【解決手段】左右のハンドリムと、一方の側のハンドリムを回転させることによって生ずる回転力を駆動機構を介して反対側の車輪に伝達する回転軸と、一方の側のハンドリムを回転させることによって生ずる回転力を駆動機構を介して同じ側の車輪に伝達する車輪ハブとを備え、駆動機構が、可動ディスクと、ハンドリムの移動を可動ディスクに伝達する加力装置とを有し、加力装置が、可動ディスクの外端に連結され、最下位置を支点として揺動するアームを有し、ハンドリムを移動させると、アームが揺動して可動ディスクを摺動させ、可動ディスクの係合部が、回転軸の係合部及び/又は車輪ハブの係合部に選択的に係合して、回転力が所望の側の車輪に伝達されるように構成されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(全体構成)
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施形態に係る車椅子について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車椅子を示した右側面図、
図2は、
図1の車椅子の背面図である。
【0016】
図1において全体として参照符号10で示される本発明の第1の実施形態に係る車椅子は、車椅子の骨格を形成するフレーム12と、右車輪14a及び左車輪14bと、一対のキャスタ16a、16bと、シート18とを備えている。
【0017】
なお、車椅子10は、原則としてその中心線に対して左右対称であり左右それぞれの側に同じ構成要素を有しているが、以下の説明において、車椅子10の右側に位置する構成要素の参照符号に「a」を付し、車椅子10の左側に位置する構成要素の参照符号に「b」を付すものとする。また、本明細書において「内方」とは、車椅子に着座する使用者が位置する側を意味し、「外方」とは、使用者が位置する側と反対側を意味する。
【0018】
右車輪14a及び左車輪14bの外方には、車輪スポーク14a2、14b2に指を挟まないように、車輪カバー14a1、14b1がそれぞれ取り付けられている。
【0019】
車椅子10はまた、右車輪14aの車軸24aと同心に右車輪14aの外方に配置されたハンドリム20aを備えている。ハンドリム20aは、ハンドリムスポーク20a1に連結されている。なお、
図1では、4本のハンドリムスポーク20a1が図示されているが、ハンドリムスポーク20a1の本数はこれに限定されるものではない。
【0020】
(第1の実施形態)
次に、主として
図3〜
図6を参照して、本発明の第1の実施形態に係る車椅子10について説明する。
図3は、車椅子10の駆動機構の構成を示した図、
図4は、
図3の要部を示した拡大断面図である。
【0021】
車椅子10は、右車輪14aを支持する車軸24aを備えている。車軸24aは、中央に開口24a2が設けられた円形のディスク部24a1と、ディスク部24a1の内方に、ディスク部24a1と同心となるように固定された円筒形の内筒部24a3と、ディスク部24a1の外方に、ディスク部24a1と同心となるように固定された円筒形の外筒部24a4とを有し、内筒部24a3が、取付ボス26a、取付スリーブ28aを介して、フレーム12に取り付けられている。参照符号24a5は、車軸24aを固定するのに用いられる公知の車軸固定ばね付きレバー部材である。
【0022】
車軸24aの内筒部24a3には、回転軸30aが回転可能に配置されている。回転軸30aは、円柱形の軸部30a1と、軸部30a1の外端に設けられ、車軸24aの外筒部24a4内に位置する円板形のディスク部30a2とを有し、ディスク部30a2の外周には、内歯車30a3が配置されている。軸部30a1は、軸受30a4によって内筒部24a3内で回転可能に支持されている。また、車椅子10の左側部分にも、対応する箇所に、同様の構成を有する回転軸30bが設けられている。
【0023】
なお、
図3では、軸部30a1と軸部30b1が中央で途切れた状態で図示されているが、軸部30a1と軸部30b1を一体に形成してもよいし、軸部30a1と軸部30b1を別体に形成し、連結スリーブ(図示せず)を介して連結することによって1本の回転軸を形成するようにしてもよい。
【0024】
車輪ハブ32aが、車軸24aに回転可能に支持されている。車輪ハブ32aは、中央に開口32a2が設けられた円形のディスク部32a1と、ディスク部32a1の開口32a2の周囲に内方に延び、ディスク部32a1と同心となるように固定された円筒形の内筒部32a3と、ディスク部32a1の外周に内方に延び、ディスク部32a1と同心となるように固定された円筒形の外筒部32a4とを有する。内筒部32a3の先端の内周には、内歯車32a5が配置されている。外筒部32a4は、軸受32a6によって、車軸24aの外筒部24a4に回転可能に支持されている。また、車輪ハブ32aの外周には、右車輪14aの車輪スポーク14a2が連結されている。
【0025】
車椅子10はまた、伸縮性連結材34a3によって互いに連結された円筒形の内方部34a1および円筒形の外方部34a2を有する外軸34aを備えており、内方部34a1は、軸受34a4によって、車輪ハブ32aの内筒部32a3内に回転可能に支持されている。内方部34a1の貫通穴34a5および外方部34a2の貫通穴34a6は、それぞれスプライン穴であり、貫通穴34a5、34a6には、後述するスプライン軸の軸部36a1が挿入されている。伸縮性連結材34a3は、形状記憶材料で形成されており、後述する加力装置40aによって力を加えられなければ、中央位置(
図4に示されるように、平歯車36a3が内歯車30a3と内歯車32a5の両方にかみ合う位置)を保持するようになっている。なお、形状記憶材料製の伸縮性連結材34a3を用いる代わりに、加力装置40aによって力を加えられない場合に中央位置を保持するような弾性部材(例えば、ばね)を用いてもよい。
【0026】
車椅子10はまた、円柱形の軸部36a1および軸部36a1の内端に固定されたディスク部36a2を有する可動ディスク36aを備えている。可動ディスク36aの軸部36a1は、スプライン軸であり、外軸34aの内方部34a1の貫通穴34a5内および外方部34a2の貫通穴34a6内に摺動可能に配置されている。可動ディスク36aのディスク部36a2の外周には、平歯車36a3が設けられており、平歯車36a3が、回転軸30aのディスク部30a2の内歯車30a3及び/又は車輪ハブ32の内筒部32a3の内歯車32a5とかみ合うようになっている。
図4は、ディスク部36a2の平歯車36a3がディスク部30a2の内歯車30a3と内筒部32a3の内歯車32a5の両方にかみ合った状態を示し、
図5(a)は、ディスク部36a2の平歯車36a3がディスク部30a2の内歯車30a3のみとかみ合った状態を示し、
図5(b)は、ディスク部36a2の平歯車36a3が内筒部32a3の内歯車32a5のみとかみ合った状態を示している。
【0027】
外軸34aの外方部34a2の外端に、外方部34a2と同心に弾性部材受けディスク38aが固定されており、弾性部材受けディスク38aに設けられた円弧状の溝に弾性部材38a1が配置されている。弾性部材受けディスク38aには、弾性部材38a1を介して、外方部34a2と同心に内側リング部材38a2が取り付けられ、外側リング部材38a3が、軸受38a4を介して、内側リング部材38a2に回転可能に支持されている。なお、弾性部材38a1は、天然ゴム又は合成ゴム等の弾性材料で形成されている。
【0028】
内側リング部材38a2の外面には、
図4に示されるように、リング状のハンドリムスポーク受け部材20a2が取り付けられており、ハンドリム20aを円周方向に等距離へだてた個所(本例では、90度へだてた個所)で支持するハンドリムスポーク20a1が、ハンドリムスポーク受け部材20a2に取り付けられている。
【0029】
車椅子10はさらに、ハンドリム20aの内方又は外方への移動を可動ディスク36aに伝達するための加力装置40aを備えている。
図6(a)は、加力装置40aを説明するための部分切り取り斜視図である。加力装置40aは、
図6(a)に最も良く示されるように、上端が外側リング部材38a3に固定され、下端が車輪カバー部材14a1の最下位置にヒンジ止めされた一対のアーム40a1を有している。
図6(b)は、
図6(a)の部分6bの拡大図である。車輪カバー部材14a1の最下位置に平面視でコ字形のフレーム40a2が取り付けられ、フレーム40a2の内部に円柱部材40a3が回転可能に取り付けられている。一対のアーム40a1の下端が円柱部材40a3に固定されており、これによりアーム40a1が円柱部材40a3を支点として揺動するようになっている。
【0030】
そして、ハンドリム20aを揺動させると(すなわち、ハンドリム20aを内方又は外方に傾けると)、アーム40a1が下端を支点として内方又は外方に傾斜するが、これによって生ずる僅かな歪みと偏心が弾性部材38a1によって吸収されることにより外軸34aの外方部34a2を内方又は外方に移動させ、可動ディスク36aの軸部36a1が外軸34aの内方部34a1の貫通穴34a5内を摺動することとなる。なお、ハンドリムスポーク20a1が弾性部材38a1を介してアーム40a1に連結されているので、ハンドリム20aの内方又は外方への移動が円滑に可動ディスク36aに伝達される。
【0031】
なお、
図3〜
図5において、黒矢印は、ハンドリム20a、20bを傾けることにより生ずる力の伝達の経路を示したものである。
【0032】
以上の記載では、主として車椅子10の右側部分の構成について説明してきたが、車椅子10の左側部分も、右側部分と実質的に同一の構成を有している。すなわち、主要な構成要素について記すと、20bはハンドリム、24bは車軸、30bは回転軸、32bは車輪ハブ、34bは外軸、36bは可動ディスク、40bは加力装置をそれぞれ示している。
【0033】
図7及び
図8を参照して、車椅子10の作動について説明する。
図7は、車椅子10の右折又は左折走行を示した模式的な平面図、
図8は、車椅子10の直進走行を示した模式的な平面図である。
【0034】
まず、車椅子10の右折又は左折走行について説明する。右手を用いて右折しようとする場合には、右手でハンドリム20aを把持し内方に傾ける(
図7(a)参照)。ハンドリム20aを内方に傾けると、アーム40a1が下端を支点として内方に傾斜し、これに伴い、外軸34aの外方部34a2が内方に移動し、可動ディスク36aは内方に摺動し、可動ディスク36aのディスク部36a2の平歯車36a3が、回転軸30aのディスク部30a2の内歯車30a4にかみ合う(
図5(a)参照)。この状態でハンドリム20aを前方に回転させると、ハンドリム20aの回転力が可動ディスク36aを介して回転軸30a次いで回転軸30bに伝達されて左車輪14bを回転させるので、右車輪14aが回転しない状態で左車輪14bが回転し、これにより車椅子10は右折する。右手を用いて左折しようとする場合には、右手でハンドリム20aを把持し外方に傾ける(
図7(b)参照)。ハンドリム20aを外方に傾けると、アーム40a1が下端を支点として外方に傾斜し、これに伴い、外軸34aの外方部34a2が外方に移動し、可動ディスク36aは外方に摺動し、可動ディスク36aのディスク部36a2の平歯車36a3が、車輪ハブ32aの内筒部32a3の内歯車32a5にかみ合う(
図5(b)参照)。この状態でハンドリム20aを前方に回転させると、ハンドリム20aの回転力が可動ディスク36aを介して車輪ハブ32aに伝達されて右車輪14aを回転させるので、左車輪14bが回転しない状態で右車輪14aが回転し、これにより車椅子10は左折する。左手を用いて左折しようとする場合には、左手でハンドリム20bを把持し内方に傾ける(
図7(c)参照)。ハンドリム20bを内方に傾けると、アーム40b1が下端を支点として内方に傾斜し、これに伴い、外軸34bの外方部34b2が内方に移動し、可動ディスク36bは内方に摺動し、可動ディスク36bのディスク部36b2の平歯車36b3が、回転軸30bのディスク部30b2の内歯車30b4にかみ合う。この状態でハンドリム20bを前方に回転させると、ハンドリム20bの回転力が可動ディスク36bを介して回転軸30b次いで回転軸30aに伝達されて右車輪14aを回転させるので、左車輪14bが回転しない状態で右車輪14aが回転し、これにより車椅子10は左折する。左手を用いて右折しようとする場合には、左手でハンドリム20bを把持し外方に傾ける(
図7(d)参照)。ハンドリム20bを外方に傾けると、アーム40b1が下端を支点として外方に傾斜し、これに伴い、外軸34bの外方部34b2が外方に移動し、可動ディスク36bは外方に摺動し、可動ディスク36bのディスク部36b2の平歯車36b3が、車輪ハブ32bの内筒部32b3の内歯車32b5にかみ合う。この状態でハンドリム20bを前方に回転させると、ハンドリム20bの回転力が可動ディスク36bを介して車輪ハブ32bに伝達されて左車輪14bを回転させるので、右車輪14aが回転しない状態で左車輪14bが回転し、これにより車椅子10は右折する。以上をまとめると、健常な方の手(操作する手)の側に曲がろうとする場合には、ハンドリム20a、20bを内方に傾けて操作し、健常な方の手(操作する手)と反対側に曲がろうとする場合には、ハンドリム22a、22bを外方に傾けて操作すればよい。
【0035】
次に、車椅子10の直進走行について説明する。右手を用いて前進しようとする場合には、右手でハンドリム20aを中央位置(すなわち、可動ディスク36aのディスク部36a2の平歯車36a3が回転軸30aのディスク部30a2の内歯車30a3と車輪ハブ32aの内筒部32a3の内歯車32a5の両方にかみ合う位置)に把持した状態で前方に回転させる(
図8(a)参照)。すると、ハンドリム20aの回転力が可動ディスク36aを介して回転軸30a次いで回転軸30bに伝達されて左車輪14bを回転させるとともに、ハンドリム20aの回転力が車輪ハブ32aを介して右車輪14aを回転させるので、車椅子10は前進する。左手を用いて前進しようとする場合には、左手でハンドリム20bを中央位置に把持した状態で前方に回転させる(
図8(b)参照)。すると、ハンドリム20bの回転力が可動ディスク36bを介して回転軸30b次いで回転軸30aに伝達されて右車輪14aを回転させるとともに、ハンドリム20bの回転力が車輪ハブ32bを介して左車輪14bを回転させるので、車椅子10は前進する。さらに、両手を用いて前進することもできる(
図8(c)参照)。この場合は、右手でハンドリム20aを中央位置に把持した状態で前方に回転させるとともに、左手でハンドリム20bを中央位置に把持した状態で前方に回転させる。なお、上述のように中央位置で前進することができるほか、左右のハンドリム20a、20bをそれぞれ外方に傾けると、それぞれの車輪14a、14bのみを駆動させることができ、後述する段落番号[0095]にも記載されているように、自由に右左折させることができる。
【0036】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る車椅子50は、車椅子の骨格を形成するフレーム12と、右車輪14a及び左車輪14bと、一対のキャスタ16a、16bと、シート18と、ハンドリム20a、20bとを備えている点では、車椅子10と同じである。また、車椅子10では、加力装置40a、40bの取り付けのため車輪カバー14a1、14b1の装備は必須であるが、車椅子50では、車輪カバー14a1、14b1の装備は任意である。
【0037】
図9〜
図14を参照して、車椅子50について説明する。
図9は、車椅子50の駆動機構の構成を示した図、
図10(a)は
図9の部分10aを示した図であって、駆動機構の要部を示したものである。
【0038】
車椅子50は、右車輪14aを支持する車軸54aを備えている。車軸54aは、中央に開口54a2が設けられた円形のディスク部54a1と、ディスク部54a1の内方に、ディスク部54a1と同心となるように固定された円筒形の内筒部54a3と、ディスク部54a1の外方に、ディスク部54a1と同心となるように固定された円筒形の外筒部54a4とを有し、内筒部54a3が、取付ボス56a、取付スリーブ58aを介して、フレーム12に取り付けられている。参照符号54a5は、車軸54aを固定するのに用いられる公知の車軸固定ばね付きレバー部材である。
【0039】
車軸54aの内筒部54a3には、回転軸60aが回転可能に配置されている。回転軸60aは、円柱形の軸部60a1と、軸部60a1の外端に設けられ、車軸54aの外筒部54a4内に位置する円板形のディスク部60a2とを有し、ディスク部60a2の外周には、係合部60a3(
図11(b)参照)が配置されている。面接触する係合部60a3は、高摩擦係数の材料(例えば、ゴム)又は後述する係合部68a3の係合面と相補する形状の歯面で形成され、又は高摩擦コーティングが施されている。
【0040】
軸部60a1は、軸受60a4によって内筒部54a3内で回転可能に支持されている。また、車椅子50の左側部分にも、対応する箇所に、同様の構成を有する回転軸60bが設けられている。
【0041】
なお、軸部60a1と軸部60b1は、軸部30a1、30b1と同様に、一体に形成してもよいし、別体に形成し、連結スリーブ(図示せず)を介して連結することによって1本の回転軸を形成するようにしてもよい。
【0042】
車輪ハブ62aが、車軸54aに回転可能に支持されている。車輪ハブ62aは、中央に開口62a2が設けられた円形のディスク部62a1と、ディスク部62a1の開口62a2の周囲に外方に延び、ディスク部62a1と同心となるように固定された円筒形の内筒部62a3と、ディスク部62a1の外周に内方に延び、ディスク部62a1と同心となるように固定された円筒形の外筒部62a4とを有する。内筒部62a3の内端には、係合部62a5(
図11(a)参照)が配置されている。外筒部62a4は、軸受62a6によって、車軸54aの外筒部54a4に回転可能に支持されている。また、車輪ハブ62aの外筒部62a4の外周には、右車輪14aの車輪スポーク14a2が連結されている。なお、面接触する係合部62a5は、高摩擦係数の材料(例えば、ゴム)又は後述する係合部70a3の係合面と相補する形状の歯面で形成され、又は高摩擦コーティングが施されている。
【0043】
車椅子50はまた、伸縮性連結材64a3によって互いに連結された円筒形の内方部64a1および円筒形の外方部64a2を有する外軸64aを備えており、内方部64a1は、軸受64a4によって、車輪ハブ62aの内筒部62a3に回転可能に支持されている。内方部64a1の貫通穴64a5および外方部64a2の貫通穴64a6は、それぞれスプライン穴であり、貫通穴64a5、64a6には、後述するスプライン軸の可動軸部材66aが挿入されている。伸縮性連結材64a3は、形状記憶材料で形成されており、後述する加力装置80aによって力を加えられなければ、中央位置(
図10(a)に示されるように、係合部68a3が係合部60a3に面接触し、かつ、係合部70a3が係合部62a5に面接触する位置)を保持するようになっている。なお、形状記憶材料製の伸縮性連結材64a3を用いる代わりに、加力装置80aによって力を加えられない場合に中央位置を保持するような弾性部材(例えば、ばね)を用いてもよい。
【0044】
車椅子50はまた、全体として円柱形の可動軸部材66aを備えている。可動軸部材66aは、
図12に最も良く示されるように、内端に配置された端隆起部66a1と、中間に配置された中間隆起部66a2とを有し、端隆起部66a1と中間隆起部66a2との間の部分66a3および中間隆起部66a2の外方の部分66a4がスプライン軸になっており、部分66a4が、外軸64aの内方部64a1の貫通穴64a5内および外方部64a2の貫通穴64a6内に摺動可能に配置されている。
【0045】
車椅子50はまた、回転軸側ディスク68aと、ハンドリム側ディスク70aとを備えている。回転軸側ディスク68aは、円筒部68a1と、円筒部68a1の内端に位置するディスク部68a2とを有し、ディスク部68a2の内方の面には係合部68a3(
図12参照)が配置されている。ハンドリム側ディスク70aは、円筒部70a1と、円筒部70a1の外端に位置するディスク部70a2とを有し、ディスク部70a2の外方の面には係合部70a3(
図12参照)が配置されている。円筒部68a1の貫通穴および円筒部70a1の貫通穴はスプライン穴である。回転軸側ディスク68aの円筒部68a1は、部分66a3に摺動可能に配置され、ハンドリム側ディスク70aの円筒部70a1も、部分66a3に摺動可能に配置されている。回転軸側ディスク68aの円筒部68a1およびハンドリム側ディスク70aの円筒部70a1には、回転軸側ディスク68aとハンドリム側ディスク70aを互いに遠去かる方へ付勢するためのばね72aが装着されている。なお、面接触する係合部68a3、70a3は、高摩擦係数の材料(例えば、ゴム)又は係合部60a3、62a5と相補する形状の歯面で形成され、又は高摩擦コーティングが施されている。
【0046】
図12は、可動軸部材66a、回転軸側ディスク68aおよびハンドリム側ディスク70aの相互関係を示した一連の図である(
図12では、各構成要素の相互関係を明瞭に示すため、ばね72aは図示されていない)。
図12(a)は、ハンドリム20aが中央位置(すなわち、内方にも外方にも移動させていない位置)にある状態を示しており、ばね72aによって、回転軸側ディスク68aが最内方に位置し、ハンドリム側ディスク70aが最外方に位置しており、これにより回転軸側ディスク68aのディスク部68a2の係合部68a3が回転軸60aの係合部60a3に面接触し、かつ、ハンドリム側ディスク70aのディスク部70a2の係合部70a3が車輪ハブ62aの係合部62a5に面接触している。
図12(b)は、ハンドリム20aが内方位置にある状態を示しており、ハンドリム側ディスク70aがばね72aのばね力に抗して可動軸部材66aの中間隆起部66a2によって押されるので、係合部70a3と係合部62a5との係合が解除される(
図11(a)参照)。
図12(c)は、ハンドリム20aが外方位置にある状態を示しており、回転軸側ディスク68aがばね72aのばね力に抗して可動軸部材66aの端隆起部66a1によって押されるので、係合部68a3と係合部60a3との係合が解除される(
図11(b)参照)。
【0047】
外軸64aの外方部64a2の内端に外側プレート74aが固定されており、外側プレート74aにはハンドリムスポーク20a1が連結されている。また、外軸64aの内方部64a1の外端に内側プレート76aが取り付けられている。
【0048】
車椅子50はさらに、ハンドリム20aの内方又は外方への移動を可動軸部材66aに伝達するための加力装置80aを備えている。
図13は、加力装置80aを模式的に示した斜視図である。加力装置80aは、可動軸部材66aに摺動可能に取り付けられた支持部材82aと、一対のアーム部材84a、86aと、別の一対のアーム部材88a、90aとを有している。なお、支持部材82aは、スプラインにより独自には回転不能で、可動軸部材66aと一緒に回転するようになっている。
【0049】
図14(a)は、一対のアーム部材84a、86aの支持部材82aへの取り付け状態を示した図である。アーム部材84aは、ほぼ中央の個所がピン84a1によって、支持部材82aの0度の位置に水平面内において回転可能に取り付けられている。アーム部材84aの一端84a2にはローラが取り付けられ、他端84a3にもローラが取り付けられている。これらのローラは、ローラ収容部材84a4、84a5内にそれぞれ収容されている。同様に、アーム部材86aは、ほぼ中央の個所がピン86a1によって、支持部材82aの180度の位置に水平面内において回転可能に取り付けられている。アーム部材86aの一端86a2にはローラが取り付けられ、他端86a3にもローラが取り付けられている。これらのローラは、ローラ収容部材86a4、86a5内にそれぞれ収容されている。
【0050】
図14(b)は、一対のアーム部材88a、90aの支持部材82aへの取り付け状態を示した図である。アーム部材88aは、ほぼ中央の個所がピン88a1によって、支持部材82aの90度の位置に垂直面内において回転可能に取り付けられている。アーム部材88aの一端88a2にはローラが取り付けられ、他端88a3にもローラが取り付けられている。これらのローラは、ローラ収容部材88a4、88a5内にそれぞれ収容されている。同様に、アーム部材90aは、ほぼ中央の個所がピン90a1によって、支持部材82aの270度の位置に垂直面内において回転可能に取り付けられている。アーム部材90aの一端90a2にはローラが取り付けられ、他端90a3にもローラが取り付けられている。これらのローラは、ローラ収容部材90a4、90a5内にそれぞれ収容されている。
【0051】
なお、アーム部材84a、86a、88a、90aの構成を明瞭に示すため、
図14(a)では、アーム部材88a、90aを図示しておらず、
図14(b)では、アーム部材84a、86aを図示していない。
【0052】
図10(a)に最も良く示されるように、ローラ収容部材84a5、86a4、88a5、90a4の各外面は、外側プレート74aに固定されており、ローラ収容部材84a4、86a5、88a4、90a5の各内面は、内側プレート76aに固定されている。
【0053】
加力装置80aの以上の構成により、ハンドリム20aを内方に移動させようとすると、ハンドリムスポーク20a1を介して外側プレート74aが内方に押される。すると、一対のアーム部材84a、86aと別の一対のアーム部材88a、90aとによって形成される2つのX形リンク装置が押し縮められ、可動軸部材66aが内方部64a1の貫通穴64a5内を摺動して内方に移動する(
図11(a)、
図12(b)参照)。これにより、回転軸側ディスク68aが回転軸60aに係合した状態で、ハンドリム側ディスク70aと車輪ハブ62aとの係合が解除される。
【0054】
一方、ハンドリム20aを外方に移動させようとすると、ハンドリムスポーク20a1を介して外側プレート74aが外方に押される。すると、一対のアーム部材84a、86aと別の一対のアーム部材88a、90aとによって形成される2つのX形リンク装置が押し広げられ、可動軸部材66aが内方部64a1の貫通穴64a5内を摺動して外方に移動する(
図11(b)、
図12(c)参照)。これにより、ハンドリム側ディスク70aが車輪ハブ62aに係合した状態で、回転軸側ディスク68aと回転軸60aとの係合が解除される。
【0055】
なお、以上の記載では、主として車椅子50の右側部分の構成について説明してきたが、車椅子50の左側部分も、右側部分と実質的に同一の構成を有している。すなわち、主要な構成要素について記すと、20bはハンドリム、54bは車軸、60bは回転軸、62bは車輪ハブ、64bは外軸、66bは可動軸部材、68bは回転軸側ディスク、70bはハンドリム側ディスク、80bは加力装置をそれぞれ示している。
【0056】
車椅子50の作動も、車椅子10の作動と基本的に同じである。より詳細に説明すると、右手を用いて右折しようとする場合には、右手でハンドリム20aを把持し内方に移動させた状態で前方に回転させる。右手を用いて左折しようとする場合には、右手でハンドリム20aを把持し外方に移動させた状態で前方に回転させる。左手を用いて左折しようとする場合には、左手でハンドリム20bを把持し内方に移動させた状態で前方に回転させる。左手を用いて右折しようとする場合には、左手でハンドリム20bを把持し外方に移動させた状態で前方に回転させる。右手を用いて前進しようとする場合には、右手でハンドリム20aを中央位置に把持した状態で前方に回転させる。左手を用いて前進しようとする場合には、左手でハンドリム20bを中央位置に把持した状態で前方に回転させる。
【0057】
車椅子50の加力装置80aは、二対のアーム部材84a、86a、88a、90aで形成される2つのX形リンク装置を押し縮め又は押し広げて平行移動させることによって可動軸部材66a、66bを摺動させるように構成されている点において、アーム40a1、40b1が下端を支点として揺動することによって可動ディスク36a、36bを摺動させるように構成されている車椅子10の加力装置40a、40bと相違している。
【0058】
車椅子50は、平歯車と内歯車とのかみ合いによって回転力が伝達されるように構成されている車椅子10と異なり、面接触する係合部60a3と係合部68a3、係合部62a5と係合部70a3とによって回転力が伝達されるように構成されているが、車椅子50も、平歯車と内歯車とのかみ合いによって回転力が伝達されるように構成してもよい。また、車椅子10も同様に、面接触する係合部によって回転力が伝達されるように構成してもよい。
【0059】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る車椅子100は、車椅子の骨格を形成するフレーム12と、右車輪14a及び左車輪14bと、一対のキャスタ16a、16bと、シート18と、ハンドリム20a、20bとを備えている点では、車椅子10、50と同じである。
【0060】
図15〜
図19を参照して、車椅子100について説明する。
図15は、車椅子100の駆動機構の構成を示した図、
図16は、車椅子100の駆動機構の要部の拡大図、
図17は、ハンドリム20aを外方に傾けた状態を示した車椅子100の駆動機構の要部の拡大図である。
【0061】
車椅子100は、右車輪14aを支持する車軸104aを備えている。車軸104aは、中央に開口104a2が設けられた円形のディスク部104a1と、ディスク部104a1の内方に、ディスク部104a1と同心となるように固定された円筒形の内筒部104a3と、ディスク部104a1の外方に、ディスク部104a1と同心となるように固定された円筒形の外筒部104a4とを有し、内筒部104a3が、取付ボス106a、取付スリーブ108aを介して、フレーム12に取り付けられている。参照符号104a5は、車軸104aを固定するのに用いられる公知の車軸固定ばね付きレバー部材である。
【0062】
車軸104aの内筒部104a3には、回転軸110aが回転可能に配置されている。回転軸110aは、円柱形の軸部110a1と、軸部110a1の外端に設けられ、車軸104aの外筒部104a4内に位置する円板形のディスク部110a2とを有し、ディスク部110a2の外周には、係合部110a3(
図17参照)が配置されている。軸部110a1は、軸受110a4によって内筒部104a3内で回転可能に支持されている。また、車椅子100の左側部分にも、対応する箇所に、同様の構成を有する回転軸110bが設けられている(
図15参照)。
【0063】
なお、軸部110a1と軸部110b1は、一体に形成してもよいし、別体に形成し、連結スリーブ(図示せず)を介して連結することによって1本の回転軸を形成するようにしてもよい。
【0064】
車輪ハブ112aが、車軸104aに回転可能に支持されている。車輪ハブ112aは、中央に開口112a2が設けられた円形のディスク部112a1と、ディスク部112a1の開口112a2の周囲に内方に延び、ディスク部112a1と同心となるように固定された円筒形の内筒部112a3と、ディスク部112a1の外周に内方に延び、ディスク部112a1と同心となるように固定された円筒形の外筒部112a4とを有する。ディスク部112a1の開口112a2と内筒部112a3の内部はそれぞれ、スプライン穴である。また、外筒部112a4は、軸受112a5によって、車軸104aの外筒部104a4に回転可能に支持されており、車輪ハブ112aの外周には、右車輪14aの車輪スポーク14a2が連結されている。
【0065】
車椅子100はまた、円柱形の軸部114a1および軸部114a1の内端に固定されたディスク部114a2を有する可動ディスク114aを備えている。ディスク部114a2の外周には、係合部114a3(
図17参照)が配置されている。軸部114a1は、スプライン軸であり、車輪ハブ112aの内筒部112a3内に摺動可能に配置されている。また、軸部114a1には、ディスク部114a2を回転軸110aのディスク部110a2の方へ押し付けるためのばね114a4が装着されている。これにより、可動ディスク114aのディスク部114a2が回転軸110aのディスク部110a2に押し付けられて接触し、係合部114a3が係合部110a3に面接触するようになっている。
【0066】
可動ディスク114aの軸部114a1の外端に、弾性部材受けディスク116aが固定されており、弾性部材受けディスク116aに設けられた円弧状の溝に配置された弾性部材116a1を介して、リング状のハンドリムスポーク受け部材20a2が弾性部材受けディスク116aに取り付けられている。そして、ハンドリム20aを円周方向に等距離へだてた個所で支持するハンドリムスポーク20a1が、ハンドリムスポーク受け部材20a2に取り付けられている。なお、弾性部材116a1は、天然ゴム又は合成ゴム等の弾性材料で形成されている。ハンドリムスポーク20a1と可動ディスク114aの軸部114a1が弾性部材116a1を介して連結されているので、ハンドリム20aの移動が可動ディスク114aに円滑に伝達される。
【0067】
車椅子100はさらに、ハンドリム20aの外方への移動を可動ディスク114aに伝達するための加力装置120aを備えている。
図18は、加力装置120aを模式的に示した分解斜視図である。加力装置120aは、ハンドリムスポーク20a1の上端内方に設けられたロッド120a1と、車輪14aの基部外方に設けられ、ロッド120a1を収容するためのロッド収容部120a2とを有している。加力装置120aのこのような構成により、
図17に示されるように、ハンドリム20aを外方に傾けると、可動ディスク114aがばね114a4のばね力に抗して外方に摺動して、可動ディスク114aと回転軸110aとの係合が解除されることとなる。そして、ハンドリム20aを回転させると、ロッド120a1を介して、車輪14aを直に回転させるようになっている。
【0068】
なお、面接触する係合部110a3、114a3は、高摩擦係数の材料(例えば、ゴム)又は互いに相補する形状の歯面で形成され、又は高摩擦コーティングが施されている。
【0069】
図15〜
図17において、黒矢印は、ハンドリム20a、20bを傾けることにより生ずる力の伝達の経路を示したものである。
【0070】
以上の記載では、主として車椅子100の右側部分の構成について説明してきたが、車椅子100の左側部分も、右側部分と実質的に同一の構成を有している。すなわち、主要な構成要素について記すと、20bはハンドリム、104bは車軸、110bは回転軸、112bは車輪ハブ、114bは可動ディスク、120bは加力装置をそれぞれ示している。
【0071】
車椅子100では、所望の側の車輪を駆動させることができる車椅子10、50とは異なり、反対側の車輪のみを駆動させることができないが、駆動機構が簡単な構成ですみ、簡易型とみなすことができる。
【0072】
車椅子100の作動について説明する。右手を用いて左折しようとする場合には、右手でハンドリム20aを把持し外方に傾ける(
図17参照)。ハンドリム20aを外方に傾けると、可動ディスク114aがばね114a4のばね力に抗して外方に摺動し、これにより可動ディスク114aの係合部114a3と回転軸110aの係合部110a3との係合が解除される。この状態で、ハンドリム20aを前方に回転させると、ハンドリム20aの回転力が右車輪14a、車輪ハブ112a、次いで可動ディスク114aを回転させるので、左車輪14bが回転しない状態で右車輪14aが回転し、これにより車椅子100は左折する。左手を用いて右折しようとする場合には、左手でハンドリム20bを把持し外方に傾ける。ハンドリム20bを外方に傾けると、可動ディスク114bがばね114b4のばね力に抗して外方に摺動し、これにより可動ディスク114bと回転軸110bとの係合が解除される。この状態で、ハンドリム20bを前方に回転させると、ハンドリム20bの回転力が左車輪14b、車輪ハブ112b、次いで可動ディスク114bを回転させるので、右車輪14aが回転しない状態で左車輪14bが回転し、これにより車椅子100は右折する。右手を用いて前進しようとする場合には、右手でハンドリム20aを中央位置(すなわち、可動ディスク114aの係合部114a3が回転軸110aの係合部110a3に係合する位置)に把持した状態で前方に回転させる。すると、ハンドリム20aの回転力が車輪ハブ112aから可動ディスク114aを介して回転軸110a次いで回転軸110bに伝達されて左車輪14bを回転させるとともに、ハンドリム20aの回転力が直接に右車輪14aを回転させるので、車椅子100は前進する。左手を用いて前進しようとする場合には、左手でハンドリム20bを中央位置(すなわち、可動ディスク114bの係合部114b3が回転軸110bの係合部110b3に係合する位置)に把持した状態で前方に回転させる。すると、ハンドリム20bの回転力が車輪ハブ112bから可動ディスク114bを介して回転軸110b次いで回転軸110aに伝達されて右車輪14aを回転させるとともに、ハンドリム20bの回転力が直接に左車輪14bを回転させるので、車椅子100は前進する。なお、両手を用いて前進させることもできる。
【0073】
図19は、右手を用いて右折しようとする場合を示した模式図である。右手でハンドリム20aを把持し外方に傾けた状態で後方に回転させる(実線矢印で図示)。次いで、右手でハンドリム20aを中央位置に把持した状態で前方に回転させる(破線矢印で図示)。これにより、車椅子100を右折させることができる。左手を用いて左折しようとする場合も同様である。
【0074】
車椅子100は、面接触する係合部110a3と係合部114a3とによって回転力が伝達されるように構成されているが、車椅子10のように、平歯車と内歯車とのかみ合いによって回転力が伝達されるように構成してもよい。
【0075】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る車椅子130は、車椅子の骨格を形成するフレーム12と、右車輪14a及び左車輪14bと、一対のキャスタ16a、16bと、シート18と、ハンドリム20a、20bとを備えている点では、車椅子10、50、100と同じである。また、車椅子130は、専ら機械的な駆動機構を用いる車椅子10、50、100とは異なり、駆動機構として無励磁形電磁クラッチ(以下、単に「電磁クラッチ」という)を使用している。
【0076】
図20〜
図26を参照して、車椅子130について説明する。
図20は、車椅子130の駆動機構を示した図、
図21は、第1センサ、第2センサに同時に触れた場合の駆動機構を示した図、
図22は、第1センサ、第2センサの順に触れた場合の右側部分の駆動機構を示した図、
図23は、第2センサ、第1センサの順に触れた場合の右側部分の駆動機構を示した図、
図24は、第3センサ、第4センサの順に触れた場合の左側部分の駆動機構を示した図、
図25は、第4センサ、第3センサの順に触れた場合の左側部分の駆動機構を示した図である。
【0077】
車椅子130は、右車輪14aを支持する車軸134aを備えている。車軸134aは、中央に開口134a2が設けられた円形のディスク部134a1と、ディスク部134a1の外方に、ディスク部134a1と同心となるように固定された円筒部134a3とを有し、円筒部134a3が、取付ボス136a、取付スリーブ138aを介して、フレーム12に取り付けられている。参照符号134a5は、車軸134aを固定するのに用いられる公知の車軸固定ばね付きレバー部材である。
【0078】
車軸134aのディスク部134a1の開口134a2には、回転軸140aが回転可能に配置されている。回転軸140aは、円柱形の軸部140a1と、軸部140a1の外端に設けられ、車軸134aの円筒部134a3内に位置する円板形のディスク部140a2とを有し、ディスク部140a2の外周には、係合部140a3(
図23(b)参照)が設けられている。軸部140a1は、軸受140a4によって回転可能に支持されている。
【0079】
車輪ハブ142aが、車軸134aに回転可能に支持されている。車輪ハブ142aは、中央に開口142a2が設けられた円形のディスク部142a1と、ディスク部142a1の外周に内方に延び、ディスク部142a1と同心となるように固定された円筒部142a3とを有する。ディスク部142a1の内面には、係合部142a4(
図22(b)参照)が設けられている。円筒部142a3は、軸受142a5によって、車軸134aの円筒部134a3に回転可能に支持されている。また、車輪ハブ142aの外周には、右車輪14aの車輪スポーク14a2が連結されている。
【0080】
車椅子130はまた、全体として円柱状のスプライン軸である可動軸部材144aを備えており、可動軸部材144aは、車輪ハブ142aの開口142a2に設けられた軸受144a1によって回転可能に支持されている。可動軸部材144aの中央部の外方には第1ばね受け部144a2が設けられ、中央部の内方には第2ばね受け部144a3が設けられている。可動軸部材144aの外端には、ハンドリムスポーク受け部材20a2が固定されており、ハンドリムスポーク受け部材20a2には、ハンドリムスポー20a1が連結されている。
【0081】
車椅子130はまた、車軸134aの円筒部134a3内の外方に配置された第1電磁クラッチ146aを備えている。第1電磁クラッチ146aは、コイル146a2を内包したほぼ円筒形のヨーク146a1と、コイル146a2に対向する位置に配置され、ほぼディスク状のアーマチュア146a3と、アーマチュア146a3の車輪ハブ142aのディスク部142a1に面する側に設けられた係合部146a4(
図22(b)参照)と、アーマチュア146a3を車輪ハブ142aのディスク部142a1の方へ押し付けるためのばね146a5とを有している。アーマチュア146a3の中央に設けられたスプライン穴146a6に可動軸部材144aが摺動可能に挿入されており、ばね146a5は、第1ばね受け部144a2によって支持されている。第1電磁クラッチ146aは、非通電状態ではばね146a5のばね力によりアーマチュア146a3の係合部146a4が車輪ハブ142aの係合部142a4に係合し、通電状態ではアーマチュア146a3がばね146a5のばね力に抗してヨーク146a1に吸引されアーマチュア146a3と車輪ハブ142aとの係合が解除されるようになっている。
【0082】
車椅子130はまた、車軸134aの円筒部134a3内の内方に配置され、軸受148a7によって可動軸部材144aに回転可能に支持された第2電磁クラッチ148aを備えている。第2電磁クラッチ148aは、コイル148a2を内包したほぼ円筒形のヨーク148a1と、コイル148a2に対向する位置に配置され、ほぼディスク状のアーマチュア148a3と、アーマチュア148a3の回転軸140aのディスク部140a2に面する側に設けられた係合部148a4(
図23(b)参照)と、アーマチュア148a3を回転軸140aのディスク部140a2の方へ押し付けるためのばね148a5とを有している。アーマチュア148a3の中央に設けられたスプライン穴148a6に可動軸部材144aが摺動可能に挿入されており、ばね148a5は、第2ばね受け部144a3によって支持されている。第2電磁クラッチ148aは、非通電状態ではばね148a5のばね力によりアーマチュア148a3の係合部148a4が回転軸140aの係合部140a3に係合し、通電状態ではアーマチュア148a3がばね148a5のばね力に抗してヨーク148a1に吸引されアーマチュア148a3と回転軸140aとの係合が解除されるようになっている。
【0083】
なお、面接触する係合部140a3と係合部148a4、および係合部142a4と係合部146a4は、高摩擦係数の材料(例えば、ゴム)又は互いに相補する形状の歯面で形成され、又は高摩擦コーティングが施されている。
【0084】
以上の記載では、車椅子130の右側部分について説明してきたが、左側部分についても、以下の3つの相違点を除いて、右側部分と実質的に同様である。これらの相違点について、
図20、
図24および
図25を参照して説明する。
【0085】
第1の相違点として、車椅子130の右側部分には、2基の電磁クラッチ(第1電磁クラッチ146a、第2電磁クラッチ148a)が装備されているが、車椅子130の左側部分には、1基の電磁クラッチ(第3電磁クラッチ150b)のみが装備されている。なお、車椅子130の左側部分には第3電磁クラッチ150bしか装備されていないので、回転軸140bを支持するため、車軸134bのディスク部134b1の内方に、ディスク部134b1と同心となるように固定された内筒部134b4が設けられている(
図20、
図24(b)、
図25(b)参照)。
【0086】
第2の相違点として、
図20、
図24(b)、
図25(b)に示されるように、車椅子130の左側部分にも、回転軸140bが設けられているが、軸部140a1とディスク部140a2とを有する回転軸140aとは異なり、回転軸140bは、軸部140b1のみを有し、ディスク部を有していない。すなわち、左側部分では、回転軸140bは、車輪ハブ142bの軸受142b6および内筒部134b4の軸受134b5によって回転可能に支持されている。回転軸140bの中央部にはばね受け部140b2が設けられている。回転軸140bの外端には、ハンドリムスポーク受け部材20b2が固定されており、ハンドリムスポーク受け部材20b2には、ハンドリムスポー20b1が連結されている。回転軸140bの軸部140b1は、回転軸140aの軸部140a1と連結スリーブ(図示せず)を介して連結することによって1本の回転軸を形成している。
【0087】
第3の相違点として、左側部分には、右側部分に設けられている可動軸部材144aに相当する構成要素が設けられていない。
【0088】
第3電磁クラッチ150bは、車椅子130の中心線に対して、第1電磁クラッチ146aと線対称となる構成を有している。すなわち、第3電磁クラッチ150bは、コイル150b2を内包したほぼ円筒形のヨーク150b1と、コイル150b2に対向する位置に配置され、ほぼディスク状のアーマチュア150b3と、アーマチュア150b3の車輪ハブ142bのディスク部142b1に面する側に設けられた係合部150b4と、アーマチュア150b3を車輪ハブ142bのディスク部142b1の方へ押し付けるためのばね150b5とを有している。アーマチュア150b3の中央に設けられたスプライン穴150b6に回転軸140bの軸部140b1が摺動可能に挿入されており、ばね150b5は、ばね受け部140b2によって支持されている。第3電磁クラッチ150bは、非通電状態ではばね150b5のばね力によりアーマチュア150b3の係合部150b4が車輪ハブ142bの係合部142b4に係合し、通電状態ではアーマチュア150b3がばね150b5のばね力に抗してヨーク150b1に吸引されアーマチュア150b3と車輪ハブ142bとの係合が解除されるようになっている。
【0089】
第1電磁クラッチ146aは右車輪14aに力を伝達するための装置、第2電磁クラッチ148aは左車輪14b又は右車輪14aに力を伝達するための装置、第3電磁クラッチ150bは左車輪14bに力を伝達するための装置である。これらの電磁クラッチ146a、148a、150b自体は、公知の装置である。なお、参照符号152a、152bは、コイルに通電するための通電コネクタである。
【0090】
車椅子130はさらに、右側ハンドリム20aの外面に配置された第1センサ20a3、第2センサ20a4と、左側ハンドリム20bの外面に配置された第3センサ20b3、第4センサ20b4と、各ハンドリム20a、20bの内部にそれぞれ配置されたセンサ信号発信部(いずれも図示せず)と、所定個所に配置された制御装置(図示せず)とを備えている。各センサ20a3、20a4、20b3、20b4と各センサ信号発信部は無線又は有線で接続されており、各センサ信号発信部と制御装置も無線又は有線で接続されている。
【0091】
各電磁クラッチ146a、148a、150bへの通電又は非通電は、ハンドリム20a、20bに配置された各センサ20a3、20a4、20b3、20b4への手指の接触又は非接触によって行われるようになっている。すなわち、あるセンサに手指が接触すると、センサ信号発信部、次いで制御装置に信号が送られ、送られた信号に応じて各電磁クラッチ146a、148a、150bに通電されるようになっている。右側のハンドリム20aには、2つのセンサ20a3、20a4が配置されている。したがって、センサ20a3、20a4への手指の接触の順序を組み合わせることにより、各電磁クラッチ146a、148a、150bへの通電パターンを3通りに設定することができる。同様に、左側のハンドリム20bにも、2つのセンサ20b3、20b4が配置されている。したがって、センサ20b3、20b4への手指の接触の順序を組み合わせることにより、各電磁クラッチ146a、148a、150bへの通電パターンを3通りに設定することができる。
図26は、通電パターンの一例を示したものである。
【0092】
図26に示される通電パターンに基づき具体的に説明する。第1センサ20a3と第2センサ20a4の両方に同時に接触すると、すべてのコイルに通電されない。第1センサ20a3、第2センサ20a4の順に接触すると、第1電磁クラッチ146aのみに通電される。第2センサ20a4、第1センサ20a3の順に接触すると、第2電磁クラッチ148aのみに通電される。一方、第3センサ20b3と第4センサ20b4の両方に同時に接触すると、すべてのコイルに通電されない。第3センサ20b3、第4センサ20b4の順に接触すると、第3電磁クラッチ150bのみに通電される。第4センサ20b4、第3センサ20b3の順に接触すると、第2電磁クラッチ148aのみに通電される。さらに、第1センサ20a3及び/又は第2センサ20a4と第3センサ20b3及び/又は第4センサ20b4に同時に接触すると、第2電磁クラッチ148aのみに通電される。
【0093】
車椅子130の作動について説明する。右手を用いて右折しようとする場合には、第1センサ20a3に触れ、次いで第2センサ20a4に触れる(
図22(a)参照)。すると、第1電磁クラッチ146aのみに通電されるので、係合部140a3と係合部148a4とが係合し、かつ、係合部142a4と係合部146a4との係合が解除される(
図22(b)参照)。この状態で、ハンドリム20aを前方に回転させると、ハンドリム20aの回転力が可動軸部材144a次いでアーマチュア148a3を介して回転軸140a次いで回転軸140bに伝達されて左車輪14bを回転させるので、右車輪14aが回転しない状態で左車輪14bが回転し、これにより車椅子130は右折する。右手を用いて左折しようとする場合には、第2センサ20a4に触れ、次いで第1センサ20a3に触れる(
図23(a)参照)。すると、第2電磁クラッチ148aのみに通電されるので、係合部142a4と係合部146a4とが係合し、かつ、係合部140a3と係合部148a4との係合が解除される(
図23(b)参照)。この状態で、ハンドリム20aを前方に回転させると、ハンドリム20aの回転力が可動軸部材144a次いでアーマチュア146a3を介して車輪ハブ142a次いで車輪スポーク14a2に伝達されて右車輪14aを回転させるので、左車輪14bが回転しない状態で右車輪14aが回転し、これにより車椅子130は左折する。右手を用いて前進しようとする場合には、第1センサ20a3と第2センサ20a4の両方に同時に触れる(
図21(a)参照)。すると、第1電磁クラッチ146aにも第2電磁クラッチ148aにも通電されず、係合部140a3と係合部148a4とが係合し、かつ、係合部142a4と係合部146a4とが係合する。この状態で、ハンドリム20aを前方に回転させると、ハンドリム20aの回転力が可動軸部材144a次いでアーマチュア148a3を介して回転軸140a次いで回転軸140bに伝達されて左車輪14bを回転させるとともに、可動軸部材144a次いでアーマチュア146a3を介して車輪ハブ142a次いで車輪スポーク14a2に伝達されて右車輪14aを回転させるので、車椅子130は前進する。
【0094】
一方、左手を用いて左折しようとする場合には、第3センサ20b3に触れ、次いで第4センサ20b4に触れる(
図24(a)参照)。すると、第3電磁クラッチ150bのみに通電されるので、係合部140a3と係合部148a4とが係合し、かつ、係合部142b4と係合部150b4との係合が解除される(
図24(b)参照)。この状態で、ハンドリム20bを前方に回転させると、ハンドリム20bの回転力が回転軸140b次いで回転軸140aに伝達されて右車輪14aを回転させるので、左車輪14bが回転しない状態で右車輪14aが回転し、これにより車椅子130は左折する。左手を用いて右折しようとする場合には、第4センサ20b4に触れ、次いで第3センサ20b3に触れる(
図25(a)参照)。すると、第2電磁クラッチ148aのみに通電されるので、係合部142b4と係合部150b4とが係合し、かつ、係合部140a3と係合部148a4との係合が解除される(
図25(b)参照)。この状態で、ハンドリム20bを前方に回転させると、ハンドリム20bの回転力が回転軸140b次いでアーマチュア150b3を介して車輪ハブ142b次いで車輪スポーク14b2に伝達されて左車輪14bを回転させるので、右車輪14aが回転しない状態で左車輪14bが回転し、これにより車椅子130は右折する。左手を用いて前進しようとする場合には、第3センサ20b3と第4センサ20b4の両方に同時に触れる。すると、第3電磁クラッチ150bにも第2電磁クラッチ148aにも通電されず、係合部140a3と係合部148a4とが係合し、かつ、係合部142b4と係合部150b4とが係合する。この状態で、ハンドリム20bを前方に回転させると、ハンドリム20bの回転力が回転軸140b次いで回転軸140aに伝達されて右車輪14aを回転させるとともに、回転軸140b次いでアーマチュア146b3を介して車輪ハブ142b次いで車輪スポーク14b2に伝達されて左車輪14bを回転させるので、車椅子130は前進する。
【0095】
右手でハンドリム20aを、左手でハンドリム20bをほぼ同時に把持した場合には、各センサに触れた順序にかかわらず、第2電磁クラッチ148aのみに通電される。この状態で、ハンドリム20aを前方に回転させると、右車輪14aが回転する。また、ハンドリム20bを前方に回転させると、左車輪14bが回転する。これにより、車椅子130を自由に右左折させることができる。
【0096】
なお、
図26に示される通電パターンは一例にすぎず、別の通電パターンを設定してもよい。
【0097】
車椅子130は、面接触する係合部142a4と係合部146a4、係合部140a3と係合部148a4、係合部142b4と係合部150b4とによって回転力が伝達されるように構成されているが、車椅子10のように、平歯車と内歯車とのかみ合いによって回転力が伝達されるように構成してもよい。また、第2電磁クラッチ148aを車椅子130の右側部分ではなく左側部分に設けるように構成してもよい。
【0098】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0099】
たとえば、図示した車椅子の構成要素の細部は単なる例示的なものであり、これらの細部を修正してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施形態に係る車椅子について詳細に説明する。
図1は、本発明の
好ましい実施形態に係る車椅子を示した右側面図、
図2は、
図1の車椅子の背面図である。
【0013】
図1において全体として参照符号10で示される本発明の
好ましい実施形態に係る車椅子は、車椅子の骨格を形成するフレーム12と、右車輪14a及び左車輪14bと、一対のキャスタ16a、16bと、シート18とを備えている。
【0014】
なお、車椅子10は、原則としてその中心線に対して左右対称であり左右それぞれの側に同じ構成要素を有しているが、以下の説明において、車椅子10の右側に位置する構成要素の参照符号に「a」を付し、車椅子10の左側に位置する構成要素の参照符号に「b」を付すものとする。また、本明細書において「内方」とは、車椅子に着座する使用者が位置する側を意味し、「外方」とは、使用者が位置する側と反対側を意味する。
【0015】
右車輪14a及び左車輪14bの外方には、車輪スポーク14a2、14b2に指を挟まないように、車輪カバー14a1、14b1がそれぞれ取り付けられている。
【0016】
車椅子10はまた、右車輪14aの車軸24aと同心に右車輪14aの外方に配置されたハンドリム20aを備えている。ハンドリム20aは、ハンドリムスポーク20a1に連結されている。なお、
図1では、4本のハンドリムスポーク20a1が図示されているが、ハンドリムスポーク20a1の本数はこれに限定されるものではない。
【0017】
次に、主として
図3〜
図6を参照して、本発明の
好ましい実施形態に係る車椅子10について説明する。
図3は、車椅子10の駆動機構の構成を示した図、
図4は、
図3の要部を示した拡大断面図である。
【0018】
車椅子10は、右車輪14aを支持する車軸24aを備えている。車軸24aは、中央に開口24a2が設けられた円形のディスク部24a1と、ディスク部24a1の内方に、ディスク部24a1と同心となるように固定された円筒形の内筒部24a3と、ディスク部24a1の外方に、ディスク部24a1と同心となるように固定された円筒形の外筒部24a4とを有し、内筒部24a3が、取付ボス26a、取付スリーブ28aを介して、フレーム12に取り付けられている。参照符号24a5は、車軸24aを固定するのに用いられる公知の車軸固定ばね付きレバー部材である。
【0019】
車軸24aの内筒部24a3には、回転軸30aが回転可能に配置されている。回転軸30aは、円柱形の軸部30a1と、軸部30a1の外端に設けられ、車軸24aの外筒部24a4内に位置する円板形のディスク部30a2とを有し、ディスク部30a2の外周には、内歯車30a3が配置されている。軸部30a1は、軸受30a4によって内筒部24a3内で回転可能に支持されている。また、車椅子10の左側部分にも、対応する箇所に、同様の構成を有する回転軸30bが設けられている。
【0020】
なお、
図3では、軸部30a1と軸部30b1が中央で途切れた状態で図示されているが、軸部30a1と軸部30b1を一体に形成してもよいし、軸部30a1と軸部30b1を別体に形成し、連結スリーブ(図示せず)を介して連結することによって1本の回転軸を形成するようにしてもよい。
【0021】
車輪ハブ32aが、車軸24aに回転可能に支持されている。車輪ハブ32aは、中央に開口32a2が設けられた円形のディスク部32a1と、ディスク部32a1の開口32a2の周囲に内方に延び、ディスク部32a1と同心となるように固定された円筒形の内筒部32a3と、ディスク部32a1の外周に内方に延び、ディスク部32a1と同心となるように固定された円筒形の外筒部32a4とを有する。内筒部32a3の先端の内周には、内歯車32a5が配置されている。外筒部32a4は、軸受32a6によって、車軸24aの外筒部24a4に回転可能に支持されている。また、車輪ハブ32aの外周には、右車輪14aの車輪スポーク14a2が連結されている。
【0022】
車椅子10はまた、伸縮性連結材34a3によって互いに連結された円筒形の内方部34a1および円筒形の外方部34a2を有する外軸34aを備えており、内方部34a1は、軸受34a4によって、車輪ハブ32aの内筒部32a3内に回転可能に支持されている。内方部34a1の貫通穴34a5および外方部34a2の貫通穴34a6は、それぞれスプライン穴であり、貫通穴34a5、34a6には、後述するスプライン軸の軸部36a1が挿入されている。伸縮性連結材34a3は、形状記憶材料で形成されており、後述する加力装置40aによって力を加えられなければ、中央位置(
図4に示されるように、平歯車36a3が内歯車30a3と内歯車32a5の両方にかみ合う位置)を保持するようになっている。なお、形状記憶材料製の伸縮性連結材34a3を用いる代わりに、加力装置40aによって力を加えられない場合に中央位置を保持するような弾性部材(例えば、ばね)を用いてもよい。
【0023】
車椅子10はまた、円柱形の軸部36a1および軸部36a1の内端に固定されたディスク部36a2を有する可動ディスク36aを備えている。可動ディスク36aの軸部36a1は、スプライン軸であり、外軸34aの内方部34a1の貫通穴34a5内および外方部34a2の貫通穴34a6内に摺動可能に配置されている。可動ディスク36aのディスク部36a2の外周には、平歯車36a3が設けられており、平歯車36a3が、回転軸30aのディスク部30a2の内歯車30a3及び/又は車輪ハブ32の内筒部32a3の内歯車32a5とかみ合うようになっている。
図4は、ディスク部36a2の平歯車36a3がディスク部30a2の内歯車30a3と内筒部32a3の内歯車32a5の両方にかみ合った状態を示し、
図5(a)は、ディスク部36a2の平歯車36a3がディスク部30a2の内歯車30a3のみとかみ合った状態を示し、
図5(b)は、ディスク部36a2の平歯車36a3が内筒部32a3の内歯車32a5のみとかみ合った状態を示している。
【0024】
外軸34aの外方部34a2の外端に、外方部34a2と同心に弾性部材受けディスク38aが固定されており、弾性部材受けディスク38aに設けられた円弧状の溝に弾性部材38a1が配置されている。弾性部材受けディスク38aには、弾性部材38a1を介して、外方部34a2と同心に内側リング部材38a2が取り付けられ、外側リング部材38a3が、軸受38a4を介して、内側リング部材38a2に回転可能に支持されている。なお、弾性部材38a1は、天然ゴム又は合成ゴム等の弾性材料で形成されている。
【0025】
内側リング部材38a2の外面には、
図4に示されるように、リング状のハンドリムスポーク受け部材20a2が取り付けられており、ハンドリム20aを円周方向に等距離へだてた個所(本例では、90度へだてた個所)で支持するハンドリムスポーク20a1が、ハンドリムスポーク受け部材20a2に取り付けられている。
【0026】
車椅子10はさらに、ハンドリム20aの内方又は外方への移動を可動ディスク36aに伝達するための加力装置40aを備えている。
図6(a)は、加力装置40aを説明するための部分切り取り斜視図である。加力装置40aは、
図6(a)に最も良く示されるように、上端が外側リング部材38a3に固定され、下端が車輪カバー部材14a1の最下位置にヒンジ止めされた一対のアーム40a1を有している。
図6(b)は、
図6(a)の部分6bの拡大図である。車輪カバー部材14a1の最下位置に平面視でコ字形のフレーム40a2が取り付けられ、フレーム40a2の内部に円柱部材40a3が回転可能に取り付けられている。一対のアーム40a1の下端が円柱部材40a3に固定されており、これによりアーム40a1が円柱部材40a3を支点として揺動するようになっている。
【0027】
そして、ハンドリム20aを揺動させると(すなわち、ハンドリム20aを内方又は外方に傾けると)、アーム40a1が下端を支点として内方又は外方に傾斜するが、これによって生ずる僅かな歪みと偏心が弾性部材38a1によって吸収されることにより外軸34aの外方部34a2を内方又は外方に移動させ、可動ディスク36aの軸部36a1が外軸34aの内方部34a1の貫通穴34a5内を摺動することとなる。なお、ハンドリムスポーク20a1が弾性部材38a1を介してアーム40a1に連結されているので、ハンドリム20aの内方又は外方への移動が円滑に可動ディスク36aに伝達される。
【0028】
なお、
図3〜
図5において、黒矢印は、ハンドリム20a、20bを傾けることにより生ずる力の伝達の経路を示したものである。
【0029】
以上の記載では、主として車椅子10の右側部分の構成について説明してきたが、車椅子10の左側部分も、右側部分と実質的に同一の構成を有している。すなわち、主要な構成要素について記すと、20bはハンドリム、24bは車軸、30bは回転軸、32bは車輪ハブ、34bは外軸、36bは可動ディスク、40bは加力装置をそれぞれ示している。
【0030】
図7及び
図8を参照して、車椅子10の作動について説明する。
図7は、車椅子10の右折又は左折走行を示した模式的な平面図、
図8は、車椅子10の直進走行を示した模式的な平面図である。
【0031】
まず、車椅子10の右折又は左折走行について説明する。右手を用いて右折しようとする場合には、右手でハンドリム20aを把持し内方に傾ける(
図7(a)参照)。ハンドリム20aを内方に傾けると、アーム40a1が下端を支点として内方に傾斜し、これに伴い、外軸34aの外方部34a2が内方に移動し、可動ディスク36aは内方に摺動し、可動ディスク36aのディスク部36a2の平歯車36a3が、回転軸30aのディスク部30a2の内歯車30a4にかみ合う(
図5(a)参照)。この状態でハンドリム20aを前方に回転させると、ハンドリム20aの回転力が可動ディスク36aを介して回転軸30a次いで回転軸30bに伝達されて左車輪14bを回転させるので、右車輪14aが回転しない状態で左車輪14bが回転し、これにより車椅子10は右折する。右手を用いて左折しようとする場合には、右手でハンドリム20aを把持し外方に傾ける(
図7(b)参照)。ハンドリム20aを外方に傾けると、アーム40a1が下端を支点として外方に傾斜し、これに伴い、外軸34aの外方部34a2が外方に移動し、可動ディスク36aは外方に摺動し、可動ディスク36aのディスク部36a2の平歯車36a3が、車輪ハブ32aの内筒部32a3の内歯車32a5にかみ合う(
図5(b)参照)。この状態でハンドリム20aを前方に回転させると、ハンドリム20aの回転力が可動ディスク36aを介して車輪ハブ32aに伝達されて右車輪14aを回転させるので、左車輪14bが回転しない状態で右車輪14aが回転し、これにより車椅子10は左折する。左手を用いて左折しようとする場合には、左手でハンドリム20bを把持し内方に傾ける(
図7(c)参照)。ハンドリム20bを内方に傾けると、アーム40b1が下端を支点として内方に傾斜し、これに伴い、外軸34bの外方部34b2が内方に移動し、可動ディスク36bは内方に摺動し、可動ディスク36bのディスク部36b2の平歯車36b3が、回転軸30bのディスク部30b2の内歯車30b4にかみ合う。この状態でハンドリム20bを前方に回転させると、ハンドリム20bの回転力が可動ディスク36bを介して回転軸30b次いで回転軸30aに伝達されて右車輪14aを回転させるので、左車輪14bが回転しない状態で右車輪14aが回転し、これにより車椅子10は左折する。左手を用いて右折しようとする場合には、左手でハンドリム20bを把持し外方に傾ける(
図7(d)参照)。ハンドリム20bを外方に傾けると、アーム40b1が下端を支点として外方に傾斜し、これに伴い、外軸34bの外方部34b2が外方に移動し、可動ディスク36bは外方に摺動し、可動ディスク36bのディスク部36b2の平歯車36b3が、車輪ハブ32bの内筒部32b3の内歯車32b5にかみ合う。この状態でハンドリム20bを前方に回転させると、ハンドリム20bの回転力が可動ディスク36bを介して車輪ハブ32bに伝達されて左車輪14bを回転させるので、右車輪14aが回転しない状態で左車輪14bが回転し、これにより車椅子10は右折する。以上をまとめると、健常な方の手(操作する手)の側に曲がろうとする場合には、ハンドリム20a、20bを内方に傾けて操作し、健常な方の手(操作する手)と反対側に曲がろうとする場合には、ハンドリム22a、22bを外方に傾けて操作すればよい。
【0032】
次に、車椅子10の直進走行について説明する。右手を用いて前進しようとする場合には、右手でハンドリム20aを中央位置(すなわち、可動ディスク36aのディスク部36a2の平歯車36a3が回転軸30aのディスク部30a2の内歯車30a3と車輪ハブ32aの内筒部32a3の内歯車32a5の両方にかみ合う位置)に把持した状態で前方に回転させる(
図8(a)参照)。すると、ハンドリム20aの回転力が可動ディスク36aを介して回転軸30a次いで回転軸30bに伝達されて左車輪14bを回転させるとともに、ハンドリム20aの回転力が車輪ハブ32aを介して右車輪14aを回転させるので、車椅子10は前進する。左手を用いて前進しようとする場合には、左手でハンドリム20bを中央位置に把持した状態で前方に回転させる(
図8(b)参照)。すると、ハンドリム20bの回転力が可動ディスク36bを介して回転軸30b次いで回転軸30aに伝達されて右車輪14aを回転させるとともに、ハンドリム20bの回転力が車輪ハブ32bを介して左車輪14bを回転させるので、車椅子10は前進する。さらに、両手を用いて前進することもできる(
図8(c)参照)。この場合は、右手でハンドリム20aを中央位置に把持した状態で前方に回転させるとともに、左手でハンドリム20bを中央位置に把持した状態で前方に回転させる。なお、上述のように中央位置で前進することができるほか、左右のハンドリム20a、20bをそれぞれ外方に傾けると、それぞれの車輪14a、14bのみを駆動させることができ、
自由に右左折させることができる。
【0033】
上述の車椅子10は、平歯車と内歯車とのかみ合いによって回転力が伝達されるように構成されているが、面接触する係合部によって回転力が伝達されるように構成してもよい。面接触する係合部は、高摩擦係数の材料(例えば、ゴム)又は対応する係合部の係合面と相補する形状の歯面で形成され、又は高摩擦コーティングが施されている。
【0034】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0035】
たとえば、図示した車椅子の構成要素の細部は単なる例示的なものであり、これらの細部を修正してもよい。