【解決手段】本発明の一実施形態に係る壁面走行装置10は、建造物の壁面12Wに張られたテンション部材20により前記壁面に押し付けられて該壁面を走行可能に構成されている。この装置10は、前記壁面を走行するように構成された走行部30と、前記テンション部材に接するように構成された接触部32と、前記走行部と前記接触部との間に設けられて、前記走行部と前記接触部との間隔を可変にするように構成された伸縮装置34と、前記テンション部材から前記壁面走行装置への押圧力を検出するように構成された押圧力検出装置61と、該押圧力検出装置が検出した押圧力が所定の押圧力になるように前記伸縮装置の作動を制御する伸縮制御部80とを備える。
前記接触部は、前記伸縮装置に接続された内側部材と、該内側部材の外側に位置して前記テンション部材に接触する外側部材と、前記内側部材と前記外側部材との間に設けられる弾性部材とを有し、
前記押圧力検出装置は、前記内側部材と前記外側部材との間に設けられている、
請求項1に記載の壁面走行装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態を添付図に基づいて説明する。同一の部品(又は構成)には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る壁面走行装置としての壁面洗浄装置10の、一例としての使用状態を示す図である。
図1では、壁面洗浄装置10は、建造物であるビル12の外壁つまり壁面12Wを走行するようにセッティングされている。ビル12の最上部となる屋上12Rに、吊下装置であるウインチ14が配設されている。ウインチ14は、ウエイトここでは水が入ったタンク16により屋上12Rに固定されている第1固定部18に取り付けられている。ウインチ14から延びるワイヤ19は、壁面洗浄装置10に接続されている。壁面洗浄装置10は、このウインチ14により昇降自在に吊り下げられ、ビル12の壁面12Wに沿って昇降して、壁面12Wを洗浄する。
【0015】
一方、ビル12の壁面12Wにはテンション部材としてのテンションワイヤ20が張設されている。テンションワイヤ20の一端20aは、ビル12の屋上12Rの固定部18に接続されていて、その他端20bは地上の第2固定部22に接続されている。なお、第2固定部22は、ウエイトここでは水が入ったタンク24により地上に固定されている。壁面12Wに沿って吊り下げられた壁面洗浄装置10は、壁面12Wとテンションワイヤ20との間に挟まれることで、テンションワイヤ20の張力によりテンションワイヤ20から押圧力を受けて壁面12Wに押し付けられている。これにより、壁面洗浄装置10は、壁面12Wに密着し、壁面12Wに沿って走行可能となる。なお、テンション部材は、テンションワイヤ20であることに限定されず、例えばテンションベルトであってもよい。
【0016】
このように、壁面洗浄装置10は、建造物であるビル12の壁面12Wに張られたテンションワイヤ20による押圧力で壁面12Wに押し付けられて壁面12Wを走行可能に構成されている。壁面洗浄装置10は、走行部30と、テンションワイヤ20に接触するように構成された接触部32と、走行部30と接触部32との間に設けられる伸縮装置34とを備える。なお、壁面洗浄装置10は、テンションワイヤ20が接触部32のみに実質的に接触し、走行部30に対して非接触の状態に維持されるように構成されている。以下では、壁面洗浄装置10の構成について、
図1と、
図1と同じ使用状態であるが
図1のときと壁面洗浄装置10が異なる位置にあるときの壁面洗浄装置10及びその周囲の拡大図を示す
図2とに基づいて説明する。
【0017】
走行部30は、壁面12Wを走行するように構成されている。走行部30は、タイヤ(車輪)36と、それが取り付けられた台座部38とを備える。台座部38は、
図1及び
図2の使用状態において壁面12Wと実質的に平行になる台座基部38aと、そこから直角に延びる台座先端部38bとを備える。走行部30の台座部38の台座先端部38b側には、ウインチ14から延びるワイヤ19が接続されている。走行部30は、台座部38の台座基部38aに、4つのタイヤ36を備える。しかし、タイヤ36の数は4つより少なくても多くてもよい。テンションワイヤ20が張られた方向である鉛直方向、つまり
図1及び
図2での上下方向D1において、上側に位置する2つのタイヤ36A(
図1及び
図2では片方のタイヤ36Aのみを示している。)は台座部38に固定されていて、その向きは固定である。
図1及び
図2での上下方向D1において下側に位置する2つのタイヤ36B(
図1及び
図2では片方のタイヤ36Bのみを示している。)も台座部38に固定されているが、向きが可変に構成されている。特にタイヤ36Bは、操舵装置40で、つまりステアリング機構により、その向きが可変に構成されている。操舵装置40は、
図3に示すように、2つのタイヤ36Bを連動させるリンク機構42と、このリンク機構42を操作するためのモータ44とを備える。なお、上下方向D1は第1方向に対応する。ただし、第1方向は鉛直方向つまり
図1及び
図2での上下方向であることに限定されず、例えば鉛直方向に対して斜めに傾いた方向であってもよい。
【0018】
接触部32は、テンションワイヤ20に接触するように構成されている。接触部32は、伸縮装置34を介して、走行部30の台座部38に、特に台座部38のうち壁面12Wに実質的に平行になる台座基部38aに取り付けられている。接触部32は、伸縮装置34に接続された内側部材46と、この内側部材46の外側に位置してテンションワイヤ20に接触する外側部材48と、これら内側部材46と外側部材48との間に設けられる弾性部材であるスプリング50とを有する。外側部材48は、外側プレート状部48aと、その外側プレート状部48aの外側に設けられたローラ48b、48cとを有する。テンションワイヤ20は外側部材48のローラ48b、48cに沿って外側部材48に摺接する。内側部材46と外側部材48の外側プレート状部48aとは、それぞれプレート状の部材であり、それらの間隔が可変に構成されている。
図1及び
図2の使用状態の壁面洗浄装置10において、内側部材46と外側部材48とは、伸縮装置34を設けたことにより、それぞれ壁面12Wに略直角の方向である直角方向D2に移動可能であり、スプリング50を設けたことによりそれらの間隔もその直角方向D2において可変である。
【0019】
そして、接触部32には、押圧力検出装置51が設けられている。押圧力検出装置51は、テンションワイヤ20から壁面洗浄装置10への押圧力を検出するように構成されている。本実施形態では、押圧力検出装置51は、内側部材46と外側部材48との間に設けられ、そこの圧力つまり押圧力が、スプリング50のバネ力に基づく基準圧力を中心にして所定の幅を有する所定圧力範囲の上限値よりも大きいか、その所定圧力範囲の下限値よりも小さいかを検出することができる。つまり、内側部材46と外側部材48との間の押圧力が所定圧力範囲外にあるか否かを、押圧力検出装置51は検出することができる。より具体的には、押圧力検出装置51は、2つのスイッチ51a、51bを有し、所定圧力範囲の上限値よりも押圧力が大きいとき、それらのうちの片方のスイッチがONになり、所定圧力範囲の下限値よりも押圧力が小さいとき、それらのうちのもう片方のスイッチがONになるように構成されている。なお、押圧力が所定圧力範囲内にあるとき、2つのスイッチ51a、51bのいずれもOFF状態にある。ただし、押圧力検出装置51は、このような構成を有することに限定されず、種々の既知の圧力センサを備えた構成を有してもよい。
【0020】
伸縮装置34は、走行部30と接触部32との間に設けられていて、走行部30と接触部32との間隔を可変にするように設けられている。特に、伸縮装置34は、走行部30と接触部32との間隔を、直角方向D2において、可変とするように設けられている。伸縮装置34は、
図2に示すように、走行部30と接触部32との間隔を可変にするように設けられる伸縮部材としてのジャッキ部52と、このジャッキ部52の伸縮を生じさせるための伸縮発生装置としての電動シリンダ54とを有する。なお、電動シリンダ54は、ボールネジ、リニアガイド及びモータ55を備えて構成されている。伸縮発生装置として、エアーシリンダ、油圧シリンダなどを用いてもよい。ジャッキ部52の一端は、走行部30の台座部38の台座基部38aに接続され、ジャッキ部52の他端は接触部32の内側部材46に接続されている。ジャッキ部52の長さが可変であるので、台座基部38a及び内側部材46には、ジャッキ部52の伸縮に応じて、
図1及び
図2で上下方向においてスライド移動を可能にするスライド部52a、52bが設けられている。電動シリンダ54の一端は台座基部38aに固定されていて、電動シリンダ54は台座側支点部54aを中心に回動可能である。電動シリンダ54の他端はジャッキ部52の1つの節部52cに取り付けられていて、電動シリンダ54はジャッキ側支点部54bを中心にして回動可能である。電動シリンダ54が伸長することで直角方向D2におけるジャッキ部52の長さは伸び、電動シリンダ54が短縮することで直角方向D2におけるジャッキ部52の長さは縮む。
【0021】
更に、壁面洗浄装置10は、テンションワイヤ20による押圧力で壁面12Wに押し付けられて壁面12Wを走行可能であるが、上下方向D1及び直角方向D2に直交する方向つまり、
図1及び
図2において紙面に直交する方向である左右方向D3(
図3参照)の振れを抑制することを可能にする構成を備える。まず、そのような振れを検出するために、壁面洗浄装置10には、テンションワイヤ20が張られた上下方向D1と直交する左右方向D3におけるテンションワイヤ20に対する接触部32の振れを検出する振れ検出装置56が設けられている。なお、左右方向D3は第2方向に対応する。第2方向は、第1方向に直交する方向であり、壁面12Wに沿った方向であるとよい。
【0022】
振れ検出装置56は、検出部本体58と、この検出部本体58から延出する延出検知部60とを備える。検出部本体58は、接触部32の外側部材48に固定されている。延出検知部60の自由端は、テンションワイヤ20に摺接する。本実施形態では、延出検知部60の自由端は、テンションワイヤ20から外れないように、リング状に形成されている。なお、延出検知部60の自由端は、他の構成や形状を有してもよく、例えばフック形状であってもよい。したがって、振れ検出装置56は、壁面洗浄装置10とテンションワイヤ20との相対的な関係に応じて、テンションワイヤ20に対する壁面洗浄装置10の接触部32の振れ又は逸れを検出することができる。なお、検出部本体58は2つのスイッチ58a、58bを有し、接触部32の傾きつまり振れに起因する延出検知部60の自由端の動き又は位置に応じてそれらスイッチ58a、58bのいずれかがONになることができる。テンションワイヤ20に対して真っ直ぐにつまり上下方向D1に沿って真っ直ぐに壁面洗浄装置10が壁面12Wを走行しているとき、検出部本体58の2つのスイッチ58a、58bのいずれもOFF状態にある。
【0023】
そして、壁面洗浄装置10は、その名の通り、壁面を洗浄する機能等を有する。壁面洗浄装置10のホース方向調整装置62には、ポンプ64から圧送される所定圧以上のつまり高圧の洗浄液が、例えば水が流れるホース部材66がつながっている。ホース方向調整装置62は、走行部30の台座部38に設けられている。ホース方向調整装置62は、台座基部38aに設けられた駆動本体部68と、この駆動本体部68から延出したホースガイド部70とを有する。なお、ホース部材66は壁面洗浄装置10のウエイトバランスを調整するための機能を担うウエイトバランス調整部材に対応し、ホース方向調整装置62はウエイトバランス調整部材の状態を変えるように構成されたウエイトバランス調整装置に対応する。
【0024】
図1及び
図2では、ホースガイド部70は、駆動本体部68から鉛直方向下側に延びている。洗浄液が流れるホース部材66は、その一部がホースガイド部70内部を通過して延び、更に一部が走行部30に沿って配設され、走行部30の台座先端部30b付近に設けられた洗浄ノズル72につなげられている。したがって、
図1及び
図2に示す使用状態において、壁面洗浄装置10は、ポンプ64から圧送された洗浄液を、壁面12Wに洗浄ノズル72から噴射して供給することができる。なお、壁面洗浄装置10は、その種々の箇所に様々な洗浄ノズルを設けることが可能である。また、壁面洗浄装置10は、
図1に示すように、噴射した洗浄液を回収する回収装置又は排液処理装置73(
図2では図示省略)を備える。
【0025】
ホース方向調整装置62の駆動体本体部68は、ホースガイド部70の向きを調整するためのモータ74を備える。モータ74が駆動することで、駆動本体部68を中心として、その周りにホースガイド部70は所定範囲内で回動することができる。
【0026】
壁面洗浄装置10は、制御装置80を有する。制御装置80は、例えばCPUである演算部と、ROMやRAM等の記憶装置と、入出力装置とを備え、所謂コンピュータとして構成されている。制御装置80には、上記押圧力検出装置51及び振れ検出装置56が接続されている。制御装置80は、上記モータ44、上記モータ55及び上記モータ74に接続されている。制御装置80は、後述する押圧力制御つまり伸縮制御、及び、振れ抑制制御を行うために、それぞれに対応した所定のプログラムやデータを記憶している。つまり、制御装置80は、押圧力検出装置51が検出した押圧力が所定の押圧力になるように伸縮装置34の作動を制御するように構成された伸縮制御部としての機能を担う機能部を有する。また、制御装置80は、振れ抑制制御部として機能する機能部を有する。振れ抑制制御は、操舵制御と、ホース方向制御とを含む。つまり、制御装置80は、振れ検出装置56が検出した振れを所定値以下に抑制するように、操舵装置40の作動を制御するように構成された操舵制御部としての機能を担う機能部を有する。更に、制御装置80は、振れ検出装置56が検出した振れを所定値以下に抑制するようにホース方向調整装置62の作動を制御するように構成されたホース方向制御部としての機能を担う機能部を有する。ただし、ホース方向制御部は振れ検出装置56が検出した振れを抑制するようにウエイトバランス調整装置の作動を制御するように構成されたウエイトバランス制御部の一例である。なお、制御装置80は、このような構成を有することに限定されず、押圧力検出装置51や振れ検出装置56からの信号に応じて作動するリレー回路によりその一部又は全部が置き換えられてもよい。
【0027】
押圧力検出装置51により検出された押圧力に基づく、伸縮装置34の作動の、より具体的には電動シリンダ54の作動の制御、つまり押圧力制御(伸縮制御)について
図4に基づいて説明する。押圧力検出装置51により検出された押圧力が上記所定圧力範囲の上限値よりも大きいとき(ステップS401で肯定判定)、押圧力を所定圧力範囲内の圧力に、つまり所定の押圧力に調整するように、直角方向D2でのジャッキ部52の長さを縮めるべく、制御装置80は、電動シリンダ54の作動を、つまりモータ55の作動を制御する(ステップS403)。押圧力検出装置51により検出された押圧力が上記所定圧力範囲の下限値よりも小さいとき(ステップS401で否定判定かつステップS405で肯定判定)、押圧力を所定圧力範囲内の圧力に、つまり所定の押圧力に調整するように、直角方向D2でのジャッキ部52の長さを伸ばすべく、制御装置80は、電動シリンダ54の作動を、つまりモータ55の作動を制御する(ステップS407)。そして、押圧力検出装置51により検出された押圧力が上記所定圧力範囲内にあるとき、つまり、本実施形態では押圧力検出装置51により何ら検出信号が生じないとき(ステップS401で否定判定かつステップS405で否定判定)、制御装置80は、電動シリンダ54の作動を、つまりモータ55の作動を特に制御しない。
【0028】
次に、振れ検出装置56により検出された振れに基づく、振れ抑制制御における操舵装置40の制御について、
図3、
図5及び
図6に基づいて説明する。まず、
図3に基づいて、ある程度以上の左右方向D3の振れが壁面洗浄装置10に生じていないときについて説明する。ある程度以上の左右方向D3の振れが壁面洗浄装置10に生じていないとき、
図3では壁面洗浄装置10の延出検知部60がテンションワイヤ20に沿って鉛直方向に略真っ直ぐになっている状態で壁面洗浄装置10の接触部32もテンションワイヤ20に沿って略真っ直ぐになっているので、検出部本体58のスイッチ58a、58bはいずれもOFFである。このとき、操舵装置40のモータ44は、
図3に示すようにタイヤ36Bが真っ直ぐになるように制御されている。しかし、
図3に矢印A1で示すように壁面洗浄装置10の接触部32がテンションワイヤ20に対して振れるとき、テンションワイヤ20に係合している延出検知部60は壁面洗浄装置10の接触部32に対して傾くので、スイッチ58a、58bのいずれかがONになる。このとき、制御装置80は、その振れを抑制するように、操舵装置40のモータ44を制御する。
【0029】
振れ検出装置56により、例えば下降している壁面洗浄装置10の接触部32の左側への振れが、つまり壁面洗浄装置10の接触部32に対して延出検知部60がS1側に傾く接触部32の振れが検出されたとき(ステップS501で肯定判定)、その左側の振れを抑制するように、操舵装置40のモータ44が制御される(ステップS503)。例えば、それとは逆側の向きに壁面洗浄装置10の軌道を修正するべく、
図6(c)に示すようにタイヤ36Bの向きを変えるようにモータ44は制御される。振れ検出装置56により、例えば下降中に、壁面洗浄装置10の接触部32の右側への振れが、つまり壁面洗浄装置10の接触部32に対して延出検知部60がS2側に傾く接触部32の振れが検出されたとき(ステップS501で否定判定かつステップS505で肯定判定)、その右側の振れを抑制するように、操舵装置40のモータ44が制御される(ステップS507)。例えば、それとは逆側の向きに壁面洗浄装置10の軌道を修正するべく、
図6(b)に示すようにタイヤ36Bの向きを変えるようにモータ44は制御される。なお、壁面洗浄装置10が壁面12Wを上昇しているとき、タイヤ36Bは、ステップS503やステップS507ではそれらと逆向きに制御される。そして、振れ検出装置56により検出された振れが所定範囲内にあるとき、つまり、本実施形態では触れ検出装置56により何ら検出信号が生じないとき(ステップS501で否定判定かつステップS505で否定判定)、制御装置80は、
図3に示すようにタイヤ36の向きが真っ直ぐなニュートラル状態になるように操舵装置40のモータ44を制御する。ここではこのニュートラル状態にするモータ44の制御はステップS501及びステップS505で否定判定されたとき、自動的に行われるようにプログラムが構築されている。例えば、ステップS505で否定判定されたとき、次のルーチンに進む前に至る「ニュートラル状態制御」のステップが、
図5のフローチャートに設けられてもよい。この場合、「ニュートラル状態制御」のステップに至ることで、
図3に示すようにタイヤ36の向きが真っ直ぐなニュートラル状態になるように操舵装置40のモータ44は制御される。
【0030】
更に、振れ検出装置56により検出された振れに基づく、振れ抑制制御におけるホース方向調整装置62の制御について、
図3、
図5及び
図6に基づいて説明する。まず、
図3に基づいて、初期状態においてある程度以上の左右方向の振れが壁面洗浄装置10に生じていないときについて説明する。洗浄開始段階などの初期状態において、ある程度以上の左右方向の振れが壁面洗浄装置10に生じていないとき、
図3に示すように壁面洗浄装置10の延出検知部60がテンションワイヤ20に沿って鉛直方向においてつまり上下方向D1において略真っ直ぐになっている状態で壁面洗浄装置10の接触部32もテンションワイヤ20に沿って略真っ直ぐになっているので、検出部本体58のスイッチ58a、58bがいずれもOFFである。このとき、ホース方向調整装置62のモータ74は、
図3に示すようにホース方向調整装置62のホースガイド部70は鉛直方向つまり上下方向D1に略真っ直ぐになるように制御されている。しかし、
図3に矢印A1で示すように壁面洗浄装置10が振れるとき、テンションワイヤ20に係合している延出検知部60は壁面洗浄装置10の接触部32に対して傾くので、スイッチ58a、58bのいずれかがONになる。このとき、制御装置80は、その振れを抑制するように、ホース方向調整装置62のモータ74を制御する。
【0031】
振れ検出装置56により、例えば下降中に、壁面洗浄装置10の接触部32の左側への振れが、つまり壁面洗浄装置10の接触部32に対して延出検知部60がS1側に傾く接触部32の振れが検出されたとき(ステップS501で肯定判定)、その左側の振れを抑制するように、ホース方向調整装置62のモータ74が制御される(ステップS503)。本実施形態では、壁面洗浄装置10のウエイトバランスを好適に保つことでその振れを抑制するべく、
図6(a)に示すようにホースガイド部70の向きを左側S4にするようにモータ74は制御される。振れ検出装置56により、例えば下降中に、壁面洗浄装置10の接触部32の右側への振れが、つまり壁面洗浄装置10の接触部32に対して延出検知部60がS2側に傾く接触部32の振れが検出されたとき(ステップS501で否定判定かつステップS505で肯定判定)、その右側の振れを抑制するように、ホース方向調整装置62のモータ74が制御される(ステップS507)。本実施形態では、
図6(a)に示すようにホースガイド部70の向きを右側S3にするようにモータ74は制御される。そして、振れ検出装置56により検出された振れが所定範囲内にあるとき、つまり、本実施形態では触れ検出装置56により何ら検出信号が生じないとき(ステップS501で否定判定かつステップS505で否定判定)、制御装置80は、ホースガイド部70の向きをそのままに保つように、ホース方向調整装置62のモータ74を制御する。このときのモータ74の制御は非制御を含むものである。
【0032】
これら操舵装置40のモータ44の制御と、ホース方向調整装置62のモータ74の制御の関係について、ここで更に説明する。これらモータ44、74は、例えば操舵装置40における応答性とホース方向調整装置62における応答性との関係から、上で述べたように制御される。操舵装置40のモータ44は、振れ検出装置56により振れが検出されたとき、その振れを抑制するように制御され、振れが抑制されたときつまり振れが検出されないとき、
図3に示すようにタイヤ36の向きが真っ直ぐなニュートラル状態になるように制御される。これに対して、ホース方向調整装置62のモータ74は、振れ検出装置56により振れが検出されたとき、その振れをウエイトバランスの調整で抑制するように、ホースガイド部70の向きを変えるべく制御され、振れが抑制されたときつまり振れが検出されないとき、そのときどきの状態のままにホースガイド部70の向きを維持するように制御される。なお、本実施形態では操舵装置による振れの制御は、ホース方向調整装置62による振れの制御と関係づけられていて、ホース方向調整装置62による振れの制御を補助するように実行される。しかし、これら制御は逆の関係を有してもよく、或いは、互いに対して独立して実行されてもよい。
【0033】
上記構成を備える壁面洗浄装置10における効果を以下説明する。
【0034】
壁面洗浄装置10では、
図1及び
図2に示すように、壁面洗浄装置10が使用状態にあるときつまりそれが作業中のとき、テンションワイヤ20の上側の固定位置及び下側の固定位置は一定であるので、テンションワイヤ20から壁面洗浄装置10に及ぶ力つまり押圧力は、例えば屋上近くから地上近くに壁面洗浄装置10が下降する過程で、変化する。本実施形態の壁面洗浄装置10では、既に説明したように、そのテンションワイヤ20からの押圧力を所定範囲内につまり所定の押圧力にするように、伸縮装置34の作動が制御される。したがって、壁面洗浄装置10の壁面走行の安定性を高めることが可能になる。
【0035】
また、壁面洗浄措置10では、接触部は、伸縮装置に接続された内側部材と、該内側部材の外側に位置してテンションワイヤに接触する外側部材と、内側部材と外側部材との間に設けられる弾性部材とを有し、押圧力検出装置は、内側部材と外側部材との間に設けられた。したがって、テンションワイヤ20による押圧力に柔軟に対応しつつ、その押圧力をより好適に検出することができる。よって、前述の伸縮制御をより好適に行うことが可能である。
【0036】
また、上記実施形態では、伸縮装置34は、伸縮部材としてのジャッキ部52と、このジャッキ部52の伸縮を生じさせるための伸縮発生装置としての電動シリンダ54とを有した。したがって、伸縮装置34により、直角方向D2における壁面洗浄装置10の長さを種々変えることができるとともに、伸縮装置34はテンションワイヤ20の押圧力にしっかりと耐えることができる。
【0037】
また、壁面洗浄装置10では、振れ検出装置56により壁面洗浄装置10の左右方向D3の振れが検出されたとき、前述の如く、その振れを抑制するように、操舵装置40のモータ44が制御される。よって、壁面洗浄装置10の振れを抑制することが可能になる。したがって、壁面洗浄装置10の壁面走行の安定性をより高めることが可能になる。
【0038】
更に、壁面洗浄装置10では、振れ検出装置56により壁面洗浄装置10の左右方向D3の振れが検出されたとき、前述の如く、その振れを抑制するように、ホース方向調整装置62のモータ74が制御される。これにより、ホースガイド部70の向きが変えられる。ホースガイド部70の向きを変えることで、所定圧以上の洗浄液が流れるホース部材66の向きが変わり壁面洗浄装置10のウエイトバランスが変化する。よって、壁面洗浄装置10の振れを抑制することが可能になる。したがって、壁面洗浄装置10の壁面走行の安定性をより高めることが可能になる。
【0039】
更に、上記実施形態に係る壁面走行装置10では、上で述べたように、振れが検出されたとき、その振れを抑制するように、操舵装置40のモータ44とホース方向抑制装置62のモータ74とがともに制御される。そして、振れが抑制されたときつまり振れが検出されないとき、操舵装置40のモータ44は
図3に示すようにタイヤ36の向きが真っ直ぐになるように制御されるが、ホース方向抑制装置62のモータ74はそのときどきの状態のままにホースガイド部70の向きを維持するように制御される。したがって、検出された振れは、操舵装置40のモータ44の制御により迅速に抑制され、ホース方向調整装置62のモータ74の制御により安定的に抑制されるようになる。
【0040】
以上、本発明の代表的な実施形態及び変形例について説明したが、本発明は種々の変更が可能である。本願の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態に係る壁面走行装置は壁面洗浄装置であったが、本発明はそれ以外の用途又は機能の装置に適用されてもよい。例えば、本発明は、壁面塗装用の装置に適用されてもよい。
【0042】
例えば、上記伸縮装置34は、ジャッキ部52と、電動シリンダ54とを備えたが、電動シリンダ54のみをつまり伸縮発生装置のみを備えて構成されてもよい。また、電動シリンダ54の数は1つに限定されず、複数であってもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、ホース部材66がウエイトバランス調整部材に対応し、ホース方向調整装置62がウエイトバランス調整装置に対応した。しかし、ウエイトバランス調整部材は洗浄液が流れるホース部材66に限定されない。例えば、ウエイトバランス調整部材は、壁面走行装置10が塗料塗布装置である場合、壁面に向けて塗布されるつまり供給される塗料つまり流体が流れるホース部材であってもよい。また、ウエイトバランス調整部材は、1つ又は複数の砂袋や金属塊といった単なる錘であってもよい。そして、ウエイトバランス調整装置は、ウエイトバランス調整部材の状態、例えば壁面走行装置における方向や位置を変えることで壁面走行装置のウエイトバランスを変えるように種々の構成を備え得る。そして、制御装置80のウエイトバランス制御部はそのウエイトバランス調整装置を制御するように構成されるとよい。
【0044】
また、振れ検出装置56により検出された振れを抑制するように、操舵装置40及びウエイトバランス調整装置のいずれか一方のみが制御されてもよい。その振れを抑制するように、操舵装置40及びウエイトバランス調整装置の作動を様々に組み合わせてもよい。また、振れ抑制のために、操舵装置40及びウエイトバランス調整装置のいずれか一方のみが壁面走行装置に設けられることも可能である。