特開2020-110217(P2020-110217A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-110217(P2020-110217A)
(43)【公開日】2020年7月27日
(54)【発明の名称】生体用装着部材
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0408 20060101AFI20200626BHJP
   A61B 5/0492 20060101ALI20200626BHJP
   A61B 5/0488 20060101ALI20200626BHJP
【FI】
   A61B5/04 300E
   A61B5/04 300C
   A61B5/04 300N
   A61B5/04 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-1068(P2019-1068)
(22)【出願日】2019年1月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182028
【弁理士】
【氏名又は名称】多原 伸宜
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 博
(72)【発明者】
【氏名】金 昌萬
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 響子
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA04
4C127LL02
4C127LL04
4C127LL15
(57)【要約】
【課題】装着時に不快感を感じることなく、電極間の短絡を防止すると共に表面筋電位の測定精度を向上させること。
【解決手段】表面筋電位を測定するために生体に装着される生体用装着部材1は、表面筋電位を測定する一対の電極10a及び電極10bと、一対の電極10a及び電極10bの各々に接続して表面筋電位に応じた電気信号を外部に出力する導電性の配線部20a及び配線部20bと、一対の電極10a及び電極10bを保持する絶縁性の保持部材40と、を備える電極部材100と、生体に装着されると共に生体に対向する対向面に電極部材100が設けられる柔軟性及び絶縁性を有する装着部材30と、を有する。保持部材40は、装着部材30と一対の電極10a及び電極10bとの間に設けられ、少なくとも一対の電極10a及び電極10bから装着部材30に対して防水性を有し、柔軟性を有すると共に装着部材30よりも屈曲し難い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面筋電位を測定するために生体に装着される生体用装着部材であって、
前記表面筋電位を測定する一対の電極と、前記一対の電極の各々に接続して前記表面筋電位に応じた電気信号を外部に出力する導電性の配線部と、前記一対の電極を保持する絶縁性の保持部材と、を備える電極部材と、
生体に装着されると共に生体に対向する対向面に前記電極部材が設けられる柔軟性及び絶縁性を有する装着部材と、
を有し、
前記保持部材は、
前記装着部材と前記一対の電極との間に設けられ、少なくとも前記一対の電極から前記装着部材に対して防水性を有し、柔軟性を有すると共に前記装着部材よりも屈曲し難い、
ことを特徴とする生体用装着部材。
【請求項2】
前記保持部材は、
前記配線部と前記装着部材との間に設けられる、
ことを特徴とする請求項1記載の生体用装着部材。
【請求項3】
前記装着部材は、
生体が挿通され、
前記一対の電極は、
前記装着部材に対する生体の挿通方向に沿って配列される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の生体用装着部材。
【請求項4】
前記電極部材は、
前記一対の電極の各々と前記保持部材との間に吸水性の保湿部材を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の生体用装着部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面筋電位を測定するために生体に装着される生体用装着部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被験者の腕等に取り付けられて筋電信号等の生体情報を取得し、取得した生体情報を外部端末等に転送する生体用装着部材が知られている。かかる生体用装着部材により取得された生体情報は、筋力アップやダイエットを目的とした筋トレーニング、又はリハビリテーション等に用いられる。
【0003】
従来の生体用装着部材には、一般に表面筋電位を計測するために腕等の生体に接触する使い捨て可能なジェル電極が設けられている。このようなジェル電極は、ジェルが肌等の生体に移行して不快感を招くと共に、一度しか使用できないという課題を有する。これに対して、近年、表面筋電位を計測するために腕等の生体に接触する導電性繊維又は導電性ペーストを使用した導電性電極を有する生体用装着部材が知られている。このような生体用装着部材には、装着時の不快感を解消することができると共に、複数回使用することができるといった利点がある。
【0004】
特許文献1は、衣服に結合して、例えば、頭の左右両対向側、背中の左右両対向側、胸の心臓部位又は背の両対応側に貼り付けられる生体信号検知構造を開示している。特許文献1の生体信号検知構造は、電極片11と、防水性底層20と、吸水手段と、防水性上層40とを含んだ組立構造である。具体的には、特許文献1の生体信号検知構造は、防水性底層20の上面に電極片11が設けられ、電極片11と防水性底層20との間に第1の受容室が形成され、第1の受容室内に吸水手段が位置決めされ、吸水手段の天井部が電極片11に接し、吸水手段の底部が防水性底層20に接触され、防水性底層20の上面に防水性上層40が重ねられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3178230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、一対の電極片11は胸の心臓部位等の互いに距離の離れている生体の部位に貼り付けられるものであり、一対の電極が近接して配置される場合における短絡防止及び測定精度の向上については更なる改良の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、装着時に不快感を感じることなく、電極間の短絡を防止することができると共に表面筋電位の測定精度を向上させることができる生体用装着部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る生体用装着部材は、表面筋電位を測定するために生体に装着される生体用装着部材であって、前記表面筋電位を測定する一対の電極と、前記一対の電極の各々に接続して前記表面筋電位に応じた電気信号を外部に出力する導電性の配線部と、前記一対の電極を保持する絶縁性の保持部材と、を備える電極部材と、生体に装着されると共に生体に対向する対向面に前記電極部材が設けられる柔軟性及び絶縁性を有する装着部材と、を有し、前記保持部材は、前記装着部材と前記一対の電極との間に設けられ、少なくとも前記一対の電極から前記装着部材に対して防水性を有し、柔軟性を有すると共に前記装着部材よりも屈曲し難い。
【0009】
腕等の生体より伝わる汗等の水分が装着部材に達することを保持部材によって阻止することにより、この水分によって一対の電極の各々を保湿すると共に装着部材を介して一対の電極が短絡せず、装着部材が生体の動きに追従する場合であっても、装着部材よりも屈曲し難い保持部材の生体に対する追従が抑制されることにより、一対の電極間の距離の変化を抑制する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装着時に不快感を感じることなく、電極間の短絡を防止することができると共に表面筋電位の測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る生体用装着部材に設けられる電極部材の平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る生体用装着部材の分解側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る生体用装着部材の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態に係る生体用装着部材につき、詳細に説明する。
【0013】
<生体用装着部材の構成>
本発明の実施形態に係る生体用装着部材1の構成につき、図1から図3を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0014】
生体用装着部材1は、生体としての腕に装着されるものであり、電極10aと、電極10bと、配線部20aと、配線部20bと、装着部材30と、保持部材40と、保持部材41と、保湿部材50aと、保湿部材50bと、を有している。電極10a、電極10b、配線部20a、配線部20b、保持部材40、保持部材41、保湿部材50a及び保湿部材50bは、電極部材100を構成している。
【0015】
一対の電極10a及び電極10bは、一定の間隔を有して腕の表面に接触する。電極10aは、腕の接触する部分において測定する表面筋電位に応じた電気信号を配線部20aに出力する。電極10bは、腕の接触する部分において計測する表面筋電位に応じた電気信号を配線部20bに出力する。電極10a及び電極10bは、例えば導電糸を使用した布によって構成されている。ここで、表面筋電位に応じた電気信号は、生体の筋肉の動きによって生じる信号であり、筋活動量に伴い振幅が変化する。
【0016】
配線部20aは、導電性を有する材料によって形成されており、電極10aと出力部101とを接続して、電極10aにより測定した表面筋電位に応じた電気信号を出力部101に出力する。配線部20aは、例えば導電糸を使用した布によって又は銀等の金属材を印刷して形成されている。なお、配線部20aは、電極10bと電気的に接続しないように、電極10bを通る部分が絶縁シート等の図示しない絶縁体で覆われている。
【0017】
配線部20bは、導電性を有する材料によって形成されており、電極10bと出力部101とを接続して、電極10bにより測定した表面筋電位に応じた電気信号を出力部101に出力する。配線部20bは、例えば導電糸を使用した布によって又は銀等の金属材を印刷して形成されている。
【0018】
装着部材30は、筒状であり、柔軟性及び絶縁性を有する材料によって形成されている。装着部材30は、電極部材100が設けられると共に腕の表面に対向する対向面である裏面32と、裏面32の反対面であると共に外気に触れる表面33と、を備えている。装着部材30には、腕が挿通する挿通孔31が形成されている。装着部材30は、所謂サポータであり、例えばナイロン又はポリエステル系の生地により形成されている。
【0019】
保持部材40は、フィルム状のフィルム層であり、装着部材30と一対の電極10a及び電極10bとの間に設けられている。保持部材40は、一対の電極10a及び電極10bから装着部材30に対して防水性を有する。保持部材40は、柔軟性及び絶縁性を有する材料によって形成されていると共に、装着部材30よりも屈曲強度が大きくて屈曲し難い材料によって形成されている。
【0020】
保持部材41は、フィルム状のフィルム層であり、保持部材40に接続している。保持部材41は、配線部20a及び配線部20bから装着部材30に対して防水性を有する。保持部材41は、柔軟性及び絶縁性を有する材料によって形成されていると共に、装着部材30よりも屈曲強度が大きくて屈曲し難い材料によって形成されている。なお、保持部材41は、図3に示す範囲に限らず、配線部20a及び配線部20bの任意の範囲において装着部材30に対して防水性を有するように構成することができる。
【0021】
保湿部材50aは、電極10aと保持部材40との間に設けられている。保湿部材50aは、吸水性を有する素材によって形成されている。保湿部材50aは、例えばウレタンによって形成されている。
【0022】
保湿部材50bは、電極10bと保持部材40との間に設けられている。保湿部材50bは、吸水性を有する素材によって形成されている。保湿部材50bは、例えばウレタンによって形成されている。
【0023】
電極部材100は、一対の電極10a及び電極10bが挿通孔31に対する腕の挿通方向に沿って配列されるように装着部材30の裏面32に設けられている。電極部材100は、装着部材30の周方向に沿って互いに間隔を有して装着部材30の裏面32に複数設けられている。
【0024】
上記の構成を有する生体用装着部材1は、腕に装着された際に、一対の電極10a及び電極10bによって腕の表面筋電位を測定する。この際に、一対の電極10a及び電極10bは、電極10aと電極10bとの間隔に応じた深度で表面筋電位を測定することができる。具体的には、一対の電極10a及び電極10bは、電極10aと電極10bとの間隔が狭いほど、浅い深度で表面筋電位を測定する。一対の電極10a及び電極10bは、表面筋電位の測定値に応じた電気信号を、配線部20a及び配線部20bを介してコネクタ又は通信装置等の出力部101に出力する。そして、出力部101は、配線部20a及び配線部20bより入力される電気信号を、図示しない外部端末等に転送する。
【0025】
<生体用装着部材の動作>
本発明の実施形態に係る生体用装着部材1の動作につき、図1から図3を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0026】
腕に装着された装着部材30は、腕の動きに追従する。この際に、保持部材40は、装着部材30に追従するものの、装着部材30よりも屈曲し難いため、装着部材30に多少追従する程度に留まる。これより、一対の電極10a及び電極10bの間隔は、表面筋電位の測定中に腕を動かした場合であっても、大きく変化しない。従って、一対の電極10a及び電極10bは、表面筋電位を測定する際の深度の変化を極力抑制することができるため、表面筋電位を精度良く測定することができる。一方、複数の電極部材100は、装着部材30の周方向において互いに間隔を有して装着部材30に設けられるため、装着部材30は腕周りの大きさの変化等に応じて周方向に容易に追従可能である。
【0027】
また、腕から伝わる汗等の水分が装着部材30に達することを保持部材40によって阻止することにより、この水分によって保湿部材50a及び保湿部材50bを十分に保湿することができると共に装着部材30を介して電極10aと電極10bとが短絡することを防ぐことができる。
【0028】
更に、腕から伝わる汗等の水分が装着部材30に達することを保持部材41によって阻止することにより、この水分によって装着部材30を介して配線部20aと配線部20bとが短絡することを防ぐことができる。
【0029】
このように、本実施形態によれば、装着部材30と一対の電極10a及び電極10bとの間に設けられ、少なくとも一対の電極10a及び電極10bから装着部材30に対して防水性を有し、柔軟性を有すると共に装着部材30よりも屈曲し難い保持部材40を設けることにより、装着時に不快感を感じることなく、電極間の短絡を防止することができると共に表面筋電位の測定精度を向上させることができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、一対の電極10a及び電極10bの各々と、保持部材40と、の間に吸水性を有する保湿部材50a及び保湿部材50bを設けることにより、表面筋電位を測定する際のインピーダンスを低くすることができる。
【0031】
本発明は、部材の種類、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【0032】
具体的には、上記実施形態において、一対の電極50a及び電極50bを装着部材30に対する腕の挿通方向に沿って配列したが、一対の電極を装着部材30の周方向に沿って配列してもよい。
【0033】
また、上記実施形態において、生体用装着部材1を腕に装着したが、腕以外の生体としての脚等に生体用装着部材を装着してもよい。
【0034】
また、上記実施形態において、保持部材40に対して電極部材100を2つ設けたが、保持部材40に対して電極部材100を1つ又は3つ以上の必要に応じた数だけ設けることができる。
【0035】
また、上記実施形態において、保湿部材50a及び保湿部材50bを設けたが、保湿部材50a及び保湿部材50bを設けなくてもよい。
【0036】
また、上記実施形態において、一対の電極10a及び電極10bから装着部材30に対して防水性を有する保持部材40を設けたが、これに加えて、保持部材40は装着部材30から一対の電極10a及び電極10bに対して防水性を有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、表面筋電位を測定するために生体に装着される生体用装着部材に好適である。
【符号の説明】
【0038】
1 生体用装着部材
10a 電極
10b 電極
20a 配線部
20b 配線部
30 装着部材
31 挿通孔
40 保持部材
41 保持部材
50a 保湿部材
50b 保湿部材
100 電極部材
101 出力部
図1
図2
図3