【解決手段】本発明のポリオレフィン系不織布用処理剤は、下記のエーテルエステル化合物及び下記のポリエーテル変性シリコーンを含有することを特徴とする。エーテルエステル化合物は、多価アルコールと一価脂肪酸Xとのエステル化合物に対し炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加させた化合物と、一価脂肪酸Yとを縮合して得られるエーテルエステル化合物である。ポリエーテル変性シリコーンは、質量平均分子量が1,000〜100,000であるポリエーテル変性シリコーンである。
前記エーテルエステル化合物が、炭素数2〜6の2〜4価のアルコールと炭素数10〜26の一価脂肪酸Xとのエステル化合物1モルに対し炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを1〜100モルの割合で付加させた化合物1モルと、炭素数6〜26の一価脂肪酸Y2〜3モルとを縮合させたエーテルエステル化合物である請求項1に記載のポリオレフィン系不織布用処理剤。
前記エーテルエステル化合物及び前記ポリエーテル変性シリコーンの含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルエステル化合物を30〜99質量部及び前記ポリエーテル変性シリコーンを1〜70質量部の割合で含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリオレフィン系不織布用処理剤。
更に、脂肪酸、有機スルホン酸、有機サルフェート、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一つを含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリオレフィン系不織布用処理剤。
前記エーテルエステル化合物、前記ポリエーテル変性シリコーン、並びに前記脂肪酸、前記有機スルホン酸、前記有機サルフェート、前記ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一つの含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルエステル化合物を40〜89.99質量部、前記ポリエーテル変性シリコーンを10〜50質量部、並びに前記脂肪酸、前記有機スルホン酸、前記有機サルフェート、前記ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部の割合で含有する請求項5に記載のポリオレフィン系不織布用処理剤。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙おむつ等の衛生製品として、体液を吸収するために高吸収性高分子の表面にポリオレフィン系の合成繊維を含む不織布で被覆した製品が知られている。高吸収性高分子の表面を被覆する不織布は、特に体液をすばやく吸収する初期親水性、繰り返し体液をすばやく吸収する耐久親水性等が要求される。ポリオレフィン系合成繊維において、上記特性を付与する観点から、ポリオレフィン系合成繊維の表面に界面活性剤等を含有するポリオレフィン系不織布用処理剤を付与する処理が行われることがある。
【0003】
従来、特許文献1〜4に開示される不織布用処理剤が知られている。特許文献1は、天然油脂由来のオレイン酸を45〜95重量%含有する脂肪酸と、天然油脂のポリオキシアルキレン付加物と、天然油脂のポリオキシアルキレン付加物の脂肪酸エステルとを含有する吸水性物品用繊維処理剤の構成について開示する。
【0004】
特許文献2は、特定のポリエーテル化合物及び特定のポリエーテル変性シリコーンを含有する処理剤を付与してなることを特徴とする衛生材料用ポリオレフィン系不織布の構成について開示する。
【0005】
特許文献3は、ポリジメチルシロキサン等のポリオルガノシロキサン、及びリン酸エステル型のアニオン界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性多価アルコール脂肪酸エステル等の界面活性剤を含有する繊維処理剤が付着している熱可塑性繊維からなる長繊維不織布の構成について開示する。
【0006】
特許文献4は、アニオン界面活性剤、及びポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルとジカルボン酸又はジカルボン酸誘導体との縮合物の少なくとも1つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステルを含む繊維処理剤の構成について開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の処理剤では、硬水を溶媒とする場合の硬水安定性、またポリオレフィン系不織布処理時における不織布浸透性、及び親水化処理したポリオレフィン系不織布に求められる耐久親水性という各機能の両立を十分に図ることができなかった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、硬水安定性、不織布浸透性、及び耐久親水性が良好なポリオレフィン系不織布用処理剤、及びポリオレフィン系不織布を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定のエーテルエステル化合物、特定のポリエーテル変性シリコーンを併用するポリオレフィン系不織布用処理剤が正しく好適であることを見出した。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、下記のエーテルエステル化合物及び下記のポリエーテル変性シリコーンを含有することを特徴とするポリオレフィン系不織布用処理剤が提供される。エーテルエステル化合物は、多価アルコールと一価脂肪酸Xとのエステル化合物に対し炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加させた化合物と、一価脂肪酸Yとを縮合して得られるエーテルエステル化合物である。ポリエーテル変性シリコーンは、質量平均分子量が1,000〜100,000であるポリエーテル変性シリコーンである。
【0012】
前記エーテルエステル化合物が、炭素数2〜6の2〜4価のアルコールと炭素数10〜26の一価脂肪酸Xとのエステル化合物1モルに対し炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを1〜100モルの割合で付加させた化合物1モルと、炭素数6〜26の一価脂肪酸Y2〜3モルとを縮合させたエーテルエステル化合物であることが好ましい。
【0013】
前記ポリエーテル変性シリコーンが、質量平均分子量が3,000〜50,000のものであることが好ましい。
前記エーテルエステル化合物及び前記ポリエーテル変性シリコーンの含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルエステル化合物を30〜99質量部及び前記ポリエーテル変性シリコーンを1〜70質量部の割合で含有することが好ましい。
【0014】
更に、脂肪酸、有機スルホン酸、有機サルフェート、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一つを含有することが好ましい。
前記エーテルエステル化合物、前記ポリエーテル変性シリコーン、並びに前記脂肪酸、前記有機スルホン酸、前記有機サルフェート、前記ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一つの含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルエステル化合物を40〜89.99質量部、前記ポリエーテル変性シリコーンを10〜50質量部、並びに前記脂肪酸、前記有機スルホン酸、前記有機サルフェート、前記ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部の割合で含有することが好ましい。
【0015】
本発明の別の態様では、前記ポリオレフィン系不織布用処理剤が付着していることを特徴とするポリオレフィン系不織布が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、硬水安定性、不織布浸透性、及び耐久親水性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るポリオレフィン系不織布用処理剤(以下、処理剤という)を具体化した第1実施形態について説明する。本実施形態の処理剤は、下記のエーテルエステル化合物及び下記のポリエーテル変性シリコーンを含有する。エーテルエステル化合物は、多価アルコールと一価脂肪酸Xとのエステル化合物に対し炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加させた化合物と、一価脂肪酸Yとを縮合して得られるエーテルエステル化合物である。
【0018】
本実施形態の処理剤に供するエーテルエステル化合物を構成する多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0019】
本実施形態の処理剤に供するエーテルエステル化合物を構成する一価脂肪酸Xとしては、飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよく、また直鎖状であっても、分岐状であってもよく、また、ヒドロキシ基を有してもよい。その具体例としては、例えばペンタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸(オクチル酸)、デカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸)、トリデカン酸、イソトリデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、イソオクタデカン酸(イソステアリン酸)、ヒドロキシオクタデカン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸(12−ヒドロキシステアリン酸)、オクタデセン酸、ヒドロキシオクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸、ドコサン酸(ベヘニン酸)、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタドコサン酸、オクタコサン酸、リシノール酸、オレイン酸等が挙げられる。本実施形態の処理剤に供するエーテルエステル化合物を構成する一価脂肪酸Yの具体例は、前記一価脂肪酸Xの具体例を適用することができる。
【0020】
本実施形態の処理剤に供するエーテルエステル化合物を構成する炭素数2〜4のアルキレンオキサイドの具体例としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、特に限定されないが、1〜100モルの割合で付加させることが好ましい。かかる数値範囲内に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。また、この処理剤により親水化処理したポリオレフィン系不織布の初期親水性を向上できる。
【0021】
本実施形態の処理剤に供するエーテルエステル化合物は、炭素数2〜6の2〜4価のアルコールと炭素数10〜26の一価脂肪酸Xとのエステル化合物1モルに対し炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを1〜100モルの割合で付加させた化合物1モルと、炭素数6〜26の一価脂肪酸Y2〜3モルとを縮合させた化合物であることが好ましい。かかる構成により、本発明の効果をより向上できる。特に、この処理剤により親水化処理したポリオレフィン系不織布の耐久親水性を向上できる。
【0022】
本実施形態の処理剤に供するエーテルエステル化合物の具体例としては、例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のオレイン酸との縮合物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のラウリン酸との縮合物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のステアリン酸との縮合物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のベヘニン酸との縮合物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のオクタドコサン酸との縮合物、ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレン硬化ヒマシ油のステアリン酸との縮合物、ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレン硬化ヒマシ油のラウリン酸との縮合物、ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレン硬化ヒマシ油のオクチル酸との縮合物、ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレン硬化ヒマシ油のオレイン酸との縮合物、ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレン硬化ヒマシ油のペンタン酸との縮合物、グリセリンと12−ヒドロキシステアリン酸とのエステルのポリオキシエチレン付加物とオレイン酸との縮合物、グリセリンとリシノール酸とのエステルのポリオキシエチレン付加物とラウリン酸との縮合物、グリセリンとラウリン酸とのエステルのポリオキシエチレン付加物とラウリン酸との縮合物、グリセリンとステアリン酸とのエステルのポリオキシエチレン付加物とラウリン酸との縮合物、グリセリンとテトラコサン酸とのエステルのポリオキシエチレン付加物とラウリン酸との縮合物、グリセリンとオクタコサン酸とのエステルのポリオキシエチレン付加物とオレイン酸との縮合物、エチレングリコールと12−ヒドロキシステアリン酸とのエステルのポリオキシエチレン付加物とオレイン酸との縮合物、トリメチロールプロパンと12−ヒドロキシステアリン酸とのエステルのポリオキシエチレン付加物とオレイン酸との縮合物、ソルビタンと12−ヒドロキシステアリン酸とのエステルのポリオキシエチレン付加物とラウリン酸との縮合物、ソルビタンと12−ヒドロキシステアリン酸とのエステルのポリオキシエチレン付加物とオレイン酸との縮合物、ソルビタンとペンタン酸とのエステルのポリオキシエチレン付加物とオレイン酸との縮合物、ソルビトールとラウリン酸とのエステルのポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレン付加物とラウリン酸との縮合物等が挙げられる。なお、硬化ヒマシ油は、12−ヒドロキシステアリン酸約87質量%とステアリン酸約13質量%を含む脂肪酸がグリセリン(炭素数3の3価のアルコール)とエステル結合した構成を有している。上述したエーテルエステル化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本実施形態の処理剤に使用するポリエーテル変性シリコーンとしては、質量平均分子量が1,000〜100,000の範囲のものが適用される。質量平均分子量は、3,000〜50,000の範囲のものが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、本発明の効果、特に不織布浸透性をより向上させる。質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCという)測定によりポリスチレン換算で求めることができる。
【0024】
質量平均分子量以外の構成としては、特に制限はなく、例えば、ABn型ポリエーテル変性シリコーン、側鎖型ポリエーテル変性シリコーン、両末端型ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル基とアルキル基の両方が側鎖、又は、末端に導入されたアルキルポリエーテル変性シリコーン、側鎖型ポリエーテル変性シリコーンのポリエーテル鎖末端部分が脂肪族化合物、又は、脂肪酸化合物で封鎖されたもの、両末端型ポリエーテル変性シリコーンのポリエーテル鎖末端部分が脂肪族化合物、又は、脂肪酸化合物で封鎖されたもの等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本実施形態の処理剤に供するポリエーテル変性シリコーンの構成としては、例えば以下の構造を有することが好ましい。
【0026】
【化1】
化1において、
Xは、下記の化2で示される有機基を示す。
Yは、下記の化3で示される有機基を示す。
X,Yの繰り返しは、それぞれブロック又はランダムのいずれの方法で繰り返されてもよい。
a,bは、それぞれ1以上の整数を示す。
【0027】
【化2】
化2において、
R
1は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基を示す。
【0028】
【化3】
化3において、
R
2は、炭素数3〜6のアルキレン基を示す。
R
3は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数2〜8のアシル基を示す。
c,dは、c+d=1〜200となるような整数(ただし、c≧0、d≧0。)を示す。
【0029】
本実施形態の処理剤中における前記エーテルエステル化合物及び前記ポリエーテル変性シリコーンの含有割合は、特に限定されない。前記エーテルエステル化合物及び前記ポリエーテル変性シリコーンの含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルエステル化合物を30〜99質量部及び前記ポリエーテル変性シリコーンを1〜70質量部の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定することにより本発明の効果、特に耐久親水性をより向上させる。
【0030】
本実施形態の処理剤は、更に、脂肪酸、有機スルホン酸、有機サルフェート、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一つを含有することが好ましい。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。かかる構成により、エマルションの乳化安定性をより向上させることができる。
【0031】
脂肪酸としては、飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよく、また直鎖状であっても、分岐状であってもよく、また、ヒドロキシ基を有してもよい。その具体例としては、例えばペンタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸(オクチル酸)、デカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸)、トリデカン酸、イソトリデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、イソオクタデカン酸(イソステアリン酸)、ヒドロキシオクタデカン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸(12−ヒドロキシステアリン酸)、オクタデセン酸、ヒドロキシオクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸、ドコサン酸(ベヘニン酸)、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタドコサン酸、オクタコサン酸、リシノール酸、オレイン酸等が挙げられる。脂肪酸の塩としては、例えばアルカリ金属塩が挙げられ、より具体的にはそれら脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0032】
有機スルホン酸の具体例としては、例えばヘプチルスルホン酸、2−エチルヘキシルスルホン酸、オクチルスルホン酸、ノニルスルホン酸、デシルスルホン酸、ウンデシルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、トリデシルスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルジフェニルエーテルジスルホン酸、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシル、ジオクチルスルホコハク酸、スルホコハク酸ジドデシル、スルホコハク酸ジヘキサデシル等が挙げられる。有機スルホン酸の塩としては、例えばアルカリ金属塩が挙げられ、より具体的にはそれら有機スルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0033】
有機サルフェートの具体例としては、例えば4−メチルペンチル硫酸、オクチル硫酸、2−エチルヘキシル硫酸、イソノニル硫酸、デシル硫酸、1−メチルノニル硫酸、イソデシル硫酸、ドデシル硫酸、2−ブチルオクチル硫酸、テトラデシル硫酸、ペンタデシル硫酸、ヘキサデシル硫酸、ヘプタデシル硫酸、3,9−ジエチルトリデカン−6−イル硫酸、オクタデシル硫酸、ポリオキシエチレンドデシル硫酸、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸等が挙げられる。有機サルフェートの塩としては、例えばアルカリ金属塩が挙げられ、より具体的にはそれら有機サルフェートのナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0034】
ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステルの具体例としては、例えばポリオキシエチレン(アルキレンオキサイドの付加モル数(以下同じ):10モル)オクチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレン(3モル)イソオクチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレン(3モル)ポリオキシプロピレン(6モル)−2−エチルヘキシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレン(2モル)デシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレン(2モル)ポリオキシプロピレン(6モル)デシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレン(2モル)ポリオキシプロピレン(6モル)ドデシルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステルの塩としては、例えばアルカリ金属塩が挙げられ、より具体的にはそれらポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステルのナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。これらのポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル又はその塩の具体例には、例えばモノエステル体の単独物、ジエステル体の単独物、モノエステル体とジエステル体との混合物が含まれる。また、ジエステル体には、同一のアルキル基を有するジエステル体(対称形のジエステル)と、異なるアルキル基を有するジエステル体(非対称形のジエステル)とがある。
【0035】
本実施形態の処理剤中における前記エーテルエステル化合物、前記ポリエーテル変性シリコーン、並びに前記脂肪酸、前記有機スルホン酸、前記有機サルフェート、前記ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一つの含有割合は、特に限定されない。前記エーテルエステル化合物、前記ポリエーテル変性シリコーン、並びに前記脂肪酸、前記有機スルホン酸、前記有機サルフェート、前記ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一つの含有割合の合計を100質量部とすると、前記エーテルエステル化合物を40〜89.99質量部、前記ポリエーテル変性シリコーンを10〜50質量部、並びに前記脂肪酸、前記有機スルホン酸、前記有機サルフェート、前記ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一つを0.01〜10質量部の割合で含有することが好ましい。かかる構成により、本発明の構成、特に耐久親水性をより向上させる。また、この処理剤により親水化処理したポリオレフィン系不織布の初期親水性を向上できる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明のポリオレフィン系不織布(以下、不織布という)を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態に係る不織布は、第1実施形態の処理剤が付着しているポリオレフィン系合成繊維を含む不織布である。
【0037】
ポリオレフィン系合成繊維としては、特に限定されず、例えばポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリブテン繊維等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、芯鞘構造の複合繊維であって、芯、鞘部のいずれか又は両者がポリオレフィン系繊維である複合繊維、例えば鞘部がポリエチレン繊維であるポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエステル複合繊維等であってもよい。不織布の種類としては、特に限定されないが、例えばスパンボンド、メルトブローン、スパンボンドとメルトブローンの複合不織布等が挙げられる。
【0038】
第1実施形態の処理剤は、ポリオレフィン系不織布に対し溶媒を含まない第1実施形態の処理剤として好ましくは0.05〜3質量%、より好ましくは0.1〜1質量%の割合となるようにポリオレフィン系不織布に対し付着させる。第1実施形態の処理剤を合成繊維に付着させる際の形態としては、水性液等が挙げられる。なお、本発明の効果を阻害しない範囲内において有機溶媒溶液が少量含まれてもよい。
【0039】
より具体的には、まず第1実施形態の処理剤を例えば水で希釈して濃度0.5〜20質量%の水性液となし、必要によりさらに希釈し、該水性液をポリオレフィン系合成繊維に対し、溶媒を含まない第1実施形態の処理剤として0.05〜3質量%の割合となるよう付着させる処理方法が好ましい。付着方法としては、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、ローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法等が適用できる。また、付着させる工程としては、例えば浸漬法、噴霧法、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
【0040】
上記実施形態の処理剤及び不織布によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、上記のエーテルエステル化合物及び所定の質量平均分子量のポリエーテル変性シリコーンを含有する処理剤を構成した。したがって、硬水を溶媒とする場合の硬水安定性を向上できる。また、ポリオレフィン系不織布処理時における不織布浸透性を向上できる。また、親水化処理したポリオレフィン系不織布に優れた耐久親水性を付与できる。
【0041】
(2)また、親水化処理したポリオレフィン系不織布に優れた初期親水性を付与できる。また、処理剤の乳化安定性を良好にすることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0042】
・上記実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の品質保持のための安定化剤や制電剤として、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0044】
<試験区分1>
・エーテルエステル化合物(A−1)の合成
硬化ヒマシ油1モルに対し、触媒として水酸化ナトリウム適量をオートクレーブに仕込み、エチレンオキサイド25モルを圧入し、エーテル化を行った。さらに一価脂肪酸Yとしてオレイン酸3モルとエステル化を行うことでエーテルエステル化合物(A−1)を得た。
【0045】
エーテルエステル化合物(A−1)と同様にして、表1に記載のエーテルエステル化合物(A−3),(A−4),(A−8)〜(A−11),(A−16)〜(A−20),(A−22),(A−26),(A−27),(ra−3),(ra−4)を合成した。
【0046】
・エーテルエステル化合物(A−2)の合成
多価アルコールとしてグリセリン1モルと、一価脂肪酸Xとして12−ヒドロキシステアリン酸3モルを反応容器に仕込み、エステル化を行った。このエステル化合物をオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム適量を添加した。エチレンオキサイド26モルを圧入し、エーテル化を行った。その後に、さらに一価脂肪酸Yとしてオレイン酸2モルとエステル化を行うことでエーテルエステル化合物(A−2)を得た。
【0047】
エーテルエステル化合物(A−2)と同様にして、表1に記載のエーテルエステル化合物(A−5)〜(A−7),(A−12)〜(A−15),(A−21),(A−23)〜(A−25),(ra−1),(ra−2)を合成した。
【0048】
表1において、エーテルエステル化合物(A−1)〜(A−27),(ra−1)〜(ra−4)について、原料となる多価アルコールの種類、一価脂肪酸Xの種類及び縮合モル数、アルキレンオキサイドの種類及び付加モル数、一価脂肪酸Yの種類及び縮合モル数をそれぞれ示す。
【0049】
【表1】
表2において、各例で用いたポリエーテル変性シリコーンのポリエーテル変性基の末端の種類、分子量からアルキレンオキサイドを除いた部分のシリコーンの比率(Si%)、アルキレンオキサイドに占めるエチレンオキサイド(EO)のモル比(%)、及び質量平均分子量を示す。EOのモル比(%)は、(EOのモル数/各アルキレンオキサイドの合計モル数)×100として計算される。
【0050】
【表2】
<試験区分2>
・ポリオレフィン系不織布用処理剤(実施例1)の10%水性液の調製
A成分としてエーテルエステル化合物(A−1)27.5g、B成分としてポリエーテル変性シリコーン(B−1)18.5g、及びC成分としてラウリン酸(C−1)4.0gを混合し、450gのイオン交換水を加え、10%水性液を得た。
【0051】
・ポリオレフィン系不織布用処理剤(実施例2〜37及び比較例1〜8)の調製
実施例1と同様に、不織布用処理剤10%水性液(実施例2〜37及び比較例1〜8)を調製した。
【0052】
表3において、各例で使用したエーテルエステル化合物(A)、ポリエーテル変性シリコーン(B)の種類を示す。*1は、脂肪酸、有機スルホン酸、有機サルフェート、又はポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル(C)の種類を示す。また、各成分の含有量の合計を100質量部とした場合の各成分の比率(部)を示す。
【0053】
【表3】
表3において、
C−1:ラウリン酸、
C−2:オレイン酸、
C−3:ドデシルスルホン酸ナトリウム、
C−4:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、
C−5:ドデシル硫酸ナトリウム、
C−6:ポリオキシエチレン(10モル)オクチルリン酸エステルカリウム塩、
C−7:ポリオキシエチレン(2モル)ポリオキシプロピレン(6モル)ドデシルリン酸エステルカリウム塩、
を示す。
【0054】
<試験区分3>
・ポリオレフィン系合成繊維へのポリオレフィン系不織布用処理剤の付着
調製した処理剤の水性液を更に上記硬水で希釈して0.25%の濃度の水性液とした。かかる水性液を用いて処理浴(浴温25℃)を準備し、この処理浴に、ポリプロピレンスパンボンド不織布(目付け20g/m
2)を5分間浸漬して取り出し、ポリプロピレンスパンボンド不織布2gに対して水溶液の付着量が4gとなるようにマングルにて絞り率を調整して絞った。その後、80℃×30分間送風乾燥して下記評価用の処理不織布とした。処理剤の繊維への付着量はポリプロピレンスパンボンド不織布1gに対して0.5%となる。尚、処理不織布への処理剤の付着量は、該処理不織布をソックスレー抽出機を用いてメタノール/キシレン(50/50容量比)混合溶剤で抽出することにより測定した。下記に示される各評価結果及び測定結果を表3にまとめて示した。
【0055】
<試験区分4(ポリオレフィン系不織布用処理剤の評価)>
・安定性評価
上記各例のポリオレフィン系不織布用処理剤をイオン交換水を用いてさらに希釈し、不揮発分の濃度1.0%の水性液(エマルション)を調製し、安定性評価に用いた。各処理剤を20℃、60%RHの恒温室内にて24時間温調した。処理剤の外観を目視で判断し、以下の基準により評価した。
【0056】
・評価基準
◎:分離なし。
○:分散している状態。
×:分離している状態。
【0057】
・硬水安定性
純水1Lに対し、炭酸カルシウム300mgを溶解させ、硬度300の硬水を調製した。これに上記各例のポリオレフィン系不織布用処理剤(不揮発分)を加えて、10%の硬水の水性液を得た。かかる水性液をさらに硬水を用いて希釈し、不揮発分の濃度1.0%の水性液を調製し安定性評価に用いた。比較対照としてイオン交換水で不揮発分濃度1%の水性液も調製した。
【0058】
調製後6時間の溶液の状態について、イオン交換水で調整した場合と比較して、外観の差の有無を確認し、各々以下の基準で評価した。
・評価基準
◎:イオン交換水で外観の差がみられない場合を良好とした。
○:イオン交換水で外観の若干差がみられるが、沈殿は見られない場合を可とした。
×:硬水で調製した溶液に沈殿が見られる場合を非常に不良とした。
【0059】
・不織布浸透性の評価
処理剤の付与されていない不織布を20℃で相対湿度60%の恒温室内にて24時間温調した。不織布上に各処理剤の1%エマルション(水性液)を5μL不織布上に滴下し、完全に浸透するまでの時間を記録した。
【0060】
・不織布浸透性の評価基準
◎:10秒未満で浸透。
○:10秒以上且つ60秒未満で浸透。
×:60秒以上で浸透。
【0061】
・初期親水性(45°傾斜流長法)
評価用の処理不織布を10cm×15cmの小片に裁断し、20℃で相対湿度60%の恒温室内にて24時間温調した。トイレットペーパーを10枚重ねて吸収体とし、その上に評価用の処理不織布を配置した。45°傾斜板上に評価用の処理不織布とトイレットペーパーを設置し、不織布の上方1cmの高さより37℃の生理食塩水0.05gを滴下した。
【0062】
評価用の処理不織布一枚に対して、滴下点から吸収終了までの流長を5回測定し、その平均値を45°傾斜流長(mm)とした。
・初期親水性の評価基準
◎:流長30mm未満。
○:流長30mm以上且つ50mm未満。
×:流長50mm以上。
【0063】
・耐久親水性(繰り返し20滴法)の評価
評価用の処理不織布を10cm×25cmの小片に裁断し、20℃で相対湿度60%の恒温室内にて24時間温調した。トイレットペーパーを10枚重ねて吸収体とし、その上に評価用の処理不織布をセットした。不織布の上にさらに直径2cmの穴を等間隔に開けた414gのステンレス板を置いた。不織布の上方1cmの高さより37℃の生理食塩水0.05gを滴下した。同一の不織布に対して20か所測定し、10秒以内に吸収された穴の数を数えた。3分経過後、同様に滴下し、吸収される穴の数を数えた。同様の操作を5回繰り返し、測定5回目で吸収された穴の数により耐久親水性を評価した。
【0064】
・耐久親水性の評価基準
◎:18個以上。
○:12個以上且つ18個未満。
×:12個未満。
【0065】
表3の結果からも明らかなように、本発明によれば、ポリオレフィン系繊維に優れた初期親水性及び耐久親水性を付与でき、かつ不織布浸透性が良好である。また、優れた乳化安定性及び硬水安定性を有するという効果があることが確認された。