特開2020-104730(P2020-104730A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-104730(P2020-104730A)
(43)【公開日】2020年7月9日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20200612BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20200612BHJP
【FI】
   B60C11/00 H
   B60C11/03 300B
   B60C11/03 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-245804(P2018-245804)
(22)【出願日】2018年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】松原 圭佑
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC20
3D131BC40
3D131EB07V
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB28V
3D131EB28X
3D131EB43V
3D131EB44V
3D131EB46V
3D131EB47V
3D131EB72V
3D131EC01Z
3D131EC12V
3D131EC16V
(57)【要約】
【課題】トレッド部に設けられた陸部の放熱性を向上させると共に陸部の剛性の低下を抑制することができる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤは、トレッド部に設けられ、タイヤ径方向内側に窪む凹部20を有する陸部10を備える。凹部20は、陸部10の接地面11への開口を区画し、多角形を構成する3つ以上の辺S1,S2,S3と、個々の辺S1,S2,S3と、個々の辺S1,S2,S3のそれぞれの頂点P1,P2,P3と接地面11からタイヤ径方向内側に設けられた底点Paとを結ぶ線分L1,L2,L3とによって区画される3つ以上の側面部F1,F2,F3とを備える。側面部F1,F2,F3はそれぞれ、接地面11からタイヤ径方向内側に向かうにつれて底点Paに近づくように形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に設けられ、タイヤ径方向内側に窪む凹部を有する陸部を備え、
前記凹部は、
前記陸部の接地面への開口を区画し、多角形を構成する3つ以上の辺と、
個々の前記辺と、個々の前記辺のそれぞれの頂点と前記接地面からタイヤ径方向内側に設けられた底点とを結ぶ線分とによって区画される3つ以上の側面部とを備え、
前記側面部はそれぞれ、前記接地面からタイヤ径方向内側に向かうにつれて前記底点に近づくように形成されている、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記凹部は、前記側面部が傾斜面である多角錐形状に形成されている、
請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記凹部は、三角錐形状に形成されている、
請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記陸部は、タイヤ周方向に延びる縦溝部とタイヤ幅方向に延びる横溝部とによって区画されたブロックであり、
前記ブロックは、1つ又は複数の前記凹部を有し、
前記ブロックの接地面における投影面積に対する1つ又は複数の前記凹部の接地面における投影面積の割合は、5%以上20%以下である、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記陸部は、タイヤ周方向に延びる2つの縦溝部によって区画されたリブであり、
前記リブは、1つ又は複数の前記凹部を有し、
前記リブの接地面における投影面積に対する1つの又は複数の前記凹部の接地面における投影面積の割合は、5%以上20%以下である、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記陸部は、前記凹部とタイヤ周方向に延びる縦溝部との間を接続する接続溝部を有している、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記接続溝部は、前記底点と前記縦溝部とを接続するように設けられている、
請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記接続溝部は、底面部と両側の側面部とを備え、
前記接続溝部における前記縦溝部と鋭角をなす前記側面部に、前記接地面からタイヤ径方向内側に向かうにつれて傾斜する傾斜面が設けられている、
請求項6又は請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤとして、トレッド部に設けられたブロックやリブなどの陸部にタイヤ径方向内側に窪む凹部を形成して陸部の放熱性を向上させ、タイヤ転動時における陸部の温度上昇を抑制するようにしたものが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、トレッド部の陸部に溝壁面と溝底面とを有してタイヤ幅方向に延びる細溝を形成すると共に、細溝のタイヤ周方向に対向する溝壁面の一方に傾斜面からなる空気流入部を形成し、陸部の放熱性を向上させるようにした空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−177139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載のものは、トレッド部の陸部に溝壁面と溝底面とを有する細溝が形成されると共に細溝のタイヤ周方向に対向する溝壁面の一方に傾斜面が形成されることから、トレッド部に設けられた陸部の剛性の低下を引き起こし得る。
【0006】
そこで、本発明は、トレッド部に設けられた陸部の放熱性を向上させると共に陸部の剛性の低下を抑制することができる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トレッド部に設けられ、タイヤ径方向内側に窪む凹部を有する陸部を備え、前記凹部は、前記陸部の接地面への開口を区画し、多角形を構成する3つ以上の辺と、個々の前記辺と、個々の前記辺のそれぞれの頂点と前記接地面からタイヤ径方向内側に設けられた底点とを結ぶ線分とによって区画される3つ以上の側面部とを備え、前記側面部はそれぞれ、前記接地面からタイヤ径方向内側に向かうにつれて前記底点に近づくように形成されている空気入りタイヤを提供する。
【0008】
本発明によれば、トレッド部の陸部に設けられる凹部が接地面からタイヤ径方向内側に向かうにつれて底点に近づく側面部から形成されるので、凹部が接地面から直角にタイヤ径方向内側に延びる側面部と底面部とによって形成される場合に比して、トレッド部に設けられた陸部の放熱性を向上させると共に陸部の剛性の低下を抑制することができる。
【0009】
前記凹部は、前記側面部が傾斜面である多角錐形状に形成されることが好ましい。
【0010】
本構成によれば、凹部が、接地面からタイヤ径方向内側に向かうにつれて底点に近づく曲面によってドーム状に形成される場合に比して、陸部の剛性の低下を抑制することができる。
【0011】
前記凹部は、三角錐形状に形成されることが好ましい。
【0012】
本構成によれば、凹部が、三角錐形状ではない多角錐形状に形成される場合に比して、陸部の放熱性向上と陸部剛性の低下抑制とを有効に図ることができる。
【0013】
前記陸部は、タイヤ周方向に延びる縦溝部とタイヤ幅方向に延びる横溝部とによって区画されたブロックであり、ブロックは、1つ又は複数の凹部を有し、ブロックの接地面における投影面積に対する1つ又は複数の凹部の接地面における投影面積の割合は、5%以上20%以下であることが好ましい。
【0014】
本構成によれば、陸部がブロックである場合にブロックに設けられる凹部が適度に設けられるので、ブロックの放熱性を向上させつつブロックの剛性の低下を抑制することができる。ブロックに対する凹部全体の投影面積の割合が5%未満である場合、ブロックの放熱効果が不足し易い。ブロックに対する凹部全体の投影面積の割合が20%より大きい場合、ブロックの剛性が低下し易い。
【0015】
前記陸部は、タイヤ周方向に延びる2つの縦溝部によって区画されるリブであり、リブは、1つ又は複数の凹部を有し、リブの接地面における投影面積に対する1つ又は複数の凹部の接地面における投影面積の割合は、5%以上20%以下であることが好ましい。
【0016】
本構成によれば、陸部がリブである場合にリブに設けられる凹部が適度に設けられるので、リブの放熱性を向上させつつリブの剛性の低下を抑制することができる。リブに対する凹部全体の投影面積の割合が5%未満である場合、リブの放熱効果が不足し易い。リブに対する凹部全体の投影面積の割合が20%より大きい場合、リブの剛性が低下し易い。
【0017】
前記陸部は、前記凹部とタイヤ周方向に延びる縦溝部との間を接続する接続溝部を有していることが好ましい。
【0018】
本構成によれば、接続溝部を通じて陸部の凹部内に発生した熱を縦溝部に放熱させることができるので、陸部の放熱性をさらに向上させることができる。ウェット路面を走行する際に、接続溝部を通じて陸部の凹部内の水を縦溝部に流出させることができ、排水性を向上させることできる。
【0019】
前記接続溝部は、凹部の底点と縦溝部とを接続するように設けられることが好ましい。
【0020】
本構成によれば、接続溝部によって、接地面からタイヤ径方向内側に向かうにつれて底点に近づく側面部によって形成される凹部の底点から縦溝部に通じる溝部が形成されるので、陸部の放熱性及び排水性をさらに向上させることができる。
【0021】
前記接続溝部は、底面部と両側の側面部とを備え、接続溝部における縦溝部と鋭角をなす側面部に接地面からタイヤ径方向内側に向かうにつれて傾斜する傾斜面が設けられることが好ましい。
【0022】
本構成によれば、接続溝部における縦溝部と鋭角をなす側面部に、接地面からタイヤ径方向内側に向かうにつれて傾斜する傾斜面が設けられることにより、陸部における接続溝部と縦溝部とが鋭角をなす部分の剛性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る空気入りタイヤによれば、トレッド部に設けられた陸部の放熱性を向上させると共に陸部の剛性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の一部を示す展開図。
図2図1に示す空気入りタイヤのトレッド部の要部拡大図。
図3図2のY3−Y3線に沿った空気入りタイヤのトレッド部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の一部を示す展開図である。本発明の実施形態に係るゴム製の空気入りタイヤ1は、図示されていないが、一対のビードコア間にカーカスを掛け渡し、カーカスの中間部の外周側に巻き付けたベルトによって補強し、ベルトのタイヤ径方向外側にトレッド部を有する構成となっている。
【0027】
図1に示すように、空気入りタイヤ1は、トレッド部2を有し、トレッド部2の外面に、タイヤ幅方向WD中央側においてタイヤ周方向CDに延びると共にタイヤ径方向内側に窪む第1縦溝部3及び第2縦溝部4が形成されている。第1縦溝部3及び第2縦溝部4は、トレッド部2をタイヤ周方向に延びるタイヤ中心線CLを挟んで両側に配置されている。
【0028】
第1縦溝部3は、タイヤ周方向CD全体に亘って直線状に延びている。第2縦溝部4は、タイヤ周方向CD全体に亘ってジグザグ状に延びている。第2縦溝部4は、タイヤ回転方向Rに向かってタイヤ幅方向WD中央側に徐々に接近する内方縦溝部4aと、タイヤ回転方向Rに向かってタイヤ幅方向WD中央側から徐々に離間する外方縦溝部4bとによって構成されている。
【0029】
トレッド部2の外面にはまた、タイヤ幅方向WD中央側においてタイヤ幅方向WDに延びると共にタイヤ径方向内側に窪む複数の横溝部5が形成されている。複数の横溝部5は、同一形状に形成されてタイヤ周方向CDに離間して配置されている。横溝部5は、第1縦溝部3と第2縦溝部4とに連通している。
【0030】
横溝部5は、第2縦溝部4から第1縦溝部3に向かうにつれてタイヤ回転方向Rに傾斜する主横溝部5aと、主横溝部5aのタイヤ幅方向WD中央側からタイヤ回転方向Rと反対方向に延びると共にタイヤ幅方向WDに延びて第1縦溝部3に連通する副横溝部5bとによって構成されている。副横溝部5bは、一端側が主横溝部5aに接続されて他端側が第1縦溝部3に接続され、タイヤ回転方向Rと反対方向に凸状に形成されている。
【0031】
トレッド部2の外面にはまた、タイヤ幅方向WDにおける第1縦溝部3と第2縦溝部4との間にタイヤ周方向CDに延びると共にタイヤ径方向内側に窪む第3縦溝部6が形成されている。第3縦溝部6は、タイヤ周方向CDに隣接する2つの横溝部5に連通してタイヤ周方向CDに直線状に延びている。第3縦溝部6は、タイヤ回転方向R前側に配置される横溝部5の副横溝部5bとタイヤ回転方向R後側に配置される横溝部5の主横溝部5aとに連通し、横溝部5を介して第1縦溝部3及び第2縦溝部4に連通している。
【0032】
トレッド部2には、タイヤ周方向CDに延びる縦溝部3,4,6とタイヤ幅方向WDに延びる横溝部5とによって区画される陸部10,7,8が設けられている。陸部10は、タイヤ幅方向WDに隣接する縦溝部4,6とタイヤ周方向CDに隣接する横溝部5とによって区画されたブロックである。陸部7は、タイヤ幅方向WDに隣接する縦溝部3、6とタイヤ周方向CDに隣接する横溝部5,5とによって区画されたブロックである。陸部8は、縦溝部3と横溝部5とによって、具体的には縦溝部3と主横溝部5aと副横溝部5bとによって区画されたブロックである。
【0033】
空気入りタイヤ1では、陸部10が本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部に設けられた陸部に相当する。以下、この陸部10について説明する。
【0034】
陸部10は、タイヤ幅方向WDに隣接する第2縦溝部4及び第3縦溝部6とタイヤ周方向CDに隣接する2つの横溝部5とによって区画されたブロックである。陸部10は、接地面11と側面部12とを備えている。陸部10の側面部12は、第2縦溝部4の側面部4cと、第3縦溝部6の側面部6aと、タイヤ回転方向R前側の横溝部5の側面部5cと、タイヤ回転方向R後側の横溝部5の側面部5cとによって構成されている。
【0035】
空気入りタイヤ1では、陸部10は、接地面11からタイヤ径方向内側に窪む凹部20を有している。凹部20は、陸部10の側面部12から離間した陸部10の中央側に設けられている。
【0036】
図2は、図1に示す空気入りタイヤのトレッド部の要部拡大図である。図3は、図2のY3−Y3線に沿った空気入りタイヤのトレッド部の断面図である。図2及び図3に示すように、陸部10に形成される凹部20は、陸部10の接地面11への開口を区画して三角形を構成する3つの辺(又は縁)S1,S2,S3を備えると共に、個々の辺S1,S2,S3と、個々の辺S1,S2,S3のそれぞれの頂点P1,P2,P3と接地面11からタイヤ径方向内側に設けられた底点Paとを結ぶ線分L1,L2,L3とによって区画される3つの側面部F1,F2,F3を備えている。
【0037】
凹部20の側面部F1,F2,F3はそれぞれ、接地面11からタイヤ径方向内側に向かうにつれて底点Paに近づく傾斜面によって形成されている。凹部20は、側面部F1,F2,F3によって三角錐形状に形成されている。凹部20の底点Paは、接地面11にタイヤ径方向外側に投影されたときに凹部20の接地面11に開口される多角形内に位置するように設けられる。
【0038】
凹部20は、接地面11に開口される三角形の頂点P2がタイヤ回転方向前側に位置し、接地面11に開口される三角形の頂点P3が頂点P2より第3縦溝部側且つタイヤ回転方向後側に位置し、接地面11に開口される三角形の頂点P1が頂点P2より反第3縦溝部側且つ頂点P3よりタイヤ回転方向R後側に位置するように設けられている。
【0039】
凹部20の辺S1,S2,S3の長さはそれぞれ、40mm、20mm、30mmに設定されている。凹部20の辺S1,S2,S3の長さは、例えば10mm〜50mmに設定される。凹部20の深さD1、具体的には接地面11からの底点Paの深さD1は、5mmに設定されている。凹部20の深さD1は、例えば3mm〜8mmに設定される。凹部20の深さD1を、例えば縦溝部3,4,6の深さD3の30%〜80%に設定するようにしてもよい。
【0040】
本実施形態では、陸部10は、縦溝部3,4と横溝部5とによって区画されたブロックであり、ブロック10に1つの凹部20が設けられ、ブロック10の接地面11における投影面積に対する凹部20の接地面11における投影面積の割合は、5%以上20%以下に設定される。前記割合が5%未満である場合にはブロックの放熱効果が不足し易く、前記割合が20%より大きい場合にはブロックの剛性が低下し易いからである。
【0041】
なお、ブロック10の接地面11における投影面積に対する凹部20の接地面11における投影面積の割合は、図1に示すようにブロック10を平面視した際に、ブロック10の外面全体の表面積に対する凹部20の開口面積の割合をいうものとする。
【0042】
陸部10は、凹部20とタイヤ周方向CDに延びる第3縦溝部6との間を接続する接続溝部30を有している。接続溝部30は、接地面11からタイヤ径方向内側に窪んで形成され、底面部31と底面部31のタイヤ周方向CD両側からそれぞれタイヤ径方向外側に垂直に延びる両側の側面部32とを備えている。
【0043】
接続溝部30は、凹部20と第3縦溝部6とに連通してタイヤ幅方向WDに延びている。接続溝部30は、第3縦溝部6から凹部20の辺S2まで凹部20の辺S3に平行に第3縦溝部6と所定角度θ1、例えば60度を有するようにタイヤ幅方向WDに延びている。接続溝部30はまた、凹部20の辺S2から凹部20の底点Paを含む線分L2まで凹部20の線分L3に沿ってタイヤ幅方向WDに延びている。このようにして、接続溝部30は、底点Paと第3縦溝部6とを接続するように設けられている。
【0044】
接続溝部30は、第3縦溝部6と鋭角をなす側面部32に、接地面11からタイヤ径方向内側に向かうにつれて接続溝部30の幅方向中央側に傾斜する傾斜面33が設けられている。陸部10では、所定角度θ1が60度に設定されて第3縦溝部6と鋭角をなすタイヤ回転方向R後側の側面部32に、接続溝部30の幅方向中央側に傾斜する傾斜面33が設けられている。なお、陸部10には、接地面11における第3縦溝部6側に傾斜面11aが設けられている。
【0045】
接続溝部30は、両側の側面部32が平行に設けられ、接続溝部30の幅W1は、5mmに設定されている。接続溝部30の幅W1は、例えば2mm〜7mmに設定される。接続溝部30は、底面部31が接地面11からタイヤ径方向内側に深さD2を有するように形成されて凹部20より深く形成されている。接続溝部30の深さD2は、8mmに設定されている。接続溝部30の深さD2は、例えば5mm〜10mmに設定される。
【0046】
接続溝部30の深さD2は、凹部20の深さD1より深く形成されているが、凹部20の深さD1と等しく形成することも可能である。接続溝部30の深さD2は、第3縦溝部6の深さD3と等しく形成されているが、第3縦溝部6の深さD3より浅く形成することも可能である。
【0047】
陸部10にはまた、接地面11からタイヤ径方向内側に延びるスリット13、14が形成されている。スリット13は、凹部20の頂点P1近傍から第2縦溝部4に向けて延び、スリット14は、凹部20の頂点P2近傍から横溝部5に向けて延びている。
【0048】
本実施形態では、陸部10に設けられる凹部20は、接地面11への開口を区画して三角形を構成する3つの辺S1,S2,S3と3つの側面部F1,F2,F3とを備えて三角錐形状に形成されているが、陸部10の接地面11への開口を区画して三角形を構成する3つの辺を備えると共に、個々の辺と、個々の辺のそれぞれの頂点と接地面11からタイヤ径方向内側に設けられた底点とを結ぶ線分とによって区画される3つの側面部を備え、前記側面部がそれぞれ接地面11からタイヤ径方向内側に向かうにつれて底点に近づく他の三角錐形状に形成するようにしてもよい。
【0049】
また、陸部10に設けられる凹部は、陸部10の接地面11の開口を区画して多角形を構成する3つ以上の辺を備えると共に、個々の辺と、個々の辺のそれぞれの頂点と接地面11からタイヤ径方向内側に設けられた底点とを結ぶ線分とによって区画される3つ以上の側面部を備え、前記側面部がそれぞれ、接地面11からタイヤ径方向内側に向かうにつれて底点に近づく四角錐形状などの他の多角錘形状に形成することも可能である。
【0050】
陸部10にタイヤ径方向内側に窪んで設けられる凹部は好ましくは、多角錐形状に形成されるが、陸部10の接地面11の開口を区画して多角形を構成する3つ以上の辺を備えると共に、個々の辺と、個々の辺のそれぞれの頂点と接地面11からタイヤ径方向内側に設けられた底点とを結ぶ線分とによって区画される3つ以上の側面部を備え、前記側面部がそれぞれ、接地面11からタイヤ径方向内側に向かうにつれて底点に近づく曲面によって形成されてドーム状に形成することも可能である。
【0051】
本実施形態では、陸部10は、凹部20と第3縦溝部6との間を接続する接続溝部30を有しているが、凹部20とタイヤ周方向CDに延びる第2縦溝部4との間を接続する接続溝部を有するようにすることも可能である。凹部20とタイヤ周方向CDに延びる第2縦溝部4との間を接続する接続溝部についても好ましくは、凹部20の底点Paと第2縦溝部4とを接続するように設けられる。
【0052】
凹部20とタイヤ周方向CDに延びる第2縦溝部4との間を接続する接続溝部についても、底面部と両側の側面部とを備え、好ましくは前記接続溝部における第2縦溝部4と鋭角をなす側面部に、接地面11からタイヤ径方向内側に向かうにつれて前記接続溝部の中央側に傾斜する傾斜面が設けられる。
【0053】
本実施形態では、陸部10は、凹部20とタイヤ周方向CDに延びる第3縦溝部6との間を接続する接続溝部30を有しているが、接続溝部を有しないようにすることも可能である。
【0054】
このように、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、トレッド部2に設けられ、タイヤ径方向内側に窪む凹部20を有する陸部10を備え、凹部20は、陸部10の接地面11への開口を区画し、多角形を構成する3つ以上の辺S1,S2,S3と、個々の辺S1,S2,S3と、個々の辺S1,S2,S3のそれぞれの頂点P1,P2,P3と接地面11からタイヤ径方向内側に設けられた底点Paとを結ぶ線分L1,L2,L3とによって区画される3つ以上の側面部F1,F2,F3とを備え、側面部F1,F2,F3はそれぞれ、接地面11からタイヤ径方向内側に向かうにつれて底点Paに近づくように形成される。
【0055】
これにより、トレッド部2の陸部10に設けられる凹部20が接地面11からタイヤ径方向内側に向かうにつれて底点Paに近づく側面部F1,F2,F3から形成されるので、凹部20が接地面11から直角にタイヤ径方向内側に延びる側面部と底面部とによって形成される場合に比して、トレッド部2に設けられた陸部10の放熱性を向上させると共に陸部10の剛性の低下を抑制することができる。また、凹部20の多角形を構成する辺S1,S2,S3によってエッジ効果を得ることができ、操縦安定性を向上させることができる。
【0056】
また、凹部20は、側面部F1,F2,F3が傾斜面である多角錐形状に形成される。これにより、凹部20が、接地面11からタイヤ径方向内側に向かうにつれて底点Paに近づく曲面によってドーム状に形成される場合に比して、陸部10の剛性の低下を抑制することができる。
【0057】
また、凹部20は、三角錐形状に形成される。これにより、凹部20が、三角錐形状ではない多角錐形状に形成される場合に比して、陸部10の放熱性向上と陸部剛性の低下抑制とを有効に図ることができる。
【0058】
本実施形態では、ブロックである陸部10に1つの凹部20が設けられているが、ブロック10に複数の凹部20を設けることも可能である。かかる場合、ブロック10の接地面11における投影面積に対する複数の凹部20の接地面11における投影面積の割合は、5%以上20%以下に設定される。なお、ブロック10の接地面11における投影面積に対する複数の凹部20の接地面11における投影面積の割合は、ブロック10を平面視した際に、ブロック10の外面全体の表面積に対する複数の凹部20の開口面積の割合をいうものとする。
【0059】
このように、陸部10は、タイヤ周方向CDに延びる縦溝部4、6とタイヤ幅方向WDに延びる横溝部5とによって区画されたブロックであり、ブロック10は、1つ又は複数の凹部20を有し、ブロック10の接地面11における投影面積に対する1つ又は複数の凹部20の接地面11における投影面積の割合は、5%以上20%以下である。これにより、陸部10がブロックである場合にブロック10に設けられる凹部20が適度に設けられるので、ブロック10の放熱性を向上させつつブロック10の剛性の低下を抑制することができる。ブロック10に対する凹部20全体の投影面積の割合が5%未満である場合、ブロック10の放熱効果が不足し易い。ブロック10に対する凹部20全体の投影面積の割合が20%より大きい場合、ブロック10の剛性が低下し易い。
【0060】
また、陸部10は、凹部20とタイヤ周方向CDに延びる縦溝部6との間を接続する接続溝部30を有している。これにより、接続溝部30を通じて陸部10の凹部20内に発生した熱を縦溝部6に放熱させることができるので、陸部10の放熱性をさらに向上させることができる。ウェット路面を走行する際に、接続溝部30を通じて陸部10の凹部20内の水を縦溝部6に流出させることができ、排水性を向上させることできる。
【0061】
また、接続溝部30は、凹部20の底点Paと縦溝部6とを接続するように設けられる。これにより、接続溝部30によって、接地面11からタイヤ径方向内側に向かうにつれて底点Paに近づく側面部F1,F2,F3によって形成される凹部20の底点Paから縦溝部6に通じる溝部が形成されるので、陸部10の放熱性及び排水性をさらに向上させることができる。
【0062】
また、接続溝部30は、底面部31と両側の側面部32とを備え、接続溝部30における縦溝部6と鋭角をなす側面部32に接地面11からタイヤ径方向内側に向かうにつれて傾斜した傾斜面が設けられる。これにより、接続溝部30における縦溝部6と鋭角をなす側面部32に、接地面11からタイヤ径方向内側に向かうにつれて傾斜する傾斜面が設けられることにより、陸部10における接続溝部30と縦溝部6とが鋭角をなす部分の剛性を向上させることができる。
【0063】
本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、トレッド部2に設けられる陸部10は、タイヤ周方向CDに延びる複数の縦溝部3、4とタイヤ幅方向WDに延びる複数の横溝部5とによって区画されたブロックであるが、トレッド部2に設けられる陸部10は、タイヤ周方向CD全体に亘ってタイヤ周方向CDに延びてタイヤ幅方向に隣接する2つの縦溝部によって区画されるリブであってもよい。
【0064】
かかる場合においても、前記リブは、ブロック10に形成される凹部20と同様に構成されて接地面11からタイヤ径方向内側に窪む1つ又は複数の凹部を有し、前記リブの接地面における投影面積に対する1つ又は複数の凹部の接地面における投影面積の割合は、5%以上20%以下に設定される。前記割合が5%未満である場合にはブロックの放熱効果が不足し易く、前記割合が20%より大きい場合にはブロックの剛性が低下し易いからである。
【0065】
なお、リブの接地面における投影面積に対する1つ又は複数の凹部の接地面における投影面積の割合は、前述した陸部がブロックである場合と同様に、リブを平面視した際に、タイヤ周方向全体に亘って設けられたリブの外面全体の表面積に対する1つ又は複数の凹部の開口面積の割合をいうものとする。
【0066】
前記リブにはまた、前記凹部とタイヤ周方向に延びる縦溝部との間にブロック10に形成される接続溝部30と同様に形成された接続溝部が設けられる。
【0067】
このように、陸部10が、タイヤ周方向に延びる2つの縦溝部によって区画されるリブであり、リブは、1つ又は複数の凹部を有し、リブの接地面における投影面積に対する1つ又は複数の凹部の接地面における投影面積の割合は、5%以上20%以下であることにより、陸部がリブである場合にリブに設けられる凹部が適度に設けられるので、リブの放熱性を向上させつつリブの剛性の低下を抑制することができる。リブに対する凹部全体の投影面積の割合が5%未満である場合、リブの放熱効果が不足し易い。リブに対する凹部全体の投影面積の割合が20%より大きい場合、リブの剛性が低下し易い。
【0068】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3,4,6 縦溝部
5 横溝部
10 陸部
11 接地面
20 凹部
30 接続溝部
F1,F2,F3 凹部の側面部
L1,L2,L3 線分
S1,S2,S3 辺
Pa 凹部の底点
P1,P2,P3 凹部の頂点
図1
図2
図3