(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-110923(P2020-110923A)
(43)【公開日】2020年7月27日
(54)【発明の名称】包装用積層体及びこれを用いた包装袋
(51)【国際特許分類】
B32B 27/10 20060101AFI20200626BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20200626BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20200626BHJP
B65D 30/02 20060101ALN20200626BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B27/32 102
B65D65/40 D
B65D30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-916(P2019-916)
(22)【出願日】2019年1月8日
(71)【出願人】
【識別番号】390000387
【氏名又は名称】福助工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】手塚 康史
(72)【発明者】
【氏名】石川 和弘
(72)【発明者】
【氏名】森賀 美咲
【テーマコード(参考)】
3E064
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E064AA01
3E064BA01
3E064BA05
3E064BA24
3E064BA26
3E064BA27
3E064BA30
3E064BB03
3E064BC20
3E064GA04
3E086AA23
3E086AC34
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB66
3E086CA01
4F100AK07D
4F100AK62B
4F100AK62C
4F100AK66C
4F100AL05C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100DG10A
4F100EJ38D
4F100GB15
4F100JA04
4F100JK08
(57)【要約】
【課題】包装袋のポリプロピレン系フィルムと、紙基材との間に引張力が作用しても、収容物が包装袋から落ちる危険性を抑制可能な包装袋及びこれに用いる包装用積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリプロピレン系フィルム6と重ね合わせ、周縁部をヒートシールして包装袋を形成するための包装用積層体1であって、紙基材2、第一樹脂層3及び第二樹脂層4がこの順に積層された積層構造を有し、第一樹脂層3はエチレン−α−オレフィン共重合体から構成され、第二樹脂層4は、少なくともプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を含有する樹脂組成物から構成されたことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系フィルムと重ね合わせ、周縁部をヒートシールして包装袋を形成するための包装用積層体であって、紙基材、第一樹脂層及び第二樹脂層がこの順に積層された積層構造を有し、前記第一樹脂層はエチレン−α−オレフィン共重合体から実質的に構成され、前記第二樹脂層は、少なくともプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を含有する樹脂組成物から構成されたことを特徴とする包装用積層体。
【請求項2】
前記樹脂組成物は、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体と、エチレン−α−オレフィン共重合体とを含有することを特徴とする請求項1に記載の包装用積層体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の包装用積層体の第二樹脂層の表面に、ポリプロピレン系フィルムを重ね合わせてその周縁部をヒートシールしてなる包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系フィルムと重ね合わせてその周縁部をヒートシールして袋体を形成するための包装用積層体及びこの包装用積層体を用いた包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、包装袋として、紙基材と、ポリプロピレン系フィルムとを重ね合わせて周縁部をヒートシールした構成のものが知られている(特許文献1参照)。この種の包装袋においては、
図5及び
図6に示すように、紙基材30とポリプロピレン系フィルム31とをヒートシール可能とするために、紙基材30にポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂からなるシーラント層32を積層した包装用積層体33を用いている。
【0003】
そして、包装用積層体33のシーラント層32とポリプロピレン系フィルム31とを重ね合わせ、その周縁部をヒートシールしてシール部34を形成している。上記構成の包装袋は、保形性が良好で、意匠性及び耐油性に優れており、内容物の視認可能であることから、サンドイッチ、パン、揚げ物等の惣菜を包装する包装袋などに使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−189945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記構成の包装袋においては、ポリプロピレン系フィルム31と紙基材30とがシーラント層32を介して強固に接着している。そのため、たとえば、パン等の容積の大きい収容物を袋内に収容したときに、
図7及び
図8に示すように、収容物によって包装袋のポリプロピレン系フィルム31と紙基材30との間が押し広げられて両者に引張力が作用する。
【0006】
それにより、包装袋のシール部34の内縁に沿ってシーラント層32が破断し、さらにシール部34において紙基材30の表面近くで凝集剥離が生じてポリプロピレン系フィルム31が紙基材30から剥離する。このとき、ポリプロピレン系フィルム31側には、シール部34のシーラント層34及び一部の紙基材30が付着した状態となる。このようにしてシール部34が開放され、開放されたシール部34から収容物が外に落ちるといった問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明においては、包装袋のポリプロピレン系フィルムと、紙基材との間に引張力が作用しても、収容物が包装袋から落ちる危険性を抑制可能な包装袋及びこれに用いる包装用積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様としての包装用積層体は、ポリプロピレン系フィルムと重ね合わせ、周縁部をヒートシールして包装袋を形成するためのものであって、前記積層体は、紙基材、第一樹脂層及び第二樹脂層がこの順に積層された積層構造を有し、前記第一樹脂層はエチレン−α−オレフィン共重合体から実質的に構成され、前記第二樹脂層は、少なくともプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を含有する樹脂組成物から構成されたことを特徴とする。
【0009】
上記樹脂組成物は、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体と、エチレン−α−オレフィン共重合体とを含有するようにしてもよい。
【0010】
上記包装用積層体は、第二樹脂層の表面に、ポリプロピレン系フィルムを重ね合わせてその周縁部をヒートシールして包装袋とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
上記態様によれば、ポリプロピレン系フィルムと重ね合わせてヒートシールする包装用積層体において、紙基材の上に、第一樹脂層及び第二樹脂層がこの順に積層された積層構造のシーラント層を有し、第一樹脂層はエチレン−α−オレフィン共重合体から実質的に構成し、前記第二樹脂層は、少なくともプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を含有する樹脂組成物から構成したため、包装袋のポリプロピレン系フィルムと、紙基材との間に引張力が作用した場合に、シーラント層として第一樹脂層及び第二樹脂層が一体的に伸びつつ、第一樹脂層が紙基材から剥離する。すなわち、シーラント層が破断しにくくなり、収容物が包装袋から落下する危険性を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図1のA−A断面の右側端部を示す一部拡大図
【
図3】
図2においてシーラント層が剥離した状態を示す図
【
図6】
図5のB−B断面の右側端部を示す一部拡大図
【
図7】
図6においてシーラント層が剥離した状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面をもとに説明する。
図1は本実施形態における包装用積層体を用いた包装袋を示す正面図であり、
図2は
図1のA−A断面(左右方向の断面)の右側端部を示す一部拡大図である。
【0014】
図示のごとく、包装用積層体1は、紙基材2の上に、第一樹脂層3及び第二樹脂層4がこの順に積層された積層構造のシーラント層5を有する。包装用積層体1は、シーラント層5側と接触するようにポリプロピレン系フィルム6を重ね合わせ、その周縁部をヒートシールすることで包装袋が形成される。
【0015】
本実施形態では、包装袋の左右端部及び下端部の三方がヒートシールされ、右シール部7、左シール部8及び下シール部9が連続形成される。
図1中、黒色矢印は、包装袋の左右方向Xと、上下方向Yとを示す。本実施形態では、上下方向Yと包装用積層体1のシーラント層5のMD方向(Machine Direction)とが一致するように形成される。すなわち、右シール部7及び左シール部8がMD方向に沿ったシール部とされ、下シール部9がTD方向(Traverse Direction)に沿ったシール部とされる。
【0016】
第一樹脂層3は、エチレン−α−オレフィン共重合体から実質的に構成される。エチレンと共重合させるα−オレフィンは、炭素数は特に限定されないが、ブテン、ヘキセン、またはオクテンであることが好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体としては、具体的に、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や、超低密度ポリエチレン(ULDPE)等を挙げることができ、これらをそれぞれ単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0017】
ここで、「実質的に」とは、エチレン−α−オレフィン共重合体の特性に影響を与えない範囲であれば、エチレン−α−オレフィン共重合体以外のポリエチレンを少量添加することが可能であることを意味する。この場合、添加するポリエチレンの種類としては、具体的に、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)を挙げることができる。また、ポリエチレンの添加量としては、第一樹脂層3を構成する樹脂組成物全体に対して10重量%未満が好ましく、5重量%未満がより好ましい。
【0018】
第二樹脂層4は、少なくともプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(以下、ポリプロピレンランダムコポリマーと称する)を含有する樹脂組成物から構成される。プロピレンと共重合させるα−オレフィンとしては、プロピレン以外であれば炭素数は特に限定されないが、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンを挙げることができる。
【0019】
ポリプロピレンランダムコポリマーは、柔軟性及び靭性に優れるという特性を備えており、このような特性を備えた第二樹脂層と、密着性及びヒートシール性に優れた第一樹脂層とを積層することにより、引張力が作用しても破断することなく、伸びながら紙基材から剥離可能なシーラント層を得ることができる。
【0020】
第二樹脂層4を構成する樹脂組成物は、ポリプロピレンランダムコポリマーを単独使用することができる。この場合、MD方向に沿って形成される右シール部7及び左シール部8におけるシーラント層5の伸びが大きくなる。したがって、
図2及び
図3に示すように、右シール部7又は左シール部8において、ポリプロピレン系フィルム6と、包装用積層体1との間に引張力が作用したときに、シーラント層5が一体的に伸びながら第一樹脂層3が紙基材2から剥離する。すなわち、シーラント層5が包装袋の一種のマチのような機能を発揮し、収容物が包装袋から落下するのを抑制することができる。
【0021】
第二樹脂層4を構成する樹脂組成物は、ポリプロピレンランダムコポリマーと、エチレン−α−オレフィン共重合体とを含有するようにしてもよい。エチレン−α−オレフィン共重合体については、第一樹脂層3において用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体と同様であり、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や、超低密度ポリエチレン(ULDPE)等を挙げることができる。
【0022】
ポリプロピレンランダムコポリマーと、エチレン−α−オレフィン共重合体との配合割合については、樹脂の伸びを考慮すれば、ポリプロピレンランダムコポリマーを樹脂組成物全体の50重量%以上とするのが好ましい。また、第二樹脂層の樹脂の均質性(樹脂層の平滑性及び透明性)を考慮すれば、ポリプロピレンランダムコポリマーを樹脂組成物全体の70重量%以上とするのがより好ましい。
【0023】
上記構成によれば、MD方向のみならず、TD方向に沿って形成されたシール部においてもシーラント層5の伸びが大きくなる。したがって、本実施形態の場合、プロピレン系フィルム6と包装用積層体1との間に引張力が作用したときに、すべてのシール部7、8及び9において、シール部の内縁に沿ってシーラント層5が破断するのを抑制し、これにより、収容物が包装袋から落ちる危険性を抑制することができる。
【0024】
紙基材2としては、例えば純白紙、未晒クラフト紙、片艶クラフト紙、レーヨン紙、色クラフト紙、竹皮紙等を使用することができる。紙基材2の坪量としては、特に制限はないが、柔軟性及び強度のバランスを考慮すると、坪量15g〜50g/m
2が好ましい。
【0025】
樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリオレフィン樹脂に一般的に用いられている添加剤、具体的には、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、安定剤、紫外線吸収剤等を添加してもよい。
【実施例】
【0026】
[包装用積層体及び包装袋の作製]
本実施例では、上記実施形態で示した包装用積層体及び包装袋を作製して、シール部の伸び(シール伸度)を評価した。具体的には下記ポリエチレン及びポリプロピレンを使用して第一樹脂層の樹脂組成物と第二樹脂層の樹脂組成物を調製した。押出ラミネート機を用いて第一樹脂層の樹脂組成物の加熱温度315℃、第二樹脂層の樹脂組成物の加熱温度315℃、押出速度180m/minにて、紙基材(坪量30g/m
2、純白紙)の上に、シーラント層として第一樹脂層、第二樹脂層をこの順に積層し(第一樹脂層厚:6μm、第二樹脂層厚:6μm)、10種類のシート状の包装用積層体を作製した(表1及び表2参照)。
【0027】
得られた包装用積層体の第二樹脂層の上にヒートシール性の二軸延伸ポリプロピレン系フィルム(厚み:20μm、サン・トックス社製KF51)を重ね合わせてシールして包装袋を作製した。具体的に、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムは、ポリプロピレン製基材にヒートシール性樹脂層が積層された積層構造を備え、ヒートシール性樹脂層と第二樹脂層とを重ね合わせるようにしてヒートシールした。このときのシール条件は、ポリプロピレン系フィルム6と接する上部シールバー温度:140℃、紙基材2と接する下部シールバー温度:80℃、シール圧力:2.0Kg/cm
2であった。
【0028】
以下に、実施例で使用したポリエチレン及びポリプロピレンを記す。なお、( )内の数値はそれぞれ(密度:g/cm
3、MFR:g/10分、融点:℃)を示す。
<使用ポリエチレン>
・NH645A:日本ポリエチレン社製LLDPE(0.913、8.0、121)
・SP1540:プライムポリマー社製LLDPE(0.913、3.8、113)
・SP1520:プライムポリマー社製LLDPE(0.913、2.0、116)
・KF360T:日本ポリエチレン社製ULDPE(0.898、3.5、 90)
・SP0540:プライムポリマー社製LLDPE(0.903、3.8、 98)
・L420 :住友化学社製 LDPE (0.919、3.5、106)
【0029】
<使用ポリプロピレン>
・PH943B:サンアロマー社製ポリプロピレンランダムコポリマー
(0.9、21、137)
・PHA03A:サンアロマー社製ポリプロピレンホモポリマー
(0.9、42、163)
・PC684S:サンアロマー社製ポリプロピレンブロックコポリマー
(0.9、6.0、160)
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
[評価試験]
JIS Z0238に準拠して試料を作製した。試料を引張試験機にセットし、つかみ間の相対移動速度を300±20mm/minで試料を引っ張り、シール部が破断したときのフィルムの長さを測定して、以下の式にてシール伸度を求めた。
シール伸度(%)=((破断時のフィルム長さ)/(元のフィルム長さ))×100
なお、上記式中のフィルムとは、ここではシーラント層を意味する。シール伸度の測定はn=5で行ない、その平均値をシール伸度値とした。測定結果を表1及び表2に記す。
【0033】
[評価結果]
表1より、第一樹脂層及び第二樹脂層を同じLLDPEを用いることにより、実質的にシーラント層をLLDPE単層で構成したNo.5は、シール伸度は小さい。第二樹脂層の樹脂組成物としてポリプロピレンを用いたNo.1〜3のうち、ポリプロピレンランダムコポリマーを使用したNo.1のみがMD方向のシール部におけるシール伸度が大幅に向上する結果となった。
【0034】
第二樹脂層を構成する樹脂組成物として、ポリプロピレンランダムコポリマーとエチレン−α−オレフィン共重合体とを混合したNo.6〜9については、MD方向及びTD方向ともシール伸度が大幅に向上した。一方、第二樹脂層を構成する樹脂組成物として、ポリプロピレンランダムコポリマーと低密度ポリエチレン(LDPE)とを混合したNo.10についてはTD方向のシール伸度の向上効果は認められなかった。
【0035】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。たとえば、本実施形態では、マチのない包装袋について説明したが、これに限らず、マチつきの包装袋であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 包装用積層体
2 紙基材
3 第一樹脂層
4 第二樹脂層
5 シーラント層
6 ポリプロピレン系フィルム
7 右シール部
8 左シール部
9 下シール部