(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-102338(P2020-102338A)
(43)【公開日】2020年7月2日
(54)【発明の名称】コネクタハウジングおよびコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20200605BHJP
【FI】
H01R13/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-239169(P2018-239169)
(22)【出願日】2018年12月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(74)【代理人】
【識別番号】100109689
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 結
(72)【発明者】
【氏名】筒井 有機
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087FF06
5E087FF12
5E087GG15
5E087HH01
5E087MM05
5E087RR06
(57)【要約】
【課題】コネクタ単体の状態で有効に作用しコンタクトの強い引き抜き力に抵抗するランスを備えたコネクタハウジングおよびコネクタを提供する。
【解決手段】ランス20は、押圧部21と、座屈抵抗部22と、座屈部23とを有する。押圧部21は、自由端20B側に設けられ、コンタクト10に後方に引き抜かれる向きの力が作用したときにコンタクト10で押される。座屈部23は、押圧部21に所定の許容限界を超える力が加わったときに座屈する。また、座屈抵抗部22は、押圧部21と座屈部23との間に設けられている。この座屈抵抗部22は、押圧部21側の座屈を抑えつつ座屈部23側の座屈を許容する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトが挿し込まれる向きの前方に向かって片持ち梁形状に延び、挿し込まれたコンタクトに係合して該コンタクトの後方への抜けを抑えるランスを有するコンタクトハウジングであって、
前記ランスが、
自由端側に設けられた、挿し込まれたコンタクトに後方に引き抜かれる向きの力が作用したときにコンタクトにより押される押圧部と、
該押圧部よりも固定端側に設けられた、前記押圧部に所定の許容限界を超える力が加わったときに座屈する座屈部と、
前記押圧部と前記座屈部との間に設けられた、該押圧部側の座屈を抑えつつ該座屈部側の座屈を許容する座屈抵抗部とを有することを特徴とするコネクタハウジング。
【請求項2】
前記座屈部の、前後方向に延びる前記コンタクト側を向いた面が、前後方向に関し該コンタクトから離れる向きに凹形に屈曲した面であり、
前記座屈抵抗部の、前後方向に延びる前記コンタクトとは反対側を向いた面が、前後方向に関し該コンタクトに近づく向きに凹形に屈曲した面であることを特徴とする請求項1に記載のコネクタハウジング。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコネクタハウジングと、該コネクタハウジングに挿し込まれたコンタクトとを有することを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトの後方への抜けを防止するランスを有するコンタクトハウジングおよびコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電線に接続されたコンタクトがハウジング内に配置されたコネクタの場合において、その電線に、コンタクトを引き抜く向きの力が加わることがある。上記のランスは、そのような力に抵抗してコンタクトが引き抜かれるのを防止する。このようなランスをコネクタハウジングに備えたコネクタにおいて、寸法等の制約の中で、強い引き抜き力にどれだけ耐えることができるかが問題となる。
【0003】
ここで、特許文献1には、ハウジングに備えられたランスの変形防止機能を備えた電気コネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−103049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上掲の特許文献1に開示されたランスの変形防止機能は、相手コネクタの存在に依存している。すなわち、この変形防止機能は相手コネクタと嵌合した状態において有効に作用するものであって、非嵌合状態のコネクタ単体ではランスの変形防止機能が低い。
【0006】
本発明は、コネクタ単体の状態で有効に作用し強い力に抵抗するランスを備えたコネクタハウジングおよびコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のコネクタハウジングは、
コンタクトが挿し込まれる向きの前方に向かって片持ち梁形状に延び、挿し込まれたコンタクトに係合してコンタクトの後方への抜けを防止するランスを有するコンタクトハウジングであって、
上記ランスが、
自由端側に設けられた、挿し込まれたコンタクトに後方に引き抜かれる向きの力が作用したときにコンタクトにより押される押圧部と、
その押圧部よりも固定端側に設けられた、押圧部に所定の許容限界を超える力が加わったときに座屈する座屈部と、
押圧部と座屈部との間に設けられた、押圧部側の座屈を抑えつつ座屈部側の座屈を許容する座屈抵抗部とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明のコネクタハウジングは、押圧部と座屈部との間に座屈抵抗部が設けられている。この座屈抵抗部が設けられていることにより、この座屈抵抗部が設けられていない構造のランスと比べ、コンタクトの引き抜きの向きの大きな力に耐えることができる。
【0009】
ここで、本発明のコネクタハウジングにおいて、
座屈部の、前後方向に延びるコンタクト側を向いた面が、前後方向に関しコンタクトから離れる向きに凹形に屈曲した面であり、
座屈抵抗部の、前後方向に延びるコンタクトとは反対側を向いた面が、前後方向に関しコンタクトに近づく向きに凹形に屈曲した面であることが好ましい。
【0010】
座屈部のコンタクト側を向いた面が上記の凹形に屈曲した面であることで、許容限界を超える力が加わったときにはこの座屈部に座屈を誘い込んでこの座屈部を座屈させることができる。また、座屈抵抗部の、コンタクトとは反対側を向いた面が、上記の凹形に屈曲した面であることで、座屈部が座屈したときにその座屈が座屈抵抗部よりも押圧部側にまで及ぶのが抑えられる。
【0011】
また、上記目的を達成する本発明のコネクタは、本発明のコネクタハウジングと、そのコネクタハウジングに挿し込まれたコンタクトとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の本発明によれば、コネクタ単体の状態で有効に作用し強い力に抵抗するランスを備えたコネクタハウジングおよびコネクタが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のコネクタの一実施形態における、コネクタハウジングに設けられたランスとコンタクトとを示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明のコネクタの一実施形態における、コネクタハウジングに設けられたランスとコンタクトとを示した模式図である。コネクタハウジングは、ここに示した形状のランスを備えていればよく、その全体の形状および構造を問うものではない。したがって、ここではコネクタハウジングの全体の図示および説明は省略する。
【0016】
この
図1では、ランスにハッチングが付されている。このハッチングは、ランスの断面を意味するものではなく、ランスの形状を分かり易く示すためである。
【0017】
雌型のコンタクト10が、コネクタハウジングに、矢印Fで示す向きに挿し込まれる。すると、この
図1に示すように、その挿し込まれたコンタクト10と、コネクタハウジングと一体にコネクタハウジングに設けられたランス20とが係合する。このコンタクト10には、不図示の電線が接続されていて、その電線は、図示の矢印R側に延びている。また、ランス20は、矢印Rで示す後方に固定端20Aを有し、矢印Fで示す前方に向かって片持ち梁形状に延びて、その延びた前端部分に自由端20Bを有する。
【0018】
ここで、コンタクトに接続された電線に、コンタクト10をコネクタハウジングから引き抜く向き(矢印Rで示す向き)の力が加わったとする。ランス20は、コンタクト10にそのような力が加わったときに、コンタクト10の、後方(矢印Rで示す向き)への抜けを抑える。ここでは、そのランス20に、許容限界を超える力が加わった場合について説明する。
【0019】
本実施形態におけるランス20は、押圧部21と、座屈抵抗部22と、座屈部23とを有する。
【0020】
押圧部21は、自由端20B側に設けられている。そして、この押圧部21は、コンタクト10に後方(矢印Rで示す向き)に引き抜かれる向きの力が作用したときに、そのコンタクト10で押される。この押圧部21は、そのような力が作用する前はコンタクトから離れていてもよく、あるいは、そのような力が作用する前からコンタクト10に接していてもよい。
【0021】
次に、座屈部23について先に説明する。座屈部23は、押圧部21よりも固定端20A側に設けられている。そして、押圧部21に所定の許容限界を超える力が加わったときに座屈する。ここで、この座屈部23の、矢印F−Rで示す前後方向に延びるコンタクト10側を向いた面20Cが、前後方向に関しコンタクト10から離れる向きに凹形に屈曲した面となっている。すなわち、この座屈部23は、面20Cに第1の屈曲部231を有する。ただし、この第1の屈曲部231は、
図1の紙面に垂直な向きに延びる折れ曲がり線である必要はなく、前後方向に関しR面となっていてもよい。この座屈部23は、この第1の屈曲部231を有することにより、ランス20の押圧部21が許容限界を超える力で押されたときに座屈を誘発する形状となっている。
【0022】
また、座屈抵抗部22は、矢印F−Rで示す前後方向に関し、押圧部21と座屈部23との間に設けられている。この座屈抵抗部22は、この座屈抵抗部22よりも押圧部21側の座屈を抑えつつこの座屈抵抗部22よりも座屈部23側の座屈を許容する。ここで、この座屈抵抗部の、矢印F−Rで示す前後方向に延びる、コンタクト10とは反対側を向いた面20Dが、前後方向に関しコンタクト10に近づく向きに凹形に屈曲した面となっている。すなわち、この座屈抵抗部22は、面20Dに第2の屈曲部221を有する。ただし、この第2の屈曲部221は、第1の屈曲部231と同様、
図1の紙面に垂直な向きに延びる折れ曲がり線である必要はなく、前後方向に関しR面となっていてもよい。この座屈抵抗部22は、この第2の屈曲部221を有することにより、ランス20の押圧部21が許容限界を超える力で押されたときにコンタクト10に近づく向きに座屈しやすくなっている。座屈抵抗部22は、第2の屈曲部221を有することにより、座屈部23が座屈したときに、その座屈が押圧部21側に及ぶのを抑えている。
【0023】
ここでランス20の厚み方向のほぼ中央に、
図1に一点鎖線で示した線L1を描いたことを考える。押圧部21に許容限界を超える力が加わり、座屈部23が座屈すると、その線L1は、点線で示した線L2のように変形する。すなわち、座屈部23の座屈は、座屈抵抗部22までは及ぶが、その座屈抵抗部22で食い止められて、押圧部21にまで及ぶことが抑えられる。この場合、コンタクト10の抜けについては、前後方向についての長さd1に亘る広いせん断面積で抵抗することになる。
【0024】
ここで、座屈抵抗部22が存在しないランスについて考察する。ここでは、この、座屈抵抗部22が存在しないランスについても、座屈抵抗部22が存在するランス20と同じ符号を付して説明する。この
図1には、座屈抵抗部22が存在しないランス20の、座屈部23が座屈したときの先端部分が2点鎖線で示されている。ここには、線L1,L2に対応する線L3が2点鎖線で示されている。座屈抵抗部22が存在しないランス20において座屈部23が座屈すると、
図1に2点鎖線の線L3で示すように、その座屈は押圧部21にまで及ぶ。この場合、コンタクト10の抜けについては、前後方向についての長さd2に亘る狭いせん断面積で抵抗することになる。すなわち、座屈抵抗部22が存在するランス20と比べ、コンタクト10は、小さい引き抜き力で引き抜かれることになる。
【0025】
このように、本実施形態の場合、押圧部21と座屈部23との間に座屈抵抗部22が設けられていることにより、強い引き抜き力まで耐えることができる。
【符号の説明】
【0026】
10 コンタクト
20 ランス
20A 固定端
20B 自由端
20C コンタクト側を向いた面
20D コンタクトとは反対側を向いた面
21 押圧部
22 座屈抵抗部
221 第1の屈曲部
23 座屈部
231 第2の屈曲部