から選択される金属酸化物上に担持されたバナジウムを含む第1のSCR触媒ゾーン20と;銅担持小細孔モレキュラーシーブを含む第2のSCR触媒ゾーン30とを含む、排ガスを処理するためのシステム。システムを通る通常の排ガスの流れ1に対して第1のSCR触媒ゾーンが第2のSCR触媒ゾーンの上流に配置され、第1のSCR触媒ゾーンが第2のSCR触媒ゾーンと比較してより高いウォッシュコート担持量を有し、銅の全担持量がバナジウムの全担持量よりも高い。第1及び第2のSCR触媒ゾーンが、フロースルー型ハニカム基材10上にコーティングされており、第1及び第2のSCR触媒ゾーンが隣接するか又は少なくとも部分的に重なる。
第1のSCR触媒ゾーンが第2のSCR触媒ゾーンと比較してより高いウォッシュコート担持量を有し、銅の全担持量がバナジウムの全担持量よりも高い、請求項1に記載のシステム。
第1のSCR触媒ゾーンが約0.5−4重量パーセントのバナジウム(金属酸化物の総重量を基準として)を含み、第2のSCR触媒ゾーンが約1−4重量パーセントの銅(モレキュラーシーブの総重量を基準として)を含む、請求項1又は2に記載のシステム。
第1及び第2のSCR触媒ゾーンが、入口端、出口端、及び入口端から出口端まで測定された軸長を有するフロースルー型ハニカム基材上にコーティングされており、第1及び第2のSCR触媒ゾーンが隣接するか又は少なくとも部分的に重なる、請求項1から6の何れか一項に記載のシステム。
第1のSCR触媒ゾーンが、軸長を有する押出バナジウム触媒のハニカムであり、第2のSCRゾーンが、軸長の約10−90パーセントを覆うウォッシュコートである、請求項1から9の何れか一項に記載のシステム。
第1のSCR触媒ゾーンが、入口端及び出口端を有するウォールフロー型フィルタ上にあり、第2のSCR触媒ゾーンが、フロースルー型ハニカム基材上にあり、ただし第1のSCR触媒ゾーンと第2のSCR触媒ゾーンとの間に介在する触媒がないことを条件とする、請求項1から9の何れか一項に記載のシステム。
エンジンマニホールド又はターボチャージャー、及びエンジンマニホールド又はターボチャージャーから部分的NOx吸収剤へ排ガスを流すための導管をさらに含み、ただしシステムがエンジンマニホールド又はターボチャージャーと部分的NOx吸収剤との間に排ガス処理触媒を何も含まないことを条件とする、請求項12、又は請求項12に従属する場合の請求項13に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
環境大気質を改善するため、特に発電所、ガスタービン、希薄燃焼内燃機関などにより生じる排出ガスを処理するためのシステム及び方法が提供される。排出ガスは、広い運転温度範囲にわたってNO
x濃度を低下させることによって、少なくとも部分的に改善される。NO
xの転化は、排ガスをゾーン内に配置された2つ以上の特定のNH
3−SCR触媒と接触させることにっよって実現される。
【0010】
一つには、システムは2つのNH
3−SCR触媒ゾーン:(a)TiO
2、ZrO
2、SiO
2、CeO
2、及びAl
2O
3から選択される金属酸化物上に担持されたバナジウムを含む第1のSCRゾーンと;(b)銅担持小細孔モレキュラーシーブを含む第2のSCRゾーンとを含み、システムを通る通常の排ガスの流れに対して第1のSCR触媒ゾーンが第2のSCR触媒ゾーンの上流に配置されている。一例において、バナジウム系触媒は第1のゾーン内のフロースルー型モノリスのチャネル壁上及び/又はチャネル壁内にコーティングされており、銅担持小細孔モレキュラーシーブは第2のゾーン内のフロースルー型モノリスのチャネル壁上及び/又はチャネル壁内にコーティングされており、第1のゾーンは第2のゾーンの上流にある。特定の実施形態において、第1のSCR触媒ゾーンは押出触媒体(例えば、ハニカム)の形態であってもよく、第2のSCR触媒ゾーンは触媒体上のコーティングである。別の例において、バナジウム系触媒はウォールフロー型フィルタの上及び/又は内部にコーティングされており、銅担持小細孔モレキュラーシーブはフィルタの下流に配置されたフロースルー型モノリスのチャネル壁上及び/又はチャネル壁内にコーティングされている。
【0011】
図1を見ると、フロースルー型ハニカム基材10が第1の触媒ゾーン20及び第2の触媒ゾーン30を有する本発明の実施形態が示され、第1及び第2の触媒ゾーンは連続しており接触している。本明細書で使用する「第1のゾーン」及び「第2のゾーン」という用語は、基材上のゾーンの位置づけを示す。より詳細には、ゾーンは順に位置づけられているので、通常の運転条件下で、処理しようとする排ガスが第2のゾーンに接触する前に第1のゾーンに接触する。一実施形態において、第1及び第2のSCR触媒ゾーンは連続して配置されているので、途切れずに連続して一方が他方に続いている(すなわち、第1のSCR触媒ゾーンと第2のSCR触媒ゾーンとの間に触媒、又はフィルタなどの他の排ガス処理操作がない)。したがって、特定の実施形態において、1つの基材又は一連の基材の中又は上を通る通常の排ガスの流れに対して、第1のSCR触媒ゾーンは第2のSCR触媒ゾーンの上流にある。
【0012】
第1及び第2のSCR触媒ゾーンの触媒材料の違いによって、排ガスの異なる処理が得られる。例えば、第1のSCR触媒ゾーンはNO
xを還元し、副生成物(低温でのN
2Oを含む)に対する選択性がより低く、第2のSCR触媒ゾーンは第1のSCR触媒ゾーンと比較してより高い効率で効率的にNO
xを還元する。2つのSCR触媒ゾーンの組み合わせの相乗効果は、単一の触媒システム又は他のゾーン化配置と比較して触媒の全体としての性能を改善させる。好ましくは、第1及び第2のゾーンは接触している(すなわち、第1のSCR触媒ゾーンと第2のSCR触媒ゾーンとの間に介在する触媒活性層がない)。
【0013】
図9では、基材が、基材を通る排ガスの流れ1の通常の方向に対して入口端110及び出口端120を有するハニカムフロースルー型モノリス100である、ゾーン化触媒基材2が示される。基材は入口端110から出口端120へ延びる軸長190を有する。
図9Aは排ガスが通ることができる開口チャネル220を画定するチャネル壁210を有するハニカム基材の1つのセル200を示す。チャネル壁は好ましくは多孔性又は半多孔性である。各ゾーンの触媒は、壁の表面上のコーティングであってもよく、壁に部分的若しくは完全に浸透するコーティングであってもよく、押出体として壁に直接取り込まれてもよく、又はそれらの何らかの組み合わせであってもよい。
【0014】
図1では、第1のSCR触媒ゾーン20が入口端110から第1の終点29まで延びている。第1の終点は軸長190の約10−90パーセント、例えば約80−90パーセント、約10−25パーセント、又は約20−30パーセントの位置にある。第2のSCR触媒ゾーン120は出口端120から軸長190に沿った特定の距離にわたって、例えば軸長190の約20−90パーセント、例えば約60−約80パーセント、又は約50−約75パーセントにわたって延びている。好ましくは、第2のSCR触媒ゾーンは少なくとも第1の終点まで延びているので、第1及び第2のSCR触媒ゾーンは接触している。軸長は好ましくは24インチ未満、例えば約1−約24インチ、約3−約12インチ、又は約3−約8インチなどである。
【0015】
図2では、第1のSCR触媒ゾーン20が部分的に第2のSCR触媒ゾーン30に重なっている、好ましい実施形態が示される。
図3では、第2のSCR触媒ゾーン30が部分的に第1のSCR触媒ゾーン20に重なっている。重なりは好ましくは基材の軸長の90パーセント未満、例えば約80−約90パーセント、約40パーセント未満、約40−約60パーセント、約10−約15パーセント、又は約10−約25パーセントである。第2のSCR触媒ゾーンが第1のSCR触媒ゾーンに重なっている実施形態に関して、重なりは軸長の50パーセントを超えていてもよく、例えば80−90パーセントなどであってもよい。第1のSCR触媒ゾーンが第2のSCR触媒ゾーンに重なっている実施形態に関して、重なりは好ましくは軸長の50パーセント未満、例えば約10−20パーセントである。
【0016】
図4では、第1のSCR触媒ゾーン20は第2のSCR触媒ゾーン30に完全に重なっている。そのような実施形態に関して、排ガスは最初に第1のSCR触媒ゾーンに接触し、第1のSCR触媒ゾーンによって少なくとも部分的に処理される。排ガスの少なくとも一部は第1のSCR触媒ゾーンを透過し、そこで第2のSCR触媒ゾーンに接触し、さらに処理される。処理済み排ガスの少なくとも一部は第1のSCR触媒ゾーンを透過して戻り、開口チャネルに入り、基材から出る。
図4は、第1及び第2のSCR触媒ゾーンの両方が基材の全軸長にわたって延びている実施形態を示す。
図4Aは、第2のSCR触媒ゾーンが出口端から基材の全軸長未満の長さまで延びており、第1のSCR触媒ゾーンが基材の全軸長にわたって延び、そのため第2のSCR触媒ゾーンに完全に重なっている、代替的実施形態を示す。
【0017】
図5は本発明の別の実施形態を示す。ここで、第3の触媒ゾーンは、基材の出口端の近位にあり、好ましくは基材の出口端から延びている。第3の触媒ゾーンは、酸化触媒、好ましくはアンモニアを酸化するのに効果的な触媒を含む。特定の実施形態において、触媒は、Pt、Pd、又はそれらの組み合わせなどの1つ又は複数の白金族金属(PGM)を、好ましくはアルミナなどの金属酸化物支持体上に含む。酸化触媒は、鉄又はPGM(パラジウムなど)を含めた金属を任意選択的に担持する、FER又はBEAなどのゼオライトを含んでいてもよい。層状配置の第2及び第3の触媒ゾーンの組み合わせはアンモニアスリップ触媒として機能し、上流のSCR反応により消費されない過剰のアンモニアの少なくとも一部が第2のゾーンを通って第3の触媒ゾーンへ移動し、ここで酸化されてH
2O及び二次NO
xとなる。H
2O及び二次NO
xは第2の触媒ゾーンを通って戻り、ここで二次NO
xの少なくとも一部がSCR−型反応により還元されてN
2及びH
2Oとなる。
【0018】
好ましくは、第1及び第2のSCR触媒ゾーンは連続して配置されているので、第1のSCR触媒ゾーンは第2のSCR触媒ゾーンに接触している。特定の実施形態において、第1及び第2のSCR触媒ゾーンは、排ガス処理システム中に配置されている別々の基材上にコーティング又は組み込まれているので、第1及び第2のSCR触媒ゾーンは連なっており、接触しているか又は介在する排ガス処理触媒がなく短い距離で隔てられている。2つの基材を使用する場合、基材は同じ又は異なる基材であってもよい。例えば、第1の基材はウォールフロー型フィルタであってもよく、第2の基材はフロースルー型ハニカムであってもよく、第1及び第2の基材は異なる空隙率を有していてもよく、第1及び第2の基材は異なる組成物である又は異なるセル密度を有していてもよく、及び/又は第1及び第2の基材は異なる長さであってもよい。
図6では、第1及び第2のSCR触媒ゾーンは排ガス処理システム中に配置されている別々の基材上に配置されているので、第1及び第2のSCR触媒ゾーンは連なっており隣接しているが、直接接触していない。特定の実施形態において、第1の基材と第2の基材との間の最大距離は好ましくは2インチ未満、より好ましくは1インチ未満であり、好ましくは第1のSCR触媒ゾーンと第2のSCR触媒ゾーンとの間及び/又は第1の基材と第2の基材との間に、介在する基材、フィルタ、又は触媒材料がない。
図6Aでは、第2の基材が基材の出口端から基材の全長未満の長さまで延びるアンモニア酸化触媒下層40をさらに含む。第2のSCR触媒ゾーンは完全に酸化触媒を覆っており、好ましくは基材の長さにわたって延びている。
【0019】
特定の実施形態において、第1のSCR触媒ゾーンは押出ハニカム体の形態である。
図7に示される実施形態は、例えば、押出触媒基材の一部の上のコーティング及び/又は押出触媒基材の一部の内部のコーティングの形態である第2のSCR触媒ゾーン26を含む。押出触媒基材は、同様に、第1のSCR触媒ゾーン16を含む。第1及び第2のSCR触媒ゾーンは、排ガスの通常の流れ1に対して第1のゾーンが第2のゾーンの上流であるように配置されている。ゾーン16の触媒活性基材は本明細書に記載の他の第1のSCR触媒ゾーンと同様の触媒活性材料を含む。
図7では、第2のSCR触媒ゾーンは出口端から基材の全長未満の長さまで延びている。
図7Aでは、第2のSCR触媒ゾーン26は酸化触媒27を含む第3のゾーンを完全に覆っている。
【0020】
別の実施形態において、第2のSCR触媒ゾーンは押出ハニカム体の形態であり、第1のSCR触媒ゾーンは、例えばハニカム体の前面のゾーンとして、押出ハニカム体上に配置されたウォッシュコートの形態である。
【0021】
図8では、例えば押出触媒材料から形成されるフロースルー型ハニカム体である、触媒活性基材300は、第1のSCR触媒ゾーン310及び第2のSCR触媒ゾーン330でコーティングされている。押出体の触媒成分は受動的NO
x吸収剤、補助的SCR触媒、又は排ガスを処理するための他の触媒であってもよい。第1のSCR触媒ゾーンは入口端312から、軸長390の約10−80パーセント、例えば約50−80パーセント、約10−25パーセント、又は約20−30パーセントに位置している第1の終点314まで延びている。第2のSCR触媒ゾーンは出口端344から、軸長390の約20−80パーセント、例えば約20−40パーセント、約60−約80パーセント、又は約50−約75パーセントに位置している第2の終点332まで延びている。第1及び第2のSCR触媒ゾーン直接接触しておらず、そのためギャップ320が上流及び下流のゾーンの間に存在する。好ましくは、このギャップは触媒層を含まないが、代わりに処理しようとする排ガスに直接さらされている。排ガスはギャップにおいて触媒体に接触し、それにより例えば排ガス中のNO
xの一部を選択的に還元するように排ガスが処理される。ギャップは、第1の終点314及び第2の終点332によって画定され、好ましくは軸長の75パーセント未満、例えば軸長390の約40−約60、約10−約15パーセント、又は約10−約25パーセントである。任意選択のNH
3酸化触媒は、出口端344から入口端312に向かって下流のゾーンの長さ以下である長さで伸びているゾーンにおいて、基材300の上及び/又は内部にコーティングされている。任意選択のNH
3酸化触媒は好ましくは下流のゾーンを成す触媒組成物によって完全に覆われている下層である。
【0022】
バナジウム系触媒は、好ましくは、金属酸化物支持体の総重量を基準として約0.5−約4重量パーセント、又は約1−2重量パーセントの濃度で金属酸化物上に担持されている。好ましいバナジウム成分としては、バナジア(V
2O
5)及び金属バナジン酸塩(例えば、FeVO
4)などのバナジウムの酸化物、並びに任意選択的にタングステンの酸化物が挙げられる。特定の実施形態において、バナジウム成分は、バナジウム成分の総重量を基準として約25重量パーセントまで、好ましくは約1−約25重量パーセント、より好ましくは約5−約20重量パーセント、さらにより好ましくは約5−約15重量パーセントのタングステンの酸化物を含む。
【0023】
金属バナジン酸塩に適した金属としては、アルカリ土類金属、遷移金属、希土類金属、又はそれらの組み合わせが挙げられる。本発明の明細書及び特許請求の範囲の目的において、「アルカリ土類金属」という用語は周期表のII族の元素の少なくとも1つを意味し、「遷移金属」は周期表のIV−XI族の元素及びZnの少なくとも1つを意味する。有用なアルカリ土類金属としては、Mg、Ca、Sr、及びBaが挙げられ;希土類元素としてはSc、Y、並びに15のランタニドであるLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLu、好ましくはErが挙げられ;遷移金属はFe、Bi、Al、Ga、In、Zn、Mo、Cr、Sb、及びMnから成る群から選択される。本発明の特に好ましい実施形態において、バナジウム成分はバナジン酸鉄(III)であり、これは任意選択的にWO
3を含む。
【0024】
金属酸化物支持体のタイプは特に限定されない。有用な金属酸化物としては、TiO
2、ZrO
2、SiO
2、CeO
2、及びAl
2O
3が挙げられる。特定の実施形態において、金属酸化物支持体及びバナジウム成分は約100:1−約50:1の重量比で存在する。
【0025】
典型的には、バナジウム成分及び金属酸化物支持体は自己支持触媒粒子の形態である。様々な実施形態において、金属酸化物支持体は約10−約300m
2/g、又はそれを超える表面積(BET)を有することになる。特定の実施形態において、金属酸化物支持体は約10−約250ナノメートル(nm)、好ましくは約10−約100nmの平均粒径を有することになる。
【0026】
好ましい金属酸化物は、チタニア又は酸化チタン(IV)としても知られる二酸化チタン(TiO
2)であり、好ましくはアナターゼ型である。特定の実施形態において、TiO
2はルチル型に対して少なくとも90重量パーセント、より好ましくは少なくとも95重量パーセントがアナターゼである。特定の実施形態においてTiO
2は、例えば硫酸塩処理の最終生成物として、化学的に安定化されている及び/又は予備焼成されている。そのような化学的に安定化されたTiO
2は、X線回折法においてTiO
2格子に特異的であるX線反射を示す。
【0027】
別の実施形態において、第1のSCR触媒ゾーンは、金属酸化物上に支持されたバナジウムと裸の(例えば、H+型のゼオライト)又はFeを担持する分子とのブレンドを含む。好ましくは、ブレンドは、ブレンド中の触媒活性成分の総重量を基準として.約60−約99重量パーセントのバナジウム成分、及び約1−約40重量パーセントのモレキュラーシーブ成分を含む。特定の実施形態において、触媒組成物は約60−約70、約75−約85、又は約90−約97重量パーセントのバナジウム成分、及び約30−約40、約15−約25、又は約3−約10重量パーセントのモレキュラーシーブ成分を含む。
【0028】
ブレンドにおいて好ましいバナジウム及び金属酸化物としては、本明細書に記載のものが挙げられ、任意選択的に本明細書に記載のタングステン成分を挙げることができる。
【0029】
好ましくはブレンドのためのモレキュラーシーブは、アルミノケイ酸塩(好ましくは骨格中に置換された金属を含まない)又はフェロケイ酸塩である。モレキュラーシーブ、特にアルミノケイ酸塩は、H+型であるか又は遷移金属でイオン交換されている。好ましくは、アルミノケイ酸塩はアルカリ金属及びアルカリ土類金属を実質的に含まない。H+型モレキュラーシーブは好ましくは非骨格金属を含まない。特定の実施形態において、ブレンド中のモレキュラーシーブはFe以外のいかなる非骨格金属も本質的に含まない。好ましくは、モレキュラーシーブの合成後にイオン交換が行われる。
【0030】
有用なMFIアイソタイプとしては、ZSM−5、[Fe−Si−O]−MFI、AMS−1B、AZ−1、Bor−C、Boralite、Encilite、FZ−1、LZ−105、Mutinaite、NU−4、NU−5、Silicalite、TS−1、TSZ、TSZ−III、TZ−01、USC−4、USI−108、ZBH、ZKQ−1B、及びZMQ−TBが挙げられ、ZSM−5が特に好ましい。有用なFERアイソタイプとしては、Ferrierite、[Si−O]−FER、FU−9、ISI−6、単斜晶系フェリエライト、NU−23、Sr−D、及びZSM−35が挙げられる。有用なBEAアイソタイプとしては、Beta、[Ti−Si−O]−*BEA、CIT−6、及びTschernichiteが挙げられる。そのような材料の典型的なSiO
2/Al
2O
3モル比は30−100であり、典型的なSiO
2/Fe
2O
3モル比は20−300、例えば20−100などである。
【0031】
ブレンドにおける好ましいモレキュラーシーブ骨格としては、FER、MFI、及びBEAが挙げられる。特定の実施形態において、モレキュラーシーブは小細孔モレキュラーシーブではない。好ましくは、BEA骨格は、イオン交換された鉄を含有するか又は鉄同形BEA分子構造(BEA型フェロケイ酸塩とも呼ばれる)であるが、鉄同形BEA分子構造が特に好ましい。特定の好ましい実施形態において、BEA型フェロケイ酸塩分子構造は、(1)SiO
2/Fe
2O
3モル比が約20−約300である鉄含有BEA骨格構造、及び/又は(2)フレッシュな状態の単離された鉄イオンFe
3+として含有される少なくとも80%の鉄を有する、結晶性ケイ酸塩である。
【0032】
好ましくは、鉄含有BEA骨格構造のSiO
2/Fe
2O
3モル比は、約25−約300、約20−約150、約24−約150、約25−約100、又は約50−約80である。モルによるlog(SiO
2/Al
2O
3)が少なくとも2である(すなわち、SiO
2/Al
2O
3モル比が少なくとも100である)ならば、モルによるlog(SiO
2/Al
2O
3)の上限は特に限定されない。モルによるlog(SiO
2/Al
2O
3)は、好ましくは少なくとも2.5(すなわち、SiO
2/Al
2O
3モル比が少なくとも310である)、より好ましくは少なくとも3である(すなわち、SiO
2/Al
2O
3モル比が少なくとも1,000である)。モルによるlog(SiO
2/Al
2O
3)が4を超える(すなわち、SiO
2/Al
2O
3モル比が少なくとも10,000になる)場合である。
【0033】
特定の実施形態において、鉄は、モレキュラーシーブの総重量を基準として約0.1−約10重量パーセント(wt%)、例えば約0.5wt%−約5wt%、約0.5−約1wt%、約1−約5wt%、約2wt%−約4wt%、約2wt%−約3wt%の濃度で、ブレンドのモレキュラーシーブ中に存在する。鉄は、液相交換若しくは固体イオン交換を含めた当技術分野において良く知られる技術を用いて、又は初期の湿潤プロセスによって、本発明で使用するためのモレキュラーシーブ中に取り込まれてもよい。そのような材料は本明細書において鉄含有モレキュラーシーブ又は鉄促進モレキュラーシーブと呼ばれる。
【0034】
本発明の触媒組成物は、バナジウム成分及びモレキュラーシーブ成分をブレンドすることにより調製できる。ブレンド技術の種類は特に限定されない。特定の実施形態では、TiO
2/WO
3懸濁液を調製し、これにV
2O
5粉末及び鉄促進モレキュラーシーブ粉末を加える。得られる懸濁液はウォッシュコートとして配合でき、又は粉末状に乾燥及び焼成し、次いでウォッシュコート若しくは押出成形可能な材料を調製するのにこれを使用することができる。
【0035】
第2の触媒ゾーンは、銅担持小細孔モレキュラーシーブを触媒活性成分として含み任意選択的に他の成分、特にバインダーなどの触媒不活性成分を含む、第2のNH
3−SC触媒組成物を含む。本明細書で使用される場合、「触媒活性」成分は、NO
xの触媒還元及び/又はNH
3若しくは他の窒素系SCR還元剤の酸化に直接関与する成分である。必然的に、「触媒不活性」成分は、NO
xの触媒還元及び/又はNH
3若しくは他の窒素系SCR還元剤の酸化に直接関与しない成分である。
【0036】
有用なモレキュラーシーブは結晶性又は準結晶性物質であり、これは例えば、アルミノケイ酸塩(ゼオライト)又はシリコアルミノリン酸塩(SAPO)であってもよい。そのようなモレキュラーシーブは、例えば環状に互いに結合した繰り返しのSiO
4、AlO
4、及び任意選択的にPO
4の四面体単位で構成され、規則的な結晶内の空洞及び分子寸法のチャネルを有する骨格を形成する。四面体単位(環の構成要素)の特異的な配置がモレキュラーシーブの骨格を生じさせ、慣習により、各々の独自の骨格は国際ゼオライト協会(International Zeolite Association)(IZA)によって独自の3文字のコード(例えば、「CHA」)が割り当てられている。モレキュラーシーブはまた、2つ以上の骨格(AEI及びCHAなど)の連晶であってもよい。特定の実施形態において、第2のゾーンは2つ以上のモレキュラーシーブのブレンドを含んでいてもよい。好ましいブレンドはCHA骨格を有する少なくとも1つのモレキュラーシーブを有し、より好ましくは大部分がCHA骨格である。
【0037】
特に有用なモレキュラーシーブは小細孔ゼオライトである。本明細書で使用される場合、「小細孔ゼオライト」という用語は、8個の四面体の原子の最大環サイズを有するゼオライト骨格を意味する。好ましくは、モレキュラーシーブの主な結晶相は1つ又は複数の小細孔骨格で構成されるが、他のモレキュラーシーブ結晶相も存在してもよい。好ましくは、モレキュラーシーブ材料の全量を基準として、主な結晶相は少なくとも約90重量パーセント、より好ましくは少なくとも約95重量パーセント、さらにより好ましくは少なくとも約98又は少なくとも約99重量パーセントの小細孔モレキュラーシーブ骨格を含む。
【0038】
いくつかの例において、本発明で使用するための小細孔ゼオライトは少なくとも1つの寸法が4.3Å未満である細孔径を有する。一実施形態において、小細孔ゼオライトは、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、及びZONから成る群から選択される骨格を有する。好ましいゼオライト骨格は、AEI、AFT、AFX、CHA、DDR、ERI、LEV、KFI、RHO、及びUEIから選択される。特定の用途において、好ましいゼオライト骨格はAEI、AFT、及びAFX、特にAEIから選択される。特定の用途において、好ましいゼオライト骨格はCHAである。特定の用途において、ERI骨格が好ましい。本発明で有用である特定のゼオライトとしては、SSZ−39、Mu−10、SSZ−16、SSZ−13、Sigma−1、ZSM−34、NU−3、ZK−5、及びMU−18が挙げられる。他の有用なモレキュラーシーブとしては、SAPO−34及びSAPO−18が挙げられる。
【0039】
好ましいアルミノケイ酸塩は約10−約50、例えば約15−約30、約10−約15、15−約20、約20−約25、約15−約18、又は約20−約30のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する。好ましいSAPOは2未満、例えば約0.1−約1.5、又は約0.5−約1.0のSARを有する。モレキュラーシーブのSARは従来の解析によって決定してもよい。この比はモレキュラーシーブ結晶の堅い原子骨格中の比を可能な限り厳密に表すことを意図しており、バインダー中の、又はチャネル内のカチオン形態若しくは他の形態のケイ素又はアルミニウムを除外することを意図している。モレキュラーシーブがバインダー材料(特にアルミナバインダー)と混合された後にモレキュラーシーブのSARを直接測定することは困難な場合があるので、本明細書に記載のSAR値は、モレキュラーシーブそれ自体のSARに関して、すなわちゼオライトを他の触媒成分と混合する前に関して表される。
【0040】
別の例において、第2のゾーンのモレキュラーシーブはSARが1未満であるSAPOである。
【0041】
モレキュラーシーブはアルミニウム以外の骨格金属を含んでいてもよい(すなわち、金属置換ゼオライト)。本明細書で使用される場合、モレキュラーシーブに関する「金属置換」という用語は、1つ又は複数のアルミニウム又はケイ素の骨格原子が置換金属によって置き換えられているモレキュラーシーブ骨格を意味する。対照的に、「金属交換」という用語は、ゼオライトに付随する1つ又は複数のイオン種(例えば、H
+、NH4
+、Na
+など)が金属(例えば、金属イオン又は遊離金属、例えば金属酸化物など)によって置き換えられているモレキュラーシーブを意味し、金属はモレキュラーシーブの骨格原子(例えば、T原子)として取り込まれないが、代わりに分子細孔の中又はモレキュラーシーブ骨格の外表面上に取り込まれる。交換された金属は一種の「骨格外金属」であり、これはモレキュラーシーブ内部及び/又はモレキュラーシーブ表面上の少なくとも一部に、好ましくはイオン種として存在する金属であり、アルミニウムを含まず、モレキュラーシーブの骨格を構成する原子を含まない。「金属を担持するモレキュラーシーブ」という用語は、1つ又は複数の骨格外金属を含むモレキュラーシーブを意味する。本明細書で使用される場合、「アルミノケイ酸塩」及び「シリコアルミノリン酸塩」という用語は、金属置換モレキュラーシーブを除外する。
【0042】
本発明の銅担持モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブ材料の上及び/又は内部に骨格外金属として配置された金属を含む。好ましくは、銅の存在及び濃度は、NO
x還元、NH
3酸化、及びNO
x貯蔵などのプロセスを含めた、排ガスの処理、例えばディーゼルエンジンからの排ガスなどの処理を促進し、一方でN
2Oの形成も抑制する。別段の指定がない限り、モレキュラーシーブ上に担持された銅の量及び触媒中の銅濃度は、対応するモレキュラーシーブの全重量に対する銅に関して表され、したがって基材上の触媒ウォッシュコート担持物の量又は触媒ウォッシュコート中の他の物質の存在とは無関係である。
【0043】
特定の実施形態において、骨格外の銅は、モレキュラーシーブの総重量を基準として約0.1−約10重量パーセント(wt%)、例えば約0.5wt%−約5wt%、約0.5−約1wt%、約1−約5wt%、約2.5wt%−約3.5wt%、及び約3wt%−約3.5wt%の濃度で、第2のゾーンのモレキュラーシーブ中に存在する。
【0044】
銅の他に、モレキュラーシーブは1つ又は複数のさらなる骨格外金属をさらに含んでいてもよいが、ただしさらなる骨格外金属が銅と比較して少量(すなわち、<50mol.%、例えば約1−30mol.%、約1−10mol.%又は約1−5mol.%など)で存在し、鉄を含まないことを条件とする。さらなる骨格外金属は、金属交換モレキュラーシーブを形成するために触媒産業において使用される公認の触媒活性金属の何れか、特に燃焼プロセスから生じる排ガスの処理において触媒活性であることが知られている金属であってもよい。NO
x還元及び貯蔵プロセスにおいて有用な金属が特に好ましい。そのような金属の例としては、金属ニッケル、亜鉛、タングステン、モリブデン、コバルト、チタン、ジルコニウム、マンガン、クロム、バナジウム、ニオブ、並びにスズ、ビスマス、及びアンチモン;白金族金属、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、インジウム、白金など、並びに貴金属、例えば金及び銀などが挙げられる。好ましい遷移金属は卑金属であり、好ましい卑金属としては、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、及びそれらの混合物から成る群から選択されるものが挙げられる。
【0045】
本発明の特定の例において、銅担持モレキュラーシーブは白金族金属を含まない。本発明の特定の例において、銅担持モレキュラーシーブはアルカリ金属及びアルカリ土類金属を含まない。本発明の特定の例において、銅担持モレキュラーシーブは銅以外の遷移金属を含まない。
【0046】
好ましくは、銅はモレキュラーシーブ結晶内に高分散している。遷移金属の担持は好ましくは完全にイオン交換である、及び/又は好ましくはモレキュラーシーブ支持体の交換部位が収容できるよりも少ない。好ましくは、触媒はバルクの酸化銅を含まず若しくは実質的に含まず、外側のモレキュラーシーブ結晶表面上に銅種を含まず若しくは実質的に含まず、及び/又は、温度制御還元(TP)解析及び/又は紫外−可視解析によって測定した場合に銅金属クラスターを含まず若しくは実質的に含まない。
【0047】
一例において、金属交換モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブ、例えばH型モレキュラーシーブ又はNH
4型モレキュラーシーブを、触媒活性金属(複数可)の可溶性前駆体を含有する溶液中に混合することによって作られる。溶液のpHは、モレキュラーシーブ構造の上又は内部(しかしモレキュラーシーブ骨格を含まない)への触媒活性金属カチオンの析出を生じさせるように調整してもよい。例えば、好ましい実施形態において、触媒活性金属カチオンをイオン交換によりモレキュラーシーブ構造に取り込ませるのに十分な時間、金属硝酸塩又は金属酢酸塩を含有する溶液中にモレキュラーシーブ材料を浸す。未交換の金属イオンは析出する。用途に応じて、未交換のイオンの一部は遊離金属としてモレキュラーシーブ材料中に残っていてもよい。次いで金属交換モレキュラーシーブを洗浄、乾燥、及び焼成してもよい。焼成した材料は、モレキュラーシーブの表面上又はモレキュラーシーブの空洞内に存在する酸化銅として一定の割合の銅を含んでいてもよい。
【0048】
一般に、モレキュラーシーブの中又はモレキュラーシーブ上の触媒金属カチオンのイオン交換は、室温で又は約80℃までの温度で、約1−24時間の時間にわたり約7のpHにおいて行ってもよい。得られる触媒モレキュラーシーブ材料を好ましくは乾燥させ、次いで少なくとも約500℃の温度で焼成する。
【0049】
特定の実施形態において、触媒組成物は銅と少なくとも1つのアルカリ金属又はアルカリ土類金属との組み合わせを含み、銅及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属(複数可)はモレキュラーシーブ材料の上又は内部に配置されている。アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、又はそれらのいくつかの組み合わせから選択されてもよい。好ましいアルカリ金属又はアルカリ土類金属としては、カルシウム、カリウム、バリウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0050】
特定の実施形態において、触媒組成物はマグネシウム及び/又はバリウムを本質的に含まない。特定の実施形態において、触媒はカルシウム及びカリウム以外のいかなるアルカリ金属又はアルカリ土類金属も本質的に含まない。特定の実施形態において、触媒はカルシウム以外のいかなるアルカリ金属又はアルカリ土類金属も含まない。特定の実施形態において、触媒はバリウム以外のいかなるアルカリ金属又はアルカリ土類金属も本質的に含まない。特定の他の実施形態において、触媒はカリウム以外のいかなるアルカリ金属又はアルカリ土類金属も本質的に含まない。本明細書で使用される場合、「本質的に含まない」という用語は、材料が感知できる量の特定の金属を有していないことを意味する。すなわち、特定の金属は、特にNO
xを選択的に削減又は貯蔵する材料の能力に関する材料の基本的な物理特性及び/又は化学特性に影響を与えることになる量で存在しない。特定の実施形態において、モレキュラーシーブ材料のアルカリ金属含量は3重量パーセント未満、より好ましくは1重量パーセント未満、さらにより好ましくは0.1重量パーセント未満である。
【0051】
アルカリ/アルカリ土類金属は、イオン交換、含浸、同形置換などの任意の既知の技術によってモレキュラーシーブへ加えることができる。銅及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属は任意の順番でモレキュラーシーブ材料へ加えることができる(例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の前、後、又はそれと同時に金属を交換させることができる)が、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を銅の前に又は銅と同時に加える。
【0052】
本発明の触媒物品は不均一触媒反応系(すなわち、ガス反応物と接触している固体触媒)に適用可能なである。接触面積、機械的安定性、及び/又は流体流動特性を改善するために、SCR触媒をハニカムコージェライト煉瓦などの基材の上及び/又は内部に配置する。特定の実施形態において、触媒組成物の1つ又は複数をウォッシュコート(複数可)として基材に塗布する。あるいは、触媒組成物の1つ又は複数をフィラー、バインダー、及び補強剤などの他の成分と共に混練して、押出成形可能なペーストとし、次いでこれをダイに通して押出ししてハニカム煉瓦を形成させる。
【0053】
本発明の特定の態様は触媒ウォッシュコートを提供する。本明細書に記載の銅を担持したモレキュラーシーブ触媒を含むウォッシュコートは、好ましくは溶液、懸濁液、又はスラリーである。適切なコーティングとしては、表面コーティング、基材の一部に浸透するコーティング、基材に浸透するコーティング、又はそれらのいくつかの組み合わせが挙げられる。
【0054】
ウォッシュコートは、フィラー、バインダー、安定化剤、レオロジー改質剤、及び、アルミナ、シリカ、非モレキュラーシーブシリカアルミナ、チタニア、ジルコニア、セリアのうち1つ又は複数を含む他の添加剤などの、非触媒成分も含んでいてもよい。特定の実施形態において、ウォッシュコート組成物はグラファイト、セルロース、デンプン、ポリアクリラート、及びポリエチレンなどの細孔形成剤を含んでいてもよい。これらのさらなる成分は所望の反応を必ずしも触媒しないが、代わりに例えばその運転温度範囲を上昇させること、触媒の接触面積を増大させること、触媒の基材への接着性を向上させることなどによって、触媒材料の有効性を改善する。特定の実施形態において、銅−触媒のウォッシュコート担持量は>0.3g/in
3、例えば>1.2g/in
3、>1.5g/in
3、>1.7g/in
3、又は>2.00g/in
3など、及び<4.5g/in
3、例えば2−4g/in
3などである。特定の実施形態において、銅−触媒ウォッシュコートは約0.8−1.0g/in
3、1.0−1.5g/in
3、1.5−2.5g/in
3、又は2.5−4.5g/in
3の担持量で基材に塗布される。特定の実施形態において、バナジウム−触媒のウォッシュコート担持量は>0.5g/in
3、例えば>1.5g/in
3、>3g/in
3など、及び好ましくは<6g/in
3、例えば2−5g/in
3などである。特定の実施形態において、バナジウム−触媒ウォッシュコートは約1−2g/in
3、2−3g/in
3、3−5g/in
3、又は5−6g/in
3の担持量で基材に塗布される。特定の実施形態において、バナジウム触媒を含有するウォッシュコートは、銅−触媒ウォッシュコートの担持量と比較してより高い濃度で基材に塗布される。より好ましくは、触媒物品は対応する銅−触媒のウォッシュコートよりも高いバナジウム−触媒のウォッシュコート濃度を有するが、バナジウム担持量と比較してより高い銅の全担持量も有する。そのような実施形態は、例えば銅触媒のウォッシュコートと比較してより小さい区域の基材上に高いウォッシュコート担持量のバナジウム触媒を配置することによって実現できる。
【0055】
特に可動式用途における好ましい基材としては、両端が開口しており一般に基材の入口面から出口面へ延びており高い表面積対体積比をもたらす複数の隣接した平行なチャネルを含む、いわゆるハニカム形状を有するフロースルー型モノリスが挙げられる。特定の用途において、ハニカムフロースルー型モノリスは好ましくは、例えば約600−1000セル毎平方インチの高いセル密度、及び/又は平均約0.18−0.35mm、好ましくは約0.20−0.25mmの内壁厚さを有する。特定の他の用途において、ハニカムフロースルー型モノリスは約150−600セル毎平方インチ、例えば約200−400セル毎平方インチなどの低いセル密度を有する。好ましくは、ハニカムモノリスは多孔性である。コージェライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、セラミック、及び金属に加えて、基材に使用できる他の材料としては、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム、α−アルミナ、ムライト、例えば、針状ムライト、ポルサイト、サーメット(Al
2OsZFe、Al
2O
3/Ni又はB
4CZFeなど)、又はそれらの任意の2つ以上の部分を含む複合材が挙げられる。好ましい材料としては、コージェライト、炭化ケイ素、及びアルミナチタン酸塩が挙げられる。
【0056】
好ましいフィルタ基材としてはディーゼル微粒子フィルタが挙げられ、可動式用途において使用するための好ましいディーゼル微粒子フィルタとしては、ウォールフロー型フィルタ、例えばウォールフロー型セラミックモノリスなどが挙げられる。他のフィルタ基材としては、フロースルー型フィルタ、例えば金属又はセラミックフォーム又は繊維フィルタなどが挙げられる。コージェライト、炭化ケイ素、及びセラミックに加えて、多孔性基材に使用できる他の材料としては、限定はされないが、アルミナシリカ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム、α−アルミナ、ムライト、ポルサイト、ジルコン、ジルコニア、スピネル、ホウ化物、長石、チタニア、溶融シリカ、ホウ化物、セラミック繊維複合材、これらの任意のものの混合物、又はそれらの任意の2つ以上の部分を含む複合材が挙げられる。特に好ましい基材としては、コージェライト、炭化ケイ素、及びチタン酸アルミニウム(AT)が挙げられ、ATが優位の結晶相である。
【0057】
ウォールフロー型フィルタの多孔性壁は、壁を通る排ガス流の典型的な方向に対して、入口側及び出口側を有する。入口側は基材の前面に向かって開口しているチャネルにさらされている入口表面を有し、出口側は基材の背面に向かって開口しているチャネルにさらされている出口表面を有する。
【0058】
ディーゼルエンジン用のウォールフロー型フィルタ基材は典型的には約100−800cpsi(チャネル毎平方インチ)、例えば約100−約400cpsi、約200−約300cpsi、又は約500−約600cpsを含む。特定の実施形態において、壁は約0.1−約1.5mm、例えば約0.15−約0.25mm、約0.25−約0.35mm、又は約0.25−約0.50mmの平均壁厚さを有する。
【0059】
本発明で使用するためのウォールフロー型フィルタは好ましくは少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%の効率を有する。特定の実施形態において、効率は好ましくは約75−約99%、約75−約90%、約80−約90%、又は約85−約95%となる。
【0060】
フィルタの有用な多孔性及び平均細孔径の範囲は特に限定はされないが、触媒コーティングの粒径及び粘度と相関がある、又はそれらを決定するのに使用される。本明細書に記載されるように、フィルタ基材の多孔性及び平均細孔径は裸のフィルタ(例えば、触媒コーティングがない)に基づいて決定される。一般に、基材の多孔性は少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、例えば約50−約80%、約50−約70パーセント、又は約55−約65パーセントである。多孔性は、水銀多孔度測定法を含めた任意の適切な手段によって測定してもよい。一般に、基材の平均細孔径は約8−約40μm、例えば約8−約12μm、約12−約20μm、又は約15−約25μmである。特定の実施形態において、全細孔体積及び/又は全細孔数に基づき、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%の細孔がこれらの範囲内にある。平均細孔径は、水銀多孔度測定法を含めた任意の許容可能な手段によって決定することができる。特定の実施形態において、フィルタ基材は約12−約15μmの平均細孔径及び約50−約55%の多孔性を有する。好ましい実施形態において、フィルタ基材は約18−約20μmの平均細孔径及び約55−約65%の多孔性を有する
【0061】
第1のSCR触媒ゾーンの触媒ウォッシュコートはフィルタの壁の入口側、フィルタの壁の出口側に担持されていてもよく、部分的又は完全にフィルタの壁に浸透してもよく、又はそれらのいくつかの組み合わせであってもよい。特定の実施形態において、フィルタは本明細書に記載の第1又は第2のSCR触媒ゾーンの基材である。例えば、ウォールフロー型フィルタは第1のゾーンの基材として使用でき、フロースルー型ハニカムは第2のゾーンの基材として使用できる。別の例において、フロースルー型ハニカムは第1のゾーンの基材として使用でき、ウォールフロー型フィルタは第2のゾーンの基材として使用できる。第2の基材がウォールフロー型フィルタであるそのような実施形態において、ウォールフロー型フィルタは、ASCゾーンを好ましくはフィルタの出口側に形成するようにNH
3酸化触媒をさらに含んでいてもよい。
【0062】
特定の実施形態において、本発明は本明細書に記載のプロセスによって作られる触媒物品である。特定の実施形態において、触媒物品は、第2のSCR触媒組成物が好ましくはウォッシュコートとして基材に塗布される前又は後の何れの層として、第1のSCR触媒組成物を好ましくはウォッシュコートとして基材に塗布する工程を含むプロセスによって、製造される。
【0063】
特定の実施形態において、第2のSCR触媒組成物は最上層として基材上に配置され、酸化触媒、還元触媒、掃気成分、又はNO
x貯蔵成分などの別の組成物は、最下層として基材上に配置される。
【0064】
一般に、第1のSCR触媒組成物を含有する押出成形固体の製造は、バナジウム成分、金属酸化物支持体、任意選択的にWO
3、バインダー、任意選択の有機粘度上昇化合物をブレンドして均質のペーストとし、次いでこれをバインダー/マトリックス成分又はその前駆体、並びに任意選択的に安定化セリア及び無機ファイバーの1つ又は複数へ加えることを含む。ブレンドは混合装置若しくは混練装置又は押出機の中でまとめられる。混合物は、濡れ性を高めそれにより均一なバッチを製造するための加工助剤として、バインダー、細孔形成剤、可塑剤、界面活性剤、潤滑剤、分散剤などの有機添加剤を有する。得られるプラスチック材料は次いで、特に押出ダイを含む押出プレス又は押出機を使用して成形され、得られる成形品を乾燥及び焼成する。有機添加剤は押出成形固体を焼成する間に「燃えきる」。好ましくはバナジウム成分は、押出触媒体全体にわたって、好ましくは均一に全体にわたって分散している。
【0065】
本発明による押出触媒体は一般に、その第1の端部から第2の端部へ延びる均一なサイズで平行なチャネルを有するハニカムの形態である単位構造を含む。チャネルを画定するチャネル壁は多孔性である。典型的には、外側の「皮」が押出固体の複数のチャネルを取り囲んでいる。押出固体は、円形、正方形、又は楕円形などの任意の所望の断面から形成することができる。複数のチャネルの中の個々のチャネルは正方形、三角形、六角形、円形などであってもよい。
【0066】
本明細書に記載の触媒物品は、窒素系還元剤、好ましくはアンモニアが、窒素酸化物と反応して窒素元素(N
2)及び水(H
2O)を選択的に生成するのを促進することができる。そのような窒素系還元剤の例としては、アンモニア及びアンモニアヒドラジン又は任意の適切なアンモニア前駆体、例えば尿素((NH
2)
2CO)、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、又はギ酸アンモニウムなどが挙げられる。本方法のSCRプロセスは、広い温度範囲(例えば、約150−700℃、約200−350℃、約350−550℃、又は約450−550℃)にわたって、少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%のNO
x(NO及び/又はNO
2)の転化を生じさせることができる。
【0067】
排ガス処理システムは、触媒物品の上流に配置されたNAC及び/又は窒素系還元剤の外部供給源(例えば、アンモニア又は尿素噴射装置)を含んでいてもよい。システムは、例えば100℃を超え、150℃を超え、又は175℃を超える温度でSCR触媒ゾーンが所望の効率で又は所望の効率を超えてNO
x還元を触媒することが可能であると認められる場合にのみ、外部窒素系還元剤を流れる排ガス中に計り入れるための制御装置を含んでいてもよい。窒素系還元剤の計量は、1:1 NH
3/NO及び4:3 NH
3/NO
2で計算して、SCR触媒に入る排ガス中に60%−200%の理論量のアンモニアが存在するように設定することができる。
【0068】
重大なことであるが、本発明によるゾーン化触媒の使用は従来のSCR触媒と比較して少量のN
2O副生成物を生じる。すなわち、本方法のSCRプロセスは、SCR入口におけるNO及び/又はNO
2を基準としてわずかなN
2Oの生成しか生じさせないことが可能である。例えば、広い温度範囲(例えば、約150−700℃、約200−350℃、約350−550℃、又は約450−550℃)にわたって、SCR触媒後の出口N
2O濃度と比較したSCR触媒における入口NO濃度の相対比は約25を超え、約30を超え(例えば約30−約40)、約50を超え、約80を超え、又は約100を超える。別の例において、広い温度範囲(例えば、約150−700℃、約200−350℃、約350−550℃、又は約450−550℃)にわたって、SCR触媒後の出口N
2O濃度と比較したSCR触媒における入口NO
2濃度の相対比は約50を超え、約80を超え、又は約100を超える。
【0069】
本明細書に記載の金属担持モレキュラーシーブ触媒は、アンモニアの貯蔵若しくは酸化を促進することができ、又はアルミナ上に支持される白金及び/又はパラジウムなどの酸化触媒と併用することができ、アンモニアの酸化を促進し酸化プロセスによる望ましくないNO
xの形成を制限することもできる(すなわち、アンモニアスリップ触媒(ASC))。特定の実施形態において、本発明の触媒物品は基材の出口端にASCゾーンを含む。他の実施形態において、アンモニアスリップ触媒はゾーン化SCR触媒の下流で別の煉瓦上に配置されている。これらの別々の煉瓦は、それらが互いにと流体連通しておりSCR触媒の煉瓦がアンモニアスリップ触媒の煉瓦の上流に配置されているならば、互いに隣接し接触していてもよく、又は特定の距離で隔てられていてもよい。
【0070】
特定の実施形態において、SCR及び/又はASCプロセスは少なくとも100℃の温度で行われる。別の実施形態において、プロセス(複数可)は約150℃−約750℃の温度で行われる。特定の実施形態において、温度範囲は約175−約550℃である。別の実施形態において、温度範囲は175−400℃である。さらに別の実施形態において、温度範囲は450−900℃、好ましくは500−750℃、500−650℃、450−550℃、又は650−850℃である。
【0071】
本発明の別の態様によれば、ガス中のNO
x化合物の還元及び/又はNH
3の酸化の方法であって、ガス中のNO
x化合物のレベルを低下させるのに十分な時間、ガスを本明細書に記載の触媒と接触させる工程を含む、方法が提供される。本発明の方法は以下の工程:(a)フィルタの入口に接触しているすすを蓄積及び/又は燃焼させる工程と;(b)好ましくはNO
x及び還元剤の処理を含む触媒工程を介在させずに、SCR触媒に接触する前に窒素系還元剤を排ガス流へ導入する工程と;(c)NO
x吸着触媒上又はリーンNO
xトラップ上でNH
3を生成させ、好ましくは下流のSCR反応における還元剤としてそのようなNH
3を使用する工程と;(d)排ガス流をDOCと接触させて、炭化水素系可溶性有機成分(SOF)及び/又は一酸化炭素を酸化してCO
2とする、及び/又はNOを酸化してNO
2とし、微粒子フィルタ中の粒子状物質を酸化させるのにこれを使用する;及び/又は排ガス中の粒子状物質(PM)を削減する工程と;(e)還元剤の存在下で排ガスを1つ又は複数の下流のSCR触媒デバイス(複数可)(フィルタ又はフロースルー型基材)と接触させて排ガス中のNOx濃度を減少させる工程と;(f)排ガスを雰囲気中に排出する前に、又は排ガスがエンジンへ入る/再び入る前に排ガスを再循環ループに通す前に、排ガスを好ましくはSCR触媒の下流にあるアンモニアスリップ触媒と接触させて、アンモニアのすべてではないが大部分を酸化させる工程のうち、の1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0072】
本明細書に記載のシステムは排ガスを処理するための少なくとも1つのさらなる成分を含んでいてもよく、第1及び第2のSCRゾーン並びに少なくとも1つのさらなる成分は一体のユニットとして機能するように設計されている。ゾーン化SCR触媒物品及び少なくとも1つのさらなる成分は、任意選択的にシステムを通して排ガスを誘導するための導管の1つ又は複数の区分によって、流体連通している。
【0073】
一実施形態において、SCRプロセスで消費される窒素系還元剤(特にNH
3)のすべて又は少なくとも一部は、SCR触媒の上流に配置されるNO
x吸着触媒(NAC)、リーンNO
xトラップ(LNT)、又はNO
x貯蔵/還元触媒(NSRC)、(集合的にNAC)によって供給することができる。特定の実施形態において、NACはゾーン化SCR触媒と同じフロースルー型基材上にコーティングされている。そのような実施形態において、NAC及びSCR触媒は順にコーティングされており、NACはSCRゾーンの上流にある。
【0074】
本発明で有用なNAC成分としては、塩基性材料(アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、及びそれらの組み合わせを含めた、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は希土類金属など)、及び貴金属(白金など)、及び任意選択的にロジウムなどの還元触媒成分の触媒の組み合わせが挙げられる。NACに有用な塩基性材料の具体的な種類としては、酸化セシウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。貴金属は好ましくは約10−約200g/ft
3、例えば20−60g/ft
3などで存在する。あるいは、触媒の貴金属は平均濃度によって特徴づけられ、平均濃度は約40−約100グラム/ft
3であってもよい。
【0075】
特定の条件下で、定期的なリッチ再生イベントの間に、NH
3をNO
x吸着触媒上で生成させてもよい。NO
x吸着触媒の下流にあるSCR触媒はシステム全体のNO
x還元効率を改善することができる。組み合わせシステムでは、SCR触媒はリッチ再生イベントの間にNAC触媒からの放出されたNH
3を貯蔵することが可能であり、貯蔵されたNH
3を利用して、通常のリーン運転条件の間にNAC触媒をすり抜けるNO
xの一部又はすべてを選択的に低減する。
【0076】
排ガス処理システムは、排ガス中の一酸化窒素を酸化して二酸化窒素とするための酸化触媒(例えば、ディーゼル酸化触媒(DOC))を含んでいてもよく、これは窒素系還元剤を排ガス中に量り入れるポイントの上流に配置することができる。一実施形態において、酸化触媒は、例えば200℃−550℃である酸化触媒入口の排ガス温度において、NO対NO
2の体積比が約20:1−約1:10であるSCRゼオライト触媒に入るガス流を得るように適合される。酸化触媒は、フロースルー型モノリス基材上にコーティングされた、白金、パラジウム、又はロジウムなどの少なくとも1つの白金族金属(又はこれらのいくつかの組み合わせ)を含んでいてもよい。一実施形態において、少なくとも1つの白金族金属は白金、パラジウム、又は白金及びパラジウム両方の組み合わせである。白金族金属は、高表面積ウォッシュコート成分の上、例えばアルミナ、ゼオライトなどの上、例えばアルミノケイ酸塩ゼオライト、シリカ、非ゼオライトシリカアルミナ、セリア、ジルコニア、チタニア、又はセリア及びジルコニアの両方を含有する混合酸化物若しくは複合酸化物などの上に支持させることができる。
【0077】
排ガス処理システムは第2のフロースルー型モノリス上又はウォールフロー型フィルタ上にさらなるSCR触媒を含んでいてもよく、さらなるSCRを含有する第2のフロースルー型モノリス又はウォールフロー型フィルタは、本明細書に記載の第1及び第2のSCR触媒ゾーンの上流又は下流に配置され、第1及び第2のSCR触媒ゾーンと流体連通している。さらなるSCR触媒は、好ましくは金属交換ゼオライト、例えばFe−Beta、Fe−鉄−同形Beta、Fe−ZSM5、Fe−CHA、Fe−ZSM−34、Fe−AEI、Cu−Beta、Cu−ZSM5、Cu−CHA、Cu−ZSM−34、又はCu−AEIなどである。
【0078】
排ガス処理システムは、ウォールフロー型フィルタなどの適切な微粒子フィルタを含んでいてもよい。適切なフィルタとしては、排ガス流からのすすを除去するのに有用なフィルタが挙げられる。フィルタは裸で受動的に再生されてもよく、又はすす燃焼触媒若しくは加水分解触媒を含んでいてもよい。フィルタは排ガス処理システムにおいてSCR触媒の上流又は下流の何れかに配置することができる。好ましくは、DOCが存在する場合はフィルタはDOCの下流に配置される。裸のフィルタ(すなわち触媒コーティングがない)、及びゾーン化SCR触媒の上流にあるアンモニア噴射装置を含む実施形態において、噴射装置は、ゾーン化SCR触媒の上流に配置されているならば、フィルタの上流又は下流に配置されてもよい。加水分解触媒を含有するフィルタ及び下流のゾーン化SCR触媒を有する実施形態において、アンモニア噴射装置は好ましくはフィルタの上流に配置される。
【0079】
図10を見ると、内燃機関501、排ガス処理システム502、システムを通る排ガスの流れの方向1、任意選択のDOC510及び/又は任意選択のNAC520、任意選択の微粒子フィルタ570、任意選択のアンモニアの外部供給源及び噴射装置530、第1及び第2のSCR触媒ゾーンを含むゾーン化SCR触媒540、任意選択のさらなるSCR触媒550、並びに任意選択のASC560を含む、排ガス処理システムが示される。
【0080】
図11Aは、好ましくはフィルタの出口側からコーティングされた第1のSCR触媒ゾーンを含有するウォールフロー型フィルタ620の上流に、受動的NOx吸収剤(PNA)610を含む、排ガス処理システムを示す。PNAは、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属、例えばバリウム、ストロンチウム、カリウムなど、並びに金属酸化物、例えばBaO、TiO
2、ZrO
2、CeO
2、及びAl
2O
3などを含有していてもよい。好ましくはPNAは、PGM、例えばロジウム、パラジウム、白金など、又はパラジウム及び白金などの金属の組み合わせ;小細孔骨格又は大細孔骨格を有するものを含めたゼオライトであって、具体例はCHA、AEI、AFX、BEA、MOR、FER、LEV、及びERIである、ゼオライト;金属酸化物、例えば酸化バリウム、酸化セリウム、又はセリウム若しくはバリウムを含有する混合金属酸化物など;並びに遷移金属のうち、1つ又は複数を含有する。好ましくは、PGM又は遷移金属は金属酸化物又はゼオライトによって支持されている。特定の実施形態において、PNAは、小細孔ゼオライト上に支持されたPdなどのPGM、及びFERなどのゼオライト上に支持されたFeなどの金属を含む。適切なPGM担持量は例えば1−120g/ft
3であってもよい。PNAの個々の成分は、層状であるか又は単一のウォッシュコート中で組み合わされていてもよい。
【0081】
図11Aに示されるシステムは、フィルタの下流に配置される第2のSCR触媒ゾーンを含有するフロースルー型基材をさらに含む。システムは好ましくは、
図6Aに示される配置と同様に、フロースルー型基材の下流にある別の煉瓦として又はフロースルー型基材の背面上にアンモニアスリップ触媒を含む。システムは、SCR還元剤620の供給源、例えばアンモニア又はアンモニア前駆体をシステム中に導入するための噴射装置などを任意選択的に含んでいてもよい。
【0082】
図11Aのウォールフロー型フィルタは好ましくはフロースルー型基材の近位であるが、2つの間の距離は特に限定されない。好ましくは、ユニット630と640との間又は610と630との間に介在する触媒又はフィルタがない。好ましくは、第2のSCR触媒ゾーンとASCとの間に介在する触媒がない。好ましくは、エンジンとPNAとの間又は第2のSCR触媒ゾーン若しくはASCの下流に介在する排ガス処理触媒がない。
【0083】
別の構成が
図11Bに示され、PNA及び第1のSCR触媒ゾーンがウォールフロー型フィルタ635上にコーティングされている。ここで、PNAは壁表面上のウォッシュコートとしてフィルタの入口側からコーティングされ及び/又は部分的に壁に浸透しており、第1のSCR触媒ゾーンは壁表面上のウォッシュコートとしてフィルタの出口側からコーティングされ及び/又は部分的に壁に浸透している。システムは、フィルタの下流に配置された第2のSCR触媒ゾーンを含有するフロースルー型基材をさらに含む。システムは好ましくは、
図6Aに示される配置と同様に、第1及び第2のSCR触媒ゾーンの下流にある別の基材上又は第2のSCR触媒ゾーンを含有するフロースルー型基材の背面上にアンモニアスリップ触媒を含む。第1の還元剤供給部(例えば、噴射装置)はフィルタの上流に配置され、PNAによる還元剤の酸化を引き起こさない条件下で(例えば、400℃未満の温度で)還元剤をシステムに供給する。任意選択の第2の還元剤供給部(例えば、噴射装置)は第1のSCR触媒ゾーンと第2のSCR触媒ゾーンとの間に配置され、第1の還元剤供給部とは独立に、又は連動して動作する。
【0084】
図11Bのウォールフロー型フィルタは好ましくはフロースルー型基材の近位であるが、2つの間の距離は特に限定されない。好ましくは、ユニット635と640との間に介在する触媒又はフィルタがない。好ましくは、第2のSCR触媒ゾーンとASCとの間に介在する触媒がない。好ましくは、エンジンとPNAとの間又は第2のSCR触媒ゾーン若しくはASCの下流に介在する排ガス処理触媒がない。
【0085】
本明細書に記載の排ガスの処理方法は、燃焼プロセスから、例えば内燃機関(可動式か固定式かに関わらず)、ガスタービン、及び石炭又は石油火力発電所などから生じる排ガスに対して実施することができる。この方法は、精製などの工業プロセスから、精油所のヒータ及びボイラ、炉、化学処理工業、コークス炉、都市ゴミ処理プラント及び焼却炉などからのガスを処理するのにも使用してもよい。特定の実施形態において、この方法は、ディーゼルエンジン、希薄燃焼ガソリンエンジン、又は液化石油ガス若しくは天然ガスで駆動するエンジンなどの、自動車希薄燃焼内燃機関からの排ガスを処理するのに使用される。
第1のSCR触媒ゾーンが金属酸化物の総重量を基準として0.5−4重量パーセントのバナジウムを含み、第2のSCR触媒ゾーンがモレキュラーシーブの総重量を基準として1−4重量パーセントの銅を含む、請求項1に記載のシステム。
第1及び第2のSCR触媒ゾーンが、入口端、出口端、及び入口端から出口端まで測定された軸長を有するフロースルー型ハニカム基材上にコーティングされており、第1及び第2のSCR触媒ゾーンが隣接するか又は少なくとも部分的に重なる、請求項1又は2に記載のシステム。
第1のSCR触媒ゾーンが、軸長を有する押出バナジウム触媒のハニカムであり、第2のSCRゾーンが、軸長の10−90パーセントを覆うウォッシュコートである、請求項1又は2に記載のシステム。
第1のSCR触媒ゾーンが、入口側及び出口側を有するウォールフロー型フィルタ上にあり、第2のSCR触媒ゾーンが、フロースルー型ハニカム基材上にあり、ただし第1のSCR触媒ゾーンと第2のSCR触媒ゾーンとの間に介在する触媒がないことを条件とする、請求項1又は2に記載のシステム。
エンジンマニホールド又はターボチャージャー、及びエンジンマニホールド又はターボチャージャーから部分的NOx吸収剤へ排ガスを流すための導管をさらに含み、ただしシステムがエンジンマニホールド又はターボチャージャーと部分的NOx吸収剤との間に排ガス処理触媒を何も含まないことを条件とする、請求項11に記載のシステム。
エンジンマニホールド又はターボチャージャー、及びエンジンマニホールド又はターボチャージャーから部分的NOx吸収剤へ排ガスを流すための導管をさらに含み、ただしシステムがエンジンマニホールド又はターボチャージャーと部分的NOx吸収剤との間に排ガス処理触媒を何も含まないことを条件とする、請求項13に記載のシステム。