(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-109221(P2020-109221A)
(43)【公開日】2020年7月16日
(54)【発明の名称】短繊維用処理剤、短繊維、及び、スパンレース不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
D06M 13/224 20060101AFI20200619BHJP
D06M 13/184 20060101ALI20200619BHJP
D06M 13/148 20060101ALI20200619BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20200619BHJP
D06M 15/643 20060101ALI20200619BHJP
D06M 13/02 20060101ALI20200619BHJP
D04H 1/4258 20120101ALI20200619BHJP
D04H 1/492 20120101ALI20200619BHJP
D06M 101/04 20060101ALN20200619BHJP
【FI】
D06M13/224
D06M13/184
D06M13/148
D06M15/53
D06M15/643
D06M13/02
D04H1/4258
D04H1/492
D06M101:04
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-238(P2019-238)
(22)【出願日】2019年1月4日
(11)【特許番号】特許第6533020号(P6533020)
(45)【特許公報発行日】2019年6月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大海 卓滋
(72)【発明者】
【氏名】市川 敏己
(72)【発明者】
【氏名】小室 利広
【テーマコード(参考)】
4L033
4L047
【Fターム(参考)】
4L033AA02
4L033AB01
4L033AC09
4L033BA01
4L033BA12
4L033BA16
4L033BA21
4L033CA48
4L033CA59
4L047AA12
4L047AB02
4L047BA04
4L047CB10
(57)【要約】
【課題】水流交絡に使用した水の脱落気泡性を向上させる。
【解決手段】短繊維用処理剤は、下記の脂肪酸誘導体と、下記の脂肪酸及び下記の油脂から選ばれる少なくとも一つと、下記の多価アルコールとを含む。脂肪酸誘導体:炭素数12〜24の脂肪酸1モルに対し、アルキレンオキシドを0.1〜30モルの割合で付加させた構造のもの、脂肪酸:炭素数12〜24の脂肪酸、油脂:植物油、動物油、及びこれらの硬化油から選ばれる少なくとも一つ、多価アルコール:分子中に2〜6個の水酸基を有する多価アルコール。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の脂肪酸誘導体と、下記の脂肪酸及び下記の油脂から選ばれる少なくとも一つと、下記の多価アルコールとを含むことを特徴とする短繊維用処理剤。
脂肪酸誘導体:炭素数12〜24の脂肪酸1モルに対し、アルキレンオキシドを0.1〜30モルの割合で付加させた構造のもの。
脂肪酸:炭素数12〜24の脂肪酸。
油脂:植物油、動物油、及びこれらの硬化油から選ばれる少なくとも一つ。
多価アルコール:分子中に2〜6個の水酸基を有する多価アルコール。
【請求項2】
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、並びに前記多価アルコールの含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5〜99.89質量部、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、並びに前記多価アルコールを0.1〜90質量部の割合で含有する請求項1記載の短繊維用処理剤。
【請求項3】
更に炭化水素化合物、エステル(前記油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも一つの潤滑剤を含む請求項1記載の短繊維用処理剤。
【請求項4】
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記多価アルコール、並びに前記潤滑剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5〜98.89質量部、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、前記多価アルコールを0.1〜90質量部、並びに前記潤滑剤を1〜20質量部の割合で含有する請求項3記載の短繊維用処理剤。
【請求項5】
更にアニオン界面活性剤を含有する請求項1記載の短繊維用処理剤。
【請求項6】
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記多価アルコール、並びに前記アニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5〜98.89質量部、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、前記多価アルコールを0.1〜90質量部、並びに前記アニオン界面活性剤を1〜20質量部の割合で含有する請求項5記載の短繊維用処理剤。
【請求項7】
更にアニオン界面活性剤を含有する請求項3に記載の短繊維用処理剤。
【請求項8】
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記多価アルコール、前記アニオン界面活性剤、並びに前記潤滑剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5〜97.89質量部、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、前記多価アルコールを0.1〜90質量部、並びに前記アニオン界面活性剤を1〜20質量部、並びに前記潤滑剤を1〜20質量部の割合で含有する請求項7記載の短繊維用処理剤。
【請求項9】
短繊維が、ビスコースレーヨンである請求項1〜8のいずれか一項記載の短繊維用処理剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項記載の短繊維用処理剤が付着していることを特徴とする短繊維。
【請求項11】
下記の工程1〜2を含むことを特徴とするスパンレース不織布の製造方法。
工程1:請求項10記載の短繊維にカーディングを行い、ウェブを製造する工程。
工程2:工程1で得られたウェブを水流にて交絡させる工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短繊維用処理剤、短繊維用処理剤が付着した短繊維、及び、短繊維用処理剤が付着した短繊維を用いたスパンレース不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、不織布に使用される原料繊維として、木綿繊維等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ポリオレフィン等の合成繊維が用いられている。原料繊維において、不織布を製造する際に必要とされる潤滑性、集束性等の各種特性を付与する観点から、原料繊維の表面に界面活性剤等を含有する不織布用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
【0003】
従来、特許文献1、2に開示される不織布用処理剤が知られている。特許文献1は、不織布用処理剤として、鉱物油、脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル等を含む構成について開示する。特許文献2は、高圧水流絡合用繊維処理剤として、多価アルコール脂肪酸エステルサルフェート塩、鉱物油、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル等を含む構成について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/104106号
【特許文献2】特許第6096061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これら従来の不織布用処理剤は、不織布製造工程の水流交絡に使用した水の脱落気泡性が十分ではないという課題を有している。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水流交絡に使用した水の脱落気泡性を向上させることができる短繊維用処理剤を提供することにある。また、この短繊維用処理剤が付着した短繊維を提供することにある。また、この短繊維用処理剤が付着した短繊維を用いたスパンレース不織布の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の脂肪酸誘導体、特定の脂肪酸又は油脂、及び特定の多価アルコールを含有して成る短繊維用処理剤が正しく好適であることを見出した。
【0007】
上記課題を解決するための短繊維用処理剤は、下記の脂肪酸誘導体と、下記の脂肪酸及び下記の油脂から選ばれる少なくとも一つと、下記の多価アルコールとを含むことを要旨とする。脂肪酸誘導体:炭素数12〜24の脂肪酸1モルに対し、アルキレンオキシドを0.1〜30モルの割合で付加させた構造のもの。脂肪酸:炭素数12〜24の脂肪酸。油脂:植物油、動物油、及びこれらの硬化油から選ばれる少なくとも一つ。多価アルコール:分子中に2〜6個の水酸基を有する多価アルコール。
【0008】
上記短繊維用処理剤について、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、並びに前記多価アルコールの含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5〜99.89質量部、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、並びに前記多価アルコールを0.1〜90質量部の割合で含有することが好ましい。
【0009】
上記短繊維用処理剤について、更に炭化水素化合物、エステル(前記油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも一つの潤滑剤を含むことが好ましい。
上記短繊維用処理剤について、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記多価アルコール、並びに前記潤滑剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5〜98.89質量部、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、前記多価アルコールを0.1〜90質量部、並びに前記潤滑剤を1〜20質量部の割合で含有することが好ましい。
【0010】
上記短繊維用処理剤について、更にアニオン界面活性剤を含有することが好ましい。
上記短繊維用処理剤について、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記多価アルコール、並びに前記アニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5〜98.89質量部、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、前記多価アルコールを0.1〜90質量部、並びに前記アニオン界面活性剤を1〜20質量部の割合で含有することが好ましい。
【0011】
上記潤滑剤を配合する短繊維用処理剤について、更にアニオン界面活性剤を含有することが好ましい。
上記短繊維用処理剤について、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記多価アルコール、前記アニオン界面活性剤、並びに前記潤滑剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5〜97.89質量部、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、前記多価アルコールを0.1〜90質量部、並びに前記アニオン界面活性剤を1〜20質量部、並びに前記潤滑剤を1〜20質量部の割合で含有することが好ましい。
【0012】
上記短繊維用処理剤について、短繊維が、ビスコースレーヨンであることが好ましい。
上記課題を解決するための短繊維は、上記短繊維用処理剤が付着していることを要旨とする。
【0013】
上記課題を解決するためのスパンレース不織布の製造方法は、下記の工程1〜2を含むことを要旨とする。工程1:上記短繊維にカーディングを行い、ウェブを製造する工程。工程2:工程1で得られたウェブを水流にて交絡させる工程。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、短繊維用処理剤が付着した短繊維を水流交絡した際に、水流交絡に使用した水の脱落気泡性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
本発明に係る短繊維用処理剤を具体化した第1実施形態について説明する。短繊維用処理剤は、下記の脂肪酸誘導体と、下記の脂肪酸及び下記の油脂から選ばれる少なくとも一つと、下記の多価アルコールとを含む。
【0016】
脂肪酸誘導体は、炭素数12〜24の脂肪酸1モルに対し、アルキレンオキシドを0.1〜30モルの割合で付加させた構造のものである。上記脂肪酸誘導体の具体例としては、例えば、(1)ポリオキシエチレン(オキシエチレン単位の数(エチレンオキサイドの付加モル数)20、以下n=20とする)オレート、ポリオキシエチレン(n=10)オレート、ポリオキシエチレン(n=30)オレート、ポリオキシエチレン(n=5)ステアレート、ポリオキシエチレン(n=10)ステアレート、ポリオキシエチレン(n=10)ラウリルエステル、ポリオキシアルキレン(n=10、オキシプロピレン単位の数(プロピレンオキサイドの付加モル数)10、以下m=10とする)ステアリルエステル等の飽和又は不飽和脂肪酸にアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンアルキル(又はアルキレン)エステル、(2)ポリエチレングリコール(分子量400)モノオレート、ポリエチレングリコール(分子量600)ジオレート、ポリエチレングリコール(分子量1000)モノステアレート、ポリエチレングリコール(分子量400)ジラウレート、ポリエチレングリコール(分子量1000)ジステアレート等の飽和又は不飽和脂肪酸にポリアルキレングリコールを付加反応させて得られるポリアルキレングリコールアルキル(又はアルキレン)エステル、(3)ポリオキシエチレン(n=30)ひまし油エステル、ポリオキシアルキレン(n=10、m=10)ひまし油エステル、ポリオキシエチレン(n=10)硬化ひまし油エステル、ヤシ脂肪酸とエチレンオキサイド10モルとの反応物等の油脂にアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンの油脂エステル等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、アルキレンオキサイドとして、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを有する場合、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0017】
脂肪酸は、炭素数12〜24の脂肪酸である。炭素数12〜24の脂肪酸の具体例としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、ヤシ脂肪酸等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
油脂は、植物油、動物油、及びこれらの硬化油から選ばれる少なくとも一つである。油脂の具体例としては、例えば、ひまし油、ごま油、トール油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、菜種油、豚脂、牛脂、鯨油、これらの硬化油等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
多価アルコールは、分子中に2〜6個の水酸基を有する多価アルコールである。多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコールとアルキレンオキサイドの反応物等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
本実施形態の短繊維用処理剤は、処理剤中の上述した脂肪酸誘導体と、脂肪酸と、油脂、多価アルコールの含有比率に制限はない。上述した脂肪酸誘導体、脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つ、並びに多価アルコールの含有割合の合計を100質量部とすると、脂肪酸誘導体を5〜99.89質量部、脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、並びに多価アルコールを0.1〜90質量部の割合で含有して成ることが好ましい。かかる構成の場合、本発明の効果をより向上させることができる。
【0021】
本実施形態の短繊維用処理剤は、更に炭化水素化合物、エステル(前記油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも一種の潤滑剤を含有することが好ましい。この潤滑剤を配合することにより、本発明の効果をより向上させることができる。これらの潤滑剤成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
炭化水素化合物の具体例としては、例えば鉱物油、パラフィンワックス等が挙げられる。
エステルの具体例としては、例えばブチルステアレート、ステアリルステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリントリオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート等が挙げられる。
【0023】
シリコーンの具体例としては、例えばジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等が挙げられる。
本実施形態の短繊維用処理剤は、処理剤中の上述した脂肪酸誘導体と、脂肪酸と、油脂、多価アルコールと、潤滑剤の含有比率に制限はない。上述した脂肪酸誘導体、脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つ、多価アルコール、並びに潤滑剤の含有割合の合計を100質量部とすると、脂肪酸誘導体を5〜98.89質量部、脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、多価アルコールを0.1〜90質量部、並びに潤滑剤を1〜20質量部の割合で含有して成ることが好ましい。かかる構成の場合、本発明の効果をより向上させることができる。
【0024】
本実施形態の短繊維用処理剤は、更にアニオン界面活性剤を含有して成ることが好ましい。このアニオン界面活性剤を配合することにより、本発明の効果をより向上させることができる。アニオン界面活性剤の種類に特に限定は無いが、例えば、(1)ラウリルリン酸エステルアルカリ金属塩、セチルリン酸エステルアルカリ金属塩、オレイルリン酸エステルアルカリ金属塩、ステアリルリン酸エステルアルカリ金属塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステルのアルカリ金属塩、(2)ポリオキシエチレン(n=5)ラウリルエーテルリン酸エステルのアルカリ金属塩、ポリオキシエチレン(n=5)オレイルエーテルリン酸エステルのアルカリ金属塩、ポリオキシエチレン(n=10)ステアリルエーテルリン酸エステルのアルカリ金属塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステルのアルカリ金属塩、(3)ラウリルスルホン酸エステルのアルカリ金属塩、オレイルスルホン酸エステルのアルカリ金属塩、ステアリルスルホン酸エステルのアルカリ金属塩、テトラデカンスルホン酸のアルカリ金属塩等の脂肪族アルコールのスルホン酸エステルのアルカリ金属塩、(4)ラウリル硫酸エステルのアルカリ金属塩、オレイル硫酸エステルのアルカリ金属塩、ステアリル硫酸エステルのアルカリ金属塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステルのアルカリ金属塩、(5)ポリオキシエチレン(n=3)ラウリルエーテル硫酸エステルのアルカリ金属塩、ポリオキシエチレン(n=5)ラウリルエーテル硫酸エステルのアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレン(n=3、m=3)ラウリルエーテル硫酸エステルのアルカリ金属塩、ポリオキシエチレン(n=3)オレイルエーテル硫酸エステルのアルカリ金属塩、ポリオキシエチレン(n=5)オレイルエーテル硫酸エステルのアルカリ金属塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステルのアルカリ金属塩、(6)ひまし油脂肪酸硫酸エステルのアルカリ金属塩、ごま油脂肪酸硫酸エステルのアルカリ金属塩、トール油脂肪酸硫酸エステルのアルカリ金属塩、大豆油脂肪酸硫酸エステルのアルカリ金属塩、なたね油脂肪酸硫酸エステルのアルカリ金属塩、パーム油脂肪酸硫酸エステルのアルカリ金属塩、豚脂脂肪酸硫酸エステルのアルカリ金属塩、牛脂脂肪酸硫酸エステルのアルカリ金属塩、鯨油脂肪酸硫酸エステルのアルカリ金属塩等の脂肪酸の硫酸エステルのアルカリ金属塩、(7)ひまし油の硫酸エステルのアルカリ金属塩、ごま油の硫酸エステルのアルカリ金属塩、トール油の硫酸エステルのアルカリ金属塩、大豆油の硫酸エステルのアルカリ金属塩、菜種油の硫酸エステルのアルカリ金属塩、パーム油の硫酸エステルのアルカリ金属塩、豚脂の硫酸エステルのアルカリ金属塩、牛脂の硫酸エステルのアルカリ金属塩、鯨油の硫酸エステルのアルカリ金属塩等の油脂の硫酸エステルのアルカリ金属塩、(8)ラウリン酸のアルカリ金属塩、オレイン酸のアルカリ金属塩、ステアリン酸のアルカリ金属塩等の脂肪酸のアルカリ金属塩、(9)ジオクチルスルホコハク酸のアルカリ金属塩等の脂肪族アルコールのスルホコハク酸エステルのアルカリ金属塩等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本実施形態の短繊維用処理剤は、処理剤中の上述した脂肪酸誘導体と、脂肪酸と、油脂、多価アルコールと、アニオン界面活性剤の含有比率に制限はない。上述した脂肪酸誘導体、脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つ、多価アルコール、並びにアニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量部とすると、脂肪酸誘導体を5〜98.89質量部、脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、多価アルコールを0.1〜90質量部、並びにアニオン界面活性剤を1〜20質量部の割合で含有して成ることが好ましい。かかる構成の場合、本発明の効果をより向上させることができる。
【0026】
本実施形態の短繊維用処理剤は、処理剤中の上述した脂肪酸誘導体と、脂肪酸と、油脂、多価アルコールと、アニオン界面活性剤と、潤滑剤の含有比率に制限はない。上述した脂肪酸誘導体、脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つ、多価アルコール、アニオン界面活性剤、並びに前記潤滑剤の含有割合の合計を100質量部とすると、脂肪酸誘導体を5〜97.89質量部、脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、多価アルコールを0.1〜90質量部、並びにアニオン界面活性剤を1〜20質量部、並びに潤滑剤を1〜20質量部の割合で含有して成ることが好ましい。かかる構成の場合、本発明の効果をより向上させることができる。
【0027】
本実施形態の短繊維用処理剤は、その他成分として、更に上記以外の非イオン性界面活性剤を含有して成ることが好ましい。上記以外の非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えば(1)ポリオキシエチレン(n=10)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(n=20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(n=30)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(n=10)アルキル(炭素数12−13)エーテル、ポリオキシアルキレン(n=10、m=10)ラウリルエーテル等の飽和又は不飽和脂肪族1価アルコールにアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル、(2)ポリオキシエチレン(n=10)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタントリステアレート等の脂肪族多価アルコールにアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル、(3)ポリオキシエチレン(n=10)オクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン(n=10)ノニルフェノールエーテル等のアルキルフェノールにアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、(4)ポリオキシエチレン(n=5)オクチルアミノエーテル、ポリオキシエチレン(n=8)ラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレン(n=20)ステアリルアミノエーテル等の飽和又は不飽和脂肪族アミンにアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンアミノエーテル等が挙げられる。これらの非イオン界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。非イオン性界面活性剤の含有比率に制限はない。
【0028】
本実施形態の短繊維用処理剤が適用される短繊維は、一般にステープルと呼ばれるものが該当し、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維を含まないものとする。また、本実施形態における短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下であることが好ましく、51mm以下であることがより好ましい。繊維種としては、木綿繊維、曝し処理された木綿繊維などの天然繊維、ビスコースレーヨン繊維、強力レーヨン繊維、高強力レーヨン繊維、高湿潤弾性レーヨン繊維、溶剤紡糸レーヨン繊維、ポリノジック繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維等の再生繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維、2種類以上の熱可塑性樹脂からなる複合繊維等の合成繊維が挙げられる。これらの中でもビスコースレーヨン繊維、強力レーヨン繊維、高強力レーヨン繊維、高湿潤弾性レーヨン繊維、溶剤紡糸レーヨン繊維等が好ましく、ビスコースレーヨン繊維が特に好ましい。
【0029】
第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の短繊維用処理剤は、特定の脂肪酸誘導体と、特定の脂肪酸及び特定の油脂から選ばれる少なくとも一つと、特定の多価アルコールとを含む。したがって、短繊維用処理剤が付着した短繊維を水流交絡した際に、水流交絡に使用した水の脱落気泡性を向上させることができる。それにより、不織布作製工程において、操業効率を向上できる。
【0030】
(第2実施形態)
本発明に係る短繊維を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態の短繊維は、第1実施形態の短繊維用処理剤が付着している短繊維である。短繊維用処理剤の付着方法としては、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、ローラー法等を適用することができる。また、付着させる工程としては、特に限定されないが、例えば精錬工程の後工程、紡績工程等が挙げられる。
【0031】
本実施形態の短繊維用処理剤で処理する短繊維は、前記のものを適用することができる。
第1実施形態の短繊維用処理剤を短繊維に付着させる際の形態としては、例えば有機溶媒溶液、水性液等が挙げられる。短繊維の処理方法は、第1実施形態の短繊維用処理剤を水で希釈して濃度0.5〜20質量%の水性液となし、該水性液を短繊維に対し、溶媒を含まない第1実施形態の短繊維用処理剤として0.1〜1質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。
【0032】
(第3実施形態)
本発明に係るスパンレース不織布の製造方法を具体化した第3実施形態について説明する。
【0033】
スパンレース不織布は、ウェブ形成工程(工程1)と、水流交絡工程(工程2)を順に経ることにより製造される。
(ウェブ形成工程)
ウェブ形成工程は、上記短繊維用処理剤が付着した短繊維にカーディングを行い、ウェブを製造する工程である。カーディングは、公知のカード機を用いて行うことができる。例えばフラットカード、コンビネーションカード、ローラーカード等が挙げられる。
【0034】
(水流交絡工程)
水流交絡工程は、ウェブ形成工程により得られたウェブを水流にて交絡させる工程である。ウェブに高圧水流を照射し、水流の圧力によって繊維同士を絡み合わせてシート状にすることができる。水流交絡工程を行った後、適宜、乾燥工程や巻取り工程を行ってもよい。
【0035】
第2,3実施形態によれば、上記(1)の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(2)水流交絡で使用した水の脱落気泡性を向上させることができるため、水流交絡で使用した水を循環させて水流交絡を行う際に、水流交絡を好適に行うことができる。したがって、スパンレース不織布の地合を良好にすることができる。
【0036】
(3)短繊維用処理剤を付着させた短繊維の綿臭気を少なくすることができる。
第1実施形態〜第3実施形態は、以下のように変更して実施することができる。第1実施形態〜第3実施形態、及び、以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0037】
・上記実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、その他成分として、処理剤の品質保持のための酸化防止剤、紫外線吸収剤などの通常処理剤に用いられる成分を更に配合しても良い。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0039】
試験区分1(短繊維用処理剤の調製)
(実施例1)
短繊維用処理剤の原料として、以下の材料を用いた。なお、各成分の数値は、短繊維用処理剤中の含有量を示す。
【0040】
脂肪酸誘導体:ポリオキシエチレン(n=20)オレート(A−1)20%
油脂:牛脂(B−1)5%
多価アルコール:エチレングリコール(C−1)70%
潤滑剤:ステアリルステアレート(D−1)2%
アニオン界面活性剤:ラウリルリン酸エステルカリウム塩(E−1)3%
上記配合比率となるように調製した短繊維用処理剤100部に水900部を加え、50℃で撹拌し、短繊維用処理剤を10%有する水性液を調製した。
【0041】
(実施例2〜15、及び、比較例1〜6)
表1に示す材料及び配合比率を採用したこと以外は、実施例1と同様に短繊維用処理剤を調製した。また、実施例1と同様に短繊維用処理剤を10%有する水性液を得た。表1において、各例で使用した各成分の種類、処理剤中における各成分の含有比率(%)を示した。
【0042】
試験区分2(ビスコースレーヨン繊維(短繊維)への短繊維用処理剤の付着)
表1に記載した各例の短繊維用処理剤の水性液をさらに希釈して、短繊維用処理剤の0.2%エマルジョンを調製した。このエマルジョンを、繊度1.3×10
−4g/m(1.2デニール)で繊維長38mmのビスコースレーヨン繊維に付着量(溶媒を除く)が0.2質量%となるようスプレー給油で付着させた。その後、80℃の熱風乾燥機で25℃×40%RHの雰囲気下、一夜調湿して、短繊維用処理剤を付着させたビスコースレーヨン繊維を得た。
【0043】
試験区分3(短繊維用処理剤の評価)
(評価試験)
実施例1〜15、及び、比較例1〜6の短繊維用処理剤を付着させたビスコースレーヨン繊維を用いて、脱落気泡性試験を行った。このビスコースレーヨン繊維を用いて、綿臭気試験を行った。各試験の手順について以下に示す。また、試験結果を表1に示す。
【0044】
(脱落気泡性試験)
まず、ビスコースレーヨン繊維20gを150gの水に投入し、15分後にハンドジューサーを用いて処理綿を絞った。この絞り液10gを25ml共栓付メスシリンダーにいれて30秒間強振し、30秒間静置した後、再度30秒間強振した。5分間静置した後、水面から泡の上面までの高さを測った。
【0045】
脱落気泡性試験の評価基準
◎;水面から泡の上面までの高さが1mm未満。
○;水面から泡の上面までの高さが1mm以上且つ2mm未満。
【0046】
×;水面から泡の上面までの高さが2mm以上。
(綿臭気試験)
ビスコースレーヨン繊維20gを150gの水の投入し、30分間密閉した後に臭気を嗅いだ。綿臭気試験は、10人の試験者に対して行った。
【0047】
綿臭気試験の評価基準
◎;2人以下が臭気有りと判定。
○;3〜6人が臭気有りと判定。
【0048】
×;7人以上が臭気有りと判定。
【0049】
【表1】
表1において、
A−1:ポリオキシエチレン(n=20)オレート、
A−2:ポリオキシエチレン(n=5)ステアレート、
A−3:ポリオキシエチレン(n=10)ステアレート、
A−4:ポリエチレングリコール(分子量400)ジラウレート、
A−5:ポリエチレングリコール(分子量1000)ジステアレート、
A−6:ヤシ脂肪酸とエチレンオキサイド10モルとの反応物、
A−7:ポリエチレングリコール(分子量600)ジオレート、
A−8:ポリオキシエチレン(n=10)オレート、
A−9:ポリオキシエチレン(n=30)オレート、
A−10:ポリエチレングリコール(分子量400)モノオレート、
B−1:牛脂、
B−2:ステアリン酸、
B−3:パルミチン酸、
B−4:ヤシ油、
B−5:パーム油、
B−6:ベヘニン酸、
B−7:パーム硬化油、
B−8:ひまし硬化油、
B−9:ひまし油、
B−10:オレイン酸、
B−11:豚脂、
B−12:トール油、
B−13:ラウリン酸、
B−14:ヤシ脂肪酸、
C−1:エチレングリコール、
C−2:ポリエチレングリコール(分子量400)、
C−3:ポリプロピレングリコール(分子量600)、
C−4:プロピレングルコール、
C−5:ポリエチレングリコール(分子量600)、
C−6:プロピレングリコールとアルキレンオキサイドの反応物(平均分子量3000)、
C−7:ポリエチレングリコール(分子量2000)、
C−8:ソルビタン、
C−9:ソルビトール、
C−10:グリセリン、
D−1:ステアリルステアレート、
D−2:鉱物油(粘度500秒)、
D−3:ジメチルシリコーン、
D−4:鉱物油(粘度180秒)、
D−5:アミノシリコーン、
D−6:パラフィンワックス、
D−7:鉱物油(粘度60秒)、
D−8:グリセリンモノオレート、
D−9:鉱物油(粘度80秒)、
D−10:ソルビタントリステアレート、
D−11:ソルビタンモノステアレート、
E−1:ラウリルリン酸エステルカリウム塩、
E−2:ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、
E−3:テトラデカンスルホネートナトリウム塩、
E−4:オレイン酸ナトリウム、
E−5:牛脂硫酸エステルナトリウム塩、
E−6:ステアリン酸カリウム、
F−1:ポリオキシエチレン(n=5)ステアリルエーテル、
F−2:ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタンモノステアレート、
F−3:ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタントリステアレート、
F−4:ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタンモノステアレート、を示す。
【0050】
表1の結果から明らかなように、本発明によれば、水流交絡で使用した水の脱落気泡性を向上させることができるという効果がある。また、短繊維用処理剤を付着させた繊維の綿臭気を少なくすることができるという効果がある。
【手続補正書】
【提出日】2019年4月1日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の脂肪酸誘導体と、下記の脂肪酸及び下記の油脂から選ばれる少なくとも一つと、下記の多価アルコール(ポリオキシエチレン(オキシエチレン単位の数20)ポリオキシプロピレン(オキシプロピレン単位の数30)グリコールを除く)とを含むことを特徴とする短繊維用処理剤。
脂肪酸誘導体:炭素数12〜24の脂肪酸1モルに対し、アルキレンオキシドを0.1〜30モルの割合で付加させた構造のもの。
脂肪酸:炭素数12〜24の脂肪酸。
油脂:植物油、動物油、及びこれらの硬化油から選ばれる少なくとも一つ。
多価アルコール:分子中に2〜6個の水酸基を有する多価アルコール。
【請求項2】
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、並びに前記多価アルコールの含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5〜99.89質量部、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、並びに前記多価アルコールを0.1〜90質量部の割合で含有する請求項1記載の短繊維用処理剤。
【請求項3】
更に炭化水素化合物、エステル(前記油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも一つの潤滑剤を含む請求項1記載の短繊維用処理剤。
【請求項4】
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記多価アルコール、並びに前記潤滑剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5〜98.89質量部、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、前記多価アルコールを0.1〜90質量部、並びに前記潤滑剤を1〜20質量部の割合で含有する請求項3記載の短繊維用処理剤。
【請求項5】
更にアニオン界面活性剤を含有する請求項1記載の短繊維用処理剤。
【請求項6】
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記多価アルコール、並びに前記アニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5〜98.89質量部、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、前記多価アルコールを0.1〜90質量部、並びに前記アニオン界面活性剤を1〜20質量部の割合で含有する請求項5記載の短繊維用処理剤。
【請求項7】
更にアニオン界面活性剤を含有する請求項3に記載の短繊維用処理剤。
【請求項8】
前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記多価アルコール、前記アニオン界面活性剤、並びに前記潤滑剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5〜97.89質量部、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、前記多価アルコールを0.1〜90質量部、並びに前記アニオン界面活性剤を1〜20質量部、並びに前記潤滑剤を1〜20質量部の割合で含有する請求項7記載の短繊維用処理剤。
【請求項9】
短繊維が、ビスコースレーヨンである請求項1〜8のいずれか一項記載の短繊維用処理剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項記載の短繊維用処理剤が付着していることを特徴とする短繊維。
【請求項11】
下記の工程1〜2を含むことを特徴とするスパンレース不織布の製造方法。
工程1:請求項10記載の短繊維にカーディングを行い、ウェブを製造する工程。
工程2:工程1で得られたウェブを水流にて交絡させる工程。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短繊維用処理剤、短繊維用処理剤が付着した短繊維、及び、短繊維用処理剤が付着した短繊維を用いたスパンレース不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、不織布に使用される原料繊維として、木綿繊維等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、ポリオレフィン等の合成繊維が用いられている。原料繊維において、不織布を製造する際に必要とされる潤滑性、集束性等の各種特性を付与する観点から、原料繊維の表面に界面活性剤等を含有する不織布用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
【0003】
従来、特許文献1、2に開示される不織布用処理剤が知られている。特許文献1は、不織布用処理剤として、鉱物油、脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル等を含む構成について開示する。特許文献2は、高圧水流絡合用繊維処理剤として、多価アルコール脂肪酸エステルサルフェート塩、鉱物油、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル等を含む構成について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/104106号
【特許文献2】特許第6096061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これら従来の不織布用処理剤は、不織布製造工程の水流交絡に使用した水の脱落気泡性が十分ではないという課題を有している。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水流交絡に使用した水の脱落気泡性を向上させることができる短繊維用処理剤を提供することにある。また、この短繊維用処理剤が付着した短繊維を提供することにある。また、この短繊維用処理剤が付着した短繊維を用いたスパンレース不織布の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の脂肪酸誘導体、特定の脂肪酸又は油脂、及び特定の多価アルコールを含有して成る短繊維用処理剤が正しく好適であることを見出した。
【0007】
上記課題を解決するための短繊維用処理剤は、下記の脂肪酸誘導体と、下記の脂肪酸及び下記の油脂から選ばれる少なくとも一つと、下記の多価アルコール
(ポリオキシエチレン(オキシエチレン単位の数20)ポリオキシプロピレン(オキシプロピレン単位の数30)グリコールを除く)とを含むことを要旨とする。脂肪酸誘導体:炭素数12〜24の脂肪酸1モルに対し、アルキレンオキシドを0.1〜30モルの割合で付加させた構造のもの。脂肪酸:炭素数12〜24の脂肪酸。油脂:植物油、動物油、及びこれらの硬化油から選ばれる少なくとも一つ。多価アルコール:分子中に2〜6個の水酸基を有する多価アルコール。
【0008】
上記短繊維用処理剤について、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、並びに前記多価アルコールの含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5〜99.89質量部、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、並びに前記多価アルコールを0.1〜90質量部の割合で含有することが好ましい。
【0009】
上記短繊維用処理剤について、更に炭化水素化合物、エステル(前記油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも一つの潤滑剤を含むことが好ましい。
上記短繊維用処理剤について、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記多価アルコール、並びに前記潤滑剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5〜98.89質量部、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、前記多価アルコールを0.1〜90質量部、並びに前記潤滑剤を1〜20質量部の割合で含有することが好ましい。
【0010】
上記短繊維用処理剤について、更にアニオン界面活性剤を含有することが好ましい。
上記短繊維用処理剤について、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記多価アルコール、並びに前記アニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5〜98.89質量部、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、前記多価アルコールを0.1〜90質量部、並びに前記アニオン界面活性剤を1〜20質量部の割合で含有することが好ましい。
【0011】
上記潤滑剤を配合する短繊維用処理剤について、更にアニオン界面活性剤を含有することが好ましい。
上記短繊維用処理剤について、前記脂肪酸誘導体、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つ、前記多価アルコール、前記アニオン界面活性剤、並びに前記潤滑剤の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸誘導体を5〜97.89質量部、前記脂肪酸及び前記油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、前記多価アルコールを0.1〜90質量部、並びに前記アニオン界面活性剤を1〜20質量部、並びに前記潤滑剤を1〜20質量部の割合で含有することが好ましい。
【0012】
上記短繊維用処理剤について、短繊維が、ビスコースレーヨンであることが好ましい。
上記課題を解決するための短繊維は、上記短繊維用処理剤が付着していることを要旨とする。
【0013】
上記課題を解決するためのスパンレース不織布の製造方法は、下記の工程1〜2を含むことを要旨とする。工程1:上記短繊維にカーディングを行い、ウェブを製造する工程。工程2:工程1で得られたウェブを水流にて交絡させる工程。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、短繊維用処理剤が付着した短繊維を水流交絡した際に、水流交絡に使用した水の脱落気泡性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
本発明に係る短繊維用処理剤を具体化した第1実施形態について説明する。短繊維用処理剤は、下記の脂肪酸誘導体と、下記の脂肪酸及び下記の油脂から選ばれる少なくとも一つと、下記の多価アルコールとを含む。
【0016】
脂肪酸誘導体は、炭素数12〜24の脂肪酸1モルに対し、アルキレンオキシドを0.1〜30モルの割合で付加させた構造のものである。上記脂肪酸誘導体の具体例としては、例えば、(1)ポリオキシエチレン(オキシエチレン単位の数(エチレンオキサイドの付加モル数)20、以下n=20とする)オレート、ポリオキシエチレン(n=10)オレート、ポリオキシエチレン(n=30)オレート、ポリオキシエチレン(n=5)ステアレート、ポリオキシエチレン(n=10)ステアレート、ポリオキシエチレン(n=10)ラウリルエステル、ポリオキシアルキレン(n=10、オキシプロピレン単位の数(プロピレンオキサイドの付加モル数)10、以下m=10とする)ステアリルエステル等の飽和又は不飽和脂肪酸にアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンアルキル(又はアルキレン)エステル、(2)ポリエチレングリコール(分子量400)モノオレート、ポリエチレングリコール(分子量600)ジオレート、ポリエチレングリコール(分子量1000)モノステアレート、ポリエチレングリコール(分子量400)ジラウレート、ポリエチレングリコール(分子量1000)ジステアレート等の飽和又は不飽和脂肪酸にポリアルキレングリコールを付加反応させて得られるポリアルキレングリコールアルキル(又はアルキレン)エステル、(3)ポリオキシエチレン(n=30)ひまし油エステル、ポリオキシアルキレン(n=10、m=10)ひまし油エステル、ポリオキシエチレン(n=10)硬化ひまし油エステル、ヤシ脂肪酸とエチレンオキサイド10モルとの反応物等の油脂にアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンの油脂エステル等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、アルキレンオキサイドとして、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを有する場合、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0017】
脂肪酸は、炭素数12〜24の脂肪酸である。炭素数12〜24の脂肪酸の具体例としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、ヤシ脂肪酸等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
油脂は、植物油、動物油、及びこれらの硬化油から選ばれる少なくとも一つである。油脂の具体例としては、例えば、ひまし油、ごま油、トール油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、菜種油、豚脂、牛脂、鯨油、これらの硬化油等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
多価アルコールは、分子中に2〜6個の水酸基を有する多価アルコールである。
本実施形態においては、さらにポリオキシエチレン(オキシエチレン単位の数20)ポリオキシプロピレン(オキシプロピレン単位の数30)グリコールを除く多価アルコールが適用される。多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコールとアルキレンオキサイドの反応物等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
本実施形態の短繊維用処理剤は、処理剤中の上述した脂肪酸誘導体と、脂肪酸と、油脂、多価アルコールの含有比率に制限はない。上述した脂肪酸誘導体、脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つ、並びに多価アルコールの含有割合の合計を100質量部とすると、脂肪酸誘導体を5〜99.89質量部、脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、並びに多価アルコールを0.1〜90質量部の割合で含有して成ることが好ましい。かかる構成の場合、本発明の効果をより向上させることができる。
【0021】
本実施形態の短繊維用処理剤は、更に炭化水素化合物、エステル(前記油脂を除く)、及びシリコーンから選ばれる少なくとも一種の潤滑剤を含有することが好ましい。この潤滑剤を配合することにより、本発明の効果をより向上させることができる。これらの潤滑剤成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
炭化水素化合物の具体例としては、例えば鉱物油、パラフィンワックス等が挙げられる。
エステルの具体例としては、例えばブチルステアレート、ステアリルステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリントリオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート等が挙げられる。
【0023】
シリコーンの具体例としては、例えばジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等が挙げられる。
本実施形態の短繊維用処理剤は、処理剤中の上述した脂肪酸誘導体と、脂肪酸と、油脂、多価アルコールと、潤滑剤の含有比率に制限はない。上述した脂肪酸誘導体、脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つ、多価アルコール、並びに潤滑剤の含有割合の合計を100質量部とすると、脂肪酸誘導体を5〜98.89質量部、脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、多価アルコールを0.1〜90質量部、並びに潤滑剤を1〜20質量部の割合で含有して成ることが好ましい。かかる構成の場合、本発明の効果をより向上させることができる。
【0024】
本実施形態の短繊維用処理剤は、更にアニオン界面活性剤を含有して成ることが好ましい。このアニオン界面活性剤を配合することにより、本発明の効果をより向上させることができる。アニオン界面活性剤の種類に特に限定は無いが、例えば、(1)ラウリルリン酸エステルアルカリ金属塩、セチルリン酸エステルアルカリ金属塩、オレイルリン酸エステルアルカリ金属塩、ステアリルリン酸エステルアルカリ金属塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステルのアルカリ金属塩、(2)ポリオキシエチレン(n=5)ラウリルエーテルリン酸エステルのアルカリ金属塩、ポリオキシエチレン(n=5)オレイルエーテルリン酸エステルのアルカリ金属塩、ポリオキシエチレン(n=10)ステアリルエーテルリン酸エステルのアルカリ金属塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステルのアルカリ金属塩、(3)ラウリルスルホン酸エステルのアルカリ金属塩、オレイルスルホン酸エステルのアルカリ金属塩、ステアリルスルホン酸エステルのアルカリ金属塩、テトラデカンスルホン酸のアルカリ金属塩等の脂肪族アルコールのスルホン酸エステルのアルカリ金属塩、(4)ラウリル硫酸エステルのアルカリ金属塩、オレイル硫酸エステルのアルカリ金属塩、ステアリル硫酸エステルのアルカリ金属塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステルのアルカリ金属塩、(5)ポリオキシエチレン(n=3)ラウリルエーテル硫酸エステルのアルカリ金属塩、ポリオキシエチレン(n=5)ラウリルエーテル硫酸エステルのアルカリ金属塩、ポリオキシアルキレン(n=3、m=3)ラウリルエーテル硫酸エステルのアルカリ金属塩、ポリオキシエチレン(n=3)オレイルエーテル硫酸エステルのアルカリ金属塩、ポリオキシエチレン(n=5)オレイルエーテル硫酸エステルのアルカリ金属塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステルのアルカリ金属塩、(6)ひまし油脂肪酸硫酸エステルのアルカリ金属塩、ごま油脂肪酸硫酸エステルのアルカリ金属塩、トール油脂肪酸硫酸エステルのアルカリ金属塩、大豆油脂肪酸硫酸エステルのアルカリ金属塩、なたね油脂肪酸硫酸エステルのアルカリ金属塩、パーム油脂肪酸硫酸エステルのアルカリ金属塩、豚脂脂肪酸硫酸エステルのアルカリ金属塩、牛脂脂肪酸硫酸エステルのアルカリ金属塩、鯨油脂肪酸硫酸エステルのアルカリ金属塩等の脂肪酸の硫酸エステルのアルカリ金属塩、(7)ひまし油の硫酸エステルのアルカリ金属塩、ごま油の硫酸エステルのアルカリ金属塩、トール油の硫酸エステルのアルカリ金属塩、大豆油の硫酸エステルのアルカリ金属塩、菜種油の硫酸エステルのアルカリ金属塩、パーム油の硫酸エステルのアルカリ金属塩、豚脂の硫酸エステルのアルカリ金属塩、牛脂の硫酸エステルのアルカリ金属塩、鯨油の硫酸エステルのアルカリ金属塩等の油脂の硫酸エステルのアルカリ金属塩、(8)ラウリン酸のアルカリ金属塩、オレイン酸のアルカリ金属塩、ステアリン酸のアルカリ金属塩等の脂肪酸のアルカリ金属塩、(9)ジオクチルスルホコハク酸のアルカリ金属塩等の脂肪族アルコールのスルホコハク酸エステルのアルカリ金属塩等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本実施形態の短繊維用処理剤は、処理剤中の上述した脂肪酸誘導体と、脂肪酸と、油脂、多価アルコールと、アニオン界面活性剤の含有比率に制限はない。上述した脂肪酸誘導体、脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つ、多価アルコール、並びにアニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量部とすると、脂肪酸誘導体を5〜98.89質量部、脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、多価アルコールを0.1〜90質量部、並びにアニオン界面活性剤を1〜20質量部の割合で含有して成ることが好ましい。かかる構成の場合、本発明の効果をより向上させることができる。
【0026】
本実施形態の短繊維用処理剤は、処理剤中の上述した脂肪酸誘導体と、脂肪酸と、油脂、多価アルコールと、アニオン界面活性剤と、潤滑剤の含有比率に制限はない。上述した脂肪酸誘導体、脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つ、多価アルコール、アニオン界面活性剤、並びに前記潤滑剤の含有割合の合計を100質量部とすると、脂肪酸誘導体を5〜97.89質量部、脂肪酸及び油脂から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部、多価アルコールを0.1〜90質量部、並びにアニオン界面活性剤を1〜20質量部、並びに潤滑剤を1〜20質量部の割合で含有して成ることが好ましい。かかる構成の場合、本発明の効果をより向上させることができる。
【0027】
本実施形態の短繊維用処理剤は、その他成分として、更に上記以外の非イオン性界面活性剤を含有して成ることが好ましい。上記以外の非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えば(1)ポリオキシエチレン(n=10)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(n=20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(n=30)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(n=10)アルキル(炭素数12−13)エーテル、ポリオキシアルキレン(n=10、m=10)ラウリルエーテル等の飽和又は不飽和脂肪族1価アルコールにアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル、(2)ポリオキシエチレン(n=10)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタントリステアレート等の脂肪族多価アルコールにアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル、(3)ポリオキシエチレン(n=10)オクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン(n=10)ノニルフェノールエーテル等のアルキルフェノールにアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、(4)ポリオキシエチレン(n=5)オクチルアミノエーテル、ポリオキシエチレン(n=8)ラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレン(n=20)ステアリルアミノエーテル等の飽和又は不飽和脂肪族アミンにアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンアミノエーテル等が挙げられる。これらの非イオン界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。非イオン性界面活性剤の含有比率に制限はない。
【0028】
本実施形態の短繊維用処理剤が適用される短繊維は、一般にステープルと呼ばれるものが該当し、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維を含まないものとする。また、本実施形態における短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下であることが好ましく、51mm以下であることがより好ましい。繊維種としては、木綿繊維、曝し処理された木綿繊維などの天然繊維、ビスコースレーヨン繊維、強力レーヨン繊維、高強力レーヨン繊維、高湿潤弾性レーヨン繊維、溶剤紡糸レーヨン繊維、ポリノジック繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維等の再生繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維、2種類以上の熱可塑性樹脂からなる複合繊維等の合成繊維が挙げられる。これらの中でもビスコースレーヨン繊維、強力レーヨン繊維、高強力レーヨン繊維、高湿潤弾性レーヨン繊維、溶剤紡糸レーヨン繊維等が好ましく、ビスコースレーヨン繊維が特に好ましい。
【0029】
第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の短繊維用処理剤は、特定の脂肪酸誘導体と、特定の脂肪酸及び特定の油脂から選ばれる少なくとも一つと、特定の多価アルコールとを含む。したがって、短繊維用処理剤が付着した短繊維を水流交絡した際に、水流交絡に使用した水の脱落気泡性を向上させることができる。それにより、不織布作製工程において、操業効率を向上できる。
【0030】
(第2実施形態)
本発明に係る短繊維を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態の短繊維は、第1実施形態の短繊維用処理剤が付着している短繊維である。短繊維用処理剤の付着方法としては、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、ローラー法等を適用することができる。また、付着させる工程としては、特に限定されないが、例えば精錬工程の後工程、紡績工程等が挙げられる。
【0031】
本実施形態の短繊維用処理剤で処理する短繊維は、前記のものを適用することができる。
第1実施形態の短繊維用処理剤を短繊維に付着させる際の形態としては、例えば有機溶媒溶液、水性液等が挙げられる。短繊維の処理方法は、第1実施形態の短繊維用処理剤を水で希釈して濃度0.5〜20質量%の水性液となし、該水性液を短繊維に対し、溶媒を含まない第1実施形態の短繊維用処理剤として0.1〜1質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。
【0032】
(第3実施形態)
本発明に係るスパンレース不織布の製造方法を具体化した第3実施形態について説明する。
【0033】
スパンレース不織布は、ウェブ形成工程(工程1)と、水流交絡工程(工程2)を順に経ることにより製造される。
(ウェブ形成工程)
ウェブ形成工程は、上記短繊維用処理剤が付着した短繊維にカーディングを行い、ウェブを製造する工程である。カーディングは、公知のカード機を用いて行うことができる。例えばフラットカード、コンビネーションカード、ローラーカード等が挙げられる。
【0034】
(水流交絡工程)
水流交絡工程は、ウェブ形成工程により得られたウェブを水流にて交絡させる工程である。ウェブに高圧水流を照射し、水流の圧力によって繊維同士を絡み合わせてシート状にすることができる。水流交絡工程を行った後、適宜、乾燥工程や巻取り工程を行ってもよい。
【0035】
第2,3実施形態によれば、上記(1)の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(2)水流交絡で使用した水の脱落気泡性を向上させることができるため、水流交絡で使用した水を循環させて水流交絡を行う際に、水流交絡を好適に行うことができる。したがって、スパンレース不織布の地合を良好にすることができる。
【0036】
(3)短繊維用処理剤を付着させた短繊維の綿臭気を少なくすることができる。
第1実施形態〜第3実施形態は、以下のように変更して実施することができる。第1実施形態〜第3実施形態、及び、以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0037】
・上記実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、その他成分として、処理剤の品質保持のための酸化防止剤、紫外線吸収剤などの通常処理剤に用いられる成分を更に配合しても良い。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0039】
試験区分1(短繊維用処理剤の調製)
(実施例1)
短繊維用処理剤の原料として、以下の材料を用いた。なお、各成分の数値は、短繊維用処理剤中の含有量を示す。
【0040】
脂肪酸誘導体:ポリオキシエチレン(n=20)オレート(A−1)20%
油脂:牛脂(B−1)5%
多価アルコール:エチレングリコール(C−1)70%
潤滑剤:ステアリルステアレート(D−1)2%
アニオン界面活性剤:ラウリルリン酸エステルカリウム塩(E−1)3%
上記配合比率となるように調製した短繊維用処理剤100部に水900部を加え、50℃で撹拌し、短繊維用処理剤を10%有する水性液を調製した。
【0041】
(実施例2〜15、及び、比較例1〜6)
表1に示す材料及び配合比率を採用したこと以外は、実施例1と同様に短繊維用処理剤を調製した。また、実施例1と同様に短繊維用処理剤を10%有する水性液を得た。表1において、各例で使用した各成分の種類、処理剤中における各成分の含有比率(%)を示した。
【0042】
試験区分2(ビスコースレーヨン繊維(短繊維)への短繊維用処理剤の付着)
表1に記載した各例の短繊維用処理剤の水性液をさらに希釈して、短繊維用処理剤の0.2%エマルジョンを調製した。このエマルジョンを、繊度1.3×10
−4g/m(1.2デニール)で繊維長38mmのビスコースレーヨン繊維に付着量(溶媒を除く)が0.2質量%となるようスプレー給油で付着させた。その後、80℃の熱風乾燥機で25℃×40%RHの雰囲気下、一夜調湿して、短繊維用処理剤を付着させたビスコースレーヨン繊維を得た。
【0043】
試験区分3(短繊維用処理剤の評価)
(評価試験)
実施例1〜15、及び、比較例1〜6の短繊維用処理剤を付着させたビスコースレーヨン繊維を用いて、脱落気泡性試験を行った。このビスコースレーヨン繊維を用いて、綿臭気試験を行った。各試験の手順について以下に示す。また、試験結果を表1に示す。
【0044】
(脱落気泡性試験)
まず、ビスコースレーヨン繊維20gを150gの水に投入し、15分後にハンドジューサーを用いて処理綿を絞った。この絞り液10gを25ml共栓付メスシリンダーにいれて30秒間強振し、30秒間静置した後、再度30秒間強振した。5分間静置した後、水面から泡の上面までの高さを測った。
【0045】
脱落気泡性試験の評価基準
◎;水面から泡の上面までの高さが1mm未満。
○;水面から泡の上面までの高さが1mm以上且つ2mm未満。
【0046】
×;水面から泡の上面までの高さが2mm以上。
(綿臭気試験)
ビスコースレーヨン繊維20gを150gの水の投入し、30分間密閉した後に臭気を嗅いだ。綿臭気試験は、10人の試験者に対して行った。
【0047】
綿臭気試験の評価基準
◎;2人以下が臭気有りと判定。
○;3〜6人が臭気有りと判定。
【0048】
×;7人以上が臭気有りと判定。
【0049】
【表1】
表1において、
A−1:ポリオキシエチレン(n=20)オレート、
A−2:ポリオキシエチレン(n=5)ステアレート、
A−3:ポリオキシエチレン(n=10)ステアレート、
A−4:ポリエチレングリコール(分子量400)ジラウレート、
A−5:ポリエチレングリコール(分子量1000)ジステアレート、
A−6:ヤシ脂肪酸とエチレンオキサイド10モルとの反応物、
A−7:ポリエチレングリコール(分子量600)ジオレート、
A−8:ポリオキシエチレン(n=10)オレート、
A−9:ポリオキシエチレン(n=30)オレート、
A−10:ポリエチレングリコール(分子量400)モノオレート、
B−1:牛脂、
B−2:ステアリン酸、
B−3:パルミチン酸、
B−4:ヤシ油、
B−5:パーム油、
B−6:ベヘニン酸、
B−7:パーム硬化油、
B−8:ひまし硬化油、
B−9:ひまし油、
B−10:オレイン酸、
B−11:豚脂、
B−12:トール油、
B−13:ラウリン酸、
B−14:ヤシ脂肪酸、
C−1:エチレングリコール、
C−2:ポリエチレングリコール(分子量400)、
C−3:ポリプロピレングリコール(分子量600)、
C−4:プロピレングルコール、
C−5:ポリエチレングリコール(分子量600)、
C−6:プロピレングリコールとアルキレンオキサイドの反応物(平均分子量3000)、
C−7:ポリエチレングリコール(分子量2000)、
C−8:ソルビタン、
C−9:ソルビトール、
C−10:グリセリン、
D−1:ステアリルステアレート、
D−2:鉱物油(粘度500秒)、
D−3:ジメチルシリコーン、
D−4:鉱物油(粘度180秒)、
D−5:アミノシリコーン、
D−6:パラフィンワックス、
D−7:鉱物油(粘度60秒)、
D−8:グリセリンモノオレート、
D−9:鉱物油(粘度80秒)、
D−10:ソルビタントリステアレート、
D−11:ソルビタンモノステアレート、
E−1:ラウリルリン酸エステルカリウム塩、
E−2:ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、
E−3:テトラデカンスルホネートナトリウム塩、
E−4:オレイン酸ナトリウム、
E−5:牛脂硫酸エステルナトリウム塩、
E−6:ステアリン酸カリウム、
F−1:ポリオキシエチレン(n=5)ステアリルエーテル、
F−2:ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタンモノステアレート、
F−3:ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタントリステアレート、
F−4:ポリオキシエチレン(n=20)ソルビタンモノステアレート、を示す。
【0050】
表1の結果から明らかなように、本発明によれば、水流交絡で使用した水の脱落気泡性を向上させることができるという効果がある。また、短繊維用処理剤を付着させた繊維の綿臭気を少なくすることができるという効果がある。