。具体的には、第1プライ11には、金属製コードを用いられず、アラミド製、ナイロン製、ポリエステル製、及びレーヨン製のうちのいずれかのコードが用いられる。プライ片13には、ナイロン製コードは用いられず、金属製、アラミド製、レーヨン製、及びポリエステル製のうち、第1プライ11よりも高破断強度のコードが用いられる。
【0037】
また、本実施形態では、第1プライ11の外端部11d及びプライ片13の外端部13eの配置、及びプライ片13の内端部13aの配置を最適化している。
【0038】
具体的には、図1に示すように、第1プライ11の外端部11dは、ビードフィラー6の先端6bよりもタイヤ径方向外側であって、トレッド部2よりもタイヤ径方向内側に位置する。より具体的には、外端部11dは、サイドウォール部3の最大幅位置3aよりもタイヤ径方向外側であって、バットレス部9のタイヤ径方向内側の端部近傍に配置されている。バットレス部9とは、サイドウォール部3のタイヤ径方向外側に形成され、タイヤ幅方向の外側へ突出してゴム厚みが他の部分よりも厚くなった部分である。
【0039】
プライ片13の外端部13eは、ビードフィラー6の先端6bと第1プライ11の外端部11dとの間に位置する。より具体的には、外端部13eは、サイドウォール部3の最大幅位置3aの近傍であって、タイヤ径方向における第1プライ11の外端部11dとの間隔が5mm以上60mm以下になるように配置されている。プライ片13の外端部13eと第1プライ11の外端部11dとの間隔を過度に小さくすると、外端部11d,13eが近接するため、これらによる段差によってサイドウォール部3のゴムとの間に大きな隙間が生じる虞がある(工程不良)。一方、間隔を過度に大きくすると、第2プライ12の巻上部13dによるサイドウォール部3の剛性向上の寄与度が低くなる。これらの不都合を防止しつつ、サイドウォール部3での剛性と耐カット性を確保するために、外端部11d,13eの間隔は上記範囲に設定することが好ましい。
【0040】
図3を参照すると、プライ片13の内端部13aは、ベルト21の端部21aよりもタイヤ幅方向内側に位置しており、プライ片13の内端部13a側は、ベルト21に対してタイヤ幅方向に重複している。その重複割合は、タイヤ幅方向におけるベルト21の幅に対して、0%よりも高く(つまり0は含まない)30%以下に設定することが好ましい。重複割合が0%以下の場合(つまり重複していない場合)、パッド40を介してプライ片13の内端部13aをベルト21で位置決めできないため、プライ片13によってサイドウォール部3の剛性を確保できない。重複割合が30%よりも高い場合、トレッド部12での軽量化と転がり抵抗の低減の寄与度が低くなる。これらの不都合を防止するために、プライ片13とベルト21の重複割合は、上記範囲に設定することが好ましい。
【0041】
次に、本実施形態の空気入りタイヤ1の特徴を説明する。
【0042】
第2プライ12は一対のプライ片13を備える不連続なプライであり、一対のプライ片13の内端部13bの間には、プライが存在しない中抜き部13bがある。かかる中抜き部13bのある第2プライ12を採用したことにより、第2プライ12が1枚の連続のプライである場合と比較して、軽量化を図ることができる。
【0043】
第1プライ11のモジュラスは、第2プライ12のプライ片13のモジュラスよりも低い。第2プライ12は中抜き部13bを有するのに対して、第1プライ11はトレッド部2に中央部11aを有する。第1プライ11の中央部11aは、第1プライ11のサイド部11bや第2プライ12のプライ片13と比較すると、剛性向上と耐カット性向上の寄与度は低い。かかる中央部11aを有する第1プライ11を第2プライ12のプライ片13と比較して低モジュラスとし、相対的に軽量とすることで、剛性と耐カット性を損なうことなく、さらなる軽量化を図ることができる。
【0044】
第1プライ11の破断強度は、第2プライ12のプライ片13の破断強度よりも低い。第2プライ12は中抜き部13bを有するのに対して、第1プライ11はトレッド部2に中央部11aを有する。第1プライ11の中央部11aは、第1プライ11のサイド部11bや第2プライ12のプライ片13と比較すると、剛性向上と耐カット性向上の寄与度は低い。かかる中央部11aを有する第1プライ11を、第2プライ12のプライ片13と比較して低破断強度とし、相対的に軽量とすることで、剛性と耐カット性を損なうことなく、さらなる軽量化を図ることができる。
【0045】
サイドウォール部3の全域において、2層のプライ、つまり第1プライ11のサイド部11bとプライ片12のサイド部13cとが配置されている。また、サイドウォール部3のビードコア5側の領域では、さらに2層のプライ、つまり第1プライ11の巻上部11cとプライ片13の巻上部13dとが配置されている。このようにサイドウォール部3において、プライが2層又は4層設けられていることにより、必要な耐カット性が確保される。また、プライが2層又は4層設けられていることで、サイドウォール部3における必要な剛性が確保される。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、剛性とそれによる操縦安定性と耐カット性とを確保しつつ、軽量化とそれによる転がり抵抗低減を図ることがきる。
【0047】
前述のように、一対のプライ片13のうちの一方と他方のモジュラスと破断強度は同じである。これにより、車両(ホイール)に装着する際の方向が指定されないため、タイヤ1の機能性及びデザイン性を向上できる。
【0048】
前述のように、第1プライ11の外端部11dとプライ片13の外端部13eとは、ビードフィラー6の先端6bよりもタイヤ径方向外側であって、トレッド部2よりもタイヤ径方向内側に位置する。この構成により、サイドフォール部3においてプライが4層、つまり第1プライ11のサイド部11b、プライ片13のサイド部13c、プライ片13の巻上部13d、及び第1プライ11の巻上部11cが存在する領域が充分に確保される。その結果、剛性と耐カット性をより確実に確保できる。
【0049】
前述のように、第1プライ11の外端部11dとプライ片13の外端部13eとを定められた間隔をあけて配置している。この構成により、外端部11d,13eの位置を揃えた場合と比較して、これらによって生じる段差を最小限に抑えることができる。また、第1プライ11の巻上部11cによってプライ片13の外端部13eを覆い隠すことができるため、サイドウォール部3のゴムとの間に生じる段差の数を最小限に抑えることができる。
【0050】
前述のように、プライ片13の内端部13aは、ベルト層20と第1プライ11の中央部11aとの間に配置されている。この構成により、プライ片13の内端部13aがベルト層20によって強固に保持されるので、第2プライ12の剛性をより確実に確保できる。
【0051】
(第2実施形態)
第2実施形態のタイヤ10は、図1から図3に示す第1実施形態のタイヤ10と同様の基本構造を有する。第2実施形態では、一対のプライ片13のうちの一方と他方の材質(モジュラス又は破断強度)を異ならせている。つまり、第1プライ11、一方(例えば図2において左側)のプライ片13、及び他方(他取れば図2において右側)のプライ片13の順で、モジュラス又は破断強度を高くしている。なお、モジュラス又は破断強度を異ならせる方法は第1実施形態と同様である。
【0052】
サイドウォール部3については、一般に、車両のアウトサイドに配置された方がインサイドに配置された方よりも外傷が生じ易く、アウトサイドの剛性は操縦安定性に影響する傾向がある。よって、一対のプライ片13のうち、モジュラス又は破断強度を高くした方をアウトサイド用とし、低くした方をインサイド用とし、トレッドパターンを含むタイヤ1の設計を行う。
【0053】
この第2実施形態では、第1実施形態と同様に、第2プライ12が一対のプライ片13を備える不連続なプライであるため、タイヤ10の剛性とそれによる操縦安定性と耐カット性とを確保しつつ、軽量化とそれによる転がり抵抗低減を図ることがきる。しかも、一対のプライ片13のうちの一方と他方のモジュラスと破断強度が異なるため、外傷が生じ易く、操縦安定性に影響を及ぼすアウトサイドのサイドウォール部3での耐カット性及び剛性を確保しつつ、インサイドのサイドウォール部3においてさらなる軽量化とそれによる転がり抵抗低減を図ることがきる。
【0054】
なお、本発明の空気入りタイヤ10は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0055】
例えば、空気入りタイヤ10は、2枚の第1プライ11と一対のプライ片13を有する第2プライ12とを備える3プライ構造としてもよく、その積層プライ数は必要に応じて変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
2a 溝
3 サイドウォール部
3a 最大幅位置
4 ビード部
5 ビードコア
6 ビードフィラー
6a 基端
6b 先端
7 ストリップゴム
8 インナーライナ
9 バットレス部
10 カーカス
11 第1カーカスプライ(第1プライ)
11a 中央部
11b サイド部
11c 巻上部
11d 外端部
12 第2カーカスプライ(第2プライ)
13 プライ片
13a 内端部
13b 中抜き部
13c サイド部
13d 巻上部
13e 外端部
20 ベルト層
21 ベルト
21a 端部
22 ベルト
22a 端部
30 キャップ層
31 エッジプライ
31a 端部 32 キャッププライ
32a 端部
40 パッド
40a 端部
40b 端部
TR タイヤ径方向
TW タイヤ幅方向
図1
図2
図3