【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る毛髪洗浄用組成物及びエアゾール製品を例に挙げつつ説明するが、これらは特に発明を限定するものではない。
本実施形態の毛髪洗浄用組成物は、(A)アニオン界面活性剤及び(B)アルミニウム塩が配合されたものである。この毛髪洗浄用組成物における水の配合量は、例えば、60質量%以上としてもよい。
【0012】
((A)アニオン界面活性剤)
アニオン性界面活性剤は、頭皮等の汚れを除去する成分であり、発泡性にも寄与する。なお、このアニオン性界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、アシルアミノ酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩等);ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸カリウム、ココイルイセチオン酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等);ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等);ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等);アルキルスルホコハク酸二ナトリウム;ポリオキシエチレンスルホコハク酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等);ラウロイル加水分解シルクナトリウム;イソステアリン酸加水分解シルクAMP(イソステアリン酸と加水分解シルクとの縮合物の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩);ココイル加水分解ダイズタンパクカリウム;ココイル加水分解コラーゲンの塩(ナトリウム塩、カリウム塩等);テトラデセンスルホン酸ナトリウム;ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸又はその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)等が挙げられる。
【0014】
アニオン性界面活性剤の毛髪洗浄用組成物における含有量としては、例えば、5質量%以上15質量%以下である。
【0015】
((B)アルミニウム塩)
アルミニウム塩は、毛髪の明度の変動を小さく抑えるために配合される。
アルミニウム塩としては、例えば、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウムナトリウム、クエン酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等が挙げられる。
【0016】
これらのアルミニウム塩は単独で配合してもよいし、二種以上組み合わせて配合してもよい。これらのアルミニウム塩の中でも、硫酸アルミニウムカリウム、乳酸アルミニウムから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
特に、毛髪の明度の変動を小さく抑える効果を高める観点から、硫酸アルミニウムカリウムと乳酸アルミニウムの両方を配合することが好ましい。この場合には、硫酸アルミニウムカリウムに対する乳酸アルミニウムの質量比は、0.5以上2.0以下であることが好ましく、0.7以上1.3以下であることがより好ましい。
【0017】
アルミニウム塩の毛髪洗浄用組成物における配合量は、0.01重量%以上3重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上2重量%以下であることがより好ましく、0.2重量%以上1重量%以下であることがさらに好ましい。この配合量が0.01重量%以上であれば、毛髪の明度の変動抑制効果が得られやすい。一方、配合量が3重量%以下とすることで、洗浄後の毛髪のごわつきを抑制することが可能である。
【0018】
(任意成分)
上記アニオン性界面活性剤及びアルミニウム塩以外にも、公知の毛髪洗浄用組成物(シャンプー)成分、例えば、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール、糖類、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、無機化合物、香料、防腐剤、炭等の成分を含んでいてもよい。これらの中でも、高分子化合物、特にカチオン性高分子を含んでいることが好ましい。なお、各任意成分は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
上記カチオン性高分子は、洗い流し時の指通り性を向上させる成分である。上記カチオン性高分子としては、例えば、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩・N,N−ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体等が挙げられる。カチオン性高分子の毛髪洗浄用組成物における含有量としては、0.1質量%以上1質量%以下が好ましい。
【0020】
上記炭とは、木材又は竹などから加熱等によって得られる乾燥した炭化物をいう。炭を配合すれば、頭皮や毛穴における皮脂汚れを吸着でき、頭皮のクレンジング効果が得られる。
炭としては、特に限定されないが、例えば、活性炭、薬用炭、桐炭、杉炭、竹炭、備長炭、ヒノキ木炭等が挙げられる。頭皮のクレンジングを向上させる観点から、粉末状のものを用いるとよい。
【0021】
(pH)
毛髪洗浄用組成物の25℃におけるpHは、アニオン界面活性剤の界面活性剤としての機能を良好に発揮させるために、3.0質量%以上が好ましい。また、pHは、アルミニウム塩を安定に溶解させるために、6.0以下が良く、5.5以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、4.5以下が更に好ましい。
【0022】
(剤型)
本実施形態の毛髪洗浄用組成物の剤型は、特に限定されず、例えば、液状が挙げられる。ここで、毛髪洗浄用組成物の粘度は、例えば10mPa・s以上1,000mPa・s以下である。なお、上記粘度は、B型粘度計を使用して測定(温度:25℃、ロータ:粘度に応じて適宜設定、ロータの回転速度:60rpm)した場合、粘度計測開始から60秒経過後の値である。
【0023】
(エアゾール製品)
上記実施形態の毛髪洗浄用組成物を原液とし、噴射剤と共に耐圧容器に充填して、エアゾール製品として使用することができる。
噴射剤としては、二酸化炭素、イソペンタン、及び液化石油ガスの少なくともいずれか1種又は2種以上を用いることができる。また、噴射剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、二酸化炭素、イソペンタン、及び液化石油ガス以外の成分を含んでいてもよい。
【0024】
二酸化炭素は、血行促進効果を付与する有効成分であると共に、噴射剤としても機能する成分である。この二酸化炭素は、気体として耐圧容器内に充填される。その一部は耐圧容器内の液体中に溶解しており、噴射剤の噴射により皮膚上で発泡する。発泡形成した泡中に存する気体状の二酸化炭素及び液体中に溶存する二酸化炭素は、皮膚の血行促進作用を有する。
【0025】
イソペンタン及び液化石油ガスは、いずれも泡を形成する成分である。このイソペンタンは、泡の持続性に寄与すると推察される。一方、液化石油ガスは、その高い揮発性から初期発泡性に寄与すると推察される。
【0026】
上記液化石油ガスとしては、プロパン、n−ブタン、及びi−ブタンの少なくともいずれかを用いることができる。n−ブタン及びi−ブタンは、低温における泡の形成性が優れる点で併存することが好ましい。
【0027】
噴射剤の充填量としては、毛髪洗浄用組成物である原液100質量部に対して、0.5質量部以上30質量部以下が好ましく、1質量部以上20質量部以下がより好ましく、2質量部以上15質量部以下がさらに好ましい。噴射剤の充填量を上記範囲とすることで、毛髪洗浄用組成物である原液を効率良く噴射することができる。
【0028】
(耐圧容器)
上記耐圧容器は、毛髪洗浄用組成物である原液及び噴射剤を充填する耐圧性の容器である。この耐圧容器は、エアゾール製品に用いられる公知の耐圧容器を採用することができ、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ブリキ、鋼などの金属等で形成されている。なお、この耐圧容器は、内面に樹脂層が積層されているもの、内部に内袋を有するものであってもよい。
【0029】
(用途)
上述した毛髪洗浄用組成物及びエアゾール製品は、例えば、シャンプーだけでなく、頭皮マッサージ、頭皮スパなどのシャンプーに比べて比較的施術時間の長い毛髪洗浄における洗浄剤として用いることができる。
【0030】
(対象毛髪)
本実施形態の毛髪洗浄用組成物及びエアゾール製品によって処理を行う対象毛髪は、酸化染料の酸化反応を伴う染毛処理が行われた履歴のある毛髪をいい、例えば、酸化染料及びアルカリ剤が配合された第1剤と、酸化剤が配合された第2剤と、を混合して得られる酸化染毛剤により染毛処理された毛髪とすることができる。
【0031】
上記第1剤に配合される酸化染料としては、酸化反応により単独で発色する公知の染料中間体、および染料中間体との重合により色調を呈する公知のカップラーから選択された一種または二種以上を採用できる。
【0032】
上記染料中間体としては、パラフェニレンジアミン、パラメチルアミノフェノール、トルエン−2,5−ジアミン、トルエン−3,4−ジアミンなどのフェニレンジアミン誘導体;オルトアミノフェノールなどのフェノール誘導体;などが挙げられる。
上記カップラーとしては、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、メタフェニレンジアミンなどのフェニレンジアミン誘導体;5−アミノオルトクレゾール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、メタアミノフェノールなどのアミノフェノール誘導体;レゾルシン;などが挙げられる。
【0033】
上記第1剤に配合されるアルカリ剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩;リン酸ナトリウム等の金属リン酸塩;アンモニア;炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン等のアルカノールアミン;等が挙げられる。
【0034】
上記第2剤に配合される酸化剤は、例えば、過酸化水素、臭素酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩が挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1a〜1d、比較例1)
水と、表1記載の成分を配合して、実施例1a〜1d、比較例1の毛髪洗浄用組成物を製造した。
【0037】
(毛髪の明度安定性の評価1)
毛束を、酸化染毛剤で染毛処理した。染毛処理後の乾燥した毛束を、希釈した毛髪洗浄用組成物に浸漬した。そして、その組成物を所定時間振とうさせて振とう洗浄した後、水洗・温風乾燥を行った。
なお、染毛処理後(振とう洗浄前)の毛束、振とう洗浄後に水洗・温風乾燥した毛束について、それぞれ明度を測定した。
【0038】
上記における詳細は、それぞれ下記(i)〜(vi)の通りとした。
(i)毛束:1gのヤク毛束(ビューラックス社製「BM−YK−A」、長さ10cm)
(ii)酸化染毛剤:ミルボン社製「オルディーブ ボーテ b6−NB」2gと、同社製「オルディーブ ボーテ オキシダン 6%」2gとを混合したもの
(iii)酸化染毛処理:毛束に酸化染毛剤を塗布してから20分間放置後、シャンプー(ミルボン社製「ミルボン ノイドゥーエ ウィローリュクスシャンプー」)で洗浄処理を行い、次いで、毛束を温風で乾燥した後、4日間放置した。
(iv)希釈した毛髪洗浄用組成物:20gの毛髪洗浄用組成物を、水で7倍に希釈した。
(v)振とう:振とう機(ADVANTEC LAB−THERMOSHAKER TS−20)のSHAKER CONTROL設定を7とし、15分、30分、60分、又は、60分×2回の時間振とうさせた。
(vi)明度測定:分光測色計(コニカミノルタ社製「CM−5」)を用いて、測定モードをSCE測定(正反射光除去)にて、測定部位を変えつつ6回測定し、平均値を算出した。
【0039】
【表1】
上記表1の明度(L)の値は、毛束3本の平均値とした。
【0040】
上記表1に示すように、アルミニウム塩が配合された毛髪洗浄用組成物を用いた場合には、振とう洗浄の前後で毛髪の明度(L)の値の変動が小さく抑えられることが確認された。
【0041】
(実施例2a〜2c、比較例2)
水と、表2記載の成分を配合して、実施例2a〜2c、比較例2の毛髪洗浄用組成物を製造した。
【0042】
(毛髪の明度安定性の評価2)
毛束を、酸化染毛剤で染毛処理した。染毛処理後の乾燥した毛束を、希釈した毛髪洗浄用組成物に浸漬した。そして、その組成物を10分間振とうさせて振とう洗浄した後、水洗・温風乾燥を行った。更に、追加の振とう洗浄として、希釈した毛髪洗浄用組成物に毛束を浸漬し、その組成物を20分間振とうさせた。追加振とう洗浄後の毛束について、水洗・温風乾燥を行った。
なお、染毛処理後(振とう洗浄前)の毛束、振とう洗浄後に水洗・温風乾燥した毛束、追加振とう洗浄後に水洗・温風乾燥した毛束について、それぞれ明度を測定した。
【0043】
上記における詳細は、それぞれ下記(i)〜(vi)の通りとした。
(i)毛束:1gの人毛束(ビューラックス社製「BR−2」、長さ10cm)
(ii)酸化染毛剤:上記評価1の酸化染毛剤と同様とした。
(iii)酸化染毛処理:上記評価1の酸化染毛処理と同様とした。
(iv)希釈した毛髪洗浄用組成物:80gの毛髪洗浄用組成物を、水で7倍に希釈した。
(v)振とう:振とう機(ADVANTEC LAB−THERMOSHAKER TS−20)のSHAKER CONTROL設定を7とし、振とう時間は、上記(10分間と、追加振とう洗浄で20分間)の通りとした。
(vi)明度測定:上記評価1の明度測定と同様とした。
【0044】
【表2】
上記表2の明度(L)の値は、毛束2本の平均値とした。
【0045】
上記表2に示すように、アニオン界面活性剤もアルミニウム塩も配合されていない水である比較例2を用いた振とう洗浄であっても明度の変動が確認される毛髪を対象とした場合であっても、アニオン界面活性剤及びアルミニウム塩が配合された毛髪洗浄用組成物を用いた場合には、振とう洗浄の前後で毛髪の明度(L)の値の変動が小さく抑えられることが確認された。特に、アルミニウム塩として硫酸アルミニウムカリウムと乳酸アルミニウムの両方が配合された毛髪洗浄用組成物によれば、毛髪の明度(L)の安定性が更に向上することが確認された。