特開2020-115800(P2020-115800A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2020-115800(P2020-115800A)
(43)【公開日】2020年8月6日
(54)【発明の名称】縦型植物栽培システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20200710BHJP
   A01G 31/02 20060101ALI20200710BHJP
【FI】
   A01G31/00 601C
   A01G31/02
   A01G31/00 616
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-10701(P2019-10701)
(22)【出願日】2019年1月24日
(71)【出願人】
【識別番号】515339295
【氏名又は名称】株式会社恵葉&菜健康野菜
(74)【代理人】
【識別番号】100109254
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 雅典
(74)【代理人】
【識別番号】100158768
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 達也
(72)【発明者】
【氏名】池 祐史久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 朱鷺
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA33
2B314MA38
2B314NA08
2B314NC09
2B314NC10
2B314NC27
2B314NC54
2B314ND07
2B314ND10
2B314ND27
2B314ND30
2B314ND32
2B314ND40
2B314PB20
2B314PB22
2B314PB44
2B314PD37
2B314PD59
(57)【要約】
【課題】各植物株の根が良好に養液を吸収できる縦型の植物栽培システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る縦型の植物栽培システムは、光源と、縦型栽培部とを有する縦型植物栽培システムであって、上記縦型栽培部は、超音波ミスト発生源を備えたミスト発生部と、上記ミスト発生部の下方に設けられ、複数の植物設置穴を備えた植物設置部と、上記植物設置部の下方に設けられた養液タンク部と、上記養液タンク部から上記ミスト発生源へ養液を循環する養液循環系とを有することを特徴とするものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
縦型栽培部と、
を有する縦型植物栽培システムであって、
上記縦型栽培部は、
超音波ミスト発生源を備えたミスト発生部と、
上記ミスト発生部の下方に設けられ、複数の植物設置穴を備えた植物設置部と、
上記植物設置部の下方に設けられた養液タンク部と
上記養液タンク部から上記ミスト発生部へ養液を循環する養液循環系と
を有する
ことを特徴とする縦型植物栽培システム。
【請求項2】
上記ミスト発生部は、
上方にミストを発生する超音波ミスト発生源と
発生したミストを反射するためのドーム型のミスト反射部と
を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の縦型植物栽培システム。
【請求項3】
上記栽培部の下方に外気を導入するための吸気部を設けた
ことを特徴とする請求項1または2に記載の縦型植物栽培システム。
【請求項4】
上記植物設置穴は蓋を有し、
上記蓋は非浸水性であり、植物を挿入するための切込みを有する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の縦型植物栽培システム。
【請求項5】
上記植物設置穴の上記蓋は、外部にミストを発生させるためにミスト発生用開口を備えた
ことを特徴とする請求項4に記載の縦型植物栽培システム。
【請求項6】
上記縦型栽培部は、対向する2側面それぞれに複数の植物設置穴を備え、
2側面のうちの一方の側面に設けた複数の植物設置穴と、他方の側面に設けた複数の植物設置穴の高さ位置をずらした
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の縦型植物栽培システム。
【請求項7】
上記縦型栽培部は、上記ミスト発生部と、上記植物設置部と、養液タンク部とが分離可能なユニット構成である
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の縦型植物栽培システム。
【請求項8】
上記植物設置部は、高さ方向に複数に分離可能なユニット構成である
ことを特徴とする請求項7に記載の縦型植物栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型の植物栽培システムに関するものであり、特に、溶液をミスト化して植物に与える植物栽培システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培においては、養液槽に所定の深さまで養液を満たし、この養液に植物の根を浸漬させるのが一般的である。
他方、植物の根に養液を噴霧する方式も検討されている(例えば、特許文献1)。養液量を軽減し、栽培システム全体を軽量化できる等のメリットがある。
【0003】
また、通常の平面型の栽培方式に対し、縦型の栽培方式も普及し始めている。縦型の栽培方式においては、略垂直の栽培部に複数の植物株を挿入し、上方より養液を根に向かって放水する。縦型の栽培方式は、高さ方向のスペースの有効利用、光源と植物との距離を変えやすい等のメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−104529
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
縦型の栽培方式においては、上方より養液を根に向かって放水するため、養液に根を浸漬させる平面型に比べて、養液の吸収が確実に行えないという課題があった。特に、低い位置に設けられた植物株に対しては養液が当たりにくく、植物株の高さ位置で発育に差が出てしまうという問題点もあった。
【0006】
縦型の栽培方式において、上方より養液を根に向かって放水する代わりに、特許文献1に示されたように噴霧により各植物株のそれぞれの根に養液を与えることも考えられる。このようにすれば、確実に各植物株のそれぞれの根に養液が与えられ、上記の諸課題を解決できる。
しかし、植物株の数だけ噴霧器を設ける必要があり、装置コストが非常に大きくなってしまう。また、噴霧器が詰まる等により、植物の生育に大きな支障が生じることも考えられる。それを防止するためには、すべての噴霧器が正常に動作しているかを確認することが必要であり、保守管理コストも増大する。
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、各植物株の根が良好に養液を吸収できる栽培システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る縦型植物栽培システムは、
光源と、
縦型栽培部と、
を有し、
上記縦型栽培部は、
超音波ミスト発生源を備えたミスト発生部と、
上記ミスト発生部の下方に設けられ、複数の植物設置穴を備えた植物設置部と、
上記植物設置部の下方に設けられた養液タンク部と
上記養液タンク部から上記ミスト発生部へ養液を循環する養液循環系と
を有する
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
上方より、超音波ミスト発生源を備えたミスト発生部、複数の植物設置穴を備えた植物設置部、養液タンク部の順に、縦型植物栽培システムを構成したことで、以下の優れた特長が得られる。
ミスト発生部で発生した微小な水滴群である養液ミストは空気よりも重いため、植物設置部に降下する。ミストを構成する微小な水滴は、噴霧器で発生する水滴に比べてはるかに水滴径が小さく、体積効果よりも表面張力が優勢となり、水滴状態を長期間安定に保持することができる。したがって、植物設置部の最下部まで水滴状態を安定に保ったまま降下し、植物設置部全体に養液ミストを充満させることができる。植物設置部の複数の植物設置穴に支持されたすべての植物株は、根から養液を十分に吸収し、健全に発育できる。
【0010】
溶液ミストを構成する水滴の一部は、このようにして植物の根から吸収され、それ以外の水滴はやがて養液タンクに下降し、養液循環系により、ミスト発生部に戻る。
このように、簡素な構成で、植物の根への養液の付与、および養液の循環が可能となる。
以上のように、植物設置部の複数の植物設置穴に支持されたすべての植物株に略均一且つ十分な養液を簡素な構成で与えることができる。
【0011】
さらに、安定な養液ミストは長時間にわたり、植物設置部内を充満するので、ミスト発生部によるミストの発生は間欠駆動でよく、電気代の削減、養液量の削減が可能である。養液量の削減により、養液タンクの小型軽量化、養液循環家のポンプの小型化等も可能となり、装置コストの低減につながる。
また、ミスト発生部は、噴霧器のように植物株ごとに設ける必要はなく、保守管理も容易となる。
【0012】
さらに、発生したミストを反射するためのドーム型のミスト反射部を設けることで、より長時間にわたり、ミストを安定な水滴状態として保つことが可能となる。
超音波ミストを用いる際のひとつの課題は、超音波振動子による発熱が植物設置部の温度を上昇させることである。この課題に関しては、冷却チラー等を用いることも解決策であるが、外部の空気を導入することでも解決できる。装置内よりも外部の空気は十分に温度が低く、外気導入により植物設置部内部の空気を効率的に冷却できる。なお、この外気導入を行う箇所は、植物設置部の下部が良い。植物設置部の下部から導入された空気は、ミストを上方に吹き上げる効果を持ち、ミスト発生部から下降してきたミストを再度上方に吹き上げ、植物設置部内でミスとの循環を生じさせることができる。これにより、より少量のミストであっても、すべての植物に均一で十分な養液を与えることができる。
【0013】
超音波ミストを用いる際の他のひとつの課題は、植物設置部に設けられた複数の植物設置穴から養液ミストが外部に流出することである。この流出を軽減するため、植物設置穴に非浸水性の蓋を設けることが有効である。蓋には切り込みを設け、そこから植物を挿入することで、ミスとの流出を大幅に軽減し、植物設置部でのミストの充満を長時間にわたり維持できる。
また、この蓋に小さな穴を開けることも有効な場合がある。植物によっては、葉の付近がある程度高い湿度の方が生育状態が良好なものがある。このような植物に対しては、蓋に小さな穴を開けることで、少量のミストを葉や茎に吹きかけて湿度を高めることが有効となる。これにより、外部に加湿器等を設ける必要がなくなる。
【0014】
また、縦型栽培部の対向する2側面それぞれに複数の植物設置穴を備えた両面タイプの縦型植物栽培システムの場合、2側面のうちの一方の側面に設けた複数の植物設置穴と、他方の側面に設けた複数の植物設置穴の高さ位置をずらすことで、ミストの循環を効率化できる。植物は生育すると、植物設置部で大きく根を張り、ミストの循環を悪化させる場合がある。このような場合においても、他面との植物設置穴の高さ位置をずらすことで、根がいっぱいに張った箇所を少なくすることが可能となり、ミスト循環の悪化を抑制することができる。
【0015】
縦型栽培部をミスト発生部と、上記植物設置部と、養液タンク部とが分離可能なユニット構成とすることで、保守管理が容易となる。超音波振動子の交換や洗浄等が容易となり、また、運搬時に分解して運搬することで運搬コストの低減も行える。
さらに、植物設置部を高さ方向に複数に分離可能なユニット構成とすることで、洗浄等を容易にするとともに、設置箇所に応じて縦型栽培部の高さを容易に変えることが可能となる。また、2mを越えるような背の非常に高い縦型植物栽培システムであったり、植物が高濃度の養液を必要とするような場合であったりする際には、ミスト発生部を最上部だけではなく、中間高さ位置にさらに設けることが必要になる。このような構成にも容易に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る縦型栽培システムの全体側面図である。
図2】本発明に係る縦型栽培システムの栽培部の(a)正面図と(b)側面図である。
図3】本発明に係る縦型栽培システムの栽培部を分解した際の模式図である。
図4】本発明に係る縦型栽培システムの栽培部のミスト発生部の(a)正面図と(b)側面図である。
図5】本発明に係る縦型栽培システムの栽培部の(a)正面図と(b)側面図である。
図6】本発明に係る縦型栽培システムの栽培部に設けた植物設置穴の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る縦型植物栽培システムの構成や特徴等に関して、以下において、図面を用いて説明する。なお、以下の説明は本発明に関する良好な一例を開示するものであり、本発明が当該実施の形態に限定されるものではない。
なお、以下においては、両面を用いた縦型植物栽培システムについて主に説明を行うが、片面を用いた縦型植物栽培システムについても、原則として同様である。
【0018】
<構成>
図1は、本発明に係る縦型栽培システムの全体側面図である。また、図2は、縦型栽培システムの栽培部の(a)正面図と(b)側面図である。
図1に示すように、縦型栽培システムは、植物の光合成に必要な光照射を行うLED等の光源100a、100bと、縦型栽培部1とを基本要素として構成されている。そして、縦型栽培部1は、図2に示すように、超音波ミスト発生源を備えたミスト発生部2と、このミスト発生部2の下方に設けられた植物設置部3a、3bと、この植物設置部3a、3bの下方に設けられた養液タンク部4と、この養液タンク部4からミスト発生部2へ養液を循環する養液循環系とを有している。養液循環系は、養液タンク部4とミスト発生部2とを繋ぐ配管5と、ポンプP1により構成される。
【0019】
縦型栽培部1は、養液循環系等を外せば、図3に示すように、ミスト発生部2と、植物設置部3a、3bと、この植物設置部3a、3bと、養液タンク部4に分離可能であっても良い。例えば、はめ込み等で組み立てと分離が容易にできるようにしておけばよい。
【0020】
なお、図3に示すように、養液タンク部4の上部は、下部よりも断面積が小さくなっており、養液面a−aは、この断面積が小さくなっている高さまで達しているのが良い。このようにすることで、ミストが浮遊できる体積を減らし、植物設置部3a、3bにおけるミスト密度を高めることができる。
【0021】
図4は、ミスト発生部2の(a)正面図と(b)側面図である。超音波振動子によりミストを発生させるミスト発生源21により、養液ミストが発生する。ミスト発生源21は、例えば、養液を溜めた水槽内に超音波振動子を配したもので、超音波振動により水槽内から養液水流を養液ミストが上方に向かって発生するものである。なお、本発明においてミストとは、上記のようにして発生した微小な水滴群のことである。
ミスト発生源21の上方には、ドーム型のミスト反射部22を設けても良い。ミスト発生源21から上方に向かって発生したミストは、ドーム型のミスト反射部22で広角に広がり、空気より重いため、植物設置部3a、3b内に降下していく。ドーム型のミスト反射部22を設けることで、植物設置部3aの最上部でも均一の広がったミスト分布が得られ、且つミスト水滴間の干渉を抑制する等により、ミスト水滴の長時間にわたる安定化を促すことができる。なお、ミスト反射部22を透明にすることで、上部よりミスト発生が正常に行われるかを観察することができる。ミスト発生の確認は、センサーを用いる他に、このような目視確認でも十分に行うことができる。
【0022】
図5は、栽培部3a、3bの(a)正面図と(b)側面図である。植物設置部3a、3bは、内部が空洞の筒体である。その一側面には、植物設置穴31が複数設けられている。また、この一側面に対向する側面にも、複数の植物設置穴32を設けても良い。両面に、複数の植物設置穴31、32を設ける場合には、図5(b)に示すように、一方の面の植物設置穴31と他方の面の植物設置穴32の高さ位置をずらす方が良い。
【0023】
図6は栽培部3a、3bに設けた植物設置穴31、32の斜視図である。植物設置穴は、栽培部3a、3b側面に設けた開口であっても良いが、図6に示すように、外側に向かって高さが上がるように斜めを向けた筒体を設けることで、植物を設置しやすくなり、且つ内部からのミスト流出を軽減できる。植物設置穴31、32は筒体の側壁である植物設置穴側壁部34と、その開口部を閉じる蓋35とからなる。蓋35は、例えば弾性を持つ材質であり、切り込み36を入れることで、植物を挿入し支持できる。この蓋35の材質として水分を通しにくい材質か、撥水コーティング等を施したものが良い。すなわち、蓋35を非浸水性とすることで、ミストの外部への流出を抑制できる。なお、植物によっては、葉や茎の部分が高湿度であることを好むものもあり、その場合には、蓋35に小さな穴であるミスト発生用開口37を設けることも効果的である。少量のミストを葉や茎に吹きかけることで、高湿度環境を実現できる。
【0024】
ミスト発生源21を駆動することで発熱により、植物設置部3a、3b内の温度が少し上昇する。高温を嫌う植物を栽培する際には、冷却装置を別途設けても良い。あるいは、図2に示すように、外気を強制的に導入するための吸気用ポンプP2と吸気用配管6とからなる吸気部を設けても良い。この吸気部はどこに設けても良いが、植物設置部3bの最下方に設けるのがより好ましい。植物設置部3bの下部から導入された空気は、ミストを上方に吹き上げる効果を持ち、ミスト発生部2から下降してきたミストを再度上方に吹き上げ、植物設置部3a、3b内でミスとの循環を生じさせることができる。これにより、より少量のミストであっても、すべての植物に均一で十分な養液を与えることができる。
【0025】
<具体例>
3mm厚の樹脂で栽培部1を構成した。高さは約2m、幅80cm、奥行きが15cmである。植物設置穴は片面に24、両面で総数48。48株の植物を栽培した。
光源は、昼期として16時間照射、夜期として8時間を無照射とした。
ミスト発生源21は、昼期は1時間駆動、1時間休止の間欠駆動を行った。これにより、昼期全般にわたり、植物設置部内で十分なミスト濃度を維持できた。
また、植物設置部内の下部より外気を強制導入することで、植物設置部内の温度を20℃前後に維持できた。外気を強制導入することで、約4℃の温度低下が可能であった。
【0026】
<その他の構成例>
上記に示した構成以外に、以下のような異なる構成でも同様の効果が得られる。
養液タンクに関して、上記のように植物設置部の直下に設けても良いが、植物設置部の下方であれば、横に設けても良い。例えば、大規模な栽培を行う場合、多数の縦型植物栽培システムを並べて使用する。このような場合には、複数の縦型植物栽培システムに対して、ひとつの養液タンクを設ける方が、養液交換や洗浄を効率的に行うことができる。
【0027】
2mを越えるような背の非常に高い縦型植物栽培システムであったり、植物が高濃度の養液を必要とするような場合であったりする際には、ミスト発生部を最上部だけではなく、中間高さ位置にさらに設けても良い。上述したように、ミスト発生部、複数の植物設置部、養液タンク部が分離可能にしておけば、ミスト発生部を中間高さ位置にさらに設ける構成にも容易に対応できる。
【0028】
<本発明のまとめ>
【0029】
上方より、超音波ミスト発生源を備えたミスト発生部、複数の植物設置穴を備えた植物設置部、養液タンク部の順に、縦型植物栽培システムを構成したことで、以下の優れた特長が得られる。
ミスト発生部で発生した微小な水滴群である養液ミストは空気よりも重いため、植物設置部に降下する。ミストを構成する微小な水滴は、噴霧器で発生する水滴に比べてはるかに水滴径が小さく、体積効果よりも表面張力が優勢となり、水滴状態を長期間安定に保持することができる。したがって、植物設置部の最下部まで水滴状態を安定に保ったまま降下し、植物設置部全体に養液ミストを充満させることができる。植物設置部の複数の植物設置穴に支持されたすべての植物株は、根から養液を十分に吸収し、健全に発育できる。
【0030】
溶液ミストを構成する水滴の一部は、このようにして植物の根から吸収され、それ以外の水滴はやがて養液タンクに下降し、養液循環系により、ミスト発生部に戻る。
このように、簡素な構成で、植物の根への養液の付与、および養液の循環が可能となる。
以上のように、植物設置部の複数の植物設置穴に支持されたすべての植物株に略均一且つ十分な養液を簡素な構成で与えることができる。
【0031】
さらに、安定な養液ミストは長時間にわたり、植物設置部内を充満するので、ミスト発生部によるミストの発生は間欠駆動でよく、電気代の削減、養液量の削減が可能である。養液量の削減により、養液タンクの小型軽量化、養液循環家のポンプの小型化等も可能となり、装置コストの低減につながる。
また、ミスト発生部は、噴霧器のように植物株ごとに設ける必要はなく、保守管理も容易となる。
【0032】
さらに、発生したミストを反射するためのドーム型のミスト反射部を設けることで、より長時間にわたり、ミストを安定な水滴状態として保つことが可能となる。
超音波ミストを用いる際のひとつの課題は、超音波振動子による発熱が植物設置部の温度を上昇させることである。この課題に関しては、冷却チラー等を用いることも解決策であるが、外部の空気を導入することでも解決できる。装置内よりも外部の空気は十分に温度が低く、外気導入により植物設置部内部の空気を効率的に冷却できる。なお、この外気導入を行う箇所は、植物設置部の下部が良い。植物設置部の下部から導入された空気は、ミストを上方に吹き上げる効果を持ち、ミスト発生部から下降してきたミストを再度上方に吹き上げ、植物設置部内でミスとの循環を生じさせることができる。これにより、より少量のミストであっても、すべての植物に均一で十分な養液を与えることができる。
【0033】
超音波ミストを用いる際の他のひとつの課題は、植物設置部に設けられた複数の植物設置穴から養液ミストが外部に流出することである。この流出を軽減するため、植物設置穴に非浸水性の蓋を設けることが有効である。蓋には切り込みを設け、そこから植物を挿入することで、ミスとの流出を大幅に軽減し、植物設置部でのミストの充満を長時間にわたり維持できる。
また、この蓋に小さな穴を開けることも有効な場合がある。植物によっては、葉の付近がある程度高い湿度の方が生育状態が良好なものがある。このような植物に対しては、蓋に小さな穴を開けることで、ミストを葉や茎に吹きかけて湿度を高めることが有効となる。これにより、外部に加湿器等を設ける必要がなくなる。
【0034】
また、縦型栽培部の対向する2側面それぞれに複数の植物設置穴を備えた両面タイプの縦型植物栽培システムの場合、2側面のうちの一方の側面に設けた複数の植物設置穴と、他方の側面に設けた複数の植物設置穴の高さ位置をずらすことで、ミストの循環を効率化できる。植物は生育すると、植物設置部で大きく根を張り、ミストの循環を悪化させる場合がある。このような場合においても、他面との植物設置穴の高さ位置をずらすことで、根がいっぱいに張った箇所を少なくすることが可能となり、ミスト循環の悪化を抑制することができる。
【0035】
縦型栽培部をミスト発生部と、上記植物設置部と、養液タンク部とが分離可能なユニット構成とすることで、保守管理が容易となる。超音波振動子の交換や洗浄等が容易となり、また、運搬時に分解して運搬することで運搬コストの低減も行える。
さらに、植物設置部を高さ方向に複数に分離可能なユニット構成とすることで、洗浄等を容易にするとともに、設置箇所に応じて縦型栽培部の高さを容易に変えることが可能となる。また、2mを越えるような背の非常に高い縦型植物栽培システムであったり、植物が高濃度の養液を必要とするような場合であったりする際には、ミスト発生部を最上部だけではなく、中間高さ位置にさらに設けることが必要になる。このような構成にも容易に対応できる。
【符号の説明】
【0036】
1 縦型栽培部
2 ミスト発生部
21 ミスト発生源
22 ミスト反射部
3a、3b 植物設置部
31、32 植物設置穴
33 結合部
34 植物設置穴側壁部
35 植物設置穴表面
36 切り込み
37 開口
4 養液タンク部
5 養液循環用配管
6 吸気用配管
100a、100b 光源
図1
図2
図3
図4
図5
図6