【解決手段】金属板の表面に塗布されたシーリング剤を硬化させることで形成されたシーリング部10を補修する方法であって、シーリング部10に気泡が発生したときに、気泡を含むシーリング片10aをくり抜いて除去する気泡除去工程と、シーリング片10aと同形状のシーリング栓20aを製作するシーリング栓製作工程と、シーリング栓20aを気泡除去工程でシーリング片10aが除去されることで形成された貫通穴10bに嵌合する嵌合工程とを含む。
前記嵌合工程の後に、前記シーリング栓又は前記シーリング部の一部を取り除いて、前記シーリング栓と前記シーリング部との表面高さを合わせる高さ調整工程を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシーリング部の補修方法。
前記嵌合工程の後に、前記シーリング栓又は前記シーリング部に、自然硬化するシーリング剤を塗布するシーリング剤塗布工程を含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシーリング部の補修方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。また、以下に示す寸法、材料、その他、具体的な数値等は、例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
【0011】
(シーリング部)
図1は、ヘミング部100に形成されたシーリング部10を示す拡大斜視図である。ただし、ヘミング部100及びシーリング部10の一部が、断面で描画されている。
【0012】
ヘミング部100は、2つの金属板をヘミング加工により結合した部位である。以下、一例として、自動車のドアを製造する場合を想定する。自動車のドアは、2つの金属板であるインナーパネル112とアウターパネル114とを含む。インナーパネル112及びアウターパネル114は、それぞれ、金属平板が金型成形されることで形成され得る。インナーパネル112とアウターパネル114との結合体において、インナーパネル112が存在する側が車体内部側に相当し、アウターパネル114が存在する側が車体外部側に相当する。ヘミング加工とは、インナーパネル112とアウターパネル114とを互いに重ね合わせた後にアウターパネル114の外周部を折り返して、アウターパネル114の内面同士でインナーパネル112の外周部を挟み込むことで結合する加工をいう。以下、インナーパネル112側に折り返されたアウターパネル114の一部を「折り返し部114a」と表記する。
【0013】
シーリング部10は、インナーパネル112と折り返し部114aとの隙間を通じて、インナーパネル112とアウターパネル114との間に水分等が進入することを抑えるために設けられる。シーリング部10の形成に際して、まず、インナーパネル112と折り返し部114aとの接触端に相当する段差に沿って、シーリング剤が塗布される。シーリング剤の塗布量は、最終的に硬化したときのシーリング部10の厚さが0.5mm〜1.0mm程度となるような量とする。次に、シーリング剤の塗布領域を含むインナーパネル112及びアウターパネル114の全体又は特定の領域に、塗装がなされる。その後、加熱処理としてインナーパネル112及びアウターパネル114の結合体に焼き付けが施されることにより、シーリング剤が硬化し、ヘミング部100にシーリング部10が形成される。
【0014】
シーリング剤としては、例えば、一液PVC系樹脂ゾルゲル型、一液アクリル系樹脂ゾルゲル型、又は、一液ウレタン系樹脂ゾルゲル型の各熱硬化シーリング剤のいずれかを採用することができる。その他、一液変性シリコン系樹脂ゾルゲル型大気水分硬化シーリング剤は、大気中の水分で常温硬化するほか、熱でも硬化する性質を有するため、本実施形態におけるシーリング剤として採用することができる。なお、シーリング剤は、シーラー剤、又は、単にシーラーともいう。
【0015】
ここで、ヘミング部100には、アウターパネル114の板厚による段差に起因して、シーリング剤を塗布したときに隙間116が生じる場合がある。また、アウターパネル114の折り返しに伴って、インナーパネル112の外周端近傍に空間118が生じる場合がある。さらに、シーリング剤自体に、当初より気泡が混入する場合がある。これらの隙間等に存在する気体が焼き付け時に膨張すると、シーリング部10には、直径数mm程度の気泡となって現れることがある。気泡が生じた部分では、焼き付けによりシーリング部10の表面近傍が硬化して、
図1に示すような凸部12が形成され、外観品質上、好ましくない。そこで、本実施形態では、以下に示すような補修工程により、シーリング部10に発生した凸部12を補修する。
【0016】
(シーリング部の補修方法)
図2は、本実施形態に係るシーリング部10の補修工程を示すフローチャートである。補修工程は、まず、シーリング栓製作工程と、気泡除去工程と、嵌合工程とを含む。
【0017】
シーリング栓製作工程は、以下の嵌合工程で用いられるシーリング栓20a(
図4(b)参照)を予め製作する工程である(ステップS101)。
図3は、シーリング栓製作工程を時系列で説明する斜視図である。
図4は、穴開け工具130、及び、穴開け工具130を用いて取り出されたシーリング栓20aを示す斜視図である。
【0018】
図3(a)は、シーリング栓製作工程におけるシーリングシート形成工程を説明する図である。シーリングシート20は、シーリング部10に用いられるシーリング剤と同一のシーリング剤を用い、かつ、シーリング部10とおおよそ同一の条件で硬化されることで形成されるシートである。
【0019】
まず、厚さが1.0mm程度の金属板120が準備される。金属板120は、シーリングシート20を表面上に形成させる基台である。シーリングシート20をシーリング部10とおおよそ同一条件で形成するという趣旨から、金属板120の材質は、インナーパネル112又はアウターパネル114の材質と同一であってもよい。
【0020】
次に、金属板120の表面上に、シーリング部10に用いられるシーリング剤と同一のシーリング剤が塗布される。このとき、金属板120の表面上から外側にシーリング剤が流出することを抑えるために、金属板120の外周全域に、予め型枠が設置されるものとしてもよい。シーリング剤の塗布量は、シーリング剤が硬化された後に、最終的にシーリングシート20の厚さT1がシーリング部10の厚さと同程度となるような量とする。ここで、シーリング部10の厚さとは、具体的には、以下の気泡除去工程でくり抜かれるシーリング片10a(
図5(b)又は
図5(c)参照)の外周部分の厚さと同義である。
【0021】
そして、金属板120に塗布された状態のシーリング剤は、シーリング部10を形成するときとおおよそ同一の条件で焼き付けされることで硬化される。最終的に、金属板120の表面上には、
図3(a)に示すようなシーリングシート20が形成される。形成されたシーリングシート20は、シーリング部10とおおよそ同色となる。
【0022】
なお、シーリングシート20は、特定の厚さのものに限定されるものではなく、互いに厚さの異なる数種類のシーリングシート20を予め準備しておいてもよい。
【0023】
図3(b)は、シーリング栓製作工程における型取り工程を説明する図である。シーリング栓製作工程での型取り工程では、シーリングシート20に、シーリング栓20aの型が取られる。シーリング栓20aは、以下の気泡除去工程でシーリング片10aが除去されて形成された貫通穴10b(
図5(c)参照)に嵌合されるものである。したがって、シーリング栓20aの外周形状は、シーリング片10aの外周形状と同等とする。本実施形態では、このような外周形状を有するシーリング栓20aの型を取るために、穴開け工具130が用いられる。
【0024】
図4(a)は、穴開け工具130の先端部130c周辺を示す部分拡大図である。穴開け工具130は、例えば、金属製の円筒状の棒体である。穴開け工具130は、内径D1及び外径D2の本体部130aと、本体部130aの一端に一体的に連接されている先端部130cとを含む。先端部130cの内径D1は、本体部130aの内径D1と同一である。つまり、先端部130cの内側には、内径D1の内壁部130bが存在する。先端部130cの外径は、本体部130aとの連接位置では本体部130aの外径D2と同一であり、先端130dでは内径D1と一致する。つまり、先端部130cの外径は、本体部130aとの連接位置から先端130dに向かうにつれて減少する。また、先端130dは、鋭利な円形状のカット刃とみなされ、かつ、内径D1は、この場合の刃先径とみなされる。先端部130cは、外形がこのようにテーパ状となっていることにより、シーリングシート20に対してよりスムーズに進入することができる。
【0025】
なお、本体部130aの他端には、不図示であるが、穴開け工具130を作業者が利用することを考慮して、作業者が握ることができるグリップが取り付けられていてもよい。また、内壁部130bは、少なくとも先端部130cに存在すればよい。
【0026】
作業者は、
図3(b)に示すように、穴開け工具130を回転させながら、先端部130cをシーリングシート20に押し付ける。これにより、先端部130cは、シーリングシート20の厚さT1分、すなわち、先端130dが金属板120の表面に到達するまで進入する。
【0027】
図3(c)は、シーリング栓製作工程における抜き取り工程を説明する図である。作業者は、型取り工程の後、穴開け工具130を押し付け方向とは反対方向に引き抜く。これにより、先端部130cの内壁部130bには、シーリングシート20の一部が保持された状態で抜き取られる。抜き取られたシーリングシート20の一部がシーリング栓20aとなる。シーリング栓20aが抜き取られたことで、シーリングシート20には、貫通穴20bが形成される。
【0028】
図4(b)は、先端部130cの内壁部130bから抜き取られたシーリング栓20aの一例を示す図である。ここで、穴開け工具130の内径D1が、例えば5mmであるものとする。この場合、シーリング栓20aは、直径が内径D1に合わせて5mmで、厚さがシーリングシート20の厚さT1に合わせた1mmである円柱状部材となる。
【0029】
なお、穴開け工具130の内径D1すなわち刃先径は、気泡除去工程において除去対象となる凸部12の大きさに基づいて規定される。つまり、シーリング栓製作工程では、凸部12を包含する寸法である内径D1の穴開け工具130が採用される。また、凸部12の発生原因となるシーリング部10内の気泡の大きさは一定ではないので、様々な位置に発生する凸部12の大きさも、互いに一定ではない。そこで、様々な凸部12の大きさを想定して互いに異なる内径D1を有する複数の穴開け工具130を予め準備し、適宜、使い分けてもよい。また、
図3に示す例では、シーリングシート20から1つのシーリング栓20aが製作された状態を示しているが、シーリングシート20の別位置から同様に複数のシーリング栓20aが製作されてもよい。
【0030】
次に、気泡除去工程は、気泡を含むシーリング片10aをくり抜いて除去する工程である(ステップS102)。
図5は、気泡除去工程を時系列で説明する斜視図である。
【0031】
図5(a)は、内部の気泡に起因して凸部12が発生したシーリング部10の一部を拡大した図である。ヘミング加工を含む自動車のドア等の製造ラインにおいて、シーリング部10に凸部12が発生した場合には、気泡除去工程における以下の型取り工程及び抜き取り工程が実施される。ここで、発生した凸部12の平面上の大きさの一例として、凸部12の外周径D3が約4mmであると想定する。
【0032】
図5(b)は、気泡除去工程における型取り工程を説明する図である。気泡除去工程での型取り工程では、シーリング部10に、シーリング片10aの型が取られる。本実施形態では、シーリング片10aの型を取るために、シーリング栓製作工程で用いられたものと同じ穴開け工具130が用いられる。上記のとおり、凸部12の外周径D3が約4mmである場合、穴開け工具130の内径D1が5mmであれば、凸部12を包含する寸法であるため(D1>D3)、穴開け工具130を好適に採用することができる。
【0033】
作業者は、
図5(b)に示すように、内壁部130bで囲まれる領域に凸部12が包含されるように穴開け工具130の先端部130cを位置させた後、穴開け工具130を回転させながら、先端部130cをシーリング部10に押し付ける。これにより、先端部130cは、シーリング部10の厚さT1分、すなわち、先端130dがアウターパネル114の折り返し部114aの表面に到達するまで進入する。
【0034】
図5(c)は、気泡除去工程における抜き取り工程を説明する図である。作業者は、型取り工程の後、穴開け工具130を押し付け方向とは反対方向に引き抜く。これにより、先端部130cの内壁部130bには、シーリング部10の一部が保持された状態で抜き取られる。抜き取られたシーリング部10の一部がシーリング片10aとなる。なお、シーリング片10aが抜き取られたことで、シーリング部10には、貫通穴10bが形成される。
【0035】
また、気泡除去工程における型取り工程では、先端部130cをシーリング部10に押し付けるに際して、先端130dは、折り返し部114aの段差の存在により、インナーパネル112の表面までは到達しない。しかし、シーリング片10aの側面領域の大部分が先端部130cの内壁部130bと接するため、抜き取り工程においてシーリング片10aの一部がシーリング部10側に残存することは避けられる。したがって、貫通穴10bが形成された後には、
図5(c)に示すように、インナーパネル112の一部と、折り返し部114aの一部とが、貫通穴10bを通じて外部に露出する。
【0036】
なお、
図2に示すフローチャートでは、気泡除去工程は、シーリング栓製作工程の後に実施されることになっているが、シーリング栓製作工程の前に実施されてもよい。又は、気泡除去工程とシーリング栓製作工程とが、ほぼ同時に実施されてもよい。
【0037】
次に、嵌合工程は、シーリング栓製作工程で製作されたシーリング栓20aを、気泡除去工程でシーリング片10aが除去されることで形成された貫通穴10bに嵌合する工程である(ステップS103)。
図6は、嵌合工程を時系列で説明する斜視図である。
【0038】
図6(a)は、嵌合工程において、シーリング栓20aが嵌合される前の状態を示す図である。まず、作業者は、貫通穴10bの底部、すなわち、貫通穴10bを通じて露出しているインナーパネル112の又は折り返し部114aに接着剤30を塗布する。次に、作業者は、貫通穴10bにシーリング栓20aを挿入し、嵌合させる。そして、貫通穴10bの底部とシーリング栓20aの底面とは、接着剤30の硬化により固着される。
【0039】
なお、
図6(a)に示す例では、貫通穴10bの底部とシーリング栓20aの底面とが接着剤30を介して固着されるものとしているが、接着剤30に代えて、両面テープ等を用いて固着されてもよい。
【0040】
図6(b)は、嵌合工程において、シーリング栓20aが嵌合された後の状態を示す図である。本実施形態では、シーリング栓20aの外径は、貫通穴10bの内径とおおよそ同一であるので、シーリング栓20aは、貫通穴10bに対して密に嵌合される。
【0041】
ここで、シーリング栓20aの厚さは、貫通穴10bの深さ、すなわちシーリング片10aの厚さとおおよそ同一である。したがって、シーリング栓20aが貫通穴10bに嵌合された後では、シーリング栓20aとシーリング部10との表面高さは、基本的には、おおよそ同一となる。しかし、例えば、シーリング栓製作工程での製作上の精度によっては、
図6(b)に示すように、嵌合工程が終了した段階で、必ずしもシーリング栓20aとシーリング部10との表面高さがおおよそ同一になるとは限らない。
【0042】
そこで、作業者は、嵌合工程の後、シーリング栓20aとシーリング部10との表面高さが互い合っているかを確認する(ステップS104)。ここで、作業者が、シーリング栓20aとシーリング部10との表面高さが同一である又は同一とみなせると判断した場合には(YES)、シーリング部10の補修工程を終了する。一方、作業者が、シーリング栓20aとシーリング部10との表面高さが外観品質上無視できない程度に異なると判断した場合には(NO)、以下の高さ調整工程に移行する。
【0043】
次に、高さ調整工程は、嵌合工程の後、シーリング栓20aとシーリング部10との表面高さを合わせる工程である(ステップS105)。つまり、高さ調整工程は、シーリング部10の補修工程において任意で実施される第1の仕上げ工程として位置付けられる。
【0044】
図7は、
図6(b)に示す状態から高さ調整工程が実施された後のシーリング部10の状態を示す斜視図である。高さ調整工程では、表面に高さ差が生じているシーリング栓20a又はシーリング部10の一部を取り除くことで、シーリング栓20aとシーリング部10との表面高さを合わせる。具体的には、シーリング栓20a又はシーリング部10の一部を、カッター等を用いて切除してもよいし、ヤスリ等を用いて研磨してもよい。
【0045】
ここで、高さ調整工程が実施されることで、シーリング栓20aとシーリング部10との表面高さが合わせられる。しかし、例えば、嵌合工程での嵌め合いの程度によっては、
図7に示すように、シーリング栓20aとシーリング部10との境界部10cに、若干の隙間等が生じる場合もあり得る。
【0046】
そこで、作業者は、高さ調整工程の後、シーリング栓20aとシーリング部10との表面にさらなる仕上げ処理が必要かを確認する(ステップS106)。ここで、作業者が、さらなる仕上げ処理を要しないと判断した場合には(NO)、シーリング部10の補修工程を終了する。一方、作業者が、さらなる仕上げ処理を要すると判断した場合には(YES)、以下のシーリング剤塗布工程に移行する。
【0047】
次に、シーリング剤塗布工程は、嵌合工程の後で、例えば高さ調整工程の後に、シーリング栓20a又はシーリング部10に、自然硬化するシーリング剤を塗布する工程である(ステップS107)。つまり、シーリング剤塗布工程は、シーリング部10の補修工程において任意で実施される第2の仕上げ工程として位置付けられる。
【0048】
ここで、自然硬化するシーリング剤とは、特に加熱処理が施されずとも硬化する性質を有するシーリング剤をいう。このようなシーリング剤としては、例えば、常温硬化シーリング剤がある。常温硬化シーリング剤としては、例えば、インナーパネル112やアウターパネル114の塗装に用いられる水性塗料や空気中の水分で常温硬化する一液ウレタン系樹脂ゾルゲル型湿気硬化シーリング剤を採用することができる。又は、上記例示したような熱硬化シーリング剤や一液変性シリコン系樹脂ゾルゲル型大気水分硬化シーリング剤であっても、加熱をせずとも、例えば経時的に硬化する性質を有するシーリング剤であれば、自然硬化するシーリング剤として採用することができる。
【0049】
シーリング剤塗布工程では、シーリング栓20a又はシーリング部10、具体的にはシーリング栓20aとシーリング部10との境界部10c又は境界部10cの近傍に、自然硬化するシーリング剤が塗布される。これにより、シーリング栓20a又はシーリング部10の表面がより滑らかに平坦化されるので、特に境界部10cが外観上より目立たなくなる。ここで、シーリング剤の塗布量は、微量であることが望ましい。これにより、シーリング剤塗布工程で用いられるシーリング剤が、シーリング栓20a又はシーリング部10の形成に用いられるシーリング剤と異なる材質からなるものであっても、硬化後に色違いを認められづらくすることができる。
【0050】
なお、
図2に示すフローチャートでは、シーリング剤塗布工程は、嵌合工程が実施された後で、かつ、高さ調整工程が実施された後に実施されることになっている。しかし、嵌合工程の終了時点でシーリング栓20aとシーリング部10との表面高さがおおよそ同一となっていることから高さ調整工程が不要であるような場合であっても、シーリング剤塗布工程を実施したい状況もあり得る。例えば、シーリング栓20a又はシーリング部10の表面に生じている比較的細かな凹凸をより目立たなくする場合などが、この状況に相当する。そこで、このような場合には、高さ調整工程を実施せずに、シーリング剤塗布工程のみを実施するものとしてもよい。
【0051】
次に、本実施形態による効果について説明する。
【0052】
本実施形態に係るシーリング部10の補修方法は、金属板の表面に塗布されたシーリング剤を硬化させることで形成されたシーリング部10を補修する。補修方法は、シーリング部10に気泡が発生したときに、気泡を含むシーリング片10aをくり抜いて除去する気泡除去工程を含む。補修方法は、気泡除去工程でくり抜かれたシーリング片10aと同形状のシーリング栓20aを製作するシーリング栓製作工程を含む。また、補修方法は、シーリング栓製作工程で製作されたシーリング栓を、気泡除去工程でシーリング片10aが除去されることで形成された貫通穴10bに嵌合する嵌合工程を含む。
【0053】
ここで、金属板は、例えば、上記例示したインナーパネル112及びアウターパネル114に相当する。
【0054】
本実施形態に係る補修方法によれば、気泡を含むシーリング片10aを除去した後、シーリング片10aが除去されることで形成された貫通穴10bにシーリング栓20aを嵌合させて埋める。そのため、最終的には、シーリング部10には、気泡、及び、その気泡に起因して発生した凸部12が残らない。したがって、シーリング部10の外観品質を向上させることができる。
【0055】
また、従来の補修方法として、カッター等を用いて気泡が発生した部分をシーリング部から一旦大きく除去し、再度、シーリング剤を塗布して再焼き付けを行うことも考えられる。これに対して、本実施形態に係る補修方法によれば、再度焼き付けを行う必要がないので、補修工数の増加を抑えることができる。
【0056】
また、例えば、予め複数のシーリング栓20aを準備しておくことで、シーリング部10に気泡が発生した場合、
図2の気泡除去工程(ステップS102)以降の工程を実施すればよく、焼き付けを行う必要がないので、短時間で補修することができる。これにより、本実施形態に係る補修方法は、例えば、ヘミング部100を有する自動車のドア等の通常の製造ライン内で行うことが可能であるため、生産効率を向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態に係る補修方法では、シーリング栓20aを形成するシーリング剤の材質は、シーリング部10を形成するシーリング剤の材質と同一であってもよい。
【0058】
このような補修方法によれば、硬化した後のシーリング栓20aと、硬化した後のシーリング部10とは、おおよそ同色となる。したがって、嵌合工程の後のシーリング栓20aとシーリング部10との色の違いが抑えられるので、補修跡をより目立ちづらくすることができる。
【0059】
また、本実施形態に係る補修方法では、気泡除去工程で形成された貫通穴10bの開口形状は、円形であるものとしてもよい。
【0060】
このような補修方法によれば、作業者は、例えば、円形状のカット刃を有する穴開け工具130を用いることで、穴開け工具130の回転を伴うシーリング部10への押し付けにより、シーリング片10aを容易にくり抜いて除去することができる。また、貫通穴10bの開口形状が円形となるように穴を開ける工具として、互いに刃先径の異なる複数の穴開け工具130を予め準備しやすい。したがって、適切な刃先径の穴開け工具130を用いることで、補修部分となるシーリング片10aを最小限の大きさにすることができ、結果として、補修跡をより目立ちづらくすることができる。
【0061】
また、本実施形態に係る補修方法は、嵌合工程の後に、シーリング栓20a又はシーリング部10の一部を取り除いて、シーリング栓20aとシーリング部10との表面高さを合わせる高さ調整工程を含むものとしてもよい。
【0062】
このような補修方法によれば、嵌合工程の終了後に、シーリング栓20aとシーリング部10との表面高さが互いに異なるものとなっていても、互いの表面高さが合うように調整することができるので、シーリング部10の外観品質をより向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態に係る補修方法は、嵌合工程の後に、シーリング栓20a及びシーリング部10に、自然硬化するシーリング剤を塗布するシーリング剤塗布工程を含むものとしてもよい。
【0064】
このような補修方法によれば、嵌合工程の終了後に、シーリング栓20a又はシーリング部10の表面や境界部10cに、細かな凹凸や隙間が生じていても、シーリング剤を塗布することで滑らかな表面に改善して、補修跡をより目立ちづらくすることができる。また、塗布されたシーリング剤は、塗布後に再度焼き付けが行われなくても自然硬化するので、補修工数の増加を抑えることができる。
【0065】
なお、上記の説明では、シーリング部10の補修工程に含まれる各種の工程が、作業者によって実施されるものとしたが、例えば、少なくともいくつかの工程がロボット等の機器により自動で行われるものとしてもよい。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。