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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-109402(P2020-109402A)
(43)【公開日】2020年7月16日
(54)【発明の名称】過負荷診断付き天秤
(51)【国際特許分類】
   G01G 7/02 20060101AFI20200619BHJP
【FI】
   G01G7/02
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-231177(P2019-231177)
(22)【出願日】2019年12月23日
(31)【優先権主張番号】10 2018 133 563.6
(32)【優先日】2018年12月21日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】506186673
【氏名又は名称】ヴィポテック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・シュルツキ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ゴットフリートゼン
(57)【要約】
【課題】過負荷事例の評価及びそれに応じた天秤の制御を可能にする、及び過負荷保護装置の機能性検査と作動閾値の評価を可能にする、過負荷検知又は過負荷診断を備えた天秤を提供する。
【解決手段】支持コイルと磁石により作動する電磁力平衡式の天秤の過負荷を検出するための装置及び方法である。ここでは測定用抵抗器にかかる測定電圧に加えて、そこから外れる補助電圧が検出及び評価される。これらの電圧は、少なくとも支持コイルと測定用抵抗器に全体としてかかる電圧を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持コイル(L)を備えた電磁力平衡式の天秤であって、
前記支持コイル(L)は磁石(M)に対して可動であり、かつ、該支持コイルには出力段(E)からコイル電流(I)が供給可能であり、その際、
a)前記支持コイル(L)は測定用抵抗器(R)と直列に接続されており、かつ、
b)前記測定用抵抗器(R)にかかる測定用抵抗器電圧(U)が重量測定値を算出するために使用される、天秤において、
c)前記天秤は、低負荷事例及び/又は過負荷事例を検知するために、前記測定用抵抗器電圧(U)を検出及び評価することに加えて、補助測定電圧(U)を検出するよう設計されており、
その際、前記補助測定電圧(U)は、
)前記出力段(E)の前記出力側(A)と前記コイル(L)との間、又は、
)前記コイル(L)と前記測定用抵抗器(R)との間において測定されることを特徴とする、天秤。
【請求項2】
前記測定用抵抗器電圧(U)を第一のアナログ/デジタル変換器(AD)に供給可能であり、かつ、
前記補助測定電圧(U)は、
a)前記第一のアナログ/デジタル変換器(AD)の入力を前記測定用抵抗器電圧(U)と前記補助測定電圧(U)との間において切り替えることにより、前記第一のアナログ/デジタル変換器(AD)に供給可能であり、又は、
b)第一のアナログ/デジタル変換器(AD)に加えて、備えられた第二のアナログ/デジタル変換器(AD)に供給可能であることを特徴とする、請求項1に記載の天秤。
【請求項3】
i)前記第一のアナログ/デジタル変換器(AD)に供給される前記補助測定電圧(U)は、前記測定用抵抗器電圧(U)の増幅(V)よりも小さい増幅(V)を受け、及び/又は、
ii)前記補助測定電圧(U)を測定するための前記第一のアナログ/デジタル変換器(AD)の前記測定範囲(M)は、切替前に前記測定用抵抗器電圧(U)を測定するためとは、異なって、好ましくは大きく、選択される、請求項2、変形a)に記載の天秤。
【請求項4】
i)前記第二のアナログ/デジタル変換器(AD)に供給される前記補助測定電圧(U)は、前記測定用抵抗器電圧(U)の増幅(V)よりも小さい増幅(V)を受け、及び/又は、
ii)前記補助測定電圧(U)を測定するための前記第二のアナログ/デジタル変換器(AD)の前記測定範囲(M)は、前記測定用抵抗器電圧(U)を測定するための前記第一のアナログ/デジタル変換器(AD)の前記測定範囲(M)とは、異なって、好ましくは大きく、選択される、請求項2、変形b)に記載の天秤。
【請求項5】
前記補助測定電圧(U)が予め設定可能な限界値を超過した場合に、過負荷信号を出力するための制御装置(C)を備えていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の天秤。
【請求項6】
機械式過負荷保護装置(T)を備え、
前記天秤は、
a)前記過負荷保護装置の作動力に相当する信号、又は、前記補助測定電圧(U)を評価することにより、そこから導き出された値を生成する、及び/又は
b)前記過負荷保護装置の作動を、前記補助測定電圧(U)を一つ又は複数の予め設定可能な閾値と比較することによって及び/又は前記補助測定電圧(U)の時間的な経過を分析することによって検出する、
ように設計されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の天秤。
【請求項7】
a)検出された電圧(U、U、U)又はそこから生成された信号がメモリに保存可能かつ呼び出し可能であり、及び/又は、
b)予め設定可能な電圧限界値の超過のタイミング及び/又は回数、種類、大きさ及び持続時間、又は生成された信号又は検出された測定値の個数が、制御装置(C)によって検出可能及び/又は評価可能及び/又は出力可能であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の天秤。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の天秤の低負荷事例及び/又は過負荷事例を検出するための方法であって、以下の手順工程、
a)前記補助測定電圧(U)の検出及び評価及び/又は予め設定可能な電圧限界値の超過のタイミング、回数、種類、大きさ及び/又は持続時間、を含む、方法。
【請求項9】
さらに、
b)前記補助測定電圧(U)が、一つ又は複数の予め設定可能な限界値を上回った場合に、過負荷信号を出力すること、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
さらに、
c)前記補助測定電圧及び/又は前記補助測定電圧(U)の一つに相当する値及び/又は少なくとも一つの限界値の超過のタイミング、回数、種類、大きさ及び/又は持続時間を、出力及び/又は表示及び/又は保存するために、及び/又は
d)通常の計量モードの中断のために及び/又はそれぞれ予め設定可能な持続時間、重量値の出力を阻止するために、及び/又は
e)天秤のゼロ点及び/又は較正のために、天秤の制御を含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載の天秤の過負荷保護装置を検査するための方法であって、以下の工程、
a)前記過負荷保護装置の作動力に相当する値を算出、評価、及び必要に応じて前記過負荷保護装置に適合させるために、前記補助測定電圧(U)を検出及び定量的評価すること、
b)一つ又は複数の予め設定可能な限界値と比較して前記過負荷保護装置の作動の結果を算出するために、前記補助測定電圧(U)を検出及び定性的評価すること、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁力平衡式の天秤に関するものである。このような公知の天秤では、重さは、しばしば、力へと変換するてこ機構に伝えられる。この場合、てこのいずれか一つに支持コイルが配置され、これが好ましくは固定された磁石の磁界内に入ると、磁石に対して所与の規定位置を取る。「直接支持」システムにおいても、つまりこのようなてこ機構なしでも、同じ原理で作動する。
【背景技術】
【0002】
重さが異なってもてこ又はコイルを常に規定位置に保つため、磁石の磁界内において作用するローレンツ力を生成するコイル電流がコイルに流されることで、適切に制御された反力がコイルにより生み出される。この電流は、以下では「出力段」と呼ばれる電気ユニットにより供給されるが、このユニットは単極又は双極のコイル供給を形成し得る。制御されたコイル電流の強さは、コイルによって生成される反力の強さの尺度であり、これもやはり、てこ機構にかけられた重さ又は負荷の尺度である。
【0003】
コイル電流を評価するために、測定用抵抗器がコイルに直列に接続され、測定用抵抗器にかかる電圧が、必要に応じて増幅器及び/又はフィルタ(V)又は他の電子部品を使用して前処理され、アナログ/デジタル変換器に送られる。この変換器は入力電圧をデジタル信号に変換し、この信号は評価のために制御装置に送られ、それによって例えば重量値を表示したり、又は重量値に応じて異なる制御動作を作動させる。
【0004】
このように使用されるアナログ/デジタル変換器は、予め設定可能な測定範囲内において作動する。かけられた負荷が、又はそれによって測定用抵抗器にかかる電圧が、この測定範囲の外(下又は上)にある場合は、低負荷事例及び/又は過負荷事例であり(本願に関しては用語「過負荷」は低負荷事例(引張)及び過負荷事例(圧縮)の代わりである)。従来技術においては、過負荷事例は、アナログ/デジタル変換器によって検出された電圧が測定のために用意された測定範囲の外にあるということだけで確認される。過負荷の大きさについては示され得ない。しかし、過負荷の持続時間、大きさ、回数、種類及びタイミングは、秤量と秤量精度に影響を与える。なぜなら天秤は、過負荷事例後にいくらか回復時間を要するか、又はそれどころかゼロ点固定又は再較正を必要とする場合があるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の課題は、過負荷事例の評価及びそれに応じた天秤の制御を可能にする、及び過負荷保護装置の機能性検査と作動閾値の評価を可能にする、過負荷検知又は過負荷診断を備えた天秤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、請求項1に記載の天秤及び請求項9に記載の方法により解決される。
【0007】
本発明は、測定用抵抗器Rにかかる電圧Uの検知に加えて補助測定電圧Uを使用することで、過負荷事例がより正確に分析され得るという認識から出発している。本発明に係る補助測定電圧は、
a)出力段の出力側とコイルとの間、又は
b)コイルと測定用抵抗器との間、
にかかる電圧である。
【0008】
変形a)において、補助測定電圧は、好ましくは出力段の出力側で直接測定される。別法として、出力段の出力側とコイルとの間に、例えば爆発防護の目的でさらに保護抵抗が備えられている場合がある。その場合、補助測定電圧の測定は保護抵抗とコイルとの間でも可能である。変形b)においては、構造的に又は電気回路として少し単純化できるが、その場合は補助測定電圧が測定用抵抗器電圧に近い可能性がある。
【0009】
過負荷が生じた場合、補助測定電圧(U)が範囲外にあるか、又は属しているアナログ/デジタル変換器の測定用抵抗器電圧(U)のために設定された測定範囲内において正しく検出され得る測定用抵抗器の電圧(U)の外にある。しかし、本発明に係る補助測定電圧を別々に評価することにより、過負荷は定量的及び/又は定性的に検出され得る。補助測定電圧を検出するための測定範囲は、好ましくは実質的に出力段の最大出力電圧に相当する。
【0010】
この補助測定電圧は、そのために同様にアナログ/デジタル変換器に送られる。この場合、入力電圧を切り替えることにより、測定用抵抗器電圧(U)が検出されるのと同じアナログ/デジタル変換器(AD)であってよい。もっと高い(又は低い)電圧を検出できるようにするため、異なる、そのために適した測定範囲がアナログ/デジタル変換器で設定されてよい(二つの「上下に重なり合って」配置された、測定用抵抗器電圧(U)用及び補助測定電圧(U)用の測定範囲も、ここでは「異なる」測定範囲である)。別法として、測定用抵抗器電圧と同様に、補助測定電圧はアナログ/デジタル変換器へ送られる前に好ましくは増幅器Vを使って増幅され、増幅は測定用抵抗器電圧よりも小さく、その結果アナログ/デジタル変換器は変わらずに作動されるが、補助測定電圧は「低減されて」送られ、それゆえに評価が可能である。
【0011】
したがって本発明に係る一実施形態では、補助測定電圧は、通常の稼働では測定用抵抗器の電圧(U)を検出する、同じアナログ/デジタル変換器に送られる。そのために、測定用抵抗器電圧(U)が企図された測定範囲から外れるか、又は上限付近に来ると、すなわち、予め設定された閾値を超えると、アナログ/デジタル変換器の入力が測定用抵抗器電圧(U)から補助測定電圧(U)へ切り替えられる。切替は、アナログ/デジタル変換器自体によって開始及び/又は行われ得る。切替スイッチは外部に設けても、アナログ/デジタル変換器の統合部品であってもよい。後者(統合)の場合、アナログ/デジタル変換器には二つの入力接続部を備えることができる。前者(外部)の場合、アナログ/デジタル変換器は切替スイッチ制御用の制御出力部を備えることができる。
【0012】
アナログ/デジタル変換器の入力側に加わる信号源を切り替えることにより、変換器の測定範囲も切り替えられる(例えば変換器の感度を半減させて測定範囲を倍にすることが可能)、又はアナログ/デジタル変換器の測定範囲を変更することなく補助測定電圧の増大が適切に低減される。
【0013】
本発明に係る天秤の別の一実施形態では、測定用抵抗器電圧(U)は第一のアナログ/デジタル変換器ADに送られ、他方で補助測定電圧(U)のために第一のアナログ/デジタル変換器ADとは別に形成された第二のアナログ/デジタル変換器ADが備えられている。ここで、第二のアナログ/デジタル変換器の測定範囲は、入力される補助測定電圧を検出して評価できるよう最初から十分に大きい範囲を選択できる。別法として、補助測定電圧(U)の増幅は、両方のアナログ/デジタル変換器が同じ測定範囲で稼働できるように選択してよい。
【0014】
電磁力平衡式の場合、コイルを規定位置に保つために、出力段に送ることのできる最大補償電流によって「支持荷重」が定義される。負荷がそれを超えた場合、出力段は十分なコイル電流を用意できなくなるため、コイル及び場合によってこれを支持するてこ機構が動いて規定位置から離れてしまう。
【0015】
天秤の過負荷を回避するためには、機械式の過負荷保護装置が公知である。これは、てこ機構を保護し、及びてこ機構又は別の天秤部品の(場合により不可逆の)変形を機械的に阻止する。しかし、測定用抵抗器電圧(U)が属しているアナログ/デジタル変換器の測定範囲の外にある場合は、計量技術的な観点における過負荷は定義に従ってすでに想定されている。したがって、天秤の機構を危険にさらす機械的な過負荷は存在しないはずである。しかし、アナログ/デジタル変換器の測定範囲を外れることにより、コイルで生成された力は、測定用抵抗器電圧(U)ではもはや定量的に特定することはできない。
【0016】
機械式過負荷保護装置は、好ましくは、永続的な損傷が生じる前に(場合によっては生じて初めて)作用するよう設計されている。好ましくは、支持荷重又は出力段の最大出力電圧にはまだ達しておらず、コイル又はそのてこはまだ規定位置から離れていない。なぜなら出力段はコイルのために十分な補償電流を供給できるからである。この場合、抵抗電圧(U)は属しているアナログ/デジタル変換器の測定範囲の外にあるが、測定された補助測定電圧(U)は、アナログ/デジタル変換器内において、より大きな測定範囲を使って、又は増幅を低減することによって定量的に評価され、それによって過負荷が以下のように分析できる。
【0017】
天秤の通常働中は、上述のように、天秤に加えられた圧縮荷重又は引張荷重により、抵抗測定電圧(U)は、属しているアナログ/デジタル変換器の測定範囲内となる。重さがさらに増大すると、それに応じて抵抗測定電圧も上昇する。アナログ/デジタル変換器の測定範囲から外れると、コイル電流の特定は不可能になる。しかし秤台に作用を及ぼす力(負荷)が増加/減少(負荷伝達)すると、測定される補助測定電圧も上昇する。
【0018】
この補助測定電圧は、例えば負荷力が増加している場合、出力段の最大出力電圧に達するまで、及び/又は機械式過負荷保護装置が作動するまで、さらに上昇する。出力段の最大出力電圧に達する前に過負荷保護装置が作動すると、コイル電流が最大値に達し、補助測定電圧はもはや上昇しなくなり、実質的に一定に保たれる。その推移とその最大値により、作動力と過負荷保護装置の機能性を推測できる。
【0019】
補助測定電圧の推移及び/又は大きさから過負荷保護装置についての知見が得られ、その際に予め設定可能な、目的に合わせて変更も可能な閾値を単に超過しただけの場合、すでに過負荷保護装置の作動を定量的に表示できる。まだ出力段の最大出力電圧に達していない限り補助測定電圧の定量的評価が行われ、過負荷保護装置の作動を引き起こす、特定の負荷値(例えば単位がニュートンの力、グラム、キログラムの重量など)の割り当ても行われる。
【0020】
好ましくは、測定用抵抗器電圧(U)及び補助測定電圧(U)、又はそれに属しているアナログ/デジタル変換器によって供給されたデジタル値を評価するために、天秤には制御装置が備えられている。この制御装置は、特に、過負荷事例を検出するため、過負荷事例のための閾値を固定又は変動(自動調整)で定義するか又は保存するため、例えば光学的又は音響的警告メッセージを出すため、秤量機能を一時的又は永続的に中断するため(ブロックするため)、及びゼロ点又は較正を決定するか又は要求するか或いは作動させるために形成されていてよい。これはさらに、測定用抵抗器電圧(U)及び/又は補助測定電圧(U)又はこれから導き出された値又は信号を処理するために、保存するため又はアウトプットするために、又は予め設定可能な閾値の超過を、その種類、回数、大きさ、持続時間、タイミングなどについて検出し評価するために(例えば過負荷保護装置や点びん全体など、天秤の個々の部品の残余寿命の評価)及びそれに基づいて制御信号又はアラーム信号を天秤制御装置、上位の設備制御装置又は作業者へ出力するために、形成されてよい。
【0021】
天秤を稼働させるためのパラメーター、特に過負荷事例を特定するための閾値を定義するためのパラメーターは、適切なインターフェースを介して制御装置又は属しているメモリーユニットに手動で又はデジタルフォーマットで伝送できる。
【0022】
作動閾値又は機械式過負荷保護装置の限界値の機能及び状況を検査するために、補助測定電圧の特定の値を過負荷保護装置の作動に割り当てることができるよう、試験運転において力又は試験負荷(既知の、必要に応じて戻すことができる標準分銅)を秤台に載せることができる(負荷伝達)。反対に、測定用抵抗器電圧(U)が属しているアナログ/デジタル変換器の測定範囲の外にあることからは、過負荷について定性的な兆候しか示されない。
【0023】
本発明に係る天秤において過負荷事例を検出するための、本発明に係る方法は、補助測定電圧の検出と評価を含んでいる。それによって、出力段に備えられた負荷範囲内において(最大出力電圧、最大出力電流も同等)及び測定用抵抗器電圧(U)のために備えられた測定範囲の上方において、天秤の挙動を分析することが、本発明により可能である。
【0024】
好ましくは、本方法は、補助測定電圧が予め設定可能な限界値を上回るか、又は過負荷事例に相当する時間的経過を示す場合、過負荷信号の出力も含んでいる。後者は、例えば補助測定電圧が、最初、予め設定可能な時間内において一定に保たれる最大値まで単調に上昇する場合であろう。これは機械式過負荷保護装置が作動した兆候であり、この装置は引き続きコイル電流を高めて供給する必要性から出力段を解放する。
【0025】
適切には、本方法は補助測定電圧又はそれに対応する値の出力及び/又は表示及び/又は保存も含む(用語「値」又は「信号」は、本願においては、測定された又は処理された電圧と同じに扱われ、値又は信号として電圧から導き出されるか又はそれに割り当てられ得る。例えばデジタル信号又はアナログ信号は、例えば電圧又は負荷の特徴を表す具体的な(数)値に相当してよい)。
【0026】
この出力は、適切な表示手段(ディスプレイ、モニタ、バイナリ信号など)で行うことができ、閾値に達すると例えば視覚的又は音響的に表示されてもよい。補助測定電圧又はそれに対応する値は、デジタルデータとして適切な上位の制御装置に評価のために伝送可能である。履歴を作成するために、天秤で検出された電圧又はそれに相当する値が、好ましくはタイプスタンプ及びその他の追加情報(例えば温度、湿度、気圧及びそこから導き出された様々なデータ)と共に保存され、必要に応じて出力され得る。
【0027】
過負荷事例によっては、天秤を一時的又は恒久的に稼働休止させたり、又は少なくとも重量のアウトプットを阻止し及び必要に応じて追加の保護対策を有効にすることが必要な場合がある。別法として、天秤に新しいゼロ点を定める、又は天秤を新たに較正する必要があるようにすることも可能である。この必要条件は、過負荷事例を考慮して天秤を最適に稼働させられるよう、本発明に係る方法の範囲において表示され、要求され及び/又は自動的にスタート又は実施され得る。
【0028】
本発明に係る天秤及びそれに属する方法は、例えば納入時状態との比較又は履歴データの取得ができるようにするため、有利には、製造時の品質保証のために及び/又は現場での自己診断のために使用される。
【0029】
以下では、本発明に係る天秤の回路が三つの図で詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】二つの独立したアナログ/デジタル変換器を備えた、本発明に係る天秤の第一の実施形態の回路である。
図2】アナログ/デジタル変換器を一つだけ備えた、別の実施形態の回路である。
図3】二つの独立したアナログ/デジタル変換器を備え、補助測定電圧が変更された、さらに別の実施形態の回路である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明に係る天秤の第一の実施形態の単純化した回路の模式図である。出力段Eはコイル電流Iを出力するために形成されており、この電流は支持コイルL及びそれに直列に接続された測定用抵抗器Rを流れる。コイルLは磁石Mと共に作用し、てこKの一方の端部に配置され、てこにかけられた力Fを受ける。コイル電流Iを制御することによりコイルLが反力を生成し、これがてこをその規定位置にほとんど静止した状態で保持する。力Fがさらに大きくなると、反力を生成するために必要なコイル電流Iが大きくなり、力Fが小さくなると、それに応じて要求されるコイル電流Iも小さくなる(コイル電流は単極でも双極でもよい)。
【0032】
力Fを測定するために、コイル電流Iから測定用抵抗器Rにかかる電圧Uが測定され、増幅器/フィルタV内において増幅され及び/又は処理され、測定範囲Mを備えた第一のアナログ/デジタル変換器ADに送られる。アナログ/デジタル変換器ADは、測定用抵抗器電圧Uが測定範囲M内において変動している間は、測定用抵抗器電圧Uに相当するデジタル値を制御装置Cに出力する。測定用抵抗器電圧Uは力Fの尺度であるため、この力は制御装置Cに伝達されるデータを評価することで算出される。
【0033】
出力段Eの出力側Aには出力段電圧Uがかかる。この出力段電圧は本実施形態では、本発明にしたがい検出された補助電圧Uに相当する。補助電圧Uは、やはり増幅器/フィルタVによって増幅され及び/又は処理され、第二のアナログ/デジタル変換器ADに導かれ、その測定範囲Mは第一のアナログ/デジタル変換器ADの測定範囲Mより大きいか、又は第一のアナログ/デジタル変換器ADの測定範囲Mの外にある電圧が、第二のアナログ/デジタル変換器ADの測定範囲M内にあるように、これに接続される。第二のアナログ/デジタル変換器ADが出す信号も、評価のために制御装置Cに送られる。
【0034】
測定用抵抗器電圧Uが測定範囲M内において変動している間は、アナログ/デジタル変換器ADが用意された信号から力Fに相当する重量値が制御装置C内において算出される。それとは逆に、測定用抵抗器電圧Uが測定範囲Mの外にあると、力Fは増大し、こうして力Fはアナログ/デジタル変換器ADによってもはや数量化されなくなる。しかし、測定用抵抗器電圧Uに加えて検出される、力Fが増大すると同じく上昇する補助電圧Uは、補助電圧Uが第二のアナログ/デジタル変換器ADの測定範囲M内にある限り、第二のアナログ/デジタル変換器ADで検出されて数量化される。力Fが増大すると、補助測定電圧Uは、以下のように、
a)出力段Eの最大出力電圧(制御)に達し、その結果、出力段が、コイルL内に十分な反力を生成して、てこKを規定位置に保持するために十分なコイル電流Iをもはや準備できなくなるまで、又は、
b)機械式過負荷保護装置Tが作動され、その結果コイル電流Iが一定値に調整されるまで、
さらに上昇する。
【0035】
どちらの場合も、天秤の過負荷はすでに、測定用抵抗器電圧Uがアナログ/デジタル変換器ADの測定範囲を離れるか又は直前にある閾値を超過するか、又はアナログ/デジタル変換器が対応する信号を出すことによって確認される。上述の事例a)の場合は、過負荷保護装置を作動させる力は単に定性的にのみ算出される。なぜなら、出力段Eはその支持荷重に達しており、補助電圧Uはもはや力Fと関連付けて定義できないか、又は測定範囲Mを超過しているからである。しかし、事例b)の場合は、補助測定電圧Uの時間的経過と、生じているこの電圧の最大値から、過負荷保護装置Tが作動した事実が確認され、作動力が定量的に算出される。なぜなら補助測定電圧Uはまだ測定範囲M内にあるからである。
【0036】
図2は、図1に一部変更を加えた、本発明に係る解決策である。この場合、第一のアナログ/デジタル変換器ADは、測定用抵抗器電圧U又は補助電圧Uを検出するために選択的に使用される。測定用抵抗器電圧Uの代わりに補助電圧Uを検出するため、アナログ/デジタル変換器ADに供給される測定用抵抗器電圧Uが測定範囲M又は定義可能な閾値を超過する直前に、アナログ/デジタル変換器ADが切り替えられる(又は切替器自体が切り替える)。
【0037】
アナログ/デジタル変換器ADの入力側にかかる信号源を切り替えることで、変換器の測定範囲(好ましくは内部において変換器自体によって)も切り替えられる。例えば変換器の感度を半減させて測定範囲を倍にすることが可能である。別法として、増幅器Vも補助測定電圧を十分に低減できるため、より高い補助測定電圧も測定範囲M内にある。
【0038】
両方の電圧の間の切替に作用するスイッチWは、アナログ/デジタル変換器回路基板の外部又は内部にも配置可能であるため、その制御は直接アナログ/デジタル変換器の制御部又は例えば制御装置Cによっても実行可能である。
【0039】
図3は、図1に一部変更を加えた、本発明の実施形態を示している。図1とは異なり、ここでは補助測定電圧が出力段EとコイルLの間ではなく、コイルLと測定用抵抗器Rの間で測定されている(測定点と配線抵抗に応じて、この場合も補助測定電圧Uは測定用抵抗器電圧Uと異なる)。アナログ/デジタル変換器ADは、すでに図1で説明されたように、補助測定電圧を再び適切に増幅された量で及び/又は適切な測定範囲M内において検知し、評価のために制御装置に送る。
図1
図2
図3
【外国語明細書】
2020109402000001.pdf
2020109402000002.pdf
2020109402000003.pdf
2020109402000004.pdf