【実施例】
【0040】
実施例1
【0041】
酸化ニオブ、酸化チタン、およびフッ素ソース(NH
4F)を化学量論比で分散剤PVA BP−05を含有する脱イオン水中に加えてから、18時間かけて完全に混合し、均一に分散したスラリーを得た。その均一に分散したスラリーを噴霧乾燥によりペレット化して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1150℃で12時間焼結して、フッ素ドープニオブ酸チタン材料TiNb
2O
6.75F
0.25を得た。そのフッ素ドープニオブ酸チタン材料TiNb
2O
6.75F
0.25は単斜格子を有しており(X線回折で確認する)、かつ複数の一次粒子からなる多孔質構造であった。そのSEM画像が
図1に示されている。一次粒子のメジアン粒径は0.01マイクロメートルから5マイクロメートル、多孔質構造のメジアン粒径は0.3マイクロメートルから60マイクロメートル、多孔質構造の孔径は50ナノメートルから1マイクロメートルであった。
【0042】
フッ素ドープニオブ酸チタン85重量部、KS4(TIMCAL TIMREXより購入)6重量部、Super P(TIMCAL TIMREXより購入)4重量部、およびPVDF(Solefより購入)5重量部を均一に混合してペーストに調製してから、アルミニウム箔上に塗布し、厚さ150マイクロメートル未満の塗布層を形成した。その塗布層を圧延機で元の厚さの65%となるまで圧延し、負極板を得た。その負極板を、直径12mmの円形にカットした。その円形負極板、リチウム金属正極板、および電解質を組み合わせてCR2032ハーフセルを作り、その電気化学特性をテストした。電解質組成物は1M LiPF
6溶液であり、溶媒はエチレンカーボネート(EC)およびジメチルカーボネート(DMC)(EC:DMC=1:2,v/v)であった。
図2は、異なる充放電レートでの電池の容量対電圧曲線を示している。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0043】
実施例2
【0044】
酸化ニオブおよび酸化チタンを化学量論比で分散剤PVA BP−05を含有する脱イオン水中に加えてから、18時間かけて完全に混合し、均一に分散したスラリーを得た。その均一に分散したスラリーを噴霧乾燥によりペレット化して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1150℃で12時間焼結して、ニオブ酸チタンを得た。そのニオブ酸チタンおよびフッ素ソース(NH
4F)を化学量論比で均一に混合してから、450℃で5時間焼結してフッ素ドープニオブ酸チタン材料TiNb
2O
6.75F0
.25を得た。そのフッ素ドープニオブ酸チタン材料TiNb
2O
6.75F0
.25は単斜格子を有しており(XRDで確認する)、かつ複数の一次粒子からなる多孔質構造であった。一次粒子のメジアン粒径は0.01マイクロメートルから5マイクロメートル、多孔質構造のメジアン粒径は0.3マイクロメートルから60マイクロメートル、多孔質構造の孔径は50ナノメートルから1マイクロメートルであった。
【0045】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、実施例2のフッ素ドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、実施例2では異なっている。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0046】
実施例3
【0047】
酸化ニオブ、酸化チタン、酸化鉄、およびフッ素ソース(NH
4F)を化学量論比で分散剤 PVA BP−05を含有する脱イオン水中に加えてから、18時間かけて完全に混合し、均一に分散したスラリーを得た。その均一に分散したスラリーを噴霧乾燥によりペレット化して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1150℃で12時間焼結して、フッ素および鉄ドープニオブ酸チタン材料TiNb
1.9Fe
0.1O
6.25F
0.75を得た。そのフッ素および鉄ドープニオブ酸チタン材料TiNb
1.9Fe
0.1O
6.25F
0.75は単斜格子を有しており(XRDで確認する)、かつ複数の一次粒子からなる多孔質構造であった。一次粒子のメジアン粒径は0.01マイクロメートルから5マイクロメートル、多孔質構造のメジアン粒径は0.3マイクロメートルから60マイクロメートル、多孔質構造の孔径は50ナノメートルから1マイクロメートルであった。
【0048】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、実施例3のフッ素および鉄ドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、実施例3では異なっている。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0049】
実施例4
【0050】
酸化ニオブ、酸化チタン、およびフッ素ソース(NH
4F)を化学量論比でエタノールに加え、ボールミルに24時間かけ、次いで篩に通して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れて1000℃で18時間焼結し、フッ素ドープニオブ酸チタン材料TiNb
2O
6Fを得た。そのフッ素ドープニオブ酸チタン材料TiNb
2O
6Fは単斜格子を有しており(XRDで確認)、メジアン粒径が0.01マイクロメートルから10マイクロメートルの非多孔質構造であった。
【0051】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、実施例4のフッ素ドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、実施例4では異なっている。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0052】
実施例5
【0053】
酸化ニオブ、酸化チタン、およびフッ素ソース(NH
4F)を化学量論比でエタノールに加え、ボールミルに24時間かけ、次いで篩に通して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れて1000℃で18時間焼結し、フッ素ドープニオブ酸チタン材料TiNb
2O
6Fを得た。そのフッ素ドープニオブ酸チタン材料TiNb
2O
6Fは単斜格子を有しており(XRDで確認する)、メジアン粒径が0.01マイクロメートルから10マイクロメートルの非多孔質構造であった。その焼結フッ素ドープニオブ酸チタン材料20gおよびグルコース0.6gを脱イオン水50gに加え、24時間攪拌してから、加熱乾燥し、るつぼに入れて窒素下にて6時間700℃で焼結して、フッ素ドープニオブ酸チタン材料TiNb
2O
6Fの非多孔質構造を被包する炭素膜を形成した。
【0054】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、実施例5の炭素膜で覆われたフッ素ドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、実施例5では異なっている。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。上述の処理(炭素膜)は、リチウム電池のガス発生反応を抑制することができる。
【0055】
実施例6
【0056】
酸化ニオブ、酸化チタン、およびフッ化マグネシウムを化学量論比でエタノールに加え、ボールミルに24時間かけ、次いで篩に通して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れて1150℃で12時間焼結し、フッ素およびマグネシウムドープニオブ酸チタン材料Ti
0.95Mg
0.05Nb
2O
6.9F
0.1を得た。そのフッ素およびマグネシウムドープニオブ酸チタン材料Ti
0.95Mg
0.05Nb
2O
6.9F
0.1は単斜格子を有しており(XRDで確認する)、メジアン粒径が0.01マイクロメートルから10マイクロメートルの非多孔質構造であった。
【0057】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、実施例6のフッ素およびマグネシウムドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、実施例6では異なっている。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0058】
実施例7
【0059】
酸化ニオブ、酸化チタン、酸化クロムおよびフッ素ソース(NH
4F)を化学量論比で分散剤PVA BP−05を含む脱イオン水に加え、ボールミルに24時間かけてから、篩に通して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れて1150℃で12時間焼結し、フッ素およびクロムドープニオブ酸チタン材料 TiNb
1.97Cr
0.03O
6.9F
0.1を得た。そのフッ素およびクロムドープニオブ酸チタン材料 TiNb
1.97Cr
0.03O
6.9F
0.1は単斜格子を有しており(XRDで確認する)、メジアン粒径が0.01マイクロメートルから10マイクロメートルの非多孔質構造であった。
【0060】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、実施例7のフッ素およびクロムドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、実施例7では異なっている。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0061】
比較例1
【0062】
酸化ニオブおよび酸化チタンを化学量論比で分散剤 PVA BP−05を含有する脱イオン水中に加えてから、18時間かけて完全に混合し、均一に分散したスラリーを得た。その均一に分散したスラリーを噴霧乾燥によりペレット化して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1150℃で12時間焼結して、ニオブ酸チタン材料TiNb
2O
7を得た。そのニオブ酸チタン材料は、複数の一次粒子からなる多孔質構造であった。一次粒子のメジアン粒径は0.01マイクロメートルから5マイクロメートル、多孔質構造のメジアン粒径は0.3マイクロメートルから60マイクロメートル、多孔質構造の孔径は50ナノメートルから1マイクロメートルであった。
【0063】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、比較例1のニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、比較例1では異なっている。
図3は、異なる充放電レートでの電池の容量対電圧曲線を示している。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0064】
比較例2
【0065】
酸化ニオブおよび酸化チタンを化学量論比で分散剤 PVA BP−05を含有する脱イオン水中に加えてから、18時間かけて完全に混合し、均一に分散したスラリーを得た。その均一に分散したスラリーを噴霧乾燥によりペレット化して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1150℃で12時間焼結してから、450℃で5時間焼結して、ニオブ酸チタン材料TiNb
2O
7を得た。そのニオブ酸チタン材料は、複数の一次粒子からなる多孔質構造であった。一次粒子のメジアン粒径は0.01マイクロメートルから5マイクロメートル、多孔質構造のメジアン粒径は0.3マイクロメートルから60マイクロメートル、多孔質構造の孔径は50ナノメートルから1マイクロメートルであった。
【0066】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、比較例2のニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、比較例2では異なっている。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0067】
比較例3
【0068】
酸化ニオブ、酸化チタン、および酸化鉄を化学量論比で分散剤PVA BP−05を含有する脱イオン水中に加えてから、18時間かけて完全に混合し、均一に分散したスラリーを得た。その均一に分散したスラリーを噴霧乾燥によりペレット化して前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1150℃で12時間焼結して、鉄ドープニオブ酸チタン材料TiNb
1.9Fe
0.1O
7を得た。その鉄ドープニオブ酸チタン材料は、複数の一次粒子からなる多孔質構造であった。一次粒子のメジアン粒径は0.01マイクロメートルから5マイクロメートル、多孔質構造のメジアン粒径は0.3マイクロメートルから60マイクロメートル、多孔質構造の孔径は50ナノメートルから1マイクロメートルであった。
【0069】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、比較例3の鉄ドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、比較例3では異なっている。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0070】
比較例4
【0071】
酸化ニオブおよび酸化チタンを化学量論比でエタノールに加え、ボールミルに24時間かけてから、篩に通し、前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1150℃で12時間焼結し、ニオブ酸チタン材料TiNb
2O
7を得た。そのニオブ酸チタン材料は、メジアン粒径が0.01マイクロメートルから10マイクロメートルの非多孔質構造であった。
【0072】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、比較例4のニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、比較例4では異なっている。表1は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0073】
【表1】
【0074】
このように、電池の負極として用いられるフッ素ドープニオブ酸チタンは、電池の負極として用いられるニオブ酸チタンに比べ、より高い容量を提供できる。
【0075】
比較例5
【0076】
酸化ニオブおよび酸化チタンを化学量論比でエタノールに加え、ボールミルに24時間かけてから、篩に通し、前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1100℃で16時間焼結し、ニオブ酸チタン材料Ti
2Nb
10O
29を得た。そのニオブ酸チタン材料は、メジアン粒径が0.1マイクロメートルから10マイクロメートルの非多孔質構造であった。
【0077】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、比較例5のニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、比較例5では異なっている。表2は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0078】
実施例8
【0079】
酸化ニオブ、酸化チタン、およびフッ素ソース(NH
4F)を化学量論比でエタノールに加え、ボールミルに24時間かけてから、篩に通し、前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1000℃で12時間焼結し、フッ素ドープニオブ酸チタン材料 Ti
2Nb
10O
25F
4を得た。そのフッ素ドープニオブ酸チタン材料Ti
2Nb
10O
25F
4は、ReO
3−型結晶構造を有しており(XRDで確認する)、メジアン粒径が0.1マイクロメートルから10マイクロメートルの非多孔質構造であった。
【0080】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、実施例8のフッ素ドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、実施例8は異なっている。表2は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0081】
実施例9
【0082】
酸化クロム、酸化ニオブ、酸化チタン、およびフッ素ソース(NH
4F)を化学量論比で酢酸に加え、ボールミルに24時間かけてから、篩に通し、前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1200℃で10時間焼結し、フッ素およびクロムドープニオブ酸チタン材料 Ti
2Nb
9.75Cr
0.25O
25F
4を得た。そのフッ素およびクロムドープニオブ酸チタン材料Ti
2Nb
9.75Cr
0.25O
25F
4は、ReO
3−型結晶構造を有しており(XRDで確認する)、メジアン粒径が0.1マイクロメートルから10マイクロメートルの非多孔質構造であった。
【0083】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、実施例9のフッ素およびクロムドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、実施例9は異なっている。表2は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0084】
実施例10
【0085】
酸化鉄、酸化ニオブ、酸化チタン、およびフッ素ソース(NH
4F)を化学量論比で酢酸に加え、ボールミルに24時間かけてから、篩に通し、前駆体粉末を得た。その前駆体粉末をるつぼに入れ、1200℃で10時間焼結し、フッ素および鉄ドープニオブ酸チタン材料Ti
2Nb
9.75Fe
0.25O
25F
4を得た。そのフッ素および鉄ドープニオブ酸チタン材料Ti
2Nb
9.75Fe
0.25O
25F
4は、ReO
3−型結晶構造を有しており(XRDで確認する)、メジアン粒径が0.1マイクロメートルから10マイクロメートルの非多孔質構造であった。
【0086】
続いて、実施例1で記載したのと同じ方法でCR2032ハーフセルを作製した。実施例1のフッ素ドープニオブ酸チタン材料ではなく、実施例10のフッ素および鉄ドープニオブ酸チタン材料を負極板に用いた点が、実施例10では異なっている。表2は異なる充放電レートでの電池の容量を示している。
【0087】
【表2】
【0088】
このように、電池の負極として用いられるフッ素ドープニオブ酸チタンは、電池の負極として用いられるニオブ酸チタンに比べ、より高い容量を提供できる。
【0089】
開示した方法および物質に様々な変化および変更を加え得ることが、当業者には明らかであろう。明細書および実施例は例示と見なされることが意図されており、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物により示される。