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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-101176(P2020-101176A)
(43)【公開日】2020年7月2日
(54)【発明の名称】排気ガス後処理システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20200605BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20200605BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20200605BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20200605BHJP
   B01J 23/30 20060101ALI20200605BHJP
【FI】
   F01N3/20 N
   F01N3/08 GZAB
   F01N3/08 H
   F01N13/08 B
   B01D53/94 222
   B01J23/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2019-185062(P2019-185062)
(22)【出願日】2019年10月8日
(31)【優先権主張番号】18214209.1
(32)【優先日】2018年12月19日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515191442
【氏名又は名称】ヴィンタートゥール ガス アンド ディーゼル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディルク カダウ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ブルッチェ
【テーマコード(参考)】
3G004
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G004AA05
3G004EA01
3G091AA04
3G091AA10
3G091AA15
3G091AA18
3G091AA19
3G091AB05
3G091BA01
3G091BA14
3G091CA12
3G091CA13
3G091CA17
3G091EA17
3G091EA33
3G091FA11
3G091GB09W
3G091HA03
3G091HA08
3G091HA36
3G091HA37
3G091HB03
4D148AA01
4D148AA06
4D148AB01
4D148AB02
4D148AB03
4D148AC03
4D148AC04
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4D148BA36Y
4D148BB16
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4D148DA06
4D148DA08
4G169AA03
4G169BA04B
4G169BC54B
4G169BC60B
4G169CA02
4G169CA03
4G169CA08
4G169CA13
4G169DA05
(57)【要約】
【課題】有害物質を低減する排気ガス後処理システムの提供。
【解決手段】少なくとも1つのシリンダを有する燃焼機関、好ましくは少なくとも200mmの内径の少なくとも1つシリンダを有する大型船舶機関の排気ガス後処理システムであって、化学組成が異なる第1及び第2の触媒を有し、且つ/又は第1の触媒は第1の機関負荷値で最適動作性能、特にNO低減性能を有し、第2の触媒は第1の機関負荷値と異なる第2の機関負荷値で最適動作性能、特にNO低減性能を有し、且つ/又は第1の触媒は第1の温度で最適動作性能、特にNO低減性能を有し、第2の触媒は第1の温度と異なる第2の温度で最適動作性能、特にNO低減性能を有し、且つ/又は第1の触媒は第1の化学反応で有害物質、特にNO含有量を低減可能であり、第2の触媒は第1の化学反応と異なる第2の化学反応で有害物質、特にNO含有量を低減可能である、システムが提供される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのシリンダ(21)を有する燃焼機関(20)用の、好ましくは少なくとも200mmの内径(27)を有する少なくとも1つシリンダ(21)を備えた大型船舶機関用の排気ガス後処理システム(10)であって、第1の触媒(1)及び第2の触媒(2)を有する排気ガス後処理システム(10)において、
前記第1の触媒は、前記第2の触媒と異なる化学組成を有し、且つ/又は
前記第1の触媒(1)は、第1の機関負荷値において、最適動作性能を、特にNO低減性能を有し、前記第2の触媒(2)は、第2の機関負荷値において、最適動作性能と、特にNO低減性能を有し、前記第1の機関負荷値は前記第2の機関負荷値と異なっており、且つ/又は
前記第1の触媒(1)は、第1の温度において、最適動作性能を、特にNO低減性能を有し、前記第2の触媒(2)は、第2の温度において、最適動作性能を、特にNO低減性能を有し、前記第1の温度は前記第2の温度と異なっており、且つ/又は
前記第1の触媒(1)は、第1の化学反応によって有害物質を、特にNO含有量を低減することができ、前記第2の触媒(2)は、第2の化学反応によって有害物質を、特にNO含有量を低減することができ、前記第1の化学反応は前記第2の化学反応と異なっている、
排気ガス後処理システム(10)。
【請求項2】
前記排気ガス後処理システム(10)は、前記第1の触媒(1)及び前記第2の触媒(2)の上流に少なくとも1つのバイパス分離デバイス(17)を有し、
第1のバイパス排気ライン(18)及び第2のバイパス排気ライン(19)が、前記少なくとも1つのバイパス分離デバイス(17)に接続されており、
前記少なくとも1つのバイパス分離デバイス(17)は、前記第1の触媒(1)及び前記第2の触媒(2)の上流の前記排気ガスを、前記第1のバイパス排気ライン(18)への第1のガス流れ、及び前記第2のバイパス排気ライン(19)への第2のガス流れに分離するように構成されており、また
前記第1の触媒(1)及び前記第2の触媒(2)は、前記分離バイパスデバイス(17)の下流の前記第1のバイパス排気ライン(18)に配置されている、
請求項1に記載の排気ガス後処理システム(10)。
【請求項3】
前記第1のバイパス排気ライン(18)及び前記第2のバイパス排気ライン(19)のスループットを設定するためのバイパス調整デバイス(22)、好ましくは前記第1のバイパス排気ライン(18)及び/又は前記第2のバイパス排気ライン(19)を開閉するための少なくとも1つのバイパス調整弁(23、24)を有する、請求項2に記載の排気ガス後処理システム(10)。
【請求項4】
前記第1のバイパス排気ライン(17)及び前記第2のバイパス排気ライン(18)のスループットを制御するための制御ユニット(6)、好ましくは有害排出物、特にNO値、温度、及び/又は機関負荷に応じて前記スループットを制御するための制御ユニット(6)を有する、請求項2又は3に記載の排気ガス後処理システム(10)。
【請求項5】
前記排気ガス後処理システム(10)は、前記第1の触媒(1)の下流に少なくとも1つの誘導分離デバイス(11)を有し、
第1の誘導排気ライン(12)及び第2の誘導排気ライン(13)が、前記少なくとも1つの誘導分離デバイス(11)に接続されており、
前記少なくとも1つの誘導分離デバイス(11)は、前記第1の触媒(1)を出た前記排気ガスを、前記第1の誘導排気ライン(12)に向かう第1のガス流れ、及び前記第2の誘導排気ライン(13)に向かう第2のガス流れに分離するように構成されており、また
前記第2の触媒(2)は、前記誘導分離デバイス(11)の下流の前記第1の誘導排気ライン(12)に配置されている、
請求項1から4までのいずれか一項に記載の排気ガス後処理システム(10)。
【請求項6】
前記第1の誘導排気ライン(12)及び前記第2の誘導排気ライン(13)のスループットを設定するための誘導調整デバイス(14)、好ましくは前記第1の誘導排気ライン(12)及び/又は前記第2の誘導排気ライン(13)を開閉するための少なくとも1つの誘導調整弁(15、16)を有する誘導調整デバイス(14)を有する、請求項5に記載の排気ガス後処理システム(10)。
【請求項7】
前記第1の誘導排気ライン(12)及び前記第2の誘導排気ライン(13)のスループットを制御するための制御ユニット(6)、好ましくは有害排出物、特にNO値、温度、及び/又は機関負荷に応じて前記スループットを制御するための制御ユニット(6)を有する、請求項5又は6に記載の排気ガス後処理システム(10)。
【請求項8】
前記排気ガス後処理システム(10)は、前記第1の触媒(1)及び前記第2の触媒(2)の上流に少なくとも1つの並列化デバイス(28)を有し、
第1の並列排気ライン(29)及び第2の並列排気ライン(30)が、前記少なくとも1つの並列化デバイス(28)に接続されており、
前記少なくとも1つの並列化デバイス(28)は、前記第1の触媒(1)及び前記第2の触媒(2)の上流の前記排気ガスを、前記第1の並列排気ライン(29)への第1のガス流れ、及び前記第2の並列排気ライン(30)への第2のガス流れに分離するように構成されており、また
前記第1の触媒(1)は前記第1の並列排気ライン(29)に配置され、前記第2の触媒(2)は前記第2の並列排気ライン(30)に配置されている、
請求項1から7までのいずれか一項に記載の排気ガス後処理システム(10)。
【請求項9】
前記第1の並列排気ライン(29)及び前記第2の並列排気ライン(30)のスループットを設定するための並列化調整デバイス(31)、好ましくは前記第1の並列排気ライン(29)及び/又は前記第2の並列排気ライン(30)を開閉するための少なくとも1つの並列調整弁(32、33)を有する、請求項8に記載の排気ガス後処理システム(10)。
【請求項10】
前記第1の並列排気ライン(29)及び前記第2の並列排気ライン(30)のスループットを制御するための制御ユニット(6)、好ましくは有害排出物、特にNO値、温度及び/又は機関負荷に応じて前記スループットを制御するための制御ユニット(6)を有する、請求項8又は9に記載の排気ガス後処理システム(10)。
【請求項11】
1つのNOセンサ(4、5、8)、好ましくは2つ又は3つのNOセンサ(4、5、8)を有する、請求項1から10までのいずれか一項に記載の排気ガス後処理システム(10)。
【請求項12】
測定又は算出された有害排出物、特にNO値を、基準値と比較するための制御ユニット(6)を有する、請求項11に記載の排気ガス後処理システム(10)。
【請求項13】
請求項1から12までに記載の排気ガス後処理システム(10)を有する、少なくとも1つのシリンダ(21)を備えた内燃機関(20)、好ましくは少なくとも200mmの内径(27)を有する少なくとも1つのシリンダ(21)を備えた大型船舶機関。
【請求項14】
内燃機関のNO排出物等の有害排出物を、請求項1から12までの1つに記載の排気ガス後処理システム(10)内で低減するための方法であって、排気ガスは、シリンダ(21)の出口(7)を通って排出される、方法。
【請求項15】
内燃機関のNO排出物等の有害排出物を排気ガス後処理システム(10)内で低減するための、好ましくは請求項14に記載の方法であって、排気ガスは、シリンダ(21)の出口(7)を通って排出される、方法において、
第1の並列排気ライン(29)及び第2の並列排気ライン(30)のスループットを、好ましくは測定又は算出された有害排出物、特にNO値、温度、及び/又は機関負荷に応じて制御するステップであって、前記第1の並列排気ライン(29)及び前記第2の並列排気ライン(30)は、第1の触媒(1)及び第2の触媒(2)の上流に配置された少なくとも1つの並列化デバイス(28)に接続されており、前記第1の触媒(2)は前記第1の並列排気ライン(29)に配置され、前記第2の触媒(2)は前記第2の並列排気ライン(30)に配置されている、ステップ、及び/又は
前記排気ガスの少なくとも一部を第1の触媒(1)に案内するステップ、
第1の誘導排気ライン(12)及び第2の誘導排気ライン(12)のスループットを、好ましくは測定又は算出された有害排出物、特にNO値、温度、及び/又は機関負荷に応じて制御するステップであって、前記第1の誘導排気ライン(12)及び前記第2の誘導排気ライン(13)は、前記第1の触媒(11)の下流に配置された少なくとも1つの誘導分離デバイス(11)に接続されており、第2の触媒(2)は前記第1の誘導排気ライン(12)に配置され、前記第2の誘導排気ライン(13)は前記第1の触媒(2)をバイパスする、ステップ、
を有する方法。
【請求項16】
内燃機関のNO排出物等の有害排出物を排気ガス後処理システム(10)内で低減するための、好ましくは請求項14又は15に記載の方法であって、排気ガスは、シリンダ(21)の出口(7)を通って排出される、方法において、
第1のバイパス排気ライン(18)及び第2のバイパス排気ライン(19)のスループットを、好ましくは測定又は算出された有害排出物、特にNO値、温度、及び/又は機関負荷に応じて制御するステップであって、前記第1のバイパス排気ライン(18)及び前記第2のバイパス排気ライン(19)は、前記第1の触媒(1)の上流に配置された少なくとも1つの誘導分離デバイス(17)に接続されており、前記第1の触媒(1)及び前記第2の触媒(2)は前記第1のバイパス排気ライン(18)に配置され、前記第2のバイパス排気ライン(19)は前記第1の触媒(1)及び前記第2の触媒(2)をバイパスする、ステップ、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのシリンダを持つ燃焼機関、好ましくは、少なくとも200mmの内径を持つ少なくとも1つのシリンダを備えた大型船舶機関用の排気ガス後処理システム、内燃機関、及び内燃機関の有害排出物(noxious emission)を低減するための方法を対象とする。
【0002】
本発明は、燃焼機関及びその排出物低減の技術分野に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、好ましくは、そのシリンダが少なくとも200mmの内径を持つ大型の舶用の、すなわち船用の機関、又は定置機関のような内燃機関に関する。機関は2ストローク機関又は2ストローク・クロス・ヘッド機関であることが好ましい。機関はディーゼル又はガス機関とすることができ、2元燃料又は多元燃料機関とすることができる。この種の機関では、液体及び/又はガス状燃料を燃焼可能で、さらには自己着火(self−igniting)又は強制点火が可能である。
【0004】
内燃機関は長手方向掃気式(longitudinally flushed)の2ストローク機関とすることができる。
【0005】
また、内燃機関の用語は、燃料の自己着火を特徴とするディーゼル・モードだけでなく、燃料のポジティブ点火を特徴とするオットー・モード(Otto mode)でも、又はその2つの組合せでも運転可能な大型機関を指す。さらに、内燃機関の用語は、特に二元燃料機関、及び燃料の自己着火が別の燃料のポジティブ点火のために使用される大型機関を含む。
【0006】
機関回転速度は800RPM(4ストローク)未満が好ましく、低速機関の称号を指す200RPM(2ストローク)未満がより好ましい。
【0007】
燃料は、ディーゼル若しくは舶用ディーゼル油、又は重質燃料油、又はエマルジョン、又はスラリー、又はメタノール、又はエタノール、並びに液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG:liquid petrol gas)等のようなガスとすることができる。
【0008】
更に考え得る、使用し得る燃料は、LBG(液化バイオ・ガス:Liquefield Bio−gas)、バイオ燃料(例えば、藻類から得られる油)、水素、COからできた合成燃料(例えば、パワー・トゥ・ガス又はパワー・トゥ・リキッドにより作られたもの)である。
【0009】
大型船、特に貨物を輸送するための船舶は、通常内燃機関、特にディーゼル及び/又はガス機関、ほとんどが2ストロークのクロスヘッド機関を動力とする。重質燃料油、舶用ディーゼル油、ディーゼル又は他の液体のような液体燃料の場合、並びにLNG、LPG又はその他のようなガス状燃料を機関で燃焼する場合、この燃焼プロセスからの排気はIMO(International Maritime Organization) Tier III等の現行の規則に準拠するように清浄化される必要がある。
【0010】
とりわけTier I〜III基準と一般的に呼ばれるIMO排出基準は、既存及び新規の舶用機関に対するNO排出基準を規定している。
【0011】
大型船に対して、特に窒素酸化物の排出物に関し、排出物への要求が増加してきている。従って、これらの船の内燃機関により排出される排気ガス内の窒素酸化物の量を低減する必要がある。
【0012】
SCR(selective catalytic reduction:選択式触媒還元)技術は燃焼機関の排気ガス内の窒素酸化物(NO)レベルを低減するために使用される。SCRは、例えば高荷重の車両、産業用プラント及びその他の用途の陸ベースの機関に一般的に使用される。SCR技術は海洋環境においても、2ストローク・ディーゼル機関との組合せで使用されてきている。前記舶用ディーゼル機関及び陸ベースの機関に対する規制上の要求により、効率的なSCRシステムの必要性が増加している。
【0013】
SCRは、SCR触媒内でアンモニア(NH)を用いて排気ガス中の窒素酸化物を還元することに基づいて良い。典型的には、アンモニアは、燃焼機関の排気ガスの中に、尿素水(urea solution)等のアンモニア前駆物質を噴射することにより生成される。例えば尿素水を高温の排気ガス中にノズルを介して噴霧し、そこで液体尿素水はアンモニア、二酸化炭素及び水蒸気へと反応を起こす。アンモニアは次に、SCR反応器内の触媒の作用の下で、窒素酸化物を窒素(N)及び水(HO)に還元する。液体尿素からのアンモニアの生成は吸熱性である。従って、排気ガスが十分に高温である場合にのみ、尿素水の分解は完了し、そして窒素酸化物(NO)は窒素(N)に還元される。
【0014】
欧州特許第3149298(B1)号は、アンモニア前駆物質を加えるための添加デバイスに加水分解触媒コンバータを付与した後処理システムを開示している。加水分解触媒コンバータを介して、SCR触媒の上流におけるアンモニア前駆物質のアンモニアへの転化(conversion)を改善又は促進することができる。
【0015】
知られている燃焼機関内SCR反応器の問題の1つは、NO含有量を十分に低減することである。従って、その中で排気ガスが十分な滞留時間を持てる大容量のSCR反応器が必要となる。大容量のSCR反応器は多くの空間を必要とし、費用が増加する。
【0016】
SCR技術で典型的に使用される触媒は、TiOにより担持されたバナジウム、タングステンを有するか、又は、例えば銅ゼオライト(Cu/Zeolite)若しくは鉄ゼオライト(Fe/Zeolite)のような金属置換ゼオライトであるかのいずれかである。バナジウムは、NOの酸化を促進する。しかしながら、バナジウムの含有量は低く保たなければならない。何故ならば、さもないと、機関の高負荷帯及びそれぞれの高温度帯において、SOがSOに酸化するからで、SOはある濃度以上の場合に煙突の中及び下流で硫酸の青い煙条(plume)を生成し、それは如何なる費用を掛けても防止しなければならない。バナジウム含有量が高いと、350°Cを超える温度において、NHがNOへ酸化する恐れもある。その結果、より多くの還元剤を噴射しなければならなくなる。さらに、バナジウム含有量が高く、そして特にバナジウムとタングステンが組み合わさることで、350°Cを超える温度においてNO生成の増加が促進される。
【0017】
SCR触媒の性能は、温度にきわめて依存する。このため、並列に配置した2つ以上のSCR触媒を備えた排気ガス後処理システムを使用することが知られている。この後処理システムによって、暖機時間中はシステムのある部分、及び少ない数のSCR反応器のみを選択的に作動可能とし得る。排気ガスの全熱エネルギーによって、使用する容積が、全容積の場合よりも速く加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】欧州特許第3149298(B1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って、従来技術の欠点を防止し、且つ、運転費用の減少、後処理システム容積の減少、NO及びSO等の副反応生成物の排出最小化、並びに/又はアンモニア若しくはアンモニア前駆物質等の還元剤添加の減少が保証される排気ガス後処理システム、内燃機関、及び内燃機関のNO排出物を減らすための方法を作り出すことが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本目的は、少なくとも第1の触媒及び第2の触媒を有する、燃焼機関用の排気ガス後処理システムによって達成される。
【0021】
燃焼機関は、少なくとも1つのシリンダを持つ。燃焼機関は、少なくとも1つの、少なくとも200mmの内径を持つシリンダを備えた大型船舶機関であることが好ましい。
【0022】
第1の触媒は、第2の触媒とは異なる化学組成を持つ。
【0023】
第1の触媒は、第1の化学組成を持つ物質を有し、第2の触媒は、第1の化学組成とは異なる第2の化学組成を備えた物質を有して良い。
【0024】
第1及び第2の触媒は、異なる材料からなる担持構造(support structure)を有して良い。或いは、第1及び第2の触媒は同一材料からなる担持構造を有して良く、その担持構造は、異なる被覆又はドーピングを持って良い。
【0025】
これらの触媒は異なるバナジウム含有量を有して良い。触媒の1つは銅/鉄ゼオライト触媒等のゼオライト・ベース触媒であって良い。触媒の1つは第1の被覆を備えた金属の基材を有して良い。第2の触媒は、第1の被覆と異なる第2の被覆を有して良い。
【0026】
或いは又は加えて、第1の触媒は第1の機関負荷値において、その最適動作性能、特にNO低減性能を持ち、第2の触媒は第2の機関負荷値において、最適動作性能、特にNO低減性能を持ち、ここで、第1の機関負荷値は第2の機関負荷値とは異なる。
【0027】
或いは又は加えて、第1の触媒は第1の温度において、その最適動作性能、特にNO低減性能を持ち、第2の触媒は第2の温度において、その最適動作性能、特にNO低減性能を持ち、ここで、第1の温度は第2の温度とは異なる。
【0028】
第1の触媒は、TiOに担持されたバナジウム又はタングステンを有する第2の触媒よりも低い温度で、その最適のNO低減性能を持つゼオライト触媒であって良い。
【0029】
或いは又は加えて、第1の触媒は第1の化学反応により、及び/又は第1の触媒材料により、有害物質、特にNO含有量を低減する能力があり、第2の触媒は第2の化学反応により、及び/又は第2の触媒材料により、有害物質、特にNO含有量を低減する能力があり、ここで、第1の化学反応は第2の化学反応とは異なり、且つ/又は第1の触媒材料は第2の触媒材料とは異なる。
【0030】
従って、第1の触媒及び第2の触媒は、異なる型からなり、ここで型とは、化学組成、並びに/又は、機関負荷及び/若しくは温度に対する最適動作性能によって、並びに/或いはそれぞれの化学反応、並びに/又は異なる触媒材料に起因する低減能力によって、定義して良い。
【0031】
排気ガス後処理システムは、少なくとも2つの、異なる型の触媒を有する。
【0032】
排気ガス後処理システムは、更なる触媒を有して良く、これらの触媒の一部は同一の型であって良く、且つ/又は3つ以上のそれぞれ異なる型の触媒があって良い。
【0033】
個別の型のそれぞれの触媒は、温度領域(temperature window)、機関負荷領域、及び/又は排気ガスの個別の組成等の、個別の作動条件に対して最適化されて良い。典型的には、作動条件は、運転の過程の間に変化する。温度及び/又は機関負荷は上昇又は低下することがあり、排気ガスは、運転温度に起因して、又は燃料の変化に起因してその組成が変化することがある。
【0034】
それぞれの運転条件に対して、排気ガス後処理システムは、最適触媒性能を提供できる。
【0035】
各運転条件に対して最適な触媒が提供されるので、機関の全運転範囲にわたって排出物を最少とすることができる。
【0036】
運転状況毎に、適切な触媒、又は触媒の組合せが選定可能なので、副生成物の排出を最少にでき、過度の触媒スペースを設ける必要が無く、且つ過度の還元剤を添加する必要が無い。従って、運転費用を最少とすることができる。
【0037】
触媒性能は、有害物質を低減する能力によって規定して良い。よって、NO低減性能が、触媒性能に対する尺度となり得る。
【0038】
触媒性能は、SO又はNO等の好ましくない副生成物の発生を防止する能力によって規定しても良い。
【0039】
触媒のうちの少なくとも1つは、典型的にTiOで担持されたバナジウム、タングステンを有するか、又は、例えば銅/ゼオライト若しくは鉄/ゼオライトのような金属置換ゼオライトのSCR触媒であって良い。
【0040】
排気ガス後処理システムは、アンモニア又はアンモニア前駆物質、例えば尿素等の還元剤のための添加ユニットを有して良い。
【0041】
添加ユニットも、排気ガス後処理システムの上流に配置して良い。
【0042】
第1及び第2の触媒は、異なるバナジウム含有量を有するSCR触媒であって良い。
【0043】
第1の触媒のバナジウム含有量は、0.3%以上、好ましくは0.5%以上、より好ましくは0.7%以上であって良い。割合は、触媒被覆の合計重量を指す。第2の触媒のバナジウム含有量は、0.3%未満で良い。
【0044】
機関負荷が低い、及び/又は温度がより低い間は、バナジウム含有量がより高い第1の触媒を使用して良い。温度及び/又は機関負荷が上昇時、バナジウム含有量がより低い第2の触媒を使用して良い。
【0045】
排気ガス後処理システムは、それぞれ異なるバナジウム含有量を持つ3つ以上のSCR触媒を有しても良い。
【0046】
第2次SCRの触媒は、第1次SCR反応器のエレメントの配合と比べ、わずかに変更された触媒配合を備え、第1次SCR触媒の下流で排気ガス・ダクト内に配置して良い。第2のSCR触媒は、反応物スリップのレベルが高くなることを防止するために、高い選択性と転化性能が可能であって良い。この場合、第2のSCR触媒は、主にアンモニア分解触媒である。
【0047】
高い反応物スリップは、過剰な量の還元剤が第1次SCR反応器の中、又は上流に噴射された結果として引き起こされ得る。高レベルの反応物スリップに関係する他の原因は、空間速度による排気ガス中の反応物の不十分な混合、及び/又は触媒モジュールの入口面を横切る濃度勾配によって、未反応の反応物の筋(streaks)が触媒を通過することを引き起こすためと考えられる。
【0048】
反応物添加制御システムの偏差(offset)も、現下の条件に従って適切に調整されなければ、過渡的事象の間にスリップがより高くなることに影響を及ぼし得る。
【0049】
反応物スリップ・レベルの上昇は、第1次SCR触媒の下流に触媒を設置することによって緩和することができる。排出規制の違反がさらに防止され、還元剤がより効率的に使用される。
【0050】
第2の触媒の大きさ及び化学組成は、最小の触媒容積を使用しながら、触媒性能が要求される性能を満足するように選定することが好ましい。
【0051】
この種の用途のための触媒の組成は、標準的なSCR組成、又はその変種のいずれかとなろう。アンモニア分解触媒の組成を使用するのが好ましい。例えば、第2の触媒は、プラチナ及び/又はパラジウム被覆等の貴金属被覆を有して良い。
【0052】
触媒デバイスの第1の部分がSCR触媒であり、触媒デバイスの第2の部分がアンモニア分解触媒のような、異なる層を同じ基材上に配置しても良い。好ましい形態では、第1の部分が第2の部分の上流に配置される。
【0053】
別法としては、第1のSCR触媒とアンモニア分解触媒を異なる反応器に配置する。
【0054】
異なる型の触媒を、並列及び/又は直列に配置することができる。
【0055】
複数の触媒を一つの触媒反応器内に配置し、それぞれ触媒コンバータを形成することが好ましい。各触媒は、別々の触媒反応器に配置して良い。2つ以上の触媒が一つの触媒反応器内に配置されて良く、又は、さらには全ての触媒が同じ触媒反応器内に配置されても良い。
【0056】
従って、触媒の数に起因してシステムの複雑さが増加するかもしれないが、触媒反応器の組み立ての労力は低くできる可能性がある。
【0057】
第1の触媒は、加水分解触媒であって良く、第2の触媒は、好ましくは加水分解触媒の下流に配置されたSCR触媒であって良い。
【0058】
加水分解触媒はTiOを有して良いが、SCR触媒はタングステン酸化物又はバナジウム酸化物をドープしたTiOを有して良い。従って、加水分解触媒とSCR触媒は、異なる化学組成を持つ。
【0059】
加水分解触媒のNO低減性能が最適となる温度は、SCR触媒のNO低減性能が最適となる温度よりも高い。
【0060】
SCR触媒においては、NO分(content)は触媒の影響の下で、アンモニアによって窒素(N)及び水(HO)に還元される。
【0061】
所与の量のNOを低減するための加水分解触媒とSCR触媒の合計の容積は、同量のNOを低減するための独立型のSCR触媒の容積よりも少ないか、同等である。加水分解触媒とSCR触媒の合計の容積は、400l/MWよりも小さいことが好ましい。
【0062】
SCR触媒は、SCR反応器内に配置して良い。加水分解触媒は、加水分解触媒反応器内に配置して良い。
【0063】
SCR触媒及び加水分解触媒は、共通の反応器内に配置して良い。
【0064】
加えて又は或いは、SCR触媒のバナジウム含有量は、0.3%以上、好ましくは0.5%以上、より好ましくは0.7%以上であって良い。割合は、触媒被覆の合計重量を指す。
【0065】
加えて又は或いは、加水分解触媒及びSCR触媒は、好ましくは少なくとも90%の機関負荷、及び/又は2〜20kg/kWh、好ましくは7〜11kg/kWhの排気ガス質量流量において、SCR触媒内の排気ガスの滞留時間が0.5秒未満、より好ましくは0.3秒未満となるように設計される。
【0066】
特に加水分解触媒及びSCR触媒の容積は、全負荷において滞留時間が短くなるように適合される。
【0067】
加えて又は或いは、加水分解触媒及びSCR触媒は同じ触媒基材上に配置される。
【0068】
SCR触媒は、バナジウム、タングステン及び/又はTiO、好ましくはバナジウム及びタングステンをドープしたTiOを有することが好ましい。
【0069】
加水分解触媒は、HNCOをNHに加水分解するのを促進するだけでなく、尿素分子をHNCO及びNHへも分解する。さらには、高負荷において呈される排気ガス温度においては、加水分解触媒内でHNCOの加水分解が起こるだけでなく、SCR反応に似た、NOが著しく低減される副反応も起こる。
【0070】
このため、加水分解触媒内で既に低減されたNOは全て、加水分解触媒の下流に配置されたSCR触媒内には存在しないことになる。従って、SCR触媒はより少ない量のNOのみを低減すれば良い。
【0071】
従って、加水分解触媒及びSCR触媒を有する触媒システム全体の必要容積は、同一のNO低減に対する独立型SCR触媒の必要容積よりも小さくなる。触媒の合計容積は、独立型のSCR触媒に比べて、少なくとも8〜10%減少できる。
【0072】
本発明では、触媒の容積とは、触媒の外被容積(envelope volume)であると理解されたい。
【0073】
SCR触媒は、加水分解触媒と組み合わされた場合、より少ない量のNOを低減すれば良いため、SCR触媒の容積はより小さくでき、且つ/又は、反応時間、従ってSCR触媒内の滞留時間をより短くできる。
【0074】
排気ガスが短時間しかSCR触媒内にとどまらないことがあり、より大きな独立型SCR触媒について言えば、SCR触媒のバナジウム含有量がより高くなる可能性がある。何故ならば、SOの酸化反応時間並びにNOの生成時間も短くなるからである。さらには、バナジウム含有量が高い小さなSCR触媒は、バナジウム含有量が低い大きなSCR触媒と同じNO酸化速度を提供する可能性がある。
【0075】
SCR触媒内で酸化されるのはNHのわずかな部分のみであり、NHの大部分が効率的に使用される。従って、より少ない量のNHを供給すれば良い。SCR触媒内でNOへ酸化されるかもしれず、又はアンモニア・スリップとして残留する、過剰な量のNHを供給するリスクを低減することができる。尿素の過剰添加が防止できる。
【0076】
機関の低負荷帯及びその低い温度帯では、「SCR反応」の大部分、及び、従って、NO低減の大部分が、SCR触媒内で行われる。しかし、低負荷の間、加水分解触媒は少なくともHNCOからNHへの加水分解をもたらすことで、この反応をSCR触媒内で行う必要が無く、SCR触媒内に加水分解のためのスペースを設けなくて良いようになる。加水分解触媒は、尿素の分解も促進し、噴射された尿素のほぼ全てがSCR触媒の入口においてNHの形となるようにするので、SCR触媒内に追加の容積を設ける必要が無くなる。
【0077】
特に低負荷においては、高いバナジウム含有量、すなわち0.3%より高い、好ましくは0.5%以上、より好ましくは0.7%以上を有するSCR触媒が非常に高い活性を持ち、従って小さなSCR触媒も、バナジウム含有量が低い、より大きなSCR触媒と同じ性能に達することができる。
【0078】
より高い機関負荷運転において、加水分解触媒は、やはりHNCOのNHへの加水分解をもたらすが、NO低減の大半を賄う。加水分解触媒内部で低減されなかったわずかな量のNOのみをSCR触媒内で低減することになる。
【0079】
加水分解触媒及びSCR触媒を、例えば同じ触媒基材上に配置することにより、1つのデバイスとして構成する場合、よりコンパクトな配置さえ実現可能である。排気ガスは、加水分解触媒からSCR触媒へ直接流れることができる。
【0080】
触媒基材は金属製又はセラミック製であって良い。基材は被覆しても良い。例えば、触媒デバイスの入口はTiOのみで被覆され、一方で基材の下流部分は、バナジウム、タングステン及びTiOで被覆されて良い。
【0081】
排気ガス後処理システムは加水分解触媒を有しても良く、その加水分解触媒は、少なくとも420°Cの温度、及び/又は少なくとも90%の機関負荷、及び/又は2〜20kg/kWh、好ましくは7〜11kg/kWhの排気ガス質量流量において、加水分解触媒内のNOの濃度を、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは20%低減する能力を有する。加水分解触媒は、要求されるNO低減性能が達成される大きさにすることが好ましい。
【0082】
加水分解触媒は、TiO2、及び/又はZrO2、及び/又はAl3、及び/又はSiO2、及び/又はH−ZSM−5を有して良い。
【0083】
加水分解触媒及びSCR触媒は、同じ触媒基材上に配置されて良い。
【0084】
排出規制等の適用可能な規則、燃料の形式、機関の出力レベル、温度、求められる出力、及び更なる要素により、排気は様々なシステムによって処理する必要がある。従って、排気は船の機関の排気システムの中で、様々な方向に方向転換することができる。
【0085】
有益な一実施例においては、排気ガス後処理システムは、第1の触媒及び第2の触媒の上流に少なくとも1つのバイパス分離デバイスを有する。
【0086】
第1のバイパス排気ライン及び第2のバイパス排気ラインは、少なくとも1つのバイパス分離デバイスに接続される。少なくとも1つのバイパス分離デバイスは、第1の触媒及び第2の触媒の上流の排気ガスを、第1のバイパス排気ラインに向かう第1のガス流れ、及び第2のバイパス排気ラインに向かう第2のガス流れの中に分岐するように構成される。第1の触媒及び第2の触媒は、分離バイパスデバイスの下流の第1のバイパス排気ライン中に配置される。
【0087】
このように、バイパスが設けられ、このバイパスは、排気ガスの少なくとも一部を分岐し、この部分が第1の触媒及び第2の触媒に入らないようにする。
【0088】
第1のバイパス排気ライン中に3つ以上の触媒が配置されて良い。
【0089】
第1のバイパス排気ライン及び第2のバイパス排気ラインは、第1と第2のガス流れが1つのラインに合流するように、触媒の下流で一緒になって良い。
【0090】
排気ガス後処理システムは、第1のバイパス排気ライン及び第2のバイパス排気ラインのスループットを設定するためのパイパス調整デバイスを有すことが好ましい。
【0091】
バイパス調整デバイスは、第1のバイパス排気ライン及び/又は第2のバイパス排気ラインを開閉するための少なくとも1つのバイパス調整弁が組み込まれて良い。
【0092】
第1のパイパス排気ライン及び第2のバイパス排気ラインのそれぞれに1つの弁があって良い。従って、シリンダを出た全排気ガスの所望の割合が、第1のバイパス排気ライン、従って第1の触媒及び第2の触媒を通るように導かれて良い。
【0093】
第1の触媒及び第2の触媒を有する全触媒システムは、例えば、より高いNOレベルが許容されると考えられ得る状況を規定するTier IIモードにおいては、分離されて全排気ガスが触媒を通過しないようにしても良い。
【0094】
有利なことに、排気ガス後処理システムは、第1のバイパス排気ライン及び第2のバイパス排気ラインのスループットを、好ましくは有害排出物、特にNO値、温度、還元剤(例えばアンモニア)の含有量、及び/又は機関の負荷によって制御するための制御ユニットを有する。
【0095】
例えば、第1及び第2の触媒の下流、又は第1と第2のガス流れの合流点下流のNO値を測定することによって算出され得る(determined)システム全体の性能によって、及び/又は必要とされる性能によって、より多くの、又はより少ない排気が、第1のバイパス排気ライン及び/又は第2のバイパス排気ラインを通るように導かれて良い。運転中、スループットはそれぞれの運転状態によって調節されて良い。
【0096】
本発明の好ましい一実施例では、排気ガス後処理システムは、第1の触媒の下流に少なくとも1つの誘導(conduction)分離デバイスを有する。第1の誘導排気ライン及び第2の誘導排気ラインは、少なくとも1つの誘導分離デバイスに接続される。少なくとも1つの誘導分離デバイスは、第1の触媒を出た排気ガスを、第1の誘導排気ラインに向かう第1のガス流れ、及び第2の誘導排気ラインに向かう第2のガス流れの中に分岐するように構成される。第2の触媒は、誘導分離デバイスの下流の第1の誘導排気ライン中に配置される。
【0097】
もう1つ以上の触媒、及び/又は少なくとももう1つの誘導分離デバイスが、第1の誘導排気ライン中に配置されて良い。
【0098】
このように、バイパスが設けられ、このバイパスは、第1の触媒を出た排気ガスの少なくとも一部を分岐し、この部分が第2の触媒に入らないようにする。
【0099】
第1の誘導排気ライン及び第2の誘導排気ラインは、第1と第2のガス流れが1つのラインに合流するように、第2の触媒の下流で一緒になって良い。
【0100】
例えば第1の触媒が、高い機関負荷において、Tier IIIレベルまで完全にNOを低減するように設計された場合、第2の触媒はこの状況では必要ではない可能性がある。第1の触媒下流の誘導分離デバイスにより、第2の触媒をバイパスすることができる。
【0101】
排気ガス後処理システムは、第1の誘導排気ライン及び第2の誘導排気ラインのスループットを設定する誘導調整デバイスを有することが好ましい。特に、誘導調整デバイスは、第1の誘導排気ライン及び/又は第2の誘導排気ラインを開閉するための少なくとも1つの誘導調整弁を有する。
【0102】
従って、第1の触媒を出た排気ガスの所望の割合が、第1の誘導排気ラインを通り、従って第2の触媒を通るように導かれて良い。
【0103】
第1の触媒の下流の誘導分離デバイスにより、例えば機関負荷が低い時にのみ、第1と第2の触媒の組合せを使用することができる。
【0104】
有利なことに、排気ガス後処理システムは、第1の誘導排気ライン及び第2の誘導排気ラインのスループットを、好ましくは有害排出物、特にNO値、温度、還元剤(例えばアンモニア)の含有量、及び/又は機関の負荷によって制御するための制御ユニットを有する。運転中、それぞれの運転条件に従って、スループットを調整することができる。
【0105】
第2の触媒の下流、又は第1及び第2のガス流れの合流点の下流で測定されたNOの値が、所与の値を超過する場合、又は第1の触媒の上流で測定されたNO値と、第2の触媒の下流又は第1と第2のガス流れの合流点の下流で測定されたNOの値との間の差が、所定の値未満に低下した場合、性能が過小と考えられ得る。この場合、制御ユニットは、第1の誘導排気ラインを開ける、且つ/又は第1のガス流れを増すことを発動することができる。
【0106】
有益な一実施例では、排気ガス後処理システムは、第1の触媒及び第2の触媒の上流に、少なくとも1つの並列化デバイスを有する。第1の並列排気ライン及び第2の並列排気ラインは、少なくとも1つの並列化デバイスに接続される。少なくとも1つの並列化デバイスは、第1の触媒及び第2の触媒の上流の排気ガスを、第1の並列排気ラインに向かう第1のガス流れ、及び第2の並列排気ラインに向かう第2のガス流れに分岐するように構成される。第1の触媒は、第1の並列排気ライン中に配置され、第2の触媒は、第2の並列排気ライン中に配置される。
【0107】
好ましくは、排気ガス後処理システムは、第1の並列排気ライン及び第2の並列排気ラインのスループットを設定する並列化調整デバイス、好ましくは第1の並列排気ライン及び/又は第2の並列排気ラインを開閉するための少なくとも1つの並列調整弁を有する。
【0108】
並列化調整デバイスにより、第1若しくは第2の触媒のいずれかを使用すること、又は両方の触媒を並列に使用することが可能となる。
【0109】
並列化調整デバイスは、並列に配置され、それぞれの排気ライン中に少なくとも1つの触媒が配置された、3つ以上の排気ラインのスループットを設定するように構成されて良い。これらの触媒は異なる型であって良い。
【0110】
有利なことに、排気ガス後処理システムは、第1の並列排気ライン及び第2の並列排気ラインのスループットを、好ましくは有害排出物、特にNO値、温度、還元剤(例えばアンモニア)の含有量、及び/又は機関の負荷によって制御し、そして運転中にそれぞれの運転状況に従ってスループットを調整するための制御ユニットを有する。
【0111】
制御ユニットは、第1のバイパス排気ライン、第2のバイパス排気ライン、第1の誘導排気ライン、第2の排気ライン、第1の並列排気ライン、及び/又は第2の並列排気ラインを通るスループットを制御して良い。
【0112】
排気ガス後処理システムは、バイパス分離デバイス及び誘導分離デバイスを有して良い。誘導分離デバイスは、第1の触媒の下流の第1のバイパス排気ライン中に配置されて良い。
【0113】
第2のバイパス排気ラインは、第2の誘導排気ラインと合流して良く、第1の誘導排気ライン及び第2のバイパス排気ラインは、ガス流れが合流するように、第2の触媒の下流で一緒になって良い。
【0114】
排気ガス後処理システムは、バイパス分離デバイス及び並列化デバイスを有して良い。並列化デバイスは第1のバイパス排気ライン中に配置されて良い。
【0115】
排気ガス後処理システムは、誘導分離デバイス及び並列化デバイスを有して良い。
【0116】
誘導分離デバイスは、第1の触媒の下流の第1の並列排気ライン中に配置されて良い。第2の並列排気ラインは、第2の触媒の上流で第1の誘導排気ラインと合流して良い。この配置の場合、触媒は並列及び直列に使用することができる。
【0117】
或いは、並列化デバイスは、誘導分離デバイスの下流の第2の誘導排気ライン中に配置されて良い。
【0118】
排気ガス後処理システムは、バイパス分離デバイス、誘導分離デバイス及び並列化デバイスを有して良い。
【0119】
上述の、誘導分離デバイスと並列化デバイスの組合せは、第1のバイパス排気ライン中に配置されて良い。
【0120】
様々なバイパスのコンセプトが、様々な運転コンセプトに適用され、残留還元剤(例えばNH)とNOとの間の排気ガス比率の大幅な変更が実現できる。
【0121】
実行可能な選択肢としては、排気ガスの残留還元剤(例えばNH)とNOの濃度が等しく維持されている場合には、排気ガスを第1のSCR触媒上にのみ誘導することができる。このシナリオでは、SCR触媒は、十分なNOによって還元剤(NH)の化学式通りの減少を提供する。
【0122】
NOが存在する中で、残留反応物(NH)を減少させるための標準的なSCRの配合(formulation)は、貴金属触媒に勝る確かな選択である。何故ならば、それは、例えば排気ガスに含まれる微量元素(trace element)、例えば硫黄によって引き起こされる、特に化学的な非活性化に対して、より抵抗力があるからである。
【0123】
第1次SCR反応器の下流の排気ガス中に、NHがNOよりも高い濃度で存在する場合は、高い残留反応物(例えばNH)の濃度を補正するために、SCR触媒と第2のアンモニア分解触媒の組合せを、SCR触媒の下流で使用して良い。
【0124】
第1次SCR触媒の下流で、排気ガス中にNHのみが存在し、例えばNOは微量元素レベルのみ存在する場合、アンモニア分解触媒が第1のSCR触媒の下流に設けられて良い。
【0125】
運転変更と同時に、NO濃度の形成が減少し、一方で残留反応物(NH)の濃度はまだ高く維持されている場合は、排気ガスを徐々にアンモニア分解触媒上に導くことができる。
【0126】
有利な一実施例では、排気ガス後処理システムは、1つのNOセンサ、好ましくは2つのNOセンサ等の、有害排出物を測定するためのセンサを有する。
【0127】
加えて又は或いは、排気ガス後処理システムは、好ましくない副反応生成物を測定するための少なくとも1つのセンサを有して良い。
【0128】
加えて又は或いは、排気ガス後処理システムは、残留還元剤(例えばNH)を測定する少なくとも1つのセンサを有して良い。
【0129】
特に、排気ガス後処理システムは、NOセンサ等の3つのセンサを有して良く、これらは第1及び/又は第2の触媒の上流に配置された第1のセンサ、第1の触媒の下流に配置された第2のセンサ、及び第2の触媒の下流に配置された第3のセンサであって良い。
【0130】
NOセンサ等のセンサは、第1の触媒の下流及び/又は第2の触媒の下流に配置されることが好ましい。NOセンサは、第1及び/又は第2の触媒の上流にも配置されて良い。
【0131】
排気ガス後処理システムの様々な段階で、NO含有量等の有害排出物を測定することで、それぞれの触媒の有効性及び/又は性能を監視することができる。
【0132】
NOセンサの代わりに、NO含有量に関する判定が得られるデータを収集するセンサを使用して良い。
【0133】
排気ガス後処理システムは、排気ガスの温度を測定するための温度センサを有することが好ましい。
【0134】
排気ガス後処理システムは、測定又は算出された有害排出物、特にNO値、又は異なるステージで測定又は算出されたNO値の違いを基準値と比較するため、又は測定された温度を基準温度と比較するための制御ユニットを有することが好ましい。
【0135】
比較の結果によって、処置を講じることができる。例えば、アンモニア又はアンモニア前駆物質、例えば尿素等の還元剤の噴射量を変更して良く、又は排気ガス後処理システムの少なくとも一部の温度を変更しても良く、さもなければ、多かれ少なかれ燃料ペナルティが課せられなければならなくなる。
【0136】
或いは、制御ユニットから、十分な量のNOが第1若しくは第2の触媒中で低減されたとの信号が送られた場合、及び/又は、制御ユニットから、基準温度及び/若しくは基準負荷が達成されたか、到達しないか、若しくは超過したとの信号が送られた場合、第1及び/若しくは第2の触媒はバイパスされても良く、又は排気の一部のみを第1若しくは第2の触媒に導いても良い。
【0137】
制御ユニットは、好ましくは温度、機関負荷、及び/又はNO含有量等の有害物質の量の測定に基づいて、バイパス制御弁、誘導制御弁、及び/又は並列化制御弁を設定するように構成されて良い。
【0138】
本発明の目的は、少なくとも1つのシリンダを備えた内燃機関、好ましくは、少なくとも1つの、少なくとも200mmの内径を持つシリンダを備えた大型船舶機関が、上述のような排気ガス後処理システムを有することによっても達成される。
【0139】
本発明の目的は、内燃機関のNO排出物等の有害物質を、好ましくは前に上述したような燃焼機関内の上述の排気ガス後処理システムの中で低減する方法によっても達成される。排気ガスはシリンダの出口を通って放出される。
【0140】
アンモニア又はアンモニア前駆物質、例えば尿素、等の還元剤は、排気ガスの中に添加されることが好ましい。或いは、アンモニア水溶液、尿素水、炭酸アンモニア溶液、アンモニア・カルバミン酸塩(ammonia carbamate)、又は尿素粉末が添加されても良い。
【0141】
排気ガスは加水分解触媒へ導かれて良く、加水分解触媒内のNOの濃度は、少なくとも420°Cの温度、及び/又は少なくとも90%の機関負荷、及び/又は2〜20kg/kWh、好ましくは7〜11kg/kWhの排気ガス質量流量において、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%低減される。
【0142】
本発明の目的は、内燃機関、好ましくは前に上述したような燃焼機関の、NO排出物等の有害排出物を低減するための方法、好ましくは上述の方法、によっても達成される。排気ガスはシリンダの出口を通って放出される。この方法は、次のステップを有する。第1の並列排気ライン及び第2の並列排気ラインのスループットは、好ましくは測定又は算出された有害放出物、特にNO値、温度、還元剤(例えば、アンモニア)の含有量、及び/又は機関負荷によって制御される。
【0143】
第1の並列排気ライン及び第2の並列排気ラインは、第1の触媒及び第2の触媒の上流に配置された少なくとも1つの並列化デバイスに接続される。第1の触媒は、第1の並列排気ライン中に配置され、第2の触媒は第2の並列排気ライン中に配置される。
【0144】
或いは又は加えて、排気ガスの少なくとも一部は、第1の触媒に導かれる。第1の誘導排気ライン及び第2の誘導排気ラインのスループットは、好ましくは、測定若しくは算出された有害排出物、特にNO値、温度、及び/又は機関負荷によって、制御される。第1の誘導排気ライン及び第2の誘導排気ラインは、第1の触媒の下流に配置された少なくとも1つの誘導分離デバイスに接続される。第2の触媒は第1の誘導排気ライン中に配置され、第2の誘導排気ラインは第1の触媒をバイパスする。
【0145】
本発明の目的は、内燃機関、好ましくは前に上述したような燃焼機関の、NO排出物等の有害排出物を低減するための方法、好ましくは上述の方法、によっても達成される。この方法は、次のステップを有する。
【0146】
第1のバイパス排気ライン及び第2のバイパス排気ラインのスループットは、好ましくは測定若しくは算出された有害排出物、特にNO値、温度、還元剤(例えば、アンモニア)の含有量、及び/又は機関負荷によって制御される。第1のバイパス排気ライン及び第2のバイパス排気ラインは、第1の触媒の上流に配置された少なくとも1つの誘導分離デバイスに接続され、第1の触媒及び第2の触媒は第1のバイパス排気ライン中に配置され、第2のバイパス排気ラインは第1の触媒及び第2の触媒をバイパスする。
【0147】
本方法の好ましい一実施例では、排気ガス中の、NOの含有量等の有害物質の含有量が測定される。
【0148】
有害物質の含有量は、第1及び/若しくは第2の触媒の上流、並びに/又は、第1及び/若しくは第2の触媒の下流で測定されて良い。
【0149】
有利なことに、測定又は算出された、NO含有量等の有害物質の含有量は、基準値と比較される。基準値は所与の値、例えば適用規則に帰するNO排出値で良い。
【0150】
基準値は測定値であっても良い。例えば、第1及び第2の触媒の上流で測定されたNO値が、第1又は第2の触媒の下流で測定されたNO値と比較されて良い。
【0151】
比較によって、より多く又はより少ないガスが、第1の触媒及び/又は第2の触媒を通るように導かれて良い。
【0152】
従って、運転条件の第1の範囲では、全排気質量流量が第1の型の触媒を有する第1の触媒コンバータのみを通過して良く、運転条件の第2の範囲では全排気質量流量が第2の型の触媒を有する第2の触媒コンバータのみを通過して良く、運転条件の第3の範囲では、全排気質量流量が両方を(並列に、又は直列に)通過して良い。
【0153】
例えば、船が港を出る場合、機関は全負荷では運転しておらず、排気ガス温度は低い始動温度である可能性がある。第1の触媒のみが使われて良い。
【0154】
ある時間が経過後、負荷は上昇する。排気ガスの温度及び容積も上昇する。排気ガスの一部は第2の触媒を通るように導かれる。排気ガスの温度が上昇し続ける場合、排気ガスの増加部分が第2の触媒を通るように導かれる。最後に全負荷が達成させると、排気ガスの全てが第2の触媒のみを通るように導かれて良い。
【0155】
以下、本発明が図面を用いて実施例でさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0156】
図1】燃焼機関の第1の実例の概略図である。
図2】燃焼機関の第2の実例の概略図である。
図3】燃焼機関の第3の実例の概略図である。
図4】燃焼機関の第4の実例の概略図である。
図5】燃焼機関の第5の実例の概略図である。
図6】燃焼機関の第6の実例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0157】
図1は、燃焼機関10の第1の実例の概略図を示す。
【0158】
燃焼機関20は4つのシリンダ21を備えて良く、各シリンダ21は少なくとも200mmの内径27を持つ。
【0159】
排気ガスは、出口7を通って放出される。
【0160】
燃焼機関20は、第1の触媒1、及び第1の触媒1の下流に配置された第2の触媒2を備えた排気ガス後処理システム10を有する。第1の触媒1は、加水分解触媒であって良い。第2の触媒2は、SCR触媒であって良い。SCR触媒2のバナジウム含有量は0.3%以上であって良い。
【0161】
排気ガス後処理システム10は、2つのNOセンサ4、5を有する。第1のNOセンサ4は、第2の触媒2の下流に配置される。第2のNOセンサ5は、第1の触媒1の上流に配置される。図中に明確には示していないが、更なるNOセンサが、第1の触媒1と第2の触媒2の間に配置されて良い。
【0162】
排気ガス後処理システム10は、第1のNOセンサ4により測定されたNOの値と第2のNOセンサ5により測定されたNOの値、又は更なるNOセンサにより測定されたNOの値を比較して、第1の触媒1及び第2の触媒2の性能を確認するための制御ユニット6を有する。
【0163】
制御ユニット6は、速度及び燃料指令に基づき機関の負荷を決定するように適合したものでも良い。
【0164】
排気ガス後処理システム10は、第1の触媒1の上流にバイパス分離デバイス17を有する。第1のバイパス排気ライン18及び第2のバイパス排気ライン19はバイパス分離デバイス17に接続される。
【0165】
バイパス分離デバイス17は、第1の触媒1の上流の排気ガスを第1のバイパス排気ライン18に向かう第1のガス流れ、及び第2のバイパス排気ライン19に向かう第2のガス流れの中に分岐するように構成される。
【0166】
第1のバイパス排気ライン18及び第2のバイパス排気ライン19は合流して良く、排気ガスはターボチャージャ26に導かれて良い。第2の触媒の下流に配置された追加の弁25は、排気ガスが第2のバイパス排気ライン19から第2の触媒の中に流れることを防止するために、第1のバイパス排気ライン18を閉じることができる。
【0167】
第1の触媒1及び第2の触媒2は、分離バイパスデバイス17の下流の第1のバイパス排気ライン18中に配置される。
【0168】
排気ガス後処理システム10は、第1のバイパス排気ライン18及び第2のバイパス排気ライン19のスループットを設定するためのバイパス調整デバイス22を有する。
【0169】
バイパス調整デバイス22は、第1のバイパス排気ライン18を開閉するための第1のバイパス調整弁23、及び第2のバイパス排気ライン19を開閉するための第2のバイパス調整弁24を有する。
【0170】
燃焼機関20は、図中に明確には示していないが、特に排気ガスの温度を測定するための、少なくとも1つの温度センサを有して良い。
【0171】
制御ユニット6が、NO低減性能、測定されたNO値、温度、及び/又は機関負荷によって、第1のバイパス調整弁23及び第2のバイパス調整弁24を開く及び/又は閉じるための信号を送ることにより、第1のバイパス排気ライン18及び第2のバイパス排気ライン19のスループットを制御するために設けられて良い。
【0172】
バイパスされない場合、排気ガスは第1の触媒1及び第2の触媒2を通過することになる。運転状況によって、NOの主な部分は第1の触媒1の中、若しくは第2の触媒2の中のいずれかで低減されることになる。
【0173】
図2は、燃焼機関10の第2の実例の概略図を示す。燃焼機関20は4つのシリンダ21を有して良い。
【0174】
燃焼機関20は、第1の触媒1、及び第1の触媒の下流に配置された第2の触媒2を備えた排気ガス後処理システム10を有する。第1の触媒1は、加水分解触媒であって良い。第2の触媒2は、SCR触媒であって良い。
【0175】
或いは、第1の触媒1は高温触媒、例えばバナジウム含有量が低いSCR触媒であって良く、そして第2の触媒2は低温触媒、例えばバナジウム含有量が高いSCR触媒であって良い。
【0176】
典型的には、第1の高温触媒1は第2の低温触媒2よりも大きな容積を持つ。第1の触媒及び第2の触媒が直列に使用された場合、触媒1、2の1つを個別に使用(図4参照)するのに比べて、好ましくないNOの生成が最小化される。第1の触媒の下流では、NHはその大部分がNOの還元に使用されてしまうため、わずかな量しか残らず、NOの生成は非常にわずかのみとなる。
【0177】
排気ガス後処理システム10は、第1の触媒、特に加水分解触媒の下流に誘導分離デバイス11を有し、第1の誘導排気ライン12及び第2の誘導排気ライン13は少なくとも1つの誘導分離デバイス11に接続される。
【0178】
誘導分離デバイス11は、第1の触媒1を出た排気ガスを、第1の誘導排気ライン12に向かう第1のガス流れ、及び第2の誘導排気ライン13に向かう第2のガス流れの中に分岐するように構成される。第2の触媒2は、誘導分離デバイス11の下流の第1の誘導排気ライン12中に配置される。
【0179】
排気ガス後処理システム10は、第1の誘導排気ライン12及び第2の誘導排気ライン13のスループットを設定するための調整デバイス14を有する。調整デバイス14は、第1の誘導排気ライン12を開閉するための第1の調整弁15、及び第2の誘導排気ライン13を開閉するための第2の調整弁16を有する。
【0180】
排気ガス後処理システム10は、2つのNOセンサ4、8を有して良い。第1のNOセンサ4は第2の触媒2の下流に配置される。第2のNOセンサ8は第1の触媒1の下流に配置される。
【0181】
図中に明確には示していないが、更なるセンサが第1の触媒1の上流に配置されて良い。
【0182】
排気ガス後処理システム10は、第1の誘導排気ライン12及び第2の誘導排気ライン13のスループットを制御するための制御ユニット6を有する。制御ユニットは、例えば、第1の触媒1、例えば加水分解触媒、のNO低減性能の尺度となる第2のNOセンサ8において測定されたNO値によって、第1の誘導調整弁15及び第2の誘導調整弁16を開閉するための信号を送って良い。
【0183】
制御ユニットは、排気ガスの少なくとも一部が第1の触媒1及び第2の触媒2をバイパスすることができるように、第1のバイパス調整弁23及び第2のバイパス調整弁24を開く及び/又は閉じるための信号を送っても良い。
【0184】
弁23、24、15、16を設定することで、排気ガスが第1の触媒1のみか、又は第2の触媒2のみか、又は触媒1、2の両方を直列に通過するかを決定することができる。運転状況によって、例えば温度又は機関負荷によって、弁の設定を選定することができる。
【0185】
燃焼機関20は、図中に明確には示していないが、特に排気ガスの温度を測定するための、少なくとも1つの温度センサを有して良い。
【0186】
図3は、燃焼機関20の第3の実例の概略図を示す。燃焼機関20は、4つのシリンダ21を持って良い。
【0187】
燃焼機関20は、第1の触媒1、及び第1の触媒1の下流に配置された第2の触媒2を備えた排気ガス後処理システム10を有する。第1の触媒1は、加水分解触媒であって良い。第2の触媒2は、SCR触媒であって良い。
【0188】
加水分解触媒1及びSCR触媒2は、同じ触媒基材3上に配置される。
【0189】
所与の量のNOを低減するための加水分解触媒1及びSCR触媒2の全容積Vは、同じ量のNOを低減するための独立型SCR触媒の容積以下である。加水分解触媒1及びSCR触媒2の全容積Vは、500l/MW以下、好ましくは400l/MWである。
【0190】
図4は、燃焼機関20の第4の実例の概略図を示す。燃焼機関20は4つのシリンダ21を持って良い。
【0191】
燃焼機関20は、並列に配置された第1の触媒1及び第2の触媒2を備えた排気ガス後処理システム10を有する。第1の触媒1は、より低いバナジウム含有量のSCR触媒であって良い。第2の触媒2は、より高いバナジウム含有量のSCR触媒であって良い。
【0192】
更なる触媒9が並列に配置されて良い。触媒は異なるバナジウム含有量を備えたSCR触媒であって良い。
【0193】
排気ガス後処理システム10は、第1の触媒1及び第2の触媒2の上流に並列化デバイス28を有して良く、第1の並列排気ライン29及び第2の並列排気ライン30は、少なくとも1つの並列化デバイス31に接続される。
【0194】
並列化デバイス28は、排気ガスを第1の並列排気ライン29に向かう第1のガス流れ、及び第2の並列排気ライン30に向かう第2のガス流れの中に分岐するように構成される。第1の触媒1は第1の並列排気ライン29中に、第2の触媒2は第2の並列排気ライン30中に配置される。
【0195】
排気ガス後処理システム10は、第1の並列排気ライン29及び第2の並列排気ライン30のスループットを設定するための並列化調整デバイス31を有する。並列化調整デバイス31は、第1の並列排気ライン29を開閉するための第1の並列化調整弁32、及び並列排気ライン30を開閉するための第2の並列化調整弁33を有する。
【0196】
排気ガス後処理システム10は、第1のバイパス調整弁23及び第2のバイパス調整弁24も有し、これらはバイパス分離デバイスを形成し、排気ガスの少なくとも一部が第1の触媒1及び第2の触媒2をバイパスできるようにする。
【0197】
弁23、24、31、32を設定することで、排気ガスが第1の触媒1のみか、又は第2の触媒2のみか、又は触媒1、2の両方を並列に通過するかを決定することができる。弁の設定は、運転状況によって、例えば温度又は機関負荷によって、選定することができる。
【0198】
燃焼機関20は、図中に明確には示していないが、特に排気ガスの温度を測定するための少なくとも1つの温度センサを有して良い。
【0199】
例えば、より高い負荷帯及びより高い温度帯では、バナジウム含有量が低い又は無いSCR触媒等の第1の触媒1が使用されるように弁が設定されるのに対し、より低い負荷帯及びより低い温度帯では、バナジウム含有量がより高いSCR触媒等の第2の触媒2が使用されるように弁が設定される。
【0200】
中間の領域では、触媒1、2の両方が使用できる。
【0201】
さらに、高い負荷帯に対し、第2の触媒2の寸法が大きくなることを避けるために、副生成物のペナルティをわずかに伴いながら、触媒1、2の両方を使用することもできる。
【0202】
図5は、燃焼機関20の第5の実例の概略図を示す。燃焼機関20は、4つのシリンダ21を持って良い。
【0203】
燃焼機関20は、第1の触媒1及び第2の触媒2を備えた排気ガス後処理システム10を有する。
【0204】
排気ガス後処理システム10は、第1の触媒1及び第2の触媒2の上流に並列化デバイス28を有し、第1の並列排気ライン29及び第2の並列排気ライン30は、少なくとも1つの並列化デバイス31に接続される。
【0205】
並列化デバイス28は、排気ガスを、第1の並列排気ライン29に向かう第1のガス流れ、及び第2の並列排気ライン30に向かう第2のガス流れの中に分岐するように構成される。第1の触媒1は第1の並列排気ライン29中に、第2の触媒2は第2の並列排気ライン30中に配置される。
【0206】
排気ガス後処理システム10は、第1の並列排気ライン29及び第2の並列排気ライン30のスループットを設定するための並列化調整デバイス31を有する。
【0207】
排気ガス後処理システム10はさらに、第1の触媒1、特に加水分解触媒の下流に誘導分離デバイス11を有し、第1の誘導排気ライン12及び第2の誘導排気ライン13は、少なくとも1つの誘導分離デバイス11に接続される。
【0208】
誘導分離デバイス11は、第1の触媒1を出た排気ガスを、第1の誘導排気ライン12に向かう第1のガス流れ、及び第2の誘導排気ライン13に向かう第2のガス流れの中に分岐するように構成される。第2の触媒2は、誘導分離デバイス11の下流の第1の誘導排気ライン12中に配置される。
【0209】
排気ガス後処理システム10は、第1の誘導排気ライン12及び第2の誘導排気ライン13のスループットを設定するための誘導調整デバイス14を有する。
【0210】
排気ガス後処理システム10は、第1のバイパス調整弁23及び第2のバイパス調整弁24も有し、これらはバイパス分離デバイス17を形成し、排気ガスの少なくとも一部が第1の触媒1及び第2の触媒2をバイパスできるようにする。
【0211】
更には、並列化デバイス31、誘導分離デバイス11及びバイパス分離デバイス17の状態を制御し、第1の触媒1及び/又は第2の触媒2が使用されるか、第1の触媒1及び第2の触媒2が直列及び/又は並列に使用されるか、或いは触媒1、2を本当に(at all)使用するかを決定する制御ユニット(この図中には明確には示していない)があって良い。
【0212】
並列化デバイス31、誘導分離デバイス11及びバイパス分離デバイス17の状態を制御することにより、第1の触媒1及び第2の触媒2を通過する排気ガスの割合を決定できる。
【0213】
図5は、燃焼機関20の第5の実例の概略図を示す。
【0214】
排気ガス後処理システム10は、第1の触媒1、例えば加水分解触媒の下流に誘導分離デバイス11を有する。第1の誘導排気ライン12及び第2の誘導排気ライン13は、少なくとも1つの誘導分離デバイス11に接続される。第1の誘導排気ライン12及び第2の誘導排気ライン13のスループットは、誘導調整デバイス14によって設定することができる。
【0215】
並列化デバイス28は、誘導分離デバイス11の下流の第1の誘導排気ライン12中に配置される。
【0216】
並列化デバイス28は、排気ガスを、第1の並列排気ライン29に向かう第1のガス流れ、及び第2の並列排気ライン30に向かう第2のガス流れの中に分岐するように構成される。
【0217】
並列化デバイス28は、排気ガスを、更なる触媒を有する更なる並列排気ラインに向かう、更なるガス流れの中に分岐するように構成されて良い。
【0218】
第2の触媒2は、第1の並列排気ライン29中に配置され、更なる触媒9は、第2の並列排気ライン30中に配置される。
【0219】
第2の触媒2及び更なる触媒9は、異なるバナジウム含有量を備えたSCR触媒であって良い。
【0220】
排気ガス後処理システム10は、少なくとも第1の並列排気ライン29及び第2の並列排気ライン30のスループットを設定するための並列化調整デバイス31を有する。
【0221】
燃焼機関の全ての実例は、図中に示していないが、少なくとも1つの、還元剤のための添加ユニットを有して良い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】
2020101176000001.pdf