特開2020-112167(P2020-112167A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-112167(P2020-112167A)
(43)【公開日】2020年7月27日
(54)【発明の名称】薄板用ドリルネジ
(51)【国際特許分類】
   F16B 25/10 20060101AFI20200626BHJP
【FI】
   F16B25/10 A
   F16B25/10 L
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-1031(P2019-1031)
(22)【出願日】2019年1月8日
(11)【特許番号】特許第6710417号(P6710417)
(45)【特許公報発行日】2020年6月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000167211
【氏名又は名称】イイファス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100133260
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 基子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勝夫
(57)【要約】
【課題】 極薄い金属板であっても必要な高さのバーリングを形成するとともに連続的にネジ山を形成して適切な締結強度が得られる薄板用ドリルネジを提供する。
【解決手段】 穴加工用のドリル部2と、ネジが形成されずに後方側へテーパ状に拡径されたテーパ状曲面部3と、雄ネジを有するネジ部4とのそれぞれが、ドリルネジの先端から順に連続的に形成されている。また、ネジ部4は、テーパ状曲面部3に隣接する先端側部分に、前記テーパ状曲面部3と同一のテーパ角で形成されたテーパ状ネジ面41を有していてもよい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴加工用のドリル部と、ネジが形成されずに後方側へテーパ状に拡径されたテーパ状曲面部と、雄ネジを有するネジ部とのそれぞれが、ドリルネジの先端から順に連続して形成されている薄板用ドリルネジ。
【請求項2】
前記ドリル部と前記テーパ状曲面部との間には、ネジが形成されずに円柱曲面状に構成された円柱状曲面部が、前記ドリル部および前記テーパ状曲面部とそれぞれ連続して形成されている請求項1に記載の薄板用ドリルネジ。
【請求項3】
前記ネジ部は、前記テーパ状曲面部に隣接する先端側部分に、前記テーパ状曲面部と同一のテーパ角で形成されたテーパ状ネジ面を有している、請求項1または請求項2に記載の薄板用ドリルネジ。
【請求項4】
前記ドリル部は、前記テーパ状曲面部の先端径と同一径の円柱状外周面を有している、請求項1から請求項3のいずれかに記載の薄板用ドリルネジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリルネジに関し、特にネジピッチと同等もしくはそれよりも薄い極薄板の締結にも好適な薄板用ドリルネジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、板厚が比較的厚い被締結部材を締結するのに、予め形成された下孔をタップしてねじ山を形成しながら締結することのできるタッピングネジが用いられている。また、これまでに、下孔の形成と締結とを一工程行うことのできるドリルネジに関する発明が提案されている。
【0003】
例えば、特開2004−347104号公報では、ネジ回し工具と係合する係合部を備えた頭部と、外周にネジ山を形成した軸部と最大径が前記軸部の外形より大きく、前記ネジ山の呼び径より小さいスプーン状穿孔用刃先を有するタッピングネジが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−347104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、板厚が1.0mm〜1.6mmという、いわゆるネジピッチと同等もしくはそれよりも薄い金属板に使用した場合、ネジを形成できるような高さのバーリングが形成されず、よって必要な締結強度が得られないという、実用面での大きな問題がある。
【0006】
また、従来の薄板用のドリルネジを各種建設工事現場で使用する場合、十分な締結強度が得られていないため使用本数が多くなり、それ故に締結箇所が多くなってしまうという問題もある。よって、建築工事現場における薄板用ドリルネジの締結箇所を削減するためにも十分な締結強度が得られる製品の開発が熱望されている。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、極薄い金属板であっても必要な高さのバーリングを形成するとともに連続的にネジ山を形成して適切な締結強度が得られる薄板用ドリルネジを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る薄板用ドリルネジは、例えば鋼板厚が1.0mm〜1.6mm程度の極薄い金属板に対してもそれぞれ適度な高さのバーリングを形成するとともに連続して一工程でねじ山を形成して適切な締結強度が得られるようにするという課題を解決するために、穴加工用のドリル部と、ネジが形成されずに後方側へテーパ状に拡径されたテーパ状曲面部と、雄ネジを有するネジ部とのそれぞれが、ドリルネジの先端から順に連続的に形成されている。
【0009】
また、本発明の一態様として、軸ぶれを防いで高精度の真円状のバーリング部を形成するという課題を解決するために、前記ドリル部と前記テーパ状曲面部との間には、ネジが形成されずに円柱曲面状に構成された円柱状曲面部が、前記ドリル部および前記テーパ状曲面部とそれぞれ連続して形成されている。
【0010】
また、本発明の一態様として、極薄金属板に対して適度な高さのバーリングおよびねじ山をより精度良く形成して歩留まりを高めたいという課題を解決するために、ネジ部は、テーパ状曲面部に隣接する先端側部分に、前記テーパ状曲面部と同一のテーパ角で形成されたテーパ状ネジ面を有していることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の一態様として、極薄金属板に対して穴加工からバーリングおよびネジ加工までをより円滑に行って十分な締結強度が得られるようにするという課題を解決するために、ドリル部は、テーパ状曲面部の先端径と同一径の円柱状外周面を有していることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、極薄い金属板であっても必要な高さのバーリングを形成するとともに連続的にネジ山を形成して適切な締結強度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る薄板用ドリルネジの第1実施形態を示す斜視図である。
図2】本第1実施形態の薄板用ドリルネジを示す図であり、(a)正面図、(b)左側面図、(c)右側面図である。
図3】本第1実施形態の使用状態を示す図であり、(a)穴加工、(b)バーリング加工、(c)ネジ加工を行っていることを示す図である。
図4】本第1実施形態においてネジ加工成形後の状態を示す断面図である。
図5】本発明に係る薄板用ドリルネジの第2実施形態を示す斜視図である。
図6】本第2実施形態の薄板用ドリルネジを示す図であり、(a)正面図、(b)左側面図、(c)右側面図である。
図7】実施例1で使用した薄板用ドリルネジの各部の寸法を示す正面図である。
図8】実施例1における引張試験の方法を示す模式図である。
図9】実施例1において板厚1.0mmの引張試験結果を示す図である。
図10】実施例1において板厚1.2mmの引張試験結果を示す図である。
図11】実施例1において板厚1.6mmの引張試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る薄板用ドリルネジの第1実施形態について図面を用いて説明する。
【0015】
図1および図2に示すように、本第1実施形態の薄板用ドリルネジ1は、主として、ドリル部2と、テーパ状曲面部3と、ネジ部4とのそれぞれが先端から順に連続して形成されている。また、薄板用ドリルネジ1の後端部にはネジ頭部5が設けられている。以下、各構成部について詳細に説明する。
【0016】
ドリル部2は、鋼板等の金属板に穴あけ加工するための構成を備えており、円柱形状に形成されている。従来のドリルネジでは板状に形成されたものが多いが、極薄い金属板に略真円の穴加工を施すには円柱状外周面21を備えたものが好ましい。また、当該円柱状外周面21は、テーパ状曲面部3の先端径と同一の径に構成されており、穴あけ加工からバーリング加工が円滑に進められるようになっている。
【0017】
テーパ状曲面部3は、ネジが形成されずに後方側へテーパ状に拡径されている。当該テーパ状曲面部3も板状のテーパではなく、断面が略真円となるように構成されており、ドリル部2で形成された穴に対して均等な力が加わるようにしてバーリング加工されるように工夫されている。また、テーパ状曲面部3のテーパ角度は特に限定されるものではないが、10°〜15°程度が好ましく、本第1実施形態ではテーパ角が約10°に形成されている。
【0018】
また、テーパ状曲面部3の長さは、被締結物である金属板の板厚などによって適宜設定してよいが、例えばネジ部4のネジ径に対して17%〜26%の範囲内で設定されるのが好ましい。本第1実施形態ではM8のネジに対して約26%の長さに形成している。
【0019】
ネジ部4は、バーリング加工された部分の内周面にネジ山を形成しつつ螺合するための構成部である。ネジ部4において前記テーパ状曲面部3に隣接する先端側部分には、前記テーパ状曲面部3と同一のテーパ角で形成されたテーパ状ネジ面41が形成されている。このテーパ状ネジ面41によってテーパ状曲面部3によるバーリング加工から連続的かつ円滑にネジ山が形成されるようになっている。
【0020】
ネジ頭部5はスクリュードライバー等の締結工具で回転されるための構成部であり、図示した形状に限定されず、一般的な頭部を含めて使用目的に応じて適宜変更可能である。
【0021】
つぎに本第1実施形態の薄板用ドリルネジ1の作用について説明する。
【0022】
図3(a)に示すように、まずネジ頭部5にスクリュードライバーを嵌め、ドリル部2の先端を被締結部材である薄板状金属板に当接させて穴あけ加工を施す。この際、ドリル部2が円柱状外周面21を備えた円柱状ドリルにより構成されているため、金属板にはほぼ真円の穴が加工される。
【0023】
続いて図3(b)に示すように、ドリル部2に続くテーパ状曲面部3が加工穴の周縁部分を押し出してバーリング加工を施す。この際、適度なテーパ状曲面部3のテーパ面によって無理なく均等に押し出すため、極薄い金属板であってもバーリング加工が可能となる。
【0024】
続いて図3(c)に示すように、ネジ部4がバーリング加工した内周面にネジを形成しつつ螺合する。この際、ネジ部4には、テーパ状曲面部3と同一テーパ角であるテーパー状ネジ面41が形成されているため、バーリング加工からネジ加工へスムーズに移行される。
【0025】
以上のような工程を経て加工成形した場合、図4に示すように、ネジピッチが1.25mmの薄板用ドリルネジ1の場合、板厚1.0mmの鋼板に対して適切な高さのバーリングを立ち上げることができる。
【0026】
以上のような本第1実施形態によれば、板厚が1.0mm〜1.6mm程度のネジピッチと同等かそれ以下の極薄い金属板に対しても必要な高さのバーリングを形成し、その内周面にネジを形成することができるため、高い締結強度を確保することができる。
【0027】
なお、上述した本第1実施形態の薄板用ドリルネジ1は、ドリル部2と、テーパ状曲面部3と、ネジ部4とのそれぞれが先端から順に連続して形成されているが、本発明の課題を解決しうる作用効果が得られる限り、上記各構成部間に他の構成部が介在されてもよい。例えば、次に第2実施形態として説明するような円柱状曲面部6がドリル部2とテーパ状曲面部3との間に連続的に介在されていてもよい。
【0028】
つぎに、本発明に係る薄板用ドリルネジの第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態の構成と同一ないし同等の構成については同一の符号を付し、再度の説明を省略する。
【0029】
図5および図6に示すように、本第2実施形態の薄板用ドリルネジ1は、ドリル部2とテーパ状曲面部3との間に、ネジが形成されずに円柱曲面状に形成された円柱状曲面部6が連続して設けられていることを特徴としている。つまり、本第2実施形態は、主として、ドリル部2と、円柱状曲面部6と、テーパ状曲面部3と、ネジ部4とのそれぞれが、先端から順に連続して形成されている。
【0030】
円柱状曲面部6は、ドリル部2の円柱状外周面21と同一径の外周を有する円柱状に形成されており、軸ぶれ(偏芯)を防いで高精度の真円状のバーリングを形成することに寄与するものである。また、穴加工時には高速回転するために摩擦抵抗による発熱によりバーリングが形成させやすくなるという作用もある。なお、円柱状曲面部6の長さは締結する金属板の板厚などによって適宜設定されるが、例えばネジ部4のネジ径に対して17%〜26%の範囲内で設定されるのが好ましい。本第2実施形態では、M8のネジに対して約26%の長さに形成している。
【0031】
以上のような本第2実施形態によれば、ネジピッチと同等かそれ以下の極薄い金属板に対しても必要な高さのバーリングを形成し、その内周面にネジを形成することができるため、高い締結強度を確保することができる。
【実施例1】
【0032】
つぎに、本発明に係る薄板用ドリルネジの実施例1について説明する。
【0033】
本実施例1では、本第1実施形態の薄板用ドリルネジについて実用上の締結強度が得られるか否かを判断するために引張試験を行った。試験に用いた薄板用ドリルネジの寸法を図7に示す。この薄板用ドリルネジはネジ径が8mm、ネジピッチが1.25mmであり、テーパ状曲面部の先端側外径が5.9mm、後端側外径が6.65mm、長さが2.1mm、テーパ角が10°である。また、ドリル部の長さは6.0mmである。
【0034】
また、図8に引張試験機を示す。引張試験には、金属板として現場で実際に使用しているデッキプレートおよびリップ溝形鋼を使用した。当該金属板に実施例1の薄板用ドリルネジをねじ込んで締結し、当該金属板を下方位置で治具に固定し、薄板用ドリルネジを上方向に引張荷重を加えて最大値を測定した。測定に使用した引張試験機は、市販品のテクノテスター(登録商標:サンコーテクノ株式会社製)のAT-10DIIである。また、金属板の板厚はそれぞれ1.0mm、1.2mm、1.6mmであり、板厚1.0mmと1.2mmの金属板はデッキプレートを使用し、板厚1.6mmの金属板はリップ溝形鋼を使用した。
【0035】
引張試験の結果を図9ないし図11に示す。これらの図に示すように、いずれの板厚の金属板に対しても実用上、十分な引張強度が得られた。具体的に見ると、図9に示すように、板厚1.0mmの金属板に対しては最大荷重3.9kN、最大荷重時の変位値が9.45mmであった。また、図10に示すように、板厚1.2mmの金属板に対しては最大荷重5.0kN、最大荷重時の変位値が7.05mmであった。そして、図11に示すように、板厚1.6mmの金属板に対しては最大荷重6.3kN、最大荷重時の変位値が5.05mmであった。
【0036】
上記引張試験の結果について、従来の実用化されているドリルネジが板厚1.6mmのリップ溝形鋼に対して最大引張強度が5kNを保証していることに鑑みると、本実施例1の製品はそれ以上の最大引張強度が得られることがわかる。また、特に板厚1.6mmだけでなく、ネジピッチよりも薄い1.2mmおよび1.0mmの金属板に対しても十分な最大引張強度が得られていることから様々な板厚の金属板に対して極めて汎用性が高いといえる。
【0037】
なお、本発明に係る薄板用ドリルネジは、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 薄板用ドリルネジ
2 ドリル部
3 テーパ状曲面部
4 ネジ部
5 ネジ頭部
6 円柱状曲面部
21 円柱状外周面
41 テーパ状ネジ面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2020年1月16日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴加工用のドリル部と、ネジが形成されずに円柱曲面状に構成された円柱状曲面部と、ネジが形成されずに後方側へテーパ状に拡径されたテーパ状曲面部と、雄ネジを有するネジ部とのそれぞれが、ドリルネジの先端から順に連続して形成されており、
前記円柱状曲面部が、前記ネジ部のネジ径に対して17%〜26%の範囲内の長さを有するとともに、
前記テーパ状曲面部が、前記ネジ部のネジ径に対して17%〜26%の範囲内の長さを有する薄板用ドリルネジ。
【請求項2】
前記ネジ部は、前記テーパ状曲面部に隣接する先端側部分に、前記テーパ状曲面部と同一のテーパ角で形成されたテーパ状ネジ面を有している、請求項1に記載の薄板用ドリルネジ。
【請求項3】
前記ドリル部は、前記テーパ状曲面部の先端径と同一径の円柱状外周面を有している、請求項1または請求項2に記載の薄板用ドリルネジ。