(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-108296(P2020-108296A)
(43)【公開日】2020年7月9日
(54)【発明の名称】管路導通試験方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/08 20060101AFI20200612BHJP
F16L 1/028 20060101ALI20200612BHJP
H02G 9/06 20060101ALI20200612BHJP
【FI】
H02G1/08
F16L1/028 Z
H02G9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-246583(P2018-246583)
(22)【出願日】2018年12月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593027716
【氏名又は名称】株式会社エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】井手 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 祥典
(72)【発明者】
【氏名】日原 大知
(72)【発明者】
【氏名】石川 隆博
(72)【発明者】
【氏名】古川 喜啓
(72)【発明者】
【氏名】岩元 英之
(72)【発明者】
【氏名】大野 公平
(72)【発明者】
【氏名】堀田 信彦
(72)【発明者】
【氏名】高安 央也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 博之
(72)【発明者】
【氏名】井出 勇人
【テーマコード(参考)】
5G352
5G369
【Fターム(参考)】
5G352CA08
5G352CE03
5G352CG04
5G352CK08
5G352DA08
5G369AA16
5G369BA04
(57)【要約】
【課題】試験器が管路内で固く詰まってしまうことを防止するとともに、詰まってしまった場合には試験器のみを引き戻すことが可能な管路導通試験方法を提供する。
【解決手段】
本発明の代表的な構成は、一定長の筒型の試験器170を通すことで管路が導通していることを確認する管路導通試験において、試験器170の牽引側に、一定荷重を超過した場合に分離する切り離しコネクタ200を連結し、切り離しコネクタ200を介して試験器170を牽引することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定長の筒型の試験器を通すことで管路が導通していることを確認する管路導通試験において、
前記試験器の牽引側に、一定荷重を超過した場合に分離する切り離しコネクタを連結し、
前記切り離しコネクタを介して前記試験器を牽引することを特徴とする管路導通試験方法。
【請求項2】
管路から引き抜くケーブルの末端に前記切り離しコネクタを連結し、
前記切り離しコネクタに前記試験器を連結して、
前記ケーブルを引くことにより、ケーブルの引抜と管路導通試験を同時に施工することを特徴とする請求項1に記載の管路導通試験方法。
【請求項3】
前記切り離しコネクタは、
牽引側のワイヤーに連結される第1ブロックと、
前記試験器側のワイヤーに連結される第2ブロックとを備え、
前記第1ブロックまたは第2ブロックの少なくとも一方に磁石を備え、
前記第1ブロックまたは第2ブロックの他方に前記磁石が吸着する磁性体または磁石を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の管路導通試験方法。
【請求項4】
前記切り離しコネクタは、
牽引側のワイヤーに連結される第1ブロックと、
前記試験器側のワイヤーに連結される第2ブロックとを備え、
前記第1ブロックと第2ブロックはボールプランジャによって固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の管路導通試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路が導通しているかどうか、ないしは管路の中に障害物があるかどうかを試験する管路導通試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設した管や、橋梁の下に設置した管に電線やケーブルを通すにあたり、管路が導通しているかどうか、ないしは管路の中に障害物があるかどうかを試験する管路導通試験が行われている。管路導通試験とは、試験器またはボビンと呼ばれる所定長さの円筒を管内に通す試験である。
【0003】
管路導通試験については、例えば特許文献1(特許第2967268号公報)にも記載されている。特許文献1においては、試験器に後続する第2索体(ワイヤー)にバックテンションをかけることにより、実際のケーブルを導通させるのに必要な引張力で牽引するためのバックテンションをかけることができ、しかも管路の内壁にソリを弾接させる必要がないと述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2967268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
管路導通試験は、従来は人力でワイヤーを引くことによって試験器を通していた。ウインチなどを用いて機械的に引くと、管路内に異常があった場合に試験器が詰まってしまい、これを引き戻せなかったり、あるいは管路をさらに損傷させてしまうおそれがあるためである。しかし、中には数百メートルに至る管路もあり、この中に試験器を人力で通すのは重労働であるため、機械を使いたいという要請がある。
【0006】
また、従来は既設ケーブルを引き抜いたあと、別の日に管路導通試験を行っていた。ケーブルは重量物であるため人力で引き抜くことはできず、ウインチが使用されるためである。仮に既設ケーブルの後端に試験器を接続しておくと、管路内に異常があった場合に試験器が固く詰まってしまううえに、不健全な管路においてケーブルごと逆方向に戻すことは不可能である。しかしながら、既設ケーブルの引き抜きと管路導通試験を同時に行うことができれば、工程を簡略化し、工事日数を短縮し、施工コストを低減することが可能となる。
【0007】
そこで本発明は、試験器が管路内で固く詰まってしまうことを防止するとともに、詰まってしまった場合には試験器のみを引き戻すことが可能な管路導通試験方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、一定長の筒型の試験器を通すことで管路が導通していることを確認する管路導通試験において、試験器の牽引側に、一定荷重を超過した場合に分離する切り離しコネクタを連結し、切り離しコネクタを介して試験器を牽引することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、人力で引いた場合の力と同程度の荷重で切り離しコネクタを分離させることができる。これにより、試験器が管路内で固く詰まってしまうことを防止するとともに、詰まってしまった場合には試験器のみを引き戻すことが可能となる。したがってウインチなどの機械で試験器を引くことが可能となり、作業の機械化・自動化を図ることができるため、作業時間短縮・人員削減に寄与することができる。
【0010】
管路から引き抜くケーブルの末端に切り離しコネクタを連結し、切り離しコネクタに試験器を連結して、ケーブルを引くことにより、ケーブルの引抜と管路導通試験を同時に施工してもよい。
【0011】
上記構成によれば、既設ケーブル引き抜きと管路導通試験を同時に行うことが可能となる。これにより工程を簡略化し、工事日数を短縮し、施工コストを低減することが可能となる。既設ケーブル引き抜きと管路導通試験、ケーブル引入れの3作業を同日に実施することも可能になる。
【0012】
切り離しコネクタは、牽引側のワイヤーに連結される第1ブロックと、試験器側のワイヤーに連結される第2ブロックとを備え、第1ブロックまたは第2ブロックの少なくとも一方に磁石を備え、第1ブロックまたは第2ブロックの他方に磁石が吸着する磁性体または磁石を備えていてもよい。このような構成によれば、磁石の吸着力によって試験器を牽引し、これを越えれば分離させることができる。
【0013】
切り離しコネクタは、牽引側のワイヤーに連結される第1ブロックと、試験器側のワイヤーに連結される第2ブロックとを備え、第1ブロックと第2ブロックはボールプランジャによって固定されていてもよい。具体的には、第1ブロックと第2ブロックの一方をスリーブにして、牽引方向に対して垂直にボールが沈み込むようにボールプランジャーを取り付ける。このような構成によれば、ボールプランジャーが窪みから外れるまでは試験器を牽引し、ボールプランジャーが窪みから外れれば分離させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、試験器が管路内で固く詰まってしまうことを防止するとともに、詰まってしまった場合には試験器のみを引き戻すことが可能である。したがって試験器の牽引の機械化・自動化を図ったり、既設ケーブル引き抜きと同時に管路導通試験を行うことが可能となる。これにより工程を簡略化し、工事日数を短縮し、施工コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】管路導通試験を行う設備の全体構成を示す模式図である。
【
図2】管路に異常があった場合の処理を説明する図である。
【
図3】管路導通試験を単独で行う場合の例を示す図である。
【
図4】一例としての切り離しコネクタの構成について示す断面図である。
【
図5】他の例としての切り離しコネクタの構成について示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示または説明を省略する。
【0017】
まず本発明の特徴である管路導通試験について説明し、次に特徴的な要素である切り離しコネクタについて説明する。
【0018】
[管路導通試験方法]
図1は管路導通試験を行う設備の全体構成を示す模式図である。マンホール110、112の間には管路120が設置されている。管路120は、SGP配管(配管用炭素鋼鋼管)やポリコンFRP管が用いられている。この管路120からケーブル引抜車132によって既設ケーブル130を引き抜き、管路導通試験を行い、新しいケーブル(不図示)を通す作業を行う。
【0019】
図1の構成では、既設ケーブル130の引抜と管路導通試験を同時に行う。すなわち、既設ケーブル130の末端にプーリングアイ134を取り付ける。プーリングアイ134には、ワイヤー140と予備線150が接続される。ワイヤー140には、より戻し142、後述する切り離しコネクタ200、ブラシ160、試験器170(ボビンとも呼ばれる)が接続される。試験器170は一定長の筒型の部材である。なお
図1ではより戻し142を切り離しコネクタ200の上流側に配置しているが、切り離しコネクタ200の下流側により戻し142を配置してもよい。
【0020】
切り離しコネクタ200は、牽引側のワイヤー140に連結される第1ブロック210と、試験器170側のワイヤー140に連結される第2ブロック220とを備え、一定荷重を超過した場合に分離する。ワイヤー140には、まず切り離しコネクタ200を連結し、そして切り離しコネクタ200を介して試験器170を牽引する。すなわち、切り離しコネクタ200は、試験器170の牽引側(既設ケーブル130側)に配置する。ブラシ160も切り離しコネクタ200より下流側に配置するのが好ましい。ただし、ブラシ160であれば管路120に異常があっても通る可能性が高いため、切り離しコネクタ200より牽引側に配置してもよい。
【0021】
この管路導通試験が従来の試験と異なっている点は、切り離しコネクタ200を用いていることと、既設ケーブル130の後に試験器170を接続していることである。
【0022】
図2は管路120に異常があった場合の処理を説明する図である。
図2(a)は、管路120の異常箇所120aがあり、試験器170が異常箇所120aにさしかかった状態を示している。切り離しコネクタ200およびブラシ160は異常箇所120aを通過したものとする。
【0023】
図2(b)は、試験器170が異常箇所120aに至り、ここを通過できなかった状態を示している。このとき既設ケーブル130は牽引されつづけるため、牽引力が一定荷重を越えると切り離しコネクタ200は分離する。したがって試験器170は一定荷重以上の力で引かれることはなく、詰まってしまうおそれはない。切り離しコネクタ200の分離荷重を調節すれば、人力で引いた場合の力と同程度の荷重で切り離しコネクタを分離させることができる。
【0024】
試験器170が詰まってしまったことは、ワイヤー140が引き込まれなくなることで知ることができる。
図2(c)は、試験器170、ブラシ160、および第2ブロック220を地上まで引き戻した状態を示している。既設ケーブル130の引抜作業は続行し、予備線150が管路を通される。試験器170を引き戻した距離によって異常箇所120aの位置を知ることができるため、状況に応じて修理工事などを行う。
【0025】
上記方法によれば、試験器170が管路120内で固く詰まってしまうことを防止するとともに、詰まってしまった場合には(既設ケーブル130を引き戻すことなく)試験器170のみを引き戻すことが可能となる。したがってウインチなどの機械で試験器170を引くことが可能となり、作業の機械化・自動化を図ることができるため、作業時間短縮・人員削減に寄与することができる。
【0026】
特に、管路120から引き抜く既設ケーブル130の末端に切り離しコネクタ200を介して試験器170を連結することにより、既設ケーブル130の引抜と管路導通試験を同時に施工することが可能となる。これにより工程を簡略化し、工事日数を短縮し、施工コストを低減することが可能となる。既設ケーブル引き抜きと管路導通試験、ケーブル引入れの3作業を同日に実施することも可能になる。
【0027】
図3は、管路導通試験を単独で行う場合の例を示す図である。
図1,2ではケーブル引抜作業と同時に行う例を示したが、管路導通試験を単独で行ってもよい。この場合も、ワイヤー140をウインチ136で引くことが可能である。従来のように人力でワイヤー140を引く場合と比べて、作業の機械化・自動化を図ることができるため、作業時間短縮・人員削減に寄与することができる。
【0028】
[切り離しコネクタ]
次に、切り離しコネクタ200の具体的な構成例を説明する。以下に2つの構成を説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、一定荷重を超過した場合に分離する機構を備えていればよい。
【0029】
図4は一例としての切り離しコネクタ200aの構成について示す断面図である。切り離しコネクタ200aは、第1ブロック210aと、第2ブロック220aとから構成されている。
【0030】
図4(a)に示すように、第1ブロック210aの本体212aは、牽引側のワイヤー140に連結されるアイボルト214を備えている。第1ブロック210aの本体212aは磁性体(厳密には強磁性体)で形成されていて、磁石が吸着するようになっている。
【0031】
第2ブロック220aの本体222aの内部には磁石230を備えていて、
図4(b)に示すように、第1ブロック210aの本体212aに吸着することができる。本体222aはステンレスなどの非磁性体で形成されていて、磁石230の磁束を拡散してしまわないように構成されている。本体222aは、試験器170側のワイヤー140に連結されるアイボルト224を備えている。
【0032】
このような構成によれば、磁石230の吸着力によって試験器170を牽引することができる。また、吸着力を越えた荷重がかかれば、第1ブロック210aと第2ブロック220aを分離させることができる。
【0033】
また第2ブロック220aのアイボルト224にはねじ226が取り付けられていて、その先端にホルダー231が連結されており、磁石230はホルダー231に固定されている。ねじ226は本体222aの内部に固定された雌ねじ板228に螺合されている。したがって
図4(c)に示すように、アイボルト224を回転させるとねじ226が本体222aに対して進退し、これに伴って磁石230も第1ブロック210aに対して進退する。これにより、磁石230と第1ブロック210aとの間のギャップを調節可能であり、ひいては磁石230の吸着力を調節することができる。磁石230のホルダー231に対する固定方法は、接着剤やねじによる固定が望ましいが、これに限定するものではない。また、ねじ226の先端を直接磁石230に連結してもよい。
【0034】
なお
図4の例では第2ブロック220aに磁石を設けたが、第1ブロック210aに磁石を内蔵させてもよい。また、第1ブロック210aと第2ブロック220aの両方に磁石を内蔵させてもよい。
【0035】
図5は他の例としての切り離しコネクタ200bの構成について示す断面図である。切り離しコネクタ200bは、第1ブロック210bと、第2ブロック220bとから構成されている。
図4と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
図5(a)に示すように、第1ブロック210bの本体212bには、軸心が第2ブロック220bに向かうスリーブ216が備えられている。一方、第2ブロック220bには、スリーブ216に直交してボールが進退するボールプランジャー240が備えられている。スリーブ216には、ボールプランジャー240のボールが歯合する窪み216aが形成されている。すなわちボールプランジャー240は、牽引方向に対して垂直にボールが沈み込む方向に取り付けられている。
【0037】
図5(c)に示すように上記構成の第1ブロック210bと第2ブロック220bを組み合わせると、ボールプランジャー240が窪み216aから外れるまでは(ボールが沈み込む荷重までは)試験器170を牽引することができる。また、ボールプランジャー240が窪み216aから外れれば(牽引力がボールが沈み込む荷重を越えると)、第1ブロック210bと第2ブロック220bが分離する。
【0038】
本実施形態においてボールプランジャー240は、
図5(b)に示すように複数(8つ)配置されている。ボールプランジャー240の数は、分離させたい一定荷重にあわせて設定することができる。
【0039】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、管路が導通しているかどうか、ないしは管路の中に障害物があるかどうかを試験する管路導通試験方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
110…マンホール、112…マンホール、120…管路、120a…異常箇所、130…既設ケーブル、132…ケーブル引抜車、134…プーリングアイ、140…ワイヤー、142…より戻し、150…予備線、160…ブラシ、170…試験器、200…切り離しコネクタ、200a…切り離しコネクタ、200b…切り離しコネクタ、210…第1ブロック、210a…第1ブロック、210b…第1ブロック、212a…本体、212b…本体、214…アイボルト、216…スリーブ、216a…窪み、220…第2ブロック、220a…第2ブロック、220b…第2ブロック、222a…本体、224…アイボルト、226…ねじ、228…雌ねじ板、230…磁石、231…ホルダー、240…ボールプランジャー