【解決手段】微細セルロース(A)と、樹脂(B)と、分子内にアミノ基を2つ以上有し、前記アミノ基のうちの少なくとも1つが3級アミノ基である、アミン及び/又はその塩(C)とを含む樹脂組成物であって、前記樹脂(B)のガラス転移温度が、−130〜110℃であり、前記アミン及び/又はその塩(C)の分子量が、115〜100000である、樹脂組成物。
前記樹脂(B)が、ジエン系ゴム、エチレン系共重合体、ポリオレフィン系樹脂、アクリル樹脂、及び熱可塑性エラストマーから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の樹脂組成物。
前記樹脂(B)が、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、及びアクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
前記微細セルロース(A)が、微細セルロース繊維(A−1)及び/又は微細セルロース粒状物(A−2)を含み、前記セルロース繊維(A−1)の濃度が1重量%である水分散液の粘度が、300〜15000mPa・sである、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の樹脂組成物は、微細セルロース(A)と、ガラス転移温度が−130〜110℃の樹脂(B)(以下、単に樹脂(B)ということがある)と、分子内にアミノ基を2つ以上有し、前記アミノ基のうちの少なくとも1つが3級アミノ基であり、分子量が115〜100000であるアミン及び/又はその塩(C)(以下、単にアミン(C)ということがある)とを含む樹脂組成物である。
本発明の樹脂組成物の各成分について、以下詳細に説明する。
【0016】
〔微細セルロース(A)〕
微細セルロース(A)は、短径が1nm〜1mmの極めて小さなセルロースである。
微細セルロース(A)は、セルロース系原料を機械的に微細化処理することにより得られる。
微細セルロース(A)の原料としては、木材、わら、茎、サトウキビ、葦、竹、綿、ケナフ等が挙げられる。
セルロース系原料を微細化処理する方法としては、ビーズミル、石臼式粉砕機、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、一軸押出機、二軸押出機等の押出機、バンバリーミキサー、グラインダー、加圧ニーダー等の混練機等を用いる方法が挙げられる。微細セルロース(A)は、大きさをコントロールすることで、セルロースの表面積を増大させたり、アスペクト比を適宜変更することができる。これにより、微細セルロース(A)を含む組成物又は成形物の物性、特に機械的強度をより高めることができ、好ましい。
微細セルロース(A)は、化学的処理により変性されたものであってもよい。
また、微細セルロース(A)は、バクテリアセルロース等の発酵法により製造したものであってもよい。
【0017】
微細セルロース(A)を変性する化学的処理の方法としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)等の、セルロースの6位の一級水酸基をカルボキシル基に変換する触媒による酸化処理、オゾンによる処理、酵素による処理、カルボキシメチル化による処理、エーテル化による処理、リン酸化による処理、エステル化による処理、フッ素化による処理、カチオン化による処理、シランカップリング剤による処理等が挙げられる。このような化学的処理は、セルロース原料を機械的に微細化する前又は後のいずれの場合に施してもよい。しかしながら、化学的処理を施さない微細セルロース(A)を用いる方が、微細セルロース(A)を作製する際の工程が単純化され、比較的安価に製造できること、さらに化学的処理による環境負荷及び潜在的毒性や危険性が少ない観点から好ましく、また、化学処理を施さない微細セルロース(A)は、化学処理による微細セルロース(A)へのダメージがないため、樹脂組成物の物性を高めることもでき、好ましい。
【0018】
ここで、化学修飾されていない微細セルロース(A)とは、化学的処理により変性されていない微細セルロース(A)を意味し、より具体的には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)等の、セルロースの6位の一級水酸基をカルボキシル基に変換する触媒による酸化処理、オゾンによる処理、酵素による処理、カルボキシメチル化による処理、エーテル化による処理、リン酸化による処理、エステル化による処理、フッ素化による処理、カチオン化による処理及びシランカップリング剤により処理の、いずれの処理もされてない微細セルロース(A)を意味する。
【0019】
微細セルロース(A)の保水度は、樹脂組成物の物性の観点から、特に限定はされないが、(1)10〜2000%、(2)50〜1000%、(3)100〜900%、(4)100〜800%、(5)150〜800%、(6)200〜600%、(7)200〜500%、(8)200〜300%の順で好ましい(括弧の数字が大きくなるにつれ好ましい)。微細セルロース(A)の保水度が、上記範囲外の場合、樹脂組成物の物性が低下することがある。なお、微細セルロース(A)の保水度はJAPAN TAPPI No.26に準拠して測定した。
【0020】
微細セルロース(A)が、微細セルロース繊維(A−1)及び/又は微細セルロース粒状物(A−2)を含むと、樹脂組成物の物性を向上させる観点から、好ましい。
微細セルロース(A)が微細セルロース繊維(A−1)を含む場合、微細セルロース繊維の一形態として、微細セルロース繊維(A−1)を水に分散させた水分散液が挙げられる。微細セルロース繊維(A−1)の水分散液は、微細セルロース繊維(A−1)の繊維径が細かくなるに従い、同じ濃度でも粘度の値が大きくなることがある。また、水分散液の微細セルロース繊維(A−1)の濃度を大きくした際に、セルロース間の凝集が起こり易くなる。さらに、微細セルロース繊維(A−1)の繊維径が細かくなるに従い、製造コストの上昇及びハンドリング性の低下が起こることがある。よって、使用する目的によりコスト、ハンドリング性、及び目標の物性とのバランスから、適切な大きさの微細セルロース繊維(A−1)を使用すればよい。
【0021】
微細セルロース繊維(A−1)の繊維径は特に限定はされないが、コスト、ハンドリング性、及び樹脂組成物の物性を向上させる観点から、3〜10000nmが好ましく、15〜10000nmがより好ましく、20〜5000nmがさらに好ましく、20〜1000nmが特に好ましい。
微細セルロース繊維(A−1)の繊維長は特に限定はされないが、コスト、ハンドリング性、及び樹脂組成物の物性を向上させる観点から、10nm〜10000μmが好ましく、20nm〜1000μmがより好ましく、50nm〜1000μmがさらに好ましく、50nm〜500μmが特に好ましい。
【0022】
微細セルロース繊維(A−1)のアスペクト比は、特に限定はされないが、コスト、ハンドリング性、及び樹脂組成物の物性を向上させる観点から、1〜10000000が好ましく、1〜3000000がさらに好ましく、10〜600000がより好ましく、20〜30000が特に好ましく、20〜10000が最も好ましい。
【0023】
微細セルロース繊維(A−1)の濃度が1重量%である水分散液の粘度は、好ましくは300〜15000mPa・s、より好ましくは500〜15000mPa・s、さらに好ましくは500〜8000mPa・sである。微細セルロース繊維(A−1)の濃度が1重量%である水分散液の粘度が上記範囲外であると、ハンドリング性が悪くなり樹脂組成物の生産性が低下する。
なお、微細セルロース繊維(A−1)の濃度が1重量%である水分散液の25℃における粘度を、B型回転粘度計(東京計器)、回転数12rpm、ローターNo.1〜4で測定し、水分散液の粘度とした。
【0024】
微細セルロース(A)が微細セルロース粒状物(A−2)を含む場合、微細セルロース粒状物(A−2)の平均粒子径は、特に限定はされないが、ハンドリング性の観点から、(1)0.1〜500μm、(2)0.1〜400μm、(3)0.3〜300μm、(4)0.5〜200μm、(5)0.5〜100μm、(6)0.8〜60μm、(7)1〜50μm、(8)1〜35μm、(9)1〜20μm、(10)1〜10μmの順で好ましい(括弧の数字が大きくなるにつれ好ましい)。微細セルロース粒状物(A−2)の平均粒子径が上記範囲外であると、樹脂組成物の物性が低下することがある。
なお、微細セルロース粒状物(A−2)の平均粒子径については、マイクロトラック粒度分布計(日機装製、型式9320−HRA)を使用し、体積基準測定によるD50値を平均粒子径とした。
【0025】
微細セルロース粒状物(A−2)のアスペクト比は、特に限定はされないが、コスト、及び樹脂組成物の物性を向上させる観点から、1〜100が好ましく、1〜50がより好ましく、1〜10がさらに好ましく、1〜5が特に好ましく、1〜2が最も好ましい。
【0026】
微細セルロース繊維(A−1)の市販品として流通しているものは、ナノフォレスト−S(中越パルプ工業製)、ELLEX(大王製紙製)、BiNFi−s(スギノマシン)、セルフィム(モリマシナリー)、セリッシュ(ダイセルファインケム製)、セレンピア(日本製紙製)、スラリー状CNF「アウロ・ヴィスコTM」(王子ホールディングス製)、ファイブナノ(草野作工製)、ナノアクト(旭化成製)等が挙げられる。
微細セルロース粒状物(A−2)の市販品として流通しているものは、KCフロック、NPファイバー(日本製紙製);セオラス(旭化成製);VIAPUR、ARBOCEL(レッテンマイヤー製);トスコ麻セルロースパウダー、トスコシルクパウダー、バンブーパウダー(トスコ製);CELLULOBEADS、RICE PW、CELLULOFLAKE(大東化成製);セルロースパウダー(ティーディーアイ製);ビスコパール(レンゴー製)等が挙げられる。
【0027】
微細セルロース(A)が、微細セルロース繊維(A−1)及び微細セルロース粒状物(A−2)を含む場合、微細セルロース繊維(A−1)と微細セルロース粒状物(A−2)の重量比((A−1)/(A−2))は、特に限定はされないが、樹脂組成物の物性の観点から、(1)1/99〜99/1、(2)5/95〜99/1、(3)17/83〜99/1、(4)25/75〜99/1、(5)35/65〜99/1、(6)40/60〜99/1、(7)50/50〜99/1の順で好ましい(括弧の数字が大きくなるにつれ好ましい)。
【0028】
微細セルロース(A)としては、特に限定はされないが、本願効果を奏する観点から、微細セルロース繊維(A−1)及び微細セルロース粒状物(A−2)で構成されている、又は微細セルロース繊維(A−1)で構成されていると好ましく、微細セルロース繊維(A−1)で構成されているとより好ましい。
【0029】
〔樹脂(B)〕
樹脂(B)は、ガラス転移温度が−130〜110℃の樹脂である。
樹脂(B)のガラス転移温度が−130℃未満では、樹脂組成物の耐熱性が不足する。一方、樹脂(B)のガラス転移温度が110℃を超えると、樹脂組成物の加工性が不足する。乾燥後の樹脂組成物のハンドリング性の点から、樹脂(B)は、ガラス転移温度が−130〜105℃であると好ましく、−125〜100℃であるとより好ましく、−70〜50℃であるとさらに好ましい。
【0030】
樹脂(B)としては、ガラス転移温度が−130〜110℃のものであれば、特に限定はされないが、たとえば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等のジエン系ゴム;エポキシ化天然ゴム、水素化天然ゴム等の改質天然ゴム、水素添加ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、プロピレンオキシドゴム等の非ジエン系ゴム;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリビニルアルコール;エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−ブチル(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン系共重合体;低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリテルペン、変性ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリアセタール;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリメチルメタクリレート;酢酸セルロース;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;アクリル酸エステル系共重合樹脂、酢酸ビニル・アクリル酸エステル系共重合樹脂、シリコン変性アクリル系樹脂等のアクリル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;熱可塑性ポリウレタン;ポリテトラフルオロエチレン樹脂;エチレン系アイオノマー、ウレタン系アイオノマー、スチレン系アイオノマー、フッ素系アイオノマー等のアイオノマー樹脂;ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー等の熱可塑性樹脂エラストマー等が挙げられる。上記樹脂(B)の中でも、本願効果を奏する観点から、ジエン系ゴム、エチレン系共重合体、ポリオレフィン系樹脂、アクリル樹脂、熱可塑性エラストマーが好ましく、中でも、本発明の効果が大きく発揮される観点から、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、アクリル樹脂が好ましい。また、樹脂(B)が、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンプロピレンジエンゴム、アクリル樹脂、ポリエチレン及びポリプロピレンから選ばれる少なくとも1種であると、ゴム及び/又はエラストマーと混練しやすい観点から好ましい。これらの樹脂(B)は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0031】
樹脂(B)は、乳化重合、懸濁重合またはミニエマルション重合により合成されたエマルジョン、あるいは、溶液重合またはバルク重合により合成された微細な樹脂(B)を水中に分散させた分散液の形態として用いることができる。分散液の形態として用いる場合、樹脂(B)の粒子の大きさは、10nm〜1000μmが好ましく、10nm〜100μmがより好ましく、30nm〜10μmがさらに好ましく、30nm〜5μmが特に好ましい。10nmよりも小さい場合、そのような樹脂粒子を得ることは技術的に困難であり、また得られたとしても樹脂組成物の価格が高くなることがある。また、1000μmよりも大きい場合、微細セルロース(A)の樹脂(B)への分散性が不足することがある。
【0032】
樹脂(B)が水に分散している場合、その水分散液の固形分濃度は、特に限定されないが、10〜70重量%が好ましく、15〜70重量%がより好ましく、20〜70重量%がさらに好ましく、20〜60重量%が特に好ましい。10重量%未満では樹脂(B)を微細セルロース(A)に混合した際に水の量が多くなり、脱水・乾燥工程の長時間化を招く等生産性に劣ることがある。また、70重量%超では樹脂(B)を微細セルロース(A)と混合した際の水分散液の粘度が高くなり、ハンドリング性に劣ることがある。
【0033】
〔アミン(C)〕
アミン(C)は、分子内にアミノ基を2つ以上有し、アミノ基のうちの少なくとも1つが3級アミノ基であるアミン及び/又はその塩で、分子量が115〜100000である。アミン(C)は、微細セルロース(A)の分散性を高め、樹脂組成物の機械的強度を顕著に向上させることができる。推測ではあるが、アミン(C)が上記特性を有することで、微細セルロース(A)及び樹脂(B)との親和性が向上し、微細セルロース(A)を樹脂(B)中に均一に分散できると考えられる。
分子内にアミノ基が1つのみである場合には、樹脂(B)に対する微細セルロース(A)の分散性に劣る。
アミン(C)の分子量が上記範囲外であると、微細セルロース(A)の分散性が劣り、樹脂組成物の機械的強度が低下する。アミン(C)の分子量の上限は、好ましくは80000、より好ましくは50000、さらに好ましくは20000、さらに好ましくは10000である。一方、アミン(C)の分子量の下限は、好ましくは120、より好ましくは129である。
なお、アミン(C)が分子中に繰り返し単位を有し、アミン(C)の分子量が1000以上の場合は、アミン(C)の分子量は、アミン(C)の数平均分子量とする。
【0034】
アミン(C)が分子中に繰り返し単位を有する場合、特に限定はされないが、繰り返し単位の数である重合度は、1〜10000が好ましい。重合度の合計の上限は、好ましくは5000、より好ましくは1000、さらに好ましくは100、さらに好ましくは10、さらに好ましくは6である。重合度の下限は、好ましくは2、より好ましくは3、よりは4である。重合度が10000超であると、樹脂組成物の物性が低下することがある。
【0035】
アミン(C)が有するアミノ基に占める3級アミノ基の数の割合、つまりアミン(C)が有する全アミノ基に占める3級アミノ基の数の割合(アミン(C)が有する3級アミノ基の数/アミン(C)が有する全アミノ基の数)は、特に限定はされないが、本願効果を奏する観点から、0.2〜1であると好ましく、0.25〜1であるとより好ましく、0.3〜1であるとさらに好ましく、0.33〜1であると特に好ましい。3級アミノ基の数の割合が0.2未満であると、微細セルロース(A)又は樹脂(B)への親和性が低下し、樹脂組成物の物性が低下することがある。
【0036】
アミンとしては、たとえば、2,4、6−トリスアミノメチルフェノール、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、1−エチルピペラジン、1,4−ビス(アミノプロピル)ピペラジン、N−メチル−N’−(2−メトキシエチル)ピペラジン、N−メチル−N’−(2−ヒドロオキシプロピル)ピペラジン、N−メチル−N’−(2−ジメチルアミノ)エチルアミノピペラジン、N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,3−ビス(ジメチルアミノ)プロパン、トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン、2,2’−ジアミノ−N−メチルジエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノブタン、2,2’−ビス(メチルアミノ)−N−メチルジエチルアミン、2−ジエチルアミノエチルアミン、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−プロパンジアミン、テトラキス(ジメチルアミノ)エチレン、N−メチル−N,N−ビス[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アミン、N,N−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’−メチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノ−2−ブテン、N,N’−ビス(ジメチルアミノメチレン)ヒドラジン、N,N−ジメチルネオペンタンジアミン、N−ホルミル−N,N’,N’−トリメチルエチレンジアミン、ビス[2−(ジイソプロピルアミノ)エチル]アミン、3,3’−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミン、ヘキサメトニウムクロリド二水和物、ヘキサメトニウムブロミド、N,N−ビス[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、2−ジメチルアミノエチルエーテル、3−ジエチルアミノプロピルアミン、デカメトニウムブロミド、2−(ジブチルアミノ)エチルアミン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリアジン、N,N−ジブチルトリメチレンジアミン、3,6−ビス[N,N−ビス(4−メトキシフェニル)アミノ]−9H−カルバゾール、4−アミノトリフェニルアミン、4,4’−ビス[N−(4−ホルミルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、トリス(4−アミノフェニル)アミン、4−ジフェニルアミノ−4’−フェニルアミノビフェニル、4−アニリノトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(4−ニトロフェニル)−1,4−フェニレンジアミン、N−(2−アミノエチル)−N−エチル−m−トルイジン、1,3−ビス(ジメチルアミノメチル)ベンゼン、N−ベンジル−N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、1,4,7,10−テトラベンジル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸トリ−tert−ブチル1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7−三酢酸トリ−tert−ブチル、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,8,11−四酢酸テトラエチル、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン、1,4,8,11−テトラメチルシクラム、1,6−ビス(ジメチルアミノ)ヘキサン、ビス[2−(ジイソプロピルアミノ)エチル]アミン、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−テトラ−2−プロパノール、N−(2,6−ジエチルフェニルカルバモイルメチル)イミノ二酢酸、cis−デカヒドロ−1H,6H−3a,5a,8a,10a−テトラアザピレン、N,N,N’,N’−テトラキス[4−(ジイソブチルアミノ)フェニル]−1,4−フェニレンジアミン、トリス(3−アミノプロピル)アミン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、1,2−ビス(ジメチルアミノ)プロパン、1,3−ビス(ジメチルアミノ)ブタン、N,N−ジエチル−N’−メチルエチレンジアミン、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,8−ジアミノナフタレン、N,N,N’,N’−テトラメチル−プロパン−1,3ジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン1,6ジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−ウンデカン−1,11−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−2−メチルペンタン−1,5−ジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチル(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチル−ジプロピレントリアミン、ビス(N,N−ジメチル−3−アミノプロピル)アミン、N,N,N’,N’,N’’,N’’−ヘキサ−メチル(4−アミノメチル)オクタン−1,8−ジアミン、テトラメチルグアニジン、N,N’−ビス(N’’,N’’−ジメチル−3−アミノプロピル)N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’−ヘキサメチルトリプロピレン−テトラミン、ビス(N,N−ジメチルアミノエチルピペラジニル)エタン、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)モルホリン、1,3−ビス(N,N−ジメチルアミノ)−2−プロパノール、N,N,N’,N’−テトラメチル−N’’−(2−ヒドロオキシル)エチル−トリメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−N’’−(2−ヒドロオキシル)プロピル−トリメチレンジアミン、N,N−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)アミノ−2−プロパノール、エチレングリコールビス(3−ジメチル−アミノプロピル)エーテル、N,N’,N’−テトラメチル−N−(2−メトキシエチル)エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、1,3−プロパンジアミン三酢酸(PDTA)、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン三酢酸(DPTA−OH)、グリコールエーテルジアミン三酢酸(GEDTA)、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジルメチル)エチルジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸、trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−三酢酸、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸、エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸等が挙げられる。上記アミン(C)は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0037】
市場に流通しているアミン(C)の例としては、jERキュアST12、EDTA、DTPA(三菱ケミカル株式会社製);エポミン(株式会社日本触媒製);ポリエチレンイミン(純正化学株式会社製);DMP−30(株式会社スリーボンド製);キレスト3A、キレスト2A、キレストA、キレスト110、キレスト3PA、キレストPA、キレストHA、キレストPD−4H、キレストRA、キレスト2QA、キレストQA、キレストQ、キレストGEA(キレスト株式会社製);クレワットTAA、クレワットDA(ナガセケムテックス株式会社);4H(EDTA・free acid)、TTHA、TPEN、EDTA−OH、DTPA、GEDTA(EGTA)、CyDTA(同仁化学研究所製);PAAシリーズ、PASシリーズ(ニットーボーメディカル株式会社製)等が挙げられる。上記アミン(C)は、1種又は2種以上併用してもよい。
【0038】
上記アミンの塩に用いられる酸としては、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素等のハロゲン化水素;次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸等の次亜ハロゲン酸類;亜塩素酸、亜臭素酸等の亜ハロゲン酸類;塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸等のハロゲン化オキソ酸類;過塩素酸、過臭素酸、過ヨウ素酸等の過ハロゲン酸;硫酸;硝酸;リン酸、ヘキサフルオロリン酸等のリン酸類;、ホウ酸、テトラフルオロホウ酸等のホウ酸類;フルオロスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等のスルホン酸類;ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、グルコン酸、アジピン酸、マレイン酸等のカルボン酸類;乳酸、酒石酸等のヒドロキシ酸類;ビニル性カルボン酸;メルドラム酸;アスコルビン酸;ヘキサフルオロアンチモン酸;クロム酸等が挙げられる。
【0039】
アミンは、アミノ基を除いて水素原子、炭素原子及び酸素原子のみで構成されると、加熱した際の樹脂組成物の変色や、また、金属元素の触媒作用やハロゲン元素による樹脂の劣化を抑制することができる観点から、好ましい。
アミン(C)は、アミノ基以外の官能基を有していてもよい。官能基としては、たとえば、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミド基、イミド基等のヘテロ原子を有する官能基が挙げられる。アミン(C)はこれらのヘテロ原子を有する官能基の1種または2種以上を有してもよい。
【0040】
アミン(C)の融点は、特に限定はされないが、本願効果を奏する観点から、150℃以下であると好ましく、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは100℃以下、特に好ましくは80℃以下、最も好ましくは40℃以下である。アミン(C)の融点が150℃超であると、樹脂組成物中で析出し、樹脂組成物の物性が低下することがある。なお、アミン(C)の融点の好ましい下限は−120℃である。
【0041】
アミン(C)は、水に不溶のものでもよく、任意の割合で混和するものでもよい。
微細セルロース(A)、又は樹脂(B)が水分散液である場合、または樹脂組成物を作製する際に水を含む場合は、アミン(C)は、任意の割合で混和するものであると好ましい。アミン(C)が水と混和するものである場合、アミン(C)の20℃における水への溶解度は、特に限定はされないが、好ましくは1〜4000g/L、より好ましくは10〜3000g/L、さらに好ましくは50〜2000g/L、特に好ましくは50〜1000g/Lである。アミン(C)の20℃における水への溶解度が、4000g/L超の場合、微細セルロース(A)の分散性が低下することがある。
【0042】
アミン(C)は、他の形態の一つとして、微細セルロース分散剤として、使用することもできる。
【0043】
〔樹脂組成物、樹脂組成物の製造方法〕
本発明の樹脂組成物は、上記でそれぞれ説明した微細セルロース(A)と、樹脂(B)と、アミン及び/又はその塩(C)とを含むものである。樹脂組成物が微細セルロース(A)を含有するマスターバッチであると、より効率的に微細セルロース(A)を樹脂組成物又は成形物中に分散させることができ、好ましい。
アミン(C)により微細セルロース間の凝集が抑制され、さらに樹脂(B)との相溶性が向上すると考えられ、その結果、高い分散性が得られると考えられる。
【0044】
樹脂組成物における微細セルロース(A)の含有量は、特に限定はされず、樹脂組成物の用途に応じて必要とされる物性を発揮できるように適宜設定すればよい。微細セルロース(A)の含有量は、樹脂(B)100重量部に対して、0.1〜100重量部が好ましく、1〜50重量部がより好ましく、5〜35重量部がさらに好ましく、5〜30重量部が特に好ましく、10〜30重量部が最も好ましい。
【0045】
樹脂組成物におけるアミン(C)の含有量は、特に限定はされないが、微細セルロース(A)100重量部に対して、(1)0.1〜1000重量部、(2)10〜500重量部、(3)10〜400重量部、(4)10〜300重量部、(5)10〜270重量部、(6)10〜200重量部、(7)20〜180重量部、(8)30〜160重量部、(9)45〜140重量部、(10)50〜120重量部、(11)55〜110重量部、(12)60〜110重量部の順で好ましい(括弧の数字が大きくなるにつれ好ましい)。アミン(C)の量が0.1重量部未満の場合、微細セルロース(A)の分散性が不足することがある。一方、アミン(C)の含有量が1000重量部超の場合、樹脂組成物の物性が低下することがある。
【0046】
本実施形態にかかる樹脂組成物の製造方法としては、たとえば、微細セルロース(A)の粉体又は水分散液、樹脂(B)又はその水分散液、及びアミン(C)を混合する混合工程と、混合工程で得られた混合物(混合液を含む)を乾燥させる乾燥工程を含む製造方法が挙げられる。
【0047】
上記混合工程において、微細セルロース(A)、樹脂(B)及びアミン(C)を混合する方法は、特に限定はされず、たとえば、石臼式摩擦機、ディスクミル、グラインダー、高圧ホモジナイザー、ジェットミル、ボールミル、プロペラ式撹拌装置、ホモジナイザー、ロータリー撹拌装置、電磁撹拌装置、押出機、コニカルリファイナー等の公知の方法から、1種又は2種以上の手段を選択使用して行うことができる。
微細セルロース(A)、樹脂(B)、及びアミン(C)を混合する順序は、特に限定はされず、予め二つの成分を混合してから他の成分を混合してもよく、一度に全ての成分を混合してもよい。また、アミン(C)で微細セルロース(A)を湿粉化したものを、樹脂(B)と混合してもよい。
【0048】
上記混合工程により得られた混合物が混合液である場合、混合液を乾燥させて樹脂組成物を得る手法としては、特に限定はされず、噴霧乾燥、自然乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、気流乾燥などの公知の方法により混合液から水を除去すればよく、上記方法から1種又は2種以上の手段を選択使用して行うことができる。
【0049】
上記乾燥工程時に使用する装置としては、スプレードライヤー;対流定温乾燥機等の定温乾燥機、ダブルドラムドライヤー、シングルドラムドライヤー、ツインドラムドライヤー等のドラムドライヤー;SVミキサー等の真空乾燥機;気流乾燥機等が挙げられ、この中でも乾燥効率の観点から、ドラムドライヤーが好ましく、ダブルドラムドライヤー又はツインドラムドライヤーが特に好ましい。
【0050】
乾燥方法として、ドラムドライヤーを使用する場合、特に限定はされないが、ドラムドライヤーの表面温度は100〜230℃が好ましい。ドラムドライヤーの表面温度が100℃未満であると、乾燥効率が低下することがある。一方、ドラムドライヤーの表面温度が230℃超であると、作製した組成物の物性が低下することがある。ドラムドライヤーの表面温度の上限は、より好ましくは180℃、さらに好ましくは160℃である。一方、ドラムドライヤーの表面温度の下限は、より好ましくは110℃、さらに好ましくは130℃である。
【0051】
ドラムドライヤーを使用する場合、ドラムドライヤーのドラムの回転速度は、ドラムドライヤーの表面温度やドラムのサイズ等により適宜調整されるが、例えば0.5〜10rpmとすることができる。
【0052】
また、乾燥方法として、真空乾燥機を使用する場合、特に限定はされないが、真空乾燥機内の温度を、機内の気圧下における、水の沸点又は昇華点から20℃低い温度以上に加温して実施する事が好ましい。また、機内の温度は230℃以下に加温して実施することが好ましい。機内の温度が、機内の気圧下における水の沸点又は昇華点から20℃より低い温度であると、乾燥効率が低下することがある。一方、機内の温度が230℃超であると、作製した樹脂組成物の物性が低下することがある。真空乾燥機の機内の上限温度は、好ましくは180℃、さらに好ましくは160℃である。一方、真空乾燥機の機内の下限温度は、好ましくは機内の気圧下における水の沸点又は昇華点から10℃低い温度、より好ましくは機内の気圧下における水の沸点又は昇華点温度、さらに好ましくは機内の気圧下における水の沸点又は昇華点から10℃高い温度である。
【0053】
また、乾燥工程の前に、混合液に沈降剤を加えてもよい。沈降剤としては、特に限定はされず、酸、塩基、塩、アルコール、高分子等が挙げられる。一例をあげると、リョクバン、コウバン、タンバン、ミョウバン、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、アンモニア、アルコール(樹脂組成物に残存することを避けるためには沸点が100度以下であることが好ましい)、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、硫酸銅(II)、硫酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム等がある。沈降剤を添加する利点は、乾燥前の水分量を減らすことができ、乾燥時間の短縮が図れることである。しかし、沈降させる場合、分散剤の一部が水中に残ること、及び樹脂組成物中に沈降剤が残ることがあるため、エマルジョン及び分散剤の種類に合わせて適切に選ぶ必要がある。
【0054】
上記の方法で得られた樹脂組成物が、微細セルロース(A)を含有するマスターバッチである場合、さらに他の樹脂と混合することで微細セルロース(A)を含有する樹脂組成物を得ることができる。微細セルロース(A)を含有するマスターバッチと混合し得る他の樹脂としては、前述の樹脂(B)を使用することができる。
微細セルロース(A)を含有するマスターバッチと他の樹脂を混練する装置としては、バンバリーミキサー、ニーダー、ローラー、ベンチロール、プラネタリーミキサー、ラボプラストミル、一軸押出機、二軸押出機、多軸押出機等の押出機等が挙げられる。
成形物は必要に応じて、前述の樹脂組成物または前述のマスターバッチと樹脂(B)の混合物に、さらに架橋剤を添加及び/又は含有させて、加熱することにより樹脂を架橋してもよい。
【0055】
また、成形物は適宜、前述の樹脂組成物または前述のマスターバッチと樹脂(B)の混合物に、さらにシリカ、カーボンブラック、ガラス繊維、タルク、マイカ、炭素繊維、カーボンナノチューブ、炭酸カルシウム、フッ素系樹脂等の補強充填剤を添加及び/又は含有させて、成形したものでもよい。補強充填剤を添加及び/又は含有させる場合、樹脂組成物における補強充填剤の含有量は、特に限定はされないが、樹脂(B)100重量部に対して20〜500重量部であることが好ましい。
【実施例】
【0056】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の技術的範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0057】
〔引張り試験1〕
後述する樹脂組成物シートから、ダンベル型試験片(3号)を打ち抜いて引張り試験用試験片を作製し、200mm/minの速度で引張り試験を行った。引張りの力の最大値、試験片の厚み及び幅の値から、引張り強さ(MPa)を算出した。
また、300%伸び時における引張応力(MPa)及び100%伸び時における引張応力(MPa)をそれぞれM300、M100として測定した。
引張り試験は、23℃の室内中で、ロードセル100Nの条件下で引張圧縮試験機(TG−2kN型引張圧縮試験機、ミネビア株式会社製)を用いて測定した。
【0058】
〔引張り試験2〕
後述する樹脂組成物シートから、ダンベル型試験片(3号)を打ち抜いて引張り試験用試験片を作製し、500mm/minの速度で引張り試験を行った。引張りの力の最大値、試験片の厚み及び幅の値から、引張り強さ(MPa)を、試験片の切断時の伸びから切断時伸びを算出した。
また、300%伸び時、における引張応力(MPa)、100%伸び時における引張応力(MPa)をそれぞれM300、M100として測定した。
引張り試験は、23℃の室内中で、ロードセル5kNの条件下で引張圧縮試験機(オートグラフ、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。
【0059】
〔引裂き試験〕
後述する樹脂組成物シートから、10cm×1.5cmの引裂き試験用試験片を作製し1.5cm幅の間に40mmの切り込みを入れた。引裂き試験用試験片を用いて、100mm/minの速度で引裂き試験を行った。力の最大値と厚みから、引裂き強さ(kN/m)を算出した。
引裂き試験は、23℃の室内中で、ロードセル100Nの条件下で引張圧縮試験機(TG−2kN型引張圧縮試験機、ミネビア株式会社製)を用いて測定した。
【0060】
(実施例1)
微細セルロース(A)として微細セルロース繊維(A−1)であるセリッシュKY100S(ダイセルファインケム製、固形分25重量%、1重量%水分散液の粘度が800mPa・s、繊維幅500nm、繊維長さ500μm、保水度205%、化学的処理により変性されていない)、樹脂(B)としてニポールLX112(日本ゼオン製、固形分40重量%、ガラス転移温度:−47℃)、アミン(C)として2,4,6−トリスアミノメチルフェノール(TCI製、分子量265、20℃における水への溶解度850g/1L、含有するアミノ基に占める3級アミノ基の数の割合1)を用いた。
イオン交換水で10重量%に希釈したKY100S(42g、固形分として4.2g)へ、硫酸でpH=7に調整したLX112(30g、固形分として12g)を加え、ディスパーを用い回転数2300rpmで0.5分間混合した。そこに2,4、6−トリスアミノメチルフェノール(1.56g)を加え、ディスパーを用い回転数2300rpmで0.5分間混合した。得られた混合物をポリプロピレン製のカップに入れ、80℃の乾燥機で7時間乾燥した後、真空乾燥機に入れ80℃で7時間乾燥し、微細セルロース(A)を含有するマスターバッチを得た。
下記に示す配合物Aを用いて、ロールで混練し樹脂組成物を得た。厚さ2.0mmとなるようシート化し、加圧プレス機にて160℃×10分、10MPaの条件で加硫し、樹脂組成物のシートを得た。得られたシートを、上記引張り試験1の方法にて、引張り強さ(MPa)、切断時の伸びEB(%)、300%伸び時における引張応力M300、及び100%伸び時における引張応力M100をそれぞれ測定した。その結果を表1に示す。
【0061】
(配合物A)
マスターバッチ 15重量部
SBR 250重量部
ZnO 12.5重量部
ステアリン酸 2.5重量部
素練り促進剤 2.5重量部
硫黄 5重量部
加硫促進剤 5重量部
スコーチ防止剤 2.5重量部
【0062】
(実施例2〜3、比較例1〜2)
表1に示すとおりに、微細セルロース(A)として微細セルロース繊維(A−1)の量、アミン(C)の種類を変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。なお、変更したアミン(C)については以下のものを使用した。
N−(2−アミノエチル)ピペラジン:TCI製、分子量129、融点−19℃、含有するアミノ基に占める3級アミノ基の数の割合0.33
PAS−M−1:ポリアリルアミン、ニットーボーメディカル株式会社製、分子量20000、含有するアミノ基に占める3級アミノ基の数の割合1
トリエチレンジアミン:東ソー製、分子量112、融点155℃、含有するアミノ基に占める3級アミノ基の数の割合1
配合物Aでマスターバッチを添加せずに得られた樹脂組成物のシート(以後、ブランクAということがある)の引張り強さ、M300、M100を測定した。ブランクAの各測定値を基準とし、ブランクAの各測定値を100として、それぞれ測定して得られたシートの引張り強さ、M300、M100から、引張り強さ指数、M300指数、M100指数を算出した。引張り強さ指数が135以上のもの、M300指数が130以上のもの、M100指数が110以上のものをそれぞれ合格とし、引張り強さ指数、M300指数、M100指数の評価のうち合格が2つ以上であるものを良好(○)と判定し、引張り強さ指数、M300指数、M100指数の評価のうち合格1つ以下であるものを不良(×)と判定し、実施例、比較例とした。その結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
(実施例4)
微細セルロース(A)として微細セルロース繊維(A−1)であるセリッシュKY100S(ダイセルファインケム製、固形分25重量%、1重量%水分散液の粘度が800mPa・s、繊維幅500nm、保水度205%、繊維長さ500μm、化学的処理により変性されていない)、及び微細セルロース粒状物(A−2)であるNPファイバーW−06MG(日本製紙製、粒子径7.4μm、化学的処理により変性されていない)、樹脂(B)としてニポールLX112(日本ゼオン製、40重量%、ガラス転移温度:−47℃)、アミン(C)として2,4,6−トリスアミノメチルフェノール(TCI製、分子量265、20℃における水への溶解度850g/1L、含有するアミノ基に占める3級アミノ基の数の割合1)を用いた。
イオン交換水で10重量%に希釈したKY100S(10g、固形分として1.0g)、及びNPファイバーW−06MG(3g)へ、硫酸でpH=7に調整したLX112(30g、固形分として12g)を加え、ディスパーを用い回転数2300rpmで0.5分間混合した。そこに2,4,6トリスアミノメチルフェノール(1.56g)を加え、ディスパーを用い回転数2300rpmで0.5分間混合した。得られた混合物をポリプロピレン製のカップに入れ、80℃の乾燥機で14時間乾燥し、微細セルロース(A)を含有するマスターバッチを得た。
上記方法にて得られたマスターバッチを含む上記配合物Aを用いて、実施例1と同様の方法により、樹脂組成物を得て、得られた樹脂組成物を実施例1と同様の方法で成形、加硫し、樹脂組成物のシートを得て、実施例1と同様に引張り試験1の方法にて、得られたシートの引張り強さ(MPa)、300%伸び時における引張応力M300、及び100%伸び時における引張応力M100をそれぞれ測定した。
得られたシートの引張り強さ(MPa)、300%伸び時における引張応力M300、及び100%伸び時における引張応力M100の測定値から、実施例2と同様の方法で、引張り強さ指数、M300指数、M100指数を算出、評価した。引張り強さ指数は140、M300指数は110、M100指数は110であり、合格した評価数が2つ以上であることから、判定は良好(○)であった。その結果を表2に示す。
【0065】
(実施例5〜7)
微細セルロース繊維(A−1)、及び微細セルロース粒状物(A−2)の量を表2に示す値に変更した以外は、実施例4と同様の操作を行った。その結果を表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
(実施例8)
微細セルロース(A)として微細セルロース繊維(A−1)であるナノフォレストS(中越パルプ製、針葉樹、低解繊、固形分10重量%、保水度260%、化学的処理により変性されていない)、樹脂(B)としてレヂテックス LA NR LATEX(株式会社レヂテックス製、60重量%)、アミン(C)として2,4,6−トリスアミノメチルフェノール(TCI製、分子量265、20℃における水への溶解度850g/1L、含有するアミノ基に占める3級アミノ基の数の割合1)用いた。
ナノフォレストS(34g、固形分として3.4g)へLA NR LATEX(20g、固形分として12.3g)を加え、ディスパーを用い回転数2300rpmで0.5分間混合した。そこに2,4,6トリスアミノメチルフェノール(1.56g)を加え、ディスパーを用い回転数2300rpmで0.5分間混合した。得られた混合物をポリプロピレン製のカップに入れ、80℃の乾燥機で14時間乾燥し、微細セルロース(A)を含有するマスターバッチを得た。
下記に示す配合物Bを用いて、ロールで混練し樹脂組成物を得た。厚さ2.0mmとなるようシート化し、加圧プレス機にて150℃×10分、10MPaの条件で加硫して、樹脂組成物のシートを得た。得られたシートを、上記引張り試験2の方法にて、引張り強さ(MPa)、切断時の伸び(%)、300%伸び時における引張応力M300(MPa)、及び100%伸び時における引張応力M100(MPa)をそれぞれ測定した。その結果を表3に示す。
【0068】
(配合物B)
マスターバッチ 18重量部
天然ゴム RSS#3 250重量部
ZnO 12.5重量部
ステアリン酸 2.5重量部
素練り促進剤 2.5重量部
硫黄 6.25重量部
加硫促進剤 2.5重量部
スコーチ防止剤 2.5重量部
【0069】
(比較例3)
アミン(C)の代わりに表3に示す添加剤を使用する以外は、実施例8と同様の操作を行った。その結果を表3に示す。なお、表3における添加剤としては次のものを使用した。
ゾンテスAL−10:ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル(松本油脂製薬株式会社製)
【0070】
(比較例4)
アミン(C)を使用しないこと及びナノフォレストSの量を42g(固形分として4.2g)にする以外は、実施例8と同様の操作を行った。その結果を表3に示す。
配合物Bでマスターバッチを添加せずに得られた樹脂組成物のシート(以後、ブランクBということがある)の引張り強さ、切断時伸び、M300、M100を測定した。ブランクBの各測定値を基準とし、ブランクBの各測定値を100として、それぞれ測定して得られたシートの引張り強さ、切断時伸び、M300、M100から、引張り強さ指数、M300指数、M100指数、切断時伸び指数を算出した。引張り強さ指数が130以上のもの、M300指数が160以上のもの、M100指数が140以上のもの、切断時伸び指数が85以上のものをそれぞれ合格とし、引張り強さ指数、M300指数、M100指数の評価のうち不合格が1つ以下であるものを良好(○)と判定し、引張り強さ指数、切断時伸び指数、M300指数、M100指数の評価のうち不合格2つ以上であるものを不良(×)と判定し、実施例、比較例とした。その結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
(実施例9)
微細セルロース(A)として微細セルロース繊維(A−1)であるナノフォレストS(中越パルプ製、針葉樹、低解繊、固形分10重量%、保水度260%、化学的処理により変性されていない)、樹脂(B)としてEVAエマルジョン(デンカ製、固形分55重量%、ガラス転移温度:0℃)、アミン(C)としてN−(2−アミノエチル)ピペラジン(TCI製、分子量129、融点−19℃、含有するアミノ基に占める3級アミノ基の数の割合0.33)を用いた。
ナノフォレストS(34g、固形分として3.4g)へEVAエマルジョン(22g)を加え、ディスパーを用い回転数2300rpmで0.5分間混合した。そこにN−(2−アミノエチル)ピペラジン(1.56g)を加え、ディスパーを用い回転数2300rpmで0.5分間混合した。得られた混合物をポリプロピレン製の容器に入れ80℃の乾燥機で14時間乾燥し微細セルロース(A)を含有するマスターバッチを得た。
下記に示す配合物Cを用いて、ロールで混練し樹脂組成物を得た。厚さ2.0mmとなるようシート化し、加圧プレス機にて180℃×6分、10MPaの条件で加硫し、樹脂組成物のシートを得た。得られたシートを、上記引裂き試験の方法にて、引裂き強さを測定した。その結果を表4に示す。
【0073】
(配合物C)
マスターバッチ 36重量部
EPDM 123重量部
活性亜鉛華 5重量部
ステアリン酸 2重量部
SRF級カーボンブラック 72重量部
重質炭酸カルシウム 56重量部
パラフィン系オイル 56重量部
ポリエチレングリコール 1重量部
酸化カルシウム 5重量部
加硫促進剤 5重量部
硫黄 5重量部
【0074】
(比較例5)
アミン(C)に代えて表4に示す添加剤を用いて実施例9と同様の操作を行った。その結果を表4に示す。配合物Cでマスターバッチを添加せずに得られた樹脂組成物のシート(以後、ブランクCという事がある)の引裂き強さを測定した。ブランクCの測定値を基準とし、ブランクCの測定値を100として、それぞれ測定して得られたシートの引裂き強さから、引裂き強さ指数を算出した。引裂き強さ指数が180以上のものを合格と判断し、実施例、比較例とした。
【0075】
【表4】
【0076】
表1〜4の実施例1〜9に係る樹脂組成物は、微細セルロース(A)と、ガラス転移温度が−130℃〜110℃である樹脂(B)と、分子内にアミノ基を2つ以上有し、アミノ基のうちの少なくとも1つが3級アミノ基である、分子量115〜100000のアミン(C)とを含むため、本願の課題を解決できている。
一方、アミン(C)を使用しない場合(比較例1、4)、分子内にアミノ基を2つ以上有し、アミノ基のうちの少なくとも1つが3級アミノ基である、分子量115〜100000のアミン(C)を使用しない場合(比較例2、3、5)は、本願課題を解決できていない。