【課題】画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の光硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置を製造する際に、インクジェットコート法を利用して塗布される光硬化性樹脂組成物として、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーの使用に由来する問題がなく、インクジェットコート法において良好な吐出が可能な光硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】光硬化性樹脂組成物は、水酸基価が120mgKOH/g以上であって、(メタ)アクリロイル基を有さない(メタ)アクリレートポリマーと、水酸基含有単官能(メタ)アクリレートモノマーと、水酸基非含有単官能(メタ)アクリレートモノマーと、水素引き抜き型光重合開始剤とを含有し、25℃で10mPa・s以上であり且つ60℃で30mPa・s以下の粘度を有する。
画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の光硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置に適用され得る当該光硬化性樹脂組成物であって、以下の成分(A)〜(D):
<成分(A)>
水酸基価が120mgKOH/g以上であって、(メタ)アクリロイル基を有さない(メタ)アクリレートポリマー;
<成分(B)>
水酸基含有単官能(メタ)アクリレートモノマー;
<成分(C)>
水酸基非含有単官能(メタ)アクリレートモノマー;
<成分(D)>
水素引き抜き型光重合開始剤
を含有し、粘度が25℃で10mPa・s以上であり且つ60℃で30mPa・s以下である光硬化性樹脂組成物。
成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーが、2−ヒドロキシエチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの共重合体である請求項1〜4のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
成分(B)の水酸基含有単官能(メタ)アクリレートモノマーが、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも一種である請求項1〜5のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
成分(C)の水酸基非含有単官能(メタ)アクリレートモノマーが、イソステアリル(メタ)アクリレート及びオクチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも一種である請求項1〜6のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
成分(E)の多官能(メタ)アクリレートモノマーが、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートから選択される少なくとも一種である請求項9記載の光硬化性樹脂組成物。
画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の光硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置の製造方法であって、以下の工程(a)〜(c):
<工程(a)>
画像表示部材又は光透過性カバー部材のいずれか一方の部材表面に、請求項1記載の光硬化性樹脂組成物をインクジェットコート装置のノズルから吐出させて光硬化性樹脂組成物膜を形成する工程;
<工程(b)>
光硬化性樹脂組成物膜に他方の部材を積層し、画像表示部材と光透過性カバー部材とを貼り合わせる工程;及び
<工程(c)>
両パネルに挟持された光硬化性樹脂組成物膜に紫外線を照射して硬化させることにより、画像表示部材と光透過性カバー部材とを光硬化樹脂層で積層した画像表示装置を得る工程
を有する製造方法。
画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の光硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置の製造方法であって、以下の工程(aa)〜(dd):
<工程(aa)>
画像表示部材又は光透過性カバー部材のいずれか一方の部材表面に、請求項1記載の光硬化性樹脂組成物をインクジェットコート装置のノズルから吐出させて光硬化性樹脂組成物膜を形成する工程;
<工程(bb)>
光硬化性樹脂組成物膜に紫外線を照射して、仮硬化樹脂層を形成する工程;
<工程(cc)>
仮硬化樹脂層に他方の部材を積層し、画像表示部材と光透過性カバー部材とを貼り合わせる工程;及び
<工程(dd)>
両パネルに挟持された仮硬化樹脂層に紫外線を照射して本硬化させることにより、画像表示部材と光透過性カバー部材とを光硬化樹脂層で積層した画像表示装置を得る工程
を有する製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で使用されている光硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリレートモノマーに(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーを併用しているため、酸素阻害の影響を受けやすく、強いタック性が発現しにくいという問題があり、また所定の粘度範囲内であっても、インクジェットノズルから良好な吐出ができない場合があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決しようとするものであり、画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の光硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置を製造する際に、インクジェットコート法を利用して塗布される光硬化性樹脂組成物として、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーの使用に由来する問題がなく、インクジェットコート法において良好な吐出が可能な光硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、光硬化性樹脂組成物を構成する(メタ)アクリレートモノマーに併用すべき高分子物質として、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーに代えて、水酸基価が所定数値以上であり且つ(メタ)アクリロイル基を有さない(メタ)アクリレートポリマーを使用し、しかも光重合開始剤として水素引き抜き型光重合開始剤を使用し、更に光硬化性樹脂組成物の粘度を25℃で10mPa・s以上、60℃で30mPa・s以下に調整することにより、上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の光硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置に適用され得る当該光硬化性樹脂組成物であって、以下の成分(A)〜(D):
<成分(A)>
水酸基価が120mgKOH/g以上であって、(メタ)アクリロイル基を有さない(メタ)アクリレートポリマー;
<成分(B)>
水酸基含有単官能(メタ)アクリレートモノマー;
<成分(C)>
水酸基非含有単官能(メタ)アクリレートモノマー;
<成分(D)>
水素引き抜き型光重合開始剤
を含有し、粘度が25℃で10mPa・s以上であり且つ60℃で30mPa・s以下である光硬化性樹脂組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の光硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置の製造方法であって、以下の工程(a)〜(c):
<工程(a)>
画像表示部材又は光透過性カバー部材のいずれか一方の部材表面に、上述の本発明の光硬化性樹脂組成物をインクジェットコート装置のノズルから吐出させて光硬化性樹脂組成物膜を形成する工程;
<工程(b)>
光硬化性樹脂組成物膜に他方の部材を積層し、画像表示部材と光透過性カバー部材とを貼り合わせる工程;及び
<工程(c)>
両パネルに挟持された光硬化性樹脂組成物膜に紫外線を照射して硬化させることにより、画像表示部材と光透過性カバー部材とを光硬化樹脂層で積層した画像表示装置を得る工程
を有する製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の光硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置の製造方法であって、以下の工程(aa)〜(dd):
<工程(aa)>
画像表示部材又は光透過性カバー部材のいずれか一方の部材表面に、本発明の光硬化性樹脂組成物をインクジェットコート装置のノズルから吐出させて光硬化性樹脂組成物膜を形成する工程;
<工程(bb)>
光硬化性樹脂組成物膜に紫外線を照射して、仮硬化樹脂層を形成する工程;
<工程(cc)>
仮硬化樹脂層に他方の部材を積層し、画像表示部材と光透過性カバー部材とを貼り合わせる工程;及び
<工程(dd)>
両パネルに挟持された仮硬化樹脂層に紫外線を照射して本硬化させることにより、画像表示部材と光透過性カバー部材とを光硬化樹脂層で積層した画像表示装置を得る工程
を有する製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の光硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置に適用され得る当該光硬化性樹脂組成物であり、主たる重合成分である(メタ)アクリレートモノマーに併用すべき成分として、該モノマーと重合し得る(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーではなく、水酸基価が120mgKOH/g以上であって、(メタ)アクリロイル基を有さない(メタ)アクリレートポリマーを使用し、しかも光重合開始剤として水素引き抜き型光重合開始剤とを使用する。このような(メタ)アクリレートポリマーは、(メタ)アクリロイル基に基づく光重合には寄与しないが、水素引き抜き型光重合開始剤により水素が引き抜かれてラジカルを生成し、その結果、(メタ)アクリレートモノマーから形成される重合鎖に、側鎖として組み込まれ若しくはポリマー架橋鎖として組み込まれ、光硬化性樹脂組成物に良好な可塑性、成膜性、接着性を付与することができる。
【0013】
しかも、本発明の光硬化性樹脂組成物は、25℃で10mPa・s以上、60℃で30mPa・s以下の粘度を示すので、25℃、60℃という温度を含む広いインジェットコート温度条件下で良好なインクジェットコート適性を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、まず、本発明の光硬化性樹脂組成物について説明し、その後に当該光硬化性樹脂組成物を利用して画像表示装置を製造する方法について説明する。
【0016】
<光硬化性樹脂組成物>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、画像表示部材と光透過性カバー部材とが、光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性の光硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置に好ましく適用され得る当該光硬化性樹脂組成物であって、以下の成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を含有し、粘度が25℃で10mPa・s以上であり且つ60℃で30mPa・s以下のものである。
【0017】
なお、本発明の光硬化性樹脂組成物が好ましく適用できる画像表示装置、及びそれを構成する画像表示部材や光透過性カバー部材については、本発明の画像表示装置の製造方法の説明において併せて説明する。
【0018】
<成分(A)>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、硬化物に可塑性を付与するとともに、良好な成膜性(膜性維持)と接着性とを確保するために、水酸基価が120mgKOH/g以上、好ましくは170mgKOH/g以上であって、(メタ)アクリロイル基を有さない(メタ)アクリレートポリマーを含有する。水酸基価を有することは分子内に水酸基を有していることを示しており、水酸基を有することで、後述する成分(D)の水素引き抜き型光重合開始剤と協働して重合鎖の側鎖に結合することが可能となる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとを包含する用語である。
【0019】
成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーに関し、水酸基価とは、ポリマー1g中の水酸基をアセチル化した後、アセチル基を加水分解して生じた酢酸を中和するのに要したKOHの質量(mg)である。従って、水酸基価が大きいほど水酸基が多いことを意味する。成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーの水酸基価を120mgKOH/g以上としたのは、120mgKOH/g未満であると、光硬化性樹脂組成物の硬化物の架橋密度が低く、特に高温下での弾性率低下が顕著になるという傾向があるからである。なお、その硬化物の架橋密度だけを単に増大させるのであれば、後述の成分(E)の多官能(メタ)アクリレートモノマーを多用すればよいが、光硬化性樹脂組成物の硬化物が脆くなることが懸念されるため、ある程度分子量の高いポリマーで架橋させることで、良好な柔軟性と凝集力とを硬化物に付与することが可能になる。従って、水酸基価が高すぎると光硬化性樹脂組成物の硬化物の架橋密度が高くなり過ぎ、柔軟性が失われる傾向があるので、400mgKOH/g以下、好ましくは350mgKOH/g以下である。
【0020】
また、成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーとして(メタ)アクリロイル基を有さないものを使用する理由は、(メタ)アクリロイル基を有すると、成分(B)及び成分(C)の(メタ)アクリレートモノマーから構成される重合鎖の主鎖に過度に組み込まれてしまう可能性が高まるので、それを防止するためである。
【0021】
成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーの重量平均分子量Mwは、小さ過ぎると水酸基が導入されていない分子が増え、ブリード等のリスク上昇の傾向があるので、好ましくは5000以上、より好ましくは100000以上であり、大き過ぎると粘度上昇による吐出不良となる傾向があるので、好ましくは500000以下、より好ましくは300000以下である。なお、本明細書中、ポリマーの重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる(標準ポリスチレン分子量換算)。
【0022】
また、成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーの分散度(Mw/Mn)は、低過ぎると、ポリマーと未反応のモノマー類とが分離し易くなる傾向があるので、好ましくは3以上であり、高すぎると望まれない比較的低分子量のポリマー成分を混入させることになるので、好ましくは10以下である。
【0023】
このような成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーとしては、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーと水酸基非含有(メタ)アクリレートモノマーとのコポリマーを好ましく挙げることができる。常温で液状であることが好ましい。なお、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーのホモポリマーも例示できるが、ポリマーの極性が高くなり過ぎ、常温で高粘度液体もしくは固体となってしまう傾向があり、また他の成分との相溶性が低下することが懸念される。
【0024】
成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーを構成するモノマー単位である水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとは、分子中に1以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートであり、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシルジメタノールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることできる。中でも、極性コントロールや価格の点で2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを好ましく例示することができる。
【0025】
成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーを構成することができる水酸基非含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜18の直鎖又は分岐を有する単官能(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーの特に好ましい例としては、入手容易性や発明の効果の実現性等の観点から、2−ヒドロキシエチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの共重合体を挙げることができる。イソボルニルアクリレートを更に共重合させてよい。
【0027】
成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーの光硬化性樹脂組成物中の含有量は、少なすぎると脆くなる傾向があるので、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、多すぎると粘度上昇による吐出不良となる傾向があるので、好ましくは55質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
【0028】
<成分(B)>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、重合成分として水酸基含有単官能(メタ)アクリレートモノマーを含有する。水酸基を含有するものを使用する理由は、成分(A)の水酸基を含有する(メタ)アクリレートポリマーとの親和性が高く、また、高温高湿環境における信頼性向上のためである。この場合、水酸基は、モノマー分子内に複数個あってもよいが、モノマー分子中に1個存在することが好ましい。
【0029】
成分(B)の水酸基含有単官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーを構成することができる水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーと同様のモノマーを例示することができる。中でも、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも一種が好ましい。
【0030】
成分(B)の水酸基含有単官能(メタ)アクリレートモノマーの光硬化性樹脂組成物中の含有量は、少なすぎると高温高湿環境における信頼性不足となる傾向があるので、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、多すぎると硬化前もしくは硬化後の樹脂の極性のバランスが崩れ、不透明となる傾向があるので、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0031】
なお、成分(B)の水酸基含有単官能(メタ)アクリレートモノマーの光硬化性樹脂組成物中の含有量は、成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーとの関係では、成分(A)の(メタ)アクリレートポリマー100質量部に対し、好ましくは1〜3000質量部含有する。この範囲内であれば、様々な環境下で高い透明性が維持できるという効果が得られる。
【0032】
<成分(C)>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、重合成分として水酸基非含有単官能(メタ)アクリレートモノマーを含有する。水酸基を含有しないものを使用する理由は、成分(A)と成分(B)とから構成される光硬化性樹脂組成物の硬化物の接着性や粘度をそれぞれ良好な範囲に設定するためである。
【0033】
成分(C)の水酸基非含有単官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーを構成することができる水酸基非含有(メタ)アクリレートモノマーと同様のモノマーを例示することができる。中でも、イソステアリル(メタ)アクリレート及びオクチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも一種が好ましい。
【0034】
成分(C)の水酸基非含有単官能(メタ)アクリレートモノマーの光硬化性樹脂組成物中の含有量は、少なすぎると高粘度となる傾向があるので、好ましくは30質量%以上、より好ましくは65質量%以上であり、多すぎると脆くなる傾向があるので、好ましくは90質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。
【0035】
なお、成分(C)の水酸基非含有単官能(メタ)アクリレートモノマーの光硬化性樹脂組成物中の含有量は、成分(A)の(メタ)アクリレートポリマーとの関係では、成分(A)の(メタ)アクリレートポリマー100質量部に対し、好ましくは54〜9000質量部含有する。この範囲内であれば、様々な環境下で高い透明性を維持しつつ、接着剤として高いパフォーマンスを発揮できるという効果が得られる。
【0036】
<成分(D)>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤として、ベンゾイン誘導体のような分子内開裂型光重合開始剤ではなく、水素引き抜き型光重合開始剤を含有する。成分(A)の水酸基を含有する(メタ)アクリレートポリマーを、重合鎖の側鎖に結合させるためである。
【0037】
成分(D)の水素引き抜き型光重合開始剤としては、公知の水素引き抜き型光重合開始剤を使用することができ、例えば、ベンフェノン等のジアリールケトン類、メチルベンゾイルフォルメート等のフェニルグリオキシレート類が挙げられる。好ましい例としては、無黄変かつ高い水素引き抜き能力の点からメチルベンゾイルフォルメートを挙げることができる。
【0038】
成分(D)の水素引き抜き型光重合開始剤の光硬化性樹脂組成物中の含有量は、少なすぎると架橋不足となる傾向があるので、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、多すぎると環境信頼性悪化の原因となる傾向があるので、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0039】
<成分E>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、反応速度向上や高温弾性率維持のために、多官能(メタ)アクリレートモノマーを含有することができる。多官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートなどの2官能以上の(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらは、発明の効果を損なわない限り、水酸基などの他の官能基を有することができる。中でも、多官能(メタ)アクリレートモノマーの好ましい具体例として、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、及びヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートから選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0040】
成分(E)の多官能(メタ)アクリレートモノマーの光硬化性樹脂組成物中の含有量は、少なすぎると低架橋密度となる傾向があるので、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、多すぎると脆くなる傾向があるので、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0041】
<その他の成分>
本発明の光硬化性樹脂組成物には、上述した成分(A)〜(D)、更に必要に応じて(E)に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で種々の添加剤を配合することができる。例えば、硬化収縮率を低減させるための液状可塑成分として、ポリブタジエン系可塑剤、ポリイソプレン系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤などを配合することができる。また、タック性を向上させるための粘着付与剤(タッキファイヤ)として、テルペン系樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂などを配合することができる。また、硬化物の分子量の調整のために連鎖移動剤として、2−メルカプトエタノール、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノール、α−メチルスチレンダイマーなどを配合することができる。更に、必要に応じて、シランカップリング剤等の接着改善剤、酸化防止剤等の一般的な添加剤を含有することができる。
【0042】
<光硬化性樹脂組成物の粘度特性>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、以上説明した成分を含有するものであるが、通常のインクジェット吐出条件で良好なインクジェット適性を実現するために、粘度が25℃で10mPa・s以上、好ましくは15mPa・s以上、且つ60℃で30mPa・s以下、好ましくは20mPa・s以下に調整されている。ここで、25℃で10mPa・s未満であると、インクジェットノズルからの液だれが生じやすくなり、60℃で30mPa・sを超えると、不吐出が発生しやすくなる。なお、光硬化性樹脂組成物の粘度は、一般的な粘弾性測定装置で測定することができる。具体例としては、レオメータ(Haake RheoSress600、Thermo Fisher Scientific社; 測定条件:コーンローター、φ=35mm、ローター角度2°、剪断速度120 1/s)を用いて測定することができる。
【0043】
本発明の光硬化樹脂組成物の粘度の調整は、各構成成分の種類、含有量等を調整することにより行うことができる。
【0044】
<光硬化性樹脂組成物の調製>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、成分(A)〜(D)及び必要に応じて配合される他の成分とを常法に従って均一に混合することにより調製することができる。
【0045】
<画像表示装置の製造方法>
次に、以下、工程(a)〜(c)を有する本発明の画像表示装置の製造方法を、図面を参照しながら工程毎に詳細に説明する。なお、図面において、同じ図番は同一又は類似の構成要素を表している。
【0046】
<工程(a)(塗布工程)>
まず、
図1に示すように、光透過性カバー部材1を用意し、
図2に示すように、光透過性カバー部材1の表面1aに、光硬化性樹脂組成物2をインクジェットノズル3から塗布し、光硬化性樹脂組成物膜4を形成する。この場合の塗布厚は、光透過性カバー部材1や画像表示部材の表面状態、必要とする光硬化樹脂層の膜物性等に応じて適宜設定することができる。
【0047】
なお、この光硬化性樹脂組成物2の塗布は、必要な厚みが得られるように複数回行ってもよい。
【0048】
光透過性カバー部材1としては、画像表示部材に形成された画像が視認可能となるような光透過性があればよく、ガラス、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等の板状材料やシート状材料が挙げられる。これらの材料には、片面又は両面ハードコート処理、反射防止処理などを施すことができる。光透過性カバー部材1の厚さや弾性などの物性は、使用目的に応じて適宜決定することができる。
【0049】
また、光透過性カバー部材1には、上述の板状材料やシート状材料にタッチパッドなどのような位置入力素子を公知の接着剤や本発明の光硬化性樹脂組成物の仮硬化樹脂層や硬化樹脂層を介して一体化したものも含まれる。
【0050】
本工程で使用する光硬化性樹脂組成物2の性状はインクジェット条件下で液状である。液状のものを使用するので、光透過性カバー部材1の表面形状や画像表示部材の表面形状に歪みがあってもその歪みをキャンセルできる。
【0051】
<工程(b)(貼り合わせ工程)>
次に、
図3に示すように、画像表示部材5を、光透過性カバー部材1の光硬化性樹脂組成物膜4側から貼り合わせる。貼り合わせは、公知の圧着装置を用いて、10℃〜80℃で加圧することにより行うことができる。
【0052】
画像表示部材5としては、液晶表示パネル、有機EL表示パネル、プラズマ表示パネル、タッチパネル等を挙げることができる。ここで、タッチパネルとは、液晶表示パネルのような表示素子とタッチパッドのような位置入力素子とを、公知の接着剤や本発明の光硬化性樹脂組成物の仮硬化樹脂層や硬化樹脂層を介して一体化したものである。なお、タッチパッドが光透過性カバー部材1にすでに一体化されている場合には、画像表示部材5としてタッチパネルを採用しなくてもよい。
【0053】
<工程(c)(硬化工程)>
次に、
図4に示すように、工程(b)で形成された光硬化性樹脂組成物膜4に対し、光透過性カバー部材1側から紫外線UVを照射し硬化させ、
図5に示すように光透過性の光硬化樹脂層6を形成する。これにより画像表示装置100が得られる。なお、光硬化性樹脂組成物膜4を硬化させるのは、光硬化性樹脂組成物2を液状から流動しない状態にし、更に光硬化樹脂層6に粘着性を付与し、また、天地逆転させても流れ落ちないようにして取り扱い性を向上させるためである。このような硬化のレベルは、光透過性の光硬化樹脂層6の硬化率(ゲル分率)が好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上となるようなレベルである。ここで、硬化率(ゲル分率)とは、紫外線照射前の光硬化性樹脂組成物2中の(メタ)アクリロイル基の存在量に対する紫外線照射後の(メタ)アクリロイル基の存在量の割合(消費量割合)と定義される数値であり、この数値が大きい程、硬化が進行していることを示す。
【0054】
なお、硬化率(ゲル分率)は、紫外線照射前の樹脂組成物層のFT−IR測定チャートにおけるベースラインからの1640〜1620cm
-1の吸収ピーク高さ(X)と、紫外線照射後の樹脂組成物層のFT−IR測定チャートにおけるベースラインからの1640〜1620cm
-1の吸収ピーク高さ(Y)とを、以下の数式に代入することにより算出することができる。
【0056】
紫外線の照射に関し、硬化率(ゲル分率)が好ましくは40%以上となるように硬化させることができる限り、光源の種類、出力、累積光量などは特に制限はなく、公知の紫外線照射による(メタ)アクリレートの光ラジカル重合プロセス条件を採用することができる。
【0057】
なお、光透過性の光硬化樹脂層6の光透過性のレベルは、画像表示部材5に形成された画像が視認可能となるような光透過性であればよい。
【0058】
また、光硬化性樹脂組成物を一度に本硬化させずに、以下の工程(aa)〜(dd)のように、仮硬化させた後に貼り合わせ、更に本硬化させてもよい。
【0059】
<工程(aa)(塗布工程)>
まず、
図6に示すように、光透過性カバー部材10を用意し、
図7に示すように、光透過性カバー部材10の表面10aに、光硬化性樹脂組成物20をインクジェットノズル30から塗布し、光硬化性樹脂組成物膜40を形成する。この場合の塗布厚は、光透過性カバー部材10や画像表示部材の表面状態、必要とする光硬化樹脂層の膜物性等に応じて適宜設定することができる。
【0060】
なお、この光硬化性樹脂組成物20の塗布は、必要な厚みが得られるように複数回行ってもよい。
【0061】
<工程(bb)(仮硬化工程)>
次に、
図8に示すように、工程(aa)で形成された光硬化性樹脂組成物膜40に対し紫外線UVを照射して仮硬化させることにより
図9に示すように仮硬化樹脂層45を形成する。ここで、仮硬化させるのは、光硬化性樹脂組成物20を液状から著しく流動しない状態にし、天地逆転させても流れ落ちないようにして取り扱い性を向上させるためである。このような仮硬化のレベルは、仮硬化樹脂層45の硬化率(ゲル分率)が、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上である。上限は100%でもよいが、好ましくは100%未満である。より好ましくは95%未満である。
【0062】
<工程(cc)(貼り合わせ工程)>
次に、
図10に示すように、画像表示部材50に、光透過性カバー部材10をその仮硬化樹脂層45側から貼り合わせる。貼り合わせは、公知の圧着装置を用いて、10℃〜80℃で加圧することにより行うことができる。
【0063】
<工程(dd)(本硬化工程)>
次に、
図11に示すように、画像表示部材50と光透過性カバー部材10との間に挟持されている仮硬化樹脂層45に対し光透過性カバー部材10側から紫外線UVを照射して本硬化させる。これにより、画像表示部材50と光透過性カバー部材10とを光透過性の光硬化樹脂層60を介して積層して画像表示装置100を得る(
図12)。なお、仮硬化樹脂層の硬化率が100%である場合には、本工程(dd)を省いてもよいが、確実に本硬化させるために常に実施することが好ましい。
【0064】
また、本工程において本硬化させるのは、仮硬化樹脂層45を十分に硬化させて、画像表示部材50と光透過性カバー部材10とを接着し積層するためである。このような本硬化のレベルは、仮硬化樹脂層45の硬化率よりも低くならないように設定される。通常、光透過性の光硬化樹脂層60の硬化率(ゲル分率)を好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上となるように設定する。
【0065】
なお、光透過性の光硬化樹脂層60の光透過性のレベルは、画像表示部材50に形成された画像が視認可能となるような光透過性であればよい。なお、以上の工程(aa)〜(dd)では光硬化樹脂組成物を光透過性カバー部材に塗布したが、画像表示部材に塗布し、その後に光透過性カバー部材を積層してもよい。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例で使用した成分は以下のとおりである。
【0067】
(メタ)アクリレートポリマー
ヒタロイド(登録商標)7927(日立化成(株));MW190,000、170mgKOH/g
ARUFON(登録商標)UH−2041(東亞合成(株));MW 2,500、120mgKOH/g
ARUFON(登録商標)UH−2000(東亞合成(株));MW 11,000、20mgKOH/g
ARUFON(登録商標)UP−1110(東亞合成(株));MW 2,500、0mgKOH/g
【0068】
水酸基含有単官能(メタ)アクリレートモノマー
4−HBA(4−ヒドロキシブチルアクリレート)
水酸基非含有単官能(メタ)アクリレートモノマー
ISTA(イソステアリルアクリレート)
NOA(ノルマルオクチルアクリレート)
【0069】
多官能(メタ)アクリレートモノマー
TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)
【0070】
水素引き抜き型光重合開始剤
Omnirad(登録商標)MBF(IGM Resins B.V.)、メチルベンゾイルフォルメート
【0071】
開裂型光重合開始剤
Speedcure(登録商標)84LC(ランブソンジャパン(株))
【0072】
実施例1〜4、比較例1〜5
表1に示す配合成分を均一に混合することにより光硬化性樹脂組成物を調製した。得られた光硬化性樹脂組成物について、光硬化前の「粘度[mPa・s]」を以下のように測定し、インクジェット塗布性能を判定した。また、光硬化後の「シェア弾性率[Pa]」、「接着強度(割裂強度)[N/cm
2]」、「光透過率[%]」を測定し、透明接着剤性能を判定した。
【0073】
<光硬化前>
光硬化性樹脂組成物の25℃及び60℃における粘度を、レオメータ(Haake RheoSress600、Thermo Fisher Scientific社;測定条件:コーンローター、φ=35mm、ローター角度2°、剪断速度120 1/s)を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
【0074】
(インクジェット塗布性能の判定)
光硬化性樹脂組成物の25℃における粘度が10mPa・s以上で且つ60℃における粘度が30mPa・s以下である場合、当該光硬化性樹脂組成物のインクジェット塗布性能を良好と判定し、25℃における粘度が10mPa・s未満の場合又は60℃における粘度が30mPa・sを超える場合、当該光硬化性樹脂組成物のインクジェット塗布性能を不良と判定した。
【0075】
<光硬化後>
光硬化性樹脂組成物の光硬化後の「シェア弾性率[Pa]」、「接着強度(割裂強度)[N/cm
2]」、「光透過率[%]」を以下に説明するように測定した。
【0076】
(シェア弾性率[Pa])
光硬化性樹脂組成物に対して、紫外線照射装置(LC−8、浜松ホトニクス(株)製)を用いて、積算光量が2500mJ/cm
2となるように、200mW/cm
2強度の紫外線を照射することにより光硬化性樹脂組成物を硬化させた。得られた硬化物の25℃及び85℃におけるシェア弾性率を、レオメータ(Haake MarkII、Thermo Fisher Scientific社;測定条件:コーンローター、φ=8mm、周波数1Hz)を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
【0077】
(接着強度(割裂強度)[N/cm
2])
スライドグラス(松波硝子工業(株)製)(40(W)×70(L)×0.4(t)mm、型番S1112)を2枚用意し、一方のスライドグラスの中央に、光硬化性樹脂組成物を直径5mm、平均150μmの厚みで塗布し、光硬化性樹脂組成物膜を形成した後、他方のスライドグラスを直交させるように載置し、2枚のスライドグラスに挟持されている光硬化性樹脂組成物膜に対して、紫外線照射装置(LC−8、浜松ホトニクス(株)製)を用いて、積算光量が2500mJ/cm
2となるように、200mW/cm
2強度の紫外線を照射することにより光硬化性樹脂組成物膜を硬化させ、光透過性の光硬化樹脂層を形成した。これにより、接着強度試験用サンプルが得られた。このサンプルの接着強度を、引張試験機(Autograph AGX−X,(株)島津製作所製;試験速度5mm/min、試験温度85℃)を用いて測定した。
【0078】
(光透過率[%])
スライドグラス(松波硝子工業(株)製)(40(W)×70(L)×0.4(t)mm、型番S1112)を2枚用意し、一方のスライドグラスの中央に、光硬化性樹脂組成物を直径5mm、平均150μmの厚みで塗布し、光硬化性樹脂組成物膜を形成した後、他方のスライドグラスを載置し、2枚のスライドグラスに挟持されている光硬化性樹脂組成物膜に対して、紫外線照射装置(LC−8、浜松ホトニクス(株)製)を用いて、積算光量が2500mJ/cm
2となるように、200mW/cm
2強度の紫外線を照射することにより光硬化性樹脂組成物膜を硬化させ、光透過性の光硬化樹脂層を形成した。これにより、光透過率試験用サンプルが得られた。このサンプルの550nm光透過率を、分光光度計(MPS−2450、(株)島津製作所製)を用いて測定した。
【0079】
(透明接着剤性能判定)
光硬化性樹脂組成物の光硬化後の接着強度が70N/cm
2以上である場合、透明接着剤性能を良好と判定し、70N/cm
2未満である場合、透明接着剤性能を不良と判定した。
【0080】
<インクジェット塗布可能な光学用接着剤としての適用可否>
光硬化性樹脂組成物の「インクジェット塗布性能判定」及び「透明接着剤性能判定」のいずれかが「不良」判定である場合には、インクジェット適用性が不良と判定し、双方が「良好」判定である場合には、インクジェット適用性が良好と判定した。
【0081】
【表1】
【0082】
(評価結果の考察)
実施例1〜4の光硬化性樹脂組成物は、水酸基価が120mgKOH/g以上であって、(メタ)アクリロイル基を有さない(メタ)アクリレートポリマーと、水酸基含有単官能(メタ)アクリレートモノマーと、水酸基非含有単官能(メタ)アクリレートモノマーと、水素引き抜き型光重合開始剤とを含有し、その粘度が25℃で10mPa・s以上であり且つ60℃で30mPa・s以下であるので、硬化前物性も及び硬化後物性も実用上問題のないレベルであった。実施例1〜3の光硬化性樹脂組成物について、60℃における粘度を測定していない理由は、25℃において30mPa・s以下であるため、60℃における粘度はそれよりも更に低い粘度になることが明らかだからである。なお、水酸基含有(メタ)アクリレートポリマーの配合が相対的に多くなると、硬化前の25℃における粘度が相対的に高くなることがわかる。
【0083】
他方、比較例1の場合、水素引き抜き型光重合開始剤ではなく開裂型光重合開始剤を使用したので、硬化後の接着強度が不十分であった。比較例2の場合、水酸基価が20mgKOH/gの(メタ)アクリレートポリマーを使用したので、硬化後の接着強度が不十分であった。また、比較例3の場合、(メタ)アクリレートポリマーとして水酸基を含有しないものを使用したので、硬化後の接着強度が不十分であった。比較例4の場合、(メタ)アクリレートポリマーの含有量が多すぎたので、硬化前の粘度が高すぎ、インクジェット塗布性能に問題があった。比較例5の場合、(メタ)アクリレートポリマーを使用しないので、硬化後の接着強度が不十分であった。