【解決手段】発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂および結晶核剤を含有する熱可塑性樹脂組成物を、固定型と可動型からなる金型内に充填した後、可動型をコアバックさせることにより、熱可塑性樹脂組成物を溶融状態で発泡させつつ成形する発泡樹脂成形品の製造方法であって、前記結晶核剤として熱履歴が抑制された結晶核剤を用いる、発泡樹脂成形品の製造方法。
発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂および結晶核剤を含有する熱可塑性樹脂組成物を、固定型と可動型からなる金型内に充填した後、可動型をコアバックさせることにより、熱可塑性樹脂組成物を溶融状態で発泡させつつ成形する発泡樹脂成形品の製造方法であって、
前記結晶核剤として熱履歴が抑制された結晶核剤を用いる、発泡樹脂成形品の製造方法。
前記熱履歴が抑制された結晶核剤として、有機系結晶核剤を、該有機系結晶核剤がマスターバッチ用熱可塑性樹脂中に粒状に分散されている結晶核剤マスターバッチの形態で使用するか、または前記結晶核剤マスターバッチの形態とすることなく、そのまま使用する、請求項1に記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
前記結晶核剤マスターバッチ中、前記有機系結晶核剤が該マスターバッチ全量に対して1〜40重量%の量で分散されている、請求項2〜4のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
前記結晶核剤マスターバッチが、前記マスターバッチ用熱可塑性樹脂の融点Tmrおよび前記有機系結晶核剤の融点Tmcについて、以下の関係式(1)を満たす、請求項2〜5のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法:
Tmr<Tmc (1)
前記熱可塑性樹脂組成物の冷却速度19℃/秒での結晶化温度をTccf(℃)としたとき、前記コアバックを、前記熱可塑性樹脂組成物の温度がTccf−10℃〜Tccf+20℃であるときに開始する、請求項1〜10のいずれかに記載の発泡樹脂成形品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[発泡樹脂成形品の製造方法]
本発明は、発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂および結晶核剤を含有する熱可塑性樹脂組成物を、固定型と可動型からなる金型内に充填した後、可動型をコアバックさせることにより、熱可塑性樹脂組成物を溶融状態で発泡させつつ成形する発泡樹脂成形品の製造方法を提供する。以下、その中でも特に射出成形法を採用する場合について説明するが、熱可塑性樹脂組成物を単に充填して溶融成形する方法においても、熱履歴が抑制された結晶核剤を用いる限り、本発明の効果が得られることは明らかである。本発明の方法で製造される発泡樹脂成形品は内部で連続または不連続気泡を有していてもよいし、または繊維化されていてもよい。
【0013】
本発明に係る発泡樹脂成形品の製造方法を実施するのに適した発泡射出成形装置の一例として、
図1に、発泡射出成形装置1の構成の概略全体図を示す。この装置1 は、シリンダ11及びスクリュー軸12が備えられたスクリューフィーダ10を有し、該フィーダ10の後端部(
図1における右側)近傍に、原料を投入するためのホッパ13が設けられた構造を有している。前記スクリュー軸12の先端部には、チェックリング14及び円錐形状のヘッド15が設けられ、前記シリンダ11の先端部は該ヘッド15の形状に呼応して円錐形状に絞られており、その先端にはノズル16が設けられている。シリンダ11におけるホッパ13からノズル16までの間にはガスを供給するための高圧ガス供給装置17が設けられており、シリンダ11内の溶融混練物にガス状の物理発泡剤を供給できるようになっている。
【0014】
前記シリンダ11の先端側には、金型装置20が配設されている。前記金型装置20は、固定型21と、該固定型21に対して移動可能とされた可動型22とからなる金型を有すると共に、可動型22を駆動させるための駆動機構(図示しない)を有している。金型装置20の固定型21と可動型22との間には、型締めされたときに成形品の形状となるキャビティ23が形成される。可動型22には、キャビティ23内に射出された熱可塑性樹脂組成物の温度および圧力を測定するための温度圧力センサー24および固定型21と可動型22を冷却するための冷却機構25が設けられている。前記固定型21には前記ノズル16が接続されていると共に、該ノズル16の接続部からキャビティ23に連通する通路(ホットランナー)21aが形成されている。
【0015】
本発明に係る発泡樹脂成形品の製造方法は、溶融混練工程、射出工程およびコアバック工程を含む。
【0016】
(溶融混練工程)
本工程は、発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂および結晶核剤を含有する熱可塑性樹脂組成物を溶融および混練する工程である。詳しくは、原料、例えば、発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂、結晶核剤およびその他の添加剤等を
図1の発泡射出成型装置1のホッパ13からシリンダ11内に投入し、溶融および混練を行う。発泡剤として特に物理発泡剤を用いる場合は、溶融および混練を行いながら、高圧ガス供給装置17により物理発泡剤を注入してもよい。
【0017】
マトリクス用熱可塑性樹脂は、熱可塑性を有するポリマーである限り特に限定されない。発泡樹脂成形品内部の繊維化の観点からは、マトリクス用熱可塑性樹脂は、発泡剤、マトリクス用熱可塑性樹脂および結晶核剤などの発泡樹脂成形品を構成する全ての材料を含有する熱可塑性樹脂組成物が、該熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsにおいて1×10
3〜5×10
6Pa、特に1×10
4〜1×10
6Paの貯蔵弾性率を有するように選択されることが好ましい。
【0018】
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsは以下の方法により測定することができる。
熱可塑性樹脂組成物を、融点以上の温度に加熱して10℃/分にて冷却したときの熱流−温度曲線を、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製)により求める。この熱流−温度曲線が発熱ピークを示す温度を結晶化温度Tccs(℃)とする。
【0019】
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsは好ましくは100〜220℃であり、より好ましくは100〜210℃である。マトリクス用熱可塑性樹脂が、後述するようにポリプロピレンの場合、熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsは、さらに好ましくは100〜155℃である。
【0020】
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsでの貯蔵弾性率は以下の方法により測定することができる。
熱可塑性樹脂組成物を融点以上の温度に加熱して2℃/分にて冷却するとき、Tccsでの貯蔵弾性率を回転式粘度計(レオメトリック社製)により測定する。
【0021】
マトリクス用熱可塑性樹脂としては、発泡樹脂成形品内部の繊維化の観点からは、90〜210℃、好ましくは90〜200℃の結晶化温度Tcpsを有し、かつ当該Tcpsにおいて1×10
3〜1×10
6Pa、好ましくは1×10
4〜5×10
5Paの貯蔵弾性率を有するポリマーが使用されることが望ましい。マトリクス用熱可塑性樹脂が、後述するようにポリプロピレンの場合、当該マトリクス用熱可塑性樹脂の結晶化温度Tcpsは、さらに好ましくは95〜135℃である。マトリクス用熱可塑性樹脂のTcpsが高すぎたり、上記温度での貯蔵弾性率が高すぎたりすると、隣接するセル間のセル壁厚みが比較的大きな発泡体が得られるだけで、十分な繊維化は起こらない。マトリクス用熱可塑性樹脂のTcpsが低すぎたり、上記温度での貯蔵弾性率が低すぎたりすると、セルの合一が進んでセル径が比較的大きな発泡体が得られるだけで、十分な繊維化は起こらない。
【0022】
マトリクス用熱可塑性樹脂の結晶化温度Tcpsは、当該熱可塑性樹脂を加熱すること以外、熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsと同様の方法により測定することができる。
【0023】
マトリクス用熱可塑性樹脂のTcps(℃)での貯蔵弾性率は、当該熱可塑性樹脂を加熱すること、および貯蔵弾性率の測定温度をTcps(℃)とすること以外、熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccsでの貯蔵弾性率と同様の方法により測定することができる。
【0024】
マトリクス用熱可塑性樹脂は、あらゆる種類のポリマーが使用され、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、長鎖分岐ポリプロピレン系樹脂、ポリブチレン系樹脂およびこれらの樹脂を構成するモノマーの共重合体、ならびにこれらのブレンドなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル系樹脂;PA6、PA66、PA11、PA12、PA6T、PA9T、MXD6などのポリアミド系樹脂(PA);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンエーテル(PPE)などのポリエーテル系樹脂;ポリフェニレンサルファイド(PPS)が使用される。Tcps、貯蔵弾性率および組成(種類)等が異なる2種類以上のマトリクス用熱可塑性樹脂が含有されてもよく、その場合、それらの混合樹脂における各マトリクス用熱可塑性樹脂がそれぞれ上記結晶化温度および貯蔵弾性率を有していることが好ましい。好ましいマトリクス用熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂(PA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)である。より好ましいマトリクス用熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレン系樹脂である。
【0025】
発泡剤としてはマトリクス用熱可塑性樹脂の発泡機能を有するあらゆる物質が使用可能であり、例えば物理発泡剤および化学発泡剤が挙げられる。発泡樹脂成形品内部の繊維化の観点からは物理発泡剤が好ましい。
【0026】
物理発泡剤は、マトリクス用熱可塑性樹脂中において、物理的に発泡を起こすものであり、例えば、窒素ガス、二酸化炭素ガス等が挙げられる。
化学発泡剤は、マトリクス用熱可塑性樹脂の分野で従来から化学発泡剤として使用されているあらゆる物質が使用可能である。
【0027】
発泡剤、特に物理発泡剤の含有量は通常、マトリクス用熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜3.0重量部であり、好ましくは0.1〜2.0重量部である。
【0028】
結晶核剤とは、熱可塑性樹脂の分野で熱可塑性樹脂の結晶化を促進する物質のことであり、熱可塑性樹脂の分野で結晶核剤として知られているあらゆる物質が使用可能である。結晶核剤としては、有機系結晶核剤および無機系結晶核剤が挙げられ、発泡樹脂成形品内部の繊維化の観点から好ましい結晶核剤は有機系結晶核剤である。有機系結晶核剤は、熱溶融および冷却することにより、または溶融混錬およびせん断流動を与えることにより、自己組織化による三次元網目構造を形成し得る有機化合物である。このような有機系結晶核剤をマトリクス用熱可塑性樹脂に添加して熱溶融および冷却に供することにより、マトリクス用熱可塑性樹脂の微細で均一な結晶の成長が促進される。これに伴い、結晶化により生成する気泡も微細化されるため、コアバック式発泡射出成形時において当該気泡が起点となり、より微細な繊維化が達成される。
【0029】
有機系結晶核剤の具体例としては、例えば、ソルビトール系化合物、リン酸エステル系化合物、アミド系化合物、ロジン系化合物が挙げられ、発泡樹脂成形品内部の繊維化の観点から好ましくはソルビトール系化合物である。ソルビトール系化合物は芳香族環含有ソルビトール系化合物および脂肪族環含有ソルビトール系化合物を包含するものであり、好ましいソルビトール系化合物は芳香族環含有ソルビトール系化合物である。
【0030】
芳香族環含有ソルビトール系化合物の好ましい具体例として、一般式(1)で表されるソルビトール系化合物が挙げられる。
【0032】
式(1)中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素原子、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1〜4のアルキル基、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシ基、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシカルボニル基、またはハロゲン原子である。R
1およびR
2の、ベンゼン環における結合位置は特に限定されず、それぞれ独立して、例えば、オルト位、メタ位およびパラ位であってよい。ベンゼン環におけるR
1およびR
2の結合位置は、それぞれ独立して、後述するmが1のときはパラ位が好ましく、mが2のときはメタ位およびパラ位が好ましい。
好ましいR
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素原子、または直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)であり、より好ましくは直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)である。
【0033】
R
3は、水素原子、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1〜4のアルキル基、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数2〜4のアルケニル基、または直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1〜4のヒドロキシアルキル基である。
好ましいR
3はそれぞれ独立して、水素原子、または直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)であり、より好ましくは水素原子である。
【0034】
mおよびnはそれぞれ独立して、1〜5の整数であり、好ましくは1または2である。mが2以上の整数のとき、2つのR
1は互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成してもよい。nが2以上の整数のとき、2つのR
2は互いに結合してそれらが結合するベンゼン環と共にテトラリン環を形成してもよい。
【0035】
pは0または1であり、好ましくは1である。
【0036】
芳香族環含有ソルビトール系化合物として、市販のゲルオールMD(新日本理化社製)(式(1)において、R
1=R
2=メチル基(m=n=1でパラ位)、R
3=水素原子、p=1)、ゲルオールD(新日本理化社製)(式(1)において、R
1=R
2=水素原子、R
3=水素原子、p=1)、ゲルオールDXR(新日本理化社製)(式(1)において、R
1=R
2=メチル基(m=n=2でメタ位およびパラ位)、R
3=水素原子、p=1)、ゲルオールE−200(新日本理化社製)、Millad NX8000(ミリケン社製)(式(1)において、R
1=R
2=プロピル基(m=n=1でパラ位)、R
3=プロピル基、p=1)、RiKAFAST AC(新日本理化社製)、NC−4(三井化学社製)(式(1)において、R
1=R
2=エチル基(m=n=1でパラ位)が入手可能である。
【0037】
本発明においては、結晶核剤として、熱履歴が抑制された結晶核剤、特に熱履歴が抑制された有機系結晶核剤を使用する。熱履歴が抑制された結晶核剤とは、過去にその融点以上に加熱されていない結晶核剤、詳しくは製造されてから、発泡樹脂成形品の製造に使用されるまで、その融点以上に加熱されていない結晶核剤、という意味である。このような結晶核剤(特に有機系結晶核剤)は、製造されてから、融点以上に加熱されていないため、分子の分解が十分に抑制されている。これにより、結晶核剤が本来的に有するマトリクス用熱可塑性樹脂の結晶化促進機能を低下させることなく十分に発揮できるため、得られる発泡樹脂成形品の各種物性(例えば、吸音性、耐黄変性、耐臭気性、断熱性および衝撃吸収性など)が向上するものと考えられる。特に熱履歴が抑制された有機系結晶核剤は、本来的に有する三次元網目構造形成能が十分に維持され、より微細な繊維化が達成されるため、十分な吸音性を得ることができるものと考えられる。また分子の分解が抑制されると、分解物の生成も抑制されるため、当該分解物に起因する黄変および臭気の問題が解決される。
【0038】
熱履歴が抑制された結晶核剤としては、例えば、結晶核剤としての化合物(特に有機系結晶核剤としての有機化合物)(市販品を含む)を、その融点未満の温度で製造されるマスターバッチの形態で使用してもよいし、またはマスターバッチの形態とすることなく、そのまま使用してもよい。発泡樹脂成形品内部のより微細な繊維化による吸音性のさらなる向上の観点からは、結晶核剤、特に有機系結晶核剤を、その融点未満の温度で製造されるマスターバッチの形態で使用することが好ましい。マスターバッチとは、添加剤の使用形態(状態)を表す技術用語であり、添加剤をそのまま使用するのではなく、添加剤を予め熱可塑性樹脂とともに混合および混練し、固化および粉砕により得られる予備混合物の形態のことである。マスターバッチ用熱可塑性樹脂としては通常、マトリクス用熱可塑性樹脂と同様のポリマーの範囲内から選択される。好ましいマスターバッチ用熱可塑性樹脂は、マトリクス用熱可塑性樹脂と同じ種類のポリマーであり、特にメルトフローレート等の物性も種類も同一のポリマーを使用することが好ましい。
【0039】
結晶核剤としての化合物をその融点未満の温度で製造されるマスターバッチの形態で使用するとは、加熱温度を当該化合物の融点未満の温度に制御して製造された結晶核剤マスターバッチを使用する、という意味である。このような方法で得られた結晶核剤マスターバッチ中では、結晶核剤(特に有機系結晶核剤)は溶融していないため、マスターバッチ用熱可塑性樹脂中に粒状に分散されている。結晶核剤(特に有機系結晶核剤)がマスターバッチ用熱可塑性樹脂中に粒状に分散されているとは、当該結晶核剤が有する一次粒子(例えば針状結晶)の形態および/またはその凝集物(二次粒子)の形態で分散されているという意味であり、分子レベルで分散または溶解されていることを意味するものではない。結晶核剤の粒状分散は、例えば、結晶核剤が製造されてからその融点以上の熱を受けていないために、達成される。原料としての結晶核剤(マスターバッチ製造前の結晶核剤)の平均粒径は通常、1μm以上であり、具体的には2μm以上1000μm以下、好ましくは3μm以上800μm以下である。結晶核剤マスターバッチにおける結晶核剤の最大分散粒径は通常、30μm以上であり、好ましくは40〜500μm、より好ましくは50〜300μmの範囲である。融点以上に加熱されて製造された結晶核剤マスターバッチにおいては、結晶核剤は熱可塑性樹脂中に分子レベルで分散または溶解されるため、上記のような最大分散粒径は達成されず、より小さい値となる。
【0040】
結晶核剤(マスターバッチ製造前の結晶核剤)の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計(マルバーンインスツルメンツ社製、「マスターサイザー3000」)を用いて、以下の方法により決定した。まず、湿式測定セルを用い、十分に撹拌混合することで、分散剤として界面活性剤を加えた水溶液中に、試料を分散させ、続いて、得られた混合物を装置内で更に撹拌、循環させながら、超音波を当てて装置内にて十分に均一に分散させた。その後、超音波を当てながら試料の粒度分布を測定した。得られた粒度分布より体積基準累積50%粒径を求め、平均粒径とした。
【0041】
また、結晶核剤マスターバッチにおける結晶核剤の最大分散粒径は、光学顕微鏡(ニコン社製)にホットステージ(メトラートレド社製)を取り付け、ガラス板に結晶核剤マスターバッチを挟み、ホットステージにセットし、所定の温度に加熱した後、溶融樹脂の厚みが1mm以下となるようにガラス板の上から溶融樹脂をゆるやかに押しつぶし、所定の温度に保持した状態で倍率50倍にて溶融樹脂中の結晶核剤の最大粒径を測定し、任意の100個の粒子について各粒子の粒径(最大径)を測定したときの、最大値である。なお、上記所定の温度とは、当該マスターバッチ中のマスターバッチ用熱可塑性樹脂は溶融するが、結晶核剤は溶融しない温度であり、通常は180℃である。
【0042】
熱履歴が抑制されなかった結晶核剤、例えば融点以上に加熱された結晶核剤、は分子の分解等により、その結晶化促進機能が低下する。特に融点以上に加熱された有機系結晶核剤は三次元網目構造形成能が低下する。このため、このような結晶核剤を用いて得られた発泡樹脂成形品の各種物性(例えば、吸音性、耐黄変性、耐臭気性、断熱性および衝撃吸収性など)は低下するものと考えられる。特に融点以上に加熱された有機系結晶核剤を用いて得られた発泡樹脂成形品は繊維化が十分に達成され難いため、本発明の繊維質発泡樹脂成形品ほど、十分な吸音性を得ることができない。また分子の分解物の存在のため、耐黄変性および耐臭気性が低下する。
【0043】
結晶核剤マスターバッチは結晶核剤およびマスターバッチ用熱可塑性樹脂を混合し、溶融および混練し、冷却および粉砕により得ることができる。このとき、マスターバッチ用熱可塑性樹脂の融点Tmrおよび結晶核剤(特に有機系結晶核剤)の融点Tmcは以下の関係式(1)を満たし、好ましくは関係式(1’)、より好ましくは関係式(1’’)を満たす。関係式(1)を満たさないと、結晶核剤が粒状に含有するマスターバッチを得ることができない。
Tmr<Tmc (1)
Tmr+40≦Tmc (1’)
Tmr+60≦Tmc (1’’)
【0044】
マスターバッチ用熱可塑性樹脂の融点Tmrは通常、50〜250℃であり、好ましくは80〜200℃である。
結晶核剤の融点Tmcは通常、150〜350℃であり、好ましくは200〜300℃である。
【0045】
マスターバッチ用熱可塑性樹脂の融点Tmrおよび結晶核剤の融点Tmcは以下の方法により測定された値を用いている。
試料を50℃から10℃/分で昇温した時の熱流−温度曲線を、示差走査熱量計(セイコーインスツル社製)により求める。この熱流−温度曲線の吸熱ピークを示す温度をそれぞれ融点とする。
【0046】
結晶核剤マスターバッチの製造時における加熱温度(最高温度)Tmmは通常、以下の関係式(2)を満たし、好ましくは関係式(2’)、より好ましくは関係式(2’’)を満たす。
Tmr≦Tmm<Tmc (2)
Tmr+5≦Tmm≦Tmc−10 (2’)
Tmr+10≦Tmm≦Tmc−20 (2’’)
【0047】
結晶核剤マスターバッチの平均粒径は通常、0.1〜10mmである。
結晶核剤マスターバッチの平均粒径は、任意の100個のマスターバッチ粒子を選択し、各粒子における最大径を粒径として測定された値の平均値である。
【0048】
結晶核剤マスターバッチ中、結晶核剤(特に有機系結晶核剤)は当該マスターバッチ全量に対して通常は1〜40重量%の量で分散されており、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%の量で分散されている。
【0049】
結晶核剤マスターバッチは、本発明において、耐黄変性にも優れている。例えば、結晶核剤マスターバッチが、マスターバッチ用熱可塑性樹脂としてポリプロピレン系樹脂を含むとき、当該結晶核剤マスターバッチをポリプロピレンとともに180〜210℃の温度で成形して得られた成形体のイエロー・インデックス値は通常、−5〜1であり、好ましくは−5〜0、より好ましくは−5〜−1である。
【0050】
結晶核剤マスターバッチは、本発明において、耐臭気性にも優れている。例えば、結晶核剤マスターバッチが、マスターバッチ用熱可塑性樹脂としてポリプロピレン系樹脂を含むとき、当該結晶核剤マスターバッチをポリプロピレンとともに180〜210℃の温度で成形して得られた成形体のアルデヒド抽出量は通常、0.3ppm/g以下であり、好ましくは0.2ppm/g以下である。アルデヒド抽出量は小さいほど好ましく、その下限値は特に限定されないが、通常は0.01ppm/gである。
【0051】
結晶核剤の含有量は通常、熱可塑性樹脂組成物(発泡樹脂成形品)全量に対して0.01〜2重量%であり、好ましくは0.1〜1重量%である。ここでいう結晶核剤の含有量とは結晶核剤単独の含有量である。結晶核剤マスターバッチを使用する場合は、上記組成物(成形品)に対する結晶核剤単独の含有量が上記範囲内になるように、当該マスターバッチを使用すればよい。
【0052】
熱可塑性樹脂組成物には、補強用繊維等の添加剤をさらに含有させてもよい。
【0053】
本工程での溶融混練温度、すなわちシリンダ温度は、熱可塑性樹脂組成物が十分に溶融する限り特に制限されず、好ましくは、後述する熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfに対して、Tccf+70〜Tccf+130℃であり、より好ましくはTccf+80〜Tccf+120℃である。
【0054】
(射出工程)
本工程は、溶融混練工程で得られた熱可塑性樹脂組成物の溶融物を金型内に射出する工程である。詳しくは、溶融物を、
図1の発泡射出成型装置1のノズル16から固定型21と可動型22からなる金型内のキャビティ23に射出する。
図1中、キャビティ23は直方体形状を有しているが、これに限定されるものではなく、目的とする成形品形状に基づく所望の形状を有していればよい。
【0055】
金型温度は、後述する熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfに対して、Tccf−70〜Tccf−20℃が好ましく、より好ましくはTccf−70〜Tccf−40℃である。
【0056】
射出速度は特に限定されず、通常20〜200mm/秒であり、好ましくは30〜150mm/秒である。射出量は、キャビティ23が充満される量である。
【0057】
キャビティ23の厚み方向の最大厚みは通常1〜10mmであり、好ましくは1〜5mmである。厚み方向とは、後述するコアバック工程における可動型22の移動方向、すなわちコアバック方向と平行な方向を意味する。
【0058】
(コアバック工程)
本工程は、可動型22をコアバックさせることにより、射出工程で射出された溶融物を発泡させる工程である。詳しくは、熱可塑性樹脂組成物の溶融物を射出後、金型内で保圧し、特定のタイミングで可動型22をコアバックさせ、発泡を行う。コアバックとは、キャビティ23の体積を増大させるために、可動型22を固定型21とは反対方向に移動させることをいう。これにより、キャビティ23内の圧力が低減され、溶融物の発泡が促進される。
【0059】
本工程においては、コアバックを以下に示す特定のタイミングで行うことにより、発泡とともに繊維化を行うことができる。すなわち、コアバックは、熱可塑性樹脂組成物の冷却速度19℃/秒での結晶化温度をTccf(℃)としたとき、射出された熱可塑性樹脂組成物(溶融物)の温度がTccf−10〜Tccf+20℃、好ましくはTccf−5〜Tccf+20℃、好ましくはTccf〜Tccf+20℃であるときに開始する。このようなタイミングでコアバックを開始することにより、コアバック初期において、発泡によりセルを十分に形成しつつ、形成されたセルの合一を防止することができる。このため、コアバック初期に十分な数のセルの微分散が達成されるので、その後のコアバックにより、セル壁をコアバック方向に延伸させつつ、コアバック方向に対する垂直方向で破断させることができる。これらの結果として、繊維化が達成されるものと考えられる。コアバック開始温度が低すぎると、コアバック初期においてセルを十分に形成できないので、隣接するセル間のセル壁厚みが比較的大きな発泡体が得られるだけで、十分な繊維化は起こらない。コアバック開始温度が高すぎると、コアバック初期においてセルの合一が進むので、セル径が比較的大きな発泡体が得られるだけで、十分な繊維化は起こらない。
【0060】
本発明において、コアバックのタイミングを、比較的遅い冷却速度で測定された結晶化温度に基づいて決定しても、十分な繊維化は達成されない。コアバック初期の十分な数のセルの微分散は、熱可塑性樹脂組成物の結晶化に基づくものと考えられる。そこで、例えば、100℃/分以下の冷却速度で測定された結晶化温度に基づいてコアバックのタイミングを表しても、冷却速度がコアバックを伴う発泡射出成形の実情に全く合っていないために、結晶化は十分に起こらず、結果として繊維化は十分に達成されないものと考えられる。
【0061】
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfは以下の方法により測定することができる。
熱可塑性樹脂組成物を、融点以上の温度に加熱して19℃/秒にて冷却したときの熱流−温度曲線を、高速示差走査熱量計(METTLER TOLEDO社製)により求める。この熱流−温度曲線が吸熱ピークを示す温度を結晶化温度Tccf(℃)とする。
【0062】
熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfは好ましくは80〜190℃であり、より好ましくは80〜180℃である。マトリクス用熱可塑性樹脂がポリプロピレンの場合、熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度Tccfは、さらに好ましくは80〜135℃である。
【0063】
保圧時において、熱可塑性樹脂組成物の温度を温度圧力センサー24により観測しておくことにより、コアバック開始のタイミングを計ることができる。
保圧の圧力および保圧の時間は、コアバックを上記タイミングで開始できれば特に限定されない。保圧の圧力は通常、10〜80MPaであり、好ましくは20〜60MPaである。保圧の時間は通常、1〜10秒であり、好ましくは2〜7秒である。
【0064】
コアバック開始時において、熱可塑性樹脂組成物中のセル径は、微細繊維化の観点から、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
【0065】
コアバック開始時における熱可塑性樹脂組成物中のセル径は、コアバックさせないこと以外、本発明に係る発泡樹脂成形品の製造方法と同様の方法により、溶融混練工程および射出工程を実施した後、金型内において熱可塑性樹脂組成物の溶融物をそのまま冷却して得られた試料を用いて測定することができる。詳しくは、上記試料を、コアバック方向に対して垂直方向で切断し、得られた断面の顕微鏡写真を撮影する。当該写真において、スキン層から500μm以上離れた領域において、任意の100個のセルの直径(最大径)を測定し、最大値を求める。
【0066】
コアバックさせる量は所定の発泡倍率が達成される量である。
発泡倍率は通常は1.1〜10倍であり、繊維化の観点から好ましくは3〜8倍、より好ましくは4〜6倍である。
【0067】
コアバックにかける時間は通常、0.1〜2秒であり、好ましくは0.2〜1.5秒である。
【0068】
本工程において金型温度は、射出工程時と同様の温度範囲内において維持することが好ましい。
【0069】
(冷却工程)
コアバック完了後は、発泡体をそのまま金型内で保持することにより、冷却し、その後、金型を開いて発泡樹脂成形品を得ることができる。
【0070】
[発泡樹脂成形品]
本発明の発泡樹脂成形品は内部で連続または不連続気泡を有していてもよいし、または繊維化されていてもよい。吸音性のさらなる向上の観点から好ましい本発明の実施態様においては、発泡樹脂成形品は内部で繊維化されており、繊維が配向している繊維質発泡樹脂成形品である。本明細書中、繊維化とは、セル壁がコアバック方向に延伸されつつ、コアバック方向に対する垂直方向で破断され、繊維が形成されるという意味である。繊維化は、形成される繊維がコアバック方向に対して平行に配向するように達成される。このため、繊維の配向方向から、コアバック方向を検知することができる。繊維の配向方向はまた発泡樹脂成形品の厚み方向とも平行である。本明細書中、平行とは、2つの方向のなす角度が厳密に0°でなければならないというわけではなく、±5°程度の範囲は許容される。内部とは、成形品表面のスキン層から100μm以上、好ましくは200μm以上離れた領域である。
【0071】
本発明において繊維は、発泡成形品のコアバック方向に対する垂直断面を示す
図2に示されるように、繊維状物30だけでなく、セル壁が破断されてなる非環状のセル壁痕31および32を包含するものとし、破断されることなく残存する環状のセル壁33を包含するものではない。本発明において繊維状物30および非環状のセル壁痕31および32は、発泡成形品のコアバック方向に対する垂直断面において中実であり、中空のものではない。
【0072】
本発明の発泡樹脂成形品は、内部の全てが必ずしも繊維化されていなければならないというわけではなく、例えば、
図2に示されるように、一部に環状のセル壁33を有することを妨げるものではない。
【0073】
本発明の発泡樹脂成形品は、繊維が、発泡樹脂成形品のコアバック方向に対して垂直な断面において10μm以下、特に0.5〜10μm、好ましくは1〜10μmの平均径を有する。
【0074】
繊維の平均径は、発泡成形品をコアバック方向に対して垂直に切断した断面の顕微鏡写真から算出された値を用いている。詳しくは、当該写真において任意の100個の繊維における繊維径を測定し、それらの平均値を求める。繊維径は、繊維が、
図2に示すように、繊維状物30の場合は、最長径d1であり、繊維が非環状セル壁痕31および32の場合は、当該セル壁痕の最大厚みd2、d3である。
【0075】
本発明の発泡樹脂成形品は、発泡樹脂成形品のコアバック方向に対して垂直な断面において、繊維の数が好ましくは40個/100μm
2以上、特に40〜2000個/100μm
2であり、より好ましくは100〜2000個/100μm
2である。
【0076】
単位面積あたりの繊維の数は、発泡成形品をコアバック方向に対して垂直に切断した断面の顕微鏡写真に基づく値を用いている。詳しくは、
図2に示すように、任意の領域において繊維30,31および32の総数を求め、当該総数を当該領域の面積で除することにより求める。本発明においては、10個の任意の領域における「単位面積あたりの繊維の数」の平均値を用いている。
【0077】
[用途]
本発明の発泡樹脂成形品は、上記した結晶核剤(特に結晶核剤マスターバッチ)を含むことにより、優れた特性を有する。優れた特性としては、例えば、吸音性、耐黄変性、耐臭気性、断熱性および衝撃吸収性などの物性が挙げられる。
【0078】
本発明の発泡樹脂成形品は、例えば高周波音(周波数1000Hz以上5000Hz以下)に対して優れた吸音性を有する。具体的には、本発明の発泡樹脂成形品の2000Hzでの吸音率は通常は0.44以上であり、好ましくは0.45以上、より好ましくは0.47以上である。本発明の発泡樹脂成形品の1000Hzでの吸音率は通常は0.24以上であり、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.33以上である。
【0079】
本発明の発泡樹脂成形品は、例えば中周波音(周波数500Hz以上1000Hz未満)に対しても優れた吸音性を有する。具体的には、本発明の発泡樹脂成形品の630Hzでの吸音率は通常は0.18以上であり、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.23以上である。
【0080】
本発明の発泡樹脂成形品は、例えば低周波音(周波数200Hz以上500Hz未満)に対しても優れた吸音性を有する。具体的には、本発明の発泡樹脂成形品の250Hzでの吸音率は通常は0.08以上であり、好ましくは0.09以上、より好ましくは0.10以上である。
【0081】
本発明の発泡樹脂成形品が吸音する高周波音、中周波音および低周波音は自動車用途において以下の音に相当する:
高周波音−エンジン放射音;
中周波音−ロードノイズ;
低周波音−エンジン振動、吸排気音。
【実施例】
【0082】
[実施例1]
(結晶核剤マスターバッチA)
マスターバッチ用熱可塑性樹脂としてのポリプロピレンペレット(NBX04G;日本ポリプロ社製;MFR36g/10分(230℃)、Tcps124℃)100重量部および結晶核剤としてのゲルオールMD(新日本理化社製、融点259℃)5.0重量部を200℃で溶融混練、冷却および粉砕して、平均粒径4mmの結晶核剤マスターバッチAを得た。ポリプロピレンペレットの結晶化温度Tcpsでの貯蔵弾性率は1×10
5Paであった。
【0083】
(溶融混練工程)
上記結晶核剤マスターバッチA 10.5重量部およびマトリクス用熱可塑性樹脂としてのポリプロピレンペレット(NBX04G;日本ポリプロ社製;MFR36g/10分(230℃)、Tcps124℃)を90重量部をドライブレンドし、
図1の発泡射出成型装置1のホッパ13からシリンダ11内に投入した。これらの混合物をシリンダ11内で185℃(=Tccf+92℃)にて溶融および混練しながら、高圧ガス供給装置17により物理発泡剤としての窒素ガスをマトリクス用熱可塑性樹脂100重量部に対して0.132重量部注入した。得られた熱可塑性樹脂組成物の結晶化温度TccfおよびTccsを測定したところ、それぞれ93℃および124℃であり、Tccsでの貯蔵弾性率は1×10
5Paであった。
【0084】
(射出工程)
シリンダ11内の溶融物を、固定型21および可動型22からなる金型間のキャビティ23内に射出した。金型温度は40℃(=Tccf−53℃)であり、射出速度は40mm/秒であり、キャビティの厚みは2mmであった。
【0085】
(コアバック工程)
射出後、金型キャビティ内で溶融物を40MPaで5.8秒保圧した後、可動型22を8mmだけ0.4秒かけて固定型21の方向とは反対方向にコアバックさせることにより、発泡および繊維化させた。コアバック開始時において、溶融物の温度は94℃(=Tccf+1℃)であり、溶融物中のセル径は20μm以下であった。発泡倍率は5倍であった。本工程において金型は40℃に維持した。
【0086】
(冷却工程)
コアバック後、発泡体をそのまま40℃の金型内で保持することにより、冷却した。その後、金型を開いて発泡成形品を得た。
【0087】
[比較例1]
以下の方法で製造した結晶核剤マスターバッチBを結晶核剤マスターバッチAの代わりに用いたこと以外、実施例1と同様の方法により、発泡成形品を製造した。
【0088】
(結晶核剤マスターバッチB)
溶融混練温度を270℃に変更したこと以外、結晶核剤マスターバッチAの製造方法と同様の方法により、結晶核剤マスターバッチBを得た。
【0089】
[吸音性]
発泡樹脂成形品の垂直入射吸音率を測定した。詳しくは、成形品を、そのコアバック方向が吸音率測定のための垂直方向に平行になるように用いた。測定条件を以下に示し、結果を
図3および表1に示す。
測定装置:φ40mmの音響インピーダンス管装置(日東紡音響エンジニアリング(株))。
測定条件:試料サイズ;φ40mm、音波入射側のスキン層を除去。
(2000Hzでの吸音率)
◎;0.47以上;
○;0.45以上;
△;0.44以上(実用上問題なし);
×;0.44未満(実用上問題あり)。
(1000Hzでの吸音率)
◎;0.33以上;
○;0.30以上;
△;0.24以上(実用上問題なし);
×;0.24未満(実用上問題あり)。
(630Hzでの吸音率)
◎;0.23以上;
○;0.20以上;
△;0.18以上(実用上問題なし);
×;0.18未満(実用上問題あり)。
(250Hzでの吸音率)
◎;0.10以上;
○;0.09以上;
△;0.08以上(実用上問題なし);
×;0.08未満(実用上問題あり);
【0090】
[耐黄変性]
ASTM D1925に基づいて、イエローインデックス(黄色度)の測定を行った。
試料の作成に際しては、各実施例/比較例で得られた結晶核剤マスターバッチ1重量部およびポリプロピレンペレット(NBX04G;日本ポリプロ社製;MFR36g/10分(230℃)、Tcps124℃)99重量部を用い、成形温度180℃または210℃で厚さ2mmの板状の試料を成形した。
イエローインデックスは、値が大きいほど、黄色みが強いことを示す。
【0091】
[耐臭気性]
下記で得られた試料より切り出した試験片(サイズ5cm×5cm×1mm)20gと予め80℃に加熱した脱イオン水140gを225mlのガラス瓶中に密封した。その後、ガラス瓶を80℃の恒温槽中に2時間放置し、室温まで冷却した。次いで、ガラス瓶中の水溶液を、高速液体クロマトグラフィーを用いて、該試験片から抽出されたアルデヒド量を定量した。アルデヒドの発生量(即ち、抽出量)は、ppm/g、即ち試料1g当たりの抽出量(ppm)で表す。
耐黄変性の評価方法における試料の作成方法と同様の方法により、厚さ1mmの板状の試料を作成した。
アルデヒドは結晶核剤の熱分解により生成する。
【0092】
[結晶核剤マスターバッチ中における結晶核剤の最大分散粒径]
光学顕微鏡(ニコン社製)にホットステージ(メトラートレド社製)を取り付け、ガラス板に結晶核剤マスターバッチを挟み、ホットステージにセットし、所定の温度に加熱した。加熱後、溶融樹脂の厚みが1mm以下となるようにガラス板の上から溶融樹脂をゆるやかに押しつぶし、所定の温度に保持した状態で倍率50倍にて溶融樹脂中の結晶核剤の最大粒径を測定した。最大粒径は任意の100個の粒子について各粒子の粒径(最大径)を測定したときの、最大値のことである。
所定の温度とは、当該マスターバッチ中のマスターバッチ用熱可塑性樹脂は溶融するが、結晶核剤は溶融しない温度であり、通常は180℃である。
【0093】
[その他の物性の測定]
発泡成形品をコアバック方向に対して平行および垂直に切断し、それらの断面の顕微鏡写真を撮影した。
実施例および比較例で得られた両方の発泡成形品において、平行断面の顕微鏡写真より、発泡成形品の内部が繊維化されており、繊維がコアバック方向に対して平行に配向していることを確認した。
溶融物の結晶化温度TccsおよびTccf、溶融物のTccs(℃)での貯蔵弾性率、マトリクス用熱可塑性樹脂の結晶化温度Tcps、マトリクス用熱可塑性樹脂のTcpsでの貯蔵弾性率、コアバック開始時における溶融物の温度、コアバック開始時における溶融物の貯蔵弾性率、コアバック開始時における溶融物中のセル径は、繊維の平均径、繊維の数を前記した方法により測定した。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】