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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-102958(P2020-102958A)
(43)【公開日】2020年7月2日
(54)【発明の名称】積層鉄心及び積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20200605BHJP
【FI】
   H02K15/02 F
   H02K15/02 E
   H02K15/02 K
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-239977(P2018-239977)
(22)【出願日】2018年12月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】俵口 陽
(72)【発明者】
【氏名】内田 健太
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP02
5H615PP06
5H615SS03
5H615SS05
5H615SS10
5H615SS57
(57)【要約】
【課題】本開示は、加工部がいずれの加工工具で加工されたのかを特定することが可能な積層鉄心及び積層鉄心の製造方法を説明する。
【解決手段】積層鉄心は、複数の打抜部材が積層されることで構成され、第1端面及び第2端面を有する積層体と、積層体に形成され、第1端面に開口する第1識別孔と、積層体に形成され、第1端面に開口する第2識別孔とを備える。第1識別孔の空間形状は第2識別孔の空間形状とは異なる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の打抜部材が積層されることで構成され、第1端面及び第2端面を有する積層体と、
前記積層体に形成され、前記第1端面に開口する第1識別孔と、
前記積層体に形成され、前記第1端面に開口する第2識別孔とを備え、
前記第1識別孔の空間形状は前記第2識別孔の空間形状とは異なる、積層鉄心。
【請求項2】
前記第1識別孔及び前記第2識別孔の双方は、前記複数の打抜部材のうちの前記第1端面を構成する打抜部材を貫通している、請求項1に記載の積層鉄心。
【請求項3】
前記第1識別孔及び前記第2識別孔は、深さ、前記第1端面における大きさ、及び前記第1端面における形状の少なくとも一つが互いに異なるように形成されている、請求項1又は2に記載の積層鉄心。
【請求項4】
前記第1識別孔及び前記第2識別孔は、前記積層体の中心軸を間に置いて配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層鉄心。
【請求項5】
前記第1識別孔及び前記第2識別孔は、容積が互いに略一致するように形成されている、請求項4に記載の積層鉄心。
【請求項6】
金属板に第1加工孔及び第2加工孔を形成することと、
前記金属板を打ち抜いて、前記第1加工孔及び前記第2加工孔が設けられた少なくとも1つの第1打抜部材を形成することと、
前記金属板を打ち抜いて、前記第1加工孔及び前記第2加工孔が設けられていない少なくとも1つの第2打抜部材を形成することと、
前記少なくとも1つの第1打抜部材及び前記少なくとも1つの第2打抜部材を積層して、前記第1加工孔で構成された第1識別孔と、前記第2加工孔で構成された第2識別孔であって、空間形状が前記第1識別孔とは異なる前記第2識別孔とが一方の端面に設けられた積層体を形成することとを含む、積層鉄心の製造方法。
【請求項7】
金属板の第1列に第1加工孔及び第2加工孔を形成することと、
前記金属板の前記第1列とは幅方向でピッチをずらした第2列に第3加工孔及び第4加工孔を形成することと、
前記第1列において前記金属板を打ち抜いて、前記第1加工孔及び前記第2加工孔が設けられた少なくとも1つの第1打抜部材を形成することと、
前記第1列において前記金属板を打ち抜いて、前記第1加工孔及び前記第2加工孔が設けられていない少なくとも1つの第2打抜部材を形成することと、
前記第2列において前記第3加工孔及び前記第4加工孔が設けられた少なくとも1つの第3打抜部材を形成することと、
前記第2列において前記第3加工孔及び前記第4加工孔が設けられていない少なくとも1つの第4打抜部材を形成することと、
前記少なくとも1つの第1打抜部材及び前記少なくとも1つの第2打抜部材を積層して、前記第1加工孔で構成された第1識別孔と、前記第2加工孔で構成された第2識別孔であって、空間形状が前記第1識別孔とは異なる前記第2識別孔とが一方の端面に設けられた第1積層体を形成することと、
前記少なくとも1つの第3打抜部材及び前記少なくとも1つの第4打抜部材を積層して、前記第3加工孔で構成された第3識別孔と、前記第4加工孔で構成された第4識別孔であって、空間形状が前記第1識別孔、前記第2識別孔及び前記第3識別孔のいずれとも異なる前記第4識別孔とが一方の端面に設けられた第2積層体を形成することとを含む、積層鉄心の製造方法。
【請求項8】
金属板の第1列に第1加工孔を形成することと、
前記金属板の前記第1列とは幅方向でピッチをずらした第2列に第2加工孔を形成することと、
前記第1列において前記金属板を打ち抜いて、前記第1加工孔が設けられた少なくとも1つの第1打抜部材を形成することと、
前記第1列において前記金属板を打ち抜いて、前記第1加工孔が設けられていない少なくとも1つの第2打抜部材を形成することと、
前記第2列において前記金属板を打ち抜いて、前記第2加工孔が設けられた少なくとも1つの第3打抜部材を形成することと、
前記第2列において前記金属板を打ち抜いて、前記第2加工孔が設けられていない少なくとも1つの第4打抜部材を形成することと、
前記少なくとも1つの第1打抜部材及び前記少なくとも1つの第2打抜部材を積層して、前記第1加工孔で構成された第1識別孔が一方の端面に設けられた第1積層体を形成することと、
前記少なくとも1つの第3打抜部材及び前記少なくとも1つの第4打抜部材を積層して、前記第2加工孔で構成された第2識別孔であって、空間形状が前記第1識別孔とは異なる前記第2識別孔が一方の端面に設けられた第2積層体を形成することとを含む、積層鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層鉄心及び積層鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、積層鉄心の製造方法を開示している。この積層鉄心の製造方法は、帯状の板状部材からキー要素が形成された複数のコアプレート(打抜部材)を打ち抜くことと、複数のコアプレートを積層してロータコアを形成することとを含む。これにより、互いに重なり合ったキー要素によって構成されたキーが、ロータコアの内周面から突出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−7530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、打抜部材を板状部材から打ち抜く前には、各種の加工工具によって、板状部材のうち打抜対象の領域に様々な加工が施される。そのため、打抜部材は、これらの加工工具によって加工された複数の加工部を含む。
【0005】
ところで、複数の打抜部材が積層されて積層体とされた後に、打抜部材の複数の加工部が、いずれの加工工具によって加工されたのかを特定したい場合がある。積層鉄心(打抜部材)の形状は、中心軸に関して回転対称であることが多く、加工部と加工工具との対応関係を把握することが困難であった。
【0006】
本開示は、加工部がいずれの加工工具で加工されたのかを特定することが可能な積層鉄心及び積層鉄心の製造方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一つの観点に係る積層鉄心は、複数の打抜部材が積層されることで構成され、第1端面及び第2端面を有する積層体と、積層体に形成され、第1端面に開口する第1識別孔と、積層体に形成され、第1端面に開口する第2識別孔とを備える。第1識別孔の空間形状は第2識別孔の空間形状とは異なる。
【0008】
本開示の他の観点に係る積層鉄心の製造方法は、金属板に第1加工孔及び第2加工孔を形成することと、金属板を打ち抜いて、第1加工孔及び第2加工孔が設けられた少なくとも1つの第1打抜部材を形成することと、金属板を打ち抜いて、第1加工孔及び第2加工孔が設けられていない少なくとも1つの第2打抜部材を形成することと、少なくとも1つの第1打抜部材及び少なくとも1つの第2打抜部材を積層して、第1加工孔で構成された第1識別孔と、第2加工孔で構成された第2識別孔であって、空間形状が第1識別孔とは異なる第2識別孔とが一方の端面に設けられた積層体を形成することとを含む。
【0009】
本開示の他の観点に係る積層鉄心の製造方法は、金属板の第1列に第1加工孔及び第2加工孔を形成することと、金属板の第1列とは幅方向でピッチをずらした第2列に第3加工孔及び第4加工孔を形成することと、第1列において金属板を打ち抜いて、第1加工孔及び第2加工孔が設けられた少なくとも1つの第1打抜部材を形成することと、第1列において金属板を打ち抜いて、第1加工孔及び第2加工孔が設けられていない少なくとも1つの第2打抜部材を形成することと、第2列において第3加工孔及び第4加工孔が設けられた少なくとも1つの第3打抜部材を形成することと、第2列において第3加工孔及び第4加工孔が設けられていない少なくとも1つの第4打抜部材を形成することと、少なくとも1つの第1打抜部材及び少なくとも1つの第2打抜部材を積層して、第1加工孔で構成された第1識別孔と、第2加工孔で構成された第2識別孔であって、空間形状が第1識別孔とは異なる第2識別孔とが一方の端面に設けられた第1積層体を形成することと、少なくとも1つの第3打抜部材及び少なくとも1つの第4打抜部材を積層して、第3加工孔で構成された第3識別孔と、第4加工孔で構成された第4識別孔であって、空間形状が第1識別孔、第2識別孔及び第3識別孔のいずれとも異なる第4識別孔とが一方の端面に設けられた第2積層体を形成することとを含む。
【0010】
本開示の他の観点に係る積層鉄心の製造方法は、金属板の第1列に第1加工孔を形成することと、金属板の第1列とは幅方向でピッチをずらした第2列に第2加工孔を形成することと、第1列において金属板を打ち抜いて、第1加工孔が設けられた少なくとも1つの第1打抜部材を形成することと、第1列において金属板を打ち抜いて、第1加工孔が設けられていない少なくとも1つの第2打抜部材を形成することと、第2列において金属板を打ち抜いて、第2加工孔が設けられた少なくとも1つの第3打抜部材を形成することと、第2列において金属板を打ち抜いて、第2加工孔が設けられていない少なくとも1つの第4打抜部材を形成することと、少なくとも1つの第1打抜部材及び少なくとも1つの第2打抜部材を積層して、第1加工孔で構成された第1識別孔が一方の端面に設けられた第1積層体を形成することと、少なくとも1つの第3打抜部材及び少なくとも1つの第4打抜部材を積層して、第2加工孔で構成された第2識別孔であって、空間形状が第1識別孔とは異なる第2識別孔が一方の端面に設けられた第2積層体を形成することとを含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、加工部がいずれの加工工具で加工されたのかを特定することが可能な積層鉄心及び積層鉄心の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、回転子積層鉄心の一例を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示されるII−II線に沿った断面図である。
図3図3は、回転子積層鉄心の製造装置の一例を示す概略図である。
図4図4は、打抜装置の一例を示す概略図である。
図5図5は、打抜加工のレイアウトの一例を示す図である。
図6図6は、回転子積層鉄心の別の例を示す斜視図である。
図7図7は、打抜加工のレイアウトの別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0014】
[回転子積層鉄心の構成]
まず、図1及び図2を参照して、回転子積層鉄心1(積層鉄心)の構成について説明する。回転子積層鉄心1は、回転子(ロータ)の一部である。回転子は、図示しないシャフトが回転子積層鉄心1に取り付けられることにより構成される。回転子が固定子(ステータ)と組み合わせられることにより、電動機(モータ)が構成される。図1に例示される回転子積層鉄心1は、埋込磁石型(IPM)モータの一部を構成してもよい。
【0015】
回転子積層鉄心1は、図1に示されるように、積層体10と、複数の永久磁石12と、複数の固化樹脂14と、識別孔20a(第1識別孔)と、識別孔20b(第2識別孔)とを備える。
【0016】
積層体10は、図1に示されるように、円筒状を呈している。積層体10は、端面10a(第1端面)と端面10b(第2端面)とを有する。端面10a,10bは中心軸Axに直交する方向に拡がっていてもよい。積層体10の中央部には、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通する軸孔10cが設けられている。換言すると、軸孔10cは、端面10a及び端面10bの双方に開口している。すなわち、軸孔10cは、積層体10の高さ方向(積層方向)に延びている。一つの例において、積層体10は中心軸Ax周りに回転するので、中心軸Axは回転軸でもある。軸孔10c内には、シャフトが挿通される。回転子積層鉄心の構成を説明するにあたり、以下では、端面10bから端面10aに向かう方向を上とし、端面10aから端面10bに向かう方向を下とする。
【0017】
パンチにより電磁鋼板ESから打抜部材Wが打ち抜かれる過程で、軸孔10cの周縁部には、バリ及びダレが形成されることがある。バリは、打抜部材Wの上面側において、当該周縁部が軸孔10cに近づくにつれて端面10bから端面10aに向かう方向に突出した部分である。ダレは、打抜部材Wの下面側において、当該周縁部が軸孔10cに近づくにつれて端面10bから端面10aに向かう方向に窪んだ部分である。
【0018】
積層体10には、複数(ここでは6個)の磁石挿入孔16a〜16fが形成されている。磁石挿入孔16a〜16fは、図1に示されるように、積層体10の外周縁に沿って所定間隔で並んでいる。例えば、磁石挿入孔16a〜16fは、中心軸Ax周りにおいて略60°ごとに配置されていてもよい。磁石挿入孔16a〜16fは、上方から見た場合(端面10aから端面10bに向かう方向に端面10aを見た場合)に、中心軸Ax周りにおいて時計回りにこの順で配置されている。磁石挿入孔16a〜16fは、図2に示されるように、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通している。すなわち、磁石挿入孔16a〜16fは高さ方向に延びている。磁石挿入孔16a〜16fは、互いに同じ形状に形成されていてもよい。例えば磁石挿入孔16a〜16fの形状は、積層体10の外周縁に沿って延びる長孔であってもよい。磁石挿入孔16の位置、形状及び数は、モータの用途、要求される性能などに応じて変更してもよい。
【0019】
積層体10は、複数の打抜部材Wが積み重ねられて(積層されて)構成されている。複数の打抜部材Wのうちの最上層をなす打抜部材WUの上面は、積層体10の端面10a(上端面)を構成している。複数の打抜部材Wのうちの最下層をなす打抜部材WN1の下面は、積層体10の端面10b(下端面)を構成している。
【0020】
打抜部材Wは、後述する電磁鋼板ESが所定形状に打ち抜かれた板状体であり、積層体10に対応する形状を呈している。積層体10は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層することをいう。転積は、主に積層体10の板厚偏差を相殺することを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定してもよく、例えば180°であってもよい。
【0021】
高さ方向において隣り合う打抜部材W同士は、図1及び図2に示されるように、複数(ここでは6個)のカシメ部18a〜18fによって締結されていてもよい。カシメ部18a〜18eは、磁石挿入孔16a〜16fにそれぞれ対応して配置されていてもよい。カシメ部18a〜18fは、中心軸Ax周りにおいて略60°ごとに配置されていてもよい。カシメ部18a〜18fは、上方から見た場合に、中心軸Ax周りにおいて時計回りにこの順で配置されていてもよい。
【0022】
カシメ部18a〜18eのそれぞれは、図2に示されるように、最上層以外の打抜部材WNに形成されたカシメ22と、最上層の打抜部材WUに形成された貫通孔24とを含む。カシメ22は、打抜部材WNの上面に形成された突起と、打抜部材WNの裏面に形成された窪みとで構成されている。一の打抜部材WNのカシメ22の窪みは、当該一の打抜部材WNの下面側にて隣り合う打抜部材WNのカシメ22の突起と嵌合している。貫通孔24は、カシメ22の外形に対応した形状を呈する長孔である。貫通孔24には、打抜部材WUに隣り合う打抜部材WN2の突起が嵌合される。なお、図2ではカシメ部18c,18fが示されているが、他のカシメ部もカシメ部18c,18fと同様に構成されている。
【0023】
打抜部材W同士は、カシメ部18a〜18fに代えて、種々の公知の方法にて締結されてもよい。例えば、複数の打抜部材W同士は、接着剤又は樹脂材料を用いて互いに接合されてもよいし、溶接によって互いに接合されてもよい。あるいは、打抜部材Wに仮カシメを設け、仮カシメを介して複数の打抜部材Wを締結して積層体10を得た後、仮カシメを当該積層体から除去してもよい。なお、「仮カシメ」とは、複数の打抜部材Wを一時的に一体化させるのに使用され且つ製品(回転子積層鉄心1)を製造する過程において取り除かれるカシメを意味する。
【0024】
識別孔20a及び識別孔20bは、積層体10に形成された(端面10aに設けられた)非貫通孔である。識別孔20a及び識別孔20bは、端面10aに開口しており、端面10bに開口していない。図2に示される例では、打抜部材WUに貫通孔26a及び貫通孔26bが形成され、打抜部材WNには貫通孔26a及び貫通孔26bに対応する位置に貫通孔が形成されていない。すなわち、識別孔20aは、打抜部材WUの貫通孔26aと、打抜部材WUに隣り合う打抜部材WN2の上面とで区画される凹状の三次元空間Vaによって構成されている。識別孔20bは、打抜部材WUの貫通孔26bと、打抜部材WUに隣り合う打抜部材WN2の上面とで区画される凹状の三次元空間Vbによって構成されている。換言すれば、三次元空間Vaは、端面10aを含む仮想平面と、識別孔20aの側壁面と、識別孔20aの底壁面とによって区画される空間である。三次元空間Vbは、端面10aを含む仮想平面と、識別孔20bの側壁面と、識別孔20bの底壁面とによって区画される空間である。
【0025】
識別孔20aの空間形状は、識別孔20bの空間形状とは異なる。識別孔20aの空間形状とは、三次元空間Vaの形状をいい、識別孔20bの空間形状とは、三次元空間Vbの形状をいう。図1に示される例では、識別孔20aの空間形状(三次元空間Vaの形状)は円柱状であり、識別孔20bの空間形状(三次元空間Vbの形状)は直方体状である。端面10aにおける識別孔20aの形状は、端面10aにおける識別孔20bの形状とは異なる。換言すると、上方から見た場合において、識別孔20a及び識別孔20bの形状(輪郭)は互いに異なっている。端面10aにおける識別孔20aの形状は円形であり、端面10aにおける識別孔20bの形状は四角形(例えば正方形)である。識別孔20aの容積(三次元空間Vaの体積)及び識別孔20bの容積(三次元空間Vbの体積)は、互いに異なっていてもよいし、互いに略一致していてもよい。例えば、識別孔20a及び識別孔20bの深さ(三次元空間Va,Vbの高さ)が互いに略一致し、端面10aにおける識別孔20a及び識別孔20bの大きさ(面積)が互いに略一致することで、識別孔20a及び識別孔20bの容積が互いに略一致してもよい。なお、識別孔20a及び識別孔20bの容積が互いに略一致するとは、完全に一致する場合だけなく、識別孔20aの容積が識別孔20bの容積に対して0.9倍〜1.1倍である場合も含まれる。識別孔20a,20bの端面10aにおける大きさは、一例として、0.2mm〜10mm程度であってもよく、識別孔20a,20bの深さは、一例として、0.1mm〜0.5mm程度であってもよい。
【0026】
識別孔20a及び識別孔20bは、中心軸Axを間に置いて配置されていてもよい。識別孔20a及び識別孔20bは、中心軸Axに直交する仮想直線に沿って配置されていてもよい。換言すれば、識別孔20aと中心軸Axと識別孔20bとがこの順に仮想直線に沿って並んでいてもよい。上方から見て、識別孔20aの中心と識別孔20bの中心とは、中心軸Ax周りにおいて互いに180°程度異なっていてもよい。図2に示される例では、識別孔20a及び識別孔20bが、カシメ部18a〜18fよりも内側(中心軸Ax)寄りに位置している。識別孔20a及び識別孔20bが打抜部材Wの外周寄りに位置している場合、回転子から固定子に向けて発生する磁束を乱してしまうおそれがある。識別孔20a及び識別孔20bが軸孔10cに近い位置に設けられる場合、上記磁束の乱れが生じ難くなる。中心軸Axから識別孔20aまでの直線距離は、中心軸Axから識別孔20bまでの直線距離と略同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
識別孔20a,20bは、所定の識別機能を有しており、カシメ部18a〜18fの貫通孔24とは異なり打抜部材W同士を接合する機能を有していない。識別孔20a,20bは、詳細は後述するが、磁石挿入孔及びカシメ部等の加工部がいずれの加工工具により形成されたのかを識別するための識別用の孔である。識別孔20a,20bは、回転子積層鉄心1(積層体10)が正立しているか、又は倒立しているかを識別するための識別用の孔であってもよい。
【0028】
識別孔20a,20bが端面10bに設けられずに端面10aに設けられているので、端面10a側にバリが形成されていることが識別孔20a,20bによって示されてもよい。バリは、例えば、軸孔10cの周縁部、磁石挿入孔16a〜16fの周縁部、識別孔20a,20bの周縁部、カシメ部18a〜18fの貫通孔24の周縁部などに形成されうる。あるいは、カシメ部18a〜18fの貫通孔24が端面10a側に形成されていることが、識別孔20a,20bによって示されてもよい。識別孔20a,20bを用いた識別は、作業員によって行われてもよく、装置によって行われてもよい。
【0029】
永久磁石12は、図1及び図2に示されるように、磁石挿入孔16a〜16fのそれぞれに一つずつ挿入されている。永久磁石12の形状は、特に限定されないが、本実施形態では直方体形状を呈している。永久磁石12の種類は、モータの用途、要求される性能などに応じて決定すればよく、例えば、焼結磁石であってもよいし、ボンド磁石であってもよい。
【0030】
固化樹脂14は、永久磁石12が挿入されている状態の磁石挿入孔16a〜16f内に充填された溶融状態の樹脂材料(溶融樹脂)が固化したものである。固化樹脂14は、永久磁石12を磁石挿入孔16a〜16f内に固定する機能と、高さ方向で隣り合う打抜部材W同士を接合する機能とを有する。固化樹脂14を構成する樹脂材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂と、硬化開始剤と、添加剤とを含む樹脂組成物が挙げられる。添加剤としては、フィラー、難燃剤、応力低下剤などが挙げられる。
【0031】
[回転子積層鉄心の製造装置]
続いて、図3図5を参照して、回転子積層鉄心1の製造装置100について説明する。製造装置100は、帯状の被加工板である電磁鋼板ES(金属板)から回転子積層鉄心1を製造するための装置である。製造装置100は、アンコイラー110と、送出装置120と、打抜装置130と、検査装置190と、コントローラ150(制御部)とを備える。
【0032】
アンコイラー110は、コイル状に巻回された帯状の電磁鋼板ESであるコイル材111が装着された状態で、コイル材111を回転自在に保持する。送出装置120は、電磁鋼板ESを上下から挟み込む一対のローラ121,122を有する。一対のローラ121,122は、コントローラ150からの指示信号に基づいて回転及び停止し、電磁鋼板ESを打抜装置130に向けて間欠的に順次送り出す。
【0033】
打抜装置130は、送出装置120によって間欠的に送り出される電磁鋼板ESを順次打抜加工して打抜部材W(打抜部材WU,WN)を形成する機能と、打抜加工によって得られた打抜部材Wを順次積層しつつ重ね合わせて積層体10を形成する機能とを有する。打抜装置130の詳細については後述する。
【0034】
検査装置190は、積層体10が正立しているか、又は倒立しているかを検査する機能を有する。例えば、端面10aが上側にある場合に積層体10が倒立していると判定されてもよく、端面10aが下側にある場合に積層体10が正立していると判定されてもよい。検査装置190は、レーザ装置191を備えていてもよい。レーザ装置191は、コンベアCvにより打抜装置130から搬送された積層体10に向けて上方からレーザ光を出射し、レーザ光の反射光を受光するように構成されている。例えば、レーザ装置191は、識別孔20a,20bが形成されている位置に向けてレーザ光を出射してもよい。レーザ装置191は、積層体10の端面10bに向けてレーザ光を出射してもよい。レーザ装置191は、コントローラ150からの指示信号に基づいてレーザ光を出射し、受光した反射光に応じた信号をコントローラ150に出力する。
【0035】
コントローラ150は、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120、打抜装置130及び検査装置190をそれぞれ動作させるための指示信号を生成する。コントローラ150は、生成した指示信号を送出装置120、打抜装置130及び検査装置190に送信する。
【0036】
(打抜装置の詳細構成)
打抜装置130は、図3及び図4に示されるように、ベース131と、下型132と、ダイプレート133と、ストリッパ134と、上型135と、天板136と、プレス機137(駆動部)と、吊り具138と、パンチA1〜A6と、位置決めピンB1〜B6とを有する。例えば、パンチA2は、磁石挿入孔16a〜16fにそれぞれ対応する複数の刃(加工工具)を含んでいる。パンチA3は、軸孔10cに対応する刃を含んでいる。パンチA4は、カシメ部18a〜18fの貫通孔24にそれぞれ対応する複数の刃(加工工具)と、識別孔20a及び識別孔20bにそれぞれ対応する刃とを含んでいる。パンチA5は、カシメ部18a〜18fのカシメ22にそれぞれ対応する複数の刃(加工工具)を含んでいる。パンチA6は、打抜部材Wの外縁に対応した刃を含んでいる。ベース131は、ベース131に載置された下型132を支持する。
【0037】
下型132は、下型132に載置されたダイプレート133を支持する。下型132には、電磁鋼板ESから打ち抜かれた材料(例えば、打抜部材W、廃材等)が排出される排出孔C1〜C6が、パンチA1〜A6に対応する位置にそれぞれ設けられている。例えば、排出孔C6内において、上下方向に移動可能に構成されたステージ(不図示)が設けられており、ステージが下方に下がりつつ、ステージ上にて複数の打抜部材Wが積層される。所定枚数の打抜部材Wが積層されると、積層体10が打抜装置130から払い出される。
【0038】
ダイプレート133は、パンチA1〜A6と共に、打抜部材Wを成形する機能を有する。ダイプレート133には、パンチA1〜A6に対応する位置にダイD1〜D6がそれぞれ設けられている。各ダイD1〜D6には、上下方向に延びる貫通孔D1a〜D6a(ダイ孔)が設けられている。各貫通孔D1a〜D6aはそれぞれ、対応する排出孔C1〜C6と連通している。各貫通孔D1a〜D6aの径は、対応するパンチA1〜A6の先端部が挿通可能で且つ当該先端部よりも若干大きな大きさである。ダイプレート133には、位置決めピンB1〜B6に対応する位置に挿通孔E1〜E6がそれぞれ設けられている。
【0039】
ストリッパ134は、ストリッパプレート134aと、保持プレート134bとを含む。ストリッパプレート134aは、パンチA1〜A6で電磁鋼板ESを打ち抜く際にパンチA1〜A6に食いついた電磁鋼板ESをパンチA1〜A6から取り除く機能を有する。ストリッパプレート134aは、ダイプレート133の上方に位置している。保持プレート134bは、ストリッパプレート134aを上方から保持する。
【0040】
ストリッパ134には、パンチA1〜A6に対応する位置に貫通孔F1〜F6がそれぞれ設けられている。各貫通孔F1〜F6はそれぞれ、上下方向に延びると共に、対応するダイD1〜D6の貫通孔D1a〜D6aと連通する。各貫通孔F1〜F6内にはそれぞれ、パンチA1〜A6の下部が挿通されている。パンチA1〜A6の当該下部はそれぞれ、各貫通孔F1〜F6内においてスライド可能である。
【0041】
ストリッパ134には、位置決めピンB1〜B6に対応する位置に貫通孔F7〜F12がそれぞれ設けられている。各貫通孔F7〜F12はそれぞれ、上下方向に延びると共に、対応する挿通孔E1〜E6と連通する。各貫通孔F7〜F12内にはそれぞれ、位置決めピンB1〜B6の下部が挿通されている。位置決めピンB1〜B6の当該下部はそれぞれ、各貫通孔F7〜F12内においてスライド可能である。
【0042】
上型135は、ストリッパ134の上方に位置している。上型135には、パンチA1〜A6及び位置決めピンB1〜B6の基部(上部)が固定されている。そのため、上型135は、パンチA1〜A6及び位置決めピンB1〜B6を保持している。上型135のうち打抜装置130の上流側及び下流側の各端部にはそれぞれ、天板136側に位置し且つ上下方向に延びる収容空間135aと、収容空間135aから下方に向けて貫通する貫通孔135bとが設けられている。
【0043】
天板136は、上型135の上方に位置している。天板136は、上型135を保持している。プレス機137は、天板136の上方に位置している。プレス機137のピストンは、天板136に接続されており、コントローラ150からの指示信号に基づいて動作する。プレス機137が動作すると、ピストンが伸縮して、ストリッパ134、上型135、天板136、吊り具138、パンチA1〜A6及び位置決めピンB1〜B6(以下、これらを可動部160という。)が全体的に上下動する。
【0044】
吊り具138は、ストリッパ134を上型135に吊り下げて保持する。吊り具138は、長尺のロッド部138aと、ロッド部138aの上端に設けられた頭部138bとを有する。ロッド部138aの下端部は、ストリッパ134に固定されている。ロッド部138aの上端部は、上型135の貫通孔135bに挿通されている。頭部138bは、下端部よりも径が大きく、上型135の収容空間135a内に収容されている。そのため、頭部138bは、収容空間135a内において上型135に対して上下動可能である。
【0045】
位置決めピンB1〜B6は、パンチA1〜A6によって電磁鋼板ESが打ち抜かれる際に電磁鋼板ESを位置決めする機能を有する。位置決めピンB1〜B6はそれぞれ、打抜装置130の上流側(送出装置120側)から下流側に向けてこの順に並ぶように配置されている。
【0046】
[回転子積層鉄心の製造方法]
続いて、図3図5を参照して、回転子積層鉄心1の製造方法について説明する。まず、電磁鋼板ESが送出装置120によって打抜装置130に送り出され、電磁鋼板ESの被加工部位がパンチA1に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160をダイプレート133に向けて下方に押し出す。ストリッパ134がダイプレート133に到達してこれらで電磁鋼板ESが挟持された後も、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を下方に向けて押す。
【0047】
このとき、ストリッパ134は移動しないが、パンチA1〜A6及び位置決めピンB1〜B6の先端部はストリッパプレート134aの貫通孔F1〜F12内を移動して、ダイプレート133のうち対応する貫通孔D1a〜D6a及び挿通孔E1〜E6に到達する。そのため、電磁鋼板ESがパンチA1によって所定の打抜形状に沿って打ち抜かれ、電磁鋼板ESの両側縁近傍に一対の貫通孔ES1が形成される(図5の位置S1参照)。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔C1から排出される。その後、プレス機137が動作して可動部160を上昇させる。
【0048】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの被加工部位がパンチA2に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を昇降させる。これにより、パンチA2によって電磁鋼板ESが所定の打ち抜き形状に沿って打ち抜かれ、打抜部ES2が電磁鋼板ESに形成される(図5の位置S3参照)。
【0049】
打抜部ES2は、円形状に並ぶ6つの貫通孔によって構成される加工部である。打抜部ES2を構成する6つの貫通孔は、パンチA2に含まれる複数の刃によってそれぞれ形成(加工)される。この6つの貫通孔は、磁石挿入孔16a〜16fにそれぞれ対応する。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔C2から排出される。パンチA2による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔ES1及び挿通孔E1,E2内には位置決めピンB1,B2が挿通される(図5の位置S2,S4参照)。
【0050】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの被加工部位がパンチA3に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を昇降させる。これにより、パンチA3によって電磁鋼板ESが所定の打ち抜き形状に沿って打ち抜かれ、打抜部ES3が電磁鋼板ESに形成される(図5の位置S5参照)。
【0051】
打抜部ES3は、円形状の貫通孔によって構成される加工部である。当該貫通孔は、軸孔10cに対応する。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔C3から排出される。パンチA3による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔ES1及び挿通孔E2,E3内には位置決めピンB2,B3が挿通される(図5の位置S4,S6参照)。
【0052】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの被加工部位がパンチA4に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を昇降させる。これにより、パンチA4によって電磁鋼板ESが所定の打抜形状に沿って打ち抜かれ、打抜部ES4,ES4,ES4が電磁鋼板ESに形成される(図5の位置S7参照)。
【0053】
打抜部ES4は、円形状に並ぶ6つの貫通孔によって構成される加工部である。打抜部ES4を構成する6つの貫通孔は、パンチA4に含まれる複数の刃によってそれぞれ形成(加工)される。6つの貫通孔は、カシメ部18a〜18fの貫通孔24にそれぞれ対応する。打抜部ES4(第1加工孔)及び打抜部ES4(第2加工孔)は、打抜部ES3の中心周りにおいて互いに180°程度離間した2つの貫通孔である。打抜部ES4は、識別孔20a(打抜部材WUの貫通孔26a)に対応し、打抜部ES4は、識別孔20b(打抜部材WUの貫通孔26b)に対応する。打ち抜かれた廃材は、下型132の排出孔C4から排出される。パンチA4による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔ES1及び挿通孔E3,E4内には位置決めピンB3,B4が挿通される(図5の位置S6,S8参照)。なお、カシメ部18a〜18fのカシメ22を形成する場合(後述する)には、パンチA4による電磁鋼板ESの打ち抜きが行われない。
【0054】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの被加工部位がパンチA5に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を昇降させる。これにより、パンチA5によって電磁鋼板ESが所定の打抜形状に沿って半抜き加工され、加工部ES5が電磁鋼板ESに形成される(図5の位置S9参照)。
【0055】
加工部ES5は、円形状に並ぶ6つの凹凸部によって構成されている。加工部ES5を構成する6つの凹凸部は、パンチA5に含まれる複数の刃によってそれぞれ形成(加工)される。6つの凹凸部は、カシメ部18a〜18fのカシメ22にそれぞれ対応する。パンチA5による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔ES1及び挿通孔E4,E5内には位置決めピンB4,B5が挿通される(図5の位置S8,S10参照)。なお、識別孔20a,20b及びカシメ部18a〜18fの貫通孔24を形成する場合には、パンチA5による電磁鋼板ESの加工が行われない。
【0056】
次に、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、電磁鋼板ESの被加工部位がパンチA6に到達すると、コントローラ150がプレス機137に指示して、プレス機137が可動部160を昇降させる。これにより、パンチA6によって電磁鋼板ESが所定の打ち抜き形状に沿って打ち抜かれ、打抜部ES6が形成される(図5の位置S11参照)。
【0057】
打抜部ES6は、打抜部材Wに対応する。具体的には、打抜部ES6は、打抜部材Wを構成する打抜部材WU(第1打抜部材)及び打抜部材WN(第2打抜部材)のいずれか一方に対応する。図5には、打抜部ES6が打抜部材WUに対応する場合が示されており、打抜部ES6が打抜部材WNに対応する場合の図示は省略されている。打抜部ES6が打抜部材WUに対応する場合、打抜部ES6の外縁は、打抜部ES2,ES3,ES4〜ES4を囲む。つまり、この場合には、打抜部ES2,ES3,ES4〜ES4が設けられた打抜部材WUが形成される。打抜部ES6が打抜部材WNに対応する場合、打抜部ES6の外縁は、打抜部ES2,ES3及び加工部ES5を囲む。つまり、この場合には、打抜部ES2,ES3及び加工部ES5が設けられているが打抜部ES4,ES4が設けられていない打抜部材WNが形成される。パンチA6による電磁鋼板ESの打ち抜きの際、貫通孔ES1及び挿通孔E5,E6内には位置決めピンB5,B6が挿通される(図5の位置S10,S12参照)。
【0058】
こうして、打抜部材Wは、排出孔C6内においてステージ上に載置され、次に打ち抜かれた打抜部材Wと締結されつつ積層される。例えば、打抜部材WUが最初にステージ上に載置され、次に複数の打抜部材WNが順に積み重ねられることで積層体10が形成される。打抜部材WUに対して、続く打抜部材WNが積み重ねられる際に、打抜部ES4と打抜部材WNの表面とにより識別孔20aが構成され、打抜部ES4と打抜部材WNの表面とにより識別孔20bが構成される。そして、積層体10が打抜装置130から払い出され、コンベアCvにより当該積層体10が搬送される。その後、検査装置190において識別孔20a,20bを用いた積層体10の検査(例えば積層体10の端面の向きの検査)が行われてもよく、永久磁石12の挿入及び固化樹脂14の充填が行われてもよい。永久磁石12の挿入工程の前に検査装置190により積層体10の端面の向きの検査が行われてもよい。例えば、レーザ光を積層体10に向けて出射することで、磁石挿入前に積層体10が正立しているかどうかの検査が行われてもよい。この検査において、レーザ光により識別孔20a及び識別孔20bが検出されなかったことによって、積層体10が正立していると判定されてもよい。以上の工程により、回転子積層鉄心1が形成される。
【0059】
[作用]
以上によれば、識別孔20aの空間形状が識別孔20bの空間形状とは異なる。そのため、回転子積層鉄心1の形状が、中心軸Axに関して回転対称ではないので、識別孔20a(識別孔20b)に対する加工部の位置(例えば、中心軸Axに対する識別孔20aの角度を0°と定めたときの、中心軸Ax周りにおける他の加工部の角度)が一意に定まる。すなわち、磁石挿入孔16a〜16f及びカシメ部18a〜18fの位置(中心軸Ax周りでの識別孔20aからの角度)が一意に定まる。これにより、打抜部材Wに含まれる加工部(例えば、磁石挿入孔、カシメ部)と加工工具(例えば、パンチA2,A4に含まれる刃)との対応関係を把握することができる。つまり、加工部がいずれの加工工具で加工されたのかを特定することが可能となる。
【0060】
加工部と加工工具との対応関係を得ることで、積層体10(回転子積層鉄心1)が形成された後に、例えば、加工部の状態を確認して加工工具を調整することできる。あるいは、形成された積層体10において加工部の状態に不具合が生じた際に、対象の加工工具を容易に特定することができる。従来は、加工工具を調整する場合には、電磁鋼板の送出方向に沿って略平行なケガキ線を電磁鋼板に設けることで、中心軸に関し回転非対称な回転子積層鉄心(積層体)を形成し、加工工具の特定及び調整を行っていた。これに対して、回転子積層鉄心1ではケガキ線を設けなくても、他の用途(識別)に用いられる識別孔を利用することで加工部に対応する加工工具を特定することができる。
【0061】
以上によれば、貫通孔26a及び貫通孔26bの双方が、複数の打抜部材Wのうちの端面10aを構成する打抜部材WUを貫通している。この構成のように、複数の打抜部材Wのうちの少なくとも打抜部材WUに貫通孔26a及び貫通孔26bを設ければ識別孔20a及び識別孔20bが構成されるので、識別孔20a及び識別孔20bの形成が容易である。
【0062】
以上によれば、識別孔20a及び識別孔20bが、端面10aにおける形状が互いに異なるように形成されている。この場合、識別孔20aの空間形状と識別孔20bの空間形状とが互いに異なるので、加工部がいずれの加工工具で加工されたのかを特定することが可能となる。
【0063】
以上によれば、識別孔20a及び識別孔20bが、積層体10の中心軸Axを間に置いて配置されている。この場合、識別孔20a及び識別孔20bが一直線上に並ぶので、識別孔20aの存在により積層体10から除去された領域の重量と、識別孔20bの存在により積層体10から除去された領域の重量とのバランスをとることができる。そのため、回転子積層鉄心1に重量バランスの偏り(重量アンバランス)が生じ難くなる。したがって、回転子積層鉄心1の回転時における異常振動、ノイズ等を抑制することが可能となる。
【0064】
以上によれば、識別孔20a及び識別孔20bが、容積が互いに略一致するように形成されている。そのため、回転子積層鉄心1の重量アンバランスがいっそう生じ難くなる。したがって、回転子積層鉄心1の回転時における異常振動、ノイズ等をさらに抑制することが可能となる。
【0065】
ところで、積層体10の厚み調整のために端面10b側において積層体10から打抜部材Wを取り除くことがある。以上によれば、カシメ部18a〜18fを含む積層体10の端面10aに識別孔20a及び識別孔20bが設けられているので、識別孔20a,20bを残しつつ積層体10の厚み調整を行うことができる。
【0066】
[変形例]
(1)識別孔20a,20bの空間形状は、互いに異なっている限り、特に限定されず任意に設定しうる。上方から見たときに、識別孔20a,20bの形状は異なっていてもよい。例えば図6に示されるように、上方から見たときに、識別孔20aの形状(輪郭)が円形状を呈しており、識別孔20bの形状(輪郭)が三角形状を呈していてもよい。すなわち、識別孔20aの空間形状が円柱状を呈しており、識別孔20bの空間形状が三角柱状を呈していてもよい。
【0067】
あるいは、図示はしていないが、端面10aにおける識別孔20aの大きさと識別孔20bの大きさとが互いに異なっていてもよい。端面10aにおける識別孔20a,20bの大きさが異なっていると、識別孔20a及び識別孔20bの空間形状は互いに異なるので、加工部がいずれの加工工具で加工されたのかを特定することが可能となる。この場合において、識別孔20a及び識別孔20bの端面10aにおける形状が互いに相似であってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、識別孔20a及び識別孔20bの深さが互いに略同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0068】
あるいは、図示はしていないが、識別孔20aの深さと識別孔20bの深さとが互いに異なっていてもよい。識別孔20a,20bの深さが異なっていると、識別孔20a及び識別孔20bの空間形状は互いに異なるので、加工部がいずれの加工工具で加工されたのかを特定することが可能となる。この場合において、識別孔20a,20bの端面10aにおける形状が互いに相似であってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、端面10aにおける識別孔20a,20bの大きさが互いに略同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0069】
(2)識別孔20a及び識別孔20bの容積は、互いに異なっていてもよい。識別孔20a及び識別孔20bは、中心軸Ax周りにおいて互いに180°よりも小さい間隔を有して配置されていてもよい。回転子積層鉄心1は、中心軸Ax周りにおいて互いに略等しい間隔で配置された3つ以上の識別孔を備えていてもよい。この場合、3つ以上の識別孔の空間形状は、回転子積層鉄心1が中心軸Axに関し回転対称とならないような組合せであってもよい。
【0070】
(3)識別孔20a及び識別孔20bは、端面10aに開口せずに、端面10bに開口するように形成されていてもよい。
【0071】
(4)打抜部材WUにおいて、貫通孔26a,26bに代えて貫通していない非貫通孔が形成されることで、積層体10に識別孔20a,20bが形成されてもよい。あるいは、最上層の打抜部材WUを含むが最下層の打抜部材WN1を含まない少なくとも1つの打抜部材Wに形成された貫通孔により、識別孔20a,20bが構成されてもよい。
【0072】
(5)例えば、識別孔20a,20bがそれぞれ円形状及び四角形状を呈している図1の回転子積層鉄心1と、識別孔20a,20bがそれぞれ円形状及び三角形状を呈している図6の回転子積層鉄心1とが、1つの打抜装置130により並行して製造されてもよい。以下では、図1の回転子積層鉄心1を「回転子積層鉄心1A」と称し、図6の回転子積層鉄心1を「回転子積層鉄心1B」と称する。
【0073】
打抜装置130は、図7に示されるように、1枚の電磁鋼板ESの幅方向(電磁鋼板ESの送出方向に直交する方向であり、以下では単に「幅方向」という。)でピッチがずれた列ごとに、回転子積層鉄心1Aの積層体10(第1積層体)を構成する複数の打抜部材Wと、回転子積層鉄心1Bの積層体10(第2積層体)を構成する複数の打抜部材Wとを当該電磁鋼板ESから打ち抜いてもよい(いわゆる2列取り)。以下では、図7の紙面において上側に位置する列を「第1列」とし、下側に位置する列を「第2列」とする。
【0074】
図7の例において、打抜装置130は、幅方向に並んだ2つのパンチA1と、各パンチA1に対応する2つのダイD1とを含む。同様に、打抜装置130は、パンチA2〜A6及びダイD2〜D6をそれぞれ2つずつ含む。パンチA1同士の先端形状は略同一であり、パンチA2同士の先端形状は略同一であり、パンチA3同士の先端形状は略同一であり、パンチA5同士の先端形状は略同一であり、パンチA6同士の先端形状は略同一であるが、第1列を加工するパンチA4の先端形状と第2列を加工するパンチA4の先端形状とは部分的に異なっている。
【0075】
ここで、図3図4及び図7を参照して、1つの打抜装置130により並行して回転子積層鉄心1A,1Bの積層体10が製造される場合の回転子積層鉄心1A,1Bの製造方法について説明する。まず、可動部160が昇降すると、幅方向において並ぶ2つのパンチA2によって電磁鋼板ESが所定の打ち抜き形状に沿って打ち抜かれ、2つの打抜部ES2が電磁鋼板ESに形成される(図7の位置S3参照)。2つの打抜部ES2の一方は、第1列において形成され、回転子積層鉄心1Aにおける磁石挿入孔16a〜16fに対応する。2つの打抜部ES2の他方は、第2列に形成され、回転子積層鉄心1Bにおける磁石挿入孔16a〜16fに対応する。
【0076】
続いて、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、可動部160が昇降すると、幅方向において並ぶ2つのパンチA3によって電磁鋼板ESが所定の打ち抜き形状に沿って打ち抜かれ、2つの打抜部ES3が電磁鋼板ESに形成される(図7の位置S5参照)。2つの打抜部ES3の一方は、第1列において形成され、回転子積層鉄心1Aにおける軸孔10cに対応する。2つの打抜部ES3の他方は、第2列において形成され、回転子積層鉄心1Bにおける軸孔10cに対応する。
【0077】
続いて、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、可動部160が昇降すると、幅方向において並ぶ2つのパンチA4によって電磁鋼板ESが所定の打抜形状に沿って打ち抜かれ、2つの打抜部ES4,ES4,ES4が電磁鋼板ESに形成される(図7の位置S7参照)。2つの打抜部ES4の一方は、第1列において形成され、回転子積層鉄心1Aにおけるカシメ部の貫通孔24に対応する。2つの打抜部ES4の他方は、第2列において形成され、回転子積層鉄心1Bにおけるカシメ部の貫通孔24に対応する。
【0078】
2つの打抜部ES4の一方の打抜部(第1加工孔)は、第1列において形成され、回転子積層鉄心1Aの識別孔20a(第1識別孔)に対応する。2つの打抜部ES4の他方の打抜部(第3加工孔)は、第2列において形成され、回転子積層鉄心1Bの識別孔20a(第3識別孔)に対応する。2つの打抜部ES4の一方の打抜部(第2加工孔)は、第1列において形成され、回転子積層鉄心1Aの識別孔20b(第2識別孔)に対応する。2つの打抜部ES4の他方の打抜部(第4加工孔)は、回転子積層鉄心1Bの識別孔20b(第4識別孔)に対応する。図7に示される例では、回転子積層鉄心1Aにおける識別孔20bに対応する打抜部ES4が四角形状を呈しており、回転子積層鉄心1Bにおける識別孔20bに対応する打抜部ES4が三角形状を呈している。
【0079】
パンチA4による電磁鋼板ESの加工が行われない場合には、幅方向において並ぶ2つのパンチA5によって電磁鋼板ESが所定の打抜形状に沿って半抜き加工され、2つの加工部ES5が電磁鋼板ESに形成される(図7の位置S9参照)。2つの加工部ES5の一方は、第1列において形成され、回転子積層鉄心1Aにおけるカシメ部のカシメ22に対応する。2つの加工部ES5の他方は、第2列において形成され、回転子積層鉄心1Bにおけるカシメ部のカシメ22に対応する。
【0080】
続いて、電磁鋼板ESが送出装置120によって送り出され、可動部160が昇降すると、2つのパンチA6によって電磁鋼板ESが所定の打ち抜き形状に沿って打ち抜かれ、2つの打抜部ES6が形成される(図7の位置S11参照)。2つの打抜部ES6の一方は、第1列において形成され、回転子積層鉄心1Aにおける打抜部材Wに対応する。第1列に形成された打抜部ES6は、回転子積層鉄心1Aの打抜部材Wを構成する打抜部材WU(第1打抜部材)及び打抜部材WN(第2打抜部材)のいずれか一方に対応する。2つの打抜部ES6の他方は、第2列において形成され、回転子積層鉄心1Bにおける打抜部材Wに対応する。第2列に形成された打抜部ES6は、回転子積層鉄心1Bの打抜部材Wを構成する打抜部材WU(第3打抜部材)及び打抜部材WN(第4打抜部材)のいずれか一方に対応する。
【0081】
回転子積層鉄心1Aの打抜部材WUと打抜部材WNとが1つの排出孔C6内において積層されることで、第1列に形成された打抜部ES4により回転子積層鉄心1Aにおける識別孔20aが構成され、第1列に形成された打抜部ES4により回転子積層鉄心1Aにおける識別孔20bが構成される。回転子積層鉄心1Bの打抜部材WUと打抜部材WNとが他の排出孔C6内において積層されることで、第2列に形成された打抜部ES4により回転子積層鉄心1Bにおける識別孔20aが構成され、第2列に形成された打抜部ES4により回転子積層鉄心1Bにおける識別孔20bが構成される。その後、磁石の挿入及び樹脂の充填等が行われ、回転子積層鉄心1A,1Bがそれぞれ形成される。
【0082】
この製造方法においても、識別孔20aの空間形状と識別孔20bの空間形状とが互いに異なるので、加工部がいずれの加工工具で加工されたのかを特定することが可能となる。また、回転子積層鉄心1Bの識別孔20bの空間形状が、他の識別孔の空間形状と異なっているので、回転子積層鉄心1A,1Bがどの列にて打ち抜かれた打抜部材Wにより構成されているかを特定することが可能となる。なお、列の識別が不要な場合には、回転子積層鉄心1A,1Bの識別孔20aの空間形状が略同一であり、回転子積層鉄心1A,1Bの識別孔20bの空間形状が略同一であってもよい。
【0083】
(6)2列取りの場合、回転子積層鉄心1Aが一つの識別孔を備えており、回転子積層鉄心1Bが一つの識別孔を備えており、これらの識別孔の空間形状が互いに異なっていてもよい。この場合、回転子積層鉄心1A,1Bがどの列にて打ち抜かれた打抜部材Wにより構成されているかを特定することが可能となる。
【0084】
(7)幅方向においてピッチがずれた複数(3つ以上)の列ごとに電磁鋼板ESから打抜部材Wを打ち抜いて、各列ごとに打抜部材Wを積層してもよい。
【0085】
(8)回転子積層鉄心1に代えて、固定子を構成する固定子積層鉄心(積層鉄心)に本技術が適用されてもよい。
【0086】
(9)一つの磁石挿入孔内に複数の永久磁石12が挿入されていてもよい。この場合、複数の永久磁石12は、積層体10の高さ方向において隣り合うように並ぶ第1の磁石組を含んでいてもよいし、中心軸Axから見て(平面視で)磁石挿入孔の長辺又は短辺に沿って隣り合うように並ぶ第2の磁石組を含んでいてもよいし、第1及び第2の磁石組の双方を含んでいてもよい。
【0087】
[他の例]
例1.積層鉄心(1)は、複数の打抜部材(W)が積層されることで構成され、第1端面(10a)及び第2端面(10b)を有する積層体(10)と、積層体(10)に形成され、第1端面(10a)に開口する第1識別孔(20a)と、積層体(10)に形成され、第1端面(10a)に開口する第2識別孔(20b)とを備える。第1識別孔(20a)の空間形状は第2識別孔(20b)の空間形状とは異なる。この構成では、積層鉄心の形状が、積層体の中心軸に関して回転対称ではないので、第1識別孔(第2識別孔)に対する加工部の位置(例えば、中心軸に対する第1識別孔の角度を0°と定めたときの、中心軸周りにおける他の加工部の角度)が一意に定まる。これにより、打抜部材に含まれる加工部と加工工具との対応関係を把握することができる。つまり、加工部がいずれの加工工具で加工されたのかを特定することが可能となる。
【0088】
例2.例1の積層鉄心(1)において、第1識別孔(20a)及び第2識別孔(20b)の双方は、複数の打抜部材(W)のうちの第1端面(10a)を構成する打抜部材(WU)を貫通している。この場合、複数の打抜部材のうちの少なくとも第1端面を構成する打抜部材に貫通孔を設ければ第1識別孔及び第2識別孔が構成されるので、第1識別孔及び第2識別孔の形成が容易である。
【0089】
例3.例1又は例2の積層鉄心(1)において、第1識別孔(20a)及び第2識別孔(20b)は、深さ、第1端面(10a)における大きさ、及び第1端面(10a)における形状の少なくとも一つが互いに異なるように形成されている。この場合、第1識別孔の空間形状と第2識別孔の空間形状とが互いに異なるので、加工部がいずれの加工工具で加工されたのかを特定することが可能となる。
【0090】
例4.例1〜例3のいずれかの積層鉄心(1)において、第1識別孔(20a)及び第2識別孔(20b)は、積層体(10)の中心軸(Ax)を間に置いて配置されている。この場合、第1識別孔及び第2識別孔が一直線上に並ぶので、第1識別孔の存在により積層体から除去された領域の重量と、第2識別孔の存在により積層体から除去された領域の重量とのバランスをとることができる。そのため、積層鉄心に重量バランスの偏り(重量アンバランス)が生じ難くなる。したがって、積層鉄心の回転時における異常振動、ノイズ等を抑制することが可能となる。
【0091】
例5.例4の積層鉄心(1)において、第1識別孔(20a)及び第2識別孔(20b)は、容積が互いに略一致するように形成されている。この場合、積層鉄心の重量アンバランスがいっそう生じ難くなる。したがって、積層鉄心の回転時における異常振動、ノイズ等をさらに抑制することが可能となる。
【0092】
例6.積層鉄心(1)の製造方法は、金属板(ES)に第1加工孔(ES4)及び第2加工孔(ES4)を形成することと、金属板(ES)を打ち抜いて、第1加工孔(ES4)及び第2加工孔(ES4)が設けられた少なくとも1つの第1打抜部材(WU)を形成することと、金属板(ES)を打ち抜いて、第1加工孔(ES4)及び第2加工孔(ES4)が設けられていない少なくとも1つの第2打抜部材(WN)を形成することと、少なくとも1つの第1打抜部材(WU)及び少なくとも1つの第2打抜部材(WN)を積層して、第1加工孔(ES4)で構成された第1識別孔(20a)と、第2加工孔(ES4)で構成された第2識別孔(20b)であって、空間形状が第1識別孔(20a)とは異なる第2識別孔(20b)とが一方の端面(10a)に設けられた積層体(10)を形成することとを含む。この製造方法においても、第1識別孔の空間形状と第2識別孔の空間形状とが互いに異なるので、加工部がいずれの加工工具で加工されたのかを特定することが可能となる。
【0093】
例7.積層鉄心(1)の製造方法は、金属板(ES)の第1列に第1加工孔(ES4)及び第2加工孔(ES4)を形成することと、金属板(ES)の第1列とは幅方向でピッチをずらした第2列に第3加工孔(ES4)及び第4加工孔(ES4)を形成することと、第1列において金属板(ES)を打ち抜いて、第1加工孔(ES4)及び第2加工孔(ES4)が設けられた少なくとも1つの第1打抜部材(WU)を形成することと、第1列において金属板(ES)を打ち抜いて、第1加工孔(ES4)及び第2加工孔(ES4)が設けられていない少なくとも1つの第2打抜部材(WN)を形成することと、第2列において第3加工孔(ES4)及び第4加工孔(ES4)が設けられた少なくとも1つの第3打抜部材(WU)を形成することと、第2列において第3加工孔(ES4)及び第4加工孔(ES4)が設けられていない少なくとも1つの第4打抜部材(WN)を形成することと、少なくとも1つの第1打抜部材(WU)及び少なくとも1つの第2打抜部材(WN)を積層して、第1加工孔(ES4)で構成された第1識別孔(20a)と、第2加工孔(ES4)で構成された第2識別孔(20b)であって、空間形状が第1識別孔(20a)とは異なる第2識別孔(20b)とが一方の端面(10a)に設けられた第1積層体(10)を形成することと、少なくとも1つの第3打抜部材(WU)及び少なくとも1つの第4打抜部材(WN)を積層して、第3加工孔(ES4)で構成された第3識別孔(20a)と、第4加工孔(ES4)で構成された第4識別孔(20b)であって、空間形状が第1識別孔(20a)、第2識別孔(20b)及び第3識別孔(20a)のいずれとも異なる第4識別孔(20b)とが一方の端面(10a)に設けられた第2積層体(10)を形成することとを含む。この製造方法においても、第1識別孔の空間形状と第2識別孔の空間形状とが互いに異なるので、加工部がいずれの加工工具で加工されたのかを特定することが可能となる。また、第2積層体に形成された第4識別孔の空間形状が、他の識別孔の空間形状と異なっているので、第1積層体及び第2積層体がどの列にて打ち抜かれた打抜部材により構成されているかを特定することが可能となる。
【0094】
例8.積層鉄心(1)の製造方法は、金属板(ES)の第1列に第1加工孔(ES4)を形成することと、金属板(ES)の第1列とは幅方向でピッチをずらした第2列に第2加工孔(ES4)を形成することと、第1列において金属板(ES)を打ち抜いて、第1加工孔(ES4)が設けられた少なくとも1つの第1打抜部材(WU)を形成することと、第1列において金属板(ES)を打ち抜いて、第1加工孔(ES4)が設けられていない少なくとも1つの第2打抜部材(WN)を形成することと、第2列において金属板(ES)を打ち抜いて、第2加工孔(ES4)が設けられた少なくとも1つの第3打抜部材(WU)を形成することと、第2列において金属板(ES)を打ち抜いて、第2加工孔(ES4)が設けられていない少なくとも1つの第4打抜部材(WN)を形成することと、少なくとも1つの第1打抜部材(WU)及び少なくとも1つの第2打抜部材(WN)を積層して、第1加工孔(ES4)で構成された第1識別孔(20b)が一方の端面(10a)に設けられた第1積層体(10)を形成することと、少なくとも1つの第3打抜部材(WU)及び少なくとも1つの第4打抜部材(WN)を積層して、第2加工孔(ES4)で構成された第2識別孔(20b)であって、空間形状が第1識別孔(20b)とは異なる第2識別孔(20b)が一方の端面(10a)に設けられた第2積層体(10)を形成することとを含む。この製造方法では、第1積層体に形成された第1識別孔の空間形状が、第2積層体に形成された第2識別孔の空間形状と異なっているので、第1積層体及び第2積層体がどの列にて打ち抜かれた打抜部材により構成されているかを特定することが可能となる。
【符号の説明】
【0095】
1…回転子積層鉄心(積層鉄心)、10…積層体、10a,10b…端面、20a…識別孔(第1識別孔)、20b…識別孔(第2識別孔)、W…打抜部材、Ax…中心軸、ES4…打抜部(第1加工孔)、ES4…打抜部(第2加工孔)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7