【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)発行物名:日本農芸化学会2018年度大会講演要旨集(オンライン)、掲載ウェブサイトのアドレス:https://jsbba.bioweb.ne.jp/jsbba2018/download_pdf.php?p_code=3A11p09、掲載年月日:平成30年3月5日 (2)集会名:日本農芸化学会2018年度大会、開催場所:名城大学(名古屋市天白区塩釜口1−501)、第3日(3月17日)講演会場、開催日:平成30年3月17日 (3)掲載ウェブサイトのアドレス:https://www.ij2018.jp/exhibitor/jss20180260.html、掲載年月日:平成30年7月24日 (4)集会名:イノベーション・ジャパン2018、開催場所:東京ビックサイト(東京都江東区有明3−11−1)、西展示棟・西1ホール、開催日:平成30年8月30日
【解決手段】2種類以上の炭化水素分解菌を含む炭化水素処理剤であって、前記炭化水素分解菌は、下記(a)〜(d)のいずれか2つ以上を含む、炭化水素処理剤:(a)ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)PR4株及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1株;(b)ロドコッカス・エスピー(Rhodococcus sp.)MSZ1株及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1株;(c)ゴルドニア・エスピー(Gordonia sp.)MSZ6株及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1株;並びに(d)ロドコッカス・エスピー(Rhodococcus sp.)MSZ9株及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1株。
2種類以上の炭化水素分解菌と、前記炭化水素分解菌が生育可能な培地と、有機溶媒と、を含む組成物を、超音波処理することにより、エマルションを形成させることを特徴とする、炭化水素処理剤の製造方法であって、
前記炭化水素分解菌が、下記(a)〜(d)のいずれか2つ以上を含む、炭化水素処理剤の製造方法:
(a)ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)PR4株(NBRC100887)及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1株;
(b)ロドコッカス・エスピー(Rhodococcus sp.)MSZ1株(NITE P−02824)及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1株;
(c)ゴルドニア・エスピー(Gordonia sp.)MSZ6株(NITE P−02825)及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1株;並びに
(d)ロドコッカス・エスピー(Rhodococcus sp.)MSZ9株(NITE P−02826)及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1株。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[炭化水素処理剤]
1実施形態において、本発明は、2種類以上の炭化水素分解菌を含む炭化水素処理剤を提供する。前記炭化水素分解菌は、下記(a)〜(d)のいずれか2つ以上を含む:
(a)ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)PR4株(NBRC100887)及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1株;
(b)ロドコッカス・エスピー(Rhodococcus sp.)MSZ1株(NITE P−02824)及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1株;
(c)ゴルドニア・エスピー(Gordonia sp.)MSZ6株(NITE P−02825)及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1株;並びに
(d)ロドコッカス・エスピー(Rhodococcus sp.)MSZ9株(NITE P−02826)及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1株。
【0014】
<炭化水素分解菌>
本明細書において、「炭化水素分解菌」とは、炭化水素を分解する能力を有する微生物を意味する。炭化水素の分解様式は、特に限定されず、炭化水素資化性を有していなくてもよい。炭化水素分解菌は、細菌であっても、菌類であってもよいが、細菌が好ましい。
本実施形態の炭化水素処理剤は、前記(a)〜(d)のいずれか2つ以上の組み合わせの炭化水素分解菌を含む。
【0015】
≪(a)〜(d)の炭化水素分解菌≫
ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)PR4株(NBRC100887)は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)のNITE Biological Resource Centerから、NBRC100887のNBRC番号にて入手可能である。以下、本株を「PR4株」という。
ロドコッカス・エスピー(Rhodococcus sp.)MSZ1株は、2018年11月19日付で、受託番号NITE P−02824として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託されている。以下、本株を「MSZ1株」という。
ゴルドニア・エスピー(Gordonia sp.)MSZ6株は、2018年11月19日付で、受託番号NITE P−02825として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託されている。以下、本株を「MSZ6株」という。
ロドコッカス・エスピー(Rhodococcus sp.)MSZ9株は、2018年11月19日付で、受託番号NITE P−02826として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託されている。以下、本株を「MSZ9株」という。
【0016】
後述する実施例で示すように、上記4株は、いずれもヘキサデカン等の難揮発性有機溶媒に対する耐性能を有する。
上記4株は、有機溶媒/水性溶媒の2相培養系において、有機溶媒に対して吸着型の局在性又は転移型の局在性を示す。ここで、有機溶媒に対する「吸着型の局在性」とは、細菌細胞が、主に親油性溶媒と水相との界面に存在することを意味する。有機溶媒に対する「転移型の局在性」とは、細菌細胞が、主に親油性溶媒内に存在することを意味する。
より具体的には、PR4株は、有機溶媒/水性溶媒の培養系において、有機溶媒に対して転移型の局在性を示す。MSZ1株は、有機溶媒/水性溶媒の2相培養系において、2相培養系に対して転移型の局在性を示す。MSZ6株は、有機溶媒/水性溶媒の2相培養系において、有機溶媒に対して転移型の局在性を示す。MSZ9株は、有機溶媒/水性溶媒の2相培養系において、有機溶媒に対して吸着型の局在性を示す。
【0017】
上記4株は、風化原油(weathered crude oil;以下、「w−oil」という。)/水性溶媒の培養系において、w−oilに対して吸着型の局在性又は転移型の局在性を示す。より具体的には、PR4株は、w−oil/水性溶媒の培養系において、w−oilに対して転移型の局在性を示す。MSZ1株は、w−oil/水性溶媒の2相培養系において、w−oilに対して転移型の局在性を示す。MSZ6株は、w−oil/水性溶媒の2相培養系において、w−oilに対して転移型の局在性を示す。MSZ9株は、w−oil/水性溶媒の2相培養系において、w−oilに対して吸着型の局在性を示す。
【0018】
さらに、上記4株は、有機溶媒/水性溶媒の2相系からなる水中油型エマルションにおいて、油滴粒子に対して吸着型の局在性又は転移型の局在性を示す。ここで、油滴粒子に対する「吸着型の局在性」とは、細菌細胞が、主に油滴粒子の表面(油滴粒子と水相との界面)に存在することを意味する。油滴粒子に対する「転移型の局在性」とは、細菌細胞が、主に油滴粒子内に存在することを意味する。
より具体的には、PR4株は、有機溶媒/水性溶媒の2相系からなる水中油型エマルションにおいて、油滴粒子に対して転移型の局在性を示す。MSZ1株は、有機溶媒/水性溶媒の2相系からなる水中油型エマルションにおいて、油滴粒子に対して転移型の局在性を示す。MSZ6株は、有機溶媒/水性溶媒の2相系からなる水中油型エマルションにおいて、油滴粒子に対して転移型の局在性を示す。MSZ9株は、有機溶媒/水性溶媒の2相系からなる水中油型エマルションにおいて、油滴粒子に対して吸着型の局在性を示す。
【0019】
また、上記4株は、水性溶媒/有機溶媒の2相系からなる油中水型エマルションにおいて、油相に対して吸着型の局在性又は転移型の局在性を示す。ここで、油相に対する「吸着型の局在性」とは、細菌細胞が、主に油相と水滴粒子との界面に存在することを意味する。油相に対する「転移型の局在性」とは、細菌細胞が、主に油相内に存在することを意味する。
より具体的には、PR4株は、水性溶媒/有機溶媒の2相系からなる油中水型エマルションにおいて、油相に対して転移型の局在性を示す。MSZ1株は、水性溶媒/有機溶媒の2相系からなる油中水型エマルションにおいて、油相に対して転移型の局在性を示す。MSZ6株は、水性溶媒/有機溶媒の2相系からなる油中水型エマルションにおいて、油相に対して転移型の局在性を示す。MSZ9株は、水性溶媒/有機溶媒の2相系からなる油中水型エマルションにおいて、油相に対して吸着型の局在性を示す。
【0020】
本実施形態の炭化水素処理剤が含む炭化水素分解菌は、上記4株の変異株であってもよい。ここで「変異株」とは、自然発生的又は人為的に、元の菌株の遺伝子に変異が生じた菌株を意味する。遺伝子変異を生じさせる人為的手法は、特に限定されず、紫外線照射、放射線照射、亜硝酸などによる化学的処理、遺伝子導入などの遺伝子工学的手法等を例示することができる。上記4株の変異株は、元の菌株の遺伝子に変異が生じた菌株であって、元の菌株の炭化水素分解能及び局在性を維持した菌株であることが好ましい。
上記4株の変異株の好適な例としては、サイレント変異が生じた上記4株のいずれかの変異株;外来遺伝子が導入された上記4株のいずれかの変異株;炭化水素分解能及び局在性に関与しない遺伝子に変異が生じた上記4株のいずれかの変異株;炭化水素分解能及び局在性が増強された上記4株のいずれかの変異株;等が挙げられる。変異株と元の菌株との間のゲノムの配列同一性(相同性)は、97%以上であることが好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましく、99.5%以上がさらに好ましく。99.9%以上が特に好ましい。
【0021】
上記4株は、一般的な好気性従属栄養細菌用の培地で培養することができる。培地は、固体培地であってもよく、液体培地であってもよい。培地は、炭素源、窒素源、及び無機塩類等の細菌の生存に必要な成分を含む公知の培地を用いることができる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストラン、スターチ、牛肉エキス、ピルビン酸、酢酸等が挙げられる。窒素源としては、アンモニウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、ペプトン、カゼイン、カザミノ酸、尿素、酵母エキス等が挙げられる。無機塩類としては、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、モリブデンナトリウムなどのナトリウム塩;リン酸カリウム、塩化カリウムなどのカリウム塩;塩化カルシウム、リン酸カルシウムなどのカルシウム塩;塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどのマグネシウム塩;塩化鉄などの遷移金属塩;等が挙げられる。
培地の具体例としては、例えば、IB2液体培地、IB培地(特許第4877900号公報参照)、YG液体培地、LB培地、マリンブロス、ニュートリエントブロス、トリプトソイブロス等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、上記4菌株の培養用培地としては、IB2液体培地及びIB培地を好適に用いることができる。
【0022】
上記4株の培養用培地は、炭素源として、炭化水素を含んでいてもよい。炭化水素は、上記のような炭素源の替わりに用いてもよく、上記のような炭素源と併用してもよい。炭素源として用いる炭化水素は、特に限定されないが、アルカンが好ましい。アルカンは、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状であってもよい。アルカンとしては、炭素数10〜19が好ましく、炭素数12〜19がより好ましく、炭素数13〜19がさらに好ましい。
【0023】
上記4株は、一般的な好気性従属栄養細菌の培養に用いられる培養条件で培養することができある。例えば、pH条件としては、pH6.0〜8.0が挙げられ、pH7〜7.5が好ましい。温度条件としては、15〜35℃が挙げられ、20〜30℃が好ましく、25〜30℃がより好ましい。上記4株を液体培地で培養する場合、静置培養でも振盪培養でもよいが、増殖効率の観点から振盪培養が好ましい。また、通気攪拌培養してもよい。
【0024】
本実施形態の炭化水素処理剤に含まれる炭化水素分解菌は、下記(a)〜(d)のいずれか2つ以上の組み合わせを含む:
(a)PR4株及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1株;
(b)MSZ1株及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1株;
(c)MSZ6株及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1株;並びに
(d)MSZ9株及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1株。
【0025】
炭化水素分解菌は、(a)〜(d)のいずれか3つ以上の組み合わせを含むことが好ましく、(a)〜(d)の4つ全てを含むことがより好ましい。
(a)は、RP4株及びその変異株のいずれであってもよく、両方を併用してもよい。RP4株の変異株は、1株であってもよく、2株以上を併用してもよい。同様に、(b)は、MSZ1株及びその変異株のいずれであってもよく、両方を併用してもよい。MSZ1株の変異株は、1株であってもよく、2株以上を併用してもよい。同様に、(c)は、MSZ6株及びその変異株のいずれであってもよく、両方を併用してもよい。MSZ6株の変異株は、1株であってもよく、2株以上を併用してもよい。同様に、(d)は、MSZ9株及びその変異株のいずれであってもよく、両方を併用してもよい。MSZ9株の変異株は、1株であってもよく、2株以上を併用してもよい。
【0026】
(a)〜(d)の炭化水素分解菌の混合割合は、特に限定されず、任意の割合とすることができる。例えば、(a)〜(d)から選択される2種類以上の炭化水素分解菌の細胞数は相互に同程度であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
【0027】
≪他の炭化水素分解菌≫
本実施形態の炭化水素処理剤は、上記(a)〜(d)の炭化水素分解菌に加えて、他の炭化水素分解菌を含んでいてもよい。他の炭化水素分解菌は、特に限定されず、炭化水素分解能を有することが確認されている、公知の炭化水素分解菌を用いることができる。他の炭化水素分解菌としては、例えば、特開2017−201962号公報に記載のロドコッカス属に属する細菌等が挙げられるが、これらに限定されない。
他の炭化水素分解菌は、1株であってもよく、2株以上を併用してもよい。
【0028】
<他の成分>
本実施形態の炭化水素処理剤は、炭化水素分解菌に加えて、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、有機溶媒、及び水性溶媒等が挙げられる。
【0029】
≪有機溶媒≫
本明細書において、「有機溶媒」とは、有機化合物からなる液体を意味する。本実施形態の炭化水素処理剤に用いる有機溶媒は、特別な限定はなく、常温及び常圧下で液体であるものが好ましい。本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15〜35℃の温度等が挙げられる。本明細書において、「常圧」とは、特別に減圧も加圧もしないときの圧力、すなわち大気圧に等しい圧力を意味し、例えば、1気圧(1atm、101,325Pa)程度等が挙げられる。
【0030】
有機溶媒は、炭化水素系溶媒であることが好ましく、脂肪族炭化水素であることがより好ましい。脂肪族炭化水素は、飽和であってもよく、不飽和であってもよいが、飽和脂肪族炭化水素が好ましい。飽和脂肪族炭化水素は、鎖状アルカンであってもよく、環状アルカン(シクロアルカン)であってもよい。鎖状アルカンは、直鎖状アルカンであってもよく、分岐鎖状アルカンであってもよい。本明細書において、「アルカン」は、鎖状アルカン及び環状アルカンを包含する。アルカンは、炭素数12以上のアルカンが好ましく、炭素数13以上のアルカンがより好ましい。中でも、炭素数12〜19のアルカンが好ましく、炭素数13〜19のアルカンがより好ましく、炭素数13〜16のアルカンがさらに好ましい。上記(a)〜(d)の菌株は、炭素数が前記範囲内であるアルカンに対して、良好な局在性(転移型又は吸着型)を示す。
【0031】
直鎖状のアルカンとしては、例えば、n−デカン(C12)、n−トリデカン(C13)、n−テトラデカン(C14)、n−ペンタデカン(C15)、n−ヘキサデカン(C16)、n−オクタデカン(n18)等が挙げられる。
【0032】
分岐鎖状のアルカンとしては、例えば、2,2,7−トリメチルデカン(C13)、2,6,8−トリメチルデカン(C13)、2,4,6−トリメチルデカン(C13)、3,5−ジメチルウンデカン(C13)、4,7−ジメチルウンデカン(C13)、2,5,5−トリメチルデカン(C13)、5,7−ジメチルウンデカン(C13)、2,8−ジメチルウンデカン(C13)、4,8−ジメチルウンデカン(C13)、2,3−ジメチルウンデカン(C13)、2,2,9−トリメチルデカン(C13)、5−メチル−5−プロピルノナン(C13)、2,5,6−トリメチルデカン(C13)、[R,(−)] −3−メチルドデカン(C13)、3,3,5−トリメチルデカン(C13)、3,3−ジエチル−4,5,5−トリメチルオクタン(C13)、4,4−ジプロピルヘプタン(C13)、2,2,3,3−テトラメチルノナン(C13)、2,4−ジメチル−3,3−ジイソプロピルペンタン(C13)、2−メチルトリデカン(C14)、7−メチルトリデカン(C14)、3,8−ジエチルデカン(C14)、(6R,7S)−6,7−ジメチルドデカン(C14)、3,3,4,4−テトラエチルヘキサン(C14)、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタメチルヘキサン(C14)、5−ブチルデカン(C14)、2,5−ジメチル−3,4−ジイソプロピルヘキサン(C14)、2,2,3,3,5,6,6−ヘプタメチルヘプタン(C14)、3−tert−ブチル−2,2,5,5−テトラメチルヘキサン(C14)、4−メチルテトラデカン(C15)、2,7,10−トリメチルドデカン(C15)、7−メチルテトラデカン(C15)、6−プロピルドデカン(C15)、ファルネサン(C15)、[R,(−)]−3−メチルテトラデカン(C15)、2,6−ジメチル−3,5−ジイソプロピルヘプタン(C15)、5−ブチルウンデカン(C15)、5−ペンチルデカン(C15)、(R)−5−エチル−5−プロピルウンデカン(C16)、2,2,4,4,5,5,7,7−オクタメチルオクタン(C16)、3,5,9−トリメチルトリデカン(C16)、7−プロピルトリデカン(C16)、5,8−ジエチルドデカン(C16)、4−メチルペンタデカン(C16)、3,3,6,6−テトラエチルオクタン(C16)、2,4,6−トリメチルトリデカン(C16)、3−メチルペンタデカン(C16)、6−ペンチルウンデカン(C16)、4,6−ジエチルドデカン(C16)、2,2,4,4,6,6,7−ヘプタメチルノナン(C16)、2,2,4,4,6,8,8−ヘプタメチルノナン(C16)、2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン(C19;プリスタン)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
環状アルカン(シクロアルカン)としては、例えば、シクロトリデカン(C13)、シクロテトラデカン(C14)、1,1,3,5−テトラメチルシクロヘキサン(C14)、3−シクロヘキシル−4−メチルヘプタン(C14)、シクロペンタデカン(C15)、シクロヘキサデカン(C16)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
有機溶媒としてのアルカンは、1個以上の水素原子が、ハロゲン原子又は水酸基で置換されていてもよい。前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0035】
これらの中でも、有機溶媒としては、n−トリデカン(n13)、n−テトラデカン(C14)、n−ペンタデカン(C15)、又はn−ヘキサデカン(n16)がより好ましく、n−ペンタデカン(C16)がさらに好ましい。
【0036】
有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機溶媒は、有機溶媒の全量を基準として、炭素数13〜16のアルカンを20%(v/v)以上含むことが好ましく、40%(v/v)以上含むことがより好ましく、60%(v/v)以上含むことがさらに好ましい。
【0037】
本実施形態の炭化水素処理剤に含まれる有機溶媒は、前記(a)〜(d)の炭素水素分解菌により分解されるため、本実施形態の炭化水素処理剤を環境中で用いた場合でも、有機溶媒が環境中に残留することはない。
【0038】
≪水性溶媒≫
本明細書において、「水性溶媒」とは、水又は水溶液を意味する。水性溶媒の例としては、細菌培養用の液体培地が挙げられる。前記培地として、好気性従属栄養細菌を培養するために一般的に用いられる培地を用いることができる。あるいは、好気性従属栄養細菌の一般的な培地から、炭素源を除去したものを用いてもよい。培地としては、例えば、IB2液体培地、IB液体培地、YG液体培地、LB培地、マリンブロス、ニュートリエントブロス、トリプトソイブロス、MM培地、NP培地(特開2017−201962号公報参照)等が挙げられる。中でも、培地としては、IB2液体培地、IB液体培地、MM培地、又はNP培地が好ましく、IB2液体培地又はMM培地がより好ましい。
【0039】
<エマルション組成物>
本実施形態の炭化水素処理剤は、エマルション組成物であることが好ましい。「エマルション組成物」とは、水中油型エマルション組成物又は油中水型エマルション組成物のいずれかを意味する。「水中油型エマルション組成物」とは、水相中に油滴が分散しているエマルションを含む組成物を意味する。「油中水型エマルション組成物」とは、油相中に水滴が分散しているエマルションを含む組成物を意味する。本実施形態の炭化水素処理剤は、水性溶媒中に、有機溶媒の油滴粒子が分散している水中油型エマルション組成物であることが好ましい。上記(a)〜(d)の炭化水素分解菌は、有機溶媒に対して吸着型又は転移型の局在性を示すため、エマルション組成物においては、主に、油相中、及び油相と水相との界面に存在している。上記(a)〜(d)の炭化水素分解菌は、水中油型エマルションにおいては、主に、有機溶媒の油滴粒子の表面又は内部に存在している。
【0040】
本実施形態の炭化水素処理剤が水中油型エマルション組成物である場合、油滴粒子の平均粒径は、1〜100μmが好ましく、1〜50μmがより好ましく、5〜30μmがさらに好ましい。油滴粒子の平均粒径が前記範囲内であることにより、油滴粒子の内部に適度な数の炭化水素分解菌を内包させることができるとともに、油滴を安定して分散させることができる。
油滴粒子内に存在する炭化水素分解菌の数は、平均で1個以上であることが好ましい。油滴粒子内の炭化水素分解菌は、通常、1〜10個であり、2〜8個、3〜6個、又は4〜5個等である。
【0041】
本実施形態の炭化水素処理剤が、水中油型エマルション組成物である場合、水性溶媒と有機溶媒との比(体積比)は、水性溶媒:有機溶媒=1:1〜1:20が好ましく、1:5〜1:15がより好ましく、1:8〜1:12がさらに好ましい。
本実施形態の炭化水素処理剤が、水中油型エマルション組成物である場合、炭化水素分解菌の濃度は、特に限定されないが、例えば、炭化水素分解菌の全てを合わせた濃度として、10
4〜10
8cells/mLが好ましく、10
5〜10
7cells/mLがより好ましい。
【0042】
本実施形態の炭化水素処理剤は、前記(a)〜(d)のいずれか2つ以上の炭化水素分解菌に、適宜他の炭化水素分解菌及び他の成分を添加して、混合することにより、製造することができる。本実施形態の炭化水素処理剤が水中油型エマルション組成物である場合の製造方法は、後述の「[炭化水素処理剤の製造方法]」に詳述する。
【0043】
本実施形態の炭化水素処理剤は、炭化水素に対して転移型又は吸着型の局在性を示す炭化水素分解菌を2種類以上含んでいるため、迅速に炭化水素を分解することができる。また、界面活性剤等を含まないため、環境中で用いられた場合であっても、炭化水素処理剤自体による環境負荷を低減することができる。そのため、石油汚染の浄化や炭化水素含有水の処理等に好適に利用することができる。
【0044】
また、本実施形態の炭化水素処理剤を水中油型エマルション組成物とした場合、予め、炭化水素分解菌を有機溶媒の微粒子の内部又は表面に局在化させることができるため、処理対象の炭化水素と接触させた場合に、炭化水素分解菌と炭化水素との接触面積が大きくなる。そのため、炭化水素の分解効率をより向上させることができる。
【0045】
[炭化水素処理剤の製造方法]
1実施形態において、本発明は、2種類以上の炭化水素分解菌と、前記炭化水素分解菌が生育可能な培地と、有機溶媒と、を含む組成物を、超音波処理することにより、エマルションを形成させることを特徴とする、炭化水素処理剤の製造方法を提供する。
前記炭化水素分解菌は、下記(a)〜(d)のいずれか2つ以上を含む:
(a)PR4株及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1種;
(b)MSZ1株及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1種;
(c)MSZ6株及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1種;並びに
(d)MSZ9株及びその変異株からなる群より選択される少なくとも1種。
【0046】
本実施形態の製造方法では、まず、前記(a)〜(d)のいずれか2つ以上の炭化水素分解菌と、有機溶媒と、水性溶媒と、を含む組成物を準備する。(a)〜(d)の炭化水素分解菌は、上述の「[炭化水素処理剤]」で説明したものと同様である。炭化水素分解菌は、前記(a)〜(d)の全てを含んでいてもよく、(a)〜(d)以外の炭化水素分解菌を含んでいてもよい。好ましくは、炭化水素分解菌は、前記(a)〜(d)の全てを含む。
有機溶媒、及び水性溶媒は、上述の「[炭化水素処理剤]」で挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0047】
本実施形態の製造方法において形成させるエマルションは、水中油型エマルションであることが好ましい。水中油型エマルションを形成させる場合、前記組成物における水性溶媒と有機溶媒との比(体積比)は、水性溶媒:有機溶媒=1:1〜1:20が好ましく、1:5〜1:15がより好ましく、1:8〜1:12がさらに好ましい。水性溶媒と有機溶媒との比が前記好ましい範囲内であると、水中油型エマルションが形成しやすくなる。
前記組成物における炭化水素分解菌の濃度は、特に限定されないが、例えば、炭化水素分解菌の全てを合わせた濃度として、10
4〜10
8cells/mLが好ましく、10
5〜10
7cells/mLがより好ましい。
【0048】
次に、前記組成物を超音波処理することにより、エマルション、好ましくは水中油型エマルションを形成させる。超音波処理は、炭化水素分解菌の生存を阻害しない条件で行う。「炭化水素分解菌の生存を阻害しない条件」とは、超音波処理により、炭化水素分解菌の生細胞率又はコロニー形成率に顕著な影響を与えない条件を意味する。例えば、超音波処理後の生菌率が、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは80%以上であるような条件である。あるいは、超音波処理前のコロニー形成率に対する超音波処理後のコロニー形成率が、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、25%以上であることがさらに好ましい。
例えば、超音波処理における周波数としては、30〜50kHzが好ましく、35〜45kHzがより好ましく、38〜42kHzがさらに好ましく、40kHzが特に好ましい。超音波処理の時間としては、エマルション、好ましくは水中油型エマルションが形成されるのに十分な時間であればよく、例えば、5〜30分が好ましく、10〜20分がより好ましく、12〜27分がさらに好ましく、15分が特に好ましい。
【0049】
超音波処理は、前記組成物に対して直接的に行ってもよく、前記組成物を含む容器を介して間接的に行ってもよい。炭化水素分解菌に細胞に与えるダメージが少なくなることから、超音波処理は、前記組成物を含む容器を介して間接的に行うことが好ましい。
【0050】
超音波処理に用いる超音波発生装置としては、特別な限定なく、市販のものを使用することができる。超音波発生装置としては、例えば、振動子が平板(振動板)に装着されている定在波型(洗浄器型)超音波発生装置、振動子の先端に円筒状のホーンが装着されているホーン型(ホモジナイザー型)超音波発生装置等が挙げられる。炭化水素分解菌に細胞に与えるダメージが少なくなることから、定在波型(洗浄器型)超音波発生装置を用いることが好ましい。定在波型(洗浄器型)超音波発生装置としては、例えば、超音波洗浄機(アズワンUSD−4R)等が挙げられる。
【0051】
超音波処理の具体例としては、例えば、炭化水素分解菌10
7〜10
8cells/mLと、有機溶媒1mLと、水性溶媒10mLと、を含む組成物を試験管等の容器に入れ、超音波洗浄機(例、アズワンUSD−4R)の水槽中の水(例えば、4L)に前記容器を浸漬し、常温及び常圧下において、40kHzで15分間処理を行うこと等が挙げられる。このとき、容器中の組成物の液面が、超音波洗浄機の水面よりも1.5cm〜2.0cm程度下であることが好ましい。
【0052】
超音波処理により作製されたエマルション、好ましくは水中油型エマルションにおける炭化水素分解菌の局在性は、例えば、位相差顕微鏡等を用いて確認することができる。また、有機溶媒の油滴の平均粒径は、例えば、位相差顕微鏡等を用いて目視で計測する方法、又はレーザー回折式粒度分布測定装置等を用いて計測する方法等で確認することができる。
【0053】
本実施形態の製造方法によれば、簡易な方法で、エマルション、好ましくは水中油型エマルションである炭化水素処理剤を製造することができ、炭化水素分解菌を有機溶媒の微粒子の内部又は表面に局在化させることができる。また、界面活性剤や乳化剤等を用いることなく、エマルションを形成できる。そのため、炭化水素の分解効率が高く、且つ環境負荷の低い炭化水素処理剤を得ることができる。
【0054】
[炭化水素の処理方法]
1実施形態において、本発明は、上記実施形態の炭化水素処理剤を用いることを特徴とする、炭化水素の処理方法を提供する。
【0055】
本明細書において、「炭化水素の処理」とは、対象中の炭化水素を除去すること、又は炭化水素濃度を低減させることを意味する。本実施形態の処理方法では、上記実施形態の炭化水素処理剤を、炭化水素含有水、又は炭化水素含有土壌等の処理対象に投入すればよい。それにより、処理剤中の炭化水素分解菌により、処理対象中の炭化水素が分解され、処理耐対象中の炭化水素を除去することができる。
【0056】
<処理対象となる炭化水素>
処理対象となる炭化水素は、特別な限定はなく、前記炭化水素処理剤が含有する炭化水素分解菌が分解可能なものであればよい。前記処理対象となる炭化水素としては、例えば、脂肪族炭化水素が挙げられ、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルカンが好ましく例示される。より好ましくは、炭素数6以上の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルカン等が挙げられる。前記アルカンの炭素数の上限は、炭化水素分解菌が分解可能である限り特に制限されないが、例えば、炭素数50以下、炭素数40以下、炭素数35以下、炭素数33以下等が挙げられる。
【0057】
炭素数6以上の直鎖状のアルカンとしては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカン、n−テトラデカン(C14)、n−ペンタデカン(C15)、n−ヘキサデカン(C16)、n−ヘプタデカン(C17)、n−オクタデカン(C18)、n−ノナデカン(C19)、n−イコサン(C20)、n−ペンタコサン(C25)、n−トリアコンタン(C30)等が挙げられ、これらに限定されない。
【0058】
前記炭素数6以上の分岐鎖状のアルカンとしては、例えば、以下のようなもの等が挙げられ、これらに限定されない。
炭素数6:2−メチルペンタン、2,3−ジメチルブタン、3−メチルペンタン、3−メチルペンタン、ジメチルブタン、2,2‐ジメチルブタン
炭素数7:3−メチルヘキサン、3,3−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、2,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、2−メチルヘキサン、2,2−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン
炭素数8:(3R,4S)−3,4−ジメチルヘキサン、2,2,3,3−テトラメチルブタン、(S)−3−メチルヘプタン、3,4−ジメチルヘキサン、3−メチルヘプタン、3−エチルヘキサン、3−メチル−3−エチルペンタン、2−メチル−3−エチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、2−メチルヘプタン、4−メチルヘプタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,4−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン
炭素数9:2,2,4,4−テトラメチルペンタン、3−エチルヘプタン、3,3,4−トリメチルヘキサン、2,2−ジメチルヘプタン、2,4−ジメチルヘプタン、3−エチル−2,3−ジメチルペンタン、2,3,4−トリメチルヘキサン、2,2,3,4−テトラメチルペンタン、4−エチルヘプタン、3,5−ジメチルヘプタン
炭素数10:2,4−ジメチル−3−イソプロピルペンタン、2,3,5−トリメチルヘプタン、2,2−ジメチルオクタン、2,2,4,5−テトラメチルヘキサン、5−エチル−2−メチルヘプタン、2−メチル−3,3−ジエチルペンタン、2,3,3,5−テトラメチルヘキサン、2,2,5−トリメチルヘプタン、4−メチルノナン、2,4,5−トリメチルヘプタン、2,4,6−トリメチルヘプタン、3,4−ジエチルヘキサン
炭素数11:4−イソプロピルオクタン、3,6−ジメチルノナン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン、3,4−ジエチルヘプタン、2,6−ジメチルノナン、2,3,7−トリメチルオクタン、2,4,6−トリメチルオクタン、3,3,5,5−テトラメチルヘプタン、4−エチル−4−メチルオクタン、3,5−ジエチルヘプタン、2,3,6−トリメチルオクタン、2,2,6−トリメチルオクタン、2−メチルデカン、2,2,3,3,4,4−ヘキサメチルペンタン、3,3−ジエチルヘプタン、2,5,6−トリメチルオクタン
炭素数12:3,7−ジメチルデカン、5,6−ジメチルデカン、5−メチルウンデカン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン、4−エチルデカン、2,3,5−トリメチルノナン、2,9−ジメチルデカン、5−プロピルノナン、2−メチルウンデカン、3,4−ジメチルデカン、2,2,7,7−テトラメチルオクタン、2,4,5,7−テトラメチルオクタン、2,2−ジメチルデカン、2,2,4,4,6−ペンタメチルヘプタン、2,2−ジブチルブタン
炭素数13:2,2,7−トリメチルデカン、2,6,8−トリメチルデカン、2,4,6−トリメチルデカン、3,5−ジメチルウンデカン、4,7−ジメチルウンデカン、2,5,5−トリメチルデカン、5,7−ジメチルウンデカン、2,8−ジメチルウンデカン、4,8−ジメチルウンデカン、2,3−ジメチルウンデカン、2,2,9−トリメチルデカン、5−メチル−5−プロピルノナン、2,5,6−トリメチルデカン、[R,(−)] −3−メチルドデカン、3,3,5−トリメチルデカン、3,3−ジエチル−4,5,5−トリメチルオクタン、4,4−ジプロピルヘプタン、2,2,3,3−テトラメチルノナン、2,4−ジメチル−3,3−ジイソプロピルペンタン
炭素数14:2−メチルトリデカン、7−メチルトリデカン、3,8−ジエチルデカン、(6R,7S)−6,7−ジメチルドデカン、3,3,4,4−テトラエチルヘキサン、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタメチルヘキサン、5−ブチルデカン、2,5−ジメチル−3,4−ジイソプロピルヘキサン、2,2,3,3,5,6,6−ヘプタメチルヘプタン、3−tert−ブチル−2,2,5,5−テトラメチルヘキサン
炭素数15:4−メチルテトラデカン、2,7,10−トリメチルドデカン、7−メチルテトラデカン、6−プロピルドデカン、ファルネサン、[R,(−)]−3−メチルテトラデカン、2,6−ジメチル−3,5−ジイソプロピルヘプタン、5−ブチルウンデカン、5−ペンチルデカン
炭素数16:(R)−5−エチル−5−プロピルウンデカン、2,2,4,4,5,5,7,7−オクタメチルオクタン、3,5,9−トリメチルトリデカン、7−プロピルトリデカン、5,8−ジエチルドデカン、4−メチルペンタデカン、3,3,6,6−テトラエチルオクタン、2,4,6−トリメチルトリデカン、3−メチルペンタデカン、6−ペンチルウンデカン、4,6−ジエチルドデカン、2,2,4,4,6,6,7−ヘプタメチルノナン、2,2,4,4,6,8,8−ヘプタメチルノナン
炭素数17:4,6,8,10−テトラメチルトリデカン、5,9−ジメチルペンタデカン、2,5−ジメチルペンタデカン、(S)−3−メチルヘキサデカン、5,5−ジブチルノナン、4,4−ジプロピルウンデカン、6−ペンチルドデカン、2,6,10−トリメチルテトラデカン、2,2,4,4−テトラメチル−3,3−ジ−tert−ブチルペンタン、2−メチルヘキサデカン
炭素数18:2−メチルヘプタデカン、3−メチルヘプタデカン、2,3,4,5,6,7,8,9−オクタメチルデカン、7,9−ジメチルヘキサデカン、4,9−ジプロピルドデカン、2,2,5,5−テトラメチル−3,4−ジ−tert−ブチルヘキサン、4−メチルヘプタデカン、8−メチルヘプタデカン、2,2,4,9,11,11−ヘキサメチルドデカン、7−メチルヘプタデカン、4,5,6,7−テトラエチルデカン、7−ブチルテトラデカン
炭素数19:プリスタン、2,6−ジメチルヘプタデカン、3−メチルオクタデカン、3,3−ジメチルヘプタデカン、(7R,11S)−7,11−ジメチルヘプタデカン、5,9−ジメチルヘプタデカン、5−メチルオクタデカン、2,6,10,13−テトラメチルペンタデカン、7−ヘキシルトリデカン、5,5,7,7−テトラエチルウンデカン、2−メチルオクタデカン
炭素数20:フィタン、2−メチルノナデカン、3−メチルノナデカン、8−tert−ブチルヘキサデカン、4−メチルノナデカン、7,11−ジメチルオクタデカン、2,6−ジメチルオクタデカン、9−メチルノナデカン、4−プロピルヘプタデカン、3−メチル−3−エチルヘプタデカン、2,6,11,15−テトラメチルヘキサデカン、5−ブチルヘキサデカン
炭素数25:9−オクチルヘプタデカン、10−ヘキシルノナデカン、2,6,10,15,19−ペンタメチルイコサン、2,6,10,14,19−ペンタメチルイコサン、7,7−ジヘキシルトリデカン、9−(2−エチルヘキシル)ヘプタデカン、ハシアン、2−メチルテトラコサン、2,2,8,8−テトラメチル−5,5―ビス(3,3−ジメチルブチル)ノナン、2,6,10,14,18−ペンタメチルイコサン
炭素数30:スクワラン、2,10−ジメチルオクタコサン、7−メチルノナコサン、11−ノニルヘニコサン、(R)−3−メチルノナコサン、8,12−ジメチルオクタコサン、3−メチルノナコサン、9−オクチルドコサン、7,12−ジヘキシルオクタデカン、リザン、2,6−ジメチルオクタコサン
【0059】
前記炭素数6以上の環状のアルカンとしては、例えば、シクロヘキサン(C6)、シクロヘプタン(C7)、シクロオクタン(C8)、シクロノナン(C9)、シクロデカン(C10)、1,1,3,3−テトラメチルシクロヘキサン(C10)、1−メチル−2,4−ジエチルシクロペンタン(C10)、1,5−ジメチルシクロオクタン(C10)、シクロウンデガン(C11)、シクロドデカン(C12)、1−エチル−2−ペンチルシクロペンタン(C12)、1−メチルシクロウンデカン(C12)、ブチルシクロオクタン(C12)、シクロトリデカン(C13)、シクロテトラデカン(C14)、1,1,3,5−テトラメチルシクロヘキサン(C14)、1,2,4,5−テトラエチルシクロヘキサン(C14)、3−シクロヘキシル−4−メチルヘプタン(C14)、1,1,2−トリメチルシクロウンデカン(C14)、イソプロピルシクロウンデカン(C14)、シクロペンタデカン(C15)、シクロヘキサデカン(C16)、(1−プロピルヘプチル)シクロヘキサン(C16)、1−ブチルシクロドデカン(C16)、メチルシクロペンタデカン(C16)、シクロヘプタデカン(C17)、シクロオクタデカン(C18)、(1−ペンチルヘプチル)シクロヘキサン(C18)、ドデカメチルシクロヘキサン(C18)、シクロノナデカン(C19)、セムブラン(C20)、シクロイコサン(C20)、テトラデシルシクロヘキサン(C20)、シクロペンタコサン(C25)、(1−ノニルデシル)シクロヘキサン(C25)、9−(3−シクロペンチルプロピル)ヘプタデカン(C25)、シクロトリアコンタン(C30)、イコサメチルシクロデカン(C30)、ペンタコシルシクロペンタン(C30)等が挙げられ、これらに限定されない。
【0060】
処理対象の炭化水素は、1種単独であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。炭化水素の混合物の例としては、例えば、原油、石油、及びこれらの派生物等が挙げられる。本実施形態の処理方法は、炭化水素分解効率が高く、且つ環境負荷の低い炭化水素処理剤を用いるため、海上流出油、河川流出油、湖沼流出油、油汚染土壌、オイルポンド等の環境中の炭化水素汚染の浄化に好適に用いることができる。
【0061】
また、本実施形態の処理方法は、炭化水素を含む廃水の処理のために使用することができ、例えば、生活排水、工業排水用水の処理等に好適に用いることができる。本実施形態の処理方法は、炭化水素分解効率が高く、且つ環境負荷の低いため、廃水を効率よく処理することができ、処理後の排水を特別な処理を行うことなく環境中に放出することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
[材料及び方法]
<培地>
(IB2寒天培地)
ミリQ水800mLに、8gのグルコース(和光純薬工業社製)、8gのyeast extract(Becton, Dickinson and company社製)、0.16gのMgCl
2・6H
2O(和光純薬工業社製)、0.08gのCaCl
2・2H
2O(和光純薬工業社製)、0.08gのNaCl(和光純薬工業社製)、0.016gのFeCl
2・6H
2O(和光純薬工業社製)、及び0.4gの(NH
4)
2SO
4(和光純薬工業社製)を加えた。pH7.2に調整後、さらに12gのアガー(和光純薬工業社製)を加え、121℃で15分間オートクレーブし、冷却した。
【0064】
(IB2液体培地)
ミリQ水500mLに、5gのグルコース(和光純薬工業社製)、5gのyeast extract(Becton, Dickinson and company社製)、0.09gのMgCl
2・6H
2O(和光純薬工業社製)、0.05gのCaCl
2・2H
2O(和光純薬工業社製)、0.05gのNaCl(和光純薬工業社製)、0.01gのFeCl
2・6H
2O(和光純薬工業社製)、及び0.25gの(NH
4)
2SO
4(和光純薬工業社製)を加えた。pH7.2に調整後、121℃で15分間オートクレーブし、冷却した。
【0065】
(MM培地)
ミリQ水500mLに、0.09gのMgCl
2・6H
2O(和光純薬工業社製)、0.05gのCaCl
2・2H
2O(和光純薬工業社製)、0.05gのNaCl(和光純薬工業社製)、0.01gのFeCl
2・4H
2O(和光純薬工業社製)、0.25gの(NH
4)
2SO
4(和光純薬工業社製)、及び0.25gのK
2HPO
4(和光純薬工業社製)を加えた。pH7.2に調整後、121℃で15分間オートクレーブし、冷却した。
【0066】
<有機溶媒試薬>
n−ドデカン(以下、「C12」ともいう。)(和光純薬工業)
n−テトラデカン(以下、「C14」ともいう。)(和光純薬工業)
n−ペンタデカン(以下、「C15」ともいう。)(和光純薬工業)
n−ヘキサデカン(以下、「C16」ともいう。)(和光純薬工業)
プリスタン(以下、「C19」ともいう。)(ACROSS)
【0067】
<培養方法>
(前培養)
IB2寒天培地上のコロニーをディスポスティックで掻き取り、試験管(φ18)に入った5mLのIB2液体培地に懸濁した。その後、28℃、110rpmで2〜6日間振盪培養し、定常期に達したものを前培養液とした。
【0068】
(IB2培地による本培養:IB2培養系)
前培養液を1/10又は1/100に希釈し、希釈前培養液を作製した。10mLのIB2液体培地を試験管(φ24)に入れ、前記の希釈前培養液を100μL添加した。その後、28℃、110 rpmの条件で振盪培養を行った。
【0069】
(C16含有IB2培地による本培養:IB2+C16培養系)
前培養液を1/10又は1/100に希釈し、希釈前培養液を作製した。10mLのIB2液体培地及び500μLのC16を試験管(φ24)に入れ、前記の希釈前培養液を100μL添加した。その後、28℃、110 rpmの条件で振盪培養を行った。
【0070】
(C16含有MM培地による本培養:MM+C16培養系)
前培養液を1/10又は1/100に希釈し、希釈前培養液を作製した。10mLのMM培地及び500μLのC16を試験管(φ24)に入れ、前記の希釈前培養液を100μL添加した。その後、28℃、110 rpmの条件で振盪培養を行った。
【0071】
<GC/MS解析>
GC/MS解析には、GCMS−TQ8030(島津製作所)を使用した。カラムには、RESTEK Rtx−1(30m×0.25mm、内径1μm)を用いた。分析条件を下記に示す。
【0072】
GC分析条件
カラムオーブン温度:50℃
気化室温度:250℃
注入モード:スプリット
線速度:40.0cm/sec
スプリット比:15.0
カラムオーブン温度:300℃−6℃/min−300℃(10min)
注入量:1μL
【0073】
MS分析条件
イオン源温度:200℃
インターフェイス温度:300℃
スキャンレンジ:m/z 15−350
スキャン時間:0.3sec
【0074】
[参考例1]超音波処理がPR4株に及ぼす影響
PR4株を、定常期に達するまでIB2液体培地で培養した。次いで、超音波洗浄機(USD−4R;アズワン社製)を用いて、前記培養液の超音波処理(25℃、15分間、40kHz)を行った。超音波処理前及び超音波処理後の培養液を希釈した後、100μLの希釈培養液をIB2寒天培地上に塗抹して培養した。IB2寒天培地上に形成されたコロニー数をカウントし、処理前後のコロニー形成能を比較した。その結果を
図1に示す。
図1に示すように、超音波処理は、PR4株のコロニー形成能にほとんど影響しないことが確認された。
【0075】
また、上記と同様に超音波処理を行ったPR4株について、DAPI(和光純薬工業)及びCFDA(DOJINDO)での二重染色を行い、(CFDAでカウントされた菌数)/(DAPIでカウントされた菌数)により生菌率を算出した。その結果、生菌率は95.4±0.2%であり、超音波処理は、PR4株の生存にほとんど影響しないことが確認された。
【0076】
[参考例2]PR4株を含む炭化水素処理剤によるW−oilの分解
<炭化水素処理剤の調製>
(炭化水素処理剤1)
PR4株を定常期に達するまで前培養し、菌体を洗浄した。その後、DAPI染色により菌数測定を行い、菌体をMM培地に懸濁して10
8 cells/mLの母液を作製した。この母液を炭化水素処理剤1とした。
【0077】
(炭化水素処理剤2)
炭化水素処理剤1と同様に母液を作製した。試験管(φ24)に、10mLの母液を加えた後、超音波洗浄機(USD−4R;アズワン社製)を用いて超音波処理(25℃、15分間、40kHz)を行った。これを炭化水素処理剤2とした。
【0078】
(炭化水素処理剤3)
炭化水素処理剤1と同様に母液を作製した。試験管(φ24)に、10mLの母液及び1mLのC16を加えた後、超音波処理(25℃、15分間、40kHz)を行い、水中油型エマルション組成物を作製した。これを炭化水素処理剤3とした。
【0079】
<w−oilの分解試験>
w−oilには、アラビアンライト原油の加熱処理産物を用いた。10mgのw−oil及び10mLのMM培地を入れた試験管(φ24)を準備した。前記試験管に、炭化水素処理剤1〜3のいずれかを100μL添加し、28℃、110rpmで96時間振盪培養した。炭化水素処理剤1又は2を用いた場合には、培養開始時に、10μLのC16を添加した。
前記試験管に10μLのC16のみを添加して、同様に振盪培養を行ったものをネガティブコントロールとした。
【0080】
<残留成分の分析>
内部標準として0.01mg/mLのナフタレンを含有するクロロホルムを、前記振盪培養後の各試験官に5mLずつ添加して撹拌し、残存成分の抽出を行った。クロロホルム抽出操作を2回行い、抽出液のクロロホルム相から1mLを採取して、GC/MS解析用サンプルとした。GC/MSにより残存成分を解析し、ネガティブコントロールにおける残存量を100%としたときの相対残存量として、各炭化水素処理剤添加群における残存量を求めた。その結果を
図2に示す。
図2中、横軸は、アルカン成分の炭素数を示す。
【0081】
図2に示すように、炭化水素処理剤1〜3のいずれを用いた場合も、各アルカン成分の分解が確認された。炭化水素処理剤1〜3の中でも、炭化水素処理剤3を用いた場合の残存率が顕著に低かった。
【0082】
[参考例3]IB2液体培地/有機溶媒2相系におけるPR4株の局在性
10mLのIB2液体培地に、C12、C15、C16、又はC19を1mL加えた。続いて、PR4株の前培養液を100μL加え、28℃、110rpmで1日振盪培養した。培養後、培養液の超音波処理(25℃、15分間、40kHz)を行った。続いて、超音波処理後の培養液を、位相差顕微鏡(オリンパス社製)を用いて観察した。
【0083】
C12を用いた場合では、有機溶媒としてC12相と水相の界面に菌体が観察され、油滴の表面に菌体が吸着する吸着型の局在性を示した。一方、有機溶媒としてC15、C16又はC19を用いた場合には、油滴の内部に菌体が観察され、油滴内部に菌体が転移する転移型の局在性を示した。
【0084】
[実施例1]炭化水素処理剤用の炭化水素分解菌の探索
<候補菌株の選定>
(IB2+C16培養系における局在性)
まず、IB2+C16培養系において、アルカン類との相互作用を確認し、27株を選択した。この27株について、IB2+C16培養系における局在性を検討し、候補菌株の選定を行った。
【0085】
27株のそれぞれを、IB2+C16培養系で2〜3日間培養した。培養後、培養液の超音波処理(25℃、15分間、40kHz)を行った。次いで、超音波処理前及び超音波処理後の各培養液を、生物顕微鏡(BX60;オリンパス社製)により観察した。また、顕微鏡による観察の前に、DAPI染色を行い、位相差及び蛍光ミラーユニット(U−FUW;オリンパス社製)の同一視野を撮影し、比較することで、細胞の局在性を明確化した。
【0086】
27株の全てにおいて、超音波処理により、物理的乳化が可能であった。
局在性については、27株の多くにおいて、超音波処理の前と後とで局在性の変化が観察された。具体的には、超音波処理後に、菌体が水相に移行する様子が観察された。
一方、MSZ1株、MSZ6株、及びMSZ9株では、超音波処理の前と後とで局在性の変化が観察されなかった。具体的には、MSZ1株及びMSZ6株は、超音波処理の前後で、いずれも転移型の局在性を示した。MSZ9株は、超音波処理の前後で、いずれも吸着型の局在性を示した。さらに、これらの菌株は、数μm程度の極小な油滴粒子にも転移又は吸着が観察され、1粒子あたりに転移又は吸着する菌密度も比較的高いことが確認された。
以上の結果から、炭化水素処理剤用の候補菌株として、MSZ1株、MSZ6株、及びMSZ9株を選定した。
【0087】
(各培養系における生育試験)
MSZ1株、MSZ6株、及びMSZ9株を、IB2培養系、IB2+C16培養系、及びMM+C16培養系の各培養系でそれぞれ培養し、生育曲線を作製した。その結果を、
図3(A)(MSZ1株)、
図4(A)(MSZ6株)、及び
図5(A)(MSZ9株)にそれぞれ示す。
いずれの菌株においても、IB2+C16培養系では、IB2培養系と比較して、増殖が若干抑制されたが、抑制の程度はわずかであった。一方、いずれの菌株も、C16を唯一の炭素源とするMM+C16培養系での増殖が確認された。この結果から、MSZ1株、MSZ6株、及びMSZ9株は、C16の資化能を有することが示唆された。
【0088】
(超音波処理の影響)
MSZ1株、MSZ6株、及びMSZ9株を、それぞれ、定常期に達するまでIB2液体培地で培養した。次いで、前記培養液の超音波処理(25℃、15分間、40kHz)を行った。超音波処理前及び超音波処理後の培養液を希釈した後、100μLの希釈培養液をIB2寒天培地上に塗抹して培養した。IB2寒天培地上に形成されたコロニー数をカウントし、処理前後のコロニー形成能を比較した。
その結果を
図3(B)(MSZ1株)、
図4(B)(MSZ6株)、及び
図5(B)(MSZ9株)にそれぞれ示す。これらの図に示すように、超音波処理は、これら菌株のコロニー形成能に大きな影響を与えないことが確認された。
【0089】
また、上記と同様に超音波処理を行った各菌株について、DAPI及びCFDAでの二重染色を行い、(CFDAでカウントされた菌数)/(DAPIでカウントされた菌数)により生菌率を算出した。その結果、MSZ1株、MSZ6株、及びMSZ9株の生菌率は、それぞれ、99.3±0.0%、98.5±0.5%、及び91.5±7%であった。この結果から、超音波処理は、これらの菌株の生存にほとんど影響しないことが確認された。
【0090】
(MM+w−oil培養系における局在性)
MSZ1株、MSZ6株、及びMSZ9株を、それぞれ、定常期に達するまでIB2液体培地で培養した。菌体を洗浄した後、MM培地に懸濁し、10mLのMM培地及び0.15gのw−oilを添加した試験管(φ24)に添加した。その後、28℃、110rpmの条件で振盪培養を行い、1、2、4日目に培養液をサンプリングし、生物顕微鏡(BX53;オリンパス社製)により観察した。
【0091】
図6は、各菌株の顕微鏡写真を示す。上記3菌株に加えて、PR4株の顕微鏡写真も併せて示す。
図6に示すように、PR4株、MSZ1株、及びMSZ6株では、w−oil内に菌体が観察され、転移型の局在性を示した。これらの菌株では、培養1、2、4日目のいずれの観察でも、転移型の局在性が確認された。
一方、MSZ9株は、w−oil相と水相との界面に菌体が存在しており、吸着型の局在性を示した。MSZ9株では、培養2日目以降に吸着型の局在性が確認された。
【0092】
[実施例2]w−oilの分解試験
<炭化水素処理剤の調製>
(炭化水素処理剤3)
上記参考例2における炭化水素処理剤3と同じものを用いた。
【0093】
(炭化水素処理剤4)
PR4株、MSZ1株、MSZ6株、及びMSZ9株を、それぞれ、定常期に達するまで前培養し、菌体を洗浄した。その後、DAPI染色により菌数測定を行い、各菌体をMM培地に懸濁して、10
8 cells/mLの母液をそれぞれ作製した。試験管(φ24)に、2.5mLずつの各母液(合計10mL)及び1mLのC16を加えた後、超音波処理(25℃、15分間、40kHz)を行い、水中油型エマルション組成物を作製した。これを炭化水素処理剤4とした。
【0094】
<w−oilの分解試験>
10mgのw−oil及び10mLのMM培地を入れた試験管(φ24)を準備した。前記試験管に、炭化水素処理剤3又は4を100μL添加し、28℃、110rpmで72時間振盪培養した。
前記試験管に10μLのC16のみを添加して、同様に振盪培養を行ったものをネガティブコントロールとした。
【0095】
<残留成分の分析>
参考例2と同様の方法で、GC/MSにより残存成分を解析し、ネガティブコントロールにおける残存量を100%としたときの相対残存量として、各炭化水素処理剤添加群における残存量を求めた。その結果を
図7に示す。
図7中、横軸は、アルカン成分の炭素数を示す。
【0096】
図7に示すように、炭化水素処理剤3及び4のいずれを用いた場合も、各アルカン成分の分解が確認された。炭化水素処理剤4を用いた場合、炭化水素処理剤3を用いた場合と比較して、各成分の残存量が顕著に低下していた。この結果から、PR4株と組み合わせて、MSZ1株、MSZ6株、及びMSZ9株を用いることにより、PR4株を単独で用いるよりも炭化水素分解速度が向上することが示された。