【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の留置針は、血管内に挿入され、前記血管内の血液を前記血管から前記血管外へ排出させる中空断面の排出管と、前記血管内に挿入され、前記排出管に一体的に組み合わせられ、一旦、前記血管から排出された血液を前記血管内に復帰させる中空断面の復帰管とを備え、
前記排出管の前記血管内に位置する部分に血液を前記血管外へ流出させる流出孔が形成され、前記排出管の前記血管外に位置する部分に血液を前記排出管外へ排出させる排出孔が形成され、
前記復帰管の前記血管内に位置する部分に血液を前記血管内に流入させる流入孔が形成され、前記復帰管の前記血管外に位置する部分に血液を前記復帰管外から復帰させる復帰孔が形成され、
前記排出管と前記復帰管のいずれか一方の内部が、前記血管を穿刺する内針が挿通自在な断面積を持ち、前記内針が挿通する前記排出管と前記復帰管のいずれか一方の前記血管外の側に位置する外側端部に開口が形成され、この外側端部の前記血管外側の端面に、前記排出管と前記復帰管のいずれか一方の内部に存在する血液の、前記外側端部からの前記血管外への流出を阻止しながら、前記内針の挿通を許容する止血弁が密着した状態で配置されていることを構成要件とする。
【0013】
「中空断面」は排出管と復帰管が共に中空形状であれば、円筒形か、多角形か、半円筒形か、三日月形(U字形)か等の断面形状を問わない意味である。「排出管に一体的に組み合わせられる復帰管」とは、
図1、
図3に示すように排出管2と復帰管3のいずれか一方が外管になり、他方が一方(外管)の内部を軸方向に挿通する内管になるように組み合わせられることの他、
図11に示すように排出管2と復帰管3が互いに重ね合わせられた状態で組み合わせられることを言う。排出管2は前記した排出用流路に相当し、復帰管3は復帰用流路に相当する。
【0014】
中空断面が例えば半円筒形状、三日月形状等、曲面を有する形状であれば、血液が排出管2内と復帰管3内を通過するときに、血液に対流を生じさせ易くなるため、排出管2内と復帰管3内の圧力を分散させ易くなり、排出管2と復帰管3の内圧による強度上の弱点が低下し易くなる利点がある。
【0015】
「いずれか一方が外管になり」とは、排出管2が外管になり、復帰管3が内管になる場合と、復帰管3が外管になり、排出管2が内管になる場合があることを言い、いずれか一方(外管)の内部を他方(内管)が挿通することを言う。
図1、
図3では排出管2が外管で、復帰管3が内管である場合の例を示しているが、これらの
図1等での外管が復帰管3になり、内管が排出管2になることもある。
【0016】
「一体的に(組み合わせられる)」とは、排出管2と復帰管3が組み合わせられた状態から互いに分離しないよう、例えば重ね合わせられて組み合わせられるような場合に、
図11−(a)に示すように排出管2と復帰管3を包囲する環状材、または筒状材等、排出管2と復帰管3に同時に外接して両者を互いに重ねた状態に保持する何らかの保持材4によって一体性を保つことを言う。排出管2と復帰管3が重ね合わせられる場合、排出管2と復帰管3は必ずしも接触している必要はない。
【0017】
復帰管3と排出管2のいずれか一方(外管)の内部を他方(内管)が挿通する場合、挿通した側の管(内管)が挿通された側の管(外管)に保持され、内管と外管の一体性は確保されるため、排出管2と復帰管3が組み合わせられた状態での分離を防止するための保持材4は必ずしも必要とされない。但し、
図1等では内管の挿通(内管と外管の組み合わせ)状態での両者の安定性確保等のために保持材4を外管の血管外側に装着している。「血管外側」は「血管の外部に位置する側」、または「血管から遠い側」を意味する。
【0018】
内管が外管内を挿通する場合、
図1等に示すように挿通した側の管(内管)が挿通された側の管(外管)の、血管側の端部(端面)から突出している場合もある。この場合、挿通した側の管(内管)の血管側の端部と挿通された側の管(外管)の血管側の端部の位置が相違することで、血管内の血液を取り込む排出管2の流出孔2aと、浄化された血液を血管内に復帰させる復帰管3の流入孔3aの位置を異ならせることができるため、浄化されたばかりの血液を排出管2の流出孔2aから排出管2内に取り込むことを回避し易くなる。留置針1の使用時、血管内には排出管2の流出孔2aから復帰管3の流入孔3aまでが挿入される。
【0019】
内管が外管内を挿通する場合、内管は
図3に示すように外管の血管外に位置する根本部分の、血管外側を向いた外側端部22を貫通する状態になるため、外管の外側端部22の少なくとも一部は内管が挿通するために開放し、開口22aが形成される。外側端部22は後述の貯留空間としての移行部21の血管外側の壁、または壁に相当する部位である。「外側端部22の少なくとも一部が開放する」とは、開放により形成される開口22aが外側端部22の中心部分に位置するとは限らないことの意味である。後述のように開口22aには内針6が、または内針6と内管が挿通するため、開口22aは主に円形であるが、開口22aの形状は必ずしも円形には限られない。外側端部22は例えば後述の、排出管2と復帰管3のいずれか、または双方の根本側の端部を保持する保持材4の、血管外側の端部の一部に相当する。
【0020】
内管が外管内を挿通する場合には、開口22aには内針6と内管が挿通するため、
図3、
図6に示すように開口22a(外側端部22)は外管に形成される。排出管2と復帰管3が重ね合わせられる場合には、開口22aには内針6が挿通するため、
図11に示すように開口22a(外側端部22)は排出管2と復帰管3のいずれかに形成される。
【0021】
外管の外側端部22の開口22aには内管が挿通する前の段階で、
図6−(a)に示すように血管を穿刺するための内針6も挿通する。この関係で、外管の内部は内管と内針6が挿通可能な断面積を持つ。このことは、外管と内管及び内針6が円筒形状の場合で言えば、「外管の内径は内針6の外径より大きい」とも言える。
【0022】
排出管2と復帰管3が重ね合わせられる場合には、外管と内管の区別がないため、排出管2と復帰管3のいずれか一方の内部が、内針6が挿通可能な断面積を持ち、内針6が挿通する側の管の外側端部22の少なくとも一部が開放し、開口22aが形成される。請求項1における「排出管と復帰管のいずれか一方の内部は内針が挿通自在な断面積を持ち」の「いずれか一方」は外管と内管が区別される場合の外管を指し、区別されない場合には排出管2と復帰管3のいずれか一方を指す。
【0023】
内管が外管内を挿通する場合も、排出管2と復帰管3が互いに重ね合わせられる場合も、内針6が挿通する側となる排出管2と復帰管3のいずれか一方の外側端部22の血管外側の端面に、排出管2と復帰管3のいずれか一方の内部に存在する血液の、外側端部22から血管外への流出を阻止する止血弁42が密着した状態で配置される(請求項1)。ここで言う「排出管2と復帰管3のいずれか一方」はいずれか一方が他方の内部を挿通する場合の外管を指し、互いに重ね合わせられる場合のいずれか内針6が挿通する側の管を指す。
【0024】
図3、
図7に示すように内針6が引き抜かれた後に、内管(復帰管3)が外管(排出管2)内を挿通する場合、外側端部22の開口22aには内管が挿通するため、内管が挿通しているときに外管の移行部21内に存在する血液の開口22aからの流出を阻止する目的で外側端部22の血管外側の端面に止血弁42が密着させられる(請求項1)。止血弁42はまた、外管から内針6が引き抜かれた後、外管内に内管が挿通するまでの間の、開口22aからの血液の流出を阻止する働きをする。または排出管2と復帰管3のいずれかから内針6が引き抜かれた後の、開口22aからの血液の流出を阻止する働きをする。
図11−(c)に示す例の場合には、後述の切り込み42aが閉塞することにより、
図7−(b)〜(e)に示す例の場合には、内針6が挿通する挿通孔42cが内針6の挿通前の状態に復帰(収縮)することにより血液の流出を阻止する。
【0025】
排出管2と復帰管3のいずれか一方の、内針6が挿通する側の管の、血管外に位置する部分には、血液を浄化のために排出管2外へ排出させる排出孔2bに連通する、または浄化された血液を復帰管3外から復帰させる復帰孔3bに連通する貯留空間としての移行部21が形成される。移行部21(貯留空間)は血液が一時的に存在(貯留)する空間であり、特許文献2の分岐点98に相当する。
【0026】
一方、この移行部21(貯留空間)の血管外側にある壁である、または壁に相当する外側端部22には内針6が貫通することがあるから、外側端部22に装着される止血弁42には例えば内針6が貫通可能な、
図5−(c)、
図8−(b)、(c)、
図11−(c)に示すような切り込み42aが形成される。または
図7−(b)〜(e)に示すように止血弁42には内針6が貫通可能で、上記のように内針6が引き抜かれた後に閉塞可能な、軸方向に一定程度の長さを持つ孔(挿通孔42c)が形成される。この場合の孔(挿通孔42c)は内針6が挿通するときに孔の外周側へ拡張することにより内針6の挿通を許容し、内針6が引き抜かれたときに内針6の挿通前の状態に収縮(復元)することにより閉塞する。
【0027】
排出管2と復帰管3が重ね合わせられる場合、内針6が引き抜かれた後には、移行部21内に存在する血液の開口22aからの流出を阻止する必要から、止血弁42が内針6の挿通を許容しながら、内針6の引き抜き後に開口22aを閉塞するよう、止血弁42には例えば
図5−(c)、
図7−(b)〜(e)に示すような切り込み42aが形成される。止血弁42はこのように内針6の開口22aへの貫通時に内針6の挿通を許容しながら、内針6の抜き取り後に、内管の外周面との間の液密性を確保し、または開口22aを完全に閉塞する役目を持つ。
【0028】
請求項1における「外側端部22の血管外側の端面に止血弁42が密着した状態で配置される」とは、基本的に
図3に示すように止血弁42が外側端部22の血管外側(移行部21の反対側)の端面に密着した状態で外側端部22に装着されることを言う。
図1〜
図10では排出管2が外管である場合の例を示している関係で、排出管2に外側端部22が形成されているが、復帰管3が外管になれば、復帰管3に外側端部が形成される。
【0029】
止血弁42が外側端部22の血管外側の端面に密着した状態で外側端部22に装着されていれば、装着状態の維持方法は問われない。止血弁42が例えば
図3に示すように排出管2と復帰管3のいずれか、もしくは内針6の血管外側に接続された接続具31、61と外側端部22の端面との間に厚さ方向に挟まれて外側端部22に装着された状態を維持する場合(請求項2)には、内管が外管内を挿通する場合と、排出管2と復帰管3が重ね合わせられる場合のいずれにも対応する。接続具31、61は排出管2と復帰管3のいずれか、または双方の血管外側の端部を保持する保持材4に接続される。
【0030】
この場合、止血弁42は
図3、
図6−(a)に示すように止血弁42の血管外側に配置され、保持材4に接続される復帰管3の接続具31、または内針6の接続具61と保持材4とに挟まれて保持され、拘束される。
図11に示す例の場合には止血弁42は移行部21を構成する外側端部22と内針6の接続具61とに挟まれ、拘束される。止血弁42の確認作業は接続具31、61を外側端部22から分離させることにより行われる。
【0031】
この場合に、
図3、
図6に示すように内針6の抜き取り後、留置針1の使用状態で内管(復帰管3)が外管(排出管2)内を挿通する場合には、止血弁42には例えば前記したように
図7に示すような、外側端部22の血管外側の端面と内管の外周面に密着し、内管の外周面と開口22aとの間の空隙の発生を阻止する弾性材料からなる筒状(環状)等のシール材(水密材)が使用される。この場合、
図5−(c)、
図8−(b)、(c)に示すように例えば十字形状やY字形状等の切り込み42aが形成された形態の弾性材料も使用可能である。
【0032】
内管が外管内を挿通する場合、すなわち復帰管3と排出管2のいずれか一方が内管として、外管としての他方の内部を軸方向に挿通する場合、止血弁42は
図7−(a)に示すように外側端部22の開口22aの内周面に密着しながら、外側端部22の端面に密着するフランジ42b付きの筒状に形成されることもある(請求項3)。この場合、止血弁42の内周面、すなわち挿通孔42cの内周面は内管と内針6の双方が挿通可能で、双方の外周面に密着可能である(請求項3)。
【0033】
この場合の止血弁42はフランジ42bの移行部21寄りの面において外側端部22の端面に密着し、フランジ42b以外の筒状部分の外周面において開口22aの内周面に密着する。この止血弁42のフランジ42b以外の筒状部分の内周面(挿通孔42c)は内針6の挿通時と内管の挿通時にそれぞれの外周面に密着し、弾性変形しながら、中心の外周側へ拡張しようとする。
【0034】
この場合、内針6の引き抜き時と内管の引き抜き時には
図7−(b)〜(e)に示すように中心(軸線)側へ復帰(収縮)し、少なくとも移行部21寄りの板状部分(厚みのある部分)が閉塞し、血液の流出を阻止する。挿通孔42cは外径の相違する内針6と内管のいずれの外周面にも密着する上では、上記のように軸方向に一定程度の長さを持った上で、
図7−(b)〜(e)に示すように血管外側から移行部21側へかけて次第に内径が減少する円錐形状に形成されることが適切である。
【0035】
図11に示すように排出管2、または復帰管3からの内針6の抜き取り後、排出管2と復帰管3が分離した状態で使用される場合、すなわち留置針1の使用状態で内管と外管の区別がない場合には、止血弁42は内針6の抜き取り後に開口22aを完全に閉塞する必要があるため、止血弁42には
図11−(c)、(d)に示すように内針6の抜き取り後に閉じる形態の弾性材料が使用される。
【0036】
図3等に示す例と
図11に示す例のいずれの場合にも、止血弁42が、排出管2と復帰管3のいずれかの血管外側に位置する外側端部22の血管外側の端面に密着した状態で外側端部22に装着され、外側端部22の表面に面した位置に配置されることで、止血弁42の外側端部22への装着作業と、装着状態の確認作業が単純化される。特に止血弁42の装着のためにアーム状の挿入具の往復動を利用する必要がないため、特許文献1〜4との対比では止血弁42を含めた留置針の構造が簡素化される上、止血弁42の装着作業が簡略化され、止血弁42の装着状態の確認もし易くなる。
【0037】
以上のように内針6が挿通する排出管2と復帰管3のいずれか一方の血管外に位置する側の外側端部22の血管外側の端面に、排出管2と復帰管3のいずれか一方の内部に存在する血液の血管外への流出を阻止しながら、内針6の挿通を許容する止血弁42が密着することで、排出管2と復帰管3のいずれか一方の移行部21内に存在する血液が外側端部22から血管外へ流出することが防止される。
【0038】
外側端部22は排出管2と復帰管3のいずれか一方の血液外側に位置する移行部21の血管外に位置し、内針6が挿通しない状態では外部に露出した壁面であるため、止血弁42の設置(装着)作業を極めて容易に、且つ確実にすることが可能になる。特に止血弁42が外側端部22の血管外の側の面に重なる止血弁である場合には、外側端部22の開口22a内への装着作業も要せず、単純に外側端部22に重ねるだけで設置が済むため、設置作業がより単純化される。
【0039】
請求項1における「排出管の血管内に位置する部分に血液を血管外へ流出させる流出孔が形成され」とは、排出管2の血管内に位置する区間のいずれかの部分に血液流出用の流出孔2aが形成されることを言い、排出管2の軸方向血管寄りの端面を含む。「血管内に位置する区間のいずれかの部分」であるから、排出管2の一方の端面以外に形成される場合には、端面を除く区間の周面に流出孔2aが形成されることもある。その場合、排出管2の血管寄りの端面は塞がれる。
【0040】
「排出管の血管外に位置する部分に血液を排出管外へ排出させる排出孔が形成され」とは、排出管2の血管外に位置する区間のいずれかの部分に血液排出用の排出孔2bが形成されることを言い、排出管2の軸方向の端面(外側端部22)を含む。「血管外に位置する区間のいずれかの部分」であるから、排出管2の他方の端面以外に形成される場合には、端面を除く区間の周面に排出孔2bが形成されることもある。前記のように外側端部22の開口22aを内針6が貫通する場合には、排出孔2bは
図1等に示すように端面を除く区間に形成される。
【0041】
同様に「復帰管の血管内に位置する部分に血液を血管内に流入させる流入孔が形成され」とは、復帰管3の血管内に位置する区間のいずれかの部分に浄化された血液の流入用の流入孔3aが形成されることを言い、復帰管3の端面(外側端部22)に形成される場合と端面を除く区間に形成される場合がある。「復帰管の血管外に位置する部分に血液を復帰管外から復帰させる復帰孔が形成され」とは、復帰管3の血管外に位置する区間のいずれかの部分に浄化された血液の血管内への復帰用の復帰孔3bが形成されることを言い、復帰管3の端面に形成される場合と端面を除く区間に形成される場合がある。
【0042】
排出管2と復帰管3からなる留置針1は、
図1等に示すように復帰管3と排出管2のいずれか一方が他方の内部を挿通する場合には、
図6に示すように内管が抜かれた状態にある外管内に挿通させられる内針6の先端が血管を穿刺することにより形成された血管の穿孔から血管内に挿入させられる。復帰管3と排出管2が互いに重ね合わせられる場合には、
図11に示すようにいずれか一方の管内に内針6が挿通させられる。血管内には排出管2の流出孔2aと復帰管3の流入孔3aが入り込むまで留置針1が挿入させられる。留置針1の血管内への挿入後、内針6は内管の根本側から引き抜かれる。
【0043】
排出管2の排出孔2bには
図4−(a)に示すように排出管2内に取り込んだ血液を透析装置(濾過装置)へ移送させるための移送管5が接続され、復帰管3の復帰孔3bには透析装置を経由して浄化された血液を血管に戻すための供給管7が接続される。移送管5の内部は排出管2の内部に連通し、供給管7の内部は復帰管3の内部に連通する。前記のように排出管2と復帰管3のいずれか一方の、内針6が挿通する側の管の、血管外に位置する部分には移行部21が形成されるため、移送管5の内部、または供給管7の内部は移行部21に連通する。
【0044】
血管内の血液は移送管5と透析装置との間に接続されるポンプの吸引力により流出孔2aから排出管2内に吸引され、移送管5を経てそのまま透析装置に送られる。透析装置を通過し、浄化された血液はポンプの吐出力により供給管7を経て復帰管3の流入孔3aから血管内に戻される。