【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 高分子学会予稿集第67巻2号〔2018〕3Pc059「π共役系高分子を導入した新規有機−無機ペロブスカイト化合物の作製(II)−光学特性に及ぼすカチオン種の影響−」にて公開 公開日 平成30年8月29日 〔刊行物等〕 第79回応用物理学会秋季学術講演会にて発表 公開日 平成30年9月19日 〔刊行物等〕 第28回日本MRS年次大会のホームページのhttps://www.mrs−j.org/meeting2018/jp/上の「Abstract」のF7−P19−005「Fabrication of novel organic−inorganic perovskites using π−conjugated polymers(IV)−Steric effect of cations−」にて公開 公開日 平成30年12月5日 〔刊行物等〕 第28回日本MRS年次大会にて発表 公開日 平成30年12月19日
Mが、鉛原子、錫原子、インジウム原子、アンチモン原子、ゲルマニウム原子、カドミウム原子、クロム原子、マンガン原子、鉄原子、コバルト原子、及び銅原子からなる群から選ばれる金属原子である、請求項3に記載のペロブスカイト化合物。
電子輸送層と、ホール輸送層と、前記電子輸送層と前記ホール輸送層との間に配置された光吸収層とを備える光電変換素子であって、前記光吸収層が、請求項1〜8の何れか1項に記載のペロブスカイト化合物を含む光電変換素子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、層状ペロブスカイトの基板に対する垂直配向性、及び耐熱性に優れた新規の有機・無機ペロブスカイト化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を達成すべく、本発明者らは鋭意検討した結果、これまで用いられていた有機アンモニウムの代わりに有機ホスホニウムを用いることにより、得られる層状ペロブスカイトの基板に対する垂直配向性、及び耐熱性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] ハロゲン化金属とホスホニウムからなるペロブスカイト化合物であって、ホスホニウムが4個以上の炭素原子を有するペロブスカイト化合物。
[2] ホスホニウムが、一般式:R
1R
2R
3R
4P
+〔式中、R
1は、置換基を有していてもよい炭素原子数4以上の炭化水素基を示し、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素原子数1〜6の炭化水素基を示す。〕で表されるホスホニウムである、上記[1]に記載のペロブスカイト化合物。
[3] 一般式:(R
1R
2R
3R
4P)
2MX
4、(R
1R
2R
3R
4P)
4M
3X
10、又は(R
1R
2R
3R
4P)
2MX
6〔式中、R
1は、置換基を有していてもよい炭素原子数4以上の炭化水素基を示し、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素原子数1〜6の炭化水素基を示し、Mは、金属原子を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。〕の何れかで表される上記[1]又は[2]に記載のペロブスカイト化合物。
[4] R
1が、炭素原子数4〜18の炭化水素基である、上記[2]又は[3]に記載のペロブスカイト化合物。
[5] R
1が、炭素原子数4〜18の直鎖のアルキル基である、上記[2]〜[4]の何れかに記載のペロブスカイト化合物。
[6] R
2、R
3及びR
4が、メチル基である、上記[2]〜[5]の何れかに記載のペロブスカイト化合物。
[7] Mが、鉛原子、錫原子、インジウム原子、アンチモン原子、ゲルマニウム原子、カドミウム原子、クロム原子、マンガン原子、鉄原子、コバルト原子、及び銅原子からなる群から選ばれる金属原子である、上記[3]に記載のペロブスカイト化合物。
[8] Mが、鉛原子である、上記[7]に記載のペロブスカイト化合物。
[9] 上記[1]〜[8]の何れかに記載のペロブスカイト化合物を含む薄膜。
[10] 上記[1]〜[8]の何れかに記載のペロブスカイト化合物を含む光吸収材料。
[11] 電子輸送層と、ホール輸送層と、前記電子輸送層と前記ホール輸送層との間に配置された光吸収層とを備える光電変換素子であって、前記光吸収層が、上記[1]〜[8]の何れかに記載のペロブスカイト化合物を含む光電変換素子。
[12] 上記[11]に記載の光電変換素子を備える太陽電池。
【発明の効果】
【0009】
本発明のペロブスカイト化合物によれば、基板に対する垂直配向性、及び耐熱性に優れた層状ペロブスカイトを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
本発明は、ハロゲン化金属とホスホニウムからなるペロブスカイト化合物であって、ホスホニウムが4個以上の炭素原子を有するペロブスカイト化合物(以下「本発明のペロブスカイト化合物」という場合がある)を提供する。ハロゲン化金属とホスホニウムからなるペロブスカイト化合物は、アニオン性のハロゲン、カチオン性の金属、及びカチオン性のホスホニウムで構成される。
【0013】
本発明のペロブスカイト化合物を構成するホスホニウムは、化学的に安定した4個以上の炭素原子を有するホスホニウムである限り特に限定されるものではない。ここで、4個以上の炭素原子を有するホスホニウムとは、1個以上の有機基を有するホスホニウム(PH
4+)であって、当該有機基が合計で4個以上の炭素原子を含んでいるものを意味している。当該有機基は、従来の有機・無機ペロブスカイト化合物における有機アンモニウムが有するような有機基であればよい。ホスホニウムは、1級ホスホニウム、2級ホスホニウム、3級ホスホニウム、及び4級ホスホニウムの何れであってもよい。
【0014】
本発明のペロブスカイト化合物を構成するハロゲン原子は、特に限定されるものではないが、好ましくは、塩素原子、臭素原子、及び/又はヨウ素原子であり、より好ましくは、臭素原子である。本発明のペロブスカイト化合物を構成するハロゲン原子は、1種類であっても、2種類以上であってもよい。
【0015】
本発明のペロブスカイト化合物を構成する金属原子は、従来の有機・無機ペロブスカイト化合物において用いられるような金属原子であれば特に限定されないが、好ましくは、鉛原子、錫原子、インジウム原子、アンチモン原子、ゲルマニウム原子、カドミウム原子、クロム原子、マンガン原子、鉄原子、コバルト原子、又は銅原子であり、より好ましくは、鉛原子、又は錫原子であり、特に好ましくは、鉛原子である。本発明のペロブスカイト化合物を構成する金属原子は、1種類であっても、2種類以上であってもよい。
【0016】
本発明のペロブスカイト化合物を構成するホスホニウムは、一般式:R
1R
2R
3R
4P
+で表されるホスホニウムであることが好ましい。本発明のペロブスカイト化合物の好ましい具体例としては、一般式:(R
1R
2R
3R
4P)
2MX
4、(R
1R
2R
3R
4P)
4M
3X
10、又は(R
1R
2R
3R
4P)
2MX
6の何れかで表されるペロブスカイト化合物が挙げられる。中でも、特定の実施形態においては、一般式:(R
1R
2R
3R
4P)
2MX
4で表されるペロブスカイト化合物が特に好ましい。
【0017】
以下、上記一般式の各記号について説明する。
【0018】
一般式中、R
1は、置換基を有していてもよい炭素原子数4以上の炭化水素基を示す。R
1は、層状ペロブスカイトを形成する従来の有機・無機ペロブスカイト化合物における有機アンモニウムで用いられるような有機基であれば特に限定されない。R
1は、好ましくは、炭素原子数4以上の炭化水素基であり、より好ましくは、炭素原子数4〜18の炭化水素基であり、さらに好ましくは、炭素原子数4〜18のアルキル基であり、なお好ましくは、炭素原子数4〜18の直鎖のアルキル基であり、なお一層好ましくは、炭素原子数4〜10の直鎖のアルキル基であり、特に好ましくは、ヘキシル基である。
【0019】
「炭素原子数4以上の炭化水素基」とは、4個以上の炭素原子を有する1価の飽和又は不飽和の炭化水素基を意味する。「炭素原子数4以上の炭化水素基」としては、例えば、炭素原子数4〜18のアルキル基、炭素原子数4〜18のアルケニル基、炭素原子数4〜18のアルキニル基、炭素原子数6〜18のアリール基、炭素原子数7〜18のアルキルアリール基、炭素原子数7〜18のアラルキル基、炭素原子数7〜18のアルキルアラルキル基等が挙げられる。「炭素原子数4以上の炭化水素基」における炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは4〜18であり、より好ましくは4〜14であり、さらに好ましくは4〜12であり、なお好ましくは4〜10であり、なお一層好ましくは4〜8であり、特に好ましくは6である。
【0020】
「置換基を有していてもよい炭素原子数4以上の炭化水素基」における置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、複素環基、(炭素原子数4以上の炭化水素基)−O−、(炭素原子数4以上の炭化水素基)−S−、(炭素原子数4以上の炭化水素基)−CO−、(炭素原子数4以上の炭化水素基)−CS−、(炭素原子数4以上の炭化水素基)−COO−、(炭素原子数4以上の炭化水素基)−OCO−、(炭素原子数4以上の炭化水素基)−CONH−、(炭素原子数4以上の炭化水素基)−NHCO−、(炭素原子数4以上の炭化水素基)−COS−、(炭素原子数4以上の炭化水素基)−SCO−、(複素環基)−O−、(複素環基)−S−、(複素環基)−CO−、(複素環基)−CS−、(複素環基)−COO−、(複素環基)−OCO−、(複素環基)−CONH−、(複素環基)−NHCO−、(複素環基)−COS−、(複素環基)−SCO−等が挙げられる。
【0021】
「炭素原子数4〜18のアルキル基」とは、炭素原子数が4〜18である直鎖、分枝鎖又は環状の1価の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。「炭素原子数4〜18のアルキル基」としては、例えば、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。「炭素原子数4〜18のアルキル基」におけるアルキル基の炭素原子数は、好ましくは4〜14であり、より好ましくは4〜12であり、さらに好ましくは4〜10であり、なお一層好ましくは4〜8であり、特に好ましくは6である。「炭素原子数4〜18のアルキル基」におけるアルキル基は、直鎖のアルキル基であることが好ましい。
【0022】
「炭素原子数4〜18のアルケニル基」とは、4〜18個の炭素原子を有し且つ少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する直鎖、分枝鎖又は環状の1価の不飽和脂肪族炭化水素基を意味する。「炭素原子数4〜18のアルケニル基」としては、例えば、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル等が挙げられる。「炭素原子数4〜18のアルケニル基」におけるアルケニル基の炭素原子数は、好ましくは4〜14であり、より好ましくは4〜12であり、さらに好ましくは4〜10であり、なお一層好ましくは4〜8であり、特に好ましくは6である。「炭素原子数4〜18のアルケニル基」におけるアルケニル基は、直鎖のアルケニル基であることが好ましい。
【0023】
「炭素原子数4〜18のアルキニル基」とは、4〜18個の炭素原子を有し且つ少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する直鎖、分枝鎖又は環状の1価の不飽和脂肪族炭化水素基を意味する。「炭素原子数4〜18のアルキニル基」としては、例えば、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル、ウンデシニル、ドデシニル、トリデシニル、テトラデシニル、ペンタデシニル、ヘキサデシニル、ヘプタデシニル、オクタデシニル等が挙げられる。「炭素原子数4〜18のアルキニル基」におけるアルキニル基の炭素原子数は、好ましくは4〜14であり、より好ましくは4〜12であり、さらに好ましくは4〜10であり、なお一層好ましくは4〜8であり、特に好ましくは6である。「炭素原子数4〜18のアルキニル基」におけるアルキニル基は、直鎖のアルキニル基であることが好ましい。
【0024】
「炭素原子数6〜18のアリール基」とは、炭素原子数が6〜18である1価の芳香族炭化水素基を意味する。アリール基には、2個以上の芳香環が縮合しているもの、2個以上の芳香環が直接結合したものが含まれる。「炭素原子数6〜18のアリール基」としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニリル等が挙げられる。「炭素原子数6〜18のアリール基」におけるアリール基の炭素原子数は、好ましくは6〜18であり、より好ましくは6〜14であり、さらに好ましくは6〜10であり、特に好ましくは6である。
【0025】
「炭素原子数7〜18のアルキルアリール基」とは、1〜3個のアルキル基で置換されたアリール基であって炭素原子数が7〜18のものを意味する。「炭素原子数7〜18のアルキルアリール基」としては、例えば、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、4−エチルフェニル、4−プロピルフェニル、4−ブチルフェニル等が挙げられる。「炭素原子数7〜18のアルキルアリール基」におけるアルキルアリール基の炭素原子数は、好ましくは7〜14であり、より好ましくは7〜12であり、さらに好ましくは7〜10である。
【0026】
「炭素原子数7〜18のアラルキル基」とは、1又は2個のアリール基で置換されたアルキル基であって炭素原子数が7〜18のものを意味する。「炭素原子数7〜18のアラルキル基」としては、例えば、ベンジル、フェネチル、2−ナフチルメチル等が挙げられる。「炭素原子数7〜18のアラルキル基」におけるアラルキル基の炭素原子数は、好ましくは7〜14であり、より好ましくは7〜12であり、さらに好ましくは7〜10である。
【0027】
「炭素原子数7〜18のアルキルアラルキル基」とは、アリール基部分が1〜3個のアルキル基で置換されたアラルキル基であって炭素原子数7〜18のものを意味する。「炭素原子数7〜18のアルキルアリール基」としては、例えば、4−メチルベンジル等が挙げられる。「炭素原子数7〜18のアルキルアラルキル基」におけるアルキルアラルキル基の炭素原子数は、好ましくは7〜14であり、より好ましくは7〜12であり、さらに好ましくは7〜10である。
【0028】
「複素環基」とは、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を含む単環又は二環以上の環状基を意味する。「複素環基」は、3〜14員複素環基であることが好ましく、3〜10員複素環基であることがより好ましい。「複素環基」としては、例えば、ピロリル、フラニル、チオフェネイル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、及びピラジニル等の単環式芳香族複素環基;ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェネイル、ベンゾチオフェネイル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ピロロピリジニル、イミダゾピリジニル、ピラゾロピリジニル、プリニル、インドリジニル、イミダゾピリジニル、ピラゾロピリジニル、ピロロピリダジニル、イミダゾピリミジニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、ピリドピリミジニル、ピリドピラジニル、ピリミドピリミジニル、ピラジノピラジニル等の二環式芳香族複素環基;アジリジニル、オキシラニル、チイラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロフラニル、ピロリニル、ピロリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、チアゾリニル、チアゾリジニル等の単環式非芳香族複素環基;ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾチアゾリル、ジヒドロベンゾイソチアゾリル等の二環式芳香族複素環基等が挙げられる。
【0029】
一般式中、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素原子数1〜6の炭化水素基を示す。R
2、R
3及びR
4は、好ましくは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、より好ましくは、炭素原子数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくは、メチル基である。
【0030】
「炭素原子数1〜6の炭化水素基」とは、炭素原子数が1〜6の1価の飽和又は不飽和の炭化水素基を意味する。「炭素原子数1〜6の炭化水素基」としては、例えば、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、炭素原子数2〜6のアルキニル基、フェニル基等が挙げられる。「炭素原子数1〜6の炭化水素基」における炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜3であり、さらに好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
【0031】
「炭素原子数1〜6のアルキル基」とは、炭素原子数が1〜6である直鎖、分枝鎖又は環状の1価の飽和炭化水素基を意味する。「炭素原子数1〜6のアルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。「炭素原子数1〜6のアルキル基」におけるアルキル基の炭素原子数は、好ましくは、1〜4であり、より好ましくは1〜3であり、さらに好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
【0032】
「炭素原子数2〜6のアルケニル基」とは、炭素原子数が2〜6であり且つ少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する直鎖、分枝鎖又は環状の1価の不飽和脂肪族炭化水素基を意味する。「炭素原子数2〜6のアルケニル基」としては、例えば、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、5−ヘキセニル、2−シクロヘキセニル等が挙げられる。「炭素原子数2〜6のアルケニル基」におけるアルケニル基の炭素原子数は、好ましくは、2〜4であり、より好ましくは2又は3であり、さらに好ましくは2である。
【0033】
「炭素原子数2〜6のアルキニル基」とは、炭素原子数が2〜6であり且つ少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する直鎖、分枝鎖又は環状の1価の不飽和脂肪族炭化水素基を意味する。「炭素原子数2〜6のアルキニル基」としては、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル、4−メチル−2−ペンチニル等が挙げられる。「炭素原子数2〜6のアルキニル基」におけるアルキニル基の炭素原子数は、好ましくは、2〜4であり、より好ましくは2又は3であり、さらに好ましくは2である。
【0034】
一般式中、Mは、金属原子を示す。Mは、従来の有機・無機ペロブスカイト化合物において用いられるような金属原子であれば特に限定されない。Mは、好ましくは、鉛原子、錫原子、インジウム原子、アンチモン原子、ゲルマニウム原子、カドミウム原子、クロム原子、マンガン原子、鉄原子、コバルト原子、又は銅原子であり、より好ましくは、鉛原子、又は錫原子であり、特に好ましくは、鉛原子である。
【0035】
一般式中、Xは、ハロゲン原子を示す。Xは、好ましくは、塩素原子、臭素原子、及び/又はヨウ素原子であり、より好ましくは、臭素原子である。Xのハロゲン原子は、1種類であっても、2種類以上であってもよい。
【0036】
「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0037】
本発明のペロブスカイト化合物は、従来の有機アンモニウムのペロブスカイト化合物と比べて、重量減少開始温度が高く、耐熱性に優れているという特徴を備える。耐熱性は、熱重量分析、示差熱分析等を用いて評価することができる。
【0038】
本発明のペロブスカイト化合物は、例えば、ハロゲン化ホスホニウムR
1R
2R
3R
4PXと、ハロゲン化金属MX
2とを、適切な物質量比(例えば(R
1R
2R
3R
4P)
2MX
4の場合は2:1)で混合して製造することができる。
【0039】
本発明のペロブスカイト化合物は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の良溶媒に溶解して、スピンコート法等の公知の薄膜化手法を用いて薄膜を得ることができる。スピンコートは、例えば、50〜150℃(好ましくは70〜130℃)に加熱して、1〜1000秒間(好ましくは10〜100秒間)、100〜10,000rpm(好ましくは1,000〜5,000rpm)の回転数で行うことができる。
【0040】
本発明のペロブスカイト化合物から得られる薄膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、好ましくは10nm〜100μm、より好ましくは50nm〜50μmである。
【0041】
本発明のペロブスカイト化合物から得られる薄膜は、優れた垂直配向性を備える層状ペロブスカイト構造を有する。したがって、垂直配向性が優れていることから、電荷輸送効率が高く、光電変換素子の光吸収材料として有用である。
【0042】
垂直配向性は、本発明のペロブスカイト化合物から得られる薄膜のXRDプロファイル(例えばOut−of−plane XRDとIn−plane XRDを用いる比較)を用いて解析することができる。
【0043】
本発明は、本発明のペロブスカイト化合物を用いた光電変換素子を提供する。本発明の光電変換素子は、電子輸送層と、ホール輸送層と、前記電子輸送層と前記ホール輸送層との間に配置された本発明のペロブスカイト化合物を含む光吸収層とを備える。
【0044】
光電変換素子は、その光吸収層に本発明のペロブスカイト化合物を含む限り特に限定されるものではないが、ある好適な実施形態においては、基板と、前記基板上に順に設けられた第一導電層、電子輸送層、光吸収層、ホール輸送層及び第二導電層を備える。
【0045】
基板としては、例えば、透明ガラス基板、セラミック基板、透明プラスチック基板等が挙げられる。
【0046】
第一導電層は、光電変換素子の陰極として作用する層であり、一般的な陰極材料により形成される。なお、基板側から光電変換素子に光が入射する場合は、基板を透明基板とし、第一導電層を透明電極とすることが好ましい。
【0047】
電子輸送層は、光吸収層において光励起により発生した電子を第一導電層に輸送する層である。したがって、電子輸送層は、光吸収層で発生した電子を第一導電層に容易に移動させることができるような一般的に電子輸送層に用いられる材料で構成される。
【0048】
光吸収層は、本発明のペロブスカイト化合物を含み、光電変換素子に入射した光を吸収し、電子及びホールを発生させる層である。光吸収層では、光吸収層に含まれる本発明のペロブスカイト化合物の低エネルギーの電子が入射光により光励起され、より高エネルギーの電子とホールとが発生する。このうち、電子は電子輸送層に移動し、ホールはホール輸送層に移動することにより、電荷分離が行われる。
【0049】
ホール輸送層は、光吸収層で発生したホールを捉えて、陽極である第二導電層に輸送する層である。したがって、ホール輸送層は、光吸収層で発生したホールを第二導電層に容易に移動させることができるような一般的にホール輸送層に用いられる材料で構成される。
【0050】
第二導電層は、光電変換素子の陽極として作用する層であり、一般的な陽極材料により形成される。第二導電層側から光電変換素子に光が入射する場合は、第二導電層を透明電極とすることが好ましい。一実施形態では、第一導電層及び第二導電層の両方を透明電極としてもよい。
【0051】
また、本発明は、本発明の光電変換素子を備える太陽電池を提供する。本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子の導電層(上記好適な実施形態においては、第一導電層及び第二導電層)に外部回路を接続して製造される。
【実施例】
【0052】
本発明は、更に以下の実施例によって詳しく説明されるが、これらは本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
【0053】
〔合成例1:ヘキシルトリメチルホスホニウムブロミド(C
6TPBr)〕
【0054】
【化1】
【0055】
50mL三口フラスコに1−ブロモヘキサンを加え、系内を窒素雰囲気下にした。シリンジを用いてトリメチルホスフィン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の順に加え、30℃で24時間撹拌した。反応溶液をジエチルエーテルに滴下し、3時間撹拌した。析出した白色固体を吸引ろ過で回収したが、空気中ですぐに吸湿し、液滴となった。そのため、液滴をメタノールに溶かしてエバポレーターで濃縮し、液体として回収した。30℃で24時間減圧乾燥することにより、白色固体を得た。
【0056】
〔合成例2:ヘキシルアンモニウムブロミド(C
6NBr)〕
【0057】
【化2】
【0058】
氷浴中のナスフラスコにヘキシルアミンとメタノールを入れ、窒素雰囲気下で臭化水素を滴下漏斗から少量ずつ滴下しながら2時間攪拌した。次にエバポレーターを用いて溶媒を除去し、結晶を析出させた後、ジエチルエーテルで結晶を洗浄し、吸引ろ過により目的物の粗結晶を得た。得られた粗結晶を少量のエタノールに溶解させ、再結晶を行った。得られた結晶を50℃で一晩減圧乾燥させ、白色結晶を得た。
【0059】
〔実施例1:臭化鉛ヘキシルトリメチルホスホニウムの薄膜〕
合成例1で得られたヘキシルトリメチルホスホニウムブロミド(C
6TPBr)と臭化鉛(II)(PbBr
2)を物質量比が2:1となるように混合し、DMFに溶解した。50℃で1時間加熱攪拌することにより前駆溶液を作製した。作製した前駆溶液をあらかじめ100℃に加熱した基板上にスピンコーター(MIKASA SPINCOATER 1H−D7)を用いて、2000rpm、30sの条件でスピンコートし、薄膜を作製した。
【0060】
〔比較例1:臭化鉛ヘキシルアンモニウムの薄膜〕
ヘキシルトリメチルホスホニウムブロミド(C
6TPBr)を、合成例2で得られたヘキシルアンモニウムブロミド(C
6NBr)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして薄膜を作製した。
【0061】
〔比較例2:臭化鉛ヘキシルトリメチルアンモニウムの薄膜〕
ヘキシルトリメチルホスホニウムブロミド(C
6TPBr)を、市販のヘキシルトリメチルアンモニウムブロミド(C
6TNBr)(東京化成工業株式会社製)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして薄膜を作製した。
【0062】
〔実施例2:臭化鉛ヘキシルトリメチルホスホニウムの微結晶〕
サンプル瓶中に合成例1で得られたヘキシルトリメチルホスホニウムブロミド(C
6TPBr)と臭化鉛(II)(PbBr
2)を物質量比が2:1となるように秤量し、DMF300μLを加えて溶解させ、50℃で1時間攪拌した。そのサンプル瓶をそのまま30℃で減圧乾燥し、DMFをできるだけ留去した。さらに中型ポンプに変更した後、40℃で一晩減圧乾燥し、白色の微結晶粉末を得た。
【0063】
〔比較例3:臭化鉛ヘキシルトリメチルアンモニウムの微結晶〕
市販のヘキシルトリメチルアンモニウムブロミド(C
6TNBr)(東京化成工業株式会社製)と臭化鉛(II)(PbBr
2)を物質量比2:1で混合し、DMF/DMSO(1:1,v/v)に溶解した。これを50℃で1時間攪拌した。この溶液をアセトン約150mLに滴下し、白色固体を得、吸引ろ過で微結晶を回収した。
【0064】
〔試験例1:XRD測定〕
XRD装置(SmartLab、Rigaku製)を用いて、実施例1、比較例1及び2で作製した薄膜のX線回折測定を行った。測定条件を以下に示す。
【0065】
測定条件
光源(X線源):45kV/200mA
発散スリット:5°(Out−of−plane XRD),0.5°(In−plane XRD)
散乱スリット:5°(Out−of−plane XRD),0.5°(In−plane XRD)
受光スリット:20mm
走査範囲:1.5°<θ<35°
走査速度:4°/min
【0066】
X線回折の測定結果を、
図1(実施例1(C
6TPBrを使用)の薄膜)、
図2(比較例1(C
6NBrを使用)の薄膜)、
図3(比較例2(C
6TNBrを使用)の薄膜)に示す。それぞれ、(a)がOut−of−plane XRDプロファイルを、(b)がIn−plane XRDプロファイルを示す。
【0067】
Out−of−plane測定では、基板に対して水平方向の積層構造由来の回折パターンが観察される。
図1(a)では、5.5°に由来する回折が観察されるが、規則正しいパターンは見られていない。一方で、
図2(a)の一般的な二次元層状ペロブスカイトでは、4.8°に第一ピークが観察されている。このピークは18.3Åの層間距離に相当し、一連の回折ピークが7次まで観察されているため、層構造が基板に対して水平に配向していると考えられる。さらに、四級アンモニウムを用いた
図3(a)では
図2(a)と同様に水平方向に積層した層状構造に由来する回折パターンが観察されている。これにより、一級アンモニウムも四級アンモニウムも基板に対して水平な層状構造を形成すると考えられる。一方で、基板に対して垂直方向に積層した構造由来の回折が観察されるIn−plane測定の結果に着目すると、
図1(b)のホスホニウム化合物では、Out−of−plane測定では見られなかった一連の回折パターンが観察されている。この測定結果から、実施例1のホスホニウムの薄膜は、比較例1及び2のアンモニウムの薄膜と比べて、基板に対する垂直配向性が高いことがわかる。
【0068】
〔試験例2:UV−vis吸収スペクトル測定〕
UV−vis吸収スペクトル測定器(SHIMADZU,UV−PC3100)を用いて、実施例1、比較例1及び2で作製した薄膜の吸収スペクトル測定を行った。リファレンスにはスライドガラス基板を用いた。測定条件を以下に示す。
【0069】
測定条件
測定モード:吸光度
スキャンスピード:中速
スリット幅:2.0
【0070】
吸収スペクトルを測定した結果を、
図4(実施例1(C
6TPBrを使用)の薄膜)、
図5(比較例1(C
6NBrを使用)の薄膜)、
図6(比較例2(C
6TNBrを使用)の薄膜)に実線で示す。それぞれ321nm、395nm、351nmに励起子吸収に基づく吸収ピークがみられる。
【0071】
〔試験例3:蛍光スペクトル測定〕
蛍光スペクトル測定器(HITACHI F−4500)を用いて、実施例1、比較例1及び2で作製した薄膜の蛍光スペクトル測定を行った。測定条件を以下に示す。
【0072】
測定条件
測定モード:波長スキャン
スキャンモード:蛍光スペクトル
データモード:蛍光
励起波長:吸収ピーク波長(実施例1=321nm、比較例1=395nm、比較例2=351nm)
蛍光開始波長:励起波長+5nm
蛍光終了波長:800nm
スキャンスピード:240nm/min
励起側スリット:5.0nm
蛍光側スリット:5.0nm
ホトマル電圧:950V
【0073】
蛍光スペクトルを測定した結果を、
図4(実施例1(C
6TPBrを使用)の薄膜)、
図5(比較例1(C
6NBrを使用)の薄膜)、
図6(比較例2(C
6TNBrを使用)の薄膜)に破線で示す。それぞれ403nm、411nm、372nmにピークがみられる。
【0074】
〔試験例4:熱重量−示差熱(TG−DTA)同時測定〕
SIIナノテクノロジーTG−DTA7200を用いて、実施例2及び比較例3で作製した微結晶の熱重量−示差熱(TG−DTA)同時測定を行った。測定条件を以下に示す。
【0075】
測定条件
温度範囲:室温〜500oC
N
2ガス流量:200mL/min
昇温レート:10oC/min
【0076】
TG−DTA測定の結果を、
図7(実施例2(C
6TPBrを使用)の微結晶)及び
図8(比較例3(C
6TNBrを使用)の微結晶)に実線(TG)と破線(DTA)で示す。TG−DTA測定の結果を見ると、ホスホニウムのペロブスカイトは、アンモニウムのペロブスカイトと比較して、重量減少開始温度が100℃以上高いことから、耐熱性に優れていることがわかる。