(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-114275(P2020-114275A)
(43)【公開日】2020年7月30日
(54)【発明の名称】発泡樹脂製玩具およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A63H 9/00 20060101AFI20200703BHJP
A63H 33/42 20060101ALI20200703BHJP
C08J 9/00 20060101ALI20200703BHJP
【FI】
A63H9/00 Q
A63H33/42 Z
C08J9/00 ZCER
C08J9/00CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-6002(P2019-6002)
(22)【出願日】2019年1月17日
(71)【出願人】
【識別番号】500079687
【氏名又は名称】株式会社ブルーム
(74)【代理人】
【識別番号】100088720
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞一
(72)【発明者】
【氏名】桑原 年子
【テーマコード(参考)】
2C150
4F074
【Fターム(参考)】
2C150FB13
2C150FB16
2C150FD22
4F074AA78
4F074AA97
4F074CC62Y
4F074DA19
4F074DA45
(57)【要約】
【課題】本発明は、部分的にやわらかさや触感が異なる発泡樹脂製玩具およびその製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明にかかる発泡樹脂製玩具100の代表的な構成は、ひとつの面の全部または一部が自由に膨出した形状(自然膨張面124)をしていて、残りの面が型に規定された形状(規定面122)をしていることを特徴とする。自然膨張面124は、規定面122よりも自由に膨張するため、スキンが薄くなってやわらかくなり、異なる触感を得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひとつの面の全部または一部が自由に膨出した形状をしていて、残りの面が型に規定された形状をしていることを特徴とする発泡樹脂製玩具。
【請求項2】
切断面において、型に規定された面よりも膨出した面のスキンが薄いことを特徴とする請求項2に記載の発泡樹脂製玩具。
【請求項3】
発泡樹脂を、上面の全部または一部を開放した型の中で発泡、硬化させて成形することを特徴とする発泡樹脂製玩具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部分的にやわらかさや触感が異なる発泡樹脂製玩具およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、低反発性ポリウレタンフォームや、シリコン系重合体を基材とする発泡樹脂製の玩具が提供されている。特許文献1には、シリコン系重合体を基材樹脂とする発泡樹脂成形体が提案されている。特許文献1によれば、この発泡樹脂成形体は良好な触感、とりわけもちもち感があり、例えばキーホルダーやぬいぐるみなどに利用できると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−100769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、「もちもち感」を物理的に評価する手法を提案すると共に、具体的な材質としてはシリコン系重合体を基材樹脂とすることを提案している。
【0005】
しかしながら特許文献1においては、全体が一様に「もちもち感」を有することを前提としている。発泡樹脂で一体成形した1つの玩具において、部位によりやわらかさや触感を変えることができれば、一風変わった触り心地の玩具を提供することができる。特に、その玩具が模した物体の形状と触感の異なりを一致させれば、より模倣性を高めたり趣向を凝らすことができ、玩具の面白みを増すことができる。
【0006】
そこで本発明は、部分的にやわらかさや触感が異なる発泡樹脂製玩具およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる発泡樹脂製玩具の代表的な構成は、ひとつの面の全部または一部が自由に膨出した形状をしていて、残りの面が型に規定された形状をしていることを特徴とする。なお「ひとつの面」とは、製造時には上方の面である。しかし製造時の姿勢は完成品の天地とは関係ないため、完成品の上面のみならず、前面や側面、背面、ないしは底面が自由に膨出した形状となっていてもよい。
【0008】
上記の発泡樹脂製玩具は、切断面において、型に規定された面よりも膨出した面のスキンが薄いことが好ましい。
【0009】
自由に膨出した形状ないし自由に膨出した面とは、換言すれば型に押さえられずに膨張した面であり、型の形状を転写されていない面である。このような自由に膨出した面は、型に規定された面よりも内部の多孔質の気泡が大きくなり、密度が疎となる。このため切断面において、型に規定された面よりも自由に膨出した面のスキンが薄くなり、異なる触感を得ることができる。
【0010】
本発明にかかる発泡樹脂製玩具の製造方法の代表的な構成は、上面の全部または一部を開放した型の中で発泡、硬化させて成形することを特徴とする。これにより、上述のような発泡樹脂製玩具を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、部分的にやわらかさや触感が異なる発泡樹脂製玩具およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ひとつの面の全部が膨出した発泡樹脂製玩具を説明する図である。
【
図2】発泡樹脂製玩具の製造方法を説明する図である。
【
図4】ひとつの面の一部が膨出した発泡樹脂製玩具、およびその製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示または説明を省略する。
【0014】
図1はひとつの面の全部が膨出した発泡樹脂製玩具100を説明する図である。
図1(a)に示す発泡樹脂製玩具100はカップケーキを模した玩具であって、カップケーキの型110の中に発泡樹脂120が収容された状態となっている。型110は上面の全部が開放されている。型110は紙製であってもよいが、金属製であってもよい。
【0015】
図1(b)は発泡樹脂120を型110から取り出した状態を示している。
図1(b)に示すように、発泡樹脂120は、ひとつの面の全部が自由に膨出した形状をしていて、残りの面が型に規定された形状をしている。以下の説明において、型に規定された面を規定面122と称し、膨出した面を自然膨張面124と称する。
【0016】
図2は発泡樹脂製玩具100の製造方法を説明する図である。
図2(a)に示すように、射出装置のノズル140から型110内に発泡樹脂120の材料となる混合液130を注入する。混合液130は、例えば発泡ポリウレタンの場合は主剤(主にポリオールやポリアミン)と硬化剤(主にイソシアネート)の混合液である。これらはノズル140内で噴射直前に混合される。
【0017】
すると
図2(b)に示すように、型110の中で混合液130が発泡し、発泡樹脂120が形成される。型110に接触している部分は、規定面122となる。型110に接触しない部分は自由に膨張して、自然膨張面124となる。このあと80度のオーブンで加熱することにより硬化して安定する。なお自然膨張面124の形状は不安定になりがちであるため、注入する混合液130の容量の制御は注意を要する。
【0018】
上記のようにして、ひとつの面の全部が自由に膨出した形状をしていて、残りの面が型に規定された形状をしている発泡樹脂製玩具が製造される。自由に膨出した形状ないし自由に膨出した面とは、換言すれば型に押さえられずに膨張した面であり、型の形状を転写されていない面である。このような自由に膨出した面は、型に規定された面よりも内部の多孔質の気泡が大きくなり、密度が疎となる。
【0019】
図3は発泡樹脂120の断面の例を示す図(写真)である。規定面122も自然膨張面124も表層にはスキンが形成される。ただし、型110に接触していた規定面122においては、気泡が緻密なスキンが厚く形成される。一方、型110に接触していなかった自然膨張面124のスキンは薄く形成される。自然膨張面124は規定面122よりもやわらかく、異なる触感を得ることができる。規定面122は固くさらさらとしており、自然膨張面124はやわらかくもちもちとしている。
【0020】
上記説明においては、型110のひとつの面の全部が自然膨張面124となっている場合について説明した。本発明は更に、ひとつの面の一部のみ自然膨張面124となっていてもよい。
【0021】
図4はひとつの面の一部が自由に膨出した発泡樹脂製玩具、およびその製造方法を説明する図である。
図4(a)に示す金型150は食パンを模した玩具の型であって、下型152と上型154から構成されている。上型154には穴156が設けられていて、上面の一部(穴156の部分)が開放されている。
【0022】
図4(b)は、
図4(a)の金型150の中で発泡、硬化させて成形した発泡樹脂製玩具200である。発泡樹脂製玩具200は、食パンの全体形状を模した規定面202と、穴156の中に膨出した自然膨張面204とを有している。なお
図4(b)において、自然膨張面204にはハッチングを付して示している。この発泡樹脂製玩具200においては、規定面202は固くさらさらとしており、自然膨張面204はやわらかくもちもちとしている。
【0023】
上記説明したように、本発明によれば、発泡樹脂製玩具において部分的にやわらかさや触感を異ならせることにより、一風変わった触り心地の玩具を提供することができる。特に、その玩具が模した物体の形状と触感の異なりを一致させれば、より模倣性を高めたり趣向を凝らすことができ、玩具の面白みを増すことができる。
【0024】
なお、
図4では穴156を1つだけ設けて示しているが、複数の穴を設けてもよい。また上記したように、製造時は上方に穴を設ける必要があるが、完成品においては自然膨張面204のある面が前面や側面、背面、ないしは底面であってもよい。
【0025】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は斯かる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は部分的にやわらかさや触感が異なる発泡樹脂製玩具およびその製造方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
100…発泡樹脂製玩具、110…型、120…発泡樹脂、122…規定面、124…自然膨張面、130…混合液、140…ノズル、150…金型、152…下型、154…上型、156…穴、200…発泡樹脂製玩具、202…規定面、204…自然膨張面