【課題を解決するための手段】
【0020】
本目的は、少なくとも第1の触媒及び第2の触媒を有する、燃焼機関用の排気ガス後処理システムによって達成される。
【0021】
燃焼機関は、少なくとも1つのシリンダを持つ。燃焼機関は、少なくとも1つの、少なくとも200mmの内径を持つシリンダを備えた大型船舶機関であることが好ましい。
【0022】
第1の触媒は、第2の触媒とは異なる化学組成を持つ。
【0023】
第1の触媒は、第1の化学組成を持つ物質を有し、第2の触媒は、第1の化学組成とは異なる第2の化学組成を備えた物質を有して良い。
【0024】
第1及び第2の触媒は、異なる材料からなる担持構造(support structure)を有して良い。或いは、第1及び第2の触媒は同一材料からなる担持構造を有して良く、その担持構造は、異なる被覆又はドーピングを持って良い。
【0025】
これらの触媒は異なるバナジウム含有量を有して良い。触媒の1つは銅/鉄ゼオライト触媒等のゼオライト・ベース触媒であって良い。触媒の1つは第1の被覆を備えた金属の基材を有して良い。第2の触媒は、第1の被覆と異なる第2の被覆を有して良い。
【0026】
或いは又は加えて、第1の触媒は第1の機関負荷値において、その最適動作性能、特にNO
X低減性能を持ち、第2の触媒は第2の機関負荷値において、最適動作性能、特にNO
X低減性能を持ち、ここで、第1の機関負荷値は第2の機関負荷値とは異なる。
【0027】
或いは又は加えて、第1の触媒は第1の温度において、その最適動作性能、特にNO
X低減性能を持ち、第2の触媒は第2の温度において、その最適動作性能、特にNO
X低減性能を持ち、ここで、第1の温度は第2の温度とは異なる。
【0028】
第1の触媒は、TiO
2に担持されたバナジウム又はタングステンを有する第2の触媒よりも低い温度で、その最適のNO
X低減性能を持つゼオライト触媒であって良い。
【0029】
或いは又は加えて、第1の触媒は第1の化学反応により、及び/又は第1の触媒材料により、有害物質、特にNO
X含有量を低減する能力があり、第2の触媒は第2の化学反応により、及び/又は第2の触媒材料により、有害物質、特にNO
X含有量を低減する能力があり、ここで、第1の化学反応は第2の化学反応とは異なり、且つ/又は第1の触媒材料は第2の触媒材料とは異なる。
【0030】
従って、第1の触媒及び第2の触媒は、異なる型からなり、ここで型とは、化学組成、並びに/又は、機関負荷及び/若しくは温度に対する最適動作性能によって、並びに/或いはそれぞれの化学反応、並びに/又は異なる触媒材料に起因する低減能力によって、定義して良い。
【0031】
排気ガス後処理システムは、少なくとも2つの、異なる型の触媒を有する。
【0032】
排気ガス後処理システムは、更なる触媒を有して良く、これらの触媒の一部は同一の型であって良く、且つ/又は3つ以上のそれぞれ異なる型の触媒があって良い。
【0033】
個別の型のそれぞれの触媒は、温度領域(temperature window)、機関負荷領域、及び/又は排気ガスの個別の組成等の、個別の作動条件に対して最適化されて良い。典型的には、作動条件は、運転の過程の間に変化する。温度及び/又は機関負荷は上昇又は低下することがあり、排気ガスは、運転温度に起因して、又は燃料の変化に起因してその組成が変化することがある。
【0034】
それぞれの運転条件に対して、排気ガス後処理システムは、最適触媒性能を提供できる。
【0035】
各運転条件に対して最適な触媒が提供されるので、機関の全運転範囲にわたって排出物を最少とすることができる。
【0036】
運転状況毎に、適切な触媒、又は触媒の組合せが選定可能なので、副生成物の排出を最少にでき、過度の触媒スペースを設ける必要が無く、且つ過度の還元剤を添加する必要が無い。従って、運転費用を最少とすることができる。
【0037】
触媒性能は、有害物質を低減する能力によって規定して良い。よって、NO
X低減性能が、触媒性能に対する尺度となり得る。
【0038】
触媒性能は、SO
3又はN
2O等の好ましくない副生成物の発生を防止する能力によって規定しても良い。
【0039】
触媒のうちの少なくとも1つは、典型的にTiO
2で担持されたバナジウム、タングステンを有するか、又は、例えば銅/ゼオライト若しくは鉄/ゼオライトのような金属置換ゼオライトのSCR触媒であって良い。
【0040】
排気ガス後処理システムは、アンモニア又はアンモニア前駆物質、例えば尿素等の還元剤のための添加ユニットを有して良い。
【0041】
添加ユニットも、排気ガス後処理システムの上流に配置して良い。
【0042】
第1及び第2の触媒は、異なるバナジウム含有量を有するSCR触媒であって良い。
【0043】
第1の触媒のバナジウム含有量は、0.3%以上、好ましくは0.5%以上、より好ましくは0.7%以上であって良い。割合は、触媒被覆の合計重量を指す。第2の触媒のバナジウム含有量は、0.3%未満で良い。
【0044】
機関負荷が低い、及び/又は温度がより低い間は、バナジウム含有量がより高い第1の触媒を使用して良い。温度及び/又は機関負荷が上昇時、バナジウム含有量がより低い第2の触媒を使用して良い。
【0045】
排気ガス後処理システムは、それぞれ異なるバナジウム含有量を持つ3つ以上のSCR触媒を有しても良い。
【0046】
第2次SCRの触媒は、第1次SCR反応器のエレメントの配合と比べ、わずかに変更された触媒配合を備え、第1次SCR触媒の下流で排気ガス・ダクト内に配置して良い。第2のSCR触媒は、反応物スリップのレベルが高くなることを防止するために、高い選択性と転化性能が可能であって良い。この場合、第2のSCR触媒は、主にアンモニア分解触媒である。
【0047】
高い反応物スリップは、過剰な量の還元剤が第1次SCR反応器の中、又は上流に噴射された結果として引き起こされ得る。高レベルの反応物スリップに関係する他の原因は、空間速度による排気ガス中の反応物の不十分な混合、及び/又は触媒モジュールの入口面を横切る濃度勾配によって、未反応の反応物の筋(streaks)が触媒を通過することを引き起こすためと考えられる。
【0048】
反応物添加制御システムの偏差(offset)も、現下の条件に従って適切に調整されなければ、過渡的事象の間にスリップがより高くなることに影響を及ぼし得る。
【0049】
反応物スリップ・レベルの上昇は、第1次SCR触媒の下流に触媒を設置することによって緩和することができる。排出規制の違反がさらに防止され、還元剤がより効率的に使用される。
【0050】
第2の触媒の大きさ及び化学組成は、最小の触媒容積を使用しながら、触媒性能が要求される性能を満足するように選定することが好ましい。
【0051】
この種の用途のための触媒の組成は、標準的なSCR組成、又はその変種のいずれかとなろう。アンモニア分解触媒の組成を使用するのが好ましい。例えば、第2の触媒は、プラチナ及び/又はパラジウム被覆等の貴金属被覆を有して良い。
【0052】
触媒デバイスの第1の部分がSCR触媒であり、触媒デバイスの第2の部分がアンモニア分解触媒のような、異なる層を同じ基材上に配置しても良い。好ましい形態では、第1の部分が第2の部分の上流に配置される。
【0053】
別法としては、第1のSCR触媒とアンモニア分解触媒を異なる反応器に配置する。
【0054】
異なる型の触媒を、並列及び/又は直列に配置することができる。
【0055】
複数の触媒を一つの触媒反応器内に配置し、それぞれ触媒コンバータを形成することが好ましい。各触媒は、別々の触媒反応器に配置して良い。2つ以上の触媒が一つの触媒反応器内に配置されて良く、又は、さらには全ての触媒が同じ触媒反応器内に配置されても良い。
【0056】
従って、触媒の数に起因してシステムの複雑さが増加するかもしれないが、触媒反応器の組み立ての労力は低くできる可能性がある。
【0057】
第1の触媒は、加水分解触媒であって良く、第2の触媒は、好ましくは加水分解触媒の下流に配置されたSCR触媒であって良い。
【0058】
加水分解触媒はTiO
2を有して良いが、SCR触媒はタングステン酸化物又はバナジウム酸化物をドープしたTiO
2を有して良い。従って、加水分解触媒とSCR触媒は、異なる化学組成を持つ。
【0059】
加水分解触媒のNO
X低減性能が最適となる温度は、SCR触媒のNO
X低減性能が最適となる温度よりも高い。
【0060】
SCR触媒においては、NO
X分(content)は触媒の影響の下で、アンモニアによって窒素(N
2)及び水(H
2O)に還元される。
【0061】
所与の量のNO
Xを低減するための加水分解触媒とSCR触媒の合計の容積は、同量のNO
Xを低減するための独立型のSCR触媒の容積よりも少ないか、同等である。加水分解触媒とSCR触媒の合計の容積は、400l/MWよりも小さいことが好ましい。
【0062】
SCR触媒は、SCR反応器内に配置して良い。加水分解触媒は、加水分解触媒反応器内に配置して良い。
【0063】
SCR触媒及び加水分解触媒は、共通の反応器内に配置して良い。
【0064】
加えて又は或いは、SCR触媒のバナジウム含有量は、0.3%以上、好ましくは0.5%以上、より好ましくは0.7%以上であって良い。割合は、触媒被覆の合計重量を指す。
【0065】
加えて又は或いは、加水分解触媒及びSCR触媒は、好ましくは少なくとも90%の機関負荷、及び/又は2〜20kg/kWh、好ましくは7〜11kg/kWhの排気ガス質量流量において、SCR触媒内の排気ガスの滞留時間が0.5秒未満、より好ましくは0.3秒未満となるように設計される。
【0066】
特に加水分解触媒及びSCR触媒の容積は、全負荷において滞留時間が短くなるように適合される。
【0067】
加えて又は或いは、加水分解触媒及びSCR触媒は同じ触媒基材上に配置される。
【0068】
SCR触媒は、バナジウム、タングステン及び/又はTiO
2、好ましくはバナジウム及びタングステンをドープしたTiO
2を有することが好ましい。
【0069】
加水分解触媒は、HNCOをNH
3に加水分解するのを促進するだけでなく、尿素分子をHNCO及びNH
3へも分解する。さらには、高負荷において呈される排気ガス温度においては、加水分解触媒内でHNCOの加水分解が起こるだけでなく、SCR反応に似た、NO
Xが著しく低減される副反応も起こる。
【0070】
このため、加水分解触媒内で既に低減されたNO
Xは全て、加水分解触媒の下流に配置されたSCR触媒内には存在しないことになる。従って、SCR触媒はより少ない量のNO
Xのみを低減すれば良い。
【0071】
従って、加水分解触媒及びSCR触媒を有する触媒システム全体の必要容積は、同一のNO
X低減に対する独立型SCR触媒の必要容積よりも小さくなる。触媒の合計容積は、独立型のSCR触媒に比べて、少なくとも8〜10%減少できる。
【0072】
本発明では、触媒の容積とは、触媒の外被容積(envelope volume)であると理解されたい。
【0073】
SCR触媒は、加水分解触媒と組み合わされた場合、より少ない量のNO
Xを低減すれば良いため、SCR触媒の容積はより小さくでき、且つ/又は、反応時間、従ってSCR触媒内の滞留時間をより短くできる。
【0074】
排気ガスが短時間しかSCR触媒内にとどまらないことがあり、より大きな独立型SCR触媒について言えば、SCR触媒のバナジウム含有量がより高くなる可能性がある。何故ならば、SO
2の酸化反応時間並びにN
2Oの生成時間も短くなるからである。さらには、バナジウム含有量が高い小さなSCR触媒は、バナジウム含有量が低い大きなSCR触媒と同じNO
X酸化速度を提供する可能性がある。
【0075】
SCR触媒内で酸化されるのはNH
3のわずかな部分のみであり、NH
3の大部分が効率的に使用される。従って、より少ない量のNH
3を供給すれば良い。SCR触媒内でNO
Xへ酸化されるかもしれず、又はアンモニア・スリップとして残留する、過剰な量のNH
3を供給するリスクを低減することができる。尿素の過剰添加が防止できる。
【0076】
機関の低負荷帯及びその低い温度帯では、「SCR反応」の大部分、及び、従って、NO
X低減の大部分が、SCR触媒内で行われる。しかし、低負荷の間、加水分解触媒は少なくともHNCOからNH
3への加水分解をもたらすことで、この反応をSCR触媒内で行う必要が無く、SCR触媒内に加水分解のためのスペースを設けなくて良いようになる。加水分解触媒は、尿素の分解も促進し、噴射された尿素のほぼ全てがSCR触媒の入口においてNH
3の形となるようにするので、SCR触媒内に追加の容積を設ける必要が無くなる。
【0077】
特に低負荷においては、高いバナジウム含有量、すなわち0.3%より高い、好ましくは0.5%以上、より好ましくは0.7%以上を有するSCR触媒が非常に高い活性を持ち、従って小さなSCR触媒も、バナジウム含有量が低い、より大きなSCR触媒と同じ性能に達することができる。
【0078】
より高い機関負荷運転において、加水分解触媒は、やはりHNCOのNH
3への加水分解をもたらすが、NO
X低減の大半を賄う。加水分解触媒内部で低減されなかったわずかな量のNO
XのみをSCR触媒内で低減することになる。
【0079】
加水分解触媒及びSCR触媒を、例えば同じ触媒基材上に配置することにより、1つのデバイスとして構成する場合、よりコンパクトな配置さえ実現可能である。排気ガスは、加水分解触媒からSCR触媒へ直接流れることができる。
【0080】
触媒基材は金属製又はセラミック製であって良い。基材は被覆しても良い。例えば、触媒デバイスの入口はTiO
2のみで被覆され、一方で基材の下流部分は、バナジウム、タングステン及びTiO
2で被覆されて良い。
【0081】
排気ガス後処理システムは加水分解触媒を有しても良く、その加水分解触媒は、少なくとも420°Cの温度、及び/又は少なくとも90%の機関負荷、及び/又は2〜20kg/kWh、好ましくは7〜11kg/kWhの排気ガス質量流量において、加水分解触媒内のNO
Xの濃度を、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは20%低減する能力を有する。加水分解触媒は、要求されるNO
X低減性能が達成される大きさにすることが好ましい。
【0082】
加水分解触媒は、TiO
2、及び/又はZrO
2、及び/又はAl
2O
3、及び/又はSiO
2、及び/又はH−ZSM−5を有して良い。
【0083】
加水分解触媒及びSCR触媒は、同じ触媒基材上に配置されて良い。
【0084】
排出規制等の適用可能な規則、燃料の形式、機関の出力レベル、温度、求められる出力、及び更なる要素により、排気は様々なシステムによって処理する必要がある。従って、排気は船の機関の排気システムの中で、様々な方向に方向転換することができる。
【0085】
有益な一実施例においては、排気ガス後処理システムは、第1の触媒及び第2の触媒の上流に少なくとも1つのバイパス分離デバイスを有する。
【0086】
第1のバイパス排気ライン及び第2のバイパス排気ラインは、少なくとも1つのバイパス分離デバイスに接続される。少なくとも1つのバイパス分離デバイスは、第1の触媒及び第2の触媒の上流の排気ガスを、第1のバイパス排気ラインに向かう第1のガス流れ、及び第2のバイパス排気ラインに向かう第2のガス流れの中に分岐するように構成される。第1の触媒及び第2の触媒は、分離バイパスデバイスの下流の第1のバイパス排気ライン中に配置される。
【0087】
このように、バイパスが設けられ、このバイパスは、排気ガスの少なくとも一部を分岐し、この部分が第1の触媒及び第2の触媒に入らないようにする。
【0088】
第1のバイパス排気ライン中に3つ以上の触媒が配置されて良い。
【0089】
第1のバイパス排気ライン及び第2のバイパス排気ラインは、第1と第2のガス流れが1つのラインに合流するように、触媒の下流で一緒になって良い。
【0090】
排気ガス後処理システムは、第1のバイパス排気ライン及び第2のバイパス排気ラインのスループットを設定するためのパイパス調整デバイスを有すことが好ましい。
【0091】
バイパス調整デバイスは、第1のバイパス排気ライン及び/又は第2のバイパス排気ラインを開閉するための少なくとも1つのバイパス調整弁が組み込まれて良い。
【0092】
第1のパイパス排気ライン及び第2のバイパス排気ラインのそれぞれに1つの弁があって良い。従って、シリンダを出た全排気ガスの所望の割合が、第1のバイパス排気ライン、従って第1の触媒及び第2の触媒を通るように導かれて良い。
【0093】
第1の触媒及び第2の触媒を有する全触媒システムは、例えば、より高いNO
Xレベルが許容されると考えられ得る状況を規定するTier IIモードにおいては、分離されて全排気ガスが触媒を通過しないようにしても良い。
【0094】
有利なことに、排気ガス後処理システムは、第1のバイパス排気ライン及び第2のバイパス排気ラインのスループットを、好ましくは有害排出物、特にNO
X値、温度、還元剤(例えばアンモニア)の含有量、及び/又は機関の負荷によって制御するための制御ユニットを有する。
【0095】
例えば、第1及び第2の触媒の下流、又は第1と第2のガス流れの合流点下流のNO
X値を測定することによって算出され得る(determined)システム全体の性能によって、及び/又は必要とされる性能によって、より多くの、又はより少ない排気が、第1のバイパス排気ライン及び/又は第2のバイパス排気ラインを通るように導かれて良い。運転中、スループットはそれぞれの運転状態によって調節されて良い。
【0096】
本発明の好ましい一実施例では、排気ガス後処理システムは、第1の触媒の下流に少なくとも1つの誘導(conduction)分離デバイスを有する。第1の誘導排気ライン及び第2の誘導排気ラインは、少なくとも1つの誘導分離デバイスに接続される。少なくとも1つの誘導分離デバイスは、第1の触媒を出た排気ガスを、第1の誘導排気ラインに向かう第1のガス流れ、及び第2の誘導排気ラインに向かう第2のガス流れの中に分岐するように構成される。第2の触媒は、誘導分離デバイスの下流の第1の誘導排気ライン中に配置される。
【0097】
もう1つ以上の触媒、及び/又は少なくとももう1つの誘導分離デバイスが、第1の誘導排気ライン中に配置されて良い。
【0098】
このように、バイパスが設けられ、このバイパスは、第1の触媒を出た排気ガスの少なくとも一部を分岐し、この部分が第2の触媒に入らないようにする。
【0099】
第1の誘導排気ライン及び第2の誘導排気ラインは、第1と第2のガス流れが1つのラインに合流するように、第2の触媒の下流で一緒になって良い。
【0100】
例えば第1の触媒が、高い機関負荷において、Tier IIIレベルまで完全にNO
Xを低減するように設計された場合、第2の触媒はこの状況では必要ではない可能性がある。第1の触媒下流の誘導分離デバイスにより、第2の触媒をバイパスすることができる。
【0101】
排気ガス後処理システムは、第1の誘導排気ライン及び第2の誘導排気ラインのスループットを設定する誘導調整デバイスを有することが好ましい。特に、誘導調整デバイスは、第1の誘導排気ライン及び/又は第2の誘導排気ラインを開閉するための少なくとも1つの誘導調整弁を有する。
【0102】
従って、第1の触媒を出た排気ガスの所望の割合が、第1の誘導排気ラインを通り、従って第2の触媒を通るように導かれて良い。
【0103】
第1の触媒の下流の誘導分離デバイスにより、例えば機関負荷が低い時にのみ、第1と第2の触媒の組合せを使用することができる。
【0104】
有利なことに、排気ガス後処理システムは、第1の誘導排気ライン及び第2の誘導排気ラインのスループットを、好ましくは有害排出物、特にNO
X値、温度、還元剤(例えばアンモニア)の含有量、及び/又は機関の負荷によって制御するための制御ユニットを有する。運転中、それぞれの運転条件に従って、スループットを調整することができる。
【0105】
第2の触媒の下流、又は第1及び第2のガス流れの合流点の下流で測定されたNO
Xの値が、所与の値を超過する場合、又は第1の触媒の上流で測定されたNO
X値と、第2の触媒の下流又は第1と第2のガス流れの合流点の下流で測定されたNO
Xの値との間の差が、所定の値未満に低下した場合、性能が過小と考えられ得る。この場合、制御ユニットは、第1の誘導排気ラインを開ける、且つ/又は第1のガス流れを増すことを発動することができる。
【0106】
有益な一実施例では、排気ガス後処理システムは、第1の触媒及び第2の触媒の上流に、少なくとも1つの並列化デバイスを有する。第1の並列排気ライン及び第2の並列排気ラインは、少なくとも1つの並列化デバイスに接続される。少なくとも1つの並列化デバイスは、第1の触媒及び第2の触媒の上流の排気ガスを、第1の並列排気ラインに向かう第1のガス流れ、及び第2の並列排気ラインに向かう第2のガス流れに分岐するように構成される。第1の触媒は、第1の並列排気ライン中に配置され、第2の触媒は、第2の並列排気ライン中に配置される。
【0107】
好ましくは、排気ガス後処理システムは、第1の並列排気ライン及び第2の並列排気ラインのスループットを設定する並列化調整デバイス、好ましくは第1の並列排気ライン及び/又は第2の並列排気ラインを開閉するための少なくとも1つの並列調整弁を有する。
【0108】
並列化調整デバイスにより、第1若しくは第2の触媒のいずれかを使用すること、又は両方の触媒を並列に使用することが可能となる。
【0109】
並列化調整デバイスは、並列に配置され、それぞれの排気ライン中に少なくとも1つの触媒が配置された、3つ以上の排気ラインのスループットを設定するように構成されて良い。これらの触媒は異なる型であって良い。
【0110】
有利なことに、排気ガス後処理システムは、第1の並列排気ライン及び第2の並列排気ラインのスループットを、好ましくは有害排出物、特にNO
X値、温度、還元剤(例えばアンモニア)の含有量、及び/又は機関の負荷によって制御し、そして運転中にそれぞれの運転状況に従ってスループットを調整するための制御ユニットを有する。
【0111】
制御ユニットは、第1のバイパス排気ライン、第2のバイパス排気ライン、第1の誘導排気ライン、第2の排気ライン、第1の並列排気ライン、及び/又は第2の並列排気ラインを通るスループットを制御して良い。
【0112】
排気ガス後処理システムは、バイパス分離デバイス及び誘導分離デバイスを有して良い。誘導分離デバイスは、第1の触媒の下流の第1のバイパス排気ライン中に配置されて良い。
【0113】
第2のバイパス排気ラインは、第2の誘導排気ラインと合流して良く、第1の誘導排気ライン及び第2のバイパス排気ラインは、ガス流れが合流するように、第2の触媒の下流で一緒になって良い。
【0114】
排気ガス後処理システムは、バイパス分離デバイス及び並列化デバイスを有して良い。並列化デバイスは第1のバイパス排気ライン中に配置されて良い。
【0115】
排気ガス後処理システムは、誘導分離デバイス及び並列化デバイスを有して良い。
【0116】
誘導分離デバイスは、第1の触媒の下流の第1の並列排気ライン中に配置されて良い。第2の並列排気ラインは、第2の触媒の上流で第1の誘導排気ラインと合流して良い。この配置の場合、触媒は並列及び直列に使用することができる。
【0117】
或いは、並列化デバイスは、誘導分離デバイスの下流の第2の誘導排気ライン中に配置されて良い。
【0118】
排気ガス後処理システムは、バイパス分離デバイス、誘導分離デバイス及び並列化デバイスを有して良い。
【0119】
上述の、誘導分離デバイスと並列化デバイスの組合せは、第1のバイパス排気ライン中に配置されて良い。
【0120】
様々なバイパスのコンセプトが、様々な運転コンセプトに適用され、残留還元剤(例えばNH
3)とNO
Xとの間の排気ガス比率の大幅な変更が実現できる。
【0121】
実行可能な選択肢としては、排気ガスの残留還元剤(例えばNH
3)とNO
Xの濃度が等しく維持されている場合には、排気ガスを第1のSCR触媒上にのみ誘導することができる。このシナリオでは、SCR触媒は、十分なNO
Xによって還元剤(NH
3)の化学式通りの減少を提供する。
【0122】
NO
Xが存在する中で、残留反応物(NH
3)を減少させるための標準的なSCRの配合(formulation)は、貴金属触媒に勝る確かな選択である。何故ならば、それは、例えば排気ガスに含まれる微量元素(trace element)、例えば硫黄によって引き起こされる、特に化学的な非活性化に対して、より抵抗力があるからである。
【0123】
第1次SCR反応器の下流の排気ガス中に、NH
3がNO
Xよりも高い濃度で存在する場合は、高い残留反応物(例えばNH
3)の濃度を補正するために、SCR触媒と第2のアンモニア分解触媒の組合せを、SCR触媒の下流で使用して良い。
【0124】
第1次SCR触媒の下流で、排気ガス中にNH
3のみが存在し、例えばNO
Xは微量元素レベルのみ存在する場合、アンモニア分解触媒が第1のSCR触媒の下流に設けられて良い。
【0125】
運転変更と同時に、NO
X濃度の形成が減少し、一方で残留反応物(NH
3)の濃度はまだ高く維持されている場合は、排気ガスを徐々にアンモニア分解触媒上に導くことができる。
【0126】
有利な一実施例では、排気ガス後処理システムは、1つのNO
Xセンサ、好ましくは2つのNO
Xセンサ等の、有害排出物を測定するためのセンサを有する。
【0127】
加えて又は或いは、排気ガス後処理システムは、好ましくない副反応生成物を測定するための少なくとも1つのセンサを有して良い。
【0128】
加えて又は或いは、排気ガス後処理システムは、残留還元剤(例えばNH
3)を測定する少なくとも1つのセンサを有して良い。
【0129】
特に、排気ガス後処理システムは、NO
Xセンサ等の3つのセンサを有して良く、これらは第1及び/又は第2の触媒の上流に配置された第1のセンサ、第1の触媒の下流に配置された第2のセンサ、及び第2の触媒の下流に配置された第3のセンサであって良い。
【0130】
NO
Xセンサ等のセンサは、第1の触媒の下流及び/又は第2の触媒の下流に配置されることが好ましい。NO
Xセンサは、第1及び/又は第2の触媒の上流にも配置されて良い。
【0131】
排気ガス後処理システムの様々な段階で、NO
X含有量等の有害排出物を測定することで、それぞれの触媒の有効性及び/又は性能を監視することができる。
【0132】
NO
Xセンサの代わりに、NO
X含有量に関する判定が得られるデータを収集するセンサを使用して良い。
【0133】
排気ガス後処理システムは、排気ガスの温度を測定するための温度センサを有することが好ましい。
【0134】
排気ガス後処理システムは、測定又は算出された有害排出物、特にNO
X値、又は異なるステージで測定又は算出されたNO
X値の違いを基準値と比較するため、又は測定された温度を基準温度と比較するための制御ユニットを有することが好ましい。
【0135】
比較の結果によって、処置を講じることができる。例えば、アンモニア又はアンモニア前駆物質、例えば尿素等の還元剤の噴射量を変更して良く、又は排気ガス後処理システムの少なくとも一部の温度を変更しても良く、さもなければ、多かれ少なかれ燃料ペナルティが課せられなければならなくなる。
【0136】
或いは、制御ユニットから、十分な量のNO
Xが第1若しくは第2の触媒中で低減されたとの信号が送られた場合、及び/又は、制御ユニットから、基準温度及び/若しくは基準負荷が達成されたか、到達しないか、若しくは超過したとの信号が送られた場合、第1及び/若しくは第2の触媒はバイパスされても良く、又は排気の一部のみを第1若しくは第2の触媒に導いても良い。
【0137】
制御ユニットは、好ましくは温度、機関負荷、及び/又はNO
X含有量等の有害物質の量の測定に基づいて、バイパス制御弁、誘導制御弁、及び/又は並列化制御弁を設定するように構成されて良い。
【0138】
本発明の目的は、少なくとも1つのシリンダを備えた内燃機関、好ましくは、少なくとも1つの、少なくとも200mmの内径を持つシリンダを備えた大型船舶機関が、上述のような排気ガス後処理システムを有することによっても達成される。
【0139】
本発明の目的は、内燃機関のNO
X排出物等の有害物質を、好ましくは前に上述したような燃焼機関内の上述の排気ガス後処理システムの中で低減する方法によっても達成される。排気ガスはシリンダの出口を通って放出される。
【0140】
アンモニア又はアンモニア前駆物質、例えば尿素、等の還元剤は、排気ガスの中に添加されることが好ましい。或いは、アンモニア水溶液、尿素水、炭酸アンモニア溶液、アンモニア・カルバミン酸塩(ammonia carbamate)、又は尿素粉末が添加されても良い。
【0141】
排気ガスは加水分解触媒へ導かれて良く、加水分解触媒内のNO
Xの濃度は、少なくとも420°Cの温度、及び/又は少なくとも90%の機関負荷、及び/又は2〜20kg/kWh、好ましくは7〜11kg/kWhの排気ガス質量流量において、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%低減される。
【0142】
本発明の目的は、内燃機関、好ましくは前に上述したような燃焼機関の、NO
X排出物等の有害排出物を低減するための方法、好ましくは上述の方法、によっても達成される。排気ガスはシリンダの出口を通って放出される。この方法は、次のステップを有する。第1の並列排気ライン及び第2の並列排気ラインのスループットは、好ましくは測定又は算出された有害放出物、特にNO
X値、温度、還元剤(例えば、アンモニア)の含有量、及び/又は機関負荷によって制御される。
【0143】
第1の並列排気ライン及び第2の並列排気ラインは、第1の触媒及び第2の触媒の上流に配置された少なくとも1つの並列化デバイスに接続される。第1の触媒は、第1の並列排気ライン中に配置され、第2の触媒は第2の並列排気ライン中に配置される。
【0144】
或いは又は加えて、排気ガスの少なくとも一部は、第1の触媒に導かれる。第1の誘導排気ライン及び第2の誘導排気ラインのスループットは、好ましくは、測定若しくは算出された有害排出物、特にNO
X値、温度、及び/又は機関負荷によって、制御される。第1の誘導排気ライン及び第2の誘導排気ラインは、第1の触媒の下流に配置された少なくとも1つの誘導分離デバイスに接続される。第2の触媒は第1の誘導排気ライン中に配置され、第2の誘導排気ラインは第1の触媒をバイパスする。
【0145】
本発明の目的は、内燃機関、好ましくは前に上述したような燃焼機関の、NO
X排出物等の有害排出物を低減するための方法、好ましくは上述の方法、によっても達成される。この方法は、次のステップを有する。
【0146】
第1のバイパス排気ライン及び第2のバイパス排気ラインのスループットは、好ましくは測定若しくは算出された有害排出物、特にNO
X値、温度、還元剤(例えば、アンモニア)の含有量、及び/又は機関負荷によって制御される。第1のバイパス排気ライン及び第2のバイパス排気ラインは、第1の触媒の上流に配置された少なくとも1つの誘導分離デバイスに接続され、第1の触媒及び第2の触媒は第1のバイパス排気ライン中に配置され、第2のバイパス排気ラインは第1の触媒及び第2の触媒をバイパスする。
【0147】
本方法の好ましい一実施例では、排気ガス中の、NO
Xの含有量等の有害物質の含有量が測定される。
【0148】
有害物質の含有量は、第1及び/若しくは第2の触媒の上流、並びに/又は、第1及び/若しくは第2の触媒の下流で測定されて良い。
【0149】
有利なことに、測定又は算出された、NO
X含有量等の有害物質の含有量は、基準値と比較される。基準値は所与の値、例えば適用規則に帰するNO
X排出値で良い。
【0150】
基準値は測定値であっても良い。例えば、第1及び第2の触媒の上流で測定されたNO
X値が、第1又は第2の触媒の下流で測定されたNO
X値と比較されて良い。
【0151】
比較によって、より多く又はより少ないガスが、第1の触媒及び/又は第2の触媒を通るように導かれて良い。
【0152】
従って、運転条件の第1の範囲では、全排気質量流量が第1の型の触媒を有する第1の触媒コンバータのみを通過して良く、運転条件の第2の範囲では全排気質量流量が第2の型の触媒を有する第2の触媒コンバータのみを通過して良く、運転条件の第3の範囲では、全排気質量流量が両方を(並列に、又は直列に)通過して良い。
【0153】
例えば、船が港を出る場合、機関は全負荷では運転しておらず、排気ガス温度は低い始動温度である可能性がある。第1の触媒のみが使われて良い。
【0154】
ある時間が経過後、負荷は上昇する。排気ガスの温度及び容積も上昇する。排気ガスの一部は第2の触媒を通るように導かれる。排気ガスの温度が上昇し続ける場合、排気ガスの増加部分が第2の触媒を通るように導かれる。最後に全負荷が達成させると、排気ガスの全てが第2の触媒のみを通るように導かれて良い。
【0155】
以下、本発明が図面を用いて実施例でさらに説明される。