【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、請求項1に記載の天秤及び請求項9に記載の方法により解決される。
【0007】
本発明は、測定用抵抗器Rにかかる電圧U
Rの検知に加えて補助測定電圧U
Hを使用することで、過負荷事例がより正確に分析され得るという認識から出発している。本発明に係る補助測定電圧は、
a)出力段の出力側とコイルとの間、又は
b)コイルと測定用抵抗器との間、
にかかる電圧である。
【0008】
変形a)において、補助測定電圧は、好ましくは出力段の出力側で直接測定される。別法として、出力段の出力側とコイルとの間に、例えば爆発防護の目的でさらに保護抵抗が備えられている場合がある。その場合、補助測定電圧の測定は保護抵抗とコイルとの間でも可能である。変形b)においては、構造的に又は電気回路として少し単純化できるが、その場合は補助測定電圧が測定用抵抗器電圧に近い可能性がある。
【0009】
過負荷が生じた場合、補助測定電圧(U
H)が範囲外にあるか、又は属しているアナログ/デジタル変換器の測定用抵抗器電圧(U
R)のために設定された測定範囲内において正しく検出され得る測定用抵抗器の電圧(U
R)の外にある。しかし、本発明に係る補助測定電圧を別々に評価することにより、過負荷は定量的及び/又は定性的に検出され得る。補助測定電圧を検出するための測定範囲は、好ましくは実質的に出力段の最大出力電圧に相当する。
【0010】
この補助測定電圧は、そのために同様にアナログ/デジタル変換器に送られる。この場合、入力電圧を切り替えることにより、測定用抵抗器電圧(U
R)が検出されるのと同じアナログ/デジタル変換器(AD
1)であってよい。もっと高い(又は低い)電圧を検出できるようにするため、異なる、そのために適した測定範囲がアナログ/デジタル変換器で設定されてよい(二つの「上下に重なり合って」配置された、測定用抵抗器電圧(U
R)用及び補助測定電圧(U
H)用の測定範囲も、ここでは「異なる」測定範囲である)。別法として、測定用抵抗器電圧と同様に、補助測定電圧はアナログ/デジタル変換器へ送られる前に好ましくは増幅器Vを使って増幅され、増幅は測定用抵抗器電圧よりも小さく、その結果アナログ/デジタル変換器は変わらずに作動されるが、補助測定電圧は「低減されて」送られ、それゆえに評価が可能である。
【0011】
したがって本発明に係る一実施形態では、補助測定電圧は、通常の稼働では測定用抵抗器の電圧(U
R)を検出する、同じアナログ/デジタル変換器に送られる。そのために、測定用抵抗器電圧(U
R)が企図された測定範囲から外れるか、又は上限付近に来ると、すなわち、予め設定された閾値を超えると、アナログ/デジタル変換器の入力が測定用抵抗器電圧(U
R)から補助測定電圧(U
H)へ切り替えられる。切替は、アナログ/デジタル変換器自体によって開始及び/又は行われ得る。切替スイッチは外部に設けても、アナログ/デジタル変換器の統合部品であってもよい。後者(統合)の場合、アナログ/デジタル変換器には二つの入力接続部を備えることができる。前者(外部)の場合、アナログ/デジタル変換器は切替スイッチ制御用の制御出力部を備えることができる。
【0012】
アナログ/デジタル変換器の入力側に加わる信号源を切り替えることにより、変換器の測定範囲も切り替えられる(例えば変換器の感度を半減させて測定範囲を倍にすることが可能)、又はアナログ/デジタル変換器の測定範囲を変更することなく補助測定電圧の増大が適切に低減される。
【0013】
本発明に係る天秤の別の一実施形態では、測定用抵抗器電圧(U
R)は第一のアナログ/デジタル変換器AD
1に送られ、他方で補助測定電圧(U
H)のために第一のアナログ/デジタル変換器AD
1とは別に形成された第二のアナログ/デジタル変換器AD
2が備えられている。ここで、第二のアナログ/デジタル変換器の測定範囲は、入力される補助測定電圧を検出して評価できるよう最初から十分に大きい範囲を選択できる。別法として、補助測定電圧(U
H)の増幅は、両方のアナログ/デジタル変換器が同じ測定範囲で稼働できるように選択してよい。
【0014】
電磁力平衡式の場合、コイルを規定位置に保つために、出力段に送ることのできる最大補償電流によって「支持荷重」が定義される。負荷がそれを超えた場合、出力段は十分なコイル電流を用意できなくなるため、コイル及び場合によってこれを支持するてこ機構が動いて規定位置から離れてしまう。
【0015】
天秤の過負荷を回避するためには、機械式の過負荷保護装置が公知である。これは、てこ機構を保護し、及びてこ機構又は別の天秤部品の(場合により不可逆の)変形を機械的に阻止する。しかし、測定用抵抗器電圧(U
R)が属しているアナログ/デジタル変換器の測定範囲の外にある場合は、計量技術的な観点における過負荷は定義に従ってすでに想定されている。したがって、天秤の機構を危険にさらす機械的な過負荷は存在しないはずである。しかし、アナログ/デジタル変換器の測定範囲を外れることにより、コイルで生成された力は、測定用抵抗器電圧(U
R)ではもはや定量的に特定することはできない。
【0016】
機械式過負荷保護装置は、好ましくは、永続的な損傷が生じる前に(場合によっては生じて初めて)作用するよう設計されている。好ましくは、支持荷重又は出力段の最大出力電圧にはまだ達しておらず、コイル又はそのてこはまだ規定位置から離れていない。なぜなら出力段はコイルのために十分な補償電流を供給できるからである。この場合、抵抗電圧(U
R)は属しているアナログ/デジタル変換器の測定範囲の外にあるが、測定された補助測定電圧(U
H)は、アナログ/デジタル変換器内において、より大きな測定範囲を使って、又は増幅を低減することによって定量的に評価され、それによって過負荷が以下のように分析できる。
【0017】
天秤の通常働中は、上述のように、天秤に加えられた圧縮荷重又は引張荷重により、抵抗測定電圧(U
R)は、属しているアナログ/デジタル変換器の測定範囲内となる。重さがさらに増大すると、それに応じて抵抗測定電圧も上昇する。アナログ/デジタル変換器の測定範囲から外れると、コイル電流の特定は不可能になる。しかし秤台に作用を及ぼす力(負荷)が増加/減少(負荷伝達)すると、測定される補助測定電圧も上昇する。
【0018】
この補助測定電圧は、例えば負荷力が増加している場合、出力段の最大出力電圧に達するまで、及び/又は機械式過負荷保護装置が作動するまで、さらに上昇する。出力段の最大出力電圧に達する前に過負荷保護装置が作動すると、コイル電流が最大値に達し、補助測定電圧はもはや上昇しなくなり、実質的に一定に保たれる。その推移とその最大値により、作動力と過負荷保護装置の機能性を推測できる。
【0019】
補助測定電圧の推移及び/又は大きさから過負荷保護装置についての知見が得られ、その際に予め設定可能な、目的に合わせて変更も可能な閾値を単に超過しただけの場合、すでに過負荷保護装置の作動を定量的に表示できる。まだ出力段の最大出力電圧に達していない限り補助測定電圧の定量的評価が行われ、過負荷保護装置の作動を引き起こす、特定の負荷値(例えば単位がニュートンの力、グラム、キログラムの重量など)の割り当ても行われる。
【0020】
好ましくは、測定用抵抗器電圧(U
R)及び補助測定電圧(U
H)、又はそれに属しているアナログ/デジタル変換器によって供給されたデジタル値を評価するために、天秤には制御装置が備えられている。この制御装置は、特に、過負荷事例を検出するため、過負荷事例のための閾値を固定又は変動(自動調整)で定義するか又は保存するため、例えば光学的又は音響的警告メッセージを出すため、秤量機能を一時的又は永続的に中断するため(ブロックするため)、及びゼロ点又は較正を決定するか又は要求するか或いは作動させるために形成されていてよい。これはさらに、測定用抵抗器電圧(U
R)及び/又は補助測定電圧(U
H)又はこれから導き出された値又は信号を処理するために、保存するため又はアウトプットするために、又は予め設定可能な閾値の超過を、その種類、回数、大きさ、持続時間、タイミングなどについて検出し評価するために(例えば過負荷保護装置や点びん全体など、天秤の個々の部品の残余寿命の評価)及びそれに基づいて制御信号又はアラーム信号を天秤制御装置、上位の設備制御装置又は作業者へ出力するために、形成されてよい。
【0021】
天秤を稼働させるためのパラメーター、特に過負荷事例を特定するための閾値を定義するためのパラメーターは、適切なインターフェースを介して制御装置又は属しているメモリーユニットに手動で又はデジタルフォーマットで伝送できる。
【0022】
作動閾値又は機械式過負荷保護装置の限界値の機能及び状況を検査するために、補助測定電圧の特定の値を過負荷保護装置の作動に割り当てることができるよう、試験運転において力又は試験負荷(既知の、必要に応じて戻すことができる標準分銅)を秤台に載せることができる(負荷伝達)。反対に、測定用抵抗器電圧(U
R)が属しているアナログ/デジタル変換器の測定範囲の外にあることからは、過負荷について定性的な兆候しか示されない。
【0023】
本発明に係る天秤において過負荷事例を検出するための、本発明に係る方法は、補助測定電圧の検出と評価を含んでいる。それによって、出力段に備えられた負荷範囲内において(最大出力電圧、最大出力電流も同等)及び測定用抵抗器電圧(U
R)のために備えられた測定範囲の上方において、天秤の挙動を分析することが、本発明により可能である。
【0024】
好ましくは、本方法は、補助測定電圧が予め設定可能な限界値を上回るか、又は過負荷事例に相当する時間的経過を示す場合、過負荷信号の出力も含んでいる。後者は、例えば補助測定電圧が、最初、予め設定可能な時間内において一定に保たれる最大値まで単調に上昇する場合であろう。これは機械式過負荷保護装置が作動した兆候であり、この装置は引き続きコイル電流を高めて供給する必要性から出力段を解放する。
【0025】
適切には、本方法は補助測定電圧又はそれに対応する値の出力及び/又は表示及び/又は保存も含む(用語「値」又は「信号」は、本願においては、測定された又は処理された電圧と同じに扱われ、値又は信号として電圧から導き出されるか又はそれに割り当てられ得る。例えばデジタル信号又はアナログ信号は、例えば電圧又は負荷の特徴を表す具体的な(数)値に相当してよい)。
【0026】
この出力は、適切な表示手段(ディスプレイ、モニタ、バイナリ信号など)で行うことができ、閾値に達すると例えば視覚的又は音響的に表示されてもよい。補助測定電圧又はそれに対応する値は、デジタルデータとして適切な上位の制御装置に評価のために伝送可能である。履歴を作成するために、天秤で検出された電圧又はそれに相当する値が、好ましくはタイプスタンプ及びその他の追加情報(例えば温度、湿度、気圧及びそこから導き出された様々なデータ)と共に保存され、必要に応じて出力され得る。
【0027】
過負荷事例によっては、天秤を一時的又は恒久的に稼働休止させたり、又は少なくとも重量のアウトプットを阻止し及び必要に応じて追加の保護対策を有効にすることが必要な場合がある。別法として、天秤に新しいゼロ点を定める、又は天秤を新たに較正する必要があるようにすることも可能である。この必要条件は、過負荷事例を考慮して天秤を最適に稼働させられるよう、本発明に係る方法の範囲において表示され、要求され及び/又は自動的にスタート又は実施され得る。
【0028】
本発明に係る天秤及びそれに属する方法は、例えば納入時状態との比較又は履歴データの取得ができるようにするため、有利には、製造時の品質保証のために及び/又は現場での自己診断のために使用される。
【0029】
以下では、本発明に係る天秤の回路が三つの図で詳細に記述される。