特開2020-100336(P2020-100336A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-100336(P2020-100336A)
(43)【公開日】2020年7月2日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20200605BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20200605BHJP
【FI】
   B60C11/00 B
   B60C11/00 C
   B60C13/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-240777(P2018-240777)
(22)【出願日】2018年12月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 達明
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131AA04
3D131AA06
3D131BA01
3D131BA05
3D131BC02
3D131BC13
3D131DA52
3D131EA08Y
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB31V
3D131EB31X
3D131GA11
(57)【要約】
【課題】転がり抵抗性と操縦安定性を向上することができる空気入りタイヤを提供する
【解決手段】
トレッドゴム26の幅方向端部の外側にサイドウォールゴム28のタイヤ径方向外側が重ねて設けられた空気入りタイヤにおいて、トレッドゴム26のベースゴム層26Bが、キャップゴム層26Aのタイヤ径方向内側に設けられたアンダーゴム部26B1と、アンダーゴム部26B1のタイヤ幅方向端部からタイヤ径方向外側へ延びキャップゴム層26Aとサイドウォールゴム28の間に配置された巻き上げ部26B2とを備え、キャップゴム層26Aのゴム硬度H1が
26Bのゴム硬度H2より大きく、かつ、ベースゴム層26Bのゴム硬度H2がサイドウォールゴム28のゴム硬度H3より大きい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ接地面をなすキャップゴム層と前記キャップゴム層のタイヤ径方向内側に設けられたベースゴム層とを備えるトレッドゴムが設けられたトレッド部と、サイドウォールゴムが設けられたサイドウォール部とを備え、
前記トレッドゴムの幅方向端部の外側に前記サイドウォールゴムのタイヤ径方向外側が重ねて設けられた空気入りタイヤにおいて、
前記ベースゴム層は、前記キャップゴム層のタイヤ径方向内側に設けられたアンダーゴム部と、前記アンダーゴム部のタイヤ幅方向端部からタイヤ径方向外側へ延び前記キャップゴム層と前記サイドウォールゴムの間に配置された巻き上げ部とを備え、
前記キャップゴム層のゴム硬度が前記ベースゴム層のゴム硬度より大きく、かつ、前記ベースゴム層のゴム硬度が前記サイドウォールゴムのゴム硬度より大きい空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ベースゴム層の温度23℃における損失正接tanδが0.25以下である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記巻き上げ部のタイヤ径方向外側端が、前記キャップゴム層及び前記サイドウォールゴムによって覆われ外表面に露出していない請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の空気入りタイヤでは、転がり抵抗性の向上を図るため、トレッド面(タイヤ接地面)をなすキャップゴムと、このキャップゴムのタイヤ径方向内側に低発熱性のゴムを使用したアンダートレッドゴムとを積層してトレッド部を構成することが提案されている。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の空気入りタイヤでは、ベルト端部の近傍にトレッド部の幅方向端部とサイドウォールとの界面が位置するため、タイヤ耐久性や操縦安定性が悪化するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−111269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、転がり抵抗性と操縦安定性を向上することができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空気入りタイヤは、タイヤ接地面をなすキャップゴム層と前記キャップゴム層のタイヤ径方向内側に設けられたベースゴム層とを備えるトレッドゴムが設けられたトレッド部と、サイドウォールゴムが設けられたサイドウォール部とを備え、前記トレッドゴムの幅方向端部の外側に前記サイドウォールゴムのタイヤ径方向外側が重ねて設けられた空気入りタイヤにおいて、前記ベースゴム層は、前記キャップゴム層のタイヤ径方向内側に設けられたアンダーゴム部と、前記アンダーゴム部のタイヤ幅方向端部からタイヤ径方向外側へ延び前記キャップゴム層と前記サイドウォールゴムの間に配置された巻き上げ部とを備え、前記キャップゴム層のゴム硬度が前記ベースゴム層のゴム硬度より大きく、かつ、前記ベースゴム層のゴム硬度が前記サイドウォールゴムのゴム硬度より大きいものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、ベースゴム層が、キャップゴム層のタイヤ径方向内側に設けられたアンダーゴム部と、アンダーゴム部のタイヤ幅方向端部からタイヤ径方向外側へ延びキャップゴム層とサイドウォールゴムの間に配置された巻き上げ部とを備え、キャップゴム層のゴム硬度がベースゴム層のゴム硬度より大きく、かつ、ベースゴム層のゴム硬度がサイドウォールゴムのゴム硬度より大きいため、転がり抵抗性と操縦安定性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態の空気入りタイヤの半断面図。
図2】本発明の変更例の空気入りタイヤの半断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、一実施形態に係る空気入りタイヤを、タイヤ回転軸を含む子午線断面で切断した右側半断面図である。ここでは、左右対称のタイヤであるため、左側半分は図示を省略している。図中、CLはタイヤ赤道面を示し、TEはタイヤ接地時における接地端を示す。
【0010】
なお、本明細書において、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であって、タイヤ軸方向と同義であり、図において符号Wで示す。タイヤ径方向(ラジアル方向)とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図において符号Kで示す。これらについて、それぞれ以下単に、幅方向、径方向ということがある。
【0011】
このタイヤは、左右一対のビード部10と、ビード部10からタイヤ径方向外方に延びる左右一対のサイドウォール部12と、タイヤ接地面を構成するトレッド部14と、トレッド部14の幅方向両側でサイドウォール部12との間を繋ぐ左右一対のバットレス部16とを備えてなる。図示するように、本実施形態のタイヤにおいて、トレッド部14からバットレス部16に至る断面プロファイルは、接地端TEを境として崖状の落ち込んだ形状ではなく、トレッド部14からなだらかに湾曲してバットレス部16に至る形状とされている。
【0012】
タイヤには、一対のビード部10間にまたがって延びるカーカス18が埋設されている。カーカス18は、トレッド部14からバットレス部16及びサイドウォール部12を通って延在し、ビード部10に埋設された環状のビードコア20にて係止されている。カーカス18は、カーカスコードを周方向に対して70〜90度の角度で配列した、少なくとも1枚(図示の例では1枚)のカーカスプライからなり、タイヤ内面に沿って配設されている。
【0013】
トレッド部14におけるカーカス18の外周側にはベルト22が配設されている。ベルト22は、ベルトコードを周方向に対して傾斜配列したベルトプライからなり、この例では2枚のベルトプライで構成されている。また、ベルト22の外周には、キャッププライと称される周方向にらせん状に巻回した有機繊維コードよりなるベルト補強層24が設けられている。
【0014】
ベルト22の径方向外側には、タイヤ接地面を構成するトレッドゴム26が設けられている。この例では、トレッドゴム26は、タイヤ接地面をなすキャップゴム層26Aと、その内側に設けられたベースゴム層26Bとの2層で構成されている。ベースゴム層26Bは、キャップゴム層26Aよりtanδ(23℃)が小さく、低発熱性(転がり抵抗性)に優れるゴム組成物により形成されている。なお、トレッドゴム26の表面には、周方向に延びる縦溝や、該縦溝に交差する方向に延びる横溝などにより、所定のトレッドパターンが形成されている。
【0015】
サイドウォール部12においてカーカス18の外面側には、サイドウォールゴム28が設けられている。サイドウォールゴム28は、サイドウォール部12の表面(タイヤ外表面)を構成するゴム部材であり、耐カット性の高い一般的なサイドウォール用配合のゴム組成物により形成されている。
【0016】
バットレス部16においてカーカス18の外面側には、トレッドゴム26の幅方向端部とサイドウォールゴム28の径方向端部との接合部が設けられている。詳細には、ベースゴム層26Bは、キャップゴム層26Aの径方向内側に設けられたアンダーゴム部26B1と、アンダーゴム部26B1の幅方向端部から径方向外側へ延びる巻き上げ部26B2とを備える。なお、アンダーゴム部26B1及び巻き上げ部26B2は、同一のゴム組成物より一体に形成されている。
【0017】
アンダーゴム部26B1は、ベルト22の端部22Eやベルト補強層24を越えて幅方向外側へ延びバットレス部16まで延在している。つまり、アンダーゴム部26B1が径方向外側からベルト22及びベルト補強層24を覆うように設けられている。
【0018】
巻き上げ部26B2は、キャップゴム層26Aとサイドウォールゴム28の間に配置され、巻き上げ部26B2とアンダーゴム部26B1とでキャップゴム層26Aの幅方向端部を径方向内側から覆っている。
【0019】
巻き上げ部26B2は、径方向外側に向かうほど先細になっており、巻き上げ部26B2の先端がタイヤ接地面に達することなくトレッドゴム26とサイドウォールゴム28との境界で終端している。つまり、巻き上げ部26B2の径方向外側端は、キャップゴム層26A及びサイドウォールゴム28によって覆われており、タイヤ外表面(タイヤ接地面)に露出していない。
【0020】
本実施形態では、キャップゴム層26Aが、ベースゴム層26Bよりもゴム硬度が大きいゴムで形成されている。また、ベースゴム層26Bが、サイドウォールゴム28よりもゴム硬度が大きいゴムで形成されている。つまり、キャップゴム層26Aのゴム硬度H1、ベースゴム層26Bのゴム硬度H2、サイドウォールゴム28のゴム硬度H3とすると、H1>H2>H3となる。キャップゴム層26Aのゴム硬度H1とベースゴム層26Bのゴム硬度H2とのゴム硬度差(H1−H2)が2〜12、ベースゴム層26Bのゴム硬度H2とサイドウォールゴム28のゴム硬度H3とのゴム硬度差(H2−H3)が2〜8であることが好ましい。一例を挙げると、キャップゴム層26Aのゴム硬度H1を62〜77、ベースゴム層26Bのゴム硬度H2を60〜70、サイドウォールゴム28のゴム硬度H3を50〜60とすることができる。
【0021】
また、キャップゴム層26Aの損失正接tanδ(23℃)を0.15〜0.30、ベースゴム層26Bの損失正接tanδ(23℃)を0.10〜0.25とすることができる。
【0022】
ここで、ゴム硬度は、JIS K6253−1−2012に準拠して、23℃雰囲気において、一般ゴム(中硬さ)用のタイプAデュロメータで測定される値(デュロメータ硬さ)である。また、損失正接tanδ(23℃)は、JIS K6394:2007に準拠して、温度23℃、振動数20Hz、伸張変形歪率10%±2%の条件で測定される値である。
【0023】
なお、以上の説明において、タイヤ接地時とは、空気入りタイヤを正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えた時のことである。タイヤ接地面とは、タイヤ接地時において、空気入りタイヤと路面とが接触する面のことである。接地端とは、タイヤ接地時において、路面に接地するタイヤ接地面のタイヤ幅方向端部のことである。接地幅とは、タイヤ幅方向両側の接地端の幅(間隔)のことである。
【0024】
また、以下の説明における空気入りタイヤの特徴や各種寸法は、特に記載が無い場合は、正規リムに装着され正規内圧が充填された空気入りタイヤの無負荷状態でのものである。ここで、正規リムとは、JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、又はETRTO規格における「Measuring Rim」のことである。また、正規内圧とは、JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」のことである。正規荷重とは、JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTO規格における「LOAD CAPACITY」のことである。
【0025】
以上のように本実施形態の空気入りタイヤでは、タイヤ接地面をなすキャップゴム層26Aのゴム硬度を大きくすることで操縦安定性を向上することができる。
【0026】
しかも、ゴム硬度の大きいキャップゴム層26Aとゴム硬度の小さいサイドウォールゴム28との間に、キャップゴム層26Aより小さくサイドウォールゴム28より大きいゴム硬度のベースゴム層26Bの巻き上げ部26B2が設けられているため、トレッドゴム26とサイドウォールゴム28との界面近傍に集中する歪みを緩和することができ、タイヤ耐久性を向上することができる。
【0027】
また、本実施形態では、トレッドゴム26とサイドウォールゴム28と間に配置されたベースゴム層26Bの巻き上げ部26B2が、キャップゴム層26Aよりtanδ(23℃)が小さく、低発熱性に優れるゴム組成物により形成されているため、トレッドゴム26に占める低発熱性ゴム組成物の含有量が増加して、転がり抵抗性を向上することができるとともに、タイヤ変形時に歪みが集中しやすい箇所に低発熱性のゴム組成物を配置することができ、効果的に発熱を抑えて転がり抵抗性を向上することができる。
【0028】
また、本実施形態では、ベースゴム層26Bの巻き上げ部26B2がタイヤ外表面に露出していないため、耐光性を考慮することなくベースゴム層26Bを構成するゴム組成物を決定することができタイヤ設計が容易となる。
【0029】
(変更例)
上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0030】
上記した第1実施形態では、巻き上げ部26B2の径方向外側端がタイヤ外表面に露出しない場合について説明したが、例えば、図2に示すように、巻き上げ部26B2の径方向外側端がタイヤ外表面に露出してもよい。このような場合、接地端TEよりタイヤ幅方向外側において巻き上げ部26B2がタイヤ外表面に露出することが好ましい。
【0031】
このような変更例の空気入りタイヤでは、上記の実施形態の作用効果に加え、低発熱性に優れるゴム組成物から形成されたベースゴム層26Bの体積が増加するため、更なる転がり抵抗性能の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0032】
10…ビード部、12…サイドウォール部、14…トレッド部、16…バットレス部、18…カーカス、20…ビードコア、22…ベルト、24…ベルト補強層、26…トレッドゴム、26A…キャップゴム層、26B…ベースゴム層、26B1…アンダーゴム部、26B2…巻き上げ部、28…サイドウォールゴム
図1
図2