特開2020-103244(P2020-103244A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-103244(P2020-103244A)
(43)【公開日】2020年7月9日
(54)【発明の名称】飲食用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20200612BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20200612BHJP
   A23L 33/10 20160101ALN20200612BHJP
   A23L 33/15 20160101ALN20200612BHJP
   A23L 33/21 20160101ALN20200612BHJP
【FI】
   A23L2/00 B
   A23L2/00 F
   A23L33/10
   A23L33/15
   A23L33/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-248095(P2018-248095)
(22)【出願日】2018年12月28日
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】阪田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏哉
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018MD04
4B018MD06
4B018MD23
4B018MD25
4B018MD40
4B018MD47
4B018ME14
4B117LC03
4B117LC04
4B117LK01
4B117LK13
4B117LK16
4B117LL04
(57)【要約】
【課題】
鉄の嗜好性が改善された飲食用組成物を提供する。
【解決手段】
(A)鉄に、(B)食物繊維、並びに(C)ビタミン類及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を組み合わせて配合することにより、鉄の呈味が良好となるため、総合的に嗜好性の高い飲食用組成物を得ることができる。
【選択図】
なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)鉄、(B)食物繊維、並びに、(C)ビタミン類及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする飲食用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄含有物の呈味を改善する飲食用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄は、生命を維持する上で不可欠な必須微量栄養素の一つであって、主に血液中の赤血球のヘモグロビン、肝臓中のフェリチン、筋肉組織中のミオグロビンに分布し、体内組織への酸素の運搬や細胞内のエネルギー産生等の重要な働きに関与している。従って、生体内において鉄が不足すると、貧血症、胃腸障害、思考力低下、神経過敏などの症状が生じることが知られている。
【0003】
そのため、従来より、鉄を含有する飲食料品の開発が進められてきた。しかし、鉄は、その独特の味及び臭いのため、嗜好性が悪く、経口摂取するには向いておらず、この問題を解決するために、鉄の味や臭いをマスキングしたり、改善したりする工夫が種々研究されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−143934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、鉄を含有する飲食用組成物において、その嗜好性を改善することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願人は、上記課題を鑑みて鋭意検討を行った結果、鉄を含有する飲食用組成物に対して、食物繊維、並びに、ビタミン類及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を加えることで、鉄を含有する組成物について、優れた嗜好性改善効果を有することを見出し、本発明に至った。
【0007】
本発明の概要は、以下の通りである。
<1>(A)鉄、(B)食物繊維、並びに、(C)ビタミン類及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする飲食用組成物。
【発明の効果】
【0008】
鉄を含有する飲食用組成物に対して、食物繊維、並びに、ビタミン類及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を組み合わせて配合することにより、その風味が改善され、特に、まろやかさ、のどごし、あと味、おいしさが良好となるため、嗜好性の高い飲食用組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】比較例2、4、実施例1の官能評価結果を表す図である。
図2】比較例2、5、実施例2の官能評価結果を表す図である。
図3】比較例2、6、実施例3の官能評価結果を表す図である。
図4】比較例2、7、実施例4、5の官能評価結果を表す図である。
図5】比較例3、4、実施例6の官能評価結果を表す図である。
図6】比較例3、5、実施例7、8の官能評価結果を表す図である。
図7】比較例3、6、実施例9の官能評価結果を表す図である。
図8】比較例3、7、実施例10、11の官能評価結果を表す図である。
図9】比較例2〜4、6、7、実施例12の官能評価結果を表す図である。
図10】比較例2、3、5〜7、実施例13の官能評価結果を表す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の飲食用組成物について説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではない。
【0011】
<鉄>
鉄は、生命を維持する上で不可欠な栄養素のひとつであり、鉄の摂取不足は、貧血症、胃腸障害、思考力低下、神経過敏の主な原因とされている。鉄は1種のみを用いても良いし、2種以上を混合しても良い。鉄としては、植物や動物、魚介類、鉱物等より抽出、精製して得られた天然由来のものや、化学的もしくは酵素反応を利用して合成したものを用いることができる。また、鉄としては、鉄塩が好ましい。鉄塩としては、例えば、塩化鉄、塩化第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グルコン酸第一鉄、三二酸化鉄、鉄クロロフィリンナトリウム、乳酸鉄、ピロリン酸第二鉄、硫酸鉄、硫酸第一鉄、ヘム鉄等が挙げられるが、優れた嗜好性改善効果を発揮することから、クエン酸第一鉄ナトリウムが特に好ましい。また、鉄としては、市販品を使用しても良い。
【0012】
本発明における鉄の配合質量比は、特に限定されないが、優れた嗜好性改善効果を発揮することから、飲食用組成物において、0.0001〜50%であることが好ましく、0.001〜25%であることがより好ましく、0.05〜10%であることが更に好ましく、0.01〜2.5%であることが特に好ましい。
【0013】
本発明の飲食用組成物における鉄の摂取量としては、特に限定されないが、優れた嗜好性改善効果を発揮することから、1日当たりの有効成分の摂取量が、0.0001mg以上20mg以下/日となるように摂取することが好ましく、0.001mg以上17.5mg以下/日以上となるように摂取することがより好ましく、0.05mg15mg以下/日以上となるように摂取することが特に好ましい。本発明の飲食用組成物が粉末飲料であり、水に懸濁して摂取する場合、又は、本発明の飲食用組成物が飲料であり、水を含有する場合には、水100mLに対し鉄の含有量として0.0001〜20mg含まれることが好ましく、0.0003〜10mg含まれることが特に好ましい。
【0014】
<食物繊維>
食物繊維とは、食物に含まれている成分のうち、ヒトの消化酵素で消化されない難消化性成分である。食物繊維は、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維とに大別されるが、いずれの食物繊維を用いてもよい。中でも、製品の粘性や粒度に影響しない点で、水溶性食物繊維が好ましい。食物繊維は1種のみを用いても良いし、2種以上を混合しても良く、また、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方を用いても良い。食物繊維としては、市販品を使用しても良い。
【0015】
鉄と食物繊維の配合質量比は、特に限定されないが、優れた嗜好性改善効果を発揮することから、1:0.0001〜100であることが好ましく、1:0.001〜10であることがより好ましく、1:0.05〜3であることが更に好ましく、1:0.01〜1.5であることが特に好ましい。
【0016】
<水溶性食物繊維>
水溶性食物繊維とは、食物繊維のうち、水溶性のものを指す。本発明で用いる水溶性食物繊維としては、特に限定されず、サイリウム、グルコマンナン、難消化性デキストリン、ペクチン、アルギン酸、グアーガム、グアーガム加水分解物、ガラクトマンナン、ポリデキストロース、カラギーナンなどが挙げられるが、優れた嗜好性改善効果を発揮することから、難消化性デキストリンやサイリウム、グルコマンナン等の水溶性多糖類が好ましく、サイリウム、グルコマンナンが特に好ましい。水溶性食物繊維は1種のみを用いても良いし、2種以上を混合しても良い。また、水溶性食物繊維としては、市販品を使用しても良い。
【0017】
<水溶性多糖類>
水溶性多糖類は、水に溶ける性質を有する多糖類であって、一般に多糖類とは、単糖類2分子以上がグリコシド結合によって脱水縮合して生ずる炭水化物である。本発明で用いる水溶性多糖類は、飲食品に使用できるものであれば良く、例えば、サイリウム、グルコマンナンのほか、アラビアガム、水溶性ヘミセルロース、寒天、アルギン酸及びその塩類、カラギーナン、ファーセレラン等の海藻から抽出された海藻多糖類、グアーガム、ローカストビーンガム等の種子から抽出された種子多糖類、アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム等の樹脂浸出物、アラビノガラクタン、ペクチン等の植物から抽出された植物抽出物、更にはキサンタンガム等の醗酵ガム、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ等の澱粉質等が挙げられるが、優れた嗜好性改善効果を発揮することから、サイリウム、グルコマンナンが特に好ましい。水溶性多糖類は1種のみを用いても良いし、2種以上を混合しても良い。また、水溶性多糖類としては、市販品を使用しても良い。
【0018】
<サイリウム>
サイリウムは、オオバコ科の植物であるプランタゴ・オバタ(別名:インドオオバコ)の種皮に含まれる水溶性の多糖類である。サイリウムの製造方法は、従来公知の方法を用いることができる。サイリウムの形態は、液状、粉末状、顆粒状、固体状、ペースト状等の各種形態のものを用いることができ、本発明においては、鉄と組み合わせることで、特に優れた嗜好性改善効果を発揮することから、粉末状が好ましい。また、サイリウムは市販品を使用することができる。
【0019】
鉄とサイリウムの配合質量比は、特に限定されないが、優れた嗜好性改善効果を発揮することから、1:0.0001〜100であることが好ましく、1:0.001〜10であることがより好ましく、1:0.05〜3であることが更に好ましく、1:0.01〜1.5であることが特に好ましい。
【0020】
<グルコマンナン>
グルコマンナンは、D−グルコースとD−マンノースがβ−1,4結合した構造を有し、グルコースとマンノースの比率が約2:3の水溶性の多糖類である。グルコマンナンは、例えば、針葉樹の細胞壁やコンニャク芋などに多く含まれ、コンニャク芋を原料として製造されることがあるため、コンニャクマンナンとも称される。グルコマンナンの製造方法は、従来公知の方法を用いることができる。グルコマンナンの形態は、液状、粉末状、顆粒状、固体状、ペースト状等の各種形態のものを用いることができ、本発明においては、鉄と組み合わせることで、特に優れた嗜好性改善効果を発揮することから、粉末状が好ましい。また、グルコマンナンは市販品を使用することができる。
【0021】
鉄とグルコマンナンの配合質量比は、特に限定されないが、優れた嗜好性改善効果を発揮することから、1:0.0001〜100であることが好ましく、1:0.001〜10であることがより好ましく、1:0.05〜3であることが更に好ましく、1:0.01〜1.5であることが特に好ましい。
【0022】
<ビタミン類>
ビタミン類としては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC(以上、水溶性ビタミン)、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK(以上、脂溶性ビタミン)のほか、ビタミンB4、ビタミンB8、ビタミンB10、ビタミンB11、ビタミンB13、ビタミンB14、ビタミンB15、ビタミンB16、ビタミンB17、ビタミンBH、ビタミンBP、ビタミンBT、ビタミンBX、ビタミンF、ビタミンI、ビタミンJ、ビタミンL1、ビタミンL2、ビタミンN、ビタミンO、ビタミンP、ビタミンQ、ビタミンS、ビタミンT、ビタミンU、ビタミンV(以上、ビタミン様物質)や魚肝油等が挙げられる。ビタミン類は1種のみを用いても良いし、2種以上を用いても良い。また、ビタミン類としては、各種のビタミン類塩を用いてもよい。塩としては、例えば、ナトリウム塩、塩酸塩等を挙げることができる。
【0023】
本発明のビタミン類は、優れた嗜好性改善効果を発揮することから、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKが好ましく、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンDがより好ましく、ビタミンB1、ビタミンC、ビタミンDが更に好ましく、ビタミンB1の中でも特にチアミン塩酸塩が好ましく、ビタミンCとしては特にアスコルビン酸ナトリウムが好ましい。
【0024】
ビタミン類は、動植物や藻類及び微生物等より抽出、精製して得られた天然由来のものを用いても良いし、化学的もしくは酵素反応を利用して合成したものを用いても良い。また、ビタミン類としては、市販品を使用しても良い。
【0025】
本発明の飲食用組成物においてビタミン類を含有する場合、ビタミン類の含有量は、特に限定されないが、優れた嗜好性改善効果を発揮することから、鉄1質量部に対して、0.0001質量部以上2000質量部以下であることが好ましく、0.001質量部以上1500質量部以下であることがより好ましく、0.01質量部以上1000質量部以下であることが特に好ましい。但し、ビタミン類を2種以上含有する場合は、その総量である。
【0026】
本発明の飲食用組成物においてビタミンB1又はその塩を含有する場合、ビタミンB1又はその塩の含有量は、特に限定されないが、優れた嗜好性改善効果を発揮することから、鉄1質量部に対して、0.0001質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、0.001質量部以上750質量部以下であることがより好ましく、0.01質量部以上500質量部以下であることが特に好ましい。
【0027】
本発明の飲食用組成物においてビタミンC又はその塩を含有する場合、ビタミンC又はその塩の含有量は、特に限定されないが、優れた嗜好性改善効果を発揮することから、鉄1質量部に対して、0.0001質量部以上2000質量部以下であることが好ましく、0.001質量部以上1500質量部以下であることがより好ましく、0.01質量部以上1000質量部以下であることが特に好ましい。
【0028】
本発明の飲食用組成物においてビタミンD又はその塩を含有する場合、ビタミンD又はその塩の含有量は、特に限定されないが、優れた嗜好性改善効果を発揮することから、鉄1質量部に対して、0.0001質量部以上100質量部以下であることが好ましく、0.0005質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、0.001質量部以上2.5質量部以下であることが特に好ましい。
【0029】
<カルシウム>
カルシウムは、骨を構成する大切な元素のひとつであり、カルシウムの摂取不足は、骨粗鬆症や骨の弱体化の主な原因とされている。カルシウムとしては各種のカルシウム塩や天然カルシウムが挙げられる。カルシウム塩としては、クエン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、ステアリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム等が挙げられる。天然カルシウムとしては、サンゴカルシウム、ホタテ貝殻カルシウム、卵殻カルシウム、牛骨粉、魚骨粉等の生物に由来するものや、石灰石、ドロマイト等の鉱物に由来するもの等が挙げられる。本発明で使用するカルシウムとしては、優れた嗜好性改善効果を発揮することから、クエン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、サンゴカルシウム、ホタテ貝カルシウム、卵殻カルシウムが好ましく、卵殻カルシウムが特に好ましい。また、カルシウムは1種のみを用いても良いし、2種以上を混合しても良い。カルシウムとしては、動物や魚介類及び鉱物等より抽出、精製して得られた天然由来のものや、化学的もしくは酵素反応を利用して合成したものを用いることができる。また、カルシウムとしては、市販品を使用しても良い。
【0030】
本発明の飲食用組成物においてカルシウムを含有する場合、カルシウムの含有量は、特に限定されないが、優れた嗜好性改善効果を発揮することから、鉄1質量部に対して、0.0001質量部以上300質量部以下であることが好ましく、0.001質量部以上200質量部以下であることがより好ましく、0.01質量部以上100質量部以下であることが特に好ましい。但し、カルシウムを2種以上含有する場合は、その総量である。
【0031】
本発明の飲食用組成物には、(A)鉄、(B)食物繊維、(C)ビタミン類及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種の素材以外に、その他の成分を含有しても良い。前記のその他の成分としては、例えば、水溶性食物繊維や不溶性食物繊維等の食物繊維、タンパク質、ビタミン類やカルシウム以外のミネラル類、植物又は植物加工品、動物又は動物加工品、藻類、乳酸菌等の微生物等を配合することができる。更に、必要に応じて、通常食品分野で用いられる、デキストリン、でんぷん等の糖類、オリゴ糖類、甘味料、酸味料、栄養補助剤、安定剤、滑沢剤、結合剤、光沢剤、増粘剤、着色料、賦形剤、希釈剤、増量剤、乳化剤、食品添加物、調味料等を挙げることができる。これらその他の成分の含有量は、本発明の組成物の形態等に応じて適宜選択することができる。
【0032】
本発明の飲食用組成物の形態は、特に限定されず、任意の形態とすることができる。具体的な形態としては、例えば、粉や顆粒、細粒等の粉末状、タブレット(チュアブル)状、球状、カプセル状、カプレット状、液状等の形状が挙げられる。尚、カプセル状の組成物は、ソフトカプセル及びハードカプセルが含まれる。また、液状の飲料としては、具体的には、ペットボトル、缶、瓶等に充填された容器詰飲料や、水(湯)、牛乳、果汁、青汁等に溶解して飲むためのインスタント飲料を例示することができる本発明の組成物は、粉や顆粒、細粒等の粉末状又は液状が好ましく、特に、水などと混合し、溶解したり懸濁させたりして使用する粉末飲料とすることにより、組成物としての安定性にも優れるとともに、食事の際などに手軽に摂取しやすく、タブレット状やカプセル状等と異なり1度に多くの組成物を摂取することができ、また、鉄の呈味のマスキング効果が顕著となり、嗜好性を高めることができるため好ましい。
【0033】
本発明の飲食用組成物は、従来公知の方法により製造することができる。本発明の飲食用組成物を製造する際、使用する原料の形態は特に限定されず、組成物の形態に合わせて適宜選択し、使用することができる。例えば、粉や顆粒、細粒等の粉末状や液状の組成物を得る場合、(A)鉄、(B)食物繊維、(C)ビタミン類及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種の素材は、これらをそのまま使用しても良いし、賦形剤、増量剤等との混合物を使用しても良い。また、カプセル状の飲食用組成物を得る場合は、水や食用油等の溶媒にあらかじめ溶解又は分散させたものを使用しても良い。
【0034】
本発明の飲食用組成物の粘度(0.5W/V%/0.5%酢酸水溶液、20℃)は、特に限定されないが、優れた嗜好性改善効果を発揮することから、10mPa・s以上20000mPa・s以下であることが好ましく、15mPa・s以上10000mPa・s以下であることが特に好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
1.飲食用組成物の製造
以下の表1に示す各原料を均一になるように混合し、粉末飲料を調製した。表1のうち、数値は質量(g)を表わす。鉄としては、粉末状のクエン酸第一鉄ナトリウム(商品名:サンフェロール(三菱ケミカルフーズ株式会社))を用いた。食物繊維としては、水溶性多糖類である粉末状のプランタゴ・オバタの種皮末(商品名:プランタゴ・オバタ末(日本粉末薬品株式会社))、水溶性多糖類であるコンニャクイモ由来の粉末状のグルコマンナン(商品名:レオックスRS(清水化学株式会社))を用いた。ビタミン類としては、粉末状のビタミンB1塩酸塩(商品名:ビタミンB1塩酸塩(星和株式会社)、粉末状のL−アスコルビン酸ナトリウム(商品名;L−アスコルビン酸Na(星和株式会社))、粉末状のビタミンD3(商品名:ドライビタミンD3(三菱ケミカルフーズ株式会社))を用いた。カルシウムとしては、粉末状の卵殻カルシウム(商品名:ESパウダー(キユーピータマゴ株式会社))を用いた。
【0037】
【表1】
【0038】
2.官能評価
(1)サンプルの調製
上記表1に記載の比較例1〜7及び実施例1〜13のサンプルについて、それぞれを、水200mLと混合して各試験サンプルを得た。
【0039】
被験者として、官能試験の経験が豊富な健常な成人5名を選出した。これらの被験者5名に対し、下記表2の評価項目について、アンケートを実施し、官能評価を行った。具体的には、比較例1を基準(0点)として他のサンプルを比較し、以下の判断によりそれぞれ−3〜3点の点数をつけた。
−3点:明らかに劣っている。
−2点:劣っている。
−1点:やや劣っている。
0点:比較例1と同じ。
1点:やや勝っている。あるいは、やや改善されている。
2点:勝っている。あるいは、改善されている。
3点:明らかに勝っている。あるいは、明らかに改善されている。
【0040】
【表2】
【0041】
各サンプルについて、被験者の点数の平均点を算出した。
【0042】
<実施例1>
比較例1、2、4及び実施例1の結果を表3及び図1に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
鉄、サイリウム、ビタミンB1を用いた場合について、嗜好性の評価結果を考察した。表3及び図1に示すように、鉄のみを含有する比較例1を基準とした場合、鉄とサイリウムを含有する比較例2及び鉄とビタミンB1を含有する比較例4は、いずれの項目も低い値だった。一方、鉄、サイリウム及びビタミンB1を含有する実施例1は、まろやかさ、のどごし、あと味、おいしさのすべての評価項目で高い評価となり、総合的な嗜好性に優れた飲食用組成物が得られたことがわかった。
【0045】
<実施例2>
比較例1、2、5及び実施例2の結果を表4及び図2に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
鉄、サイリウム、ビタミンCを用いた場合について、嗜好性の評価結果を考察した。表4及び図2に示すように、鉄のみを含有する比較例1を基準とした場合、鉄とサイリウムを含有する比較例2及び鉄とビタミンCを含有する比較例5は、いずれの項目も低い値だった。一方、鉄、サイリウム及びビタミンCを含有する実施例2は、まろやかさ、のどごし、あと味、おいしさのすべての評価項目で高い評価となり、総合的な嗜好性に優れた飲食用組成物が得られたことがわかった。
【0048】
<実施例3>
比較例1、2、6及び実施例3の結果を表5及び図3に示す。
【0049】
【表5】
【0050】
鉄、サイリウム、ビタミンDを用いた場合について、嗜好性の評価結果を考察した。表5及び図3に示すように、鉄のみを含有する比較例1を基準とした場合、鉄とサイリウムを含有する比較例2及び鉄とビタミンDを含有する比較例6は、まろやかさ、のどごし、あと味、おいしさのいずれの項目も低い値だった。一方、鉄、サイリウム及びビタミンDを含有する実施例3は、まろやかさ、のどごし、あと味、おいしさのすべての評価項目で高い評価となり、総合的な嗜好性に優れた飲食用組成物が得られたことがわかった。また、実施例3は、甘さ、苦さの評価項目でも比較例1、2及び6に比べて高い評価であった。
【0051】
<実施例4、実施例5>
比較例1、2、7及び実施例4、5の結果を表6及び図4に示す。
【0052】
【表6】
【0053】
鉄、サイリウム、カルシウムを用いた場合について、嗜好性の評価結果を考察した。表6及び図4に示すように、鉄のみを含有する比較例1を基準とした場合、鉄とサイリウムを含有する比較例2及び鉄とカルシウムを含有する比較例7は、まろやかさ、のどごし、あと味、おいしさのいずれの項目も低い値だった。一方、鉄、サイリウム及びカルシウムを含有する実施例4及び5は、まろやかさ、のどごし、あと味、おいしさのすべての評価項目で高い評価となり、総合的な嗜好性に優れた飲食用組成物が得られたことがわかった。また、実施例4及び5は、甘さ、苦さの評価項目でも比較例1、2、7に比べて高い評価であった。
【0054】
<実施例6>
比較例1、3、4及び実施例6の結果を表7及び図5に示す。
【0055】
【表7】
【0056】
鉄、グルコマンナン、ビタミンB1を用いた場合について、嗜好性の評価結果を考察した。表7及び図5に示すように、鉄のみを含有する比較例1を基準とした場合、鉄とグルコマンナンを含有する比較例3及び鉄とビタミンB1を含有する比較例4は、いずれの項目も低い値だった。一方、鉄、グルコマンナン及びビタミンB1を含有する実施例6は、まろやかさ、のどごし、あと味、おいしさのすべての評価項目で高い評価となり、総合的な嗜好性に優れた飲食用組成物が得られたことがわかった。
【0057】
<実施例7、実施例8>
比較例1、3、5及び実施例7、8の結果を表8及び図6に示す。
【0058】
【表8】
【0059】
鉄、グルコマンナン、ビタミンCを用いた場合について、嗜好性の評価結果を考察した。表8及び図6に示すように、鉄のみを含有する比較例1を基準とした場合、鉄とグルコマンナンを含有する比較例3及び鉄とビタミンCを含有する比較例5は、いずれの項目も低い値だった。一方、鉄、グルコマンナン及びビタミンCを含有する実施例7及び8は、まろやかさ、のどごし、あと味、おいしさのすべての評価項目で高い評価となり、総合的な嗜好性に優れた飲食用組成物が得られたことがわかった。
【0060】
<実施例9>
比較例1、3、6及び実施例9の結果を表9及び図7に示す。
【0061】
【表9】
【0062】
鉄、グルコマンナン、ビタミンDを用いた場合について、嗜好性の評価結果を考察した。表9及び図7に示すように、鉄のみを含有する比較例1を基準とした場合、鉄及びグルコマンナンを含有する比較例3、鉄及びビタミンDを含有する比較例6は、まろやかさ、のどごし、あと味、おいしさのいずれの項目も低い値だった。一方、鉄、グルコマンナン及びビタミンDを含有する実施例9は、まろやかさ、のどごし、あと味、おいしさのすべての評価項目で高い評価となり、総合的な嗜好性に優れた飲食用組成物が得られたことがわかった。また、実施例9は、臭い、甘さ、苦さの評価項目でも比較例1,3、6に比べて高い評価であった。
【0063】
<実施例10、実施例11>
比較例1、3、7及び実施例10、11の結果を表10及び図8に示す。
【0064】
【表10】
【0065】
鉄、グルコマンナン、カルシウムを用いた場合について、嗜好性の評価結果を考察した。表10及び図8に示すように、鉄のみを含有する比較例1を基準とした場合、鉄及びグルコマンナンを含有する比較例3、鉄及びカルシウムを含有する比較例7は、まろやかさ、のどごし、あと味、おいしさのいずれの項目も低い値だった。一方、鉄、グルコマンナン及びカルシウムを含有する実施例10及び11は、まろやかさ、のどごし、あと味、おいしさのすべての評価項目で高い評価となり、総合的な嗜好性に優れた飲食用組成物が得られたことがわかった。また、実施例10、11は、甘さ、苦さの評価項目でも比較例1、3、7に比べて高い評価であった。
【0066】
<実施例12>
比較例1〜4、6、7及び実施例12の結果を表11及び図9に示す。
【0067】
【表11】
【0068】
鉄、サイリウム、グルコマンナン、ビタミン類、カルシウムを用いた場合について、嗜好性の評価結果を考察した。表11及び図9に示すように、鉄のみを含有する比較例1を基準とした場合、鉄及びサイリウムを含有する比較例2、鉄及びグルコマンナンを含有する比較例3、鉄及びビタミンB1を含有する比較例4、鉄及びビタミンビタミンDを含有する比較例6、鉄及びカルシウムを含有する比較例7は、いずれの項目も低い値だった。一方、鉄、サイリウム、グルコマンナン、ビタミンB1、ビタミンD及びカルシウムを含有する実施例12は、まろやかさ、のどごし、あと味、おいしさのすべての評価項目で高い評価となり、総合的な嗜好性に優れた飲食用組成物が得られたことがわかった。
【0069】
<実施例13>
比較例1〜3、5〜7及び実施例13の結果を表12及び図10に示す。
【0070】
【表12】
【0071】
鉄、サイリウム、グルコマンナン、ビタミン類、カルシウムを用いた場合について、嗜好性の評価結果を考察した。表12及び図10に示すように、鉄のみを含有する比較例1を基準とした場合、鉄及びサイリウムを含有する比較例2、鉄及びグルコマンナンを含有する比較例3、鉄及びビタミンCを含有する比較例5、鉄及びビタミンビタミンDを含有する比較例6、鉄及びカルシウムを含有する比較例7は、まろやかさ、のどごし、あと味、おいしさのいずれの項目も低い値だった。一方、鉄、サイリウム、グルコマンナン、ビタミンC、ビタミンD及びカルシウムを含有する実施例13は、まろやかさ、のどごし、あと味、おいしさのすべての評価項目で高い評価となり、総合的な嗜好性に優れた飲食用組成物が得られたことがわかった。また、実施例13は、臭い、甘さ、苦さの評価項目でも比較例1〜3、5〜7に比べて高い評価であった。
【0072】
以上の結果より、食物繊維と、ビタミン類及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を組み合わせて配合することにより、鉄独特の味や臭いを大幅に改善することができ、嗜好性に優れた組成物となることがわかった。
【0073】
以下に本発明の種々の態様の例を挙げるが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されない。
【0074】
<製造例1〜製造例6>
下記表13の配合にて、鉄、食物繊維、並びにビタミン類及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種素材をそれぞれ配合し型流動層造粒機に投入し、数分間気流で混合し、これに、水60Lを1分間に2000mL噴霧することにより造粒を行った。つづいて、得られた造粒物を30メッシュの篩いにて篩別し顆粒を製造した。得られた飲食用組成物を摂取したところ、鉄の味や臭いが改善され、総合的な嗜好性に優れた組成物が得られた。
【0075】
【表13】
【0076】
<製造例7〜製造例12>
下記表14の配合にて、鉄、食物繊維、並びに、ビタミン類及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種をそれぞれ配合して、均一になるように混合することによって粉末飲料を製造した。得られた飲食用組成物3gを150mLの水と混合し、飲用したところ、鉄の味や臭いが改善され、総合的な嗜好性に優れた組成物が得られた。
【0077】
【表14】
【0078】
<製造例13〜製造例18>
下記表15の配合にて、鉄、食物繊維、並びに、ビタミン類及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種をそれぞれ配合して、均一になるように混合し、ゼラチン及びグリセリンを含む被膜で被包することによってソフトカプセルを製造した(1粒あたり300mg)。得られた飲食用組成物を摂取したところ、鉄の味や臭いが改善され、総合的な嗜好性に優れた組成物が得られた。
【0079】
【表15】
【0080】
<製造例19〜製造例24>
下記表16の配合にて、鉄、食物繊維、並びに、ビタミン類及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種をそれぞれ配合して、均一になるように混合し、ゼラチンを含む被膜に充填することによってハードカプセルを製造した(1粒あたり350mg)。得られた飲食用組成物を摂取したところ、鉄の味や臭いが改善され、総合的な嗜好性に優れた組成物が得られた。
【0081】
【表16】
【0082】
<製造例25〜製造例30>
下記表17の配合にて、鉄、食物繊維、並びに、ビタミン類及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種をそれぞれ配合して、均一になるように混合することによって液体飲料を製造した。得られた飲食用組成物を摂取したところ、鉄の味や臭いが改善され、総合的な嗜好性に優れた組成物が得られた。
【0083】
【表17】
【0084】
<製造例31〜製造例36>
下記表18の配合にて、鉄、食物繊維、並びに、ビタミン類及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種をそれぞれ配合して、均一になるように混合した後、打錠装置を用いて成形することによって錠剤を製造した(1粒あたり250mg)。得られた飲食用組成物を摂取したところ、鉄の味や臭いが改善され、総合的な嗜好性に優れた組成物が得られた。
【0085】
【表18】
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、(A)鉄、(B)食物繊維、並びに、(C)ビタミン類及びカルシウムから選ばれる少なくとも1種を含有することにより、鉄を含有する飲食用組成物の呈味が改善され、特に、まろやかさ、のどごし、あと味、おいしさが良好となるため、嗜好性の高い飲食用組成物を得ることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10