【解決手段】本発明に係る曲げセンサ10は、高分子層12の一面12aに電極層13Aが設けられ、高分子層12の他の一面12bに電極層13Bが設けられたポリマー素子11と、電極層13Aに接続された電極14Aと、電極14Aと対向するように電極層13Bに接続された電極14Bとからなる複数の電極対14とを備える。
イオン導電性高分子層の一面に第1の電極層が設けられ、前記イオン導電性高分子層の他の一面に第2の電極層が設けられたポリマー素子と、前記第1の電極層に接続された第1の電極と、前記第1の電極と対向するように前記第2の電極層に接続された第2の電極とからなる複数の電極対とを備え、測定対象とともに変形する曲げセンサを備え、前記測定対象に曲げ変形が生じた曲げ位置および曲げ量を検知する検知装置における検知方法であって、
第1の電極対および第2の電極対それぞれについて、前記第1の電極と前記第2の電極との電位差である電極間電位差を取得するステップと、
前記第1の電極対における電極間電位差と、前記第2の電極対における電極間電位差との電位差、および、前記第1の電極対における電極間電位差と、前記第2の電極対における電極間電位差とが一致する電位に基づき、前記曲げ位置および前記曲げ量を検知するステップとを含む、検知方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測定対象に曲げ変形が生じた曲げ位置および曲げ量を検知するための曲げセンサが様々な用途で求められている。例えば、燕下の際の咽頭の動きの検知、人工心肺において血液を循環させる配管内での過度の陰圧あるいは陽圧の発生の検知、ビールサーバ用のチューブの変形の検知など、様々な用途で曲げセンサが求められている。
【0005】
特許文献1に開示されている技術では、変動、変位または変形の有無を検知することはできるが、曲げ変形が生じた曲げ位置および曲げ量を検知することはできない。
【0006】
本発明の目的は、上述した課題を解決し、測定対象に曲げ変形が生じた曲げ位置および曲げ量を検知することができる曲げセンサ、検知装置、物品および検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る曲げセンサは、イオン導電性高分子層の一面に第1の電極層が設けられ、前記イオン導電性高分子層の他の一面に第2の電極層が設けられたポリマー素子と、前記第1の電極層に接続された第1の電極と、前記第1の電極と対向するように前記第2の電極層に接続された第2の電極とからなる複数の電極対とを備える。
【0008】
また、本発明に係る曲げセンサにおいて、前記ポリマー素子は、長尺形状を有しており、前記ポリマー素子の長尺方向の対向する位置にそれぞれ前記電極対が設けられている。
【0009】
また、本発明に係る曲げセンサにおいて、前記第1の電極層および前記第2の電極層は、炭素材料を含む。
【0010】
また、本発明に係る曲げセンサにおいて、前記イオン導電性高分子層は、イオン交換樹脂からなる。
【0011】
また、本発明に係る曲げセンサにおいて、前記イオン交換樹脂は、スルホン酸基またはカルボン酸基を含む。
【0012】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る検知装置は、測定対象に曲げ変形が生じた曲げ位置および曲げ量を検知する検知装置であって、イオン導電性高分子層の一面に第1の電極層が設けられ、前記イオン導電性高分子層の他の一面に第2の電極層が設けられたポリマー素子と、前記第1の電極層に接続された第1の電極と、前記第1の電極と対向するように前記第2の電極層に接続された第2の電極とからなる複数の電極対とを備え、前記測定対象とともに変形する曲げセンサと、第1の電極対および第2の電極対それぞれについて、前記第1の電極と前記第2の電極との電位差である電極間電位差を取得し、前記第1の電極対における電極間電位差と、前記第2の電極対における電極間電位差との電位差、および、前記第1の電極対における電極間電位差と、前記第2の電極対における電極間電位差とが一致する電位に基づき、前記曲げ位置および前記曲げ量を検知する検知部とを備える。
【0013】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る物品は、上述したいずれかの曲げセンサを備える。
【0014】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る検知方法は、イオン導電性高分子層の一面に第1の電極層が設けられ、前記イオン導電性高分子層の他の一面に第2の電極層が設けられたポリマー素子と、前記第1の電極層に接続された第1の電極と、前記第1の電極と対向するように前記第2の電極層に接続された第2の電極とからなる複数の電極対とを備え、測定対象とともに変形する曲げセンサを備え、前記測定対象に曲げ変形が生じた曲げ位置および曲げ量を検知する検知装置における検知方法であって、第1の電極対および第2の電極対それぞれについて、前記第1の電極と前記第2の電極との電位差である電極間電位差を取得するステップと、前記第1の電極対における電極間電位差と、前記第2の電極対における電極間電位差との電位差、および、前記第1の電極対における電極間電位差と、前記第2の電極対における電極間電位差とが一致する電位に基づき、前記曲げ位置および前記曲げ量を検知するステップとを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る曲げセンサ、検知装置、物品および検知方法によれば、測定対象に曲げ変形が生じた曲げ位置および曲げ量を検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る曲げセンサ10の構成例を示す断面図である。本実施形態に係る曲げセンサ10は、測定対象に取り付けられて測定対象とともに変形し、測定対象に曲げ変形が生じた曲げ位置および曲げ量を検知するためのセンサである。
図1においては、説明の便宜上、
図1の紙面左右方向をX方向、紙面上下方向をZ方向、紙面に直交する方向をY方向として説明する。
図1は、曲げセンサ10のZ−X断面の断面図である。
【0019】
図1に示す曲げセンサ10は、ポリマー素子11を備える。
【0020】
ポリマー素子11は、高分子層12(イオン導電性高分子層)と、電極層13A,13Bとを備える。
【0021】
高分子層12は、イオン交換樹脂、例えば、スルホン酸基またはカルボン酸基といった極性基を有するフッ素系樹脂(例えば、デュポン株式会社製のナフィオン(登録商標))などのイオン導電性高分子により構成される。なお、高分子層12を構成する材料はこれに限られるものではない。高分子層12は、イオン物質が含浸されたイオン導電性高分子化合物により構成される。「イオン物質」とは、高分子層12内を伝導することが可能なイオン全般を指しており、有機物質であっても無機物質であってもよい。例えば、イオン物質としては、水素イオン、金属イオン単体、またはそれら陽イオンおよび/または陰イオンと極性溶媒とを含むもの、あるいはイミダゾリウム塩などのそれ自体が液状である陽イオンおよび/または陰イオンを含むものなどを含むが、これらに限られるものではない。
【0022】
電極層13A,13Bは、高分子層12のZ方向の両面に、高分子層12を挟むようにして設けられている。すなわち、高分子層12の一面12aに第1の電極層としての電極層13Aが設けられている。また、高分子層12の他の一面12b(高分子層12の一面12aと対向する面)に第2の電極層としての電極層13Bが設けられている。このように、ポリマー素子11は、高分子層12を電極層13Aと電極層13Bとが挟むように積層された積層体である。高分子層12と、電極層13A,13Bとからなる積層体であるポリマー素子11は、EAP(Electroactive Polymers)センサと称される。電極層13A,13Bは、高分子層12を構成する高分子材料中に炭素材料(カーボンブラック、活性炭など)を配合して構成される。
【0023】
ポリマー素子11には、電気信号の取り出し用の第1の電極としての電極14Aと、電気信号の取り出し用の第2の電極としての電極14Bとからなる電極対14が複数設けられている。
【0024】
電極14Aは、電極層13Aに接続されている。電極14Bは、
図1に示すように、対となる電極14Aと対向するように、電極層13Bに接続されている。このように、曲げセンサ10は、高分子層12(イオン導電性高分子層)の一面12aに電極層13Aが設けられ、高分子層12の他の一面12b(高分子層12の一面12aに対向する面)に電極層13Bが設けられたポリマー素子11と、電極層13Aに接続された電極14Aと、電極14Aと対向するように電極層13Bに接続された電極14Bとからなる複数の電極対14とを備える。
【0025】
ポリマー素子11が外力を受けて、例えば、
図1のZ軸の正方向(電極層13B側)に変形(湾曲)すると、高分子層12では、電極層13B側が圧縮し、電極層13A側が伸張する。すると、高分子層12に含まれる陽イオンが内圧の低い電極層13A側に移動し、電極層13Aでは陽イオンが密となり、電極層13B側では陽イオンが疎となる。そのため、電極層13Aと電極層13Bとに電位差が生じ、この電位差が電極層13A,13Bに接続された電極14A,14Bから電気信号として出力される。
【0026】
図2は、曲げセンサ10の形状の一例を示す図であり、曲げセンサ10をZ方向から見た平面図である。
【0027】
ポリマー素子11は、例えば、
図2に示すように、長尺形状を有している。
図2においえは、ポリマー素子11の長尺方向(
図2では、X方向)の一端と他端とに、電極対14が設けられる。すなわち、ポリマー素子11の長尺方向の対向する位置にそれぞれ電極対14が設けられる。
【0028】
図3は、本発明の一実施形態に係る検知装置100の構成例を示す図である。
図3においては、第1の電極対としての電極対14−1と、第2の電極対としての電極対14−2とがポリマー素子11に設けられている例を示している。
【0029】
図3に示す検知装置100は、曲げセンサ10と、検知部20とを備える。
【0030】
検知部20は、電極対14−1,14−2それぞれについて、各電極対14を構成する電極14Aと電極14Bとの電位差(以下、「電極間電位差」と称する。)を取得する。そして、検知部20は、電極対14−1における電極間電位差と、電極対14−2における電極間電位差との電位差、および、電極対14−1における電極間電位差と、電極対14−2における電極間電位差とが一致する電位に基づき、曲げセンサ10が取り付けられた測定対象の曲げ位置および曲げ量を検知する。
【0031】
以下では、本実施形態に係る曲げセンサ10を用いて曲げ位置および曲げ量を検知することできる原理について説明する。
【0032】
本願発明者が鋭意検討した結果、EAPセンサは、複数の積分回路(RC回路)が抵抗を介して多段に接続された多段の積分回路と等価であるという知見を得た。以下では、このような多段の積分回路を用いて説明する。
【0033】
上述したように、EAPセンサは、曲げ変形に応じて電荷が発生する。EAPセンサと同様に、多段の積分回路において電荷Qが発生したとすると、電荷Qは、抵抗Rを介して回路全体のコンデンサ成分にチャージされる。したがって、多段の積分回路の任意の部位におけるチャージ電荷Qnと静電容量Cnとに基づき、その任意の部位における電位VnはQn/Cnで表される。
【0034】
図4は、
図2に示すような、長尺形状のポリマー素子11の、長尺方向の両端に電極対14が取り付けられた曲げセンサ10を模擬した多段の積分回路において、時刻tにおいて曲げ変形に応じた電荷Qが発生した場合の、両端の電極対14それぞれの電極間電位差のシミュレーション結果を示す図である。
【0035】
図4において、波形Aは、電荷Qが発生した位置(曲げ変形が生じた位置)に近い電極対14における電極間電位差を示す波形である。また、波形Bは、曲げ変形が生じた位置に遠い電極対14における電極間電位差を示す波形である。
【0036】
上述したように、曲げ変形に応じて発生した電荷Qは、抵抗Rを介して、回路全体のコンデンサ成分にチャージされる。そのため、曲げ位置から遠いほど、電荷のチャージに時間を要する。換言すると、電荷の分配に影響する静電容量は、経時的に変化する。
【0037】
したがって、曲げ位置に近い位置で電位を観察すると、曲げ変形が生じた初期は、曲げ位置近傍の小さい静電容量により電荷が分配される。したがって、曲げ位置に近い電極対14における電極間電位差を示す波形Aでは、
図4に示すように、時刻tの直後に、高いピークが生じる。
【0038】
その後、後段の静電容量にも電荷が分配され、電位は徐々に低減する。そして、回路全体(EAPセンサ全体)に電荷が分配される。その結果、
図4に示すように、曲げ位置に近い電極対14における電極間電位差(波形A)と、曲げ位置に遠い電極対14における電極間電位差(波形B)とが一致する。
【0039】
図4に示すように、曲げ位置に近い電極対14においては、時刻tの直後に、電極間電位差に大きなピークが表れる。一方、曲げ位置に遠い電極対14においては、そのそのようなピークは表れない。このように、各電極対14における電極間電位差は、抵抗Rにより影響される静電容量の経時的変化に基づく位置情報を示すことが分かる。つまり、複数の電極対14の電極間電位差それぞれにおけるピークの有無と、曲げ位置に近い電極対14における電極間電位差がピークに達した時点における波形Aと波形Bとの電位差(以下、「ピーク電位差Vp」と称する)とに基づき、曲げ位置を検知可能である。
【0040】
また、曲げ量は、曲げ変形により生じた電荷Qに対応するものである。電荷Qは、回路全体(EAPセンサ全体)の静電容量成分に電荷が行き渡った際の電位と回路全体の静電容量Cとの積として算出することができる。つまり、曲げ変形が生じた後、波形Aと波形Bとが一致した電位の絶対値(以下、「到達電位Vt」を称する)と、EAPセンサ(曲げセンサ10)全体の静電容量とに基づき、曲げ量を検知可能である。なお、曲げセンサ10全体の静電容量は、予め算出することが可能である。曲げセンサ10全体の静電容量は、例えば、曲げ位置を検出するためには、1μF/cm
2以上、10mF/cm
2以下であることが好ましく、より安定的に曲げ位置を検出するためには、100μF/cm
2以上、5mF/cm
2以下であることが好ましい。また、電極層13A,13Bの表面電気抵抗(シート抵抗)は、例えば、曲げ位置を検出するためには、0.1Ω/□以上、1000Ω/□以下であることが好ましく、より安定的に曲げ位置を検出するためには、1Ω/□以上、100Ω/□以下であることが好ましい。
【0041】
したがって、検知部20は、第1の電極対14−1における電極間電位差と、第2の電極対14−2における電極間電位差との電位差(より具体的には、ピーク電位差Vp)、および、第1の電極対14−1における電極間電位差と、第2の電極対14−2における電極間電位差とが一致する電位(到達電位Vt)に基づき、曲げセンサ10が取り付けられた測定対象の曲げ位置および曲げ量を検知することができる。
【0042】
図2においては、ポリマー素子11(EAPセンサ)は長尺形状である例を用いて説明したが、ポリマー素子11の形状はこの例に限られない。上述したように、曲げセンサ10は、曲げ位置および曲げ量を検知する測定対象に取り付けられる。したがって、ポリマー素子11の形状は、曲げ位置および曲げ量の検知が必要な領域の形状に応じて、任意の形状とすることができる。
【0043】
また、
図2においては、2つの電極対14(電極対14−1,14−2)が、ポリマー素子11の対向する位置に設けられる例を用いて説明したが、電極対14の数および電極対14の配置はこの例に限らず、任意の数、任意の配置であってよい。ただし、上述したように、曲げ変形が生じた曲げ位置と、各電極対14との位置関係に応じて、各電極対14から出力される電気信号(電極間電位差)に差が生じる。つまり、複数の電極対14が近接して配置されると、それらの電極対14から出力される電気信号に差が生じにくく、曲げ位置などの検知が困難となる。したがって、曲げ位置および曲げ量の検知が必要な領域内での曲げ変形に応じて、各電極対14から出力される電気信号に差が生じるように、複数の電極対14が離間して(例えば、
図2に示すように、ポリマー素子11の対向する位置に離間して)配置されることが望ましい。
【0044】
また、
図1においては、曲げセンサ10は、高分子層12(イオン導電性高分子層)の両側を電極層13A,13Bで挟んだ積層体であるポリマー素子11を備える例を用いて説明したが、これに限られるものではない。曲げセンサ10は、
図5に示すように、ポリマー素子11を覆うカバーフィルム15をさらに備えていてもよい。カバーフィルム15は、水分の透過を抑制可能な材質、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)などで構成される。また、カバーフィルム15としては、無機金属層を有するバリアフィルムを用いることができる。カバーフィルム15は、高分子層12および電極層13A,13Bの積層体への水分の侵入を抑制するように、ポリマー素子11全体を覆う。
【0045】
高分子層12および電極層13A,13Bの積層体をカバーフィルム15で覆うことで、温度および湿度によらず、曲げセンサ10は、安定した特性を発現することができる。なお、
図5においては、電極14A,14Bの記載は省略している。
【0046】
このように本実施形態においては、曲げセンサ10は、イオン導電性高分子層としての高分子層12の一面12aに第1の電極層としての電極層13Aが設けられ、高分子層12の他の一面12bに第2の電極層としての電極層13Bが設けられたポリマー素子11と、電極層13Aに接続された第1の電極としての電極14Aと、電極14Aと対向するように電極層13Bに接続された第2の電極としての電極14Bとからなる複数の電極対14とを備える。
【0047】
曲げセンサ10の曲げ位置および曲げ量に応じて、各電極対14における電極間電位差の差(ピーク電位差Vp)、および、各電極対14における電極間電位差が一致する到達電位Vtが変化するので、ピーク電位差Vpおよび到達電位Vtに基づき、曲げセンサ10が取り付けられた測定対象の曲げ位置および曲げ量を検出することができる。
【0048】
上述した本発明に係る曲げセンサ10は、工業あるいは農業に代表される産業上利用可能な分野において、測定対象の曲げ位置および曲げ量を検知する機能を備える種々の物品に適用することが可能である。
【実施例】
【0049】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0050】
(曲げセンサの作製)
まず、10mm×90mm(幅×長さ)の長尺形状のポリマー素子を以下のようにして作製した。
【0051】
まず、分散媒に導電性材料粉末と導電性高分子とを分散させた塗料をイオン導電性高分子膜の両面に塗布した。次に、分散媒を揮発させて、イオン導電性高分子膜の両面に電極層を形成するとともに、イオン導電性高分子膜に陽イオン物質を含浸させた。その後、イオン導電性高分子膜(イオン導電性高分子層)および電極層を所定の大きさ(10mm×90mm)に裁断して、ポリマー素子を作製した。イオン導電性高分子膜の厚さは100μmであった。また、イオン導電性高分子膜の両面に形成された電極層の厚さは15μmであった。
【0052】
次に、作製したポリマー素子の長尺方向の両端にそれぞれ、電気信号の引き出し用の電極対を取り付け、曲げセンサを作製した。電極対を構成する電極と、ポリマー素子とが重複する部分の長尺方向の長さは、10mmであった。
【0053】
作製したポリマー素子の静電容量は、2mF/cm
2であった。また、作製したポリマー素子の電極層の表面電気抵抗(シート抵抗)は、37Ω/□であった。
【0054】
(ピーク電位差Vpおよび到達電位Vtの測定)
作製した曲げセンサを用いて、ピーク電位差Vpおよび到達電位Vtを以下のようにして測定した。
【0055】
曲げセンサに局所的な変形が起こらないように、曲げセンサを厚さ15mmのEVAスポンジで挟み込み、その後、長さ170mmの金属板の中央に固定した。EVAスポンジで挟み込まれた曲げセンサが上側に位置するようにして、金属板の両端を固定した。金属板と床面との距離を調整し、金属板の下面(曲げセンサが固定されていない面)が床面に接するまで押し込み、その際の2つの電極対それぞれにおける電極間電位差を電圧測定器(株式会社キーエンス社製、商品名「NR−ST04」)により測定した。
【0056】
図6は、曲げセンサが取り付けられた金属板と床面との距離を15mmおよび10mmとし、金属板が床面に接するまで押し込んだ(金属板を15mmおよび10mm変位させた)場合の、2つの電極対それぞれにおける電極間電位差の波形を示す図である。
図6において、t0は金属板の中央の位置で金属板を押し込んだタイミングを示し、t1は金属板の中央から15mm離れた位置で金属板を押し込んだタイミングを示し、t2は金属板の中央から30mm離れた位置で金属板を押し込んだタイミングを示す。また、
図6において、波形Aは、金属板が押し込まれた位置(曲げセンサの曲げ位置)に近い電極対における電極間電位差を示す波形であり、波形Bは、金属板が押し込まれた位置(曲げセンサの曲げ位置)に遠い電極対における電極間電位差を示す波形である。
【0057】
また、金属板を押し込む位置(変形位置)を金属板の中央から左右に変化させた場合に各電極対における電極間電位差から求めたピーク電位差Vpおよび到達電位Vtを表1に示す。表1においては、金属板の中央(0mm)、金属板の中央から左右に15mmの位置(右15mm、左15mm)および金属板の中央から左右に30mmの位置(右30mm、左30mm)を、15mmおよび10mm押し込んだ場合のピーク電位差Vpおよび到達電位Vtを示している。
【0058】
【表1】
【0059】
図6に示すように、金属板の中央を押し込んだ場合、金属板の変位量に関わらず、波形Aと波形Bとは概ね同じ形状であった。また、金属板の中央から15mmおよび30mm離れた位置を押し込んだ場合、金属板の変位量に関わらず、金属板が押し込まれた位置に近い電極対における電極間電位差を示す波形Aにはピークが表れたのに対し、金属板が押し込まれた位置に遠い電極対における電極間電位差を示す波形Bにはそのようなピークは表れなかった。これより、各電極対における電極間電位差の波形から、金属板の中央から右側が押し込まれたのか、左側が押し込まれたのかを検知可能であることが分かった。
【0060】
また、表1に示すように、金属板の変位量に関わらず、変形位置が金属板の中央から離れるほど、ピーク電位差Vpが大きくなった。これより、ピーク電位差Vpに基づき、曲げセンサの曲げ位置(中央から曲げ位置までの距離)を検知可能であることが分かった。また、表1に示すように、同じ変形位置では、変形量が多いほど、到達電位Vtが大きくなった。これより、到達電位Vtに基づき、曲げセンサの曲げ量を検知可能である分かった。
【0061】
金属板の変位量を15mmおよび30mmとし、変形位置(金属板の中央からの距離)を0mmから25mmまで5mmずつずらした場合のピーク電位差Vpおよび到達電位Vtを表2に示す。また、
図7に、金属板の変位量が15mmおよび30mmそれぞれである場合の、変形位置(金属板の中央からの距離)とピーク電位差Vpとの関係を示す。また、
図7においては、金属板の変位量が15mmである場合の変形位置とピーク電位差Vpとの関係の近似直線を破線で示し、金属板の変位量が30mmである場合の変形位置とピーク電位差Vpとの関係の近似直線を実線で示す。
【0062】
【表2】
【0063】
図7に示すように、変位量が15mmである場合にも、30mmである場合にも、変形位置とピーク電位差Vpとは概ね線形的な関係にあった。このことからも、ピーク電位差Vpに基づき、曲げセンサの曲げ位置を検知可能であることが分かった。また、表1に示すように、変形位置に関わらず、変位量が30mmである場合の方が、変位量が15mmである場合よりも、到達電位Vtが大きかった。このことからも、到達電位Vtに基づき、曲げセンサの曲げ量を検知可能であることが分かった。
【0064】
本発明は、上述した各実施形態で特定された構成に限定されず、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、各構成部などに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部などを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。